説明

電気接続箱

【課題】 従来の電気接続箱は、固定金具等を用いてヒートパイプが取付けられていたので、ヒートパイプの取付け時、あるいは電気接続箱の組立て時にヒートパイプを傷つけぬよう細心の注意を払わなければならないという問題があった。また、軽薄短小化が図られた電気接続箱はスペース的に余裕がなく、固定金具を用いて複数のヒートパイプを確実に取付けることは困難であった。
【解決手段】 回路が形成されたプリント配線板あるいはバスバーを筐体内に収納した電気接続箱において、前記筐体内に、放熱部と集熱部とを備えたヒートパイプを形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は例えば自動車 家電製品あるいは輸送機関等に用いられる電気接続箱に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電気接続箱は 回路が形成されたプリント配線板あるいはバスバーを、樹脂製または金属製の筐体内に収納して電気接続箱を形成していた ところが近年、電子部品の集約化に伴い、前記電気接続箱にも多くの電子部品が搭載されるようになってきた。
【0003】例えば、自動車に用いられる電気接続箱においては、利便性向上のため多くの電子制御機能が要求される一方、居住性向上のため軽薄短小化が要求されており、このため高密度にLSIをプリント基板に実装するなどして搭載している。また、より居住性向上が要求される場合は、FET(フィールドエフェクトトランジスタ)を機械式のリレーの代替として用いたり、IPS(インテリジェントパワースイッチ)をヒューズや機械式のリレーの代替とし用いている他に、過電流遮断や過熱遮断等の機能を付加させる等して用いられている。
【0004】このような電気接続箱においては、電子部品が劣化しないように、電気接続箱内の温度が上昇しすぎないことが求められており、前記FETやIPS等の半導体は発熱が大きく、このような発熱の大きな電子部品が搭載されたプリント基板あるいはバスバーを筐体内に収納した電気接続箱は電気接続箱内の温度が上昇しすぎない工夫が必要である。特に、自動車のエンジンルーム等、雰囲気温度の高い個所に設置される電気接続箱に対しては、電気接続箱内の温度が上昇しすぎない工夫が必要である。
【0005】そこで従来の電気接続箱12は、例えば図7R>7および図8に示すように、取付け部14が形成された筐体13内にIPS7がネジ8により取付けられ、このIPS7近傍に集熱部を配置すると共に前記取付け部14に放熱部を配置してヒートパイプ15を筐体の外側に、ネジ18、ネジ19と固定金具16、固定金具17とを用いて固定して設け、IPS7の発熱を前記ヒートパイプ15を介して電気接続箱12より放熱し、電気接続箱12の温度が上昇しすぎないようにしていた。尚、この電気接続箱12においては、IPS7の発熱をより効率よく放熱するため、ヒートパイプ15の集熱部はIPS7近傍に配置して設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが従来の電気接続箱12は、取付け時にヒートパイプ15を固定金具16あるいは17で傷つけたり、電気接続箱12の組立て時にヒートパイプ15を潰したりして破損させることがあり、ヒートパイプ15を筐体13に取付ける際、あるいは電気接続箱12を組立てる際は、ヒートパイプ15を破損しないように細心の注意を払わなければならないという問題があった。
【0007】また、ヒートパイプ15の集熱部は、発熱部近傍に配置することが好ましく、また、傷つかぬように筐体13内に収納する方が好ましいが、前述のように居住性向上のため軽薄短小化が図られた電気接続箱12の筐体13内はスペース的に余裕がなく、その場合、ヒートパイプ15の集熱部を発熱部近傍に配置して筐体13内に収納することができないとことがあるという問題もあった。
【0008】さらに、電気接続箱12には前述のように居住性向上が求められ、それに伴い軽薄短小化が図られた電気接続箱12の筐体13に、固定金具17を用いて複数のヒートパイプ15を確実に筐体13に取付けることは困難なことが多く、その場合、例えば多数の電子部品が搭載され多くの熱が発生する電気接続箱においては、ヒートパイプ15の数が足りず、電気接続箱12の温度が所望の値まで下げることができないという問題があった。
【0009】特に、図5に示されるような、筐体13に取付け部14を備えこの取付け部14を利用してヒートパイプ15が設けられる電気接続箱12においては、前記取付け部14の幅は筐体の高さよりも小さく設けられることが多いため、複数のヒートパイプ15を設けてより多くの熱を電気接続箱12から放熱することができないという問題があった。
【0010】本発明の目的は、以上のような問題に鑑み、傷つけることなくヒートパイプを筐体に確実に設けることができる電気接続箱を提供することにある。更には、筐体が軽薄短小化しても複数のヒートパイプを設けることが可能な電気接続箱を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するための本発明にかかる電気接続箱は、回路が形成されたプリント配線板あるいはバスバーを筐体内に収納した電気接続箱において、前記筐体内に、放熱部と集熱部とを備えたヒートパイプを形成したことを特徴とするものである。
【0012】このように、電気接続箱の筐体をヒートパイプで構成すると、ヒートパイプを傷つけることなく筐体に設けることができ、更には、筐体が軽薄短小化しても複数のヒートパイプを簡単に設けることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1ないし図4は、本発明にかかる電気接続箱の一実施形態を示したものである。図1に示すように、1は電気接続箱で、プリント基板4を筐体2とカバー3とを用いて収納したものである。
【0014】筐体2は、銅合金あるいはアルミニウム合金よりなり、電気接続箱1を相手側の部材(例えば車体等)に取付けるための取付け部5が一体に形成され略L字状に設けられると共に、カバー3を取付けるためのカバー取付けリブ2aとプリント基板4を取付けるためのプリント基板取付けリブ2b(図2参照)が形成され、カバー取付けリブ2aにはカバー3が取付け固定される固定穴2cが設けられ、プリント基板取付けリブ2bにはプリント基板が取付け固定される図示しない固定穴が設けられている。
【0015】カバー3はポリブチレンテレフタレートやナイロンあるいはポリプロピレン等の合成樹脂で形成したものであるが、銅合金やアルミニウム合金あるいは鉄合金等の金属で形成してもよい。3aは筐体2に取付け固定される固定穴である。
【0016】プリント基板4は、回路が形成されており、ヒューズやリレー等の機能を集約したIPS7等の電子部品が半田付け等により電気的に接続される。このプリント基板4には図示しない固定穴が形成され、この固定穴を用いて筐体2に取付け固定される。
【0017】図3は、図1におけるA−A断面を示したものである。6は筐体2の側面内に複数本設けられた導管で、IPS7近傍を通って取付け部5近傍まで形成されている。図4はこの導管6の断面B部を拡大したものであるが、導管6には多数のウィック6aが形成され毛細管構造となっている。この導管6内は真空となるように設けられ、純水や代替フロンあるいはアルコール等の図示しない作動液が所望の熱を輸送できる量だけ封止されている。尚、導管6は、IPS7近傍に集熱部が、取付け部5に放熱部が配置されるように設けられている。
【0018】次に、導管6の形成方法を説明する。図1において、2dは筐体2の側面で、5aは取付け部5の側面で、2eは屈曲部である。筐体2と取付け部5とはこの屈曲部2eで一体に形成されている。屈曲部2eにおいて、取付け部5は筐体2の一部を加工して一体に形成しても、別部材を接合して一体に形成してもよい。そして、図における筐体2の底面側から上方に向けてIPS7取付け部近傍を通って屈曲部2eまで穴を開けて、側面2d内に導管を形成する。同様に、取付け部5面から斜め下方に向けて屈曲部2eまで穴を開けて、側面3a内に導管を形成して、この屈曲部2eで前記側面2d内の導管と貫通させて1本の導管を設ける。この際、導管は側面3a内に設けてから側面2d内に設けても、両者を同時に設けるようにしてもよい。
【0019】そして、一方の穴に蓋(銅合金あるいはアルミニウム合金よりなる)をして溶接等により封止した後、他方の穴から導管内を真空に引き、所容量の作動液を注入して、同様に封止する。これらの作業により、導管6を必要数設け IPS7近傍に集熱部が配置されると共に取付け部5に放熱部が配置されるようにヒートパイプが形成された筐体2が設けられる。
【0020】尚 図5の(a)と(b)は筐体2を構成する壁の断面を示したものであるが、導管としては 図5R>5に示すような横断面四角の穴、あるいは横断面円形の穴を開け、この穴の中に筐体2と同じ材質からなるワイヤ10を設け、穴の内周面とワイヤ10との間の隙間を利用して毛細管構造が形成された導管6´を用いてもよい。この構成により、前記穴にはウィックを形成しなくても、毛細管現象を得ることができる。
【0021】このように、取付け部材を用いることなしに筐体2がヒートパイプとして形成されるので、スペース的に有利であり、また、通常用いられる棒状のヒートパイプと比較して、強度が向上する。
【0022】尚、図3に示すように、筐体2に取付け穴を設けてネジを用いる等してIPS7等の部品を取付ける場合は、前記導管6および6´は、この取付け穴を避けて設けられる。
【0023】次に、本発明にかかる電気接続箱1の組立て方法を説明する。IPS7等の電子部品を、プリント基板4に半田付け等により電気的に接続した後、このプリント基板4を、プリント基板取付けリブ2bに配置して、図示しない固定穴を用いてネジ9により筐体2に固定する。そして、IPS7をネジ8を用いて筐体2に固定する。最後にカバー3を、固定穴3aと固定穴2aとを合わせてから、図示しないネジ等を用いてカバー取付けリブ2aに取付けて筐体2に設け、電気接続箱1が完成する。
【0024】尚、筐体2にヒートパイプを形成するにあたり、図6(a)に示すように平板11をプレスしてエンボス加工を施した板11´を、図6(b)に示すように、板11´の端部の一部と前記エンボス加工部とを筐体2にろう付けし、必要に応じて前記板11´の端部のろう付け部にかしめ加工を施した後、板11´のろう付けしなかった端部より真空引きして、純水や代替フロンあるいはアルコール等の図示しない作動液を所容量注入して、前記端部をろう付けして必要に応じてかしめ加工を施し封止して、筐体2にヒートパイプを形成するようにしてもよい。図6(c)の矢印は、筐体2に形成されたヒートパイプの作動液の流れを示したもので このように作動液が流れることにより筐体2内の熱は放熱される。
【0025】また、筐体2に直接ヒートパイプを形成することなしに、平板を設け、この平板と前記板11´とを用いて前述と同様にヒートパイプを設け、このヒートパイプを筐体2に取付けるようにしてもよい。この場合は筐体2に直接ヒートパイプを形成したものと比較して平板の厚み分が増えるだけなので、スペース的に問題となることは何もない。
【0026】また、内部に導管が形成され放熱部と集熱部とを備えた棒状のヒートパイプを必要数金型内にセットして、合成樹脂(ポリブチレンテレフタレートやナイロンあるいはポリプロピレン等)を流し込み、インサートモールドにより筐体にヒートパイプを設けてもよい。この場合は、取付け部材を用いることなしに筐体にヒートパイプが設けられるので、スペース的に有利であり、また、通常用いられる棒状のヒートパイプと比較して、強度が向上する。
【0027】さらに、導管は筐体の側面内に設けることに限定されることはなく、筐体の底面でも天面でもどこに設けてもよい。
【0028】尚、前記電気接続箱1はプリント基板4を収納して形成したが、これに限定されることはなく、薄板状の金属板(銅、黄銅、銅合金等よりなる)を打抜き回路を形成したバスバーを収納して、このバスバーに電子部品を接続して形成してもよい。
【0029】また、本発明にかかる電気接続箱は、筐体に取付け部を設けるものに限定されることはない。電子部品の発熱が効率よく電気接続箱外へ放熱できれば、電気接続箱の取付け部に放熱部を設けなくてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の電気接続箱によれば、回路が形成されたプリント配線板あるいはバスバーを筐体内に収納した電気接続箱において、前記筐体内に、放熱部と集熱部とを備えたヒートパイプを形成したので、ヒートパイプを傷つけることなく筐体に設けることができ、更には筐体が軽薄短小化しても複数のヒートパイプを簡単に設けることができる。
【0031】また、前記筐体に取付け部を設け、該取付け部に筐体内に形成したヒートパイプの放熱部を配置し、この取付け部を用いて電気接続箱を相手側の部材に取付ければ、電気接続箱の熱を相手側の部材を介して効率よく放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気接続箱の分解斜視図である。
【図2】本発明のカバーを取りはずした電気接続箱の側面図である。
【図3】本発明の電気接続箱の断面図である。
【図4】本発明の電気接続箱の筐体に形成された導管の拡大図である。
【図5】本発明の電気接続箱の筐体に形成された導管の説明図である。
【図6】本発明の電気接続箱の筐体に形成されたヒートパイプの説明図である。
【図7】従来の電気接続箱の斜視図である。
【図8】従来の電気接続箱の断面図である。
【符号の説明】
1……電気接続箱
2……筐体
2a…カバー取付けリブ
2b…プリント基板取付けリブ
2c…固定穴
3……カバー
3a…固定穴
4……プリント基板
5……取付け部
6……導管
6´…導管
7……IPS
8……ネジ
9……ネジ
10…ワイヤ
11…平板
11´…板
12…電気接続箱
13…筐体
14…取付け部
15…ヒートパイプ
16…固定金具
17…固定金具
18…ネジ
19…ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回路が形成されたプリント配線板あるいはバスバーを筐体内に収納した電気接続箱において、前記筐体内に、放熱部と集熱部とを備えたヒートパイプを形成したことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】 前記筐体に取付け部を設け、該取付け部に筐体内に形成したヒートパイプの放熱部を配置したことを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。

【図4】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−253538(P2000−253538A)
【公開日】平成12年9月14日(2000.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−56569
【出願日】平成11年3月4日(1999.3.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】