説明

電気接続箱

【課題】始動系電装品の作動不良を防ぐ。
【解決手段】電気接続箱10は、車両に搭載されるケーシング11と、ケーシング11に収容されるとともに少なくとも車両の始動時に通電されるものであって、リレーケース(電装品ケース)20aとリレーケース20aに収容され且つ固定接点FC及び可動接点MCを有する端子部20bとを有する始動系リレー(始動系電装品)20Aと、ケーシング11に収容されるとともに少なくとも車両の作動中に通電される作動系電装品(作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15)と、始動系リレー20Aと作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つとの間に介在する包囲遮熱壁(遮熱壁)24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両において共通の電源から種々の車両用電装品に電力を分配制御する機能を有するモジュールとして電気接続箱が用いられており、この電気接続箱は、ケーシング内にリレーやヒューズなどの各種電装品が収容されてなる。このような構成の電気接続箱に使用されるリレーとして下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されたリレーは、電装品ケースと、電装品ケース内に収容される端子部と、端子部に接続されたコイルと、上記端子部とは別途に電装品ケースの内外に露出する形で配される金属板とを備えている。このような構成によれば、電装品ケース内のコイルの発熱に伴って電装品ケース内に生じる水蒸気を、周囲環境温度が低下する際に金属板に積極的に結露させることができ、それにより端子部が有する接点への結露を抑制してその結露が氷結して生じる接点導通不良を防止するようにしている。
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術は、リレー単体に関して氷結による接点導通不良を防止するものであり、電気接続箱内に収容された他の電装品の影響に配慮したものではない。つまり、電気接続箱には、リレー以外にも様々な電装品が多数収容されており、それら他の電装品に生じる発熱の影響や、電装品の種類によって通電・非通電のタイミングが異なることの影響などによってリレーに氷結による接点導通不良の問題が生じ易くなる場合があったのである。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、始動系電装品の作動不良を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気接続箱は、車両に搭載されるケーシングと、前記ケーシングに収容されるとともに少なくとも前記車両の始動時に通電されるものであって、電装品ケースと前記電装品ケースに収容され且つ接点を有する端子部とを有する始動系電装品と、前記ケーシングに収容されるとともに少なくとも前記車両の作動中に通電される作動系電装品と、前記始動系電装品と前記作動系電装品との間に介在する遮熱壁と、を備える。
【0008】
このようにすれば、車両の始動時にはケーシングに収容された始動系電装品に通電されることで、車両が作動され、作動中はケーシングに収容された作動系電装品が通電される。従って、車両の作動中は通電に伴って作動系電装品から発熱が生じる。このとき、作動系電装品からの熱が始動系電装品の電装品ケースに伝達されると、低温環境下において車両の作動が停止されたときに、始動系電装品の電装品ケースが接点を有する端子部よりも高温になっていて大きな温度差が生じてしまうため、接点には電装品ケース内に存在する水分が結露して氷結し易くなり、それに起因して始動系電装品が作動不良となる可能性があった。
【0009】
その点、本発明では、作動系電装品と始動系電装品との間に遮熱壁が介在して配されているから、車両の作動中に生じる作動系電装品からの熱が始動系電装品の電装品ケースへと伝達し難くなっており、電装品ケースの温度上昇を抑制することができる。従って、低温環境下において車両の作動が停止されたときでも、始動系電装品の電装品ケースと接点を有する端子部との間に生じ得る温度差を緩和することができる。これにより、電装品ケース内に存在する水分が接点に結露して氷結するといった事態が生じ難くなり、もって再度車両を始動させる際に始動系電装品が通電しなくなる、といった事態を回避することができる。
【0010】
なお、上記の始動系電装品には、車両の始動時にのみ通電されるものに限られず、車両の始動時に通電され且つ車両の作動中や車両の作動が停止されたときにも通電されるものも含まれる。また、上記した作動系電装品には、車両の作動中、常に通電されているもの以外にも、車両の作動中に通電状態となったり非通電状態となったりするもの(例えば、通常は通電状態であるものの一時的に非通電状態となるもの、または通常は非通電状態であるものの一時的に通電状態となるもの)も含まれる。また、作動系電装品には、車両の作動中にのみ通電されるものに限られず、車両の作動中に通電され且つ車両の作動が停止されたときにも通電されるものも含まれる。
【0011】
本発明の実施態様として、次の構成が好ましい。
(1)前記ケーシングには、前記始動系電装品及び前記作動系電装品が実装されるとともに前記端子部に対して接続される回路パターンを有する回路基板が収容されている。このようにすれば、始動系電装品の接点を有する端子部は、回路基板に形成された回路パターンに接続されているため、低温環境下では回路パターンによって端子部の温度低下が促進される傾向にあるものの、上記したように遮熱壁によって電装品ケースの温度上昇が抑制されるとともに電装品ケースと接点を有する端子部との間に生じ得る温度差が緩和されているので、接点に結露及び氷結が生じるのを好適に防ぐことができる。
【0012】
(2)前記遮熱壁は、前記回路基板側に開口した有底筒状をなすとともに前記始動系電装品を取り囲む形で配されている。このようにすれば、始動系電装品は、回路基板側に開口した有底筒状をなす遮熱壁と回路基板とによって囲まれた空間内に配されるので、作動系電装品側への露出が殆どなくなるか、ごく僅かなものとなる。これにより、作動系電装品からの熱が始動系電装品の電装品ケースへと一層伝達し難くなり、電装品ケースの温度上昇をより好適に抑制することができる。
【0013】
(3)前記回路基板には、前記始動系電装品が複数実装されており、前記遮熱壁は、各前記始動系電装品を個別に取り囲む形で複数配されている。このようにすれば、仮に複数の始動系電装品を一括して取り囲む形の遮熱壁を形成した場合に比べると、より高い遮熱効果を得ることができる。
【0014】
(4)複数の前記遮熱壁は、互いに隣り合って配されており、隣り合う前記遮熱壁同士を連結する遮熱壁間連結部が設けられている。このようにすれば、遮熱壁間連結部によって各遮熱壁の強度を高く保つことができる。
【0015】
(5)前記始動系電装品は、前記ケーシング内において前記作動系電装品よりも相対的に外寄りとなる位置に配されている。このようにすれば、ケーシング内における外寄りの位置は、内寄りの位置に比べると、熱が外部へ逃げやすいことから、低温環境下において始動系電装品における電装品ケースの温度低下をより促進することができる。これにより、電装品ケースと接点を有する端子部との間に生じ得る温度差をより緩和することができる。
【0016】
(6)前記始動系電装品は、前記ケーシング内において外端位置に配されている。このようにすれば、ケーシング内における外端位置は、ケーシング内において特に熱が外部へ逃げ易い場所であるから、ここに始動系電装品を配することで、低温環境下における電装品ケースの温度低下を一層促進することができ、もって電装品ケースと接点を有する端子部との間に生じ得る温度差をより一層緩和することができる。
【0017】
(7)前記遮熱壁は、前記ケーシングに一体形成されている。このようにすれば、仮に遮熱壁をケーシングとは別体とした場合に比べると、組付工数を削減できるなど製造コストの低減に好適である。
【0018】
(8)前記ケーシングには、前記遮熱壁と隣り合う位置にコネクタ部が形成されており、隣り合う前記遮熱壁と前記コネクタ部とを連結するコネクタ遮熱壁間連結部が設けられている。このようにすれば、コネクタ遮熱壁間連結部によって遮熱壁及びコネクタ部の強度を高く保つことができる。
【0019】
(9)前記始動系電装品は、リレーとされており、前記端子部は、前記接点として少なくとも固定接点と、前記固定接点に対して接離可能な可動接点とを有する。このようにすれば、上記した遮熱壁によって端子部が有する固定接点と可動接点とのいずれか一方または双方に対して電装品ケース内の水分が結露して氷結するのが防がれるから、車両を再度始動させる際に、固定接点に対して可動接点が良好に接触され、もってリレーが有するスイッチング機能を確実に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、始動系電装品の作動不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る電気接続箱の分解斜視図
【図2】電気接続箱の斜視図
【図3】電気接続箱の平面図
【図4】図3のiv-iv線断面図
【図5】図3のv-v線断面図
【図6】図4のvi-vi線断面図
【図7】電気接続箱が備えるリレーの概略構成を示す側断面図
【図8】本発明の実施形態2に係る電気接続箱の拡大側断面図
【図9】電気接続箱の拡大平断面図
【図10】本発明の実施形態3に係るリレーの概略構成を示す側断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1から図7によって説明する。本実施形態の電気接続箱10は図示しない車両に搭載されて使用される。電気接続箱10は、図示しないバッテリ(電源)と、図示しない各種車載電装品との間に取り付けられて、これら車載電装品の通電または断電(非通電)を制御する。この電気接続箱10は、例えば車両のエンジンルーム内に取り付けられて使用される。なお、車載電装品の具体例としては、各種ランプ(ヘッドライト、ブレーキランプ、ハザードランプ(ウィンカーランプ)、室内灯などを含む)、エアコン、パワーウィンドウ、パワーステアリング、パワーシート、ホーン、ワイパー、デフロスタ、シートヒータ、スタータ、エンジンコントロールユニット(ECU)、燃料ポンプ、イグニッション(点火装置)などがある。また、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。また、図4及び図5に示す上側を表側とし、同図下側を裏側とする。
【0023】
電気接続箱10は、図1に示すように、全体として横長の方形状をなしており、ケーシング(筐体、外装体)11と、ケーシング11内に収容される第1回路基板12と、ケーシング11内に収容されるとともに第1回路基板12に対して重なる形で配される第2回路基板13とを備えてなる。この電気接続箱10には、バッテリ及び上記した各種車載電装品に電気的に接続された電線(ワイヤハーネス)の端末に設けられた相手側コネクタ(図示せず)が嵌合接続されるコネクタ部(作動系電装品)14が複数設けられている。さらには、電気接続箱10には、図示しないヒューズを受け入れるとともにヒューズに接続可能とされるヒューズ接続部(作動系電装品)15が複数設けられている。これら相手側コネクタ及びヒューズは、電気接続箱10に対して表側からZ軸方向に沿って差し込まれるようになっている。また、この電気接続箱10における長辺方向が各図面に示すX軸方向と、短辺方向がY軸方向と、厚さ方向がZ軸方向とそれぞれ一致している。
【0024】
ケーシング11は、合成樹脂製とされており、図1に示すように、電気接続箱10と同様に横長の方形状をなしている。ケーシング11は、表裏一対(図1に示す上下一対)のケーシング部材16,17を組み付けてなるものとされ、裏側(同図下側)に配されるものが第1ケーシング部材(ロアケース)16とされるのに対し、表側(同図上側)に配されるものが第2ケーシング部材(アッパケース)17とされる。第1ケーシング部材16及び第2ケーシング部材17を組み付けた状態では、内部に所定の広さの空間が確保されており、ここに第1回路基板12及び第2回路基板13が収容可能とされる。両ケーシング部材16,17の組み付け方向は、Z軸方向と一致している。
【0025】
第1ケーシング部材16は、図1に示すように、Z軸方向に沿って表側(図1に示す上向き)に開口した箱型をなしており、X軸方向及びY軸方向(第1回路基板12の板面)に沿って延在する底板部16aと、底板部16aの外周端部からZ軸方向に沿って表側に向けて立ち上がるとともに略角筒状をなす外側板部16bとからなるものとされる。第1ケーシング部材16の底板部16aには、第1回路基板12を裏側から支持可能な支持突起16cが、底板部16aの面内に多数個分散配置されている。また、底板部16aには、第2ケーシング部材17を取り付け状態に固定するためのネジを締め付けるためのネジ受け部16dが設けられている。外側板部16bの内面には、図4に示すように、両ケーシング部材16,17を組み付け状態に保持するためのロック部16eが設けられている。ロック部16eは、外側板部16bの立ち上がり先端部において爪状に形成されており、外側板部16bの各長辺部分及び各短辺部分に複数ずつ配されている。
【0026】
第2ケーシング部材17は、図1に示すように、Z軸方向に沿って裏側(図1に示す下向き)に開口した略箱型をなしており、大まかには、第1ケーシング部材16の底板部16aに対して対向状をなすとともに第1回路基板12及び第2回路基板13に対して表側から被せられる蓋状部17aと、蓋状部17aの外周端部から裏側に向けて立ち上がるとともに略角筒状をなす内側板部17bとからなるものとされる。蓋状部17aには、後述する第1回路基板12上に実装されたコネクタ端子18と共にコネクタ部14を構成するコネクタフード部17cと、第1回路基板12上に実装されたヒューズ接続端子19と共にヒューズ接続部15を構成するヒューズ装着部17dとがそれぞれ複数ずつ設けられている。これらコネクタフード部17c及びヒューズ装着部17dは、その殆ど(詳しくは図3に示す左上角部に配されるコネクタフード部17cを除いた全て)が蓋状部17aのうち長辺方向における中央側部分に集約して配されている。コネクタフード部17cは、複数のコネクタ端子18を一括して取り囲むとともに表側に向けて開口する略角筒状をなしており、表側から既述した相手側コネクタが嵌合可能とされる。ヒューズ装着部17dは、複数のヒューズ接続端子19を個別に取り囲むとともに表側に向けて開口する略略角筒状をなしていて、表側から既述した複数のヒューズを個別に装着可能なヒューズ装着空間を複数有している。また、蓋状部17aのうち、長辺方向についての一方の端部(図1に示す右上側端部、図3に示す右側端部)には、コネクタフード部17c及びヒューズ装着部17dよりも一段高くなっていて且つ開口部を有することのない閉鎖状部17fが形成されている。閉鎖状部17fにより、第2回路基板13をほぼ全域にわたって覆うことが可能とされている。
【0027】
内側板部17bは、第1ケーシング部材16の外側板部16bに対して内側に嵌合可能とされており、図2及び図4に示すように、両ケーシング16,17を組み付けた状態では、外側板部16bによって外側から全周にわたって取り囲まれるものとされる。内側板部17bの外面には、外側板部16bのロック部16eに係止されることで、両ケーシング部材16,17を組み付け状態に保持するロック突部17eが設けられている。ロック突部17eは、内側板部17bの外面から突出する形態とされており、内側板部17bの各長辺部分及び各短辺部分に複数ずつ配されている。
【0028】
第1回路基板12は、合成樹脂製とされ、図1に示すように、第1ケーシング部材16の底板部16aの板面に沿って延在するとともに底板部16aのほぼ全域にわたる大きさの横長な板状をなしており、その表側の板面に対してコネクタ部14を構成するコネクタ端子18、ヒューズ装着部15を構成するヒューズ接続端子19及びリレー(始動系電装品、作動系電装品)20が複数ずつ実装されている。第1回路基板12は、コネクタ端子18、ヒューズ接続端子19及びリレー20に接続される回路パターン(図示せず)を有しており、この回路パターンにバッテリから供給される電流が流されるようになっている。この第1回路基板12は、バッテリから各種車載電装品への電力供給を中継する、いわば電力系回路基板であり、その通電または断電を、実装されたリレー20によって制御可能とされる。
【0029】
コネクタ端子18は、図1に示すように、第1回路基板12における表側の板面から表側に向けて突き出す形で配されるとともに、タブ状をなしている。コネクタ端子18は、第1回路基板12上において、各コネクタフード部16cによって取り囲まれる各領域に複数本ずつ束をなしつつ配置されている。ヒューズ接続端子19は、第1回路基板12における表側の板面から表側に向けて突き出す形で配されるとともに、先端部が二股状に分岐された音叉型をなしている。ヒューズ接続端子19は、第1回路基板12上において、各ヒューズ装着部16dのヒューズ装着空間内に個別に配されるよう複数本が並んで配置されている。これらコネクタ端子18及びヒューズ接続端子19は、図1及び図3に示すように、その殆ど(詳しくは図3に示す左上角部に配されるコネクタ端子18を除いた全て)が第1回路基板12のうち長辺方向における中央側部分に集約して配されている。
【0030】
リレー20は、図1に示すように、バッテリから供給される電力を、車載電装品に対して供給するか否かを制御するための電装品であり、通電または断電の制御対象となる各車載電装品毎に複数が備えられている。リレー20が通電されるのに伴い、その制御対象となる車載電装品も通電状態となるのに対し、リレー20が非通電とされるのに伴い、制御対象となる車載電装品も断電状態となる。リレー20は、図1及び図3に示すように、第1回路基板12のうち長辺方向における両端側部分、つまり上記したコネクタ端子18及びヒューズ接続端子19を挟んだ位置に分散して配されている。従って、第1回路基板12は、その長辺方向についての中央側部分が、コネクタ端子18及びヒューズ接続端子19の配置領域となり、長辺方向における両端側部分が一対のリレー20の配置領域となっている。
【0031】
ここで、リレー20の詳しい構造について説明する。リレー20は、図1及び図7に示すように、合成樹脂製のリレーケース(電装品ケース)20aと、リレーケース20aの底面から一部が外部へ突出する金属製の端子部20bと、リレーケース20a内に収容されるコイル20cとを備えている。リレーケース20aは、全体としてZ軸方向に沿って細長い、ブロック状をなしており、その内部に端子部20b及びコイル20cの収容空間を有している。なお、リレーケース20aは、底面を有する基部20a1と、基部20a1に対して被せられる略有底筒状のカバー部20a2とからなる。このうち、カバー部20a2における天井部分(次述する可動接点端子部20b3の可動部と対向する部分)には、外部空間に連通する通気孔20a2aが複数(6個)間欠的に並列する形で形成されている。この通気孔20a2aにより、コイル発熱時にコイル20cから発生する水蒸気を外部に放出すると共に、内部の端子部20bやコイル20cの放熱を図ることができる。端子部20bは、リレーケース20a内においてコイル20cにおける巻線の両端部にそれぞれ接続される一対のコイル端子部20b1と、固定接点FCを有する固定接点端子部20b2と、可動接点MCを有する可動接点端子部20b3とからなる。このうち、可動接点端子部20b3は、片持ち状をなすとともにコイル20cから作用する磁場によって弾性的に変位可能とされる可動部を有しており、可動部の変位に伴ってその先端部に備えられる可動接点MCが、固定接点端子部20b2の固定接点FCに対して接離されるようになっている。なお、可動接点端子部20b3は、可動部を有する端子本体20b3aと、可動接点MCを有する接点部材20b3bとから構成されており、前者(端子本体20b3a)が可動部が有するばね部の耐久性などに優れた金属材料からなるのに対し、後者(接点部材20b3b)が導電性に優れた金属材料からなるものとされる。この端子本体20b3aにおける可動部には、磁性体である磁性部材20dが取り付けられている。磁性部材20dは、鉄などの磁性材料からなるものであって、上記可動部とコイル20cとの間に介在する形で配されており、コイル20cからの電磁誘導作用によって可動部を変位させることが可能とされる。このリレー20は、コイル20cに電流が流されていない状態では、固定接点FCと可動接点MCとが離間されて非接触状態とされていて、固定接点端子部20b2と可動接点端子部20b3との間が非通電とされるのに対し、コイル端子部20b1を介してコイル20cに電流が流されると、コイル20cからの電磁誘導作用によって磁性部材20dがコイル20c側に吸引されるのに伴い可動接点端子部20b3が変位してその可動接点MCが固定接点FCに接触されることで、固定接点端子部20b2と可動接点端子部20b3との間が通電されるようになっている。つまり、このリレー20は、いわゆるa接点の接点構造となっている。なお、各端子部20b1,20b2,20b3のうち、リレーケース20aの底面から突出する部分が第1回路基板12に対して半田などによって固着されるとともに回路パターンに接続されている。
【0032】
ところで、リレー20には、制御対象となる車載電装品に応じて通電されるタイミングが異なるものが含まれており、詳しくは車両の始動時に通電される始動系電装品である始動系リレー20Aと、車両が作動している間に通電される作動系電装品である作動系リレー20Bとの2種類が含まれている。具体的には、始動系リレー20Aは、スタータ、エンジンコントロールユニット、燃料ポンプ、イグニッションなどの車載電装品の通電または断電を制御するものとされる。一方、作動系リレー20Bは、各種ランプ、エアコン、パワーウィンドウ、パワーステアリング、パワーシート、ホーン、ワイパー、デフロスタ、シートヒータなどの車載電装品の通電または断電を制御するものとされる。なお、コネクタ部14(コネクタ端子18)及びヒューズ接続部15(ヒューズ接続端子19)は、車両が作動している間に通電されるものであるから、共に上記した作動系リレー20Bと同じく作動系電装品である、と言える。
【0033】
なお、上記の「始動系電装品(始動系リレー20A)」には、車両の始動時にのみ通電されるものに限られず、車両の始動時に通電され且つ車両の作動中や車両の作動が停止されたときにも通電されるものも含まれる。また、上記の「作動系電装品(作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15)」には、車両の作動中、常に通電されているもの以外にも、車両の作動中に通電状態となったり非通電状態となったりするもの(例えば、通常は通電状態であるものの一時的に非通電状態となるもの、または通常は非通電状態であるものの一時的に通電状態となるもの)も含まれる。また、「作動系電装品」には、車両の作動中にのみ通電されるものに限られず、車両の作動中に通電され且つ車両の作動が停止されたときにも通電されるものも含まれる。
【0034】
第2回路基板13は、合成樹脂製とされ、図1に示すように、第1回路基板12の板面に並行する縦長な板状をなしており、その大きさが第1回路基板12よりも小さくなっている。第2回路基板13は、その長辺方向が第1回路基板12の短辺方向(Y軸方向)と、短辺方向が第1回路基板12の長辺方向(X軸方向)と一致した姿勢でケーシング11内に収容されている。第2回路基板13は、ケーシング11内においてその長辺方向(X軸方向)について偏った位置に偏在配置されており、具体的には第1回路基板12のうちその長辺方向についての一方の端側部分、及び第2ケーシング部材17の蓋状部17aのうちの閉鎖状部17fと平面に視て重畳する位置に配されている。第2回路基板13は、図4に示すように、第1回路基板12に対してZ軸方向について表側に所定の間隔を空けて離間した位置に配されており、それにより第1回路基板12と第2回路基板13との間に複数のリレー20の収容空間が確保されている。つまり、第2回路基板13は、第1回路基板12との間に複数のリレー20を挟み込む形で配されている。第2回路基板13には、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、マイコン等の各種電子部品(図示せず)が実装されるとともに、各種電子部品に接続される回路パターン(図示せず)が形成されている。
【0035】
さらには、第2回路基板13には、図1に示すように、中継端子部21の一端側が実装されており、この中継端子部21の他端側が第1回路基板12に差し込まれることで、両回路基板12,13の回路パターン同士が中継接続されるようになっている。中継端子部21は、複数本の角柱状の端子をX軸方向またはY軸方向に沿って直線的に並列配置してなるものとされており、第2回路基板13のうち両短辺側端部と、ケーシング11における外寄り(図6に示す右側)に位置する長辺側端部とにそれぞれ配されている。このように、第2回路基板13は、実装された各種電子部品によって第1回路基板12に実装されたリレー20などの作動状態(通電または非通電)を制御することが可能とされ、いわば制御系回路基板であると言える。
【0036】
さて、本実施形態では、ケーシング11内におけるリレー20の配置をその種類に応じて次のようにしている。すなわち、リレー20のうち、始動系リレー20Aは、図1及び図6に示すように、ケーシング11内において相対的に外寄りとなる位置に配されているのに対し、作動系リレー20Bは、ケーシング11内において相対的に内寄りとなる位置に配されている。詳しくは、始動系リレー20Aは、ケーシング11及び第1回路基板12における長辺方向の両端側部分にそれぞれ複数ずつ分けて配されることで2つの始動系リレー群22,23を構成しており、上記長辺方向の両端側部分のうち、第2回路基板13とは平面に視て重畳しない端側部分(図6に示す左端側部分)に配されるものが第1始動系リレー群22とされ、第2回路基板13と平面に視て重畳する端側部分(図6に示す右端側部分)に配されるものが第2始動系リレー群23とされる。これに対して、作動系リレー20Bは、ケーシング11及び第1回路基板12における長辺方向について、中央側に複数ずつ集約して配された各コネクタ部14及び各ヒューズ接続部15の群と、上記の第2始動系リレー群23との間に位置して複数が配されている。この作動系リレー20Bは、各コネクタ部14及び各ヒューズ接続部15の群に対して隣接して配されるとともに、これら各コネクタ部14及び各ヒューズ接続部15と同じく作動系電装品であることから、作動系電装品は、第1回路基板12における長辺方向の中央側部分に集約して配されていることになる。つまり、第1回路基板12における長辺方向の中央側部分が作動系電装品配置領域とされるのに対し、両端側部分が始動系電装品配置領域とされている、と言える。
【0037】
さらに詳しくは、第1始動系リレー群22を構成する始動系リレー20Aは、図6に示すように、第1回路基板12における長辺方向の端側部分において短辺方向(Y軸方向)の中央側に配されるコネクタ部14を挟んだ位置に2つずつ互いにY軸方向に隣り合いつつ配されるとともに、このうち短辺方向の端部(図6に示す下側端部)に配されるものと隣り合うものに対して長辺方向(X軸方向)について中央寄りに隣り合う位置に1つ配されており、合計5つとされる。このうち、コネクタ部14を挟んだ位置に配される4つの始動系リレー20Aは、ケーシング11内における外端部に配されており、特に、ケーシング11のうち1つの角部(図6に示す左下角部)に配されるものを含んでいる。一方、第2始動系リレー群23を構成する始動系リレー20Aは、第1回路基板12における長辺方向の端側部分(第1空間S1)において短辺方向の中央側に配される中継端子部21を挟んだ位置に1つずつ配されるとともに、当該中継端子部21に対して長辺方向について中央寄りに隣り合う位置に1つ配されており、合計3つとされる。このうち、中継端子部21を挟んだ位置に配される2つの始動系リレー20Aは、ケーシング11内における外端部に配されており、特に、ケーシング11のうち2つの角部(図6に示す右上角部と右下角部)に配されている。また、作動系リレー20Bは、第1回路基板12における短辺方向の両端に配される一対の中継端子部21の間にY軸方向に沿って5つが並んで配されているのに加え、第1回路基板12の短辺方向の中央側に配されるものに対して同長辺方向について内寄り及び外寄りにそれぞれずれた位置に1つずつが配されている。これら7つの作動系リレー20Bは、上記の第2始動系リレー群23と共に第2回路基板13と平面に視て重畳する位置に配されるとともに、第1回路基板12と第2回路基板13との間に挟み込まれる配置とされている(図4)。
【0038】
そして、本実施形態に係る電気接続箱10では、図4から図6に示すように、第1始動系リレー群22を構成する各始動系リレー20Aを取り囲むとともに、コネクタ部14、ヒューズ接続部15、または作動系リレー20Bとの間に介在する包囲遮熱壁(遮熱壁)24を設けるようにしている。詳しくは、包囲遮熱壁24は、第2ケーシング部材17における蓋状部17aに一体形成されており、裏側、つまり第1回路基板12側に向けて開口する略有底角筒状をなしている。包囲遮熱壁24は、第1回路基板12に対して対向状をなす天井壁部24aと、天井壁部24aの外周端部から裏側に向けて突出する断面四角形の略角筒状の側壁部24bとから構成されており、始動系リレー20Aの底面(第1回路基板12との対向面)を除く外周面を取り囲むことが可能とされる。また、包囲遮熱壁24は、その一部(第1ケーシング部材16の外側板部16bとの対向部位)が第2ケーシング部材17における内側板部(外周壁部)17bを兼用している。
【0039】
包囲遮熱壁24は、両ケーシング部材16,17を組み付けた状態では、図4及び図5に示すように、その開口端部が第1回路基板12の板面に対して当接または近接した位置となるよう配されている。従って、この状態では始動系リレー20Aは、第1回路基板12と包囲遮熱壁24との間に保有され、殆ど隙間を有さない閉鎖空間内に収容されるとともに、外周面が第1回路基板12と包囲遮熱壁24とによってほぼ全域にわたって覆われることになる。包囲遮熱壁24は、第1始動系リレー群22を構成する各始動系リレー20Aを個別に取り囲む形(個別包囲型)に形成されるとともに、第1始動系リレー群22を構成する始動系リレー20Aの数と同数(図6では5つ)配されている。従って、第1始動系リレー群22を構成する各始動系リレー20Aは、各包囲遮熱壁24内に保有される相互に独立した収容空間内に個別に収容されている。また、第1始動系リレー群22を構成する始動系リレー20Aのうち、第1回路基板12上においてX軸方向またはY軸方向について隣り合う始動系リレー20Aの間には、各遮熱壁24の側壁部24bが2枚介在することになる。
【0040】
隣り合う包囲遮熱壁24は、図4及び図5に示すように、遮熱壁間連結部25によって相互に連結されている。遮熱壁間連結部25は、隣り合う包囲遮熱壁24のうち各側壁部24bの対向部位同士を連結しており、側壁部24bにおけるZ軸方向についての配置が天井壁部24a側よりも開口端側の位置とされる。また、包囲遮熱壁24は、図5に示すように、隣り合うコネクタ部14をなすコネクタフード部17cに対してコネクタ遮熱壁間連結部26によって連結されている。コネクタ遮熱壁間連結部26は、包囲遮熱壁24の側壁部24bとコネクタフード部17cとの対向部位同士を連結しており、Z軸方向についての配置が上記遮熱壁間連結部25とほぼ同じとされる。また、包囲遮熱壁24は、図4に示すように、隣り合うヒューズ接続部15をなすヒューズ装着部17dに対してヒューズ接続部遮熱壁間連結部27によって連結されている。ヒューズ接続部遮熱壁間連結部27は、包囲遮熱壁24の側壁部24bとヒューズ装着部17dとの対向部位同士を連結しており、Z軸方向についての配置が上記遮熱壁間連結部25とほぼ同じとされる。
【0041】
さらには、本実施形態に係る電気接続箱10では、図4及び図6に示すように、第2始動系リレー群23を構成する各始動系リレー20Aと、第2始動系リレー群23に対して隣り合って配されている複数の作動系リレー20Bとの間に介在する区画遮熱壁(遮熱壁)28を設けるようにしている。この区画遮熱壁28は、第1回路基板12と第2回路基板13との間に保有される空間を、ケーシング11における外寄りの第1空間S1と内寄りの第2空間S2とに区画しており、この第1空間S1に第2始動系リレー群23を構成する各始動系リレー20Aが、第2空間S2に複数の作動系リレー20Bがそれぞれ配されている。この第1空間S1には、ケーシング11内における長辺方向についての外端部が含まれており、特に外端部の中でも2つの角部が含まれている。
【0042】
詳しくは、区画遮熱壁28は、図4及び図6に示すように、各回路基板12,13及び各ケーシング部材16,17とは別部品とされており、第1回路基板12に対して取り付けられている。区画遮熱壁28は、第1回路基板12上において、平面に視て途中で屈曲しつつも第1回路基板12をY軸方向に沿って横切る形で延在されている。区画遮熱壁28は、第1回路基板12における短辺方向の両端に配される一対の中継端子部21の間を横切っており、途中で第1回路基板12における長辺方向の外向きに蛇行するよう屈曲されている。区画遮熱壁28は、第1回路基板12、第2回路基板13及び上記の一対の中継端子部21と共に第2空間S2を取り囲んで閉鎖状に保っている。これに対して、区画遮熱壁28は、第1空間S1を第2空間S2側とは反対側、つまりケーシング11における長辺方向(X軸方向)の外向きに開放させるとともに、第1空間S1と第2空間S2との並び方向と直交(交差)する方向、つまりケーシング11における短辺方向(Y軸方向)の外向きに開放させる形態とされている。すなわち、区画遮熱壁28は、第1空間S1を、第2空間S2側を除いた三方向についてケーシング11の外向きに開放している。
【0043】
区画遮熱壁28は、図4及び図6に示すように、Y軸方向についての両端部における底部にそれぞれ第1回路基板12の板面に沿って延在する形態の台座部28aを有しており、この台座部28aの壁面と区画遮熱壁28の壁面とを連結する縦型補強リブ29が設けられている。台座部28aは、区画遮熱壁28を板厚方向に跨ぐ範囲に形成されており、各台座部28aに対して縦型補強リブ29が一対ずつ設けられている。縦型補強リブ29は、図4に示すように、側方視略三角形状をなしている。区画遮熱壁28は、図6に示すように、途中に4箇所のほぼ直角に屈曲される屈曲部位を有しており、各屈曲部位における壁面間を連結する横型補強リブ30が設けられている。横型補強リブ30は、平面に視て略直角三角形状をなしており、斜辺を除いた2つの辺が区画遮熱壁28における屈曲部位の壁面に連ねられている。また、区画遮熱壁28のうち、ケーシング11における最も外寄りに配されるとともにY軸方向に沿って延在する部分は、その外側の壁面が、第1回路基板12における短辺方向の中央側に配される中継端子部21に沿って延在する形態とされる。これにより、第2回路基板13の組み付けに伴って中継端子部21を第1回路基板12に対して差し込む際には、上記中継端子部21が区画遮熱壁28の外側の壁面に摺接されることで、差し込み動作をガイドすることが可能とされる。
【0044】
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用を説明する。車両を始動させる際には、第2回路基板13から中継端子部21を介して第1回路基板12に所定の信号が伝送されることで、第1回路基板12に実装された各始動系リレー20Aが通電される。すると、各始動系リレー20Aの制御対象である車載電装品(スタータ、エンジンコントロールユニット、燃料ポンプ、イグニッションなど)が通電されることで、車両に搭載されたエンジンなどが始動され、もって車両が運転可能な状態となる。これをもって車両は作動中となり、使用者の操作に従って第2回路基板13から中継端子部21を介して第1回路基板12に所定の信号が伝送されることで、各作動系電装品(作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15)が通電されたり、または非通電状態とされたりする。作動系リレー20Bが通電されると、その制御対象である車載電装品(各種ランプ、エアコン、パワーウィンドウ、パワーステアリング、パワーシート、ホーン、ワイパー、デフロスタ、シートヒータなど)が通電される。各作動系電装品及び各回路基板12,13は、通電に伴って発熱し、その発熱量は通電累計時間及び通電される電流量に比例する傾向にある。
【0045】
このとき、各作動系電装品(作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15)からの熱が始動系電装品である始動系リレー20Aのリレーケース20aに伝達されると、リレーケース20aには温度上昇が生じることになる。特に、第2始動系リレー群23をなす各始動系リレー20Aは、第1回路基板12と第2回路基板13との間に挟み込まれているため、リレーケース20aの放熱性が芳しくなく、そのために車両の作動中に生じる各作動系電装品からの熱がリレーケース20aに伝達されるとリレーケース20aに蓄熱が生じ易い。一方、低温で且つ高湿の環境下においてエンジンを切られて車両の作動が停止されたときには、始動系リレー20Aの固定接点FC及び可動接点MCを有する各端子部20bは、リレーケース20aをなす樹脂材料に比べて熱伝導率が大きな金属材料からなるものであり、さらには金属材料からなる第1回路基板12の回路パターンに接続されていて低温時にヒートシンク作用が生じることから、温度低下が促進され易くなっている。このため、リレーケース20aが相対的に高温になり、固定接点FC及び可動接点MCを有する各端子部20bが相対的に低温になっていて両者20a,20b間に大きな温度差が生じ易くなっている。特に、固定接点FCを有する固定接点端子部20b2は、可動接点MCを有する可動接点端子部20b3がコイル20cに接触される磁性部材20dを有していてコイル20cからの伝熱によって温度が高くなりがちなのと比べると、より低温になり易くなっている。これに対して、リレーケース20a内には、通電時に生じる発熱によって水分が蒸気化して存在している場合があるため、上記のように固定接点FCを有する固定接点端子部20b2とリレーケース20aとの間に大きな温度差が生じると、選択的に固定接点端子部20b2における固定接点FCに結露が生じ易くなってその結露が低温環境下で氷結するおそれがある。そうなると、再度車両を始動させようとしたときに、端子部20bにおける固定接点FCと可動接点MCとが接触不能となって始動系リレー20Aが作動不良となり、エンジンがかからなくなるなど車両を始動できなくなる可能性があった。
【0046】
その点、本実施形態では、図4から図6に示すように、第1始動系リレー群22をなす始動系リレー20Aと作動系電装品(作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15)との間に包囲遮熱壁24が介在して配されているから、車両の作動中に生じる各作動系電装品からの熱が第1始動系リレー群22をなす始動系リレー20Aのリレーケース20aへと伝達し難くなっており、当該リレーケース20aの温度上昇を抑制することができる。従って、低温で且つ高湿の環境下において車両の作動が停止されたときでも、第1始動系リレー群22をなす始動系リレー20Aのリレーケース20aと固定接点FCを有する固定接点端子部20b2との間に生じ得る温度差を緩和することができる。特に、この包囲遮熱壁24は、第1回路基板12側に開口する略有底角筒状をなしていて第1始動系リレー群22をなす始動系リレー20Aを個別に取り囲んでいることから、始動系リレー20Aが作動系電装品側に殆ど露出することがなく、もって高い遮熱効果が得られて上記温度差をより好適に緩和することができる。しかも、第1始動系リレー群22をなす始動系リレー20Aには、ケーシング11内において作動系電装品よりも外寄りで外端部に配されるものが含まれており、さらにはケーシング11内における外端部のうちの角部に配されるものが含まれていることから、始動系リレー20Aのリレーケース20aが有する熱を、ケーシング11の外部へと逃がすことができて、低温環境下におけるリレーケース20aの温度低下を促進でき、もって上記温度差をさらに好適に緩和することができる。以上により、第1始動系リレー群22をなす始動系リレー20Aにおけるリレーケース20a内に存在する水分が固定接点端子部20b2における固定接点FCに結露して氷結するといった事態が生じ難くなり、もって再度車両を始動させる際に始動系リレー20Aが通電しなくなる、といった事態を回避することができる。
【0047】
さらには、本実施形態によれば、図4及び図6に示すように、第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aと作動系電装品との間に区画遮熱壁28が介在して配されているから、車両の作動中に生じる各作動系電装品からの熱が第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aのリレーケース20aへと伝達し難くなっており、当該リレーケース20aの温度上昇を抑制することができる。従って、低温で且つ高湿の環境下において車両の作動が停止されたときでも、第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aのリレーケース20aと固定接点FCを有する固定接点端子部20b2との間に生じ得る温度差を緩和することができる。特に、この区画遮熱壁28は、第1回路基板12と第2回路基板13との間の空間を、ケーシング11における外寄りの第1空間S1と内寄りの第2空間S2とに区画していて、そのうちの第1空間S1に第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aが、第2空間S2に作動系電装品である作動系リレー20Bがそれぞれ配されているから、第1空間S1に配した第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aのリレーケース20aから熱が外部へと放散され易くなっており、もって上記温度差を好適に緩和することができる。しかも、区画遮熱壁28は、第1空間S1を、第2空間S2側を除いた三方向についてケーシング11の外向きに開放しているから、第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aのリレーケース20aからの熱が外部へとより放散され易くなっている。その上、第1空間S1には、ケーシング11内における外端部が含まれ、さらにその外端部である角部が含まれており、この外端部及び角部に第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aが配されているから、そのリレーケース20aからの熱が外部へとより一層放散され易くなっている。以上により、第2始動系リレー群23をなす始動系リレー20Aにおけるリレーケース20a内に存在する水分が固定接点端子部20b2における固定接点FCに結露して氷結するといった事態が生じ難くなり、もって再度車両を始動させる際に始動系リレー20Aが通電しなくなる、といった事態を回避することができる。
【0048】
以上説明したように本実施形態の電気接続箱10は、車両に搭載されるケーシング11と、ケーシング11に収容されるとともに少なくとも車両の始動時に通電されるものであって、リレーケース(電装品ケース)20aとリレーケース20aに収容され且つ固定接点FCを有する端子部20b(固定接点端子部20b2)とを有する始動系リレー(始動系電装品)20Aと、ケーシング11に収容されるとともに少なくとも車両の作動中に通電される作動系電装品(作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15)と、始動系リレー20Aと作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つとの間に介在する包囲遮熱壁(遮熱壁)24と、を備える。
【0049】
このようにすれば、車両の始動時にはケーシング11に収容された始動系リレー20Aに通電されることで、車両が作動され、作動中はケーシング11に収容された作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つが通電される。従って、車両の作動中は通電に伴って作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つから発熱が生じる。このとき、作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つからの熱が始動系リレー20Aのリレーケース20aに伝達されると、低温環境下において車両の作動が停止されたときに、始動系リレー20Aのリレーケース20aが固定接点FCを有する端子部20bよりも高温になっていて大きな温度差が生じてしまうため、固定接点FCにはリレーケース20a内に存在する水分が結露して氷結し易くなり、それに起因して始動系リレー20Aが作動不良となる可能性があった。
【0050】
その点、本実施形態では、作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つと始動系リレー20Aとの間に包囲遮熱壁24が介在して配されているから、車両の作動中に生じる作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つからの熱が始動系リレー20Aのリレーケース20aへと伝達し難くなっており、リレーケース20aの温度上昇を抑制することができる。従って、低温環境下において車両の作動が停止されたときでも、始動系リレー20Aのリレーケース20aと固定接点FCを有する端子部20bとの間に生じ得る温度差を緩和することができる。これにより、リレーケース20a内に存在する水分が固定接点FCに結露して氷結するといった事態が生じ難くなり、もって再度車両を始動させる際に始動系リレー20Aが通電しなくなる、といった事態を回避することができる。
【0051】
なお、上記の始動系リレー20Aには、車両の始動時にのみ通電されるものに限られず、車両の始動時に通電され且つ車両の作動中や車両の作動が停止されたときにも通電されるものも含まれる。また、上記の作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つには、車両の作動中、常に通電されているもの以外にも、車両の作動中に通電状態となったり非通電状態となったりするもの(例えば、通常は通電状態であるものの一時的に非通電状態となるもの、または通常は非通電状態であるものの一時的に通電状態となるもの)も含まれる。また、作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つには、車両の作動中にのみ通電されるものに限られず、車両の作動中に通電され且つ車両の作動が停止されたときにも通電されるものも含まれる。
【0052】
また、ケーシング11には、始動系リレー20A及び作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つが実装されるとともに端子部20bに対して接続される回路パターンを有する第1回路基板(回路基板)12が収容されている。このようにすれば、始動系リレー20Aの固定接点FCを有する端子部20bは、第1回路基板12に形成された回路パターンに接続されているため、低温環境下では回路パターンによって端子部20bの温度低下が促進される傾向にあるものの、上記したように包囲遮熱壁24によってリレーケース20aの温度上昇が抑制されるとともにリレーケース20aと固定接点FCを有する端子部20bとの間に生じ得る温度差が緩和されているので、固定接点FCに結露及び氷結が生じるのを好適に防ぐことができる。
【0053】
また、包囲遮熱壁24は、第1回路基板12側に開口した有底筒状をなすとともに始動系リレー20Aを取り囲む形で配されている。このようにすれば、始動系リレー20Aは、第1回路基板12側に開口した有底筒状をなす包囲遮熱壁24と第1回路基板12とによって囲まれた空間内に配されるので、作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つ側への露出が殆どなくなるか、ごく僅かなものとなる。これにより、作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つからの熱が始動系リレー20Aのリレーケース20aへと一層伝達し難くなり、リレーケース20aの温度上昇をより好適に抑制することができる。
【0054】
また、第1回路基板12には、始動系リレー20Aが複数実装されており、包囲遮熱壁24は、各始動系リレー20Aを個別に取り囲む形で複数配されている。このようにすれば、仮に複数の始動系リレー20Aを一括して取り囲む形の包囲遮熱壁を形成した場合に比べると、より高い遮熱効果を得ることができる。
【0055】
また、複数の包囲遮熱壁24は、互いに隣り合って配されており、隣り合う包囲遮熱壁24同士を連結する遮熱壁間連結部25が設けられている。このようにすれば、遮熱壁間連結部25によって各包囲遮熱壁24の強度を高く保つことができる。
【0056】
また、始動系リレー20Aは、ケーシング11内において作動系電装品である作動系リレー20B、コネクタ部14及びヒューズ接続部15のうちの少なくともいずれか1つよりも相対的に外寄りとなる位置に配されている。このようにすれば、ケーシング11内における外寄りの位置は、内寄りの位置に比べると、熱が外部へ逃げやすいことから、低温環境下において始動系リレー20Aにおけるリレーケース20aの温度低下をより促進することができる。これにより、リレーケース20aと固定接点FCを有する端子部20bとの間に生じ得る温度差をより緩和することができる。
【0057】
また、始動系リレー20Aは、ケーシング11内において外端位置に配されている。このようにすれば、ケーシング11内における外端位置は、ケーシング11内において特に熱が外部へ逃げ易い場所であるから、ここに始動系リレー20Aを配することで、低温環境下におけるリレーケース20aの温度低下を一層促進することができ、もってリレーケース20aと固定接点FCを有する端子部20bとの間に生じ得る温度差をより一層緩和することができる。
【0058】
また、包囲遮熱壁24は、ケーシング11に一体形成されている。このようにすれば、仮に遮熱壁をケーシング11とは別体とした場合に比べると、組付工数を削減できるなど製造コストの低減に好適である。
【0059】
また、ケーシング11には、包囲遮熱壁24と隣り合う位置にコネクタ部14が形成されており、隣り合う包囲遮熱壁24とコネクタ部14とを連結するコネクタ遮熱壁間連結部26が設けられている。このようにすれば、コネクタ遮熱壁間連結部26によって包囲遮熱壁24及びコネクタ部14の強度を高く保つことができる。
【0060】
また、始動系電装品は、始動系リレー20Aとされており、端子部20bは、接点として少なくとも固定接点FCと、固定接点FCに対して接離可能な可動接点MCとを有する。このようにすれば、上記した包囲遮熱壁24によって端子部20bが有する固定接点FCに対してリレーケース20a内の水分が結露して氷結するのが防がれるから、車両を再度始動させる際に、固定接点FCに対して可動接点MCが良好に接触され、もって始動系リレー20Aが有するスイッチング機能を確実に発揮させることができる。
【0061】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8または図9によって説明する。この実施形態2では、包囲遮熱壁124の形状を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0062】
本実施形態に係る包囲遮熱壁124は、図8及び図9に示すように、複数の始動系リレー120Aを一括して包囲する形態(一括包囲型)とされており、第1回路基板112との間に保有される空間内に複数の始動系リレー120Aが収容されている。具体的には、包囲遮熱壁124は、第1回路基板112上において隣り合って配される2つの始動系リレー120Aを一纏めにして取り囲む大きさの、略有底角筒状をなしている。包囲遮熱壁124は、平面に視て上記2つの始動系リレー120Aを跨ぐ範囲に配される天井壁部124aと、天井壁部124aの外周端部から第1回路基板112側に向けて突出するとともに上記2つの始動系リレー120Aにおける相互の対向面を除いた外側面を取り囲むようにして配される側壁部124bとから構成されている。従って、隣り合う2つの始動系リレー120Aは、包囲遮熱壁124と第1回路基板112との間に保有される共通空間内に収容されている。このような構成の包囲遮熱壁124によっても、作動系電装品からの熱を十分に遮ることができるから、始動系リレー120Aへの伝熱を抑制することができる。
【0063】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図10によって説明する。この実施形態3では、リレー220の形状を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0064】
リレー220は、図10に示すように、リレーケース220aを構成するカバー部220a2に、上記した実施形態1よりも少ない数の通気孔220a2aが形成されている。通気孔220a2aは、カバー部220a2における天井部分(次述する可動接点端子部220b3の可動部と対向する部分)に3つ並んで形成されている。3つの通気孔220a2aは、可動接点端子部220b3における片持ち状をなす可動部のうち、基端部(可動接点MCを有する自由端側とは反対側の端部)側に偏って配置されている。
【0065】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記した各実施形態では、第1始動系リレー群をなす始動系リレーを取り囲む形の包囲遮熱壁を設けた場合を示したが、例えば、第1始動系リレー群に対して隣接する作動系電装品(具体的には、作動系リレー、コネクタ部及びヒューズ接続部のうちの少なくともいずれか1つ)を取り囲む形で包囲遮熱壁を設けるようにしたものも本発明に含まれる。その場合、第1始動系リレー群をなす始動系リレーを取り囲む包囲遮熱壁を除去することも可能だが、第1始動系リレー群をなす始動系リレーと作動系電装品との双方にそれぞれ包囲遮熱壁を設けるようにしても構わない。
【0066】
(2)上記した各実施形態では、第1始動系リレー群をなす始動系リレーを取り囲む形の包囲遮熱壁を設けた場合を示したが、各実施形態において第2始動系リレー群を作動系電装品群から区画するために設けた区画遮熱壁にて代用することも可能である。すなわち、第1始動系リレー群の配置領域と作動系電装品群の配置領域とを区画する形で配され、始動系リレーを取り囲むことがない形態の区画型の遮熱壁を設けるようにしたものも本発明に含まれる。この場合、上記の包囲遮熱壁と区画型の遮熱壁との双方を設けるようにしても構わない。
【0067】
(3)上記した各実施形態では、第1始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において作動系電装品よりも外寄りとなる位置に配されるものを示したが、第1始動系リレー群をなす始動系リレーと作動系電装品とがケーシング内における中心からほぼ同じ距離となる位置に配されるものも本発明に含まれる。また、第1始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において作動系電装品よりも内寄りとなる位置に配されるものも本発明に含まれる。
【0068】
(4)上記した各実施形態では、第1始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において外端位置に配されるものを示したが、第1始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において外端位置よりも内寄りの位置に配される配置構成とすることも可能である。また、第1始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内における角部に配されない構成とすることも可能である。
【0069】
(5)上記した各実施形態では、包囲遮熱壁が有底角筒状をなすものを示したが、包囲遮熱壁の具体的な形状は適宜に変更可能であり、例えば有底円筒状や有底楕円筒状などとすることも可能である。
【0070】
(6)上記した各実施形態では、包囲遮熱壁の開口端部が第1回路基板に当接または近接する位置に達する構成のものを示したが、それ以外にも例えば包囲遮熱壁の開口端部と第1回路基板との間に所定の隙間が保有される構成とし、包囲遮熱壁内の空間がその外部に連通する形態としたものも本発明に含まれる。
【0071】
(7)上記した各実施形態では、隣り合う包囲遮熱壁同士を連結する遮熱壁間連結部を設けた場合を示したが、遮熱壁間連結部の一部または全部を省略することも可能である。これは、コネクタ遮熱壁間連結部に関しても同様である。
【0072】
(8)上記した各実施形態では、包囲遮熱壁が第2ケーシング部材に一体形成されたものを示したが、包囲遮熱壁が第2ケーシング部材及び第1回路基板とは別部品とされ、第1回路基板または第2ケーシングに対して取り付けられる構成とすることも可能である。
【0073】
(9)上記した各実施形態以外にも、第1始動系リレー群をなす始動系リレーの設置数や配置などは適宜に変更可能であり、それに応じて包囲遮熱壁の設置数や配置などを変更することも可能である。
【0074】
(10)上記した実施形態2では、隣り合う2つの始動系リレーを一括して取り囲む形の包囲遮熱壁を設けた場合を示したが、3つ以上の始動系リレーを一括して取り囲む形の包囲遮熱壁を設けるようにしたものも本発明に含まれる。
【0075】
(11)上記した各実施形態では、第2始動系リレー群をなす始動系リレーと、作動系電装品との間に介在する区画遮熱壁を設けた場合を示したが、各実施形態において第1始動系リレー群をなす始動系リレーを取り囲むために設けた包囲遮熱壁にて代用することも可能である。すなわち、第2始動系リレー群をなす始動系リレーを取り囲む形態の包囲型の遮熱壁を設けるようにしたものも本発明に含まれる。この場合、上記した区画遮熱壁と包囲型の遮熱壁との双方を設けるようにしても構わない。また、包囲型の遮熱壁を設けるに際しては、実施形態1にて記載した、第1始動系リレー群をなす始動系リレーを包囲する包囲遮熱壁に係る構成を適用して、第2始動系リレー群をなす始動系リレーを個別に取り囲む形(個別包囲型)の遮熱壁を設けるようにしたり、或いは実施形態2にて記載した包囲遮熱壁に係る構成を適用して第2始動系リレー群をなす複数の始動系リレーを一括して取り囲む形(一括包囲型)の遮熱壁を設けたりするようにしても構わない。
【0076】
(12)上記した(11)以外にも、第2始動系リレー群に対して隣接する作動系電装品(具体的には、作動系リレー、コネクタ部及びヒューズ接続部のうちの少なくともいずれか1つ)を取り囲む形で包囲遮熱壁を設けるようにしたものも本発明に含まれる。その場合、第2始動系リレー群をなす始動系リレーを取り囲む包囲遮熱壁を除去することも可能だが、第2始動系リレー群をなす始動系リレーと作動系電装品との双方にそれぞれ包囲遮熱壁を設けるようにしても構わない。
【0077】
(13)上記した各実施形態では、区画遮熱壁が少なくとも第1空間を第2空間側とは反対側に向けて開放させる形態とされるものを示したが、第1空間を第1空間と第2空間との並び方向と交差する方向には開放させるものの、第2空間側とは反対側には開放させない形態の区画遮熱壁を設けるようにしても構わない。
【0078】
(14)上記した各実施形態では、区画遮熱壁が第1回路基板側に取り付けられるものを示したが、区画遮熱壁を第2回路基板側に取り付けるようにしたものも本発明に含まれる。
【0079】
(15)上記した各実施形態では、第1回路基板と第2回路基板との間(第2空間)に作動系電装品である作動系リレーが挟み込まれて配置される構成のものを示したが、第1回路基板と第2回路基板との間には、始動系リレーのみが挟み込まれていて、作動系リレーが挟み込まれることがない配置とすることも可能である。
【0080】
(16)上記した各実施形態では、第1回路基板と第2回路基板との間(第2空間)に作動系電装品である作動系リレーが挟み込まれて配置される構成のものを示したが、作動系リレー以外の作動系電装品(例えばコネクタ部やヒューズ接続部)が第1回路基板と第2回路基板との間に挟み込まれる配置とされるものも本発明に含まれる。
【0081】
(17)上記した各実施形態では、第2始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において作動系電装品よりも外寄りとなる位置に配されるものを示したが、第2始動系リレー群をなす始動系リレーと作動系電装品とがケーシング内における中心からほぼ同じ距離となる位置に配されるものも本発明に含まれる。また、第2始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において作動系電装品よりも内寄りとなる位置に配されるものも本発明に含まれる。
【0082】
(18)上記した各実施形態では、第2始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において外端位置に配されるものを示したが、第2始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内において外端位置よりも内寄りの位置に配される配置構成とすることも可能である。また、第2始動系リレー群をなす始動系リレーがケーシング内における角部に配されない構成とすることも可能である。
【0083】
(19)上記した各実施形態では、区画遮熱壁が第1回路基板を概ね全幅にわたって横切る形態とされるものを示したが、区画遮熱壁が第1回路基板上において部分的に配される構成とすることも可能である。その場合、区画遮熱壁を複数(例えば第2始動系リレー群をなす始動系リレーと同数)設けることが可能である。
【0084】
(20)上記した各実施形態では、区画遮熱壁が第1回路基板の板面に沿って切断した断面が屈曲形状となる形態とされるものを示したが、区画遮熱壁が第1回路基板を直線状に横切る形態とされるものも本発明に含まれる。
【0085】
(21)上記した各実施形態では、区画遮熱壁における屈曲部位の壁面同士を繋ぐ横型補強リブを設けたものを示したが、横型補強リブの一部または全部を省略することも可能である。これは、縦型補強リブに関しても同様である。
【0086】
(22)上記した各実施形態では、区画遮熱壁の壁面が中継端子部に沿って延在していて当接可能とされる構成のものを示したが、区画遮熱壁の壁面が中継端子部から離間していて接触不能とされる構成とすることも可能である。
【0087】
(23)上記した各実施形態では、第1回路基板との間で第2始動系リレー群をなす始動系リレーを挟み込む形で回路パターンを有する第2回路基板が配されるものを示したが、上記した第2回路基板に代えて回路パターンを有さない板状部材が配される構成のものも本発明に含まれる。
【0088】
(24)上記した各実施形態以外にも、第2始動系リレー群をなす始動系リレーの設置数や配置などは適宜に変更可能であり、それに応じて区画遮熱壁の形状や配置などを変更することも可能である。
【0089】
(25)上記した各実施形態に記載した電気接続箱は、車両における設置姿勢が、各図面に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれか1つを鉛直方向または水平方向と一致させた姿勢とすることができる。また、各図面に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれか1つが鉛直方向または水平方向に対して傾いた姿勢で電気接続箱を車両に設置することも可能である。
【0090】
(26)上記した各実施形態では、始動系電装品としてリレーを例示したが、リレー以外の、端子部が接点を有する接点型電装品を始動系電装品として使用したものにも本発明は適用可能である。また、始動系電装品や作動系電装品として用いるリレーの接点構造は、a接点構造以外にも、b接点構造やc接点構造であっても構わない。
【0091】
(27)上記した各実施形態では、コイルに接触される磁性部材を有する可動接点端子部に比べて、磁性部材を有さない固定接点端子部の方が低温になり易い構成のリレーを示したが、例えば外部環境の影響などにより可動接点端子部と固定接点端子部とが同等の温度になるようなリレーを用いたものにも本発明は適用可能であり、その場合は可動接点及び固定接点の双方に対する結露及び氷結を防止することができる。また、外部環境の影響などにより可動接点端子部の方が固定接点端子部よりも低温になり易いリレーを用いたものにも本発明は適用可能であり、その場合は可動接点に対する結露及び氷結を防止することができる。
【符号の説明】
【0092】
11…ケーシング、12,112…第1回路基板(回路基板)、14…コネクタ部(作動系電装品)、15…ヒューズ接続部(作動系電装品)、20,220…リレー(始動系電装品、作動系電装品)、20A,120A…始動系リレー(始動系電装品)、20B…作動系リレー(作動系電装品)、20a,220a…リレーケース(電装品ケース)、20b…端子部、24,124…包囲遮熱壁(遮熱壁)、25…遮熱壁間連結部、26…コネクタ遮熱壁間連結部、FC…固定接点(接点)、MC…可動接点(接点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるケーシングと、
前記ケーシングに収容されるとともに少なくとも前記車両の始動時に通電されるものであって、電装品ケースと前記電装品ケースに収容され且つ接点を有する端子部とを有する始動系電装品と、
前記ケーシングに収容されるとともに少なくとも前記車両の作動中に通電される作動系電装品と、
前記始動系電装品と前記作動系電装品との間に介在する遮熱壁と、を備える電気接続箱。
【請求項2】
前記ケーシングには、前記始動系電装品及び前記作動系電装品が実装されるとともに前記端子部に対して接続される回路パターンを有する回路基板が収容されている請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記遮熱壁は、前記回路基板側に開口した有底筒状をなすとともに前記始動系電装品を取り囲む形で配されている請求項2記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記回路基板には、前記始動系電装品が複数実装されており、
前記遮熱壁は、各前記始動系電装品を個別に取り囲む形で複数配されている請求項3記載の電気接続箱。
【請求項5】
複数の前記遮熱壁は、互いに隣り合って配されており、
隣り合う前記遮熱壁同士を連結する遮熱壁間連結部が設けられている請求項4記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記始動系電装品は、前記ケーシング内において前記作動系電装品よりも相対的に外寄りとなる位置に配されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気接続箱。
【請求項7】
前記始動系電装品は、前記ケーシング内において外端位置に配されている請求項6記載の電気接続箱。
【請求項8】
前記遮熱壁は、前記ケーシングに一体形成されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電気接続箱。
【請求項9】
前記ケーシングには、前記遮熱壁と隣り合う位置にコネクタ部が形成されており、
隣り合う前記遮熱壁と前記コネクタ部とを連結するコネクタ遮熱壁間連結部が設けられている請求項8記載の電気接続箱。
【請求項10】
前記始動系電装品は、リレーとされており、
前記端子部は、前記接点として少なくとも固定接点と、前記固定接点に対して接離可能な可動接点とを有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−69976(P2013−69976A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208905(P2011−208905)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】