説明

電気接続箱

【課題】 電力回路部から発生した熱の影響が制御回路に及ぶことを防止可能な電気接続箱を提供する。
【解決手段】 電気接続箱には、回路構成体10がケーシング20内に収容されており、この回路構成体10は、バスバー群11A,11B,11Cが配索されて電力回路が構成される電力回路部18と、電力回路部18と離間した位置に配されるとともに、制御用素子41を備えて制御回路を構成する制御回路基板40とを備え、電力回路部18と制御回路基板40との間には、ケーシング20内を区画する仕切り壁29が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、バッテリー等からの電流を車両内の各部に分配するための電気接続箱が知られている。
【0003】
この種の電気接続箱内には、素子が実装されてなる基板が設けられており、この基板上の回路とバスバーとが電気的に接続されて、電力回路部が構成されるとともに、同じ基板上に電力回路部による電流の分配の制御等を行うための制御回路が構成されているものがある。
【特許文献1】特開2002−330524公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した電力回路は比較的大電流が流れるため素子(リレー等)から発熱する一方で、制御回路上の素子(IC等)は熱による影響を受けやすく、電力回路で発生する熱の影響が制御回路に及びやすい。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電力回路部から発生した熱の影響が制御回路に及ぶことを防止可能な電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回路構成体がケーシング内に収容されてなる電気接続箱であって、前記回路構成体は、バスバーが配索されて電力回路が構成される電力回路部と、前記電力回路部と離間した位置に配されるとともに、制御用素子を備えて制御回路を構成する制御回路基板とを備え、前記電力回路部と前記制御回路基板との間には、前記ケーシング内を区画する仕切り壁が形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ケーシングは、一面が開口する本体部と、この本体部を閉止する蓋部とからなり、当該蓋部に前記仕切り壁が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記本体部にも前記仕切り壁が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
本構成によれば、電力回路部と制御回路基板との間には、ケーシング内を区画する仕切り壁が形成されているから、電力回路部から制御回路基板に熱が伝わりにくくなる。
【0009】
<請求項2の発明>
本構成によれば、本体部の開口を蓋部で閉止するという簡単な操作でケーシング内を区画する仕切り壁を形成することができる。
【0010】
<請求項3の発明>
本構成によれば、蓋部だけでなく本体部にも仕切り壁が形成されているから、より一層、電力回路部からの熱が制御回路基板に伝わりにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3を参照しつつ説明する。
本実施形態の電気接続箱は、図1に示すように、回路構成体10がケーシング20に収納されており、車両(図示しない)に搭載され、車両の電源(バッテリー等)からの電流を車両内の各装置に分配するためのものである。
【0012】
回路構成体10は、図2に示すように、電源(バッテリー等)から供給された電流が流されて電力回路を構成する電力回路部18と、この電力回路部18と離間した位置に配され制御回路を構成する制御回路基板40と、当該制御回路と電力回路とを電気的に接続する可撓性平形導体50とから構成されている。
【0013】
電力回路部18は、絶縁板12を介してバスバー11が積層された長方形状の配線板25と、この配線板25を上方から覆うカバー部30Aとから構成されている。
【0014】
配線板25は、図3に示すように、それぞれ金属製で平板状に形成された複数本のバスバー群11A,11B,11Cが2枚の絶縁板12A,12Bを介して3層に積層されて構成されており、各層のバスバー群11A,11B,11Cはそれぞれ導電路を構成するとともに、この各導電路の終端部には、端子部13が各導電路ごとに起立して形成されている。
【0015】
さらに、配線板25の一端(図2の左端)には、各バスバー群11A,11B,11Cから各郡ごとに延出された制御回路側端子部16A,16B,16Cが側方に突出形成されており、この制御回路側端子部16A,16B,16Cに後述する可撓性平形導体50の一端側が接続されるようになっている。なお、制御回路側端子部16A,16B,16Cは、その上面の高さが水平になるように屈曲高さが設定されており、この水平な上面に可撓性平形導体50が接続されるようになっている。
【0016】
カバー部30Aは、後述する本体部20B内部の収容部30Bに配線板25を収容した状態で嵌合させることにより、カバー部30Aの爪部31Aと収容部30Bの係合部31Bとが係合して嵌合状態が保持されるようになっている。
【0017】
カバー部30Aの上面には、図2に示すように、フード状に開口する複数のリレー差込口32が設けられるとともに、同じくフード状に開口する複数のヒューズ差込口33が設けられており、カバー部30Aの嵌合時には、リレー差込口32及びヒューズ差込口33のフードの内側に端子部13が突出するようになっている。そして、これらの差込口32,33に外付けとなるリレー34やヒューズ35等の電子部品が装着されるようになっている。
【0018】
制御回路基板40は、長方形状の基板にプリント配線が施されており、一面(図2の上面)に制御用の素子41(例えば、マイコン、リレー等)が実装されて制御回路が構成されている。
【0019】
また、図3に示すように、制御回路基板40の一長辺部には、上記したプリント配線にそれぞれ接続される3個の電気接続部42,42,42が略中央部に並んで設けられており、ここに可撓性平形導体50が接続されるようになっている。
【0020】
可撓性平形導体50は、図3に示すように、薄肉で略長方形状の絶縁部材(例えば、プラスチック、ゴム等の合成樹脂)の一面(図3の上面)に、3本の導電部51,51,51が並んで設けられており、この導電部51,51,51の間隔は、制御回路基板40に向けて狭くなっている。そして、導電部51,51,51の一端側がバスバー11の各制御回路側端子部16A,16B,16Cに半田付け(電気的に接続)されるとともに、他端側が制御回路基板40の各電気接続部42,42,42にそれぞれ半田付け(電気的に接続)されている。
【0021】
ケーシング20は、例えば合成樹脂製であって、一面が開口する本体部20Bと、この本体部20Bを閉止する蓋部20Aとにより構成されている。
【0022】
本体部20Bは、長方形状をなす底板21と、この底板21の周縁部から起立する側壁22とから構成されている。
【0023】
底板21の上面には、長手方向の一端部側(図1の左端側)に立設される支持壁23と、底板21の上面の略中央部のほぼ全体を占める収容部30Bとが形成されている。
【0024】
支持壁23は厚肉で矩形の平板状をなしており、その両端部(図2の前後の両端部)に一対の螺子孔23Aが形成されている。
【0025】
収容部30Bは、壁部39が立設されるとともに、この壁部39の上縁部には、カバー部30Aの爪部31Aと対応する位置に係合部31Bが形成されている。
【0026】
側壁22の上縁部には、係止部24Bが複数設けられており、両ケース20A,20Bの嵌合時には、この係止部24Bと蓋部20Aの囲壁26に設けられた爪片24Aとが係合することにより両ケース20A,20Bの嵌合状態が保持されるようになっている。
【0027】
そして、回路構成体10が本体部20Bの底板21上に固定されるとともに、可撓性平形導体50を曲げつつ制御回路基板40の裏面(制御素子の実装されていない面)を支持壁23の一面(図1の右側の面)に合わせて支持壁23の螺子孔23Aにビス28止めすることにより制御回路基板40が支持壁23に固定されるようになっている。
【0028】
蓋部20Aは、長方形状をなす天板27と、この天板27の周縁から下方に突出する囲壁26とから構成されている。
【0029】
天板27には、そのやや一側端側(図1の左端側)で下方に突出する仕切り壁29が天板27の前後に亘って形成されている。
【0030】
より詳しくは、この仕切り壁29の位置は、回路構成体10が本体部20B上に固定された状態で蓋部20Aを閉じたときに、バスバー11の制御回路側端子部16A,16B,16Cの上方に配されるように形成されている。またその突出高さは、制御回路基板40上の素子41の上方(図1の右方)にて素子41のほぼ全体に亘る(覆う)高さ(図1の制御回路基板40の下端のやや上方に至るまでの長さ)とされている。なお、この仕切り壁29は、蓋部20Aと一体に形成されているが、仕切り壁29のみを取り外せるように構成してもよい。
【0031】
囲壁26の外面には、下方に突出する爪片24Aが本体部20Bの係合部31Bと対応する位置に設けられている。
【0032】
本実施形態によれば、電力回路部18と離間した位置に制御回路基板40が配されるから、電力回路と制御回路とを分離することができ、電力回路部18において発生する熱の影響を制御回路に対して及ぼしにくくしている。また、電力回路部18(リレー34等)と制御回路基板40との間には、ケーシング20内を区画する仕切り壁29が形成されているから、電力回路部18(リレー34等)からの熱が仕切り壁29に遮られることにより制御回路基板40に伝わりにくくなる。さらに、本体部20Bの開口を蓋部20Aで閉止するという簡単な操作でケーシング20内を仕切り壁29により区画することができる。
【0033】
また、本実施形態では、蓋部20Aに仕切り壁29を形成することにより、ケーシング20内部のうち、より熱のたまりやすい上部側の空間が仕切られることにより、電力回路部18側の熱が制御回路基板40側に移動しにくいから、優れた遮熱効果を発揮することができる。さらに、仕切り壁29がある分だけ熱の移動に時間がかかるから、その間に放熱されるようにすればよい。
【0034】
なお、遮熱効果を高めるためには、蓋部20Aの材質を放熱性の高いもの(例えば、アルミ等)を選択したり、電気接続箱が防水が要求されないような箇所に適用される場合には、ケーシング20(蓋部20A)に開口を設けたり、更には、放熱シートの貼り付けや放熱フィンの形成等が考えられる。一方、仕切り壁29について、遮熱効果を高めるためには、壁の厚みを増すことや、伝熱性の低い材質への変更等の方策が考えられる。
【0035】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4を参照しつつ説明する。
実施形態1のケーシング20は蓋部20Aのみに仕切り壁29が形成される構成としたが、実施形態2では、図4に示すように、更に本体部20Bにも仕切り壁60が形成される構成としたものである。実施形態1と同一の構成に付いては同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0036】
本体部20Bのうち、蓋部20Aの仕切り壁29と対応する位置には、仕切り壁60が起立形成されており、本体部20Bと蓋部20Aとの嵌合時には、これらの両仕切り壁29,60がケーシング20の高さ方向のほぼ中間にて可撓性平形導体50をほぼ隙間なく挟みこむようになっている。なお、本実施形態では制御回路基板40は水平な姿勢で支持台61上に固定されるようになっている。また、蓋部20Aは上方から嵌合させるものに限らず、例えば、側方からスライドさせることにより、仕切り壁29,60がケーブルを挟みこむ構成としてもよい。
【0037】
このように、電力回路部18と制御回路基板40とは、それぞれほぼ密閉された状態で仕切られることになり、より一層、電力回路部18から制御回路基板40に熱が伝わりにくくなる。なお、この実施形態においても、仕切り壁29,60の遮熱性を高める工夫として、例えば、仕切り壁29側と仕切り壁60側との対向端面にそれぞれ凹部(図示しない)を形成しておき、仕切り壁29と仕切り壁60とが突き合わされたときに、両凹部によって実質的に閉塞される空気室を形成し、これにより両仕切り壁29,60を断熱壁とするように構成してもよい。
【0038】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図5を参照しつつ説明する。
実施形態2では、蓋部20Aの仕切り壁29は1箇所だけであったが、実施形態3では、図5に示すように、蓋部20Aから2枚の仕切り壁71,72が所定の間隔を開けて下方に突出形成されている。仕切り壁71,72の突出高さは共にケーシング20の略中央部に達する高さとされ、その位置は両仕切り壁71,72のほぼ中間に対応する位置に本体部20Bの仕切り壁60が位置するようになっており、可撓性平形導体50が仕切り壁60を迂回した状態で電力回路部18と制御回路基板40とを接続するようになっている。
【0039】
これにより、電力回路部18で発生した熱はこれらの仕切り壁60,71,72により制御回路基板40に伝わりにくくなる。
【0040】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図6を参照しつつ説明する。
実施形態4では、上記実施形態の本体部20Bよりも縦長の本体部80Bが開口側を下方に向けて形成されるとともに、この本体部80Bの高さとほぼ同じ高さの仕切り壁81が形成されている。また、上記実施形態では制御回路基板40の長辺側を可撓性平形導体50に接続したが、本実施形態では制御回路基板40の短辺側が可撓性平形導体50に接続されている。
【0041】
そして、仕切り壁81により区画された2箇所の空間に電力回路部18と制御回路基板40とが共に背向かいとなる方向に縦置きされ、電力回路部18と制御回路基板40とが支持台82及び支持壁83にそれぞれ固定された後に蓋部80Aが下方から嵌合されるようになっている。なお、このとき仕切り壁81の下方で可撓性平形導体50が屈曲された状態となっている。
【0042】
これにより、電力回路部18で発生した熱が仕切り壁81により遮断されて制御回路基板40に伝わりにくくなる。電気接続箱を幅方向に小型化することができ、幅方向のスペースが十分に取れない場所であっても電気接続箱を配置することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0044】
(1) 蓋部20A及び本体部20Bに形成された仕切り壁の数は上記実施形態の数に限られない。例えば蓋部20Aに3箇所以上の仕切り壁を形成してもよく、また、本体部20Bに2箇所以上の仕切り壁を形成してもよい。
(2) 上記実施形態では、制御回路基板40と電力回路部18とを可撓性平形導体50により電気的に接続する構成としたが、これに限られない。例えば、他の導電部材により制御回路基板40と電力回路部18とを電気的に接続する構成としてもよい。また、制御回路基板40と電力回路部18とが回路的に関連していなくてもよく、それぞれの回路が独立した動作を行うものであってもよい。さらに、制御回路基板40と電力回路部18とが電気的に接続されない構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態1の構成を示す電気接続箱の断面概念図
【図2】電気接続箱の分解斜視図
【図3】可撓性平形導体の接続状態を示す斜視図
【図4】実施形態2の構成を示す電気接続箱の断面概念図
【図5】実施形態3の構成を示す電気接続箱の断面概念図
【図6】実施形態4の構成を示す電気接続箱の断面概念図
【符号の説明】
【0046】
10…回路構成体
11A,11B,11C…バスバー群
12A,12B…絶縁板
16A,16B,16C…制御回路側端子部
18…電力回路部
20…ケーシング
20A…蓋部
20B…本体部
23…支持壁
25…配線板
27…天板
29,60,71,72,81…仕切り壁
30A…カバー部
40…制御回路基板
50…可撓性平形導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路構成体がケーシング内に収容されてなる電気接続箱であって、
前記回路構成体は、
バスバーが配索されて電力回路が構成される電力回路部と、
前記電力回路部と離間した位置に配されるとともに、制御用素子を備えて制御回路を構成する制御回路基板とを備え、
前記電力回路部と前記制御回路基板との間には、前記ケーシング内を区画する仕切り壁が形成されていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ケーシングは、
一面が開口する本体部と、この本体部を閉止する蓋部とからなり、
当該蓋部に前記仕切り壁が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記本体部にも前記仕切り壁が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−34010(P2006−34010A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210344(P2004−210344)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】