説明

電気料金システム

【課題】建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額が電力会社から電気料金支払義務者に対する電気料金請求額を下回らないように担保することが可能で、各電気使用量を包括管理可能な電気料金システムが求められていた。
【解決手段】電気料金システム0100においては、建物電気使用量計測装置0101から建物全体で電気使用量のデータを出力する。また、テナント電気使用量計測装置0102と共用部電気使用量計測装置0103からの各電気使用量の情報を電気使用量蓄積装置0104を介して支払額算出装置0105が取得し、当該電気使用量の情報と所定のルールに基づいて、電気料金回収収納業務代行業者が各テナントに対して請求する請求額の総和が電力会社から電気料金支払義務者に対して請求する請求額を下回らないように、各テナントの電気料金を算出して、各テナント装置0106に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一以上のテナントが入居する建物の各テナントに支払義務が発生する電気料金をその建物の電気料金徴収責任者に代わって徴収する電気料金回収収納業務代行業者が利用する電気料金システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の所有者等は、建物の各テナントの電気使用量の検針や電気料金の計算、請求書の発行、電気料金の回収、といった行為を行っていた。これらの作業は非常に労力を要するものであり、作業の一部又は全部を代行業者(以下、電気料金回収収納業務代行業者という)にまかせることが行われている。
【0003】
電気料金回収収納業務代行業者は、建物の各テナントの電気料金の計算や、請求書の発行を以下に述べる先行技術等を用いることにより自動化して、作業の効率化を図っている。特許文献1においては、建物の各テナントの建物管理に係る請求書を生成するためのデータを保持可能なデータベースと、当該データに基づいて請求書を発行可能なサーバと、各テナントの装置からの請求書発行要求に応じて請求書を送信可能な情報端末装置と、からなるテナント請求書発行システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−133545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、電気料金回収収納業務代行業者は、各テナントに対して不公平感を与えないために、各テナントの電気使用量に応じて電気料金を算定する処理を一般的に行っている。しかしながら、建物においては共用部分の電気使用量についても電気料金が発生しているため、これらの各電気使用量を包括的に、かつ、漏れなく管理することが可能なシステムが求められていた。一方、電気料金回収収納業務代行業者が各テナントに対して個別的に請求する電気料金請求額の総和が、電力会社が建物の電気料金支払義務者に対して請求する電気料金請求額を下回らないようにすることが望ましい。しかしながら、従来技術においてはこの点を担保するシステムが存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、一以上のテナントが入居する建物の各テナントに支払義務が発生する電気料金をその建物の電気料金徴収責任者に代わって徴収する電気料金回収収納業務代行業者が利用する電気料金システムであって、前記建物に対して電力を供給している電力会社が建物の電気料金支払義務者(例えば「建物の所有者」)に対して請求する電気料金請求額を算出するための基準となる建物全体の電気使用量を建物全体の電力供給ラインにて計測して出力する建物電気使用量計測装置と、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインにて各テナントの電気使用量を計測して出力するテナント電気使用量計測装置と、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する共用部分の電力供給ラインにて共用部分の電気使用量を計測して出力する共用部電気使用量計測装置と、前記建物に設置され、テナント電気使用量計測装置と共用部電気使用量計測装置から取得する各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量を蓄積して出力する電気使用量蓄積装置と、複数の建物の電気使用に関する情報を統括管理するセンターに設置され、各建物の電気使用量蓄積装置から各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量とを取得して、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額である代行業者総額が、代行業者総額の算出対象期間と同期間についての建物電気使用量計測装置にて計測されるその建物全体の電気使用量と前記電力会社の電気料金算出基準に基づいて算出され前記電力会社から電気料金支払義務者に対して請求されるべき電気料金請求額を下回らないように定めたルールに従って、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を算出して出力する支払額算出装置と、前記建物の各テナントに設置され、テナント電気使用量計測装置から取得するそのテナントの電気使用量と、支払額算出装置から取得するそのテナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金と、を表示するテナント装置と、からなる電気料金システムを提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電気料金システムにより、各テナントや共用部分の電気使用量を包括的に、かつ、漏れなく管理することが可能であり、建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額が電力会社から電気料金支払義務者に対する電気料金請求額を下回らないように担保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の電気料金システムの概要を示す図
【図2】実施例1の電気料金システムの構成の一例を示したブロック図
【図3】実施例1の電気料金システムの各装置のハードウェア構成の一例を示した図
【図4】実施例1の電気料金システムの処理の流れの一例を示す図
【図5】実施例2の電気料金システムの構成の一例を示したブロック図
【図6】実施例2の電気料金システムの処理の流れの一例を示す図
【図7】実施例3の電気料金システムの構成の一例を示したブロック図
【図8】実施例3の電気料金システムの処理の流れの一例を示す図
【図9】実施例4の電気料金システムの構成の一例を示したブロック図
【図10】実施例4の電気料金システムの処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。実施例と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。実施例1は主に請求項1などに関し、実施例2は主に請求項2などに関し、実施例3は主に請求項3などに関し、実施例4は主に請求項4、5、6などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。
【実施例1】
【0010】
<概要>
図1は、本実施例の「電気料金システム」0100の概要を示す。この図に示すように、「建物電気使用量計測装置」0101と、「テナント電気使用量計測装置」0102と、「共用部電気使用量計測装置」0103と、からの各電気使用量の情報は「電気使用量蓄積装置」0104を介して「支払額算出装置」0105に出力される。「支払額算出装置」0105は、当該電気使用量の情報と所定のルールに基づいて、電気料金回収収納業務代行業者が各テナントに対して請求する請求額の総和が電力会社から電気料金支払義務者に対して請求する請求額を下回らないように各テナントの電気料金を算出して、「テナント装置」0106に出力する手段を有する。
【0011】
<構成>
図2は、本実施例の電気料金システムの構成を示したブロック図である。この図に示すように、本実施例の「電気料金システム」0200は、「建物電気使用量計測装置」0201と、「テナント電気使用量計測装置」0202と、「共用部電気使用量計測装置」0203と、「電気使用量蓄積装置」0204と、「支払額算出装置」0205と、「テナント装置」0206と、から構成される。
【0012】
本実施例の「電気料金システム」は、一以上のテナントが入居する建物の各テナントに支払義務が発生する電気料金をその建物の電気料金徴収責任者に代わって徴収する電気料金回収収納業務代行業者が利用するシステムである。
【0013】
「建物電気使用量計測装置」は、前記建物に対して電力を供給している電力会社が建物の電気料金支払義務者に対して請求する電気料金請求額を算出するための基準となる建物全体の電気使用量を建物全体の電力供給ラインにて計測して出力する機能を有する。
【0014】
建物全体の電力供給ラインとしては、電力会社から建物単位で電力を一括受電するための電力線が考えられる。後記の各テナントの電力供給ラインと、共用部分の電力供給ラインは当該建物全体の電力供給ラインから分岐するものであり、概念的には各テナントの電力供給ラインと、共用部分の電力供給ラインを束ねたものが建物全体の電力供給ラインとなる。
【0015】
電力会社から電気料金支払義務者に対して請求されるべき電気料金請求額は、当該建物電気使用量計測装置にて計測されるその建物全体の電気使用量と前記電力会社の電気料金算出基準に基づいて算出される。この算出処理は、電力会社の管理する装置において算出される構成が主として考えられるが、本実施例の電気料金システムのいずれかの装置(例えば、後記の支払額算出装置)においても算出する構成も可能である。
【0016】
建物全体の電気使用量の出力手段としては、表示出力手段や、印刷出力手段、データ記録出力手段等が可能であり、電力会社等の検針業務に合わせて適宜選択設定することが考えられる。
【0017】
「テナント電気使用量計測装置」は、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインにて各テナントの電気使用量を計測して出力する機能を有する。
【0018】
ここで、建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインとは、各テナントに対してのみ電力を供給する電力線である。出力先としては、後記の電気使用量蓄積装置や各テナント装置が該当するが、その他の装置に対して追加的に出力する構成も可能である。また、表示出力手段や、印刷出力手段、データ記録出力手段等を設ける構成も可能である。
【0019】
「共用部電気使用量計測装置」は、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する共用部分の電力供給ラインにて共用部分の電気使用量を計測して出力する機能を有する。ここで、建物全体の電力供給ラインから分岐する共用部分の電力供給ラインとは、共用部分に対してのみ電力を供給する電力線である。出力先としては、後記の電気使用量蓄積装置の他に、各テナント装置も可能である。また、表示出力手段や、印刷出力手段、データ記録出力手段等を追加的に設ける構成も可能である。
【0020】
上記各計測装置の計測手段としては、電力供給ラインに電流計やCTセンサーを設けてそのデータを取得する方法が考えられるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、他の装置にデータを出力する手段としては、有線又は無線の通信手段を用いることが可能である。ただし、工事負担を軽減するためには、建物内部においては無線通信手段を用いることが好ましい。この場合、無線データに変換するためのインターフェイスを用いることが考えられる。
【0021】
「電気使用量蓄積装置」は、前記建物に設置され、テナント電気使用量計測装置と共用部電気使用量計測装置から取得する各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量を蓄積して出力する機能を有する。なお、当該構成には、さらに建物電気使用量計測装置から建物全体の電気使用量を取得して蓄積し、出力する構成も含まれる。
【0022】
情報を蓄積する手段としては、HDDやフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体に記録する記憶装置を用いることが主として考えられるが、その他の記憶装置を用いることも可能である。ここで、各テナントと、共用部分の電気使用量をそれぞれ区別可能なように、各計測装置の識別IDと関連づけて各電気使用量を保持しておくことが考えられる。これらの関連づけは、各計測装置において行ってもよいし、電気使用量蓄積装置において行ってもよい。
【0023】
後記する支払額算出装置等に対する出力する手段としては、有線又は無線の通信手段が考えられるが、主としてインターネット網や、携帯電話網、PHS回線網を使った通信を行うことが考えられる。また、電気使用量の情報を所定日時に送信可能な構成とすることが可能である。また、通信回線が混雑しているか否かを検知して、混雑していない時間帯を選択して送信する構成も可能である。
【0024】
「支払額算出装置」は、複数の建物の電気使用に関する情報を統括管理するセンターに設置され、各建物の電気使用量蓄積装置から各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量とを取得して、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額である代行業者総額が、代行業者総額の算出対象期間と同期間についての建物電気使用量計測装置にて計測されるその建物全体の電気使用量と前記電力会社の電気料金算出基準に基づいて算出され前記電力会社から電気料金支払義務者に対して請求されるべき電気料金請求額を下回らないように定めたルールに従って、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を算出して出力する機能を有する。なお、当該構成には、さらに各建物の電気使用量蓄積装置から建物全体の電気使用量を取得して、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を算出して出力する構成も含まれるものである。
【0025】
上記複数の建物は、上記の建物電気使用量計測装置と、テナント電気使用量計測装置と、共用部分電気使用量計測装置と、電気使用量蓄積装置と、後記のテナント装置等を備えるものである。上記センターにおいては、これらの各建物を識別ID等を用いて識別可能であり、当該識別ID等と関連づけて各建物の電気使用に関する情報を統括管理することが可能である。
【0026】
上記ルールによる算出処理としては、電力会社の電気料金算定基準である基本料金単価、電力量料金単価等を利用して各テナントについて基礎となる料金を算出し、下回らないことを担保するための上乗せ金額を各テナントの電気使用量に応じて加算配分する処理が考えられる。当該ルールの具体例としては以下のものが考えられる。
【0027】
(ルールの具体例)
(1)各テナントの電気料金=専用部分料金+共用部分料金
(2)専用部分料金=基本料金+電力量料金+検針量料金+建物内電気供給設備保守料金
(3)基本料金=基本料金単価[円]×各テナントの契約電力[kW]×力率割引・割増[%]
(4)電力量料金=電力量料金単価[円]×各テナントの使用電力量[kWh]±燃料費調整額[円]
(5)燃料費調整額=各テナントの使用電力量[kWh]×燃料費調整単価[円]
(6)検針量料金=検針量料金単価[円]×各テナントの使用電力量[kWh]
(7)建物内電気供給設備保守料金=建物内電気供給設備保守料金単価[円]×各テナントの使用電力量[kWh]
(8)共用部分料金=基本料金分+電力量料金分
(9)基本料金分=基本料金単価[円]×共用部分の契約電力[kW]×力率割引・割増[%]×各テナントの負担割合[%]
(10)電力量料金分=電力量料金単価[円]×共用部分の使用電力量[kWh]×各テナントの負担割合[%]
【0028】
基本料金単価、電力量料金単価、は、電力会社の公表金額とし、電力会社の基本料金単価をルールの一部情報として保持する。また、改定情報の入力を受け付けた場合は、ルールの一部情報として新たに保持する処理を行う。各テナント、共用部分の契約電力は、電力会社が公表する方法の情報をルールの一部情報として保持し、当該情報に基づいて算定する。例えば、当月の最大需要電力と前11カ月までの最大需要電力のうち、いずれか大きい値とすることが考えられる。なお、「電気使用量の計測開始日」から12カ月間の期間の各月の各テナントの契約電力は、当月の最大需要電力と「電気使用量の計測開始日」から前月までの最大需要電力のうち、いずれか大きい値とすることが考えられる。力率割引・割増、燃料費調整額についても、電力会社の公表する方法についての情報をルールの一部情報として保持する。各建物の力率、負担割合等の情報は、予めルールの一部情報として保持する。
【0029】
上記例のルールでは、各テナントや共用部分の電気使用量についても、建物全体の電気使用量に対して電力会社等が適用する電気料金算出基準に準じたルールを用いているため、建物全体の電気使用量について電力会社が請求する金額を、電気料金回収収納業務代行業者が各テナントに対して請求する電気料金の請求金額の総額が下回る危険性を低くしている。また、各テナントに対して妥当な請求金額を算出でき、上乗せ金額である検針量料金や建物内電気供給設備保守料金を過大にする必要がない。
【0030】
なお、建物全体の電気使用量を建物電気使用量計測装置から電気使用量蓄積装置を介して取得している場合は、以下のルール等を加えることも可能である。
【0031】
(11)共用部分料金(新)=共用部分料金(古)+変圧器損失分料金
(12)変圧器損失分料金=電力量料金単価[円]×{建物全体の電気使用量[kWh]―各テナントの電気使用量[kWh]―共用部分の電気使用量[kWh]}×負担割合[%]
【0032】
当該ルールをさらに用いることにより、建物全体の電気使用量の値と各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量の総和の値に有意な差が生じている場合であっても、当該差分の電気使用量について電力会社の電気料金算出基準に準じたルールを用いるため、上記下回る危険性をより低くし、さらに妥当な請求金額を各テナントに対して算出することが可能になる。
【0033】
「テナント装置」は、前記建物の各テナントに設置され、テナント電気使用量計測装置から取得するそのテナントの電気使用量と、支払額算出装置から取得するそのテナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金と、を表示する機能を有する。
【0034】
支払額算出装置からの取得手段としては、支払額算出装置の出力手段に対応させて設ける構成が考えられる。主として、インターネット網、携帯電話網、PHS回線網などを利用した通信手段が考えられる。また、支払額算出装置と各テナント装置の中継地点に上記電気使用量蓄積装置やその他の情報蓄積装置を配置する構成も可能である。当該構成とすることにより、情報の集約性が高まる。
【0035】
表示手段としては、ディスプレイ等の一般的な表示出力手段を用いることが考えられる。その他、音声出力手段や、印刷出力手段等を別途設ける構成も可能である。上記のように各テナント装置は、自己の電気使用量の情報と電気料金の情報を把握すること可能になる。各テナントの電気使用量の情報は、対応するテナント電気使用量計測装置から直接的に受信するため少なくタイムラグで表示することが可能である。また、各テナントの電気料金の情報は支払額算出装置により算出されるため、各テナント装置における処理負担が軽くすることができ、各テナント装置をよりシンプルな構成にすることが可能になる。
【0036】
<具体的な構成>
本実施例の電気料金システムを構成する各装置の機能は、例えば図3に示すようなハードウェア構成を用いて実現することが可能である。この図に示すように各装置は、全体の制御を行う「CPU」0301と、CPUにおいて実行されるプログラムなどを記録する「ROM」0302と、各種データを一時的に記録し、かつ、CPUにおいてプログラムを実行する際の作業領域となる「メインメモリ(RAM)」0303と、各種データを記録可能な「補助記憶装置」0304と、外部装置とデータの送受信が可能な「通信装置」0305と、所望のデータを表示可能な「ディスプレイ装置」0306と、操作入力操作を受け付け可能な「操作入力装置」0307と、を有する構成が考えられる。また、これらの各構成は、「システムバス」0308を介して相互にデータの送受信を行うことが可能である。なお、各計測装置に関しては、電気使用量の計測データを出力可能な計測器をさらに設けることが考えられる。
【0037】
建物電気使用量計測装置は、計測した電気使用量のデータをメインメモリの所定のアドレスに格納し、補助記憶装置に記録する処理を行う。なお、電力会社等が管理する端末に通信装置を介して、計測した電気使用量のデータを送信する処理を行うことも可能であるし、ディスプレイ装置に対して表示出力することも可能である。
【0038】
テナント電気使用量計測装置、共用部電気使用量計測装置の各計測装置は、計測した電気使用量のデータをメインメモリの所定のアドレスに格納し、通信装置を介して、電気使用量蓄積装置に対して送信する処理を行う。さらに、各テナント電気使用量計測装置は、計測した各テナントの電気使用量のデータを通信装置を介して対応するテナント装置に送信する処理を行う。当該電気使用量のデータを通信装置を介して受信したテナント装置は、電気使用量のデータをディスプレイ装置に表示する処理を行う。
【0039】
電気使用量蓄積装置は、通信装置を介して受信するテナント電気使用量計測装置と共用部電気使用量計測装置の電気使用量のデータを収集して補助記憶装置の所定のアドレスに格納する。さらに、所定日時においてその建物の各計測装置にて計測された各電気使用量のデータを通信装置を介して支払額算出装置に対して送信する処理を行う。
【0040】
支払額算出装置は、通信装置を介して受信する各建物の各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量のデータをメインメモリと補助記憶装置の所定のアドレスに格納する。さらに、CPUは、補助記憶装置から所定のルールをメインメモリに読み出して、当該ルールに基づいてその建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を算出する処理を行い、処理結果を各建物の各テナントの識別IDと関連づけて補助記憶装置に格納する処理を行う。また、CPUは、各建物の各テナントの電気料金の情報を通信装置を介して対応する建物の各テナント装置に対して送信する処理を行う。当該電気料金の情報を通信装置を介して受信したテナント装置は、電気料金の情報をディスプレイ装置に表示する処理を行う。
【0041】
<処理の流れ>
図4は、本実施例の電気料金システムの処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。ステップS0401において、一以上のテナントが入居する建物に対して電力を供給している電力会社が建物の電気料金支払義務者に対して請求する電気料金請求額を算出するための基準となる建物全体の電気使用量を建物全体の電力供給ラインにて計測して出力する処理を行う。ステップS0402において、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインにて各テナントの電気使用量を計測して出力する処理を行う。ステップS0403において、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する共用部分の電力供給ラインにて共用部分の電気使用量を計測して出力する処理を行う。ステップS0404において、ステップS0402、S0403により出力された各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量を蓄積して出力する処理を行う。ステップS0405において、ステップS0404により出力されたその建物の各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量を取得して、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額である代行業者総額が、代行業者総額の算出対象期間と同期間についてのステップS0401にて出力されるその建物全体の電気使用量と前記電力会社の電気料金算出基準に基づいて算出され前記電力会社から電気料金支払義務者に対して請求されるべき電気料金請求額を下回らないように定めたルールに従って、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を算出して出力する処理を行う。ステップS0406において、ステップS0402により取得する各テナントの電気使用量と、ステップS0405により取得する各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を表示する処理を行う。以上の処理の順番は、これに限定されるものではなく、情報の入出力の関係を満たす範囲内で変更可能である。
【0042】
<効果>
本実施例の電気料金システムにより、各テナントや共用部分の電気使用量を包括的に、かつ、漏れなく管理することが可能であり、建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額が電力会社から電気料金支払義務者に対する電気料金請求額を下回らないように担保することが可能になる。
【実施例2】
【0043】
<概要>
本実施例の電気料金システムは、基本的に実施例1の電気料金システムと同様であるが、建物の各テナントの電気料金の支払状況の情報に基づいて、所定期日までに電気料金の支払がなされていないテナントの表示装置に対して督促情報を送信することが可能である。当該構成とすることにより、各テナントに対して容易に電気料金の徴収を行うことが可能になる。
【0044】
<構成>
図5は、本実施例の電気料金システムの構成を示したブロック図である。この図に示すように、本実施例の「電気料金システム」0500は、「建物電気使用量計測装置」0501と、「テナント電気使用量計測装置」0502と、「共用部電気使用量計測装置」0503と、「電気使用量蓄積装置」0504と、「支払額算出装置」0505と、「テナント装置」0506と、「電気料金支払状況情報受付装置」0507と、「支払督促情報出力装置」0508と、から構成される。以下、実施例1との相違点である、「電気料金支払状況情報受付装置」と、「支払督促情報出力装置」と、「テナント装置」の構成について順に説明する。
【0045】
「電気料金支払状況情報受付装置」は、複数の建物の電気使用に関する情報を統括管理するセンターに設置され、各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報を受け付けて出力する機能を有する。ここで、支払状況の情報の受け付け手段としては、操作入力を受け付け可能な操作入力手段や、外部記録媒体から情報を取得可能なデータ取得手段や、ネットワークを介して情報を取得可能な通信手段など、種々の手段を用いることが可能である。また、データの出力先としては、後述の支払督促情報出力装置の他に、各テナント装置や、その他の表示出力手段や印刷出力手段、データ記録出力手段などが考えられる。
【0046】
電気料金の支払状況の情報としては、電気料金の支払いの有無の他、電気料金の支払期限や支払金額の情報、などの情報が考えられる。これらの情報は、電気料金支払状況情報受付装置の内部記憶装置において長期的に保持する構成も可能であるし、一定期間の経過後に自動的に消去する構成も可能である。また、外部の装置からアクセス可能なネットワーク上の位置に配置し、外部の記憶装置においてデータを取得可能な構成とすることも可能である。
【0047】
「支払督促情報出力装置」は、電気料金支払状況情報受付装置から取得する各テナントの支払状況の情報に基づいて、支払期限を基準に定められる判断期日である第一の所定期日までに各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に、該当するテナントの電気料金の支払いについての督促情報をそのテナント装置に出力する機能を有する。
【0048】
ここで、第一の所定期日は、建物ごとに設定してもよいし、テナントごとに設定してもよい。また、電気料金の支払期限の情報を取得している場合は、その期限から所定日経過した日を第一の所定期日とすることも可能である。第一の所定期日等に係る情報は、予め支払督促情報出力装置の内部の記憶装置に保持しておく構成も可能であるが、外部の装置や記憶媒体から取得したり、ネットワークを介して取得したりする構成も可能である。
【0049】
「テナント装置」は、実施例1で説明した機能に加えて、支払督促情報出力装置から取得するそのテナントの電気料金の支払いについての督促情報を表示する手段をさらに有する。ここで、督促情報の表示出力に合わせて、音声出力や印刷出力を行う構成も可能である。
【0050】
<具体的な構成>
本実施例の各装置のハードウェア構成は、実施例1の図3で説明したハードウェア構成と同様のものが考えられる。
【0051】
電気料金支払状況情報受付装置は、データ取得手段により取得した各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報をメインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、通信装置を介して取得したデータを支払督促情報出力装置に送信する処理を行う。
【0052】
支払督促情報出力装置は、電気料金支払状況情報受付装置から通信装置を介して受信する各テナントの支払状況の情報をメインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、記憶装置に保持されている第一の所定期日の情報をメインメモリに読み出して、各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して第一の所定期日までに電気料金の支払いがなされているか否か判断する処理をCPUにて行う。ここでの判断が所定のテナントに関して電気料金の支払いがなされていないとの判断である場合は、当該テナントの識別IDと督促情報とを関連づけてメインメモリの所定のアドレスに格納する。さらに、当該テナントの識別IDと関連づけられた督促情報を通信装置を介して各テナント装置に送信する処理を行う。当該督促情報を受信したテナント装置は、督促情報を表示する処理を行う。
【0053】
<処理の流れ>
本実施例の電気料金システムの処理の流れは、実施例1の図4で示した処理の流れと同様である。ただし、本実施例の電気料金システムは、図6で示す以下の処理についてさらに行うことが可能である。ステップS0601において、各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報を受け付けて出力する処理を行う。ステップS0602において、取得する各テナントの支払状況の情報に基づいて、支払期限を基準に定められる判断期日である第一の所定期日までに各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に、該当するテナントの電気料金の支払いについての督促情報をそのテナント装置に出力する処理を行う。ステップS0603において、ステップS0602により取得するそのテナントの電気料金の支払いについての督促情報を表示する処理を行う。
【0054】
<効果>
本実施例の電気料金システムにより、実施例1の効果とは別に、各テナントに対して容易に電気料金の徴収を行うことが可能になる。
【実施例3】
【0055】
<概要>
本実施例の電気料金システムは、基本的に実施例1、2の電気料金システムと同様であるが、建物の各テナントの電気料金の支払状況の情報に基づいて、所定の期日までに電気料金の支払がなされていない所定のテナントの送電スイッチを開いて電力供給を停止することが可能である。当該構成とすることにより、より容易に電力の供給を停止することが可能になる。
【0056】
<構成>
図7は、本実施例の電気料金システムの構成を示したブロック図である。この図に示すように、本実施例の「電気料金システム」0700は、「建物電気使用量計測装置」0701と、「テナント電気使用量計測装置」0702と、「共用部電気使用量計測装置」0703と、「電気使用量蓄積装置」0704と、「支払額算出装置」0705と、「テナント装置」0706と、「電気料金支払状況情報受付装置」0707と、「送電スイッチ」0708と、「送電スイッチ制御装置」0709と、から構成される。以下、実施例1、2の構成との相違点である「送電スイッチ」と、「送電スイッチ制御装置」について説明する。
【0057】
「送電スイッチ」は、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインの一部に設置され、制御信号を取得して各テナントの電力供給ラインを開閉する機能を有する。ここで、制御信号としては、各送電スイッチを識別するための識別IDと、送電スイッチの開閉を区別する命令IDが含むことが可能である。また、制御信号の取得は有線又は無線の通信手段によって行うことが考えられる。なお、送電スイッチは、共用部分の電力供給ラインの一部に設置する構成も可能である。
【0058】
「送電スイッチ制御装置」は、電気料金支払状況情報受付装置から取得する各テナントの支払状況の情報に基づいて、支払期限を基準に定められる判断期日である第二の所定期日までに各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に、該当するテナントの送電スイッチに制御信号を出力して送電スイッチを開くように制御する機能を有する。また、電力供給を再開する際に該当するテナントの送電スイッチに制御信号を送信して送電スイッチを閉じるように制御する構成も可能である。
【0059】
送電スイッチの制御は、電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に限らず、所定のテナントや共用部分に対する電力の供給を停止したい場合において任意に行うことが可能な構成も可能である。例えば、所定のテナントや共用部分の電気供給設備(計測装置など)の修理・保全を行いたい場合が考えられる。
【0060】
<具体的な構成>
本実施例の各装置のハードウェア構成は、実施例1の図3で説明したハードウェア構成と同様のものが考えられる。
【0061】
電気料金支払状況情報受付装置は、操作入力装置を介して入力された各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報をメインメモリの所定のアドレスに格納する。次に、通信装置を介して取得したデータを送電スイッチ制御装置に送信する処理を行う。
【0062】
送電スイッチ制御装置は、電気料金支払状況情報受付装置から通信装置を介して受信する各テナントの支払状況の情報を所定のアドレスに格納する。次に、記憶装置に保持されている第二の所定期日の情報をメインメモリに読み出して、各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して第二の所定期日までに電気料金の支払いがなされているか否か判断する処理をCPUにて行う。ここでの判断が所定のテナントに関して電気料金支払いがなされていないとの判断である場合は、当該テナントの識別IDを取得してメインメモリの所定のアドレスに格納する。さらに、当該テナントの識別IDと送電スイッチを開くための命令IDからなる制御命令を関連づけて通信装置を介して送電スイッチに送信する処理を行う。当該制御命令を受信した送電スイッチは、自己の識別IDと制御信号に含まれる識別IDを検知し、一致する場合は命令IDに従って、送電スイッチを開く処理を行う。
【0063】
<処理の流れ>
本実施例の電気料金システムの処理の流れは、実施例1の図4で示した処理の流れと同様である。ただし、本実施例の電気料金システムは、図8で示す以下の処理についてさらに行うことが可能である。ステップS0801において、各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報を受け付けて出力する処理を行う。ステップS0802において、ステップS0801により取得する各テナントの支払状況の情報に基づいて各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して第二の所定期日までに電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に、該当するテナントの送電スイッチに対して送電スイッチを開くための制御信号を出力する処理を行う。ステップS0803において、制御信号を取得した各送電スイッチは送電スイッチを開く処理を行う。
【0064】
<効果>
本実施例の電気料金システムにより、実施例1、2の効果とは別に、より容易に電力の供給を停止することが可能になる。
【実施例4】
【0065】
<概要>
本実施例の電気料金システムは、基本的に実施例1の電気料金システムと同様であるが、建物全体の電気使用量と各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量に基づいて、その建物のいずれかの計測装置に関して異常が生じているか否かを容易に検出することが可能である。
【0066】
<構成>
図9は、本実施例の電気料金システムの構成を示したブロック図である。この図に示すように、本実施例の「電気料金システム」0900は、「建物電気使用量計測装置」0901と、「テナント電気使用量計測装置」0902と、「共用部電気使用量計測装置」0903と、「電気使用量蓄積装置」0904と、「支払額算出装置」0905と、「テナント装置」0906と、「計測値異常検出装置」0907と、から構成される。以下、実施例1〜3との相違点である「電気使用量蓄積装置」と、「計測値異常検出装置」について説明する。
【0067】
前記電気使用量蓄積装置は、建物電気使用量計測装置から取得する建物全体の電気使用量を蓄積して出力する手段をさらに有する。つまり、テナント電気使用量計測装置と共用部電気使用量計測装置から取得する各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量に加えて、建物全体の電気使用量を蓄積して出力することが可能である。
【0068】
後記する計測値異常検出装置に対する出力する手段としては、有線又は無線の通信手段が考えられるが、主としてインターネット網や、携帯電話網、PHS回線網を使った通信を行うことが考えられる。
【0069】
「計測値異常検出装置」は、電気使用量蓄積装置から取得するその建物全体の電気使用量と各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量に基づいてその建物全体の電気使用量の値と各テナントの電気使用量及び共用部分の電気使用量の総和の値に所定閾値以上の差が生じているか否か判断し、所定閾値以上の差が生じている場合はその建物のいずれかの計測装置に関して異常が生じていることを示す異常検出信号を出力する機能を有する。
【0070】
なお、計測値異常検出装置と支払額算出装置は同一のハードウェアにより実現することも可能であり、必ずしも別のハードウェアとする必要はない。
【0071】
ここで、所定閾値以上の差は、その建物全体の電気使用量の値と各テナントの電気使用量及び共用部分の電気使用量の総和の値の差分として算出する構成も可能であるし、その建物全体の電気使用量の値に対する各テナントの電気使用量及び共用部分の電気使用量の総和の値の割合として算出する構成も可能であり、種々の態様で求めることが可能である。
【0072】
所定閾値の情報は、予め記憶装置に保持しておく構成が主として考えられるが、外部の装置や記録媒体から取得したり、通信装置を介して取得したりする構成も可能である。当該異常検出信号の出力先としては、支払額算出装置とすることも可能であるし、各テナント装置とすることも可能である。また、表示出力手段や、音声出力手段、印刷出力手段を用いて出力する構成も可能である。
【0073】
異常検出信号を出力により、電気料金回収収納業務代行業者は、計測値に異常が生じていることを迅速に把握することが可能になり、各計測装置のメンテナンスがより容易になる。また、各電気使用量について正確なデータを用いやすくなるため、より適正な電気料金の算出処理を行うことが可能になる。
【0074】
なお、計測値異常検出装置は、異常検出信号の出力に伴って、直近の過去所定時間にわたるその建物全体の電気使用量と各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量の変化の指数をそれぞれ算出し、異常検出信号と同じタイミングで電気使用量の計測結果が所定以上変化したテナント計測装置または共用部分計測装置を特定する手段をさらに有する構成とすることも可能である。
【0075】
電気使用量の変化の指数としては、単位時間あたりの電気使用量の変化量や、変化率などが考えられるが、特にこれに限定されるものではない。なお、複数の計測装置が候補として特定される場合は、計測値に異常が生じている可能性がある計測装置として出力することも可能である。
【0076】
また、計測値異常検出装置は、異常検出信号と同じタイミングで電気使用量の計測結果が所定以上変化した計測装置の特定に伴って、その特定結果がテナント電気使用量計測装置である場合はそのテナントのテナント装置に異常検出信号を出力する手段をさらに有する構成とすることも可能である。この場合、各テナント装置は、計測値異常検出装置から取得する異常検出信号に基づいて、そのテナントのテナント電気使用量計測装置の計測値に異常が生じていることを示す情報を表示する手段をさらに設ける構成とすることが考えられる。
【0077】
当該構成とすることにより、各テナントは、テナント装置に表示されている自己の電気使用量について何らかの誤差が含まれていることを容易に把握することが可能になり、異常値の表示によって誤解してしまう事態を防止できる。
【0078】
<具体的な構成>
本実施例の各装置のハードウェア構成は、実施例1の図3で説明したハードウェア構成と同様のものが考えられる。
【0079】
電気使用量蓄積装置は、通信装置を介して受信する建物電気使用量計測装置とテナント電気使用量計測装置と共用部電気使用量計測装置の電気使用量のデータを収集して補助記憶装置の所定のアドレスに格納する。さらに、所定タイミングにおいてその建物の各計測装置にて計測された各電気使用量のデータを通信装置を介して計測値異常検出装置に対して送信する処理を行う。
【0080】
計測値異常検出装置は、通信装置を介して受信する各建物の建物全体の電気使用量と各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量のデータをメインメモリと補助記憶装置の所定のアドレスに格納する。さらに、CPUは、基準となる閾値の情報を補助記憶装置からメインメモリに読み出して、その建物全体の電気使用量と各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量に基づいてその建物全体の電気使用量の値と各テナントの電気使用量及び共用部分の電気使用量の総和の値に当該閾値以上の差が生じているか否か判断する処理を行い、処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。ここでの処理結果が所定閾値以上の差が生じているとの結果である場合はその建物のいずれかの計測装置の計測値に関して異常が生じていることを示す異常検出信号を出力する処理を行う。当該出力は、例えばディスプレイ装置に対して表示出力するものでもあってもよいし、通信装置を介してテナント装置等に送信する処理であってもよい。
【0081】
<処理の流れ>
本実施例の電気料金システムの処理の流れは、実施例1の図4で示した処理の流れと同様である。ただし、本実施例の電気料金システムは、図10で示す以下の処理についてさらに行うことが可能である。ステップS1001において、一以上のテナントが入居する建物に対して電力を供給している電力会社が建物の電気料金支払義務者に対して請求する電気料金請求額を算出するための基準となる建物全体の電気使用量を建物全体の電力供給ラインにて計測して出力する処理を行う。ステップS1002において、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインにて各テナントの電気使用量を計測して出力する処理を行う。ステップS1003において、前記建物全体の電力供給ラインから分岐する共用部分の電力供給ラインにて共用部分の電気使用量を計測して出力する処理を行う。ステップS1004において、ステップS1001〜S1003により取得する建物全体の電気使用量と各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量を蓄積して出力する処理を行う。ステップS1005において、ステップS1004により取得した建物全体の電気使用量と各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量に基づいてその建物全体の電気使用量の値と各テナントの電気使用量及び共用部分の電気使用量の総和の値に所定閾値以上の差が生じているか否か判断する処理を行う。ここでの判断が所定閾値以上の差が生じているとの判断である場合はステップS1006に進み、その建物のいずれかの計測装置に関して異常が生じていることを示す異常検出信号を出力する。ここでの判断が所定閾値以上の差が生じていいないとの判断である場合は処理を終了する。
【0082】
なお、以上の処理に加えて、異常検出信号の出力に伴って、直近の過去所定時間にわたるその建物全体の電気使用量と各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量の変化の指数をそれぞれ算出し、異常検出信号と同じタイミングで電気使用量の計測結果が所定以上変化したテナント計測装置または共用部分計測装置を特定する処理を行うことも可能である。
【0083】
また、異常検出信号と同じタイミングで電気使用量の計測結果が所定以上変化した計測装置の特定に伴って、その特定結果がテナント電気使用量計測装置である場合はそのテナントのテナント装置に異常検出信号を出力する処理を行うことも可能である。テナント装置は、取得する異常検出信号に基づいて、そのテナントのテナント電気使用量計測装置の計測値に異常が生じていることを示す情報を表示する処理を行うことも可能である。
【0084】
<効果>
本実施例の電気料金システムにより、実施例1の効果に加えて、その建物のいずれかの計測装置に関して異常が生じているか否かを容易に検出することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
0100、0200、0500、0700、0900…電気料金システム
0101、0201、0501、0701、0901…建物電気使用量計測装置
0102、0202、0502、0702、0902…テナント電気使用量計測装置
0103、0203、0503、0703、0903…共用部電気使用量計測装置
0104,0204、0504、0704、0904…電気使用量蓄積装置
0105、0205、0505、0705、0905…支払額算出装置
0106、0206、0506、0706、0906…テナント装置
0507、0707…電気料金支払状況情報受付装置
0508…支払督促情報出力装置
0708…送電スイッチ、0709…送電スイッチ制御装置
0907…計測値異常検出装置
0301…CPU、0302…ROM、0303…メインメモリ(RAM)
0304…補助記憶装置、0305…通信装置、0306…ディスプレイ装置
0307…操作入力装置、0308…システムバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上のテナントが入居する建物の各テナントに支払義務が発生する電気料金をその建物の電気料金徴収責任者に代わって徴収する電気料金回収収納業務代行業者が利用する電気料金システムであって、
前記建物に対して電力を供給している電力会社が建物の電気料金支払義務者(例えば「建物の所有者」)に対して請求する電気料金請求額を算出するための基準となる建物全体の電気使用量を建物全体の電力供給ラインにて計測して出力する建物電気使用量計測装置と、
前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインにて各テナントの電気使用量を計測して出力するテナント電気使用量計測装置と、
前記建物全体の電力供給ラインから分岐する共用部分の電力供給ラインにて共用部分の電気使用量を計測して出力する共用部電気使用量計測装置と、
前記建物に設置され、テナント電気使用量計測装置と共用部電気使用量計測装置から取得する各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量を蓄積して出力する電気使用量蓄積装置と、
複数の建物の電気使用に関する情報を統括管理するセンターに設置され、各建物の電気使用量蓄積装置から各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量とを取得して、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金の総額である代行業者総額が、代行業者総額の算出対象期間と同期間についての建物電気使用量計測装置にて計測されるその建物全体の電気使用量と前記電力会社の電気料金算出基準に基づいて算出され前記電力会社から電気料金支払義務者に対して請求されるべき電気料金請求額を下回らないように定めたルールに従って、その建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金を算出して出力する支払額算出装置と、
前記建物の各テナントに設置され、テナント電気使用量計測装置から取得するそのテナントの電気使用量と、支払額算出装置から取得するそのテナントが電気料金回収収納業務代行業者に対して支払うべき電気料金と、を表示するテナント装置と、
からなる電気料金システム。
【請求項2】
複数の建物の電気使用に関する情報を統括管理するセンターに設置され、各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報を受け付けて出力する電気料金支払状況情報受付装置と、
電気料金支払状況情報受付装置から取得する各テナントの支払状況の情報に基づいて、支払期限を基準に定められる判断期日である第一の所定期日までに各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に、該当するテナントの電気料金の支払いについての督促情報をそのテナント装置に出力する支払督促情報出力装置をさらに有し、
各テナント装置は、
支払督促情報出力装置から取得するそのテナントの電気料金の支払いについての督促情報を表示する手段をさらに有する、請求項1に記載の電気料金システム。
【請求項3】
複数の建物の電気使用に関する情報を統括管理するセンターに設置され、各建物の各テナントが電気料金回収収納業務代行者に対して支払うべき電気料金の支払状況の情報を受け付けて出力する電気料金支払状況情報受付装置と、
前記建物全体の電力供給ラインから分岐する各テナントの電力供給ラインの一部に設置され、制御信号を取得して各テナントの電力供給ラインを開閉する送電スイッチと、
電気料金支払状況情報受付装置から取得する各テナントの支払状況の情報に基づいて、支払期限を基準に定められる判断期日である第二の所定期日までに各テナントから電気料金回収収納業務代行業者に対して電気料金の支払いがなされていないと判断される場合に、該当するテナントの送電スイッチに制御信号を出力して送電スイッチを開くように制御する送電スイッチ制御装置と、をさらに有する請求項1に記載の電気料金システム。
【請求項4】
前記電気使用量蓄積装置は、建物電気使用量計測装置から取得する建物全体の電気使用量を蓄積して出力する手段をさらに有するとともに、
さらに、電気使用量蓄積装置から取得するその建物全体の電気使用量と各テナント電気使用量と共用部分の電気使用量に基づいてその建物全体の電気使用量の値と各テナントの電気使用量及び共用部分の電気使用量の総和の値に所定閾値以上の差が生じているか否か判断し、所定閾値以上の差が生じている場合はその建物のいずれかの計測装置に関して異常が生じていることを示す異常検出信号を出力する計測値異常検出装置を有する、請求項1から3のいずれか一に記載の電気料金システム。
【請求項5】
前記計測値異常検出装置は、
異常検出信号の出力に伴って、直近の過去所定時間にわたるその建物全体の電気使用量と各テナントの電気使用量と共用部分の電気使用量の変化の指数をそれぞれ算出し、異常検出信号と同じタイミングで電気使用量の計測結果が所定以上変化したテナント計測装置または共用部分計測装置を特定する手段をさらに有する請求項4に記載の電気料金システム。
【請求項6】
前記計測値異常検出装置は、
異常検出信号と同じタイミングで電気使用量の計測結果が所定以上変化した計測装置の特定に伴って、その特定結果がテナント電気使用量計測装置である場合はそのテナントのテナント装置に異常検出信号を出力する手段をさらに有し、
各テナント装置は、
計測値異常検出装置から取得する異常検出信号に基づいて、そのテナントのテナント電気使用量計測装置の計測値に異常が生じていることを示す情報を表示する手段をさらに有する請求項5に記載の電気料金システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−128953(P2011−128953A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287647(P2009−287647)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【特許番号】特許第4600946号(P4600946)
【特許公報発行日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(507184096)日本テクノ株式会社 (12)