説明

電気機器のフロントパネル

【課題】全面化粧カバーと半面化粧カバーとに供用可能でありながら、構成が簡素化されたフロントパネルを提供する。
【解決手段】フロントパネル本体10と化粧カバーとを有する。全面化粧カバーと半面化粧カバーとの両方に供用される支軸と、全面化粧カバーの開閉動作を制御するためのダンパー機構を取付け可能な第1取付部71と、全面化粧カバーの開閉運動をダンパー機構に伝達する駆動歯車が挿通される第1開口部と、マグネット取付部77と、半面化粧カバーの開閉動作を制御するための板ばね材を取付け可能な第2取付部75と、半面化粧カバーの開閉運動を板ばね材に伝達する偏心カムが挿通される第2開口部とを備える。第1及び第2の各開口部を、フロントパネル本体10に形成した1つの開口部45によって供用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器のフロントパネル、特に、縦幅サイズの異なる2種類の化粧カバーに供用することを可能にするための対策が講じられたフロントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
DVDドライブやBDドライブ、磁気テープドライブといったメディア駆動機構を装備したキャビネットを形成する電気機器のフロントパネルにおいて、電源スイッチや動作モードの制御ボタン、動作状態を示す表示窓などが装備されたフロントパネル本体に、開閉型の化粧カバーを取り付けることが行われている。そして、フロントパネル本体に取り付けられた化粧カバーは、上記の電源スイッチや制御ボタンが不用意に操作されてしまうことを防ぐための保護カバーや、電源スイッチや制御ボタン、表示窓などを覆い隠すための目隠しカバーなどとして役立つほか、電気機器のキャビネット全体のデザイン性や外観品位を高めることなどにも役立つ。
【0003】
一方、横幅寸法が同一又は略同一のキャビネットを備えた電気機器では、たとえば、フロントパネル本体の前面全体を化粧カバーによって覆い隠すことができるようにしたものや、フロントパネル本体の前面の略下半部を化粧カバーによって覆い隠すことができるようにしたものが知られている。ところが、フロントパネル本体の前面全体を覆い隠すことのできる化粧カバー(全面化粧カバーという)と、フロントパネル本体の前面の略下半部を覆い隠すことのできる化粧カバー(半面化粧カバーという)とは、それらの横幅寸法が同一又は略同一であるとしても、全面化粧カバーは半面化粧カバーよりも縦幅寸法が長いので、一般的には、その重量も全面化粧カバーが半面化粧カバーよりも重くなっている。そこで、フロントパネル本体に取り付けた際の全面化粧カバーや半面化粧カバーの開閉動作を制御するための開閉支援機構や、それらの閉位置を保持させるための閉位置保持機構には、全面化粧カバー及び半面化粧カバーのそれぞれに適した特性を発揮する種類の機構を取り付けることが要求される。
【0004】
そこで、従来は、電源スイッチや制御ボタン、表示窓などの配置パターンや形状が同一であるとしても、開閉支援機構や閉位置保持機構が取り付けられる部分の構造が異なる2種類のフロントパネル本体を別々に製作し、一方の種類のフロントパネル本体には全面化粧カバーを取り付け、他方の種類のフロントパネル本体には半面化粧パネルを取り付けるということが行われていた。
【0005】
先行例によると、上記した開閉支援機構や閉位置保持機構の役割を板バネによって発揮させるようにしたもの(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)や、バネによる扉の閉状態の動作を漸次緩行するダンパーによって発揮させるようにしたもの(たとえば、特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−83153号公報
【特許文献2】特開2009−99631号公報
【特許文献3】特開2007−154570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、全面化粧カバーに専用のフロントパネル本体と半面化粧カバーに専用のフロントパネル本体とを別々に製作することは、両方のフロントパネル本体に具備される電源スイッチや制御ボタン、表示窓などの配置パターンや形状が同一であることを勘案すると、それら2種類のフロントパネル本体の管理や取扱いが煩雑になり、コスト的にも不利になるという問題点があった。
【0008】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、全面化粧カバーと半面化粧カバーとの両方に供用することが可能でありながら、各化粧カバーのそれぞれに適した特性を発揮する開閉支援機構や閉位置保持機構を無理なく取り付けることができ、しかも、各化粧カバーの開閉揺動支点を形成する支軸や、各化粧カバーの開閉支援機構を動作させるための作用部材を挿通させるためにフロントパネル本体に設けることが必要になる開口部の数を最少限度に抑えて、当該フロントパネル本体の構成を簡素化することのできる電気機器のフロントパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気機器のフロントパネルは、電気機器キャビネットの前端部に装備されるフロントパネル本体と、このフロントパネル本体に取り付けられて起立姿勢の閉位置と前倒姿勢の開位置との間で開閉揺動される化粧カバーとを有する。そして、上記フロントパネル本体に設けられていて、上記化粧カバーとして選択的に用いられる縦幅サイズの大きな第1カバーとこの第1カバーよりも縦幅サイズの小さな第2カバーとの両方に供用されて、それら2種類のカバーの開閉揺動支点を形成する支軸と、上記フロントパネル本体の裏面側に設けられて、上記支軸に取り付けられた上記第1カバーの開閉運動が伝達されることによってその第1カバーの開閉動作を制御するための第1開閉支援機構を取付け可能な第1取付部と、上記フロントパネル本体に設けられて、上記第1カバーの開閉運動を上記第1開閉支援機構に伝達する第1作用部材が挿通される第1開口部と、上記フロントパネル本体の裏面側に設けられて、上記第1カバーに設けられた吸着片を引き寄せてその第1カバーを閉位置に保持するマグネットを取付け可能なマグネット取付部と、上記フロントパネル本体の裏面側の上記第1取付部とは異なる位置に設けられて、上記支軸に取り付けられた上記第2カバーの開閉運動が伝達されることによってその第2カバーの開閉動作を制御するための第2開閉支援機構を取付け可能な第2取付部と、上記フロントパネル本体に設けられて、上記第2カバーの開閉運動を上記第2開閉支援機構に伝達する第2作用部材が挿通される第2開口部と、を備えていると共に、第1及び第2の上記各開口部が、上記フロントパネル本体に形成された1つの開口部によって供用されている。
【0010】
このように構成されているフロントパネルによると、縦幅サイズの大きな第1カバーを化粧カバーとして用いるときと縦幅サイズの小さな第2カバーを化粧カバーとして用いるときとで、それらの開閉揺動支点を形成する支軸が供用されるので、第1及び第2の各カバーについて各別の支軸を設ける必要がない。加えて、第1カバーの開閉運動を第1開閉支援機構に伝達する第1作用部材が挿通される第1開口部と、第2カバーの開閉運動を第2開閉支援機構に伝達する第2作用部材が挿通される第2開口部とが、1つの開口部によって供用されるので、第1開口部と第2開口部とを各別に設ける必要がない。そのため、化粧カバーとしての第1カバーと第2カバーとの両方に供用することが可能でありながら、各カバーの開閉揺動支点を形成する支軸や、各カバーの開閉支援機構を動作させるための作用部材を挿通させるためにフロントパネル本体に設けることが必要になる開口部の数が最少限度に抑えられてフロントパネル本体の構成が簡素化される。
【0011】
また、フロントパネル本体には、第1カバーの開閉動作を制御するための第1開閉支援機構を取付け可能な第1取付部と第2カバーの開閉動作を制御するための第2開閉支援機構を取付け可能な第2取付部とが異なる位置に設けられているので、第1取付部を利用して第1カバーに適する第1開閉支援機構を無理なく取り付けることが可能になり、第2取付部を利用して第2カバーに適する第2開閉支援機構を無理なく取り付けることが可能になる。したがって、第1カバーに適した特性を発揮する第1開閉支援機構や第2カバーに適した特性を発揮する第1開閉支援機構を無理なく使用することができる。
【0012】
本発明において、上記第1開口部には、上記第1カバーに設けられてその第1カバーの開閉揺動支点と同心位置に位置する駆動歯車でなる上記第1作用部材を挿通可能であり、上記第1取付部には、上記第1開口部に挿通された上記駆動歯車が噛み合う従動歯車とこの従動歯車の回転運動に抵抗を与える抵抗付与手段と取付座とを備えるダンパーによって形成された上記第1開閉支援機構の上記取付座を装着可能であって、上記第1取付部の位置が上記第1開口部の横位置に近接して定められている、という構成を採用することが可能である。
【0013】
さらに本発明において、上記第2開口部には、上記第2カバーに設けられてその第2カバーの開閉揺動支点の偏心箇所に位置する偏心カムでなる上記第2作用部材を挿通可能であり、上記第2取付部には、上記第2開口部に挿通された上記偏心カムを弾圧して上記第2カバーを閉位置に保持する機能を発揮するばね板部とこのばね板部の端部に設けられた取付板部とを備える板ばね材によって形成された上記第2開閉支援機構の上記取付板部を装着可能であって、上記第2取付部の位置が上記第1開口部の上側位置に近接して定められている、という構成を採用することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る電気機器のフロントパネルによれば、縦幅サイズの異なる2種類の化粧カバーの両方に供用することが可能でありながら、各化粧カバーのそれぞれに適した特性を発揮する開閉支援機構や閉位置保持機構を無理なく取り付けることができ、しかも、各化粧カバーの開閉揺動支点を形成する支軸や、各化粧カバーの開閉支援機構を動作させるための作用部材を挿通させるためにフロントパネル本体に設けることが必要になる開口部の数を最少限度に抑えて、当該フロントパネル本体の構成を簡素化することが可能になる。その結果、冒頭で説明した全面化粧カバーを備えたフロントパネルや半面化粧カバーを備えたフロントパネルを組み立てる際に、フロントパネル本体を共通化することが可能になって、フロントパネル本体の管理や取扱いが容易になり、コスト的にも有利になるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る全面化粧カバーが取り付けられたフロントパネルの正面図である。
【図2】全面化粧カバーを閉じた状態での図1のII矢視図である。
【図3】全面化粧カバーを開いた状態での図1のIII矢視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る半面化粧カバーが取り付けられたフロントパネルの正面図である。
【図5】半面化粧カバーを閉じた状態での図4のV矢視図である。
【図6】半面化粧カバーを開いた状態での図4のVI矢視図である。
【図7】フロントパネル本体の正面図である。
【図8】フロントパネル本体の概略背面図である。
【図9】図8のIX部の詳細を示した拡大図である。
【図10】図8のX部の詳細を示した拡大図である。
【図11】全面化粧カバー又は半面化粧カバーの開閉揺動支点を示した説明図である。
【図12】一方側の第1取付部に取り付けられた第1開閉支援機構の背面図である。
【図13】他方側の第1取付部に取り付けられた第1開閉支援機構の背面図である。
【図14】閉位置の全面化粧カバーの駆動歯車と従動歯車との噛合い構成を示した説明図である。
【図15】開位置の全面化粧カバーの駆動歯車と従動歯車との噛合い構成を示した説明図である。
【図16】一方側の第2取付部に取り付けられた第2開閉支援機構の背面図である。
【図17】他方側の第2取付部に取り付けられた第2開閉支援機構の背面図である。
【図18】閉位置の半面化粧カバーの偏心カムと第2開閉支援機構との位置関係を示した説明図である。
【図19】開位置の半面化粧カバーの偏心カムと第2開閉支援機構との位置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る全面化粧カバーが取り付けられたフロントパネルの正面図、図2は全面化粧カバーを閉じた状態での図1のII矢視図、図3は全面化粧カバーを開いた状態での図1のIII矢視図である。
【0017】
図1〜図3に示したフロントパネルAは、偏平な矩形箱形の電気機器キャビネットの前端部に装備される。図例のフロントパネルAは横長形状に形成されていて、横長形状のフロントパネル本体10と、このフロントパネル本体10に取り付けられた化粧カバー50とを有している。図例の化粧カバー50は、フロントパネル本体10の下端前部に設けられている支軸80によって開閉揺動可能に支えられていて、図2に示した起立姿勢の閉位置では、フロントパネル本体10の前面全体を覆い隠すサイズに形成されている。また、図3に示した開位置の化粧カバー50は、その一端部51がフロントパネル本体10の下面11に重なり合って水平な倒伏姿勢を維持するようになっている。
【0018】
図4は本発明の実施形態に係る半面化粧カバーが取り付けられたフロントパネルの正面図、図5は半面化粧カバーを閉じた状態での図4のV矢視図、図6は半面化粧カバーを開いた状態での図4のVI矢視図である。
【0019】
図4〜図6に示したフロントパネルAは、上記したものと同様の矩形箱形の電気機器キャビネットの前端部に装備される。図例のフロントパネルAは横長形状に形成されていて、横長形状のフロントパネル本体10と、このフロントパネル本体10に取り付けられた化粧カバー60とを有している。図例の化粧カバー60は、フロントパネル本体10の下端前部に設けられている支軸80によって開閉揺動可能に支えられていて、図5に示した起立姿勢の閉位置では、フロントパネル本体10の前面の下半部を覆い隠すサイズに形成されている。また、図6に示した開位置の化粧カバー60は、その一端部61がフロントパネル本体10の下面11に重なり合って水平な倒伏姿勢を維持するようになっている。
【0020】
図1〜図3に示した化粧カバー50と、図4〜図6に示した化粧カバー60とを対比すると、横幅サイズが同一であるけれども、縦幅サイズについては図1〜図3に示した化粧カバー50が図4〜図6に示した化粧カバー60よりも大きい。そのため、図例のようにフロントパネル本体10の下端前部に設けられている支軸80によって各化粧カバー50,50を開閉揺動可能に支えた構成を採用したときには、開閉時のモーメントの大きさは、図1〜図3に示した化粧カバー50が図4〜図6に示した化粧カバー60よりも大きい。なお、図4〜図6に示したフロントパネル本体10の形状やサイズは、図1〜図3に示したフロントパネル本体10のそれと同一であるので、図1〜図6にあっては、フロントパネル本体10や支軸80に同一符号を付してある。
【0021】
ここで、図1〜図3に示した化粧カバー50は、閉位置ではフロントパネル本体10の前面の全体を覆い隠してその前面のデザインを支配するので、以下の説明では全面化粧カバー50と称することにする。同様に、図4〜図6に示した化粧カバー60は、閉位置ではフロントパネル本体10の前面の下半部を覆い隠してその前面のデザインを支配するので、以下の説明では半面化粧カバー60と称することにする。また、全面化粧カバー50は半面化粧カバー60よりも縦幅サイズが大きいことにより、全面化粧カバー50は本発明の発明特定要素である第1カバーに相当し、半面化粧カバー60は本発明の発明特定要素である第2カバーに相当している。
【0022】
図7はフロントパネル本体10の正面図である。同図に示したように、横長のフロントパネル本体10には、開閉扉21を備えた磁気テープカセットの搬入搬出口22と、開閉扉23を備えたディスク搬入出用のディスクトレイの出退口24が横並びに設けられているほか、磁気テープカセットを制御するための停止/取出し用のボタン25、ディスクトレイを制御するためのボタン26などが設けられている。一点鎖線L1,L2は、開閉扉21,23の開閉揺動中心を示している。また、上記した搬入搬出口22や出退口24の下側に、電源スイッチ27や切換スイッチ28、各種表示灯29などが横配列されている。さらに、それらの電源スイッチ27や切換スイッチ28、各種表示灯29などの下側に、磁気テープカセットやディスクを制御するための各種のボタン列31や動作状態を示す表示窓32、各種の通信デバイスの装着部33などが横並びに設けられている。
【0023】
さらに、フロントパネル本体10の縦幅方向下部には、中央部2箇所と横幅方向両端部の2箇所とにそれぞれ縦長矩形の開口部41,41,45,45が横並び状態で開設されている。これらの開口部41,45のそれぞれには、上記した支軸80…、すなわち、フロントパネル本体10の下端前部に設けられている支軸80…が同心状に位置している。一点鎖線Lは、各支軸80が同心配列されていることを示した支軸80の軸線である。
【0024】
図11は、上記した全面化粧カバー50又は半面化粧カバー60を支軸80に支えさせることによって、この支軸80で全面化粧カバー50又は半面化粧カバー60の開閉揺動支点を形成させた状態を示している。同図によって明らかなように、全面化粧カバー50の縦幅方向一端部51の裏面に軸受52が設けられている。この軸受52は、図7に示した4箇所の各支軸80…に各別に対応するように全面化粧カバー50の裏面の横方向4箇所に設けられている。また、それぞれの軸受52は周方向の一箇所が欠除されていて、その欠除箇所53を利用して支軸80に軸受52を嵌め込むことができるようになっている。そして、同図のように、軸受52を支軸80に嵌め込んだ状態では、全面化粧カバー50が支軸80に支えられ、その支軸80によって形成された開閉揺動支点を中心として、図2又は図3に示したように全面化粧カバー50が起立姿勢の閉位置と倒伏姿勢の開位置と間で開閉揺動可能である。また、図11に便宜上併せて示したように、半面化粧カバー60の縦幅方向一端部61の裏面に軸受62が設けられている。この軸受62は、図7に示した4箇所の各支軸80…に各別に対応するように半面化粧カバー60の裏面の横方向4箇所に設けられている。また、それぞれの軸受62は周方向の一箇所が欠除されていて、その欠除箇所63を利用して支軸80に軸受62を嵌め込むことができるようになっている。そして、同図のように、軸受62を支軸80に嵌め込んだ状態では、半面化粧カバー60が支軸80に支えられ、その支軸80によって形成された開閉揺動支点を中心として、図5又は図6に示したように半面化粧カバー60が起立姿勢の閉位置と倒伏姿勢の開位置と間で開閉揺動可能である。
【0025】
ところで、上記したように全面化粧カバー50は半面化粧カバー60よりも重量が重い。そのため、フロントパネル本体10に全面化粧カバー50を取り付けた場合と半面化粧カバー60を取り付けた場合とでは、それぞれの化粧カバー50,60に適した特性を発揮する種類の開閉支援機構を採用することが望まれ、そうすることによって、全面化粧カバー50や半面化粧カバー60の開閉時の動作品位を向上させることが可能である。
【0026】
そこで、この実施形態では、フロントパネル本体10に全面化粧カバー50を取り付けた場合には、その開閉支援機構(第1開閉支援機構)としてオイルダンパー(後述する)を採用し、フロントパネル本体10に半面化粧カバー60を取り付けた場合には、その開閉支援機構(第2開閉支援機構)として板ばね材(後述する)を採用している。
【0027】
図8はフロントパネル本体10の概略背面図、図9は図8のIX部の詳細を示した拡大図、図10は図8のX部の詳細を示した拡大図である。
【0028】
図8のように、フロントパネル本体10の裏面側には、上記のオイルダンパーでなる第1開閉支援機構を取付け可能な第1取付部71と、上記の板ばね材でなる第2開閉支援機構を取付け可能な第2取付部75とが備わっている。図例では、第1取付部71が、フロントパネル本体10の横幅方向両端部の2箇所に開設されている縦長矩形の開口部45の横位置に近接して設けられているのに対し、第2取付部75がその開口部45の上側位置に近接して設けられている。図9及び図10に示したように、2箇所に設けられている第1取付部71,71は、フロントパネル本体10の裏面からの出幅が適切に定められたリブの枠組みでなる。そして、第1取付部71には、取付ビスがねじ込まれるボス部72と位置決め用の2つの突起73,74とが設けられている。これに対し、第2取付部75は、フロントパネル本体10の裏面に突設されたリブによって形成されていて、そのリブに溝部76が備わっている。また、図8に示したように、フロントパネル本体10の裏面側には、横方向の2箇所にマグネットを取付け可能なマグネット取付部77が設けられている。
【0029】
次に、全面化粧カバー50が取り付けられたフロントパネル本体10を説明する。フロントパネル本体10に全面化粧カバー50を取り付けた状態では、全面化粧カバー50の裏面側の4箇所の軸受52が、フロントパネル本体10側の4箇所の支軸80によって揺動可能に支えられている(図11参照)。
【0030】
図12及び図13は上記した2箇所の第1取付部71,71のそれぞれに取り付けられたダンパーでなる第1開閉支援機構91,91を示した背面図である。図12及び図13に示したように、第1開閉支援機構91は、従動歯車92と抵抗付与手段93と取付座94とを備えるオイルダンパーによって形成されていて、従動歯車92の回転運動に対して、抵抗付与手段93によって発揮されるオイルの流動抵抗が常時付与されるようになっている。そして、図12に示した一方側の第1取付部71や図13に示した他方側の第1取付部71には、第1開閉支援機構91の取付座94が、図9及び図10に示したボス部72にねじ込んだ取付けビス95によって取り付けられている。そして、この取付状態では、図12及び図13のように、第1開閉支援機構91の従動歯車92が上記した開口部45に臨んでいる。
【0031】
図14は全面化粧カバー50が閉位置に位置しているときに、その全面化粧カバー50に設けられている駆動歯車96と第1開閉支援機構91の従動歯車92との噛合い箇所の構成を示した説明図、図15は全面化粧カバー50が開位置に位置しているときに、その全面化粧カバー50に設けられている駆動歯車96と第1開閉支援機構91の従動歯車92との噛合い箇所の構成を示した説明図である。
【0032】
全面化粧カバー50の裏面の横方向両端部の2箇所に設けられている軸受52,52のそれぞれの偏心箇所に、第1作用部材としての扇形の駆動歯車96が連設されている。そして、これらの駆動歯車96が、フロントパネル本体10の横幅方向両端部の2箇所に開設されている縦長矩形の上記開口部45,45に各別に挿通されて、それらの開口部45,45に臨んでいる上記従動歯車92,92と噛み合っている。このため、図14の矢印C1のように全面化粧カバー50が閉方向に揺動されると、それに伴って駆動歯車96も揺動して従動歯車92を回転させる。このときの従動歯車92の回転運動には、第1開閉支援機構91の抵抗付与手段93によって一定の抵抗が付与される。また、図15の矢印C2のように全面化粧カバー50が開方向に揺動されると、それに伴って駆動歯車96も揺動して従動歯車92を回転させる。このときの従動歯車92の回転運動にも、第1開閉支援機構91の抵抗付与手段93によって一定の抵抗が付与される。したがって、全面化粧カバー50がその自重の影響を受けて急激に開閉したりすることがなくなり、全面化粧カバー50の開閉時に優れた動作品位が付与されるようになる。
【0033】
この実施形態では、図8に示したようにフロントパネル本体10の2箇所にマグネット取付部77が設けられていて、全面化粧カバー50を採用するときには、そのマグネット取付部77にマグネットが装備される。マグネットの取付手段には、マグネットをマグネト取付部77に接着剤で接合したり、別途用意した取付具を用いてマグネットをマグネット取付部77に取り付けたりすることが行われる。また、全面化粧カバー50側には、閉位置で上記マグネットに対応する位置に吸着片54(図2又は図3参照)が装備される。したがって、全面化粧カバー50の閉位置は、吸着片54がマグネットに吸引されることによって維持される。
【0034】
次に、半面化粧カバー60が取り付けられたフロントパネル本体10を説明する。フロントパネル本体10に半面化粧カバー60を取り付けた状態では、半面化粧カバー60の裏面側の4箇所の軸受62が、フロントパネル本体10側の4箇所の支軸80によって揺動可能に支えられている(図11参照)。
【0035】
図16及び図17は上記した2箇所の第2取付部75のそれぞれに取り付けられた板ばね材でなる第2開閉支援機構97を示した背面図である。図16及び図17に示したように、第2開閉支援機構97は、ばね板部98とこのばね板部98の端部に曲成された取付板部99とを備える板ばね材によって形成されている。そして、図16に示した一方側の第2取付部75や図17に示した他方側の第2取付部75の溝部76には、第2開閉支援機構97の取付板部99が圧入状に差し込まれて取り付けられている。なお、必要があれば、取付板部99を接着剤を用いて第2取付部75に接合することによって、取付板部99の第2取付部75からの脱落を防止することが行われる。この取付状態では、図16及び図17のように、第2開閉支援機構97のばね板部98が上記した開口部45に臨んでいる。
【0036】
図18は半面化粧カバー60が閉位置に位置しているときに、その半面化粧カバー60に設けられている第2作用部材としての偏心カム100と第2開閉支援機構97のばね板部98との位置関係を示した説明図、図19は半面化粧カバー60が開位置に位置しているときに、偏心カム100と第2開閉支援機構97のばね板部98との位置関係を示した説明図である。
【0037】
半面化粧カバー60の裏面の横方向両端部の2箇所に設けられている軸受62のそれぞれの偏心箇所に、第2作用部材としての上記偏心カム100が連設されている。そして、これらの偏心カム100が、フロントパネル本体10の横幅方向両端部の2箇所に開設されている縦長矩形の上記開口部45に各別に挿通されて、それらの開口部45に臨んでいる上記ばね板部98に対峙している。そして、図18の矢印C3のように半面化粧カバー60を開位置から閉方向に揺動させていくと、偏心カム100がばね板部98をその弾性に抗して前方へ押し込みながらそのばね板部98と摺動する。このような摺動動作を通じて半面化粧カバー60が閉位置に近付いていくと、ばね板部98の弾性復元作用が矢印Xのように偏心カム100に作用してその偏心カム100が下方へ弾圧されるようになる。そして、ばね板部98の弾性復元作用で偏心カム100が下方へ弾圧されると、半面化粧カバー60がばね板部98の弾圧力により自然に揺動してフロントパネル本体10に重なり合う閉位置に到達する。また、閉位置では、ばね板部98が偏心カム100を下方へ弾圧したままになるので、半面化粧カバー60が閉位置に保持される。また、図19の矢印C4のように半面化粧カバー60が開方向に揺動されると、それに伴って偏心カム100がばね板部98を乗り越えてそのばね板部98から離れる。したがって、半面化粧カバー60がその自重で倒伏姿勢になって開位置を維持する。
【0038】
ところで、フロントパネル本体10の横幅方向両端部の2箇所に開設されている縦長矩形の開口部45は、全面化粧カバー50をフロントパネル本体10に取り付けたときには、第1開閉支援機構91の従動歯車92に噛み合う第1作用部材としての駆動歯車96を挿通させるための第1開口部として役立っている。また、上記開口部45は、半面化粧カバー60をフロントパネル本体10に取り付けたときには、第2開閉支援機構97のばね板部98を作用させる第2作用部材としての偏心カム100を挿通させるための第2開口部として役立っている。したがって、全面化粧カバー50の開閉運動を第1開閉支援機構91に伝達する第1作用部材としての駆動歯車96が挿通される第1開口部と、半面化粧カバー60の開閉運動を第2開閉支援機構97に伝達する第2作用部材としての偏心カム100が挿通される第2開口部とが、上記開口部45で供用されている。このように、第1及び第2の上記各開口部を1つの開口部45で供用する構成を採用すると、フロントパネル本体10に設けるべき開口部の数が削減されてそれだけフロントパネル本体10の構成が簡素化される。
【0039】
以上説明した実施形態では、重量の重い全面化粧カバー50の開閉動作を制御するための第1開閉支援機構91としてオイルダンパー機構を採用し、重量の軽い半面化粧カバー60の開閉動作を制御するための第2開閉支援機構97として板ばね材を採用しているけれども、この点は、全面化粧カバー50や半面化粧カバー60の重量を勘案した上で、その開閉時の動作品位を向上させることのできる他の機構を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
A フロントパネル
10 フロントパネル本体
45 開口部(第1及び第2の開口部)
50 全面化粧カバー(第1カバー)
54 吸着片
60 半面化粧カバー(第2カバー)
71 第1取付部
75 第2取付部
77 マグネット取付部
80 支軸
91 第1開閉支援機構
92 従動歯車
93 抵抗付与手段
94 取付座
96 駆動歯車(第1作用部材)
97 第2開閉支援機構
98 ばね板部
99 取付板部
100 偏心カム(第2作用部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器キャビネットの前端部に装備されるフロントパネル本体と、このフロントパネル本体に取り付けられて起立姿勢の閉位置と前倒姿勢の開位置との間で開閉揺動される化粧カバーとを有する電気機器のフロントパネルにおいて、
上記フロントパネル本体に設けられていて、上記化粧カバーとして選択的に用いられる縦幅サイズの大きな第1カバーとこの第1カバーよりも縦幅サイズの小さな第2カバーとの両方に供用されて、それら2種類のカバーの開閉揺動支点を形成する支軸と、
上記フロントパネル本体の裏面側に設けられて、上記支軸に取り付けられた上記第1カバーの開閉運動が伝達されることによってその第1カバーの開閉動作を制御するための第1開閉支援機構を取付け可能な第1取付部と、
上記フロントパネル本体に設けられて、上記第1カバーの開閉運動を上記第1開閉支援機構に伝達する第1作用部材が挿通される第1開口部と、
上記フロントパネル本体の裏面側に設けられて、上記第1カバーに設けられた吸着片を引き寄せてその第1カバーを閉位置に保持するマグネットを取付け可能なマグネット取付部と、
上記フロントパネル本体の裏面側の上記第1取付部とは異なる位置に設けられて、上記支軸に取り付けられた上記第2カバーの開閉運動が伝達されることによってその第2カバーの開閉動作を制御するための第2開閉支援機構を取付け可能な第2取付部と、
上記フロントパネル本体に設けられて、上記第2カバーの開閉運動を上記第2開閉支援機構に伝達する第2作用部材が挿通される第2開口部と、を備えていると共に、第1及び第2の上記各開口部が、上記フロントパネル本体に形成された1つの開口部によって供用されていることを特徴とする電気機器のフロントパネル。
【請求項2】
上記第1開口部には、上記第1カバーに設けられてその第1カバーの開閉揺動支点と同心位置に位置する駆動歯車でなる上記第1作用部材を挿通可能であり、
上記第1取付部には、上記第1開口部に挿通された上記駆動歯車が噛み合う従動歯車とこの従動歯車の回転運動に抵抗を与える抵抗付与手段と取付座とを備えるダンパーによって形成された上記第1開閉支援機構の上記取付座を装着可能であって、
上記第1取付部の位置が上記第1開口部の横位置に近接して定められている請求項1に記載した電気機器のフロントパネル。
【請求項3】
上記第2開口部には、上記第2カバーに設けられてその第2カバーの開閉揺動支点の偏心箇所に位置する偏心カムでなる上記第2作用部材を挿通可能であり、
上記第2取付部には、上記第2開口部に挿通された上記偏心カムを弾圧して上記第2カバーを閉位置に保持する機能を発揮するばね板部とこのばね板部の端部に設けられた取付板部とを備える板ばね材によって形成された上記第2開閉支援機構の上記取付板部を装着可能であって、
上記第2取付部の位置が上記第1開口部の上側位置に近接して定められている請求項1又は請求項2に記載した電気機器のフロントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−53935(P2012−53935A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193421(P2010−193421)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】