説明

電気接続箱

【課題】一方のケースに設けられる位置決めボスと他方のケースに設けられる位置決め凹部の位置合わせ作業を容易に行い得ると共に、コンパクト化も実現できる、新規な構造の電気接続箱を提供すること。
【解決手段】一方のケース12に設けられた位置決めボス84,88を他方のケース14に設けられた位置決め凹部45,48に嵌め入れることにより該一方のケース12と他方のケース14が位置決めされるようにすると共に、該位置決め凹部45,48を画成する筒体50,54を、該他方のケース14の外面35上に突出して設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される電気接続箱であって、一方のケースと他方のケースを組み付けて形成する中空ケースの内部に内部回路体が収容されてなる電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気接続箱においては、アッパケースとロアケース等、一方のケースと他方のケースを開口部側で相互に組み付けて中空ケースを構成し、この中空ケースの内部にバスバー等から構成される内部回路体を収容した構成が採用されている。そして、内部回路体に設けられた接続端子を、中空ケースに貫設された端子挿通孔に挿通させることにより、接続端子に接続されるヒューズや外部電線端末に接続されたコネクタ等が内部回路体に接続されるようになっている。
【0003】
ところで、このような電気接続箱では、一方のケースに内部回路体を収容した状態で他方のケースを組み付けて中空ケースを構成する必要があることから、組み付けに際して、一方のケースと他方のケースが正確に位置決めされていることが重要となる。そこで、特開2010−110060号公報(特許文献1)の図2,図3,図10,図12には、一方のケースの内部に他方のケースに向かって突出する位置決めボスを突設すると共に、他方のケースの内部に一方のケースに向かって開口する位置決め凹部を突設する構造が提案されている。このようにすれば、位置決めボスが位置決め凹部に嵌め入れられることにより、一方のケースに対して他方のケースが正確に位置決めされることから、一方のケースに収容された内部回路の接続端子が他方のケースに貫設された端子挿通孔に正確に案内されて挿通され、一方のケースと他方のケースの組み付けをスムーズに行うことができる。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の如き従来構造では、位置決め凹部を構成する筒体を、他方のケースの内部に突出させて設ける必要があり、筒体の高さ分だけ電気接続箱の厚肉化、大型化が避けられず、コンパクト化の要求が厳しい場合には、採用することが困難となる。
【0005】
また、位置決め凹部は、他方のケースの内部に設けられていることから、作業者が組み付けに際して位置決め凹部の位置を確認し難く、位置決めボスに位置決め凹部を位置合わせする作業が、容易でなく時間を要するという問題もあった。そして、位置決めボスを位置決め凹部に上手く嵌め入れられない場合には、接続端子を端子挿通孔に挿通させることができず、接続端子を他方のケースに当接させて変形させてしまうおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−110060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、一方のケースに設けられる位置決めボスと他方のケースに設けられる位置決め凹部の位置合わせ作業を容易に行い得ると共に、コンパクト化も実現できる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、一方のケースと他方のケースを組み付けて形成する中空ケースの内部に内部回路体が収容されていると共に、前記一方のケースの内部に設けられた位置決めボスが、前記他方のケースの内部に設けられた位置決め凹部に嵌め入れられることにより、前記一方のケースが前記他方のケースに位置決めされて、前記内部回路体に設けられた接続端子が前記中空ケースに貫設された端子挿通孔に挿通されるようになっている電気接続箱において、前記位置決め凹部を画成する筒体が前記他方のケースの外面上に突出して設けられていることを、特徴とする。
【0009】
本発明に従う構造とされた電気接続箱においては、一方のケースに設けられた位置決めボスが嵌め入れられる位置決め凹部を画成する筒体が、他方のケースの外面上に突出して設けられている。これにより、筒体が他方のケースの外面から視認可能とされており、一方のケースと他方のケースとの組み付けを行なう作業者が、他方のケースの外面から位置決め凹部の形成位置を確実且つ容易に把握することが出来、位置決めボスと位置決め凹部との位置合わせ作業を確実且つ容易に行なうことが出来る。その結果、電気接続箱の組み付け作業性の向上および安定化を図ることが出来る。
【0010】
しかも、位置決め凹部を画成する筒体を他方のケースの外面上に突出させたことにより、筒体の突出寸法をケースの外部で確保することが出来る。その結果、位置決め凹部を画成する筒体をケースの内部に突出させていた従来構造に比して、他方のケース延いては電気接続箱の厚肉化、大型化を緩和することが出来て、コンパクト化を図ることが出来る。特に、電気接続箱の外面上には、ヒューズ装着部やコネクタ装着部等の電気部品装着部が突出して設けられていることから、これら電気部品装着部の突出高さ以内であれば、電気接続箱の厚肉化や大型化を伴うこと無しに位置決め凹部を設けることが可能であり、設計自由度の向上を図ることが出来る。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記位置決めボスと位置決め凹部が、相互に離隔した2箇所に設けられており、前記位置決め凹部を画成する筒体の外形が相互に異ならされているものである。
【0012】
本態様によれば、他方のケースの2箇所に設けられた筒体の外形が互いに異ならされていることから、2つの筒体を区別して、他方のケースの組み付け方向の目印に利用することが出来る。従って、例えば、他方のケースに組み付け方向性があるものの、外形形状が左右・上下で略対称である場合等に、相互に離隔した2箇所に設けられた筒体の外形形状を相互に異ならせることで、筒体を組み付け方向の目印として併せて構成することも出来る。
【0013】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記一方のケースの周壁の外周側に前記他方のケースの周壁が挿し入れられて重ね合わされることにより前記一方のケースと前記他方のケースが組み付けられていると共に、前記一方のケースの内部に前記内部回路体が収容されている一方、前記一方のケースの前記周壁の先端部から前記他方のケース側に向かって、前記位置決めボスが前記接続端子よりも大きな突出高さで突出されているものである。
【0014】
本発明においては、位置決め凹部を画成する筒体が、他方のケースの外面上に突出されている。これにより、一方のケースに突設された位置決めボスの周壁先端部からの突出高さを、接続端子の突出高さよりも高く設定することが出来る。従って、一方のケースと他方のケースの組み付け作業に際して、接続端子と他方のケースとの接触を防止する案内機構を位置決めボスで構成することが出来て、接続端子の保護を一層有利に図ることが出来る。即ち、特許文献1の図12に示されているように、筒体を他方のケースの内部に突出させていた従来構造の場合には、一方のケースの周壁先端部からの接続端子の突出高さが、位置決めボスの突出高さよりも大きくなることから、組み付け作業に際して、接続端子が他方のケースに誤って接触して損傷するおそれがあった。しかし、本態様によれば、接続端子が他方のケースの端子挿通孔に挿通されるよりも前に位置決めボスが位置決め凹部に嵌め入れられることから、一方のケースと他方のケースを相互に位置決めすることが出来る。これにより、接続端子を他方のケースの端子挿通孔に対して位置決めした状態で挿通することが出来、接続端子が他方のケースに誤って接触することを未然に防止することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、一方のケースに突設された位置決めボスが嵌め入れられる位置決め凹部を画成する筒体を、他方のケースの外面上に突出して設けた。これにより、筒体を目印にして、位置決め凹部の位置を他方のケースの外側から容易に把握することが出来、位置決めボスと位置決め凹部との位置合わせ作業を容易に行なうことが出来る。更に、筒体の突出寸法を他方のケースの外部で確保することにより、筒体の突出寸法を他方のケースの内部に確保する場合に比して、他方のケース延いては電気接続箱の厚肉化および大型化を回避することが出来て、コンパクト化を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱の分解斜視図。
【図2】ロアケースの底面図。
【図3】ロアケースの平面図。
【図4】ロアケースの側面図。
【図5】(a)は第一位置決め凹部の拡大図、(b)は(a)におけるVb−Vb断面図。
【図6】(a)は第二位置決め凹部の拡大図、(b)は(a)におけるVIb−VIb断面図。
【図7】アッパケースの底面図。
【図8】アッパケースの側面図。
【図9】第一位置決めボスの拡大図。
【図10】第二位置決めボスの拡大図。
【図11】図1に示した電気接続箱の組付状態における、図2のXI−XI断面に相当する断面図。
【図12】(a)は第一位置決め凹部への第一位置決めボスの嵌め入れ状態を説明するための説明図、(b)は第二位置決め凹部への第二位置決めボスの嵌め入れ状態を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、図1に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を示す。電気接続箱10は、一方のケースとしてのアッパケース12と、他方のケースとしてのロアケース14が、内部回路体としてのバスバー回路16を収容して相互に組み付けられた構造とされている。
【0019】
バスバー回路16は、複数のバスバー18と複数(本実施形態においては、3枚)の絶縁板20a〜20cが積層された構造とされている。従来公知のように、バスバー18の端部には、一対の圧接刃が対向して形成された所謂音叉形状をもって、図示しない電気部品としてのリレーと接続する接続端子22a,接続端子22aと略同様の音叉形状をもって図示しない電気部品としてのヒューズと接続する接続端子22b、および略矩形の平板形状をもって図示しない電気部品としてのコネクタと接続する接続端子22c等が適宜に形成されている。そして、接続端子22aが、積層された絶縁板20a〜20cの積層方向でロアケース14側(図1中、上方)に突出されている一方、接続端子22b,22cが、絶縁板20a〜20cの積層方向でアッパケース12側(図2中、下方)に突出されている。なお、接続端子22bの絶縁板20a〜20cからの突出寸法は、同方向に突出された接続端子22cの突出寸法よりも大きくされている。
【0020】
また、各絶縁板20a〜20cは互いに等しい大きさの略長手矩形の板形状とされており、各絶縁板20a〜20cのそれぞれにおいて、対角に位置する一対の角部には、後述する第一位置決め凹部45および第二位置決め凹部48と略同形状を有する第一挿通孔24aおよび第二挿通孔24bが貫設されている。そして、各絶縁板20a〜20cが重ね合わされることによって、各絶縁板20a〜20cに形成された第一挿通孔24aと第二挿通孔24bが重ね合わされて絶縁板20a〜20cを積層方向で貫通する貫通孔を形成している。更に、各絶縁板20a〜20cにおいて、互いに等しい側の短辺を構成する端縁部26の略中央部分には、位置決め切欠28が形成されており、各絶縁板20a〜20cの位置決め切欠28が重ね合わされることにより、絶縁板20a〜20cを積層方向で貫通する切欠が形成されている。
【0021】
図2〜図4に、ロアケース14を示す。ロアケース14は、合成樹脂からなる一体成型品とされている。ロアケース14には、アッパケース12側に向けて開口する略長手矩形の箱体形状を有するケース本体30が形成されている。ケース本体30は、略長手矩形状を有する底板32と、底板32の外周縁部からアッパケース12側に突出する周壁34とから形成されている。これにより、ロアケース14は、アッパケース12との重ね合わせ方向視(図2参照)において、全体として略長手矩形状の略回転対称形状を有している。また、底板32におけるケース本体30の外側の表面によって、ロアケース14の外面35が形成されている。
【0022】
ロアケース14には、複数(本実施形態においては、3つ)のリレー装着部36が長手方向(図2中、左右方向)に並列して形成されている。各リレー装着部36には、バスバー18の接続端子22aが挿し込まれる端子挿通孔38が底板32を貫通して形成されている。リレー装着部36は、底板32からケース本体30の外方(図4中、上方)に突出して形成されており、各リレー装着部36には、底板32からケース本体30の外方に更に突出する一対の保護壁部40,40が対向して形成されている。
【0023】
また、図3および図4に示すように、長手矩形とされた周壁34において、長辺を形成する周壁34a,34cと、短辺を形成する周壁34b,34dのそれぞれの中央部分の内面には、ケース本体30の内方に向けて凹となる係合凹部41が形成されている。これにより、係合凹部41の外周部分におけるアッパケース12側には、相対的に係合凹部41からケース本体30の内方に向けて突出する係止部42が形成されている。更に、周壁34a,34cの外面において、係合凹部41を挟む両側には、一対のロック部43,43が形成されており、これらロック部43,43によって、電気接続箱10が図示しない他の電気接続箱や車体パネル等に固定可能とされている。
【0024】
図3に示すように、ロアケース14の内部には、略長手矩形状とされた底板32において、対角線:Lc1方向で対向する一方の角部となる第一隅部44に、位置決め凹部としての第一位置決め凹部45が形成されていると共に、他方の角部となる第二隅部46に、位置決め凹部としての第二位置決め凹部48が形成されている。図5にも示すように、第一位置決め凹部45は、底板32の第一隅部44に形成された、アッパケース12側(図5(b)中、下側)に向けて開口する有底の筒形状を有する筒体としての第一筒体50の中央孔によって画成されている。第一位置決め凹部45は、略真円の断面形状をもってアッパケース12との重ね合わせ方向(図5(b)中、上下方向)に延びる凹形状とされている。
【0025】
また、第一位置決め凹部45におけるアッパケース12側の開口縁部には、後述する内方突部52,52を除く略全周に連続して、アッパケース12側に拡開するテーパ部51が形成されている。更に、第一位置決め凹部45におけるアッパケース12側の開口縁部には、第一位置決め凹部45の内方に突出する一対の内方突部52,52が形成されている。内方突部52,52は、テーパ部51,51が形成された第一位置決め凹部45の開口縁部に突起形状をもって形成されており、底板32の対角線:Lc1方向で対向位置されている。これにより、第一位置決め凹部45の対角線:Lc1方向における内法寸法:R1が、対角線:Lc1方向における内方突部52,52の離隔距離で規定されており、該内方突部52,52の離隔距離は、第一位置決め凹部45においてテーパ部51で拡径されていない、テーパ部51の非形成部分の径寸法(図5(b)における左右方向寸法)と等しくされている。
【0026】
一方、第二位置決め凹部48は、図6にも示すように、底板32の対角線:Lc1方向で第一筒体50と対向する第二隅部46(図3参照)に形成された、アッパケース12側(図6(b)中、下側)に向けて開口する有底の筒形状を有する筒体としての第二筒体54の中央孔によって画成されている。第二位置決め凹部48は、長軸:Llと短軸Lsを有する略楕円の断面形状をもってアッパケース12との重ね合わせ方向(図6(b)中、上下方向)に延びる凹形状とされており、長軸:Llが、対角線:Lc1方向に延出されている。これにより、第二位置決め凹部48の対角線:Lc1方向における内法寸法:R2は長軸:Llによって規定されており、第一位置決め凹部45の対角線:Lc1方向における内法寸法:R1よりも大きくされている。
【0027】
また、第二位置決め凹部48におけるアッパケース12側の開口縁部には、第二位置決め凹部48の全周に亘って連続して、アッパケース12側に拡開するテーパ部56が形成されている。更に、第二位置決め凹部48の内周面には、第二位置決め凹部48の内方に突出して第二位置決め凹部48の延出方向(図6(b)中、上下方向)に延びる一対のガイドリブ58,58が第二位置決め凹部48の周方向で隙間を隔てて形成されている。これにより、ガイドリブ58,58の間に、第二位置決め凹部48の延出方向に延びる嵌合凹溝60が形成されている。なお、嵌合凹溝60は、第二位置決め凹部48の長軸:Ll上で、第一隅部44側(図6(a)中、左下側)に位置して形成されている。これにより、図3に示したように、嵌合凹溝60と、第一位置決め凹部45の一対の内方突部52,52が、対角線:Lc1上で一直線上に位置されている。
【0028】
これら第一位置決め凹部45と第二位置決め凹部48を形成する第一筒体50および第二筒体54は、長手矩形とされた底板32の対角に位置する第一隅部44と第二隅部46に形成されて互いに離隔して位置されていると共に、底板32の外面35からケース本体30の外方(図4中、上方)に突出して形成されている。第一位置決め凹部45と第二位置決め凹部48の外面35からの突出寸法は互いに略等しくされており、リレー装着部36の保護壁部40よりも小さな突出寸法に設定されている。また、図2に示すように、第一筒体50は、略真円形状とされた第一位置決め凹部45の形状に対応して、アッパケース12との重ね合わせ方向視(図2参照)において、略真円形状とされている一方、第二筒体54は、略楕円形状とされた第二位置決め凹部48の形状に対応して、アッパケース12との重ね合わせ方向視において、略楕円形状とされている。このように、第一筒体50と第二筒体54は、アッパケース12との重ね合わせ方向視における外形が相互に異ならされている。
【0029】
一方、図7および図8に、アッパケース12を示す。アッパケース12は、合成樹脂からなる一体成型品とされている。アッパケース12には、ロアケース14側(図8中、上側)に向けて開口する略長手矩形の箱体形状を有するケース本体62が形成されている。ケース本体62は、略長手矩形状を有する上板64と、上板64の外周縁部からロアケース14側に突出する周壁66とから形成されている。これにより、アッパケース12は、ロアケース14との重ね合わせ方向視(図7参照)において、全体として略長手矩形状の略回転対称形状を有している。なお、アッパケース12は、周壁66がロアケース14の周壁34に内挿出来るように、上板64が、ロアケース14の底板32よりも僅かに小さく形成されている。
【0030】
アッパケース12の上板64には、複数(本実施形態においては、6つ)のヒューズ装着部68が長手方向(図7中、左右方向)に並列して形成されている。各ヒューズ装着部68には、バスバー18の一対の接続端子22b,22bが挿し込まれる一対の端子挿通孔70,70が上板64を貫通して対向して形成されている。また、上板64には、複数のヒューズ装着部68に対して上板64の長手方向で隣接して、1つのコネクタ装着部72が形成されている。コネクタ装着部72には、バスバー18の複数の接続端子22cが挿し込まれる複数の端子挿通孔74が上板64を貫通して、上板64の長手方向で2列に並んで形成されている。なお、本実施形態における電気接続箱10のヒューズ装着部68は、上板64からケース本体62の外方(図8中、下方)に大きく突出して位置されている。
【0031】
また、長手矩形とされた周壁66において、長辺を形成する周壁66a,66cと、短辺を形成する周壁66b,66dのそれぞれの中央部分の外面には、係止爪76が突設されている。そして、各周壁66a〜66dにおいて、係止爪76を挟む両側には、ロアケース14側に開口するフック形状の一対の挟持片部78,78が形成されている。更に、周壁66bの内面には、バスバー回路16の絶縁板20a〜20cに形成された位置決め切欠28の大きさに対応する位置決め突部80がケース本体62の内方に突出して形成されている。
【0032】
そして、アッパケース12の内部には、略長手矩形状とされた上板64において、ロアケース14への組み付け状態においてロアケース14の第一隅部44(図3参照)と重なる第一隅部82に、位置決めボスとしての第一位置決めボス84が形成されている。また、アッパケース12の内部において、上板64の対角線:Lc2方向で第一隅部82と対向して、ロアケース14への組み付け状態においてロアケース14の第二隅部46と重なる第二隅部86に、位置決めボスとしての第二位置決めボス88が形成されている。これにより、第一位置決めボス84と第二位置決めボス88が、上板64の対角で相互に離隔して位置されている。
【0033】
第一隅部82に形成された第一位置決めボス84は、上板64から略一定の外径寸法をもってロアケース14側(図8中、上側)に突出する略円筒形状とされている。図9に示すように、第一位置決めボス84の外周面には、周方向で所定間隔を隔てて、第一位置決めボス84の径方向外方に突出する複数のガタ防止リブ90が形成されている。本実施形態においては、第一位置決めボス84の中心軸回りで90°毎に4つのガタ防止リブ90a〜90dが形成されており、一対のガタ防止リブ90a,90cが、対角線:Lc2方向で第一位置決めボス84の径方向の両外側に突出して形成されている。これらガタ防止リブ90a〜90dの第一位置決めボス84の外周面からの突出寸法:D1a〜D1dは互いに等しくされており、ガタ防止リブ90a〜90dの第一位置決めボス84の外周面からの突出先端縁部が、第一位置決め凹部45の断面形状に対応する直径:R1の円:C1に内接する大きさに設定されている。これにより、第一位置決めボス84は、ガタ防止リブ90a〜90dの非形成部分において、第一位置決め凹部45の内法寸法:R1よりも小さな外径を有する円筒形状をもって上板64から延出されている。また、ガタ防止リブ90a〜90dは、第一位置決めボス84の延出方向(図8中、上下方向)の略全長に亘って形成されている。そして、図9に示したように、ガタ防止リブ90a〜90dのそれぞれにおける上板64からの突出先端縁部には、突出方向先端側(図8中、上方)に行くに連れて第一位置決めボス84の外周面からの突出寸法が次第に小さくなるテーパ面92が形成されており、第一位置決め凹部45への挿入が容易とされている。
【0034】
一方、第二隅部86に形成された第二位置決めボス88は、第一位置決めボス84と略等しい外径寸法の略円筒形状をもって、上板64からロアケース14側(図8中、上側)に突出されている。図10に示すように、第二位置決めボス88の外周面には、周方向で所定間隔を隔てて、第二位置決めボス88の径方向外方に突出する一対のリブ突起94a,94bと、一対のガタ防止リブ96a,96bが形成されている。本実施形態においては、これらリブ突起94a,94bとガタ防止リブ96a,96bが、第二位置決めボス88の中心軸回りで90°毎に交互に形成されており、リブ突起94a,94bが、対角線:Lc2方向で第二位置決めボス88の径方向の両外側に突出して形成されていると共に、ガタ防止リブ96a,96bが、対角線:Lc2に直交する方向で、第二位置決めボス88の径方向の両外側に突出して形成されている。これにより、図7に示したように、第二位置決めボス88のリブ突起94a,94bと、第一位置決めボス84のガタ防止リブ90a,90cが、対角線:Lc2上で一直線上に形成されている。また、リブ突起94a,94bの第二位置決めボス88の外周面からの突出寸法:D2a,D2bが互いに等しくされていると共に、ガタ防止リブ9a,96bの第二位置決めボス88の外周面からの突出寸法:D2c,D2dが互いに等しくされている。そして、リブ突起94a,94bの突出寸法:D2a,D2bが、ガタ防止リブ96a,96bの突出寸法:D2c,D2dよりも大きくされている。これにより、ガタ防止リブ96a,96bの突出先端縁部が、第二位置決め凹部48の断面形状に対応する長軸:Ll、短軸:Lsの長円:C2に短軸:Ls方向で内接する一方、リブ突起94a,94bの突出先端縁部が、長軸:L1方向で長円:C2よりもやや内側に位置する大きさに設定されている。
【0035】
また、リブ突起94a,94bおよびガタ防止リブ96a,96bは、第二位置決めボス88の延出方向(図8中、上下方向)の略全長に亘って形成されている。そして、図10に示したように、リブ突起94a,94bおよびガタ防止リブ96a,96bのそれぞれにおける上板64からの突出先端縁部には、突出方向先端側(図8中、上方)に行くに連れて第二位置決めボス88の外周面からの突出寸法が次第に小さくなるテーパ面98が形成されており、第二位置決め凹部48への挿入が容易とされている。特に、対角線:Lc2方向でアッパケース12の外側に位置するリブ突起94bのテーパ面98aは、他のリブ突起94aおよびガタ防止リブ96a,96bのテーパ面98よりも第二位置決めボス88の延出方向(図8中、上下方向)で長尺に形成されており、第二位置決めボス88の対角線:Lc2方向の外側部分において第二位置決め凹部48との案内作用を早い段階から発揮して、アッパケース12とロアケース14との寸法誤差をより有効に吸収できるようにされている。
【0036】
図8に示したように、第一位置決めボス84と第二位置決めボス88の周壁66の先端部100からロアケース14側(図8中、上側)への突出高さ:H1およびH2は互いに等しい大きさに設定されている。そして、アッパケース12へのバスバー回路16の収容状態で、バスバー回路16の接続端子22aの先端部100からロアケース14側への突出高さ:H3よりも、第一位置決めボス84および第二位置決めボス88の突出高さ:H1,H2の方が大きくなるように設定されている。
【0037】
このような電気接続箱10を組み立てる際には、図1に示したように、先ず、複数のバスバー18と複数の絶縁板20a〜20cを積層して、バスバー回路16を形成する。そして、バスバー回路16の鉛直下方にアッパケース12を位置して、バスバー回路16において絶縁板20aから突出された接続端子22b,22cを、アッパケース12の端子挿通孔70,74にそれぞれ挿通すると共に、絶縁板20a〜20cの第一挿通孔24aおよび第二挿通孔24bに、第一位置決めボス84および第二位置決めボス88をそれぞれ挿通して、絶縁板20a〜20cをアッパケース12のケース本体62内に収容する。なお、絶縁板20a〜20cは、位置決め切欠28とアッパケース12の位置決め突部80が係合することによって、ケース本体62内でより精度良く位置決め可能とされている。続いて、アッパケース12の鉛直上方からロアケース14を被せるようにして、アッパケース12の第一位置決めボス84をロアケース14の第一位置決め凹部45に嵌め入れると共に、第二位置決めボス88を第二位置決め凹部48に嵌め入れて、ロアケース14をアッパケース12に重ね合わせる。これにより、アッパケース12の周壁66の外周側にロアケース14の周壁34が挿し入れられて重ね合わされると共に、ロアケース14の周壁34がアッパケース12の挟持片部78と周壁66の間で挟まれる。そして、ロアケース14の周壁34の内面に形成された係合凹部41内にアッパケース12の係止爪76が入り込まされて、係合凹部41の外周側の係止部42と係止爪76が互いに係合することによって、アッパケース12とロアケース14が互いにロック状態で組み付けられて、電気接続箱10が形成される。
【0038】
図11に示すように、アッパケース12とロアケース14との組み付け状態において、長手矩形の箱体形状とされたアッパケース12のケース本体62とロアケース14のケース本体30が互いに組みつけられることにより、矩形の中空ケース102が形成される。そして、バスバー回路16の絶縁板20a〜20cがアッパケース12とロアケース14で挟まれて、該中空ケース102の内部にバスバー回路16が収容される。これにより、バスバー回路16の接続端子22aがリレー装着部36の端子挿通孔38に挿通されて中空ケース102の外部空間に突出されると共に、接続端子22b,22cがそれぞれヒューズ装着部68の端子挿通孔70およびコネクタ装着部72の端子挿通孔74に挿通されて、中空ケース102の外部空間に突出される。
【0039】
また、図12(a)に示すように、第一位置決めボス84は、4つのガタ防止リブ90a〜90dが、第一位置決め凹部45の内周面に対して略隙間の無い状態で挿し込まれている。一方、図12(b)に示すように、第二位置決めボス88は、リブ突起94a,94bにおいて対角線:Lc2(図7参照)方向で中空ケース102の内側に位置するリブ突起94aが嵌合凹溝60に嵌め入れられて周方向で位置決めされる。そして、ガタ防止リブ96a,96bが第二位置決め凹部48の短軸:Ls方向に位置されて、第二位置決め凹部48の内周面に対して略隙間の無い状態で挿し込まれている一方、リブ突起94a,94bが、対角線:Lc2方向となる第二位置決め凹部48の長軸:Ll方向に位置されて、第二位置決め凹部48の内周面に対して僅かに隙間を隔てた状態で挿し込まれるようになっている。
【0040】
本実施形態に従う構造とされた電気接続箱10においては、ロアケース14の第一位置決め凹部45および第二位置決め凹部48を画成する第一筒体50および第二筒体54が、ロアケース14の外面35上に突出してロアケース14の外部から視認可能とされている。これにより、ロアケース14をアッパケース12に組み付けるに際して、第一筒体50および第二筒体54を目印にして、第一位置決め凹部45および第二位置決め凹部48の位置を容易に把握することが可能であり、アッパケース12の第一位置決めボス84および第二位置決めボス88の第一位置決め凹部45および第二位置決め凹部48への挿し込み作業を容易に行なうことが出来る。更に、アッパケース12への重ね合わせ方向視(図2参照)において、第一筒体50が略真円形状とされている一方、第二筒体54が略長円形状とされており、互いの外形が異ならされている。従って、本実施形態のように、アッパケース12およびロアケース14が重ね合わせ方向視で略長手矩形状とされており、180°回転させた場合に略同一形状となる場合でも、第一筒体50と第二筒体54を判別することによって、第一筒体50と第二筒体54の位置から組み付け方向を容易に把握することが出来る。
【0041】
また、第一筒体50および第二筒体54をロアケース14の外面35上に突出させたことから、第一筒体50および第二筒体54の突出寸法をロアケース14の外部で確保することが出来る。これにより、ロアケース14の上下寸法をコンパクトにすることが出来て、電気接続箱10の小型化を図ることが出来る。特に本実施形態においては、第一筒体50および第二筒体54の外面35からの突出高さが、リレー装着部36における保護壁部40の突出高さ以内に抑えられていることから、第一筒体50および第二筒体54の外面35からの突出量も既存のリレー装着部36を超えることが無く、より優れたコンパクト化が図られている。
【0042】
さらに、第一筒体50および第二筒体54をロアケース14の底板32から突出して形成した結果、第一筒体50および第二筒体54に挿し込まれるアッパケース12の第一位置決めボス84および第二位置決めボス88のアッパケース12の周壁66からの突出高さ寸法を、接続端子22aの突出高さ寸法よりも大きくすることが出来る。即ち、第一筒体50および第二筒体54をロアケース14の底板32から突出することなく形成した場合には、第一筒体50および第二筒体54に挿し込まれる第一位置決めボス84および第二位置決めボス88を底板32以上に突出させることが出来ないことから、底板32から突出される接続端子22aよりも大きな突出量をもって形成することが困難となる。これに対して、本実施形態によれば、第一筒体50および第二筒体54が底板32から突出されていることにより、アッパケース12の第一位置決めボス84および第二位置決めボス88を、接続端子22aよりも大きな突出高さ寸法をもってロアケース14側に突出させることが出来る。その結果、アッパケース12にロアケース14を組み付けるに際して、接続端子22aがロアケース14の端子挿通孔38に挿通されるよりも前に、第一位置決めボス84および第二位置決めボス88を第一位置決め凹部45および第二位置決め凹部48に嵌め合わせて、ロアケース14をアッパケース12に位置決めすることにより、接続端子22aを端子挿通孔38に位置決めして挿通することが可能であり、組み付け作業をより容易且つ確実にすることが出来る。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、位置決め凹部および位置決めボスの具体的な断面形状は、楕円や長円を含む円形状に限定されるものではなく、矩形状や多角形状、その他各種の形状が適宜に採用可能である。また、位置決め凹部および位置決めボスの個数も限定されることはなく、3つ以上形成しても良い。
【符号の説明】
【0044】
10:電気接続箱、12:アッパケース(一方のケース)、14:ロアケース(他方のケース)、16:バスバー回路(内部回路体)、22a〜c:接続端子、32:底板、34:周壁(他方のケース)、35:外面、38:端子挿通孔、44,82:第一隅部、45:第一位置決め凹部、46,86:第二隅部、48:第二位置決め凹部、50:第一筒体、52:内方突部、54:第二筒体、60:嵌合凹溝、66:周壁(一方のケース)、84:第一位置決めボス、88:第二位置決めボス、90a〜d:ガタ防止リブ、94a,b:リブ突起、96a,b:ガタ防止リブ、100:先端部、102:中空ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のケースと他方のケースを組み付けて形成する中空ケースの内部に内部回路体が収容されていると共に、前記一方のケースの内部に設けられた位置決めボスが、前記他方のケースの内部に設けられた位置決め凹部に嵌め入れられることにより、前記一方のケースが前記他方のケースに位置決めされて、前記内部回路体に設けられた接続端子が前記中空ケースに貫設された端子挿通孔に挿通されるようになっている電気接続箱において、
前記位置決め凹部を画成する筒体が前記他方のケースの外面上に突出して設けられている、
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記位置決めボスと位置決め凹部が、相互に離隔した2箇所に設けられており、前記位置決め凹部を画成する筒体の外形が相互に異ならされている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記一方のケースの周壁の外周側に前記他方のケースの周壁が挿し入れられて重ね合わされることにより前記一方のケースと前記他方のケースが組み付けられていると共に、前記一方のケースの内部に前記内部回路体が収容されている一方、前記一方のケースの前記周壁の先端部から前記他方のケース側に向かって、前記位置決めボスが前記接続端子よりも大きな突出高さで突出されている請求項1又は2に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−85340(P2013−85340A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222507(P2011−222507)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】