説明

電気接続箱及びその製造方法

【課題】 本発明は、放熱性が低下することを防止しつつ、ハウジングの密閉性の低下も抑えることができる電気接続箱及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 枠体21には、枠体21の四隅部に、回路構成体10の板面に垂直な方向に突出する保持突起22が形成されている。枠体21に組み付けられる回路構成体10には、保持突起22と対応する位置に、保持突起22が挿入可能な挿通孔15が形成されている。挿通孔15に保持突起22が挿入されて、挿通孔15の内周壁と保持突起22の外側壁とが当接することにより、回路構成体10は、枠体21に対して、回路構成体10の板面に垂直な方向に変位可能に保持される。これにより、回路構成体10を、板面に垂直な方向に変位させて、放熱板30と、回路構成体10の下面及び枠体21の下面の双方とを密着させることができるので、電気接続箱80の放熱性の低下を防止しつつ、密閉性の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した回路基板を収容してなる電気接続箱及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電気接続箱が自動車等に装備されており、その一例として、特許文献1に開示されたものが知られている。このものは、底面を開放したハウジング内に、その開放面を閉じるように回路基板を収容して、周知の係止機構によってハウジングに固定し、さらに、その回路基板の底面に、それより一周り大きな放熱板を接着した構造である。放熱板のうち回路基板の外周から突出する部分はハウジングの底部外周縁に密着し、これによりハウジングの開放底面が放熱板によって密閉されている。
【特許文献1】特開2003−164039公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、上記の電気接続箱を製造するには、回路基板をハウジング内に収容した後、ハウジングに固定し、その後、回路基板の下面に絶縁性の接着剤を塗布して、放熱板を下方から重ねて密着させるようにしていた。
【0004】
ところが、放熱板は、回路基板の下面とハウジングの底部外周縁との双方にわたって密着する必要があるところ、回路基板をハウジングに予め固定する際に、組み付け誤差が発生することがあるため、必ずしも双方にわたって密着できないという問題があった。例えば、回路基板がハウジングの底部外周縁から後退した状態で組み付けられていると、放熱板がハウジングの底部外周縁に密着した状態では回路基板との間に隙間が生じてしまう。このようになると、回路基板から放熱板への伝熱が円滑に行われず、放熱性が低下する。逆に、回路基板がハウジングの底部外周縁から少しでも突出した状態になっていると、放熱板は回路基板に密着できても、ハウジングの底部外周縁に密着できないため、ハウジングの密閉性に問題を生ずる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放熱性が低下することを防止しつつ、ハウジングの密閉性の低下も抑えることができる電気接続箱及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る電気接続箱は、開口面を有するハウジングと、このハウジングの前記開口面を閉じるように収容された回路基板と、この回路基板を前記ハウジングに対し、板面に沿った方向への変位を阻止しつつ、その板面と垂直な方向への変位は許容する状態で保持する仮保持手段と、前記回路基板の外周側に突出する周縁部を有し、前記仮保持手段によって前記回路基板が保持されている状態で前記回路基板に圧着されることで前記回路基板に接着され、かつ、前記周縁部が前記ハウジングの開口縁部に密着された放熱板とを備えてなる構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記回路基板は、電子部品を表面実装したプリント配線板の裏面に複数本のバスバーを接着してなる回路構成体であり、前記バスバー側に前記放熱板が接着されることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、前記ハウジングは、枠体と、この枠体の一方の面を閉じるカバーとからなることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3記載のものにおいて、前記仮保持手段は、前記枠体に形成した保持突起と、前記バスバーに形成されて前記保持突起が挿通する挿通孔とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のものにおいて、前記仮保持手段は、前記回路基板の四隅部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2ないし5のいずれかに記載のものにおいて、前記バスバー群のうちの所定のものは先端部が前記回路基板の板面に沿うように曲げ加工されており、その先端部がコネクタの雄端子を構成することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、開口面を有するハウジングと、このハウジングの開口面を閉じるように収容された回路基板と、この回路基板に接着され外周縁部が前記ハウジングの開口周縁部に密着する放熱板とを備えてなる電気接続箱の製造方法であって、前記ハウジングに、前記回路基板を板面に沿った方向への変位を阻止しつつ、その板面と垂直な方向への変位は許容する状態で保持する仮保持手段を設け、この仮保持手段によって前記回路基板を保持した状態で前記ハウジングおよび前記回路基板を接着剤を介して前記放熱板に重ねて押圧することにより前記回路基板を前記放熱板に接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1、7の発明>
請求項1、7の発明によれば、仮保持手段により、回路基板は、その板面と垂直な方向への変位が許容された状態でハウジングに保持される。そしてこの状態で、回路基板と、ハウジングの開口面の開口縁部との双方が放熱板と密着可能な位置にまで、回路基板を、その板面と垂直な方向に変位させることができる。これにより、回路基板と放熱板とを押圧して接着すると共に、ハウジングの開口面の開口縁部と放熱板とを密着させることができる。このように回路基板と放熱板とを接着することにより、回路基板から発生した熱が、回路基板から放熱板へ速やかに伝達されて放熱板から外部へ放散されるから、電気接続箱の放熱性の低下を防止できる。また、ハウジングの開口面の開口縁部と、放熱板とが密着しているので、ハウジングの密閉性の低下を抑えることができる。
【0014】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、プリント配線板に接着されたバスバーを、例えば電力回路として利用できるので、電気接続箱の配線密度を上げることができる。
【0015】
また、放熱板がバスバー側に接着されていることにより、バスバーから発せられる熱を放熱板により放散させることができるから、電気接続箱の放熱性が向上する。
【0016】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、ハウジングが、枠体とカバーという別体の部品から構成されることにより、ハウジングが一つの部品から形成される場合に比べて、枠体の寸法精度を向上させることができる。これにより、枠体と放熱板との密着性を向上させることができるので、ハウジングの密閉性を向上させることができる。
【0017】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、仮保持手段は、枠体に形成された保持突起と、バスバー群のいずれかに形成された挿通孔という簡易な構造により形成されているので、電気接続箱の小型化を図ることができる。
【0018】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、回路基板の四隅部に仮保持手段が形成されているので、回路基板の四隅部が回路基板の板面に対してめくり上がるように撓み変形することが阻止される。これにより、放熱板と回路基板との密着性の低下を防止できるので、電気接続箱の放熱性の低下を防止できる。
【0019】
<請求項6の発明>
請求項6の発明によれば、バスバー群の一部をコネクタの雄端子として使用できるので、コネクタの雄端子を別途形成する場合に比べて、部品点数を削減することができる。これにより、電気接続箱を小型化できる。
【0020】
また、請求項6の発明によれば、コネクタと、相手方コネクタとの嵌合方向は、回路基板の板面に沿う方向となっている。これにより、コネクタを抜き差しする際に、回路基板と放熱板との接着面に対して、回路基板の板面に垂直な方向に力が加わらないので、回路基板と放熱板との密着性が低下することを防止できる。これにより、電気接続箱の放熱性の低下を防止できる。
【0021】
一方、請求項6の発明によれば、コネクタを抜き差しする際に、回路基板の板面に沿う方向の力が回路基板に加えられることになる。しかし、回路基板とハウジングとは仮保持手段により、板面に沿った方向への変位が規制されているので、回路基板と放熱板との接着面に対しては、板面に沿う方向の力が作用しない。このため、回路基板と放熱板との密着性が低下することを防止できる。これにより、電気接続箱の放熱性の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図8を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の電気接続箱80は、扁平形状のハウジング20内に回路構成体10(請求項1の回路基板に相当する)を収容してなる。
【0023】
ハウジング20は合成樹脂製であり、上下を開放した枠体21と、枠体21を上方から覆うカバー25とを結合させてなる。枠体21は長方形の一つの角を落としたような形状をなしており、全周にわたって切れ目無く連続して回路構成体10を包囲するようになっている。この枠体21の側壁の外側面には、後述するロック片26に係止するためのロック突部23が設けられている。一方、カバー25の側壁には、ロック突部23と対応する位置に、撓み変形可能なロック片26が設けられている。このカバー25の上壁には、図2における右奥側の両端部寄りの位置にカバー取付孔27が形成されている。カバー25と枠体21とは、ロック片26がロック突部23に弾性的に係止されると共に、カバー取付孔27に挿入された図示しないビスが枠体21にわたってねじ込まれることにより結合されている。なお、枠体21の下端縁部は、請求項1における、ハウジング20の開口縁部に相当する。
【0024】
枠体21の内側には回路構成体10が収容されている。この回路構成体10は、枠体21の内周と略同じ形状をなすプリント配線板11の一方の面にプリント配線手段によって制御回路を形成すると共に、ここに電装品13を実装して構成され、その部品実装面とは反対側の面に複数本のバスバー12を制御回路と電気的に接続した状態で沿わせてある。なお、バスバー12群は、絶縁性を有する薄い接着シート(図示せず)を介してプリント配線板11と一体的に貼り付けられている。回路構成体10のうち、図2における左手前側には、スルーホール14が形成されており、後述するPCBコネクタ40の端子金具(図示せず)が挿入されている。
【0025】
バスバー12群は、金属板を打ち抜いて形成され、電力回路となる所定の導電路を形成している。これらのバスバー12群は、回路構成体10のうち、図2における右奥側の端縁から、並んで突出するようになっている。バスバー12群のうち、図2において最も左奥側に配された1本を除いて、ほぼ左側の領域にわたって配されたものは、回路構成体10の部品実装面側において二度直角曲げされることで、先端が図2の右手奥側に向けて突出しており、かつ、先端にスリット16が形成されて、図示しないヒューズが挿入可能となっている。また、残りのバスバー12は、さらに二度直角曲げされることで、先端が図2における左手前側に向けて突出している。
【0026】
図1に示すように、回路構成体10の左手前側には、PCBコネクタ40が取り付けられている。このPCBコネクタ40は、横長形状で、図1における左手前側に開口した合成樹脂製のコネクタハウジング42を備えている。このコネクタハウジング42には、L形に曲げ形成された端子金具(図示せず)が、一端を開口内に突出させ、他端を奥壁を貫通して下向きに突出させた姿勢で、並んで装着されている。各端子金具の下向きの突出端は、回路構成体10に開口されたスルーホール14に上方から挿入されて、制御回路と半田付けされている。
【0027】
図1に示すように、回路構成体10の右奥側には、ヒューズボックス50が取り付けられている。このヒューズボックス50は合成樹脂製であって、横長形状に形成されている。ヒューズボックス50の長さ方向の両端部には、図1における左手前側に開口したコネクタ部51が設けられると共に、その間の一側にヒューズ装着部52が、他側に端子収容部53がそれぞれ設けられている。
【0028】
ヒューズ装着部52には、図示しないヒューズが装着される複数の装着孔(図示せず)が、図2における右奥側に開口して設けられ、各装着孔では、その下部側に、図2における右奥側に突出して形成されるバスバー12が圧入により装着されると共に、上部側には、このバスバー12と対をなすタブ状の接続片54の一端が同じく圧入により装着され、接続片54の他端は、図2における左手前側に突出するようになっている。一方、コネクタ部51と、端子収容部53とには、図2における左手前側に突出して形成されるバスバー12が収容されている。
【0029】
ヒューズボックス50のうち、ヒューズ装着部52と端子収容部53とにわたる領域の、図2における左手前側には、中継コネクタ55(請求項6におけるコネクタに相当する)が結合されている。この中継コネクタ55には、ヒューズ装着部52及び端子収容部53から、図2における左手前側に突出した接続片54及びバスバー12が、中継コネクタ55の、図2における左手前側に開口した嵌合部56内に突出するようになっている。なお、これら接続端子85及びバスバー12は、請求項6における雄端子に相当する。
【0030】
回路構成体10及び枠体21の下方には、放熱板30が取り付けられている。この放熱板30は、電装品13から発生する熱を放熱するためのものであって、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属板により、枠体21の外形とほぼ同じ形状に形成されている。放熱板30のうち、図2における左手前側には、PCBコネクタ40に装着された端子金具のうち、回路構成体10の下面側に突出した端部との干渉を避けるために、逃がし凹部31が形成されている。放熱板30の周縁部には、図6に示すようにねじ33(例えばタッピンねじ)を挿入するための放熱板取付孔32が形成されている。枠体21と放熱板30とは、放熱板30の周縁部が枠体21の下面に接着されると共に、ねじ33をねじ込むことで固定されている。一方、放熱板30の上面には、回路構成板のバスバー12が、絶縁性の接着剤によって貼着されている。
【0031】
放熱板30と、放熱板30の外周に沿って立ち上がる形態の枠体21とにより形成された空間内には、防水手段としてポッティング剤(図示せず)が充填されており、回路構成体10の表面がポッティング剤で被覆されることによって防水性が確保されている。
【0032】
さて、図2及び図5に示すように、枠体21の四隅部には、回路構成体10を載置するための複数の支持部24(本実施形態では4つ)が形成されている。この支持部24の上端には、上方に向けて突出する、略円柱状の保持突起22(請求項1の仮保持手段に相当)が形成されている。保持突起22の高さ寸法Hは、バスバー12の厚さ寸法Tよりも大きく形成されている(図6参照)。
【0033】
そして、回路構成体10に取り付けられたバスバー12群のうち、図5における左右両端側に位置するものは、図5における下側の端部がプリント配線板11から僅かに延出されて、部品実装面側において二度直角曲げされることで、先端が図5の下方に向けて突出するようになっている。
【0034】
バスバー12群のうち、図5における左右両端側に位置するものには、枠体21に形成された保持突起22に対応する位置に、バスバー12を上下方向に貫通する挿通孔15(請求項1の仮保持手段に相当)が形成されている(図3参照)。図6に示すように、挿通孔15の直径D1は、保持突起22の外径D2よりも、公差の分だけやや大きく形成されている。この公差には、プリント配線板11の製造上の寸法公差、枠体21の製造上の寸法公差、カバー25の製造上の寸法公差、回路構成体10と枠体21との組付上の公差などを含む。挿通孔15にはそれぞれ、下方から保持突起22が挿入されている(図3ないし図6参照)。
【0035】
なお、支持部24の高さ寸法は、挿通孔15に保持突起22が挿入された状態で、バスバー12の下面が支持部24の上面に上方から当接した場合には、回路構成体10が枠体21の下面から突出する状態になるような設定になっている。
【0036】
続いて、回路構成体10と、枠体21と、放熱板30との組付手順の一例を説明する。
図7に示すように、回路構成体10にPCBコネクタ40が取り付けられたものを、枠体21の上方から組み付けると、図8に示すように、バスバー12に形成された挿通孔15のそれぞれに対し、下方から、枠体21に形成された保持突起22が挿入される。すると、回路構成体10が枠体21に対して、回路構成体10の板面に沿った方向に変位しようとした場合に、挿通孔15の内周壁と、保持突起22の外側壁とが当接する。これにより回路構成体10と枠体21とは、回路構成体10の板面に沿った方向への変位を規制された状態で保持される。
【0037】
上述の保持突起22の高さ寸法Hは、バスバー12の厚さ寸法Tよりも大きく形成されているから、保持突起22の高さ寸法Hの範囲内において、挿通孔15の内周壁が保持突起22の外側壁に案内されることにより、回路構成体10は、枠体21に対して、回路構成体10の板面に垂直な方向(上方又は下方)に対して自由に変位可能になっている。
【0038】
その後、放熱板30の上面の全面に絶縁性の接着剤を塗布し、図8に示すように、回路構成体10及び枠体21を放熱板30の上方から組み付ける。このとき、回路構成体10が枠体21に対して上方に位置する状態にある場合には、放熱板30の外周部を下方から枠体21の下面に密着させた後、回路構成体10を上方から押圧して下方へ変位させて、放熱板30と、回路構成体10の下面及び枠体21の下面の双方とを密着させることができる。
【0039】
一方、回路構成体10が枠体21に対して下方に位置する状態にある場合には、放熱板30を下方から、回路構成体10の下面に密着させた後、放熱板30と回路構成体10とを上方に変位させて、放熱板30外周部を枠体21の下面と密着させる。これにより、放熱板30と、回路構成体10の下面及び枠体21の下面の双方とを密着させることができる。
【0040】
上記のようにして、放熱板30と、回路構成体10の下面及び枠体21の下面の双方とを密着させた状態で、枠体21および回路構成体10を放熱板30に押圧して、接着する。さらに、放熱板取付孔32にねじ33(例えばタッピンねじ)を挿入し、枠体21にねじ込むことにより、放熱板30と枠体21とを固定する。このようにして、放熱板30と、回路構成体10とを接着すると共に、放熱板30と枠体21とを密着させる。
【0041】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。本実施形態によれば、放熱板30と回路構成体10の下面とを接着すると共に、放熱板30と枠体21とを密着させることができる。これにより、回路構成体10から発生した熱は、回路構成体10から放熱板30へ速やかに伝達され、放熱板30から外部へ放散されるから、電気接続箱80の放熱性の低下を防止できる。また、ハウジング20の開口面の開口縁部に相当する枠体21と放熱板30とが密着しているので、ハウジング20の密閉性の低下を抑えることができる。
【0042】
そして、本実施形態によれば、挿通孔15の直径D1は、保持突起22の外径D2よりも、公差の分だけやや大きく形成されている。このため、回路構成体10、枠体21、及び放熱板30の寸法上の誤差、又は組付上の誤差が公差内である場合には、保持突起22を挿通孔15内に挿入すると共に、回路構成体10を枠体21に対して、回路構成体10の板面に沿った方向に、公差の範囲内で変位させることにより、放熱板30を回路構成体10の下面と枠体21の下面との双方に密着させることができる。これにより、電気接続箱80の放熱性の低下を防止すると共に、ハウジング20の密閉性の低下を抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、回路構成体10の隅部が、回路構成体10の板面に対してめくり上がるように撓み変形しようとしても、挿通孔15の内周壁が保持突起22の外側壁と当接することにより、回路構成体10の隅部の変形を防止できる。これにより、放熱板30と回路構成体10の密着性の低下を防止できるので、電気接続箱80の放熱性の低下を防止できる。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、中継コネクタ55には、図示しない相手方コネクタが、図1における左手前側から嵌合される。すると、中継コネクタ55に対しては、図1における右奥側に向かって力が加わる。この力は、バスバー12を介して回路構成体10に伝達されるので、回路構成体10にも、図1の右奥側に向かう力が加わる。この力により回路構成体10が図1の右奥側に変位しようとすると、回路構成体10のバスバー12に形成された挿通孔15の内周壁が、枠体21に形成された保持突起22の外側壁に対して図1の左手前側から当接する。これにより、回路構成体10がそれ以上、図1の右奥側後方へ変位することを防止できると共に、回路構成体10に加わった力は、保持突起22から枠体21、カバー25、放熱板30などへと伝わって緩和される。この結果、回路構成体10と放熱板30との接着面に対して、中継コネクタ55と相手方コネクタ(図示せず)とが嵌合する際に発生する図1の右奥側への力が作用することを防止できるので、回路構成体10と放熱板30との接着面に対して、回路構成体10と放熱板30とを剥離させる方向の力が作用することを防止できる。また、中継コネクタ55と相手方コネクタ(図示せず)との抜き差しは、回路構成体10の板面に沿った方向でなされるので、回路構成体10には、その板面に垂直な方向の力が加わることを防止できる。これにより、回路構成体10と放熱板30との接着面に対して、回路構成体10と放熱板30とを剥離させる方向の力が作用することを防止できる。このように本実施形態によれば、回路構成体10と放熱板30との密着性が保持される結果、電気接続箱80の放熱性の低下を防止できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、放熱板30は、バスバー12と接着されているので、バスバー12から発せられる熱は、放熱板30により速やかに放散される。これにより電気接続箱80の放熱性が向上する。
【0046】
また、本実施形態によれば、ハウジング20が、枠体21とカバー25とに別体に構成されることにより、枠体21の寸法精度を向上させることができる結果、枠体21の下面の寸法精度を向上させることができるので、放熱板30と枠体21の下面との密着性を向上させることができる。これにより、ハウジング20の密閉性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、枠体21に形成された保持突起22と、バスバー12に形成された挿通孔15という簡易な構造により回路構成体10が枠体21に保持されているので、電気接続箱80の小型化を図ることができる。
【0048】
そして、本実施形態によれば、バスバー12の一部を中継コネクタ55の雄端子として使用できるので、中継コネクタ55の雄端子を別途形成する場合に比べて、部品点数を削減することができる。これにより電気接続箱80を小型化できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、バスバー12を、電力回路として利用しているので、電気接続箱80の配線密度を上げることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0051】
(1)本実施形態によれば、保持突起22は枠体21から突出した円柱状をなしていたが、これに限られず、保持突起22を挿通孔15に挿入した後に保持突起22の先端部をプレス加工などにより潰すことにより、保持突起22の先端部に挿通孔15の直径D1よりも大きな外径の拡径部を形成してもよい。これにより、枠体21の上方から回路構成体10を組み付けたものを上下に反転させた場合でも、挿通孔15の周縁部が保持突起22の拡径部に係止するため、回路構成体10が落下することを防止できる。これにより、枠体21と回路構成体10とを組み合わせた後、これを上下に反転した状態で作業を行うことが可能となるので、作業工程の自由度が向上する結果、電気接続箱80の組み立て作業の効率が向上する。また、保持突起22の先端部に、挿通孔15の直径D1よりも大きな寸法の治具を取り付けることによっても、上記と同様の効果を奏することができる。
【0052】
(2)本実施形態によれば、プリント配線板11の裏面に複数本のバスバー12を接着シート(図示せず)を介して接着する形態としてが、これに限られず、プリント配線板11の裏面にプリント配線手段により回路パターンを形成し、この回路パターンと放熱板30とを絶縁層を介して接着するものとしてもよい。また、プリント配線板11の裏面にプリント配線手段により回路パターンを形成し、この回路パターンとバスバー12とを絶縁層を介して接着するものとしてもよい。これにより、電気接続箱80の配線密度が向上する。
【0053】
(3)本実施形態によれば、ハウジング20は、プリント配線板11の外周側に位置する上下を開放した枠体21と、この枠体21の一方を閉じるカバー25とからなるものとしたが、これに限られず、放熱板30とのハウジング20との密着性を確保できる場合には、1つの部材により形成されたハウジング20を用いるものとしてもよい。これにより、部品点数を削減することができる。
【0054】
(4)本実施形態によれば、仮保持手段は、枠体21に形成した保持突起22と、バスバー12に形成された挿通孔15とから構成されるものとしたが、これに限られず、仮保持手段は、枠体21に形成された係止爪により、回路構成体10と枠体21とを、回路構成体10の板面に垂直な方向には変位可能とし、回路構成体10の板面に平行な方向には所定量以上の変位が規制される構成としてもよい。また、回路構成体10と枠体21とを一括して把持するクランプにより、回路構成体10と枠体21とを回路構成体10の板面に垂直な方向には変位可能とし、回路構成体10の板面に平行な方向には所定量以上の変位が規制される構成としてもよい。
【0055】
(5)本実施形態によれば、仮保持手段は、回路構成体10の四隅部に設けられていたが、これに限られず、回路構成体10の隅部がめくり上がるように変形することを防止可能ならば、回路構成体10の外周部に沿って、2箇所、又は3箇所に仮保持手段を設けてもよい。また、回路構成体10の外周部に沿って5箇所以上設けてもよい。
【0056】
(6)本実施形態によれば、バスバー12のうち所定のものは、図2における右奥側の端部がプリント配線板11の板面に沿うように曲げ加工されて、その先端部が中継コネクタ55の雄端子を形成するものとしたが、これに限られず、中継コネクタ55に相手側コネクタ(図示せず)が抜き差しされた場合でも、回路構成体10と放熱板30との接着面に対して、回路構成体10の板面に垂直な方向に力がかかることを防止可能になっている場合には、バスバー12のうち所定のものの先端部を回路構成体10の板面から立ち上がるように曲げ加工して、その先端部を中継コネクタ55の雄端子としてもよい。
【0057】
(7)本実施形態によれば、仮保持手段は、枠体21に形成した保持突起22と、バスバー12に形成した挿通孔15とからなるものとしたが、これに限られず、例えばプレス加工などによりバスバー12に保持突起を形成し、枠体21の側に、保持突起を挿通可能な挿通孔を形成するものとしてもよいし、また、保持突起を係止可能な凹部を形成するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の斜視図
【図2】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の分解斜視図
【図3】枠体に形成した保持突起と、回路構成体に形成した挿通孔との対応状態を示す斜視図
【図4】枠体に回路構成体を組み付けた状態を示す斜視図
【図5】枠体に回路構成体を組み付けた状態を示す平面図
【図6】図5のA−A線断面図
【図7】枠体に回路構成体を組み付ける状態を示す斜視図
【図8】回路構成体に枠体を組み付けたものを放熱板に組み付ける状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0059】
10…回路構成体(回路基板)
11…プリント配線板
12…バスバー
15…挿通孔(仮保持手段)
20…ハウジング
21…枠体
22…保持突起(仮保持手段)
25…カバー
30…放熱板
55…中継コネクタ(コネクタ)
80…電気接続箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口面を有するハウジングと、このハウジングの前記開口面を閉じるように収容された回路基板と、この回路基板を前記ハウジングに対し、板面に沿った方向への変位を阻止しつつ、その板面と垂直な方向への変位は許容する状態で保持する仮保持手段と、前記回路基板の外周側に突出する周縁部を有し、前記仮保持手段によって前記回路基板が保持されている状態で前記回路基板に圧着されることで前記回路基板に接着され、かつ、前記周縁部が前記ハウジングの開口縁部に密着された放熱板とを備えてなる電気接続箱。
【請求項2】
前記回路基板は、電子部品を表面実装したプリント配線板の裏面に複数本のバスバーを接着してなる回路構成体であり、前記バスバー側に前記放熱板が接着されることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ハウジングは、枠体と、この枠体の一方の面を閉じるカバーとからなることを特徴とする請求項1または2記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記仮保持手段は、前記枠体に形成した保持突起と、前記バスバーに形成されて前記保持突起が挿通する挿通孔とからなることを特徴とする請求項3記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記仮保持手段は、前記回路基板の四隅部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記バスバー群のうちの所定のものは先端部が前記回路基板の板面に沿うように曲げ加工されており、その先端部がコネクタの雄端子を構成することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電気接続箱。
【請求項7】
開口面を有するハウジングと、このハウジングの開口面を閉じるように収容された回路基板と、この回路基板に接着され外周縁部が前記ハウジングの開口周縁部に密着する放熱板とを備えてなる電気接続箱の製造方法であって、前記ハウジングに、前記回路基板を板面に沿った方向への変位を阻止しつつ、その板面と垂直な方向への変位は許容する状態で保持する仮保持手段を設け、この仮保持手段によって前記回路基板を保持した状態で前記ハウジングおよび前記回路基板を接着剤を介して前記放熱板に重ねて押圧することにより前記回路基板を前記放熱板に接着することを特徴とする電気接続箱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−54948(P2006−54948A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233581(P2004−233581)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】