説明

電気料金課金システム及び電力量管理装置

【課題】住宅や施設の共用区域に関して、利用者ごとに電気料金を課金する。
【解決手段】電気料金課金システム1は、全体管理装置2、電力量管理装置(以下、親装置という)3及び電力量管理装置(以下、子装置という)4を備える。全体管理装置2は、各地域にある電力会社の管理部門に設置され、利用者の個人情報や電力契約に関する情報を管理するとともに、親装置3から各利用者の使用電力量を取得し、所定の期間ごとの電力料金を計算し、記憶する。親装置3は、住戸や施設単位に設置され、子装置4と同様に自らが設置された共用区域における計測電力の取得や利用者の入退室状況の把握を行うとともに、子装置4及び自らに係る共用区域の計測電力から使用電力量を計算、集計し、全体管理装置2に受け渡す。子装置4は、住戸や施設内の共用区域単位に設置され、当該共用区域における計測電力の取得や利用者の入退室状況の把握を行い、親装置3に受け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の人が利用する共用区域に関しても利用者ごとに電気料金を課金する電気料金課金システム及び電力量管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気料金に関しては、個々の使用場所ごとに契約が行われており、その契約の中には使用時間帯等による割引特典が決められているものがある。従って、個々の電気使用量が確認可能な一戸建て住宅や集合住宅の住戸箇所(以下、「専用区域」という)においては、割引特典があることによって居住者の省エネ意識が高まり、CO排出量の抑制につながっている。
【0003】
一方、集合住宅のエントランス等の複数人で利用する場所(以下、「共用区域」という)においては、個々の電気使用量を確認することができないため、割引特典がなく、省エネ意識が希薄となり、CO排出量の抑制につながっていない。また、実際に利用するしないにかかわらず一律に電気料金を徴収されることもあって、公平性に欠けるケースが多々見受けられる。
【特許文献1】特開2004−362326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、電気使用量を個別に管理し、省エネ意識を向上させるためには、共用区域であっても利用者ごとに電気料金を課金するシステムが有効である。これに関連して、特許文献1には、「エネルギ使用管理装置及びエネルギ使用量管理システム」が開示されている。このシステムは、電力、燃料ガス等のエネルギの使用量及び料金を、住宅、建物、施設単位ではなく、使用者個人単位で管理するものである。しかし、カードを所持している利用者が電力の供給操作を1回行えば、その後は誰でも家電機器等のスイッチにより電源のオン・オフができるため、複数人で利用する場合、カードの所持者以外は、割引特典による省エネ意識を持たなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、住宅や施設の共用区域に関して、利用者ごとに電気料金を課金することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、電気料金課金システムであって、住宅や施設の共用区域において使われた電力を計測する電力量計から計測電力を定期的に取得し、記憶する計測電力取得手段と、利用者が前記共用区域に入場した時刻である入場時刻及び利用者が前記共用区域から退場した時刻である退場時刻を随時取得し、記憶する入退場時刻取得手段と、前記計測電力、前記入場時刻及び前記退場時刻に基づいて、各入場時刻及び各退場時刻の前後における前記計測電力の変化量を算出して記憶し、先に記憶した前記計測電力を消去する計測電力変化量算出手段と、各入場時刻及び各退場時刻のうち、隣接する2つの時刻に区切られた各時間帯に関して、前記変化量、前記時間帯の長さである時間及び前記時間帯に前記共用区域に入場していた利用者の人数に基づいて、前記利用者の消費電力量を計算する消費電力量計算手段と、前記各時間帯に関して、前記共用区域における待機電力、前記時間及び前記人数に基づいて、前記利用者の待機電力量を計算する待機電力量計算手段と、前記消費電力量及び前記待機電力量を合計して前記利用者の使用電力量を算出し、記憶する使用電力量算出手段と、前記使用電力量に基づいて前記利用者の電気料金を計算し、記憶する電気料金計算手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、利用者ごとに共用区域への入退場を管理し、入退場の各タイミングにおける計測電力の変化量を把握することによって、利用者ごとに共用区域における使用電力量を計算することができるので、利用者ごとに電気料金を課金することができる。また、入退場の各タイミングにおける計測電力の変化量を記憶した後に、定期的に記憶していた計測電力を消去するので、記憶するデータ量を削減することができる。
【0008】
また、本発明は、電気料金課金システムであって、前記利用者に所持されたIC(Integrated Circuit)カード又は無線タグから、前記利用者を特定するための第1の識別情報を含む信号を受信する手段と、現在時刻を提供する手段と、をさらに備え、前記入退場時刻取得手段が、前記信号を受信した時の現在時刻を取得し、前記第1の識別情報に対応させて前記現在時刻を記憶することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、電気料金課金システムであって、前記消費電力量計算手段が、前記時間帯から直近で1番目の利用者が前記共用区域に入場した時刻から前記時間帯の開始時刻までの各入場時刻及び各退場時刻のうち、各入場時刻の前後における前記変化量を加算し、各退場時刻の前後における前記変化量を減算することによって合計消費電力を算出し、前記合計消費電力に前記時間を積算し、さらに前記人数で除算した値を前記消費電力量とすることを特徴とする。
この構成によれば、計測電力の変化量を、入場時刻の場合には加算し、退場時刻の場合には減算することによって、当該時間帯における消費電力を精度よく求めることができ、ひいては消費電力量を精度よく求めることができる。
【0010】
また、本発明は、電気料金課金システムであって、前記待機電力量計算手段が、前記時間帯における前記計測電力を積算して計測電力量とし、前記消費電力量計算手段によって計算された前記消費電力量に前記人数を積算した値を前記計測電力量から減算し、さらに前記人数で除算した値を前記待機電力量とすることを特徴とする。
この構成によれば、実際に計測した電力量から実際に消費した電力量を減算することによって、待機電力量を精度よく求めることができる。
【0011】
本発明は、電気料金課金システムであって、利用者と電力会社との間で交わされた契約ごとに、当該契約が適用される時間帯及び当該時間帯における前記使用電力量と前記電気料金との関係を示す料金体系を含む契約情報を記憶する手段と、利用者ごとに、電力会社と交わした契約に係る前記契約情報を特定するための第2の識別情報を記憶する手段と、をさらに備え、前記電気料金計算手段が、前記利用者の前記第2の識別情報を抽出し、前記第2の識別情報及び前記使用電力量に係る時間帯から前記契約情報を特定し、前記契約情報に含まれる前記料金体系を参照して、前記使用電力量から前記電気料金を算出することを特徴とする。
この構成によれば、利用者ごと、時間帯ごとの料金体系に基づいて、使用電力量から電気料金を算出するので、取り決められた契約内容に従ってきめ細かく課金を行うことができる。
【0012】
なお、本発明は、電力量管理装置を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、住宅や施設の共用区域に関して、利用者ごとに電気料金を課金することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る電気料金課金システムは、住宅や施設の共用区域における消費電力を定期的に取得する一方、各利用者が共用区域に入退室した状況を随時把握した上で、入退室の前後における消費電力の変化量、待機電力、利用者の滞在時間(=退室時刻−入室時刻)及び人数に基づいて各利用者の使用電力量を計算し、当該使用電力量から各利用者に課金すべき電気料金を計算するものである。
【0015】
これによれば、共用区域に係る電気料金について、共用区域を利用する可能性のある人に対して一律に課金するのではなく、実際に利用した人に対して利用状況に基づいて課金することができる。そして、共用区域の利用者に省エネ意識を持たせることができるとともに、共用区域を利用するしないにかかわらず一律に課金することの不公平性を解消することができる。
【0016】
詳細には、本実施形態の電気料金課金システムの特徴は、共用区域の利用者を識別し、利用者人数、利用時間及び計測電力に基づいて、利用者ごとの使用電力量を待機電力量と実際に使った消費電力量に分けて計算する方法にある。そして、使用電力量の計算結果及び割引特典を基に計算した電気料金明細書を利用者ごとに出力することによって、利用者に省エネ意識を促すことができる。また、電気料金明細書に使用電力量から換算したCO排出量を付加することもできる。
【0017】
電気料金課金システムにおける利用者の識別は、利用者が携帯しているICタグ、ICカード、携帯電話等(以下、「カード等」という)から受信した信号に含まれるIDを用いて行う。また、同時にカード等からのIDを検出したカウント数により、利用者人数を記憶する。共用区域の利用時間は、例えば、共用区域で最初にIDを検出した時点と、専用区域に最初に同一のIDを検出した時点との時間差を計測することによって求める。専用区域の利用時間は、例えば、利用者が所持するカード等から発信される微弱電波を定期的に検出して計測することによって求める。計測電力は、例えば、利用者の生活パターンに合わせて任意の箇所に設置した、共用区域及び専用区域の電力量計により計測する。
【0018】
なお、待機電力と実際に使用した電力量の判別は、カード等から発信される微弱電力の有無、すなわち、共用区域における利用者の有無を判定することによって行う。
【0019】
≪システムの構成と概要≫
図1は、電気料金課金システム1の構成を示す図である。電気料金課金システム1は、全体管理装置2、電力量管理装置(以下、親装置という)3及び電力量管理装置(以下、子装置という)4を備える。全体管理装置2は、各地域にある電力会社の支店等の管理部門に設置され、利用者の個人情報や電力使用の契約に関する情報等を管理するとともに、親装置3から各利用者の使用電力量を取得し、所定の期間ごとに課金すべき電力料金を計算し、記憶する。親装置3は、住戸や施設(例えば、マンションやスポーツクラブ等)単位に設置される電力量管理装置であり、子装置4と同様に自らが設置された共用区域における消費電力の取得、管理や利用者の入退室状況の把握を行うとともに、子装置4からの計測電力及び自らに係る共用区域の計測電力から使用電力量を計算、集計し、全体管理装置2に受け渡す。子装置4は、住戸や施設内の共用区域(例えば、マンションのエントランス等)単位に設置される電力量管理装置であり、自らが設置された共用区域における計測電力の取得、管理や利用者の入退室状況の把握を行い、親装置3に受け渡す。なお、全体管理装置2と、親装置3との間、及び、親装置3と、子装置4との間は、所定のネットワーク(例えば、LAN(Local Area Network)等)を介して通信可能になっている。
【0020】
≪各装置の構成≫
図2は、電気料金課金システム1の各装置の構成を示す図である。全体管理装置2は、通信制御部21、処理部22、利用者管理DB23及び電気料金課金DB24を備える。通信制御部21は、ネットワークを介して親装置3との通信を行う部分であり、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。処理部22は、通信制御部21と各DB間のデータの受け渡しを行うととともに、全体管理装置2全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。利用者管理DB23は、電力会社と契約している利用者ごとに氏名、住所を含む個人情報や、契約に関する情報等を格納する。電気料金課金DB24は、利用者ごとに、所定の期間(例えば、1ヶ月間)ごとに課金された電気料金を格納する。利用者管理DB23及び電気料金課金DB24は、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置に構築されるデータベースとして実現される。
【0021】
親装置3は、通信制御部31、処理部32、入退室管理DB33、利用エリア管理DB34、契約プラン管理DB(契約情報)35、計測電力管理DB36、使用電力量管理主DB37、使用電力量管理副DB38、表示部39、時計3A、カードリーダ受信部3B、IC(Integrated Circuit)タグ信号受信部3C及び待機電力値設定部3Dを備える。
【0022】
通信制御部31は、ネットワークを介して全体管理装置2及び子装置4との通信を行う部分であり、NIC等によって実現される。処理部32は、各部・各DB間のデータの受け渡しを行うととともに、親装置3全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0023】
入退室管理DB33は、利用者ごとに共用区域に対する入退室の状況を格納する。利用エリア管理DB34は、検出箇所IDごとに検出箇所を含む利用エリアを格納する。契約プラン管理DB35は、契約情報IDごとに当該契約について示したものである。計測電力管理DB36は、利用エリアごとに所定の日時に使われた電力の計測値(計測電力)を電力量計3Eから取得し、格納する。使用電力量管理主DB37は、利用者ごとに所定の時間帯における使用電力量の合計を格納する。使用電力量管理副DB38は、検出箇所IDごとに利用者の使用電力量を格納する。各DBは、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置に構築されるデータベースとして実現される。
【0024】
表示部39は、処理部32からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。時計3Aは、現在の時刻データ(年月日時分秒)を処理部32に提供する。カードリーダ受信部3Bは、カードリーダ3Fに挿入され、接触し、又は、かざされたカードのID(第1の識別情報)を含む信号を受信し、処理部32に受け渡す。ICタグ信号受信部3Cは、ICタグ付きICカード(ICカード、無線タグ)5からタグID(第1の識別情報)を含む信号を受信し、処理部32に受け渡すものであり、タグID読み取りセンサ等によって実現される。待機電力値設定部3Dは、利用エリアにおける待機電力の値が設定され、退室時の処理で参照されるものであり、所定のメモリによって実現される。
【0025】
なお、親装置3は、上記に示したもの以外のハードウェアとしてHDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び電源を備えるものとする。
【0026】
子装置4は、通信制御部41、処理部42、計測電力管理DB43、使用電力量副DB44、表示部45、時計46、カードリーダ受信部47、ICタグ信号受信部48及び待機電力値設定部49を備える。通信制御部41は、ネットワークを介して親装置3との通信を行う部分であり、NIC等によって実現される。処理部42は、各部・各DB間のデータの受け渡しを行うととともに、子装置4全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。計測電力管理DB43は、利用エリアごとに所定の日時において使われた電力の計測値(計測電力)を電力量計4Aから取得し、格納する。使用電力量副DB44は、必要に応じて検出箇所IDごとに利用者の使用電力量を格納する。なお、後記する電気料金課金システム1の処理では、使用電力量副DB44を使用しない例を説明した。
【0027】
表示部45は、処理部42からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。時計46は、現在の時刻データ(年月日時分秒)を処理部42に提供する。カードリーダ受信部47は、カードリーダ4Bに挿入され、接触し、又は、かざされたカードのIDを含む信号を受信し、処理部42に受け渡す。ICタグ信号受信部48は、ICタグ付きICカード5からタグIDを含む信号を受信し、処理部42に受け渡すものであり、タグID読み取りセンサ等によって実現される。待機電力値設定部49は、利用エリアにおける待機電力の値が設定され、必要に応じて退室の処理で参照されるものであり、所定のメモリによって実現される。後記する電気料金課金システム1の処理では、待機電力値設定部49を使用しない例を説明した。
【0028】
なお、子装置4は、上記に示したもの以外のハードウェアとしてHDD、ROM、RAM及び電源を備えるものとする。
【0029】
≪DBのデータ構成≫
図3は、全体管理装置2の各DBのデータ構成を示す図である。図3(a)は、利用者管理DB23の構成を示す。利用者管理DB23は、利用者ID231、氏名232、住所233、電話番号234、契約情報ID(第2の識別情報)235、電気料金支払情報236及び許可エリア検出箇所ID237を含むレコードからなる。利用者ID231は、共用区域の利用者(当該利用者)に固有のIDであり、利用者が所持するICタグ付きICカード5のカードIDやタグIDに一致するか、対応付けられる。氏名232は、当該利用者の氏名である。住所233は、当該利用者の住所である。電話番号234は、当該利用者の電話番号である。契約情報ID235は、当該利用者の契約情報に固有のIDであり、このIDによって親装置3の契約プラン管理DB35のレコードに対応付けられる。電気料金支払情報236は、当該利用者に係る電気料金の支払いに関する情報である。許可エリア検出箇所ID237は、当該利用者が入室を許可されている利用エリアの検出箇所IDである。
【0030】
図3(b)は、電気料金課金DB24の構成を示す。電気料金課金DB24は、利用者ID241、期間242、電気料金243及びCO排出量244を含むレコードからなる。利用者ID241は、電気料金を課金される利用者(当該利用者)に固有のIDである。期間242は、電気料金を課金される期間(当該期間)であり、例えば、1月1日から1月31日までの期間が設定される。電気料金243は、当該利用者に課金される当該期間分の電気料金である。CO排出量244は、使用電力量から換算したCO排出量である。
【0031】
図4及び図5は、親装置3の各DBのデータ構成を示す図である。図4(a)は、入退室管理DB33の構成を示す。入退室管理DB33は、利用者ID331、入室時検出箇所ID332、入室時刻333、退室時検出箇所ID334及び退室時刻335を含むレコードからなる。利用者ID331は、利用エリア(共用区域)に入退室した利用者(当該利用者)に固有のIDである。入室時検出箇所ID332は、当該利用者が利用エリアに入室したことを検出した箇所(カードリーダ又はICタグ信号受信部)のIDである。入室時刻333は、当該利用者の入室を検出した時刻(年月日時分秒)である。退室時検出箇所ID334は、当該利用者が利用エリアから退室したことを検出した箇所(カードリーダ又はICタグ信号受信部)のIDである。退室時刻335は、当該利用者の退室を検出した時刻(年月日時分秒)である。
【0032】
図4(b)は、利用エリア管理DB34の構成を示す。利用エリア管理DB34は、検出箇所ID341、利用エリア342及び利用者ID343を含むレコードからなる。検出箇所ID341は、当該利用エリアに利用者が入退室するのを検出する箇所(カードリーダ又はICタグ信号受信部)のIDである。利用エリア342は、検出箇所ID341を含む(カードリーダ又はICタグ信号受信部が設置された)利用エリアの名称であり、例えば、居間やPC(Personal Computer)ルーム等が設定される。従って、1つの利用エリア342に対応して複数の検出箇所ID341が設定されることがある。利用者ID343は、検出箇所ID341に対応する利用エリアを現在利用中の利用者のIDであり、2人以上が利用していれば、複数設定されることになる。
【0033】
図4(c)は、契約プラン管理DB35の構成を示す。契約プラン管理DB35は、契約情報ID(第2の識別情報)351、計測時間帯352、契約会社353及び契約プラン名(料金体系)354を含むレコードからなる。契約情報ID351は、契約情報に固有のIDである。計測時間帯352は、契約情報ID351に対応する契約(当該契約)に係る電力の計測時間帯であり、契約種別によって異なる。契約会社353は、利用者と当該契約を交わす電力会社等の名称である。契約プラン名354は、当該契約に係る契約プランの名称であり、契約プラン名354によって特定される、料金体系や割引特典等を含む契約プラン(別のデータ、インターネット又は紙媒体)を別途参照することによって契約の詳細を知ることができる。なお、料金体系は、使用電力量と電気料金との関係を示す。
【0034】
図5(a)は、計測電力管理DB36の構成を示す。計測電力管理DB36は、時刻361、計測電力362及び計測電力偏移量363を含むレコードからなる。時刻361は、電力量計3Eから計測電力を取得した時刻(年月日時分秒)である。計測電力362は、電力量計3Eから取得した計測電力である。計測電力偏移量363は、当該計測電力362と、1つ前の時刻361における計測電力362との差分であり、利用エリアにおける消費電力量を求める際に用いられる。
【0035】
図5(b)は、使用電力量管理主DB37の構成を示す。使用電力量管理主DB37は、利用者ID371、契約情報ID372、利用エリア別使用電力量373及び合計使用電力量374を含むレコードからなる。利用者ID371は、電力会社と電力使用に係る契約(当該契約)を交わしている利用者(当該利用者)に固有のIDである。契約情報ID372は、当該契約に関する情報に固有のIDである。ここで、同一の利用者が時間帯別に異なる契約を交わしてもよいので、同じ利用者ID371と契約情報ID372の組み合わせは一組であるとは限らず、同じ利用者ID371に対して2以上の契約情報ID372が対応していてもよい。利用エリア別使用電力量373は、当該利用者の当該契約に係る時間帯における使用電力量であって、利用エリアごとの使用電力量である。実際に当該利用エリアを利用した時間帯が2以上存在する場合には、各時間帯の使用電力量の合計が設定される。合計使用電力量374は、利用エリア別使用電力量373の各値の合計値である。さらに、同一の利用者ID371について合計使用電力量374を合計することによって、例えば、当該利用者の1日単位の使用電力量の合計値を求めることができる。
【0036】
図5(c)は、使用電力量管理副DB38の構成を示す。使用電力量管理副DB38は、検出箇所ID381、利用者ID382、契約情報ID383、消費電力量384、待機電力量385及び使用電力量386を含むレコードからなる。検出箇所ID381は、利用者による利用エリアの入退室を検出する箇所(カードリーダ又はICタグ信号受信部)のIDである。利用者ID382は、利用エリアを入退室した利用者(当該利用者)に固有のIDである。契約情報ID383は、当該利用者が電力会社と交わした電力使用に係る契約(当該契約)に関する情報のIDである。消費電力量384は、当該利用者及び当該契約に係る消費電力量である。待機電力量385は、検出箇所ID381に対応する利用エリアにおける待機電力量である。使用電力量386は、消費電力量384と待機電力量385の合計値である。
【0037】
なお、子装置4の計測電力管理DB43及び使用電力量管理副DB44は、それぞれ親装置3の計測電力管理DB36及び使用電力量管理副DB38と同様の構成を有する。
【0038】
≪システムの処理≫
図6は、電気料金課金システム1の処理を示すフローチャートである。最初に各ステップの処理が実施されるタイミングについて説明する。S601は、電気料金課金システム1が稼動する前に準備段階の処理として行われる。そのうち、S602〜S609は、電気料金課金システム1の稼動後の処理である。S602及びS603は、所定の時間(例えば、1秒)ごとに行われる。S604〜S606は、外部から信号を受信した場合に行われる。S607及びS608は、所定の時間(例えば、1日)ごとに行われる。S609は、所定の期間(例えば、1ヶ月)ごとに行われる。
【0039】
続いて、各ステップの処理を順に説明する。まず、親装置3が予め契約プランを取得し、記憶する(S601)。具体的には、親装置3の処理部32が、ネットワーク及び通信制御部31、又は、キーボード等の入力部(図示せず)を介して、契約プランのデータ(契約情報ID、計測時間帯、契約会社及び契約プラン名)を取得し、契約プラン管理DB35に格納する。
【0040】
次に、親装置3又は子装置4が定期的に計測電力を取得し、記憶する(S602)。具体的には、親装置3において、電力量計3Eから所定の時間ごとに計測電力を取得し、時計3Aから現在時刻を取得し、1つ前の時刻における計測電力との差分(計測電力偏移量)を計算し、計測電力管理DB36に逐次格納する。又は、子装置4において、電力量計4Aから所定の時間ごとに計測電力を取得し、時計46から現在時刻を取得し、1つ前の時刻における計測電力との差分(計測電力偏移量)を計算し、計測電力管理DB43に逐次格納する。この場合の「所定の時間」は、別途消費電力量を求めるために入退室の前後における計測電力偏移量を特定する場合に、所定の精度が確保できる時間であることが望ましい。なお、S602の処理は、処理部32又は42が介在して行ってもよいし、別の処理部又はハードウェアによって行ってもよい。
【0041】
そして、子装置4が、計測電力管理DB43の内容を親装置3に送信する(S603)。具体的には、処理部42が計測電力管理DB43に格納された時刻361、計測電力362及び計測電力偏移量363を含むレコードを、通信制御部41を介して親装置3に送信する。
【0042】
一方で、親装置3又は子装置4が随時カード信号又はICタグ信号を受信する(S604)。具体的には、親装置3において、カードリーダ受信部3Bがカードリーダ3Fに挿入され、接触し、又は、かざされたカードのIDを含む信号を受信するか、ICタグ信号受信部3CがICタグ付きICカード5からタグIDを含む信号を受信する。又は、子装置4において、カードリーダ受信部47がカードリーダ4Bに挿入され、接触し、又は、かざされたカードのIDを含む信号を受信するか、ICタグ信号受信部48がICタグ付きICカード5からタグIDを含む信号を受信する。
【0043】
子装置4で信号を受信した場合には、当該子装置4が信号の内容を親装置3に送信する(S605)。具体的には、処理部42が、受信した信号に含まれるカードID又はタグIDを取得し、通信制御部41を介して親装置4に送信する。
【0044】
その後、親装置3が利用者の入退室状況を記憶する(S606)。具体的には、処理部32が、子装置4から通信制御部31を介してカードID若しくはタグIDを取得し、カードリーダ受信部3BからカードIDを取得し、又は、ICタグ信号受信部3CからタグIDを取得する。次に、利用エリアに入室した場合には、入退室管理DB33に新たなレコードを格納する。その場合、利用者ID331には、取得したカードID又はタグIDを設定する。そして、カードリーダ受信部3B又はICタグ信号受信部3C(子装置4のときは、カードリーダ受信部47又はICタグ信号受信部48)に対応する検出箇所IDを入室時検出箇所ID332に設定し、カードID又はタグIDを取得した時の現在時刻を入室時刻333に設定する。一方、利用エリアから退室した場合には、入退室管理DB33に対して、取得したカードID又はタグIDを利用者ID331とするレコードを検索し、特定する。そして、カードリーダ受信部3B又はICタグ信号受信部3C(子装置4のときは、カードリーダ受信部47又はICタグ信号受信部48)に対応する検出箇所IDを退室時検出箇所ID334に設定し、カードID又はタグIDを取得した時の現在時刻を退室時刻335に設定する。なお、利用エリアに対する入室又は退室の識別方法については、後記する。
【0045】
続いて、所定の時間(例えば、24時間)ごとに、親装置3が各利用者の使用電力量を計算し、記憶する(S607)。具体的には、処理部32が、所定の利用エリアに関して、入退室管理DB33及び計測電力管理DB36から、図10に示すようなタイムチャートのデータを作成する。そして、作成したデータに基づいて使用電力量副DB38に各値を格納する。なお、データを作成し、各値を格納した後に、基になった計測電力管理DB36のデータを消去する。これによれば、所定のタイミングにおける計測電力の偏移量を残す代わりに、定期的に取得し、記憶した計測電力及びその偏移量を削除するので、その分記憶データ量を抑制することができる。
【0046】
図10において、A氏、B氏、C氏は、利用エリアの利用者であり、各欄に描かれた斜線を施した矩形は、各利用者が利用エリアに滞在した時間帯を示す。この時間帯は、入退室管理DB33のうち、当該利用者の利用者ID331及び当該利用エリアの入室時検出箇所ID332に対応する入室時刻333、並びに、当該利用者の利用者ID331及び当該利用エリアの退室時検出箇所ID334に対応する退室時刻335から特定される。
【0047】
待機電力P0は、利用エリアに利用者がいない場合の電力である。そして、A氏が利用エリアに入室して電気機器を使い始めると、計測電力がP0から「P0+P1」に変化する。この変化量P1は、入退室管理DB33の、利用エリアに係る入室時刻333及び退室時刻335のうち、最も早い時刻t1を特定し、計測電力管理DB36を参照して、時刻361がt1における計測電力偏移量363から特定される。それ以降、2番目に早い時刻t2、3番目に早い時刻t3、・・・を特定し、各時刻tNにおける計測電力偏移量363から変化量P2、P3、・・・を特定する。なお、PNに付記される上向き矢印は、利用者の入室による消費電力の増加分であることを示し、PNに付記される下向き矢印は、利用者の退室による消費電力の減少分であることを示す。さらに、時間TNは、入退室時刻のうち、隣接する2つの時刻に区切られた時間(tN〜tN+1)であり、換言すれば、利用エリアに入室している利用者が変わることなく、消費電力がほぼ一定に推移する時間である。なお、2つの入退室時刻とは、入室時刻〜退室時刻、入室時刻〜入室時刻、退室時刻〜入室時刻又は退室時刻〜退室時刻の4つの場合がある。
【0048】
図10に示すようなタームチャートのデータから、A氏の場合の消費電力量の計算例を説明する。時間TNにおける消費電力量WNは、消費電力の合計×時間/利用者の人数によって計算できる。この場合、消費電力の合計(合計消費電力)は、当該時間帯から直近で1番目の利用者が利用エリアに入室した時刻から当該時間帯の開始時刻までの入退室時刻のうち、各入室時刻における変化量を加算し、各退室時刻における変化量を減算することによって算出する。具体的には、以下のようになる。
(1)時間T1では、W1=P1×T1
(2)時間T2では、W2=(P1+P2)×T2/2
(3)時間T3では、W3=0
(4)時間T4では、W4=0
(5)時間T5では、W5=0
(6)時間T6では、W6=(P5+P6)×T6/2
(7)時間T7では、W7=(P5+P6+P7)×T7/3
(8)時間T8では、W8=(P5+P6+P7−P8)×T8/2
(9)時間T9では、W9=0
(10)時間T10では、W10=0
(11)時間T11では、W11=0
消費電力量Wsは、WNの1日分の合計値(ΣWN)である。なお、時間T2、T6及びT8では、2人の利用者が使用しているので、2人で按分するものとする。また、時間T7では、3人の利用者が使用しているので、3人で按分するものとする。そして、この消費電力量Wsが使用電力量管理副DB38の消費電力量384に設定される。
【0049】
ここで、例えば、図10において、P2の差分は、B氏が入室したタイミングで発生しているのであるが、そのタイミングでB氏の入室以外の要因(例えば、A氏がさらに別の電気製品を使い始めた等)による消費電力を含んでいる可能性もあるので、一概にB氏の入室だけによるものとは言えない。そのような状況を踏まえて、消費電力量Wsは、利用者人数で按分したものとしている。
【0050】
A氏の場合の待機電力量の計算例を説明する。電力量計3Eの単位時間(例えば、1時間)当たりの計測値合計をWmとすると、
待機電力量Wt=Σ(Wm−ΣWs)/n
1番目のΣ:1日分の合計
2番目のΣ:利用者人数分の合計(各利用者の消費電力量の合計×人数)
Ws:利用エリアごとの各利用者の消費電力量の合計(単位時間当たりの値)
n:1日の利用者人数

この待機電力量Wtが使用電力量管理副DB38の待機電力量385に設定される。そして、消費電力量384と待機電力量385の合計値が、使用電力量管理副DB38の使用電力量386に設定される。
【0051】
続いて、親装置3が各利用者の合計使用電力量を計算し、記憶する(S608)。この処理は使用電力量管理副DB38から使用電力量管理主DB37を生成するものであるが、その詳細は図9を用いて後記する。さらに、所定の期間(例えば、1ヶ月)ごとに、全体管理装置2が各利用者の電気料金を計算し、記憶する(S609)。具体的には、親装置3から使用電力量管理主DB37の内容を取得し、その内容から各利用者の契約情報ID372を抽出し、契約情報ID372(351)及び使用電力量に係る時間帯に対応する計測時間帯352から、親装置3の契約プラン管理DB35のレコードを特定し、当該レコードの契約プラン名354によって特定される料金体系や割引特典の内容を参照して、各利用者の所定の期間における使用電力量から電気料金を計算し、電気料金課金DB24に格納する。
【0052】
なお、図10において、T1の前の時間帯、T4、T11の後の時間帯は、利用者が不在であるが、待機電力が使われている。その待機電力に係る料金については、例えば、1日分の待機電力量をその1日間の利用者の人数で按分して、その電力量に従って課金することが考えられる。
【0053】
次に、図7及び図8を説明する前に、図11を参照して利用エリアの構成例について説明する。図11に示す利用エリアは、共用区域C1、C2及び専用区域S1、S2から構成される。出入口E1〜E6は、外部と共用区域との間、又は、各区域間に設置されるドア等であり、出入口E1〜E6を境界として隣接するエリアそれぞれにカードリーダ及びICタグ信号受信部が設置される。利用者が1つの区域に入室する場合には、現在利用者がいる区域に設置されたカードリーダにICタグ付きICカード5を挿入したり、接触させたり、かざしたりして、カードリーダにカードIDを認識させることが必要である。それによってドア等が開くことで、利用者の入室が可能になる。なお、入室のタイミングにおいては、入室した区域に設置されたICタグ信号受信部が、ICタグ付きICカード5のタグIDを認識することになる。一方、利用者が1つの区域(例えば、専用区域S1)から退室する場合には、出入口にはカードリーダが設置されていないので、ICタグ付きICカード5をかざしたりせずに通過することができる。ただし、例えば、共用区域C1から専用区域S1に移動する場合、共用区域C1からは退室することになるが、専用区域S1には入室することになるので、カードリーダに対する動作が必要になる。なお、退室のタイミングにおいては、退室した区域に設置されたICタグ信号受信部が、ICタグ付きICカード5のタグIDを認識することになる。
【0054】
さらに、入退室を管理するためには、同一の出入口における入退室の方向を識別する必要がある。例えば、出入口E2においては、共用区域C1から専用区域S1への移動なのか、専用区域S1から共用区域C1への移動なのかを識別する必要がある。この場合、カードリーダがカードIDを認識し、その後所定時間以内にICタグ信号受信部がタグIDを認識した場合には、「共用区域C1→専用区域S1」の方向であると判定する。一方、ICタグ信号受信部がタグIDを認識し、その後所定時間以内にカードリーダがカードIDを認識しない場合には、「専用区域S1→共用区域C1」の方向であると判定する。なお、以上に示した入退室方向を識別する方法は一例であって、別の方法で入退室方向を識別してもよい。
【0055】
図7は、利用者が利用エリアに入室したときの処理を示すフローチャートである。ここでは、カードリーダ3Fからの信号を取得することによって自室に利用者が入室したことを認識する親装置3における処理として説明する。
【0056】
まず、カードリーダ受信部3Bが、自室の入室箇所に設置されたカードリーダ3Fからの信号を入力する(S701)。又は、処理部32が、隣接する区域の退室箇所に設置されたICタグ信号受信部3Cからの信号を入力する(S702)。S701又はS702の処理を受けて、処理部32が、入退室管理DB33のうち、入力した信号に含まれるIDの利用者ID331に対応する入室時検出箇所ID332に、カードリーダ3F又はICタグ信号受信部3Cに固有の検出箇所IDを登録する(S703)。次に、全体管理装置2に要求して、利用者管理DB23の利用者ID231及び許可エリア検出箇所ID237を参照することによって、当該利用者IDは当該利用エリアの許可があるか否かの判定を取得する(S704)。
【0057】
当該利用エリアの許可があれば(S704のYES)、処理部32が時計3Aから現在時刻のデータを取得し、入退室管理DB33の入室時刻333に登録する(S705)。続いて、エリア利用中であるとして、利用エリア管理DB34のうち、検出箇所ID341に対応する利用者ID343の欄に利用者IDを登録する(S706)。その際、既に他の利用者IDが設定されているか否かを判定する(S707)。これは、他の利用者が先にエリアを利用しているか否かを判定するものである。他の利用者IDが設定されていれば(S707のYES)、そのまま処理を終了する。他の利用者IDが設定されていなければ(S707のNO)、初めて利用エリアに人が入ることになるので、利用エリアの通電処理を実施する(S708)。なお、S704で当該利用エリアの許可がなければ(S704のNO)、不正な入室の可能性があるので、電気錠と連動した侵入防止処理等を実施する(S709)。
【0058】
図8は、利用者が利用エリアから退室したときの処理を示すフローチャートである。ここでは、ICタグ付きICカード5からのタグ信号を取得することによって自室から利用者が退室したことを認識する親装置3における処理として説明する。
【0059】
まず、カードリーダ受信部3Bが、隣接する区域の入室箇所に設置されたカードリーダ3Fからの信号を入力する(S801)。又は、処理部32が、自室の退室箇所に設置されたICタグ信号受信部3Cからの信号を入力する(S802)。S801又はS802の処理を受けて、処理部32が、入退室管理DB33のうち、入力した信号に含まれるIDの利用者ID331に対応する退室時検出箇所ID334に、カードリーダ3F又はICタグ信号受信部3Cに固有の検出箇所IDを登録する(S803)。次に、処理部32が時計3Aから現在時刻のデータを取得し、入退室管理DB33の退室時刻335に登録する(S804)。続いて、利用エリア管理DB34のエリア利用中リストである利用者ID343の欄から当該利用者IDを削除する(S805)。その際、他の利用者IDがまだ設定されているか否かを判定する(S806)。これは、他の利用者が残っていてエリアを利用しているか否かを判定するものである。他の利用者IDが設定されていなければ(S806のNO)、実電力量が待機電力設定値(待機電力値設定部3Dの値)より大きいか否かを判定する(S807)。実電力量が待機電力設定値より大きければ(S807のYES)、無用な電力消費が行われていることになるので、音により注意を喚起し、所定時間後に電気を遮断する(S808)。なお、他の利用者IDが設定されている場合(S806のYES)又は実電力量が待機電力設定値より大きくない場合(S807のNO)には、そのまま処理を終了する。
【0060】
図9は、親装置3によって各利用者の合計使用電力量を計算し、設定する処理を示すフローチャートである。この処理は、検出箇所IDごとの使用電力量管理副DB38から、利用者IDごとの使用電力量管理主DB37を生成するものである。
【0061】
まず、親装置3の処理部32は、使用電力量管理主DB37をゼロクリアする(S901)。次に、所定の時間(例えば、1日)分の使用電力量管理副DB38全体を検索する(S902)。そして、新たに処理すべき検出箇所ID381があるか否かを判定する(S903)。これは、使用電力量管理副DB38に含まれる使用電力量386が、検出箇所ID381ごとに、その中でさらに利用者ID382ごとに設定されているので、まずは、検出箇所ID381をキーデータとして検索し、処理すべきレコード群の有無を判定するものである。処理すべき検出箇所ID381があった場合(S903のYES)、利用エリア管理DB34を参照して、当該検出箇所ID381(341)を利用エリア342に変換する(S904)。これは、使用電力量管理主DB37の利用エリア別使用電力量373のうち、各利用エリアの欄を特定するために、予め利用エリア名を把握するものである。
【0062】
続いて、処理部32は、当該検出箇所ID381のレコードを検索する(S905)。そして、新たに処理すべき利用者IDがあるか否かを判定する(S906)。これは、処理すべき検出箇所ID381のレコードの中で、利用者ID382をキーデータとして検索し、処理すべきレコードの有無を判定するものである。処理すべき利用者ID382があった場合(S906のYES)、使用電力量管理主DB37に対して利用者ID371及び契約情報ID372をキーデータとして検索し、該当するレコードがあれば当該レコードを使用するが、該当するレコードがなければ利用者ID371及び契約情報ID372をキーデータとするレコードを新たに設定する(S907)。そして、検索又は設定したレコードの利用エリア別使用電力量373のうち、対応する当該利用エリアの欄に使用電力量386を加算する(S908)。「加算」するのは、検索したレコードであれば、既に使用電力量が設定されている可能性があるので「加算」すべきであり、設定したレコードであれば、予めゼロが設定されているので「加算」=「設定」になるからである。その後、使用電力量管理副DB38において、当該検出箇所ID381を有する次のレコードを検索する(S905)。
【0063】
S906において処理すべき利用者ID382がなかった場合(S906のNO)、使用電力量管理副DB38全体において、新たな検出箇所ID381を有するレコードを検索する(S902)。S903において処理すべき検出箇所ID381がなかった場合(S903のNO)、所定の時間(例えば、1日)分の使用電力量管理副DB38全体を検索し尽くしたことになり、使用電力量管理主DB37の利用エリア別使用電力量373の設定が完了したことになる。そこで、各利用者ID371のレコードごとに、利用エリア別使用電力量373における各欄の使用電力量を合計し、その合計した値を合計使用電力量374に設定する(S909)。
【0064】
以上本発明の実施の形態について説明したが、図2に示す各装置内の各部を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る電気料金課金システム1が実現されるものとする。なお、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0065】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、共用区域において複数の利用者が電気を使った場合であっても、利用者ごとに電気料金を課金することができる。次に、共用区域ごとに各利用者の使用電力量を管理し、複数の共用区域における使用電力量を利用者ごとに集計することによって、複数の共用区域に関してもそれぞれ利用者ごとに電気料金を課金することができる。また、利用者ごとに割引特典を付与することによって、省エネ意識を向上させることができ、COの排出抑制を図ることができる。一方、共用区域に係る電気料金の計算及び集金が不要になるので、施設管理者の負担を軽減することができる。
【0066】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。上記実施の形態では、住戸の利用者に対する電気料金の課金について説明したが、住戸ではなく、共用区域を有するその他の施設に適用してもよい。
【0067】
例えば、電気自動車の普及とともに設置が見込まれる電気スタンドに適用することが考えられる。この場合、給電機器のある場所を専用区域とし、照明設備等の周辺機器のある場所を共用区域とし、複数の電気スタンドを管理する。
【0068】
また、上記実施の形態におけるデータ(時間、利用者ID、人数等)を、電気料金だけでなく、他の料金、例えば、スポーツ施設の利用料の計算及び課金に適用してもよい。なお、上記実施の形態の適用により、現地での電力量計の検針が不要になるので、検針コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】電気料金課金システム1の構成を示す図である。
【図2】電気料金課金システム1の各装置の構成を示す図である。
【図3】全体管理装置2の各DBのデータ構成を示す図であり、(a)は利用者管理DB23の構成を示し、(b)は電気料金課金DB24の構成を示す。
【図4】親装置3の各DBのデータ構成を示す図であり、(a)は入退室管理DB33の構成を示し、(b)は利用エリア管理DB34の構成を示し、(c)は契約プラン管理DB35の構成を示す。
【図5】親装置3の各DBのデータ構成を示す図であり、(a)は計測電力管理DB36の構成を示し、(b)は使用電力量管理主DB37の構成を示し、(c)は使用電力量管理副DB38の構成を示す。
【図6】電気料金課金システム1の処理を示すフローチャートである。
【図7】利用者が利用エリアに入室したときの処理を示すフローチャートである。
【図8】利用者が利用エリアから退室したときの処理を示すフローチャートである。
【図9】親装置3によって各利用者の合計使用電力量を計算し、設定する処理を示すフローチャートである。
【図10】利用者ごとのエリア利用の時間帯及び当該エリアにおける消費電力の変化を示すタイムチャートである。
【図11】利用エリアの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 電気料金課金システム
2 全体管理装置
24 電気料金課金DB
3 電力量管理装置(親装置)
33 入退室管理DB
331 利用者ID
333 入室時刻
335 退室時刻
35 契約プラン管理DB(契約情報)
351 契約情報ID(第2の識別情報)
352 計測時間帯(時間帯)
354 契約プラン名(料金体系)
36 計測電力管理DB
362 計測電力
363 計測電力偏移量(変化量)
38 使用電力量管理副DB
384 消費電力量
385 待機電力量
386 使用電力量
3E 電力量計
4 電力量管理装置(子装置)
43 計測電力管理DB
4A 電力量計
5 ICタグ付きICカード(ICカード、無線タグ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅や施設の共用区域において使われた電力を計測する電力量計から計測電力を定期的に取得し、記憶する計測電力取得手段と、
利用者が前記共用区域に入場した時刻である入場時刻及び利用者が前記共用区域から退場した時刻である退場時刻を随時取得し、記憶する入退場時刻取得手段と、
前記計測電力、前記入場時刻及び前記退場時刻に基づいて、各入場時刻及び各退場時刻の前後における前記計測電力の変化量を算出して記憶し、先に記憶した前記計測電力を消去する計測電力変化量算出手段と、
各入場時刻及び各退場時刻のうち、隣接する2つの時刻に区切られた各時間帯に関して、前記変化量、前記時間帯の長さである時間及び前記時間帯に前記共用区域に入場していた利用者の人数に基づいて、前記利用者の消費電力量を計算する消費電力量計算手段と、
前記各時間帯に関して、前記共用区域における待機電力、前記時間及び前記人数に基づいて、前記利用者の待機電力量を計算する待機電力量計算手段と、
前記消費電力量及び前記待機電力量を合計して前記利用者の使用電力量を算出し、記憶する使用電力量算出手段と、
前記使用電力量に基づいて前記利用者の電気料金を計算し、記憶する電気料金計算手段と、
を備えることを特徴とする電気料金課金システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気料金課金システムであって、
前記利用者に所持されたIC(Integrated Circuit)カード又は無線タグから、前記利用者を特定するための第1の識別情報を含む信号を受信する手段と、
現在時刻を提供する手段と、
をさらに備え、
前記入退場時刻取得手段は、前記信号を受信した時の現在時刻を取得し、前記第1の識別情報に対応させて前記現在時刻を記憶する
ことを特徴とする電気料金課金システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気料金課金システムであって、
前記消費電力量計算手段は、前記時間帯から直近で1番目の利用者が前記共用区域に入場した時刻から前記時間帯の開始時刻までの各入場時刻及び各退場時刻のうち、各入場時刻の前後における前記変化量を加算し、各退場時刻の前後における前記変化量を減算することによって合計消費電力を算出し、前記合計消費電力に前記時間を積算し、さらに前記人数で除算した値を前記消費電力量とする
ことを特徴とする電気料金課金システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気料金課金システムであって、
前記待機電力量計算手段は、前記時間帯における前記計測電力を積算して計測電力量とし、前記消費電力量計算手段によって計算された前記消費電力量に前記人数を積算した値を前記計測電力量から減算し、さらに前記人数で除算した値を前記待機電力量とする
ことを特徴とする電気料金課金システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電気料金課金システムであって、
利用者と電力会社との間で交わされた契約ごとに、当該契約が適用される時間帯及び当該時間帯における前記使用電力量と前記電気料金との関係を示す料金体系を含む契約情報を記憶する手段と、
利用者ごとに、電力会社と交わした契約に係る前記契約情報を特定するための第2の識別情報を記憶する手段と、
をさらに備え、
前記電気料金計算手段は、前記利用者の前記第2の識別情報を抽出し、前記第2の識別情報及び前記使用電力量に係る時間帯から前記契約情報を特定し、前記契約情報に含まれる前記料金体系を参照して、前記使用電力量から前記電気料金を算出する
ことを特徴とする電気料金課金システム。
【請求項6】
住宅や施設の共用区域において使われた電力を計測する電力量計から計測電力を定期的に取得し、記憶する計測電力取得手段と、
利用者が前記共用区域に入場した時刻である入場時刻及び利用者が前記共用区域から退場した時刻である退場時刻を随時取得し、記憶する入退場時刻取得手段と、
前記計測電力、前記入場時刻及び前記退場時刻に基づいて、各入場時刻及び各退場時刻の前後における前記計測電力の変化量を算出して記憶し、先に記憶した前記計測電力を消去する計測電力変化量算出手段と、
各入場時刻及び各退場時刻のうち、隣接する2つの時刻に区切られた各時間帯に関して、前記変化量、前記時間帯の長さである時間及び前記時間帯に前記共用区域に入場していた利用者の人数に基づいて、前記利用者の消費電力量を計算する消費電力量計算手段と、
前記各時間帯に関して、前記共用区域における待機電力、前記時間及び前記人数に基づいて、前記利用者の待機電力量を計算する待機電力量計算手段と、
前記消費電力量及び前記待機電力量を合計して前記利用者の使用電力量を算出し、記憶する使用電力量算出手段と、
を備えることを特徴とする電力量管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力量管理装置であって、
前記利用者に所持されたIC(Integrated Circuit)カード又は無線タグから、前記利用者を特定するための第1の識別情報を含む信号を受信する手段と、
現在時刻を提供する手段と、
をさらに備え、
前記入退場時刻取得手段は、前記信号を受信した時の現在時刻を取得し、前記第1の識別情報に対応させて前記現在時刻を記憶する
ことを特徴とする電力量管理装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の電力量管理装置であって、
前記消費電力量計算手段は、前記時間帯から直近で1番目の利用者が前記共用区域に入場した時刻から前記時間帯の開始時刻までの各入場時刻及び各退場時刻のうち、各入場時刻の前後における前記変化量を加算し、各退場時刻の前後における前記変化量を減算することによって合計消費電力を算出し、前記合計消費電力に前記時間を積算し、さらに前記人数で除算した値を前記消費電力量とする
ことを特徴とする電力量管理装置。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の電力量管理装置であって、
前記待機電力量計算手段は、前記時間帯における前記計測電力を積算して計測電力量とし、前記消費電力量計算手段によって計算された前記消費電力量に前記人数を積算した値を前記計測電力量から減算し、さらに前記人数で除算した値を前記待機電力量とする
ことを特徴とする電力量管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−252111(P2009−252111A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101780(P2008−101780)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】