電気接続箱
【課題】 半田付け部分に応力が掛かることを防ぐ。
【解決手段】 フレーム21の取付面25には、ねじ孔27が切られた嵌合突部26が突設され、PCBコネクタ60には、貫通孔71を有する取付板70が張り出し形成される。取付板70の板厚sは、嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定される。PCBコネクタ60をフレーム21に固定するには、取付板70の貫通孔71を嵌合突部26に嵌合したのち、ねじ30を頭部30Aが嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込むと、頭部30Aが貫通孔71の口縁に係止して抜け止めされる。PCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていても、ねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間には未だクリアランスがあり、取付板70、すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ無理に押さえ付けられることが回避される。
【解決手段】 フレーム21の取付面25には、ねじ孔27が切られた嵌合突部26が突設され、PCBコネクタ60には、貫通孔71を有する取付板70が張り出し形成される。取付板70の板厚sは、嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定される。PCBコネクタ60をフレーム21に固定するには、取付板70の貫通孔71を嵌合突部26に嵌合したのち、ねじ30を頭部30Aが嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込むと、頭部30Aが貫通孔71の口縁に係止して抜け止めされる。PCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていても、ねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間には未だクリアランスがあり、取付板70、すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ無理に押さえ付けられることが回避される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に装備される電気接続箱として、例えば特許文献1記載のものが知られている。このものは、回路基板の端部に基板用コネクタが搭載された回路構成体をケースに収容してなるものであり、基板用コネクタがケースの外部に臨んで配されている。この基板用コネクタはコネクタハウジングに装着された端子金具が回路基板の導電路に対してフロー半田によって接続されている。
【特許文献1】特開2000−21477公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような基板用コネクタには、ワイヤハーネスの端末に取り付けられた相手側コネクタの脱着により力が直接作用する。このため、基板用コネクタをさらにケースに固定して、基板用コネクタの保持力を強化することが考えられる。
この場合、回路基板に端子金具を半田付け等して回路構成体を形成してから、この回路構成体をケースに収容して固定し、最後に基板用コネクタをケースに対して固定することになる。
しかしながら、この場合、基板用コネクタが回路基板に対して正規位置からずれて、例えば回路基板から離れるように組付けられていたりすると、基板用コネクタは端子金具を弾性変形させつつ回路基板に対して無理に接近した状態で固定されることになる。そうすると半田付け部分に残留応力が生じ、クラック等が生ずるおそれがある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は半田付け部分にクラックが入る等の損傷を受けるのを防止するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回路構成板にはコネクタが搭載されてこのコネクタに装着された端子金具が前記回路構成板の導電路に対して半田付けにより接続され、前記回路構成板が、ケース内に収容されて固定されてなる電気接続箱において、前記コネクタ及び前記ケースの双方には、前記コネクタを前記ケースに対して遊びがある状態で取り付けるための取付手段が設けられていることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記取付手段は、前記ケースに形成した嵌合突部と、前記コネクタに形成されて前記嵌合突部が貫通する貫通孔と、前記嵌合突部を前記貫通孔に貫通させた後に前記嵌合突部の先端に設けられ、かつ前記貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部とからなることを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は、請求項2記載のものにおいて、前記抜け止め部は、前記嵌合突部の突出端面に螺合されたねじの頭部であることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は、請求項3記載のものにおいて、前記嵌合突部の突出端面には、前記ねじを挿入するためのねじ挿入孔が形成されており、前記ねじ挿入孔は、前記突出端面から奥方へ、前記嵌合突部の突出高さまでの領域に形成され、かつ前記ねじのねじ部の最大外径よりも大きな内径を備えたねじ逃がし部と、前記ねじ逃がし部の奥方に形成され、かつ前記ねじが螺合するねじ孔とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
仮にコネクタがケースに対して正規からずれて組み付けられていたとしても、コネクタはその位置ずれが許容された状態のままで、ケースに取り付けられる。言い換えると、コネクタをケースに取り付けるに当たり、コネクタの位置が無理に変えられることがないために端子金具が変形することが回避され、そのため端子金具の半田付け部分に残留応力が生じることがなく、クラックが入る等の損傷を受けることを防止できる。もって、コネクタと回路構成板との間の電気的な接続について、高い信頼性を得ることができる。
【0009】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、嵌合突起を貫通孔に貫通し、その後、嵌合時の先端に、貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部を設けることにより、コネクタをケースに対して遊びがある状態で取り付けることができる。このように、嵌合突起、貫通孔、及び抜け止め部という簡易な構成によりコネクタをケースに取り付けることができるから、電気接続箱を小型化できる。
【0010】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、ねじを嵌合突起の突出端面にねじ込むという簡易な手法により抜け止め部を形成できる。
【0011】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、ねじ逃がし部の内径を、ねじのねじ部の最大外径よりも大きく設定したから、ねじ部と、ねじ逃がし部の内周面とは接触しないようになっている。これにより、嵌合突部に対してねじから力が加わることがないので、ねじをねじ挿入孔に挿入する際に、嵌合突部が割れることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
本実施形態の電気接続箱は、図1及び図2に示すように、回路構成板10と、この回路構成板10を収容すべくフレーム21と放熱板40とからなるケース20と、カバー50とから構成されており、さらにPCBコネクタ60とヒューズボックス80とが装着されるようになっている。なお、ヒューズボックス80には別の中継コネクタ90が嵌合される。
以下、各構成部材において、図2の左手前側を前方、右奥側を後方として説明する。
【0013】
回路構成板10は、図3に示すように、プリント回路基板11(以下、回路基板11という)と、回路基板11の裏面側に配されるバスバー基板15とから構成され、表面側にリレー等の電気部品12が実装されるようになっている。
回路基板11は、長方形における左前端側の角を落としたような外形形状に形成されており、その表裏両面には所定のパターンで導電路が形成されている。また、回路基板11の前部側には、PCBコネクタ60の雄端子62(図4参照)を挿入するためのスルーホール13が形成されている。
【0014】
バスバー基板15は、導電性に優れた金属板を打ち抜いて形成され、電力回路となる所定の導電路を形成しつつ回路基板11とほぼ整合した外形形状に形成され、その後縁から、複数本のバスバー16を並べて突設した形状である。これらのバスバー16のうち、正面から見た左端の1本を除いてほぼ左側の領域にわたって配されたバスバー16Aは、回路基板11の表面側において二度直角曲げされることで、先端が後方に向けて水平に突出しており、かつ、先端にヒューズ差し込み用のスリットが切られている。また、残りのバスバー16Bは、さらに二度直角曲げされることで、先端が前方に向けて水平に突出している。なお、バスバー基板15における回路基板11のスルーホール13の形成領域と対応する領域には、窓孔17(図4参照)が開口されている。
回路基板11とバスバー基板15とは、絶縁性を有する薄い接着シート(図示せず)を介して一体的に貼り付けられている。
【0015】
PCBコネクタ60は、図4にも示すように、横長で前面に開口した合成樹脂製のハウジング61を備え、このハウジング61には、L形に曲げ形成された雄端子62が、一端を開口内に突出させ、他端を奥壁63を貫通して下向きに突出させた姿勢で、二段に並んで装着されている。各雄端子62の下向きの突出端は、回路基板11に開口されたスルーホール13に上方から挿入され、裏面側においてスルーホール13に形成されたランド部と半田付けにより接続されるようになっている(半田付け部65)。また、PCBコネクタ60の下面には、その後縁側に左右一対の取付脚66が形成されている。この取付脚66は、回路構成板10の表面に当てられ、下面側から挿通孔14に通したタッピンねじ67がねじ込まれて固定されるようになっている。
【0016】
ケース20は全体としては、回路構成板10を収容するべく浅皿状に形成されており、周壁に相当するフレーム21の底面側に、放熱板40が嵌められて張られた構造である。
フレーム21は合成樹脂製であって、図5及び図7に示すように、上記した回路基板11並びにバスバー基板15を内側にほぼ緊密に嵌めることができる形状に形成されている。
フレーム21におけるほぼ4つの角の上面には、位置決めピン22が立てられている。上記した回路構成板10のバスバー基板15並びにバスバー16の対応した位置には、位置決めピン22が嵌まる位置決め孔18が開口されている。
【0017】
放熱板40は、電気部品12から発生する熱を放熱するためのものであって、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属板により、図8に示すように、フレーム21の外形とほぼ同じ形状に形成されている。放熱板40の前部側には、PCBコネクタ60に装着された雄端子62のうち、回路基板11の下面側に突出した端部との干渉を避けるために、逃がし凹部41が形成されている。放熱板40の周縁部には、タッピンねじ42(図10)の挿通孔43が適宜間隔を開けて形成されており、放熱板40の周縁部がフレーム21の下面に嵌められ、タッピンねじ42をねじ込むことで固定されるようになっている。一方、放熱板40の上面には、回路構成板10のバスバー基板15が、絶縁性の接着剤44(図9参照)によって貼着されるようになっている。
なお、放熱板40の後縁からは、取付片45が斜め下方に逃げた姿勢で形成されている。
【0018】
さて、上記した回路構成板10に搭載されたPCBコネクタ60は、ケース20のフレーム21における前縁側、より詳細には図7に示すように、前縁の右端から、左側の角が落とされた部分に少し入った領域にわたって載置されて固定されるようになっている。そのため、図5及び図6に示すように、フレーム21の前縁における内面には、載置領域の左右両端に対応する位置に、一対の取付台24が形成されている。この取付台24の上面である取付面25は、同一高さに形成されている。
【0019】
各取付面25には、背の低い円柱状をなす嵌合突部(本発明の取付手段)26が形成されている。嵌合突部26の上面には、ねじ孔27(下孔)が下向きに形成されている。このねじ孔27には、図10に示すように、頭部(本発明の抜け止め部)30A付きのタッピンねじ(本発明の取付手段)30がねじ込み可能とされている。タッピンねじ30は、頭部30Aの下面が嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込み可能であり、頭部30Aは、嵌合突部26よりも大きな径を有している。
なお、図10に示すように、フレーム21のうちねじ孔27と略同軸上には、放熱板40とフレーム21とをねじ止めするためのタッピンねじ42が螺合されるねじ孔34(下孔)が形成されている。フレーム21のうち、ねじ孔27及びねじ孔34を形成する部分は肉厚に形成する必要があるところ、ねじ孔27とねじ孔34とを略同軸上に形成することにより、フレームが幅方向に大型化することを防止できる。
【0020】
一方、PCBコネクタ60側では、図6に示すように、ハウジング61の左右の側面のほぼ中央高さ位置に、取付板70が張り出し形成されている。各取付板70には、上記の嵌合突部26に対して径方向に若干のクリアランスを持って、遊びがある状態で嵌合可能な貫通孔(本発明の取付手段)71が形成されている。貫通孔71の下側の口縁にはガイド用に面取りが施されており、上記したタッピンねじ30の頭部30Aは、この貫通孔71の上側の口縁に係止可能となっている。
ここで特筆すべきは、取付板70の板厚sが、嵌合突部26の突出高さhよりも所定寸法小さく設定されている。言い換えると、貫通孔71が嵌合突部26に嵌合されて取付板70の下面が取付面25に当たった場合に、貫通孔71の上側の口縁と、嵌合突部26に最大にねじ込まれたタッピンねじ30の頭部30Aとの間に、上記寸法分のクリアランスが確保され、遊びがある状態で取り付けられる設定となっている。
【0021】
また、PCBコネクタ60に対して相手側コネクタが嵌合・離脱された場合の保持力をより高めるための対策が、カバー50を利用して講じられている。
カバー50は合成樹脂製であって、図12,13にも示すように、概ねケース20の上面開口を覆うように装着可能であり、前端側には、PCBコネクタ60の後面側を覆う高位部51が形成されているとともに、後端側には、ヒューズボックス80の一部を嵌めて逃がす逃がし凹部52が形成されている。カバー50の左右の側面には撓み変形可能なロック片53が設けられている一方、フレーム21の左右の側壁には、ロック片53に係止して仮止めするロック突部32が設けられている。また、カバー50の後端側の両端部には、タッピンねじ(図示せず)の装着凹部54が設けられ、フレーム21の左右の側壁の上面に設けられたねじ孔33(下孔)にねじ込み可能とされている。
【0022】
ヒューズボックス80は合成樹脂製であって、図2に示すように、フレーム21の後面側を全長にわたって覆うような横長形状に形成され、長さ方向の両端部に、前面に開口したコネクタ部81が設けられているとともに、その間の正面から見た左側にヒューズ装着部82が、右側に端子収容部83がそれぞれ設けられている。
ヒューズ装着部82には、図13に示すように、ヒューズ84が装着される複数の装着孔82Aが後面側に開口して設けられ、各装着孔82Aでは、その下部側に、先端が後方を向いたバスバー16Aが圧入により装着されるとともに、上部側には、このバスバー16と対をなすタブ状の接続端子85が同じく圧入により装着され、タブ状の接続端子85の前端は、クランク状に曲げ形成されて前方に突出している。一方、コネクタ部81と端子収容部83とには、先端が前方を向いたバスバー16Bが収容されるようになっている。
【0023】
ヒューズボックス80におけるヒューズ装着部82と端子収容部83とにわたる領域の前面には、中継コネクタ90が結合可能とされており、ヒューズ装着部82及び端子収容部83から前面に突出した接続端子85、バスバー16Bの上辺が、中継コネクタ90における前面に開口した嵌合部91内に進入するようになっている。
【0024】
続いて、電気接続箱の製造工程の一例を説明する。金属板素材をプレス加工することによりバスバー基板15が形成され、このバスバー基板15の上面に、絶縁性の接着シート(図示せず)を介して回路基板11が一体的に貼着されて回路構成板10が形成される。そのとき、バスバー基板15の後縁から突出したバスバー16が既述した形状に曲げ加工される。そののち電気部品12が、回路基板11並びにバスバー基板15の導電路に対してリフロー半田付けにより実装される。
【0025】
次に、図3に示すように、PCBコネクタ60が回路基板11の表面の前縁側に載置され、それとともに雄端子62の下向きの突出端が回路基板11の対応するスルーホール13に貫通される。続いて図4に示すように、回路基板11の表面に当てられた取付脚66がタッピンねじ67によって固定される。そののち、雄端子62は裏面側においてスルーホール13に形成されたランド部に対して、フロー半田により半田付けされて接続される(半田付け部65)。
【0026】
このように、PCBコネクタ60が搭載された回路構成板10が、図5に示すように、フレーム21に対して上方から組み付けられる。このとき、バスバー基板15並びにバスバー16に形成された位置決め孔18に対して、フレーム21の上面に突設された位置決めピン22が挿入されることで位置決めされる。また、図6及び図7に示すようにPCBコネクタ60の左右の取付板70に開口された貫通孔71に、フレーム21の取付面25に立てられた嵌合突部26が嵌合される。
【0027】
次に、放熱板40の上面の全面に絶縁性の接着剤44が塗布され、図8及び図9に示すように、放熱板40は、回路構成板10におけるバスバー基板15の下面並びにフレーム21の下面に対して密着して貼り付けられる。そののち、図10に示すように、放熱板40の周縁に開口された挿通孔43にタッピンねじ42を挿入して、フレーム21の下面に形成されたねじ孔34(下孔)にねじ込むことで固定される。これにより、回路構成板10がケース20に対して固定されたことになる。
【0028】
続いて、PCBコネクタ60がフレーム21に対して固定される。すなわち、図10の右側に示すように、PCBコネクタ60の取付板70の貫通孔71が嵌合された嵌合突部26のねじ孔27に対して、頭部30A付きのタッピンねじ30がねじ込まれる。タッピンねじ30は、同図の左側に示すように、頭部30Aの下面が嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込まれ、タッピンねじ30の頭部30Aが、取付板70の貫通孔71における上側の口縁に係止して抜け止めされる。
【0029】
ここで例えば、PCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていると、取付板70を単に取付面25に対してねじ止めした場合には、雄端子62を弾性変形させつつ、取付脚66で受けられていないPCBコネクタ60の主に前端側が沈むように変位するおそれがある。
しかしながら本実施形態では、取付板70の板厚sが嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定されているから、仮にPCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていたとしても、図10に拡大して示すように、タッピンねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間に未だクリアランスが残され、遊びがある状態になっているから、取付板70が無理に押さえ付けられることはない。すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ下方に変位するといったことが回避され、そのため、雄端子62が回路基板11のスルーホール13に対して半田付けされた部分65に残留応力が生じることが防止される。したがって半田付け部65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。
【0030】
PCBコネクタ60のねじ止めが完了したら、フレーム21内にゲル等のポッティング剤(図示せず)が投入され、回路基板11の表面がポッティング剤で被覆されることによって防水性が確保される。
その後、図12に示すように、カバー50が上方から被せられる。カバー50は、ロック片53を撓み変形させつつ押し込まれ、正規位置まで押し込まれると、ロック片53がフレーム21に設けられたロック突部32に弾性的に係止される。次に、カバー50の後端側の左右両端部の装着凹部54に入れられたタッピンねじが、フレーム21の左右の側壁の上面に設けられたねじ孔33にねじ込まれて固定される。
【0031】
続いて、予め接続端子85が装着されたヒューズボックス80が、ケース20の後端縁に組み付けられる。
ヒューズボックス80の組み付けに伴い、ヒューズ装着部82では、図13に示すように、バスバー基板15に突設されたバスバー16Aが、対応する装着孔82Aにおける下部側に進入して装着される。また、端子収容部83やコネクタ部81では、先端が前方を向いたバスバー16Bが収容される。最後に、ヒューズボックス80の前面に中継コネクタ90が嵌合され、図1に示すように電気接続箱が完成される。
【0032】
この電気接続箱に対しては、ヒューズ装着部82の各装着孔82Aに後面からヒューズ84が装着される。また、PCBコネクタ60と中継コネクタ90に対しては、前面から相手側のコネクタ(図示せず)が嵌合される。そして、この電気接続箱は、PCBコネクタ60を下方に向けた縦向きの姿勢で、リレーボックスのケーシング内に収容され、その状態で放熱板40の取付片45を介してエンジンルームのフェンダー側の車両パネルに取り付けられて使用される。
【0033】
以上説明したように本実施形態によれば、PCBコネクタ60の取付板70をフレーム21側の嵌合突部26に嵌めてねじ止めする部分において、取付板70の板厚sを嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定している。これにより、仮にPCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていたとしても、タッピンねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間に未だクリアランスが残され、遊びがある状態で取り付けられるから、取付板70が無理に押さえ付けられることはない。すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ下方に変位するといったことが回避され、そのため、雄端子62が回路基板11のスルーホール13に対して半田付けされた部分65に残留応力が生じることが防止される。したがって半田付け部分65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。ひいては、PCBコネクタ60と回路構成板10との間の電気的な接続について、高い信頼性を得ることができる。
【0034】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図14によって説明する。この実施形態2では、嵌合突部26の突出端面にタッピンねじ30を挿入するためのねじ挿入孔28を形成したものを示す。なお、その他の構造、作用及び効果は上記した実施形態1と同様であるため、実施形態1と同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
図14の右側に示すように、嵌合突部26の上面には、ねじ挿入孔28が下向きに形成されている。このねじ挿入孔28のうち、嵌合突部26の上面から下方へ、嵌合突部26の突出高さhまでの領域には、ねじ挿入孔28の内径が、タッピンねじ30のねじ部30Bの一番大きい箇所の外径よりも大きく設定されてなるねじ逃がし部28Aが形成されている。ねじ挿入孔28のうち、ねじ逃がし部27Aよりも奥方の領域の内径は、ねじ逃がし部27Aの内径よりも小さく設定されており、タッピンねじ30のねじ部30Bと螺合するねじ孔28B(下孔)とされている。ねじ逃がし部28Aとねじ孔28Bとは、同軸上に形成されている。
【0036】
PCBコネクタ60がフレーム21に対して固定される際、図14の右側に示すように、PCBコネクタ60の取付板70の貫通孔71が嵌合された嵌合突部26のねじ挿入孔28に対して、頭部30A付きのタッピンねじ30が挿入される。ねじ逃がし部28Aの内径はタッピンねじ30のねじ部30Bの一番大きい箇所の外径よりも大きく設定されているから、ねじ逃がし部28Aにおいては、タッピンねじ30はねじ逃がし部28Aの内周壁と接触しないようになっている。
【0037】
タッピンねじ30のねじ部30Bの先端がねじ逃がし部28Aの下端に達すると、タッピンねじ30がねじ孔28B内に螺合される。嵌合突部26は、ねじ挿入孔28が形成されていることにより肉厚が薄くなっており、ねじ挿入孔28が形成されていない場合に比べて割れやすくなっている。この点を鑑みて、本実施形態においては、タッピンねじ30はねじ逃がし部28Aの内周壁と接触しないようになっている。これにより、タッピンねじ30をねじ孔28Bに螺合する際に、タッピンねじ30から嵌合突部26に力が加わることがないから、嵌合突部26が割れることを防止できる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0039】
(1)PCBコネクタの取付板を取付面にねじ止めする部分において、頭部付きのねじを取付板の貫通孔を通して直接に取付面にねじ込むようにし、その際にねじ込み量を規制することにより、ねじの頭部と貫通孔の口縁との間に所定のクリアランスが設けられる設定としてもよい。
【0040】
(2)頭部付きのねじをねじ込むことに変えて、頭部付きのピンを打ち込むようにしてもよい。
【0041】
(3)PCBコネクタの端子金具を回路構成板の導電路に接続する手段としては、リフロー半田による表面実装であってもよく、このようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(4)上記実施形態ではケースの底板が放熱板で形成されているが、ケースの底板が放熱板とは別に設けられていてもよい。
【0043】
(5)上記実施形態ではタッピンねじの頭部を抜け止め部としたが、嵌合突部を貫通孔に貫通した後、嵌合突部の先端を加熱、押圧して貫通孔の内径よりも径大にすることにより抜け止め部を形成してもよい。
【0044】
(6)取付手段は、コネクタに形成した嵌合突部と、フレームに形成されて嵌合突部が貫通する貫通孔と、嵌合突部を貫通孔に貫通させた後に嵌合突部の先端に設けられ、かつ貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部とからなる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態1に係る電気接続箱の外観斜視図
【図2】分解斜視図
【図3】PCBコネクタを回路構成板に搭載する前の状態の斜視図
【図4】PCBコネクタを回路構成板に搭載した状態の一部切欠側面図
【図5】回路構成板をフレームに嵌める動作を示す斜視図
【図6】同一部切欠正面図
【図7】回路構成板をフレーム内に嵌めた状態の平面図
【図8】フレームの下面に放熱板を装着する動作を示す斜視図
【図9】フレームの下面に放熱板が装着された状態の側断面図
【図10】PCBコネクタをフレームに固定する動作を示す一部切欠正面図
【図11】PCBコネクタをフレームに固定した状態の後面側から見た斜視図
【図12】カバーを被着する動作を示す斜視図
【図13】カバーを被着した状態の側断面図
【図14】実施形態2に係る電気接続箱において、PCBコネクタをフレームに固定する動作を示す一部切欠正面図
【符号の説明】
【0046】
10…回路構成板
11…プリント回路基板
13…スルーホール
20…ケース
21…フレーム
24…取付台
25…取付面
26…嵌合突部(取付手段)
27…ねじ孔
30…タッピンねじ(ねじ:取付手段)
30A…頭部(抜け止め部)
40…放熱板
60…PCBコネクタ
61…ハウジング
62…雄端子(端子金具)
65…半田付け部
70…取付板
71…貫通孔(取付手段)
h…(嵌合突部26の)突出高さ
s…(取付板70の)板厚
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に装備される電気接続箱として、例えば特許文献1記載のものが知られている。このものは、回路基板の端部に基板用コネクタが搭載された回路構成体をケースに収容してなるものであり、基板用コネクタがケースの外部に臨んで配されている。この基板用コネクタはコネクタハウジングに装着された端子金具が回路基板の導電路に対してフロー半田によって接続されている。
【特許文献1】特開2000−21477公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような基板用コネクタには、ワイヤハーネスの端末に取り付けられた相手側コネクタの脱着により力が直接作用する。このため、基板用コネクタをさらにケースに固定して、基板用コネクタの保持力を強化することが考えられる。
この場合、回路基板に端子金具を半田付け等して回路構成体を形成してから、この回路構成体をケースに収容して固定し、最後に基板用コネクタをケースに対して固定することになる。
しかしながら、この場合、基板用コネクタが回路基板に対して正規位置からずれて、例えば回路基板から離れるように組付けられていたりすると、基板用コネクタは端子金具を弾性変形させつつ回路基板に対して無理に接近した状態で固定されることになる。そうすると半田付け部分に残留応力が生じ、クラック等が生ずるおそれがある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は半田付け部分にクラックが入る等の損傷を受けるのを防止するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回路構成板にはコネクタが搭載されてこのコネクタに装着された端子金具が前記回路構成板の導電路に対して半田付けにより接続され、前記回路構成板が、ケース内に収容されて固定されてなる電気接続箱において、前記コネクタ及び前記ケースの双方には、前記コネクタを前記ケースに対して遊びがある状態で取り付けるための取付手段が設けられていることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記取付手段は、前記ケースに形成した嵌合突部と、前記コネクタに形成されて前記嵌合突部が貫通する貫通孔と、前記嵌合突部を前記貫通孔に貫通させた後に前記嵌合突部の先端に設けられ、かつ前記貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部とからなることを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は、請求項2記載のものにおいて、前記抜け止め部は、前記嵌合突部の突出端面に螺合されたねじの頭部であることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は、請求項3記載のものにおいて、前記嵌合突部の突出端面には、前記ねじを挿入するためのねじ挿入孔が形成されており、前記ねじ挿入孔は、前記突出端面から奥方へ、前記嵌合突部の突出高さまでの領域に形成され、かつ前記ねじのねじ部の最大外径よりも大きな内径を備えたねじ逃がし部と、前記ねじ逃がし部の奥方に形成され、かつ前記ねじが螺合するねじ孔とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
仮にコネクタがケースに対して正規からずれて組み付けられていたとしても、コネクタはその位置ずれが許容された状態のままで、ケースに取り付けられる。言い換えると、コネクタをケースに取り付けるに当たり、コネクタの位置が無理に変えられることがないために端子金具が変形することが回避され、そのため端子金具の半田付け部分に残留応力が生じることがなく、クラックが入る等の損傷を受けることを防止できる。もって、コネクタと回路構成板との間の電気的な接続について、高い信頼性を得ることができる。
【0009】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、嵌合突起を貫通孔に貫通し、その後、嵌合時の先端に、貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部を設けることにより、コネクタをケースに対して遊びがある状態で取り付けることができる。このように、嵌合突起、貫通孔、及び抜け止め部という簡易な構成によりコネクタをケースに取り付けることができるから、電気接続箱を小型化できる。
【0010】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、ねじを嵌合突起の突出端面にねじ込むという簡易な手法により抜け止め部を形成できる。
【0011】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、ねじ逃がし部の内径を、ねじのねじ部の最大外径よりも大きく設定したから、ねじ部と、ねじ逃がし部の内周面とは接触しないようになっている。これにより、嵌合突部に対してねじから力が加わることがないので、ねじをねじ挿入孔に挿入する際に、嵌合突部が割れることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
本実施形態の電気接続箱は、図1及び図2に示すように、回路構成板10と、この回路構成板10を収容すべくフレーム21と放熱板40とからなるケース20と、カバー50とから構成されており、さらにPCBコネクタ60とヒューズボックス80とが装着されるようになっている。なお、ヒューズボックス80には別の中継コネクタ90が嵌合される。
以下、各構成部材において、図2の左手前側を前方、右奥側を後方として説明する。
【0013】
回路構成板10は、図3に示すように、プリント回路基板11(以下、回路基板11という)と、回路基板11の裏面側に配されるバスバー基板15とから構成され、表面側にリレー等の電気部品12が実装されるようになっている。
回路基板11は、長方形における左前端側の角を落としたような外形形状に形成されており、その表裏両面には所定のパターンで導電路が形成されている。また、回路基板11の前部側には、PCBコネクタ60の雄端子62(図4参照)を挿入するためのスルーホール13が形成されている。
【0014】
バスバー基板15は、導電性に優れた金属板を打ち抜いて形成され、電力回路となる所定の導電路を形成しつつ回路基板11とほぼ整合した外形形状に形成され、その後縁から、複数本のバスバー16を並べて突設した形状である。これらのバスバー16のうち、正面から見た左端の1本を除いてほぼ左側の領域にわたって配されたバスバー16Aは、回路基板11の表面側において二度直角曲げされることで、先端が後方に向けて水平に突出しており、かつ、先端にヒューズ差し込み用のスリットが切られている。また、残りのバスバー16Bは、さらに二度直角曲げされることで、先端が前方に向けて水平に突出している。なお、バスバー基板15における回路基板11のスルーホール13の形成領域と対応する領域には、窓孔17(図4参照)が開口されている。
回路基板11とバスバー基板15とは、絶縁性を有する薄い接着シート(図示せず)を介して一体的に貼り付けられている。
【0015】
PCBコネクタ60は、図4にも示すように、横長で前面に開口した合成樹脂製のハウジング61を備え、このハウジング61には、L形に曲げ形成された雄端子62が、一端を開口内に突出させ、他端を奥壁63を貫通して下向きに突出させた姿勢で、二段に並んで装着されている。各雄端子62の下向きの突出端は、回路基板11に開口されたスルーホール13に上方から挿入され、裏面側においてスルーホール13に形成されたランド部と半田付けにより接続されるようになっている(半田付け部65)。また、PCBコネクタ60の下面には、その後縁側に左右一対の取付脚66が形成されている。この取付脚66は、回路構成板10の表面に当てられ、下面側から挿通孔14に通したタッピンねじ67がねじ込まれて固定されるようになっている。
【0016】
ケース20は全体としては、回路構成板10を収容するべく浅皿状に形成されており、周壁に相当するフレーム21の底面側に、放熱板40が嵌められて張られた構造である。
フレーム21は合成樹脂製であって、図5及び図7に示すように、上記した回路基板11並びにバスバー基板15を内側にほぼ緊密に嵌めることができる形状に形成されている。
フレーム21におけるほぼ4つの角の上面には、位置決めピン22が立てられている。上記した回路構成板10のバスバー基板15並びにバスバー16の対応した位置には、位置決めピン22が嵌まる位置決め孔18が開口されている。
【0017】
放熱板40は、電気部品12から発生する熱を放熱するためのものであって、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属板により、図8に示すように、フレーム21の外形とほぼ同じ形状に形成されている。放熱板40の前部側には、PCBコネクタ60に装着された雄端子62のうち、回路基板11の下面側に突出した端部との干渉を避けるために、逃がし凹部41が形成されている。放熱板40の周縁部には、タッピンねじ42(図10)の挿通孔43が適宜間隔を開けて形成されており、放熱板40の周縁部がフレーム21の下面に嵌められ、タッピンねじ42をねじ込むことで固定されるようになっている。一方、放熱板40の上面には、回路構成板10のバスバー基板15が、絶縁性の接着剤44(図9参照)によって貼着されるようになっている。
なお、放熱板40の後縁からは、取付片45が斜め下方に逃げた姿勢で形成されている。
【0018】
さて、上記した回路構成板10に搭載されたPCBコネクタ60は、ケース20のフレーム21における前縁側、より詳細には図7に示すように、前縁の右端から、左側の角が落とされた部分に少し入った領域にわたって載置されて固定されるようになっている。そのため、図5及び図6に示すように、フレーム21の前縁における内面には、載置領域の左右両端に対応する位置に、一対の取付台24が形成されている。この取付台24の上面である取付面25は、同一高さに形成されている。
【0019】
各取付面25には、背の低い円柱状をなす嵌合突部(本発明の取付手段)26が形成されている。嵌合突部26の上面には、ねじ孔27(下孔)が下向きに形成されている。このねじ孔27には、図10に示すように、頭部(本発明の抜け止め部)30A付きのタッピンねじ(本発明の取付手段)30がねじ込み可能とされている。タッピンねじ30は、頭部30Aの下面が嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込み可能であり、頭部30Aは、嵌合突部26よりも大きな径を有している。
なお、図10に示すように、フレーム21のうちねじ孔27と略同軸上には、放熱板40とフレーム21とをねじ止めするためのタッピンねじ42が螺合されるねじ孔34(下孔)が形成されている。フレーム21のうち、ねじ孔27及びねじ孔34を形成する部分は肉厚に形成する必要があるところ、ねじ孔27とねじ孔34とを略同軸上に形成することにより、フレームが幅方向に大型化することを防止できる。
【0020】
一方、PCBコネクタ60側では、図6に示すように、ハウジング61の左右の側面のほぼ中央高さ位置に、取付板70が張り出し形成されている。各取付板70には、上記の嵌合突部26に対して径方向に若干のクリアランスを持って、遊びがある状態で嵌合可能な貫通孔(本発明の取付手段)71が形成されている。貫通孔71の下側の口縁にはガイド用に面取りが施されており、上記したタッピンねじ30の頭部30Aは、この貫通孔71の上側の口縁に係止可能となっている。
ここで特筆すべきは、取付板70の板厚sが、嵌合突部26の突出高さhよりも所定寸法小さく設定されている。言い換えると、貫通孔71が嵌合突部26に嵌合されて取付板70の下面が取付面25に当たった場合に、貫通孔71の上側の口縁と、嵌合突部26に最大にねじ込まれたタッピンねじ30の頭部30Aとの間に、上記寸法分のクリアランスが確保され、遊びがある状態で取り付けられる設定となっている。
【0021】
また、PCBコネクタ60に対して相手側コネクタが嵌合・離脱された場合の保持力をより高めるための対策が、カバー50を利用して講じられている。
カバー50は合成樹脂製であって、図12,13にも示すように、概ねケース20の上面開口を覆うように装着可能であり、前端側には、PCBコネクタ60の後面側を覆う高位部51が形成されているとともに、後端側には、ヒューズボックス80の一部を嵌めて逃がす逃がし凹部52が形成されている。カバー50の左右の側面には撓み変形可能なロック片53が設けられている一方、フレーム21の左右の側壁には、ロック片53に係止して仮止めするロック突部32が設けられている。また、カバー50の後端側の両端部には、タッピンねじ(図示せず)の装着凹部54が設けられ、フレーム21の左右の側壁の上面に設けられたねじ孔33(下孔)にねじ込み可能とされている。
【0022】
ヒューズボックス80は合成樹脂製であって、図2に示すように、フレーム21の後面側を全長にわたって覆うような横長形状に形成され、長さ方向の両端部に、前面に開口したコネクタ部81が設けられているとともに、その間の正面から見た左側にヒューズ装着部82が、右側に端子収容部83がそれぞれ設けられている。
ヒューズ装着部82には、図13に示すように、ヒューズ84が装着される複数の装着孔82Aが後面側に開口して設けられ、各装着孔82Aでは、その下部側に、先端が後方を向いたバスバー16Aが圧入により装着されるとともに、上部側には、このバスバー16と対をなすタブ状の接続端子85が同じく圧入により装着され、タブ状の接続端子85の前端は、クランク状に曲げ形成されて前方に突出している。一方、コネクタ部81と端子収容部83とには、先端が前方を向いたバスバー16Bが収容されるようになっている。
【0023】
ヒューズボックス80におけるヒューズ装着部82と端子収容部83とにわたる領域の前面には、中継コネクタ90が結合可能とされており、ヒューズ装着部82及び端子収容部83から前面に突出した接続端子85、バスバー16Bの上辺が、中継コネクタ90における前面に開口した嵌合部91内に進入するようになっている。
【0024】
続いて、電気接続箱の製造工程の一例を説明する。金属板素材をプレス加工することによりバスバー基板15が形成され、このバスバー基板15の上面に、絶縁性の接着シート(図示せず)を介して回路基板11が一体的に貼着されて回路構成板10が形成される。そのとき、バスバー基板15の後縁から突出したバスバー16が既述した形状に曲げ加工される。そののち電気部品12が、回路基板11並びにバスバー基板15の導電路に対してリフロー半田付けにより実装される。
【0025】
次に、図3に示すように、PCBコネクタ60が回路基板11の表面の前縁側に載置され、それとともに雄端子62の下向きの突出端が回路基板11の対応するスルーホール13に貫通される。続いて図4に示すように、回路基板11の表面に当てられた取付脚66がタッピンねじ67によって固定される。そののち、雄端子62は裏面側においてスルーホール13に形成されたランド部に対して、フロー半田により半田付けされて接続される(半田付け部65)。
【0026】
このように、PCBコネクタ60が搭載された回路構成板10が、図5に示すように、フレーム21に対して上方から組み付けられる。このとき、バスバー基板15並びにバスバー16に形成された位置決め孔18に対して、フレーム21の上面に突設された位置決めピン22が挿入されることで位置決めされる。また、図6及び図7に示すようにPCBコネクタ60の左右の取付板70に開口された貫通孔71に、フレーム21の取付面25に立てられた嵌合突部26が嵌合される。
【0027】
次に、放熱板40の上面の全面に絶縁性の接着剤44が塗布され、図8及び図9に示すように、放熱板40は、回路構成板10におけるバスバー基板15の下面並びにフレーム21の下面に対して密着して貼り付けられる。そののち、図10に示すように、放熱板40の周縁に開口された挿通孔43にタッピンねじ42を挿入して、フレーム21の下面に形成されたねじ孔34(下孔)にねじ込むことで固定される。これにより、回路構成板10がケース20に対して固定されたことになる。
【0028】
続いて、PCBコネクタ60がフレーム21に対して固定される。すなわち、図10の右側に示すように、PCBコネクタ60の取付板70の貫通孔71が嵌合された嵌合突部26のねじ孔27に対して、頭部30A付きのタッピンねじ30がねじ込まれる。タッピンねじ30は、同図の左側に示すように、頭部30Aの下面が嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込まれ、タッピンねじ30の頭部30Aが、取付板70の貫通孔71における上側の口縁に係止して抜け止めされる。
【0029】
ここで例えば、PCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていると、取付板70を単に取付面25に対してねじ止めした場合には、雄端子62を弾性変形させつつ、取付脚66で受けられていないPCBコネクタ60の主に前端側が沈むように変位するおそれがある。
しかしながら本実施形態では、取付板70の板厚sが嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定されているから、仮にPCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていたとしても、図10に拡大して示すように、タッピンねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間に未だクリアランスが残され、遊びがある状態になっているから、取付板70が無理に押さえ付けられることはない。すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ下方に変位するといったことが回避され、そのため、雄端子62が回路基板11のスルーホール13に対して半田付けされた部分65に残留応力が生じることが防止される。したがって半田付け部65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。
【0030】
PCBコネクタ60のねじ止めが完了したら、フレーム21内にゲル等のポッティング剤(図示せず)が投入され、回路基板11の表面がポッティング剤で被覆されることによって防水性が確保される。
その後、図12に示すように、カバー50が上方から被せられる。カバー50は、ロック片53を撓み変形させつつ押し込まれ、正規位置まで押し込まれると、ロック片53がフレーム21に設けられたロック突部32に弾性的に係止される。次に、カバー50の後端側の左右両端部の装着凹部54に入れられたタッピンねじが、フレーム21の左右の側壁の上面に設けられたねじ孔33にねじ込まれて固定される。
【0031】
続いて、予め接続端子85が装着されたヒューズボックス80が、ケース20の後端縁に組み付けられる。
ヒューズボックス80の組み付けに伴い、ヒューズ装着部82では、図13に示すように、バスバー基板15に突設されたバスバー16Aが、対応する装着孔82Aにおける下部側に進入して装着される。また、端子収容部83やコネクタ部81では、先端が前方を向いたバスバー16Bが収容される。最後に、ヒューズボックス80の前面に中継コネクタ90が嵌合され、図1に示すように電気接続箱が完成される。
【0032】
この電気接続箱に対しては、ヒューズ装着部82の各装着孔82Aに後面からヒューズ84が装着される。また、PCBコネクタ60と中継コネクタ90に対しては、前面から相手側のコネクタ(図示せず)が嵌合される。そして、この電気接続箱は、PCBコネクタ60を下方に向けた縦向きの姿勢で、リレーボックスのケーシング内に収容され、その状態で放熱板40の取付片45を介してエンジンルームのフェンダー側の車両パネルに取り付けられて使用される。
【0033】
以上説明したように本実施形態によれば、PCBコネクタ60の取付板70をフレーム21側の嵌合突部26に嵌めてねじ止めする部分において、取付板70の板厚sを嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定している。これにより、仮にPCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていたとしても、タッピンねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間に未だクリアランスが残され、遊びがある状態で取り付けられるから、取付板70が無理に押さえ付けられることはない。すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ下方に変位するといったことが回避され、そのため、雄端子62が回路基板11のスルーホール13に対して半田付けされた部分65に残留応力が生じることが防止される。したがって半田付け部分65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。ひいては、PCBコネクタ60と回路構成板10との間の電気的な接続について、高い信頼性を得ることができる。
【0034】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図14によって説明する。この実施形態2では、嵌合突部26の突出端面にタッピンねじ30を挿入するためのねじ挿入孔28を形成したものを示す。なお、その他の構造、作用及び効果は上記した実施形態1と同様であるため、実施形態1と同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
図14の右側に示すように、嵌合突部26の上面には、ねじ挿入孔28が下向きに形成されている。このねじ挿入孔28のうち、嵌合突部26の上面から下方へ、嵌合突部26の突出高さhまでの領域には、ねじ挿入孔28の内径が、タッピンねじ30のねじ部30Bの一番大きい箇所の外径よりも大きく設定されてなるねじ逃がし部28Aが形成されている。ねじ挿入孔28のうち、ねじ逃がし部27Aよりも奥方の領域の内径は、ねじ逃がし部27Aの内径よりも小さく設定されており、タッピンねじ30のねじ部30Bと螺合するねじ孔28B(下孔)とされている。ねじ逃がし部28Aとねじ孔28Bとは、同軸上に形成されている。
【0036】
PCBコネクタ60がフレーム21に対して固定される際、図14の右側に示すように、PCBコネクタ60の取付板70の貫通孔71が嵌合された嵌合突部26のねじ挿入孔28に対して、頭部30A付きのタッピンねじ30が挿入される。ねじ逃がし部28Aの内径はタッピンねじ30のねじ部30Bの一番大きい箇所の外径よりも大きく設定されているから、ねじ逃がし部28Aにおいては、タッピンねじ30はねじ逃がし部28Aの内周壁と接触しないようになっている。
【0037】
タッピンねじ30のねじ部30Bの先端がねじ逃がし部28Aの下端に達すると、タッピンねじ30がねじ孔28B内に螺合される。嵌合突部26は、ねじ挿入孔28が形成されていることにより肉厚が薄くなっており、ねじ挿入孔28が形成されていない場合に比べて割れやすくなっている。この点を鑑みて、本実施形態においては、タッピンねじ30はねじ逃がし部28Aの内周壁と接触しないようになっている。これにより、タッピンねじ30をねじ孔28Bに螺合する際に、タッピンねじ30から嵌合突部26に力が加わることがないから、嵌合突部26が割れることを防止できる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0039】
(1)PCBコネクタの取付板を取付面にねじ止めする部分において、頭部付きのねじを取付板の貫通孔を通して直接に取付面にねじ込むようにし、その際にねじ込み量を規制することにより、ねじの頭部と貫通孔の口縁との間に所定のクリアランスが設けられる設定としてもよい。
【0040】
(2)頭部付きのねじをねじ込むことに変えて、頭部付きのピンを打ち込むようにしてもよい。
【0041】
(3)PCBコネクタの端子金具を回路構成板の導電路に接続する手段としては、リフロー半田による表面実装であってもよく、このようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(4)上記実施形態ではケースの底板が放熱板で形成されているが、ケースの底板が放熱板とは別に設けられていてもよい。
【0043】
(5)上記実施形態ではタッピンねじの頭部を抜け止め部としたが、嵌合突部を貫通孔に貫通した後、嵌合突部の先端を加熱、押圧して貫通孔の内径よりも径大にすることにより抜け止め部を形成してもよい。
【0044】
(6)取付手段は、コネクタに形成した嵌合突部と、フレームに形成されて嵌合突部が貫通する貫通孔と、嵌合突部を貫通孔に貫通させた後に嵌合突部の先端に設けられ、かつ貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部とからなる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態1に係る電気接続箱の外観斜視図
【図2】分解斜視図
【図3】PCBコネクタを回路構成板に搭載する前の状態の斜視図
【図4】PCBコネクタを回路構成板に搭載した状態の一部切欠側面図
【図5】回路構成板をフレームに嵌める動作を示す斜視図
【図6】同一部切欠正面図
【図7】回路構成板をフレーム内に嵌めた状態の平面図
【図8】フレームの下面に放熱板を装着する動作を示す斜視図
【図9】フレームの下面に放熱板が装着された状態の側断面図
【図10】PCBコネクタをフレームに固定する動作を示す一部切欠正面図
【図11】PCBコネクタをフレームに固定した状態の後面側から見た斜視図
【図12】カバーを被着する動作を示す斜視図
【図13】カバーを被着した状態の側断面図
【図14】実施形態2に係る電気接続箱において、PCBコネクタをフレームに固定する動作を示す一部切欠正面図
【符号の説明】
【0046】
10…回路構成板
11…プリント回路基板
13…スルーホール
20…ケース
21…フレーム
24…取付台
25…取付面
26…嵌合突部(取付手段)
27…ねじ孔
30…タッピンねじ(ねじ:取付手段)
30A…頭部(抜け止め部)
40…放熱板
60…PCBコネクタ
61…ハウジング
62…雄端子(端子金具)
65…半田付け部
70…取付板
71…貫通孔(取付手段)
h…(嵌合突部26の)突出高さ
s…(取付板70の)板厚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路構成板にはコネクタが搭載されてこのコネクタに装着された端子金具が前記回路構成板の導電路に対して半田付けにより接続され、前記回路構成板が、ケース内に収容されて固定されてなる電気接続箱において、
前記コネクタ及び前記ケースの双方には、前記コネクタを前記ケースに対して遊びがある状態で取り付けるための取付手段が設けられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記取付手段は、前記ケースに形成した嵌合突部と、前記コネクタに形成されて前記嵌合突部が貫通する貫通孔と、前記嵌合突部を前記貫通孔に貫通させた後に前記嵌合突部の先端に設けられ、かつ前記貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部とからなることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記抜け止め部は、前記嵌合突部の突出端面に螺合されたねじの頭部であることを特徴とする請求項2記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記嵌合突部の突出端面には、前記ねじを挿入するためのねじ挿入孔が形成されており、
前記ねじ挿入孔は、前記突出端面から奥方へ、前記嵌合突部の突出高さまでの領域に形成され、かつ前記ねじのねじ部の最大外径よりも大きな内径を備えたねじ逃がし部と、前記ねじ逃がし部の奥方に形成され、かつ前記ねじが螺合するねじ孔とからなることを特徴とする請求項3記載の電気接続箱。
【請求項1】
回路構成板にはコネクタが搭載されてこのコネクタに装着された端子金具が前記回路構成板の導電路に対して半田付けにより接続され、前記回路構成板が、ケース内に収容されて固定されてなる電気接続箱において、
前記コネクタ及び前記ケースの双方には、前記コネクタを前記ケースに対して遊びがある状態で取り付けるための取付手段が設けられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記取付手段は、前記ケースに形成した嵌合突部と、前記コネクタに形成されて前記嵌合突部が貫通する貫通孔と、前記嵌合突部を前記貫通孔に貫通させた後に前記嵌合突部の先端に設けられ、かつ前記貫通孔の内径よりも径大に形成された抜け止め部とからなることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記抜け止め部は、前記嵌合突部の突出端面に螺合されたねじの頭部であることを特徴とする請求項2記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記嵌合突部の突出端面には、前記ねじを挿入するためのねじ挿入孔が形成されており、
前記ねじ挿入孔は、前記突出端面から奥方へ、前記嵌合突部の突出高さまでの領域に形成され、かつ前記ねじのねじ部の最大外径よりも大きな内径を備えたねじ逃がし部と、前記ねじ逃がし部の奥方に形成され、かつ前記ねじが螺合するねじ孔とからなることを特徴とする請求項3記載の電気接続箱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−74984(P2006−74984A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1575(P2005−1575)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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