説明

電気接続箱及びその製造方法

【課題】 電気接続箱の防水性及び絶縁性を確保する。
【解決手段】 回路基板11のうち、筐体20の底面の一部に形成された凹部50に対応する位置に、凹部50内と回路基板11の上方の空間とを連通させるポッティング材流入口51が形成され、凹部50内と回路基板11の上方の空間とを連通させる空気排出口52が形成され、空気排出口52には前記筐体20内に充填されたポッティング材の上面よりも高い位置で開口する筒部54が連通して設けられている。ポッティング材流入口51から、凹部50内を充填するのに十分な量のポッティング材を注入することができる。また、凹部50内にポッティング材が充填される際、ポッティング材に押された空気は空気排出口52及び筒部54から逃げることができる。これにより、凹部50内に隙間が形成されるのを防止することができるので、防水性及び信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に回路基板を収容してなる電気接続箱及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気接続箱として、特許文献1に開示されているように、回路基板と、回路基板の表面側に配されたスイッチング素子と、回路基板の裏面に沿って配されて電源に接続される電力用導電路とを備えた構成になるものが知られている。
【0003】
このような電気接続箱においては、容器状の筐体内に、回路基板で発生した熱を筐体へと効率よく伝達すると共に、絶縁性を保持するために、回路基板の裏面に配された電力用導電路と筐体の底面とが非接触であり且つ広い面積に亘って重なるようにして回路基板が収容される。そして、この筐体内に回路基板を埋没させるようにポッティング材を充填することにより、回路基板の防水性及び絶縁性を向上させることが行われている。なお、ポッティングとは、液状のポッティング材(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンなどの合成樹脂成形材)を注入して、その後に硬化させることをいう。
【特許文献1】特開2003−164039公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電気接続箱において、例えば回路基板を上下に貫通して端子金具が取り付けられるものに対しては、回路基板から突出した端子金具の下端と筐体とが干渉するのを防止するために、筐体の一部を陥没させて凹部を形成することが考えられた。この凹部内にもポッティング材を充填することにより、凹部内に水が進入するのを防止し、隣り合う端子金具間に電流がリークするのを防止することができる。
【0005】
しかし上記の構成によると、筐体の底面と重なるように回路基板が収容されているので、ポッティング材は、例えば回路基板と筐体との間などに生じた僅かの隙間を通ってしか凹部内に注入されない。このため、十分な量のポッティング材が凹部内に充填されず、空気だまりが形成される場合がある。その後ポッティング材を硬化させると、この空気だまりにより、凹部内にポッティング材が充填されない隙間が形成されることになる。このような場合、上記のようにして形成された隙間に水が進入することなどにより、隣り合った端子金具間に電流がリークして信頼性が損なわれることがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電気接続箱の防水性及び信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、底面の一部が部分的に陥没する凹部を有する容器状の筐体内に、その底面に重なるように回路基板を収容し、前記筐体内に前記回路基板を埋没させるようにポッティング材が充填されている電気接続箱において、前記回路基板のうち前記凹部に対応する位置に、前記凹部内と前記回路基板の上方の空間とを連通させるポッティング材流入口を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、底面の一部が部分的に陥没する凹部を有する容器状の筐体内に、その底面に重なるように回路基板を収容し、前記筐体内に前記回路基板を埋没させるようにポッティング材が充填されている電気接続箱において、
前記回路基板のうち前記凹部に対応する位置に、前記凹部内と前記回路基板の上方の空間とを連通させる空気排出口を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載のものにおいて、前記空気排出口には前記筐体内に充填された前記ポッティング材の上面よりも高い位置で開口する筒部が連通して設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1記載の電気接続箱において、さらに、前記回路基板のうち前記凹部に対応する位置に、前記凹部内と前記回路基板の上方の空間とを連通させる空気排出口を形成したことを特徴とする電気接続箱。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4記載のものにおいて、前記空気排出口には前記筐体内に充填された前記ポッティング材の上面よりも高い位置で開口する筒部が連通して設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5記載の電気接続箱において、前記空気排出口は、前記凹部に対応する位置のうち、前記ポッティング材流入口から最も離れた箇所に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の電気接続箱の製造方法であって、前記ポッティング材流入口に前記ポッティング材の注入ノズルを入れて、前記凹部内に前記ポッティング材を充填することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の電気接続箱の製造方法において、前記凹部内に前記ポッティング材が充填された後、前記注入ノズルを前記ポッティング材流入口から抜き取り、前記注入ノズルを用いて前記回路基板の上方から前記ポッティング材を前記筐体内に流し込んで、前記回路基板を前記ポッティング材で埋没させるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、凹部内と回路基板の上方の空間とを連通させるポッティング材流入口から、凹部内を充填するのに十分な量のポッティング材を注入することができるので、凹部内に空気だまりが形成されるのを防止できる。これにより、空気だまりから生じる隙間に水が進入することを防止できるので、防水性が向上する。また、進入した水や結露等によるショートが防止されるので信頼性が向上する。
【0016】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、凹部内にポッティング材が充填されるにつれて、ポッティング材に押された空気は空気排出口から逃げることができる。これにより、凹部内の隅々までに空気だまりが形成されることを防止できる。この結果、凹部内に形成された隙間に水が進入することが防止されるので防水性が向上する。また、進入した水や結露等によるショートが防止されるので信頼性が向上する。
【0017】
<請求項3及び請求項5の発明>
請求項3及び請求項5の発明によれば、筒部の開口端は、充填されたポッティング材の上面よりも高い位置で開口しているので、凹部内は、ポッティング材の充填中及び充填後を通じて、ポッティング材の上面よりも上方の空間と常に連通している。このため、凹部内にポッティング材が充填されるにつれて、回路基板上面にポッティング材が回り込み、凹部にポッティング材が充填される前に排出口がふさがれる場合においても、ポッティング材に押された空気は筒部から逃げることができる。これにより、凹部内に空気だまりが形成されるのをより一層防止することができる。
【0018】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、空気排出口から凹部内の空気を逃がしながら、同時に、ポッティング材流入口から凹部内にポッティング材を注入することができる。これにより、ポッティング材を凹部内に素早く充填することができるので、ポッティング材の充填作業効率が向上する。
【0019】
<請求項6の発明>
ポッティング材流入口から凹部内に注入されたポッティング材は、凹部内の空気を押しながら凹部内に充填される。空気はポッティング材に押されて、ポッティング材流入口から離れた部位へと押しやられる。空気排出口はポッティング材流入口から最も離れた位置に形成されているので、ポッティング材に押された空気は、凹部内に残留することなく、空気排出口から逃げることができる。この結果、凹部内にポッティング材を隙間無く充填することができるので、隙間に水が進入する事が防止され、防水性が向上する。また、進入した水や結露等によるショートが防止されるので信頼性が向上する。
【0020】
<請求項7の発明>
請求項7の発明によれば、凹部内に、注入ノズルから圧力をかけながら、ポッティング材を直接流し込むことができる。これにより、凹部内に確実にポッティング材を充填することができる。
【0021】
<請求項8の発明>
請求項8の発明によれば、注入ノズルを用いて、凹部内にポッティング材を充填すると共に、筐体内に回路基板を埋没させるようにポッティング材を充填することができるから、ポッティング材の充填作業を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。本実施形態の電気接続箱40は、回路構成体10を放熱機能を有する筐体20内に収容し、筐体20の金属製の放熱板22と回路構成体10とを電気的に絶縁した状態で結合したものである(図1参照)。なお本実施形態の説明においては、上下方向については図4の上下方向を基準とし、左右方向については、図3の左右方向を基準とし、前後方向については、図4の左方を前方とし、右方を後方とする。
【0023】
図2に示すように、回路構成体10は、回路基板11と、回路基板11の一方の面(上面)に形成された回路パターン(図示せず)に実装される電子部品12(例えば機械式リレースイッチ、半導体スイッチング素子などスイッチング部材や、制御素子など)と、回路基板11の他方の面(下面)に沿って配されて電源(図示せず)に接続される金属板材からなるバスバー(電力用導電路)13とから構成されている。
【0024】
回路基板11とバスバー13とは、絶縁性を有する薄い粘着シート(図示せず)を介して一体化されている。回路基板11とバスバー13との接合は、電子部品12を実装する前の工程で行われる。このとき電子部品12は回路基板11上に実装されていないので、回路基板11の表面のほぼ全域に亘って均一にプレス機等で押圧することにより、粘着シート(図示せず)を回路基板11の下面(裏面)とバスバー13の上面(表面)とに対して強固に接着させることができ、このような全面押圧によって回路基板11とバスバー13とが強固に接合されている。
【0025】
回路基板11とバスバー13とが接合された後、電子部品12が、回路基板11の図示しない制御回路に電子部品12をリフロー半田付けにより実装される。このリフロー半田付けは、制御回路(図示せず)上の電子部品12を取付ける位置に予め半田を塗布し、この半田の上に電子部品12を載置し、高温の炉内で加熱して半田を溶かし、これを冷却することにより制御回路(図示せず)と電子部品12とを半田付けするものである。
【0026】
筐体20は、合成樹脂製の枠体21と、熱伝導率の高い金属製(例えば、アルミニウム合金)の放熱板22とから構成されている。枠体21は、回路基板11の外形に沿った形状であって、全周に亘って切れ目無く連続して回路基板11を包囲するようになっている。放熱板22は、枠体21の外形と概ね同じ形状とされ、枠体21に対してその下面側から組み付けられるようになっている。枠体21の下面と放熱板22の上面とが接するように組み付け、下から放熱板22を貫通させたビス(図示せず)を枠体21の下面に螺合して締め付けると、枠体21と放熱板22とが一体化されて筐体20が構成される。筐体20の内部には、放熱板22と放熱板22の外周に沿って立ち上がる形態の枠体21とにより、上面側に開放された収容空間23が形成される。
【0027】
筐体20に対する回路構成体10の組付けは、放熱板22の上面にエポキシ系樹脂からなる絶縁性の接着剤を塗布して枠体21と回路構成体10とを放熱板22の上面に重ねる。このとき、治具(図示せず)を用いて、回路基板11をプレス機等で押圧することにより、接着剤をバスバー13の下面(裏面)と放熱板22の上面(表面)に対して接着させることができ、バスバー13と放熱板22との間に絶縁層(図示せず)が形成される。さらに、ビス(図示せず)を放熱板22と枠体21とに螺合することにより、放熱板22と枠体21が固着されている。尚、枠体21と放熱板22との間には、図示しないシール剤が塗布されることで水密性が確保されている。
【0028】
このようにして筐体20と回路構成体10を組み付けた状態では、バスバー13のうち回路基板11の下面側に配されている部分が、筐体20の収容空間23内に収容された状態となる。そして、この収容空間23内には防水手段としてポッティング材(図示せず)が充填され、このポッティング材(図示せず)の内部にバスバー13が埋設された状態となる。また、ポッティング材(図示せず)は枠体21の高さまで充填されて、回路基板11が埋没した状態となる。これにより、回路基板11及びバスバー13の防水性及び絶縁性が確保される。
【0029】
また、枠体21には上からカバー30が組み付けられ、このカバー30によって回路構成体10の上面側が覆い隠される。さらに、カバー30の前端部には、前部コネクタ31が組み付けられる。この前部コネクタ31は、フード部32を備え、このフード部32の底壁部には、底壁部を前後方向に貫通するように端子33が取り付けられており、前部コネクタ31の後面側から突出した端子33は下方に曲げられて、回路基板11に設けられた挿通孔14に上方から挿入される。挿通孔14の周縁部及び内壁部には施されて図示しないランド部が形成されており、このランド部(図示せず)と端子33とは、フロー半田付けにより接続されている。このフロー半田付けとは、溶融した半田が貯留された半田槽(図示せず)の上に回路基板11の半田付け面を浸し、溶けた半田が挿通孔14及び端子33を這い上がって、ランド部(図示せず)と端子33とが半田付けされるものである。
【0030】
前部コネクタ31下面からは円筒形をなす2本の固着部35,35が下方に垂下して形成されており、前部コネクタ31と回路基板11とは、回路基板11の下面側から貫通させたビス36を固着部35,35に螺合することにより固着されている。
【0031】
放熱板22の前部には、前部コネクタ31の端子33のうち回路基板11の下方から突出した端部と放熱板22とが干渉するのを防止するため、及び、前部コネクタ31と回路基板11とを固着させるためのビス36と放熱板22とが干渉するのを防止するために、放熱板22の一部が下方に陥没した凹部50が、左右方向に延びて設けられている。凹部50の深さ寸法は、端子33の回路基板11からの突出長さ寸法、及び、ビス36の回路基板11からの突出長さ寸法よりも大きくなっている(図4、図7参照)。
【0032】
また、カバー30の後端縁部にはヒューズブロック38が組み付けられ、このヒューズブロック38には、カバー30の後端縁から上方へ突出する端子部を収容する後部コネクタ39が組み付けられる。このようにして本実施形態の電子接続箱40が構成される。
【0033】
さて、図3及び図5に示すように、回路基板11の右前端部には、凹部50の右前端部に対応する位置が切り欠かれて、ポッティング材流入口51が形成されている、このポッティング材流入口51により、凹部50内が回路基板11の上方の空間と連通している(図6参照)。
【0034】
さらに、回路基板11のうち、左前部には、凹部50の左後端部に対応する位置に、空気排出口52が回路基板11を上下方向に貫通して形成されている。この空気排出口52は、凹部50に対応する位置のうち、右前端部に形成されたポッティング材流入口51から最も離れた箇所に設けられている(図3参照)。
【0035】
そして、図4及び図5に示すように、この空気排出口52の周縁部には銅製のランド部53が形成されており、このランド部53には、回路基板11から上方に立ち上がった円筒状をなす銅製の筒部54がリフロー半田付けされている。
【0036】
この筒部54の下端部には、鍔部55が形成されており、この鍔部55がランド部53の上に重ね合わされた状態で、リフロー半田付けされている。この筒部54の上端側の開口端の高さ寸法は、枠体21の高さ寸法よりも僅かに低く形成されて、カバー30の下面と干渉しないようになっている。さらに、筒部54の開口端の高さは、回路基板11の上方にまで充填されたポッティング材の上面よりも高い位置に形成されて、凹部50内がポッティング材の充填中及び充填後を通じて回路基板11の上方の空間と連通するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。まず、液状のポッティング材を収容空間23内に注入すると、ポッティング材は回路基板11上を覆うように広がる。このとき回路基板11上を覆うポッティング材は、回路基板11と放熱板22との隙間などから、凹部50内へ僅かな量しか流入できない。そして、ポッティング材が回路基板11の右端部に形成されたポッティング材流入口51に達すると、このポッティング材流入口51から凹部50内に多量のポッティング材が流入する。ポッティング材は、凹部50内の空気を、ポッティング材流入口51から離れた位置へと押しやりながら凹部50内に充填される。押しやられた空気は、回路基板11の上方の空間と連通している空気排出口52及び筒部54から、凹部50外へ逃げることができる。
【0038】
このとき、筒部54の開口端は、収容空間23内に充填されたポッティング材の上面よりも高い位置に形成されているので、ポッティング材の充填中及び充填後を通じて、常に回路基板11の上方の空間と連通している。このため、空気排出口52及び筒部54から凹部50内の空気を逃がしながら、同時に、ポッティング材流入口51から凹部50内にポッティング材を注入することができる。これにより、ポッティング材を凹部50内に素早く充填することができるので、ポッティング材の充填作業効率が向上する。
【0039】
また、空気排出口52は、凹部50に対応する位置のうち、ポッティング材流入口51から最も離れた位置に形成されているので、凹部50内に空気が残ることなくポッティング材を充填することができる。その後、ポッティング材を固化させることにより、回路基板11、バスバー13、放熱板22、及び端子33の防水性及び絶縁性を確保する。
【0040】
このように本実施形態によれば、凹部50内と回路基板11の上方の空間とを連通させるポッティング材流入口51から、凹部50内を充填するのに十分な量のポッティング材を注入することができるので、凹部50内に空気だまりが形成されるのが防止される。これにより、空気だまりから生じる隙間に水が進入することが防止されるので、防水性が向上する。また、進入した水や結露等によるショートが防止されるので信頼性が向上する。
【0041】
また、本実施形態によれば、筒部54の開口端は、充填されたポッティング材の上面よりも高い位置で開口しているので、凹部50内は、ポッティング材の充填中及び充填後を通じて、ポッティング材の上面よりも上方の空間と常に連通している。このため、凹部50内にポッティング材が充填されるにつれて、ポッティング材に押された空気は空気排出口52及び筒部54から逃げることができる。これにより、凹部50内に空気だまりが形成されるのを防止することができる。この結果、凹部50内に形成された隙間に水が進入することが防止されるので防水性が向上する。また、進入した水によるショートが防止されるので絶縁性が向上する。
【0042】
また、本実施形態によれば、ポッティング材流入口51から凹部50内に注入されたポッティング材は、凹部50内の空気を押しながら凹部50内に充填される。空気はポッティング材に押されて、ポッティング材流入口51から離れた部位へと押しやられる。空気排出口52及び筒部54はポッティング材流入口51から最も離れた位置に形成されているので、ポッティング材に押された空気は、凹部50内に残留することなく、空気排出口52及び筒部54から逃げることができる。この結果、凹部50内にポッティング材を隙間無く充填することができるので、隙間に水が進入する事が防止され、防水性が向上する。また、進入した水によるショートが防止されるので絶縁性が向上する。
【0043】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8ないし図11によって説明する。実施形態1との相違は、実施形態1ではポッティング材流入口51とされていた部位が実施形態2では空気排出口52とされると共に、実施形態1では空気排出口52とされていた部位が実施形態2ではポッティング材流入口51とされていること、及び、空気排出口52に筒部54が設けられていないところにある。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
図8に示すように、回路基板11の右前端部には、凹部50の右前端部に対応する位置が切り欠かれて、空気排出口52が形成されている、この空気排出口52により、凹部50内が回路基板11の上方の空間と連通している。
【0045】
さらに、図8及び図9に示すように、回路基板11のうち、左前部には、凹部50の左後端部に対応する位置に、ポッティング材流入口51が回路基板11を上下方向に貫通して形成されている。このポッティング材流入口51は、凹部50に対応する位置のうち、右前端部に形成された空気排出口52から最も離れた箇所に設けられている。このポッティング材流入口51の大きさは、凹部内にポッティング材61を流し込むための注入ノズル60の先端が入る大きさに設定されている。
【0046】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。まず、図10及び図11に示すように、ポッティング材流入口51に注入ノズル60の先端を差し込んで、液状のポッティング材61を、圧力をかけながら、凹部50内に直接流し込む。これにより、凹部50内に確実にポッティング材61を充填することができる。
【0047】
その後、ポッティング材61は、凹部50内の空気を、ポッティング材流入口51から離れた位置へと押しやりながら凹部50内に充填される。押しやられた空気は、回路基板11の上方の空間と連通している空気排出口52から、凹部50外へ逃げることができる。この空気排出口52はポッティング材流入口51から最も離れた位置に形成されているので、ポッティング材61に押された空気は、凹部50内に残留することなく、空気排出口52から逃げることができる。これにより、凹部50内に空気だまりが形成されるのを防止できる。
【0048】
凹部50内にポッティング材61が充填されて、空気排出口52からポッティング材61が溢れはじめたら、注入ノズル60をポッティング材流入口51から抜き取る。その後、収容空間23内に、注入ノズル60を用いて、回路基板11の上方からポッティング材61を流し込む。これにより、収容空間23内にポッティング材61が充填されて、回路基板11をポッティング材61に埋没させることができる。このように本実施形態によれば、注入ノズル60を用いて、凹部50内及び収容空間23内をポッティング材61で充填することができるから、ポッティング材61の充填作業を効率よく行うことができる。
【0049】
回路基板11がポッティング材61に埋没した後、ポッティング材61を固化させることにより、回路基板11、バスバー13、放熱板22、及び端子33の防水性及び絶縁性を確保する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、凹部50内に空気だまりが形成されるのを防止することができる。この結果、凹部50内に形成された隙間に水が進入することが防止されるので防水性が向上する。また、進入した水によるショートが防止されるので絶縁性が向上する。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)実施形態1では、回路基板11をやや幅狭に形成することによりポッティング材流入口51を形成したが、これに限られず、回路基板11に上下方向に貫通する挿通孔を形成することによりポッティング材流入口51を形成してもよい。
【0052】
(2)実施形態1では、筒部54は、リフロー半田付けにより回路基板11から立ち上がるように形成したが、これに限られず、回路基板11に筒部54を接着剤により接着してもよい。
【0053】
(3)実施形態1では、筒部54は銅製としたが、これに限られず、アルミ製、ステンレス製など銅以外の金属材料により形成してもよい。また、エポキシ樹脂などの合成樹脂により形成してもよい。
【0054】
(4)実施形態1では、凹部50内には端子33が収容される構成としたが、これに限られず、回路基板11の下面に配された電子素子が収容される構成としてもよい。
【0055】
(5)実施形態1では、ポッティング材流入口51と、空気排出口52及び筒部54とを備えた構成としたが、これに限られず、例えば回路基板11と放熱板22との隙間が十分に大きければ、ポッティング材に押しやられた空気がこの隙間から逃げることができるので、空気排出口52及び筒部54を省略できる。また、例えばポッティング材流入口51を十分に大きく形成すれば、このポッティング材流入口51から、ポッティング材が凹部50内に流入すると同時に、空気が凹部50から逃げることができるので、この場合も空気排出口52及び筒部54を省略できる。
【0056】
(6)実施形態1では、ポッティング材流入口51と、空気排出口52及び筒部54とを備えた構成としたが、これに限られず、例えば、回路基板11と放熱板22との隙間が十分に大きければ、この隙間から、凹部50を充填するのに十分な量のポッティング材が凹部50内に流入することができるので、ポッティング材流入口51を省略できる。また、例えばポッティング材の粘度を低くすることにより、回路基板11と放熱板22との隙間からでも、凹部50を充填するのに十分な量のポッティング材が凹部50内に流入することができる場合にも、ポッティング材流入口51を省略できる。
【0057】
(7)本実施形態では、空気排出口52は、凹部50のうち、ポッティング材流入口51から最も離れた位置に形成されたが、これに限られず、空気排出口52及びポッティング材流入口51はそれぞれ、凹部50に対応する位置に形成されて、凹部50と回路基板11の上方の空間とを連通可能な位置に形成されていればよい。
【0058】
(8)実施形態1では、筒部54は、横断面が円形の円筒状としたが、これに限られず、横断面が三角形、四角形などの多角形でもよく、また、長円形や楕円形でもよい。
【0059】
(9)本実施形態では筐体20が枠体21と放熱板22との2部品で構成されているが、これに限られず、筐体20が枠体21と放熱板22とを一体化させたワンピース部品であってもよい。
【0060】
(10)実施形態2では、ポッティング材流入口51と、空気排出口52とを備えた構成としたが、これに限られず、例えば、回路基板11と放熱板22との隙間が十分に大きければ、この隙間から、凹部50を充填するのに十分な量のポッティング材が凹部50内に流入することができるので、ポッティング材流入口51を省略できる。また、例えばポッティング材の粘度を低くすることにより、回路基板11と放熱板22との隙間からでも、凹部50を充填するのに十分な量のポッティング材が凹部50内に流入することができる場合にも、ポッティング材流入口51を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態1に係る電気接続箱の斜視図
【図2】電気接続箱の分解斜視図
【図3】電気接続箱のカバーを外した状態の平面図
【図4】図3におけるA−A線断面図
【図5】回路構成体の斜視図
【図6】電気接続箱のカバーを外した状態の斜視図
【図7】電気接続箱の縦断面図
【図8】本発明の実施形態2に係る電気接続箱のカバーを外した状態の平面図
【図9】図8におけるB−B線断面図
【図10】電気接続箱のカバーを外して、注入ノズルをポッティング材流入口に入れた状態を示す斜視図
【図11】凹部内にポッティング材が注入された状態を示すB−B線断面図
【符号の説明】
【0062】
11…回路基板
20…筐体
40…電気接続箱
50…凹部
51…ポッティング材流入口
52…空気排出口
54…筒部
60…注入ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の一部が部分的に陥没する凹部を有する容器状の筐体内に、その底面に重なるように回路基板を収容し、前記筐体内に前記回路基板を埋没させるようにポッティング材が充填されているものにおいて、
前記回路基板のうち前記凹部に対応する位置に、前記凹部内と前記回路基板の上方の空間とを連通させるポッティング材流入口を形成したことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
底面の一部が部分的に陥没する凹部を有する容器状の筐体内に、その底面に重なるように回路基板を収容し、前記筐体内に前記回路基板を埋没させるようにポッティング材が充填されているものにおいて、
前記回路基板のうち前記凹部に対応する位置に、前記凹部内と前記回路基板の上方の空間とを連通させる空気排出口を形成したことを特徴とする電気接続箱。
【請求項3】
前記空気排出口には前記筐体内に充填された前記ポッティング材の上面よりも高い位置で開口する筒部が連通して設けられていることを特徴とする請求項2記載の電気接続箱。
【請求項4】
請求項1記載の電気接続箱において、さらに、前記回路基板のうち前記凹部に対応する位置に、前記凹部内と前記回路基板の上方の空間とを連通させる空気排出口を形成したことを特徴とする電気接続箱。
【請求項5】
前記空気排出口には前記筐体内に充填された前記ポッティング材の上面よりも高い位置で開口する筒部が連通して設けられていることを特徴とする請求項4記載の電気接続箱。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の電気接続箱において、前記空気排出口は、前記凹部に対応する位置のうち、前記ポッティング材流入口から最も離れた箇所に設けられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項7】
請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の電気接続箱の製造方法であって、
前記ポッティング材流入口に前記ポッティング材の注入ノズルを入れて、前記凹部内に前記ポッティング材を充填することを特徴とする電気接続箱の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の電気接続箱の製造方法において、
前記凹部内に前記ポッティング材が充填された後、前記注入ノズルを前記ポッティング材流入口から抜き取り、前記注入ノズルを用いて前記回路基板の上方から前記ポッティング材を前記筐体内に流し込んで、前記回路基板を前記ポッティング材で埋没させるようにすることを特徴とする電気接続箱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−14576(P2006−14576A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374268(P2004−374268)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】