説明

電気機器の筐体

【課題】繰り返しの取付けや取外しによっても破損することなく、取付状態において十分な保持力を確保できる取付用レールへの取付機構を備えた電気機器の筐体を提供する。
【解決手段】電気機器の筐体1は、筐体本体10と、スライダ20とを備える。スライダ20は、上側可動部21Aと下側可動部21Bとを近づける方向および遠ざける方向に連動してスライド移動させるリンク部22を有する。上側可動部21Aは、上側係止部26Aを有し、下側可動部21Bは、下側係止部26Bを有する。リンク部22は、筐体本体10によって回動可能に支承された回動アーム27cと、上側可動部21Aおよび回動アーム27cを連結する第1連結部28aと、下側可動部21Bおよび回動アーム27cを連結する第2連結部28bとを含む。第1連結部28aおよび第2連結部28bは、回動アーム27cの回動軸から遠ざかる方向に向かって膨出する弧状形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付用レールに対してその取付けが可能とされた電気機器の筐体に関し、特に、DIN(ドイツ工業規格)レールに代表される如くの幅方向における両端に外側に向かって突設された一対の被係止部を有する取付用レールに対してその取付けが可能とされた電気機器の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、制御機器や電源機器等の電気機器を制御盤等に取付ける方法として、電気機器の筐体に予めDINレールに取付けるための取付機構を設けておき、これを用いて制御盤等に付設されたDINレールに対して電気機器の筐体を取付ける方法が知られている。
【0003】
上記取付機構としては、様々な構成のものが存在するが、より簡便にDINレールへの取付けおよび取外しが行なえるように構成された取付機構として、特開平1−225074号公報(特許文献1)に開示のものがある。
【0004】
上記特許文献1に開示の取付機構は、筐体本体の背面部分にスライダを付設し、当該スライダに、一対のスライド移動可能な可動部と、これら一対の可動部が互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に向かって連動してスライド移動するように当該一対の可動部を連結する屈曲した形状のリンク部とを設け、当該リンク部に設けられた回動シャフトを筐体本体によって回動可能に支承することとし、上記一対の可動部のそれぞれに互いに対峙するように係止部としての傾斜面を有するフックを設けたものである。
【0005】
また、上記特許文献1に開示の取付機構においては、一対の可動部のうちの一方の可動部を他方の可動部に向けて弾性付勢する弾性付勢部を筐体本体に一体的に設けたバネ板にて構成することとし、一対の可動部の先端を筐体本体よりも外側に引き出して当該引き出した部分に操作部を立設するとともに、その近傍の筐体本体の外表面に突出部を設けた構成としている。
【0006】
上述した特許文献1に開示の如くの取付機構を採用することにより、一対の可動部が近接配置された状態において一対の可動部のそれぞれに設けられたフックをDINレールに設けられた一対の被係止部に対して押し付けることにより、前方からの電気機器の筐体のDINレールへの取付けが可能になり、またマイナスドライバ等の工具の先端を上記操作部と上記突出部との間に挿入してこじることにより、前方に向けての電気機器の筐体のDINレールからの取外しが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−225074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示の取付機構にあっては、上述したようにリンク部が屈曲した形状を有しているため、一対の可動部が移動する際に当該屈曲した部分に局所的な応力集中が発生し、繰り返しの取付けや取外しによって最悪の場合には当該部分に破損が生じてしまうおそれがある。
【0009】
また、上記特許文献1に開示の取付機構にあっては、上述したようにリンク部が屈曲した形状を有しているため、一対の可動部のストロークを十分に確保することが困難であり、可動部がスライド移動する方向に沿ったDINレールとフックとの噛み合い部分の長さを長くすることができず、取付状態における保持力を十分に確保することが困難になる問題がある。
【0010】
加えて、上記特許文献1に開示の取付機構にあっては、リンク部に設けられた回動シャフトが筐体本体に設けられた軸支孔に単に挿入されたのみの構成であるため、繰り返しの取付けや取外しによって回動シャフトが軸支孔から脱落してしまうおそれもあり、最悪の場合には取付機構自体が破損してしまう問題もある。
【0011】
さらには、上記特許文献1に開示の取付機構にあっては、電気機器の筐体をDINレールから取外す際に、マイナスドライバ等の工具を用いてこじている間のみその取外しが可能になるため、当該こじた状態を維持しつつ電気機器の筐体を前方に引き出すことが必要になり、取外し作業が必ずしも容易に行なえないといった問題もある。
【0012】
したがって、本発明は、繰り返しの取付けや取外しによっても破損することがなく、取付状態において十分な保持力を確保することができる取付用レールへの取付機構を備えた電気機器の筐体を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、上記目的とは別に、さらに、取外し作業がより容易に行なえる取付用レールへの取付機構を備えた電気機器の筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく電気機器の筐体は、幅方向における両端に外側に向かって突設された一対の被係止部を有する取付用レールに対してその取付けが可能とされた電気機器の筐体であって、機器本体が収容される筐体本体と、上記筐体本体の背面に組付けられた単一の部材からなるスライダとを備えている。上記筐体本体の背面には、取付用レールを受け入れるための取付溝部と、上記取付溝部を挟み込むように位置する第1突出部および第2突出部とが設けられている。上記スライダは、上記第1突出部と上記第2突出部とを結ぶ方向である第1の方向に沿ってスライド移動可能に構成された第1可動部および第2可動部と、上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に連動してスライド移動するように上記第1可動部と上記第2可動部とを連結するリンク部とを有している。上記第1可動部は、上記第1突出部によってスライド移動可能に支持されており、上記第2可動部は、上記第2突出部によってスライド移動可能に支持されている。上記第1可動部の上記取付溝部に面する部分には、上記取付溝部側に向かって突出する第1係止部が設けられており、上記第2可動部の上記取付溝部に面する部分には、上記取付溝部側に向かって突出する第2係止部が設けられている。上記リンク部は、上記第1可動部から上記第1の方向に沿って連続して延びる第1スライドアームと、上記第2可動部から上記第1の方向に沿って連続して延びる第2スライドアームと、上記筐体本体によって回動可能に支承され、上記第1の方向と交差する方向に沿って延びる回動アームと、上記第1スライドアームの先端と上記回動アームの一端とにそれぞれ連続し、上記第1スライドアームと上記回動アームとを連結する第1連結部と、上記第2スライドアームの先端と上記回動アームの他端とにそれぞれ連続し、上記第2スライドアームと上記回動アームとを連結する第2連結部とを含んでいる。上記第1連結部および上記第2連結部の各々は、上記回動アームの回動軸から遠ざかる方向に向かって膨出する弧状形状を有している。上記第1可動部と上記第2可動部とが近接配置された第1の状態においては、上記第1係止部および上記第2係止部がそれぞれ上記取付溝部内に配置されることにより、取付溝部内に受け入れられた取付用レールの一対の被係止部のうちの一方が上記筐体本体の背面と直交する第2の方向において上記第1係止部に係止されるとともに、取付用レールの一対の被係止部のうちの他方が上記第2の方向において上記第2係止部に係止され、これにより上記筐体本体が取付用レールに取付けられる。上記第1可動部と上記第2可動部とが上記第1の状態よりも遠隔配置された第2の状態においては、上記第1係止部および上記第2係止部がそれぞれ上記取付溝部から退避して配置されることにより、上記筐体本体が上記取付溝部内に受け入れられた取付用レールから取外されるとともに、弧状形状を有する上記第1連結部および上記第2連結部のそれぞれが開くように撓むことにより、上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに近づく方向に弾性付勢されるように構成されている。
【0015】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記第1連結部が、上記第1の状態において、上記第2連結部よりも上記第2可動部寄りの位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づく電気機器の筐体は、さらに、上記第1の状態において、上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに遠ざかる方向にスライド移動することを規制する第1ロック機構を備えていることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく電気機器の筐体は、さらに、弧状形状を有する上記第1連結部および上記第2連結部によって発現される弾性付勢力に抗することにより、上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに近づく方向にスライド移動することを規制する第2ロック機構を備えていることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記回動アームに回動シャフトが突設されているとともに、上記筐体本体に軸支孔が穿設されていることが好ましい。その場合には、上記軸支孔に上記回動シャフトが挿入されることにより、上記回動アームが上記筐体本体によって回動可能に支承されていることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記回動シャフトに抜け止め部が突設されているとともに、上記軸支孔の周囲に抜け止め部挿入用孔が穿設されていることが好ましく、これにより上記回動シャフトが上記軸支孔から脱落することが防止されるとともに、その組付けが可能とされていることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記抜け止め部挿入用孔が、上記第2ロック機構によって上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに近づく方向にスライド移動することが規制された状態よりもさらに上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに遠ざかる方向にスライド移動させられた状態において上記抜け止め部が配置されることとなる位置に対応した位置に配置されていることが好ましい。
【0021】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記第1可動部および上記第2可動部のうちの少なくとも一方に上記第1可動部および上記第2可動部のスライド移動を操作するための操作摘みが設けられていることが好ましい。
【0022】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記操作摘みが、上記第1の方向に沿って上記筐体本体から外側に向かって引き出されていることが好ましい。
【0023】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記取付用レールに対する上記筐体本体の取付けの際に、上記第1係止部および上記第2係止部に取付用レールの一対の被係止部が当接することによって上記第1可動部と上記第2可動部とが互いに遠ざかる方向にスライド移動するように、上記第1係止部の背面および上記第2係止部の背面がそれぞれ傾斜面にて構成されていることが好ましい。
【0024】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記リンク部が、上記取付溝部の底面上に配置されていることが好ましい。
【0025】
上記本発明に基づく電気機器の筐体にあっては、上記リンク部が、上記第1可動部と上記第2可動部とを連結するように並行して一対設けられていてもよい。その場合には、上記一対のリンク部が、上記第2の方向に沿って見た場合に線対称形状を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、繰り返しの取付けや取外しによっても破損することがなく、取付状態において十分な保持力を確保することができる取付用レールへの取付機構を備えた電気機器の筐体とすることができる。
【0027】
また、本発明によれば、さらに、取外し作業がより容易に行なえる取付用レールへの取付機構を備えた電気機器の筐体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールに取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールに取付けた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の係止状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の係止解除状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体のスライダの斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の左側ケーシングの斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の右側ケーシングの斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の係止状態における背面図および要部断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の係止状態を示す概略斜視図、模式背面図および模式側面図である。
【図10】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体の係止解除状態を示す概略斜視図、模式背面図および模式側面図である。
【図11】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体のリンク部の動作を示す模式図である。
【図12】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールに取付ける際の手順を説明するための模式側面図である。
【図13】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールに取付ける際の手順を説明するための模式側面図である。
【図14】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールに取付ける際の手順を説明するための模式側面図である。
【図15】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールから取外す際の手順を説明するための模式側面図である。
【図16】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールから取外す際の手順を説明するための模式側面図である。
【図17】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体において、スライダを筐体本体に組付ける手順を説明するための概略斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体において、スライダを筐体本体に組付ける手順を説明するための概略斜視図、模式背面図および模式側面図である。
【図19】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体において、スライダを筐体本体に組付ける手順を説明するための概略斜視図、模式背面図および模式側面図である。
【図20】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体のリンク部の、可動域と組付位置との位置関係を示す模式図である。
【図21】本発明の実施の形態1における電気機器の筐体のリンク部の筐体本体への組付構造を示す概略斜視図である。
【図22】第1変形例におけるリンク部の動作を示す模式図である。
【図23】第2変形例におけるリンク部の筐体本体への組付構造を示す概略斜視図である。
【図24】第3変形例におけるリンク部の筐体本体への組付構造を示す概略斜視図である。
【図25】第4変形例におけるスライダの斜視図である。
【図26】第4変形例における左側ケーシングの斜視図である。
【図27】第4変形例における電気機器の筐体の係止状態を示す要部断面図である。
【図28】本発明の実施の形態2における電気機器の筐体の係止状態を示す斜視図である。
【図29】本発明の実施の形態2における電気機器の筐体のスライダの斜視図である。
【図30】本発明の実施の形態2における電気機器の筐体の係止状態および係止解除状態を示す要部背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、取付用レールとしてDINレールを使用することが前提とされた電気機器の筐体に本発明を適用した場合を例示して説明を行なう。また、以下においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は都度繰り返さないこととする。
【0030】
(実施の形態1)
図1および図2は、本発明の実施の形態1における電気機器の筐体をDINレールに取付けた状態を示す斜視図である。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施の形態における電気機器の筐体1は、水平方向に延在するように制御盤等に予め付設されたDINレール100に対してその取付けおよび取外しが行われるものである。DINレール100は、幅方向における両端に外側に向かって突設された一対の被係止部101A,101Bを有しており、当該被係止部101A,101Bを利用することで、電気機器の筐体1がDINレール100に取付けられる。
【0032】
電気機器の筐体1は、機器本体が収容される箱状の筐体本体10と、当該筐体本体10の背面10bに組付けられたスライダ20とを備えている。筐体本体10の前面10aには、たとえば当該電気機器と他の電気機器とを接続するための接続コードのコネクタが挿入されるコネクタ部等が配設されている。
【0033】
筐体本体10の背面10bには、DINレール100を受け入れるための取付溝部10Cと、当該取付溝部10Cを挟み込むように位置する第1突出部である上側突出部10Aおよび第2突出部である下側突出部10Bとが設けられている。取付溝部10Cは、水平方向に延在するように配置されたDINレール100に対応して水平方向に延びるように設けられており、上側突出部10Aおよび下側突出部10Bは、当該取付溝部10Cが延びる方向である水平方向と直交する鉛直方向(当該方向が、第1の方向に相当する)に上下に並んで配置されている。
【0034】
一方、スライダ20の上端には、スライダ20のスライド移動を操作するための操作摘み23が設けられている。当該操作摘み23は、筐体本体10の上端からさらに上方に向かって突出するように引き出されている。また、スライダ20には、第1係止部である上側係止部26Aおよび第2係止部である下側係止部26Bが設けられており、これら上側係止部26Aおよび下側係止部26Bは、取付溝部10Cを挟んで鉛直方向に沿って対峙するように上下に配置されている。
【0035】
図1および図2に示すように、電気機器の筐体1がDINレール100に取付けられた状態(当該状態が、第1の状態に相当する)においては、筐体本体10に設けられた取付溝部10C内にDINレール100が受け入れられた状態とされる。さらに、DINレール100の一対の被係止部のうちの一方の被係止部101Aが、スライダ20に設けられた上側係止部26Aによって前後方向(当該方向が、第2の方向に相当する)において係止された状態とされ、他方の被係止部101Bが、スライダ20に設けられた下側係止部26Bによって前後方向において係止された状態とされる。これにより、筐体本体10が、DINレール100に取付けられた状態とされる。
【0036】
図3は、本実施の形態における電気機器の筐体の係止状態を示す斜視図であり、図4は、係止解除状態を示す斜視図である。図5は、本実施の形態における電気機器の筐体のスライダの斜視図である。図6は、本実施の形態における電気機器の筐体の左側ケーシングの斜視図であり、図7は、右側ケーシングの斜視図である。また、図8は、本実施の形態における電気機器の筐体の係止状態における背面図および要部断面図である。
【0037】
ここで言う係止状態は、上述した第1の状態に相当し、当該係止状態には、実際にDINレール100の被係止部101A,101Bに上述した上側係止部26Aおよび下側係止部26Bがそれぞれ係止した状態(すなわち、図1および図2において示した取付状態)のみならず、DINレール100が取付溝部10Cに挿入されていないために実際には上側係止部26Aおよび下側係止部26Bが何ら係止をしていない状態も含むものとする。なお、図3および図8は、実際にはDINレール100に電気機器の筐体1が取付けられていない後者の状態を示す図である。
【0038】
図3、図4および図8に示すように、筐体本体10は、側面開口の左側ケーシング11aおよび右側ケーシング11bを有しており、これらの開口面同士が重なるように左側ケーシング11aおよび右側ケーシング11bが組付けられることにより、筐体本体10が構成されている。図6および図7に示すように、左側ケーシング11aおよび右側ケーシング11bには、それぞれ内部空間12a,12bが設けられており、左側ケーシング11aおよび右側ケーシング11bが組付けられた状態においてこれら内部空間12a,12bが組み合わされることにより、上述した機器本体を収容するための収容空間が筐体本体10の内部に形成される。なお、左側ケーシング11aおよび右側ケーシング11bは、たとえばポリカーボネイト樹脂等を用いた射出成形品にてそれぞれ製作することができる。
【0039】
図3ないし図5および図8に示すように、スライダ20は、単一の部材にて構成されており、第1可動部としての上側可動部21Aと、第2可動部としての下側可動部21Bと、これらの間に位置するリンク部22とを主として有している。リンク部22は、上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に向かって連動してスライド移動するように、上側可動部21Aと下側可動部21Bとを連結している。なお、スライダ20は、たとえばポリアセタール樹脂等を用いた射出成形品にて製作することができる。
【0040】
図3、図4および図8に示すように、スライダ20の上側可動部21Aは、筐体本体10の上側突出部10A内に設けられた溝状の上側ガイド部13Aに収容されており、スライダ20の下側可動部21Bは、筐体本体10の下側突出部10B内に設けられた溝状の下側ガイド部13Bに収容されている。一方、スライダ20のリンク部22は、筐体本体10の取付溝部10C内に配置されており、より具体的には取付溝部10Cの底面上に配置されている。
【0041】
図5および図8に示すように、スライダ20の上側可動部21Aの両側壁には、外側に向かって突出するように鍔部24Aがそれぞれ上下に一対設けられている。また、図6ないし図8に示すように、筐体本体10の溝状の上側ガイド部13Aの両側壁には、外側に向かって凹状にガイド溝部14Aがそれぞれ上下に一対設けられている。
【0042】
図8に示すように、これら鍔部24Aおよびガイド溝部14Aは、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態において互いに係合するように設けられている。これにより、スライダ20の上側可動部21Aは、筐体本体10の上側ガイド部13A内において鉛直方向に沿ってスライド移動可能となるように、筐体本体10の上側突出部10Aによって支持されることになる。
【0043】
一方、図5および図8に示すように、スライダ20の下側可動部21Bの両側壁には、外側に向かって突出するように鍔部24Bがそれぞれ設けられている。また、図6ないし図8に示すように、筐体本体10の溝状の下側ガイド部13Bの両側壁には、外側に向かって凹状にガイド溝部14Bがそれぞれ設けられている。
【0044】
図8に示すように、これら鍔部24Bおよびガイド溝部14Bは、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態において互いに係合するように設けられている。これにより、スライダ20の下側可動部21Bは、筐体本体10の下側ガイド部13B内において鉛直方向に沿ってスライド移動可能となるように、筐体本体10の下側突出部10Bによって支持されることになる。
【0045】
また、図3ないし図5および図8に示すように、スライダ20の上側可動部21Aの下端には、上述した上側係止部26Aが下方に向かって突出して設けられている。上側係止部26Aは、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態において取付溝部10Cに面するように設けられており、その背面が傾斜面にて構成されている。
【0046】
一方、スライダ20の下側可動部21Bの上端には、上述した下側係止部26Bが上方に向かって突出して設けられている。下側係止部26Bは、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態において取付溝部10Cに面するように設けられており、その背面が傾斜面にて構成されている。
【0047】
図3ないし図5および図8に示すように、スライダ20のリンク部22は、第1スライドアームである上側スライドアーム27aと、第2スライドアームである下側スライドアーム27bと、回動アーム27cと、第1連結部28aと、第2連結部28bとを含んでいる。
【0048】
上側スライドアーム27aは、上側可動部21Aの下端から鉛直方向に沿って下方に連続して延びるように棒状に形成されており、下側スライドアーム27bは、下側可動部21Bの上端から鉛直方向に沿って上方に連続して延びるように棒状に形成されている。これら上側スライドアーム27aおよび下側スライドアーム27bは、同一直線上に配置されないように水平方向においてずれた位置に設けられている。
【0049】
回動アーム27cは、鉛直方向と交差して延びるように棒状に形成されており、上側スライドアーム27aと下側スライドアーム27bとの間に位置している。図5に示すように、回動アーム27cの中央部には、前方に向かって突出するように回動シャフト25が設けられている。また、回動シャフト25の周面の所定位置には、抜け止め部25aが一対突設されている。
【0050】
図6に示すように、筐体本体10の取付溝部10Cの底面を構成する部分の左側ケーシング11aの所定位置には、上述した回動シャフト25が挿入される軸支孔15が穿設されている。当該軸支孔15の周囲には、上述した抜け止め部25aを挿入するための抜け止め部挿入用孔15aが一対穿設されている。
【0051】
これにより、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態においては、スライダ20に設けられた回動シャフト25が筐体本体10に設けられた軸支孔15に挿入されることにより、回動アーム27cが筐体本体10によって回動可能に支承されることになるとともに、筐体本体10から回動シャフト25が脱落することが防止されることになる。
【0052】
図3ないし図5および図8に示すように、第1連結部28aは、上側スライドアーム27aの先端と回動アーム27cの一端とにそれぞれ連続するように設けられることにより、これら上側スライドアーム27aと回動アーム27cとを連結している。当該第1連結部28aは、回動アーム27cの回動軸O(図11等参照)から遠ざかる方向に向かって膨出する弧状形状を有しており、その一部が上側スライドアーム27aの外側に位置する側面よりもさらに外側に迫り出している。
【0053】
一方、第2連結部28bは、下側スライドアーム27bの先端と回動アーム27cの他端とにそれぞれ連続するように設けられることにより、これら下側スライドアーム27bと回動アーム27cとを連結している。当該第2連結部28bは、回動アーム27cの回動軸O(図11等参照)から遠ざかる方向に向かって膨出する弧状形状を有しており、その一部が下側スライドアーム27bの外側に位置する側面よりもさらに外側に迫り出している。
【0054】
ここで、図3および図8に示すように、第1連結部28aは、係止状態において第2連結部28bよりも下側可動部21B寄りの位置に配置されており、第2連結部28bは、係止状態において第1連結部28aよりも上側可動部21A寄りの位置に配置されている。これにより、リンク部22は、係止状態においてこれを平面視した場合に略N字状の形状を有している。
【0055】
なお、本実施の形態においては、図3、図5および図8に示すように、第1連結部28aおよび第2連結部28bの各々に後述する撓み変形が生じ易くなるように、当該第1連結部28aおよび第2連結部28bの幅方向の厚みがそれぞれ上側スライドアーム27a、下側スライドアーム27bおよび回動アーム27cの幅方向の厚みよりも薄くなるように構成されている。
【0056】
また、図3ないし図5および図8に示すように、スライダ20の上側可動部21Aの上端には、上述した操作摘み23が設けられており、上側可動部21Aの略中央部には、周囲が切り欠かれることによって棒状に延びるロック部29が形成されている。図5に示すように、ロック部29は、その先端に屈曲した鉤状部29aを有している。
【0057】
一方、図6に示すように、筐体本体10の上側ガイド部13Aを構成する部分の左側ケーシング11aの背面10bの所定位置には、ロック溝部19が設けられており、当該ロック溝部19は、下側に配置された凹部である収容部19aと上側に配置された凹部である規制部19bとの2つの凹部を有している。
【0058】
これにより、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態においては、スライダ20に設けられた鉤状部29aが筐体本体10に設けられたロック溝部19内に位置することになる。より詳細には、係止状態においては、鉤状部29aが収容部19a内に配置されることになり、係止解除状態においては、鉤状部29aが規制部19b内に配置されることになる。
【0059】
以上において説明した本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、図3に示す係止状態(すなわち、第1の状態)においてスライダ20に設けられた操作摘み23を上方に引き上げ操作した場合に、リンク部22の機能によって上側可動部21Aと下側可動部21Bとがそれぞれ図中に示す矢印A1方向および矢印A2方向に向かって連動してスライド移動し、これにより図4に示す係止解除状態(当該状態が、第2の状態に相当する)へと移行することになる。
【0060】
また、図4に示す係止解除状態においてスライダ20に設けられた操作摘み23を下方に押し込み操作した場合には、リンク部22の機能によって上側可動部21Aと下側可動部21Bとがそれぞれ図中に示す矢印B1方向および矢印B2方向に向かって連動してスライド移動し、これにより図3に示す係止状態へと移行することになる。
【0061】
以下、上記動作についてさらに詳細に説明する。図9は、本実施の形態における電気機器の筐体の係止状態を示す概略斜視図、模式背面図および模式側面図であり、図10は、本実施の形態における電気機器の筐体の係止解除状態を示す概略斜視図、模式背面図および模式側面図である。また、図11は、本実施の形態における電気機器の筐体のリンク部の動作を示す模式図である。なお、図9および図10に含まれる概略斜視図においては、筐体本体10が簡略化した状態で図示されており、また、図9および図10に含まれる模式側面図においては、右側ケーシング11bが取外された状態での図示となっている。
【0062】
図9に示すように、係止状態においては、スライダ20の上側可動部21Aと下側可動部21Bとが近接配置された状態にあり、当該状態においては、上側係止部26Aおよび下側係止部26Bがいずれも筐体本体10の取付溝部10C内に配置されることになる。
【0063】
そのため、図1および図2に示すように、当該取付溝部10C内にDINレール100が受け入れられた状態においては、上側係止部26AがDINレール100の一対の被係止部のうちの一方の被係止部101Aの後方に位置することになり、下側係止部26BがDINレール100の一対の被係止部のうちの他方の被係止部101Bの後方に位置することになる。
【0064】
したがって、当該係止状態においては、被係止部101A,101Bが上側係止部26Aおよび下側係止部26Bと筐体1の背面(当該背面には、ここではスライダ20の背面と筐体本体10の幅方向の両端に設けられた立壁部の背面とが含まれる)とによってそれぞれ挟み込まれて係止されることになり、これにより筐体本体10がDINレール100に取付けられることになる。
【0065】
また、上記係止状態においては、上側係止部26Aに設けられたロック部29の鉤状部29aが筐体本体10に設けられたロック溝部19の収容部19aに収容されることになる。ここで、収容部19aを規定する上部側の壁面は、比較的緩やかであるものの所定の傾きを有する傾斜面にて構成されているため、相当程度の大きさの外力が加えられない限り、鉤状部29aが当該壁面を越えて規制部19bに移動することはない。
【0066】
したがって、当該壁面がストッパとして機能することになり、筐体本体10がDINレール100に取付けられた状態が安定的に維持されることになる。すなわち、上記鉤状部29aおよび上記収容部19aが、スライダ20の上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに遠ざかる方向にスライド移動することを規制する第1ロック機構として機能することになる。
【0067】
なお、図9および図11に示すように、上記係止状態においては、リンク部22の弧状形状を有する第1連結部28aおよび第2連結部28bには殆ど外力が作用しておらず、そのため、これら第1連結部28aおよび第2連結部28bは、いずれも殆ど撓むことなく無負荷状態である比較的閉じた状態にある。
【0068】
一方、図10に示すように、係止解除状態においては、スライダ20の上側可動部21Aと下側可動部21Bとが遠隔配置された状態にあり、当該状態においては、上側係止部26Aおよび下側係止部26Bとがいずれも筐体本体10の取付溝部10Cから退避して配置されることになる。
【0069】
そのため、当該状態においては、取付溝部10C内に受け入れられたDINレール100が何ら係止された状態にないことになり、筐体本体10がDINレール100から取外されることになる。
【0070】
また、上記係止解除状態においては、上側係止部26Aに設けられたロック部29の鉤状部29aが筐体本体10に設けられたロック溝部19の規制部19bに収容されることになる。ここで、規制部19bを規定する下部側の壁面は、比較的急峻な傾きを有する傾斜面にて構成されているため、相当程度の大きさの外力が加えられない限り、鉤状部29aが当該壁面を越えて収容部19aに移動することはない。
【0071】
したがって、当該壁面がストッパとして作用することになり、上述した係止解除状態が安定して維持されることになる。すなわち、上記鉤状部29aおよび上記規制部19bが、スライダ20の上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに近づく方向にスライド移動することを規制する第2ロック機構として機能することになる。
【0072】
なお、図10および図11に示すように、上記係止解除状態においては、リンク部22の弧状形状を有する第1連結部28aおよび第2連結部28bに相当程度の外力が作用することになり、そのためこれら第1連結部28aおよび第2連結部28bは、いずれも無負荷状態に比べて大きく撓むことになり、大きく開いた状態にある。これにより、第1連結部28aおよび第2連結部28bには、上側可動部21Aと下側可動部21Bとを互いに近づける方向に向けて弾性付勢力が発現することになるが、上述した鉤状部29aおよび規制部19bからなる第2ロック機構の機能により、当該弾性付勢力に抗してその移動が規制されている。
【0073】
ここで、図11に示すように、係止状態にある場合のリンク部22の回動アーム27cの回動方向における位置を係止位置として基準にとると、係止解除状態にするためには、当該回動アーム27cを図中に示す角度αだけ回動させて係止解除位置にまで到達させることが必要になる。
【0074】
そのため、この角度αよりも小さい所定の角度β(当該角度βは、収容部19a内に配置された鉤状部29aが当該収容部19aを規定する上部側の壁面を越えるのに必要な角度)よりもさらに小さい角度だけ回動アーム27cが回動されて外力が取り除かれた場合には、上述した第1連結部28aおよび第2連結部28bにおいて発現する弾性付勢力により、回動アーム27cが上記係止位置に復帰しようとすることになり、これに伴って上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに近づく方向に向かってスライド移動して係止状態に戻ることになる。
【0075】
したがって、上述した第1連結部28aおよび第2連結部28bにおいて発現する弾性付勢力を利用すれば、以下において説明する手順によるDINレール100に対する電気機器の筐体1の取付けが実現できることになり、また、上述した鉤状部29aおよび規制部19bからなる第2ロック機構を利用すれば、以下において説明する手順によるDINレール100からの電気機器の筐体1の取外しが実現できることになる。
【0076】
図12ないし図14は、本実施の形態における電気機器の筐体をDINレールに取付ける際の手順を説明するための模式側面図であり、図15および図16は、本実施の形態における電気機器の筐体をDINレールから取外す際の手順を説明するための模式側面図である。
【0077】
本実施の形態における電気機器の筐体1をDINレール100に取付ける際には、図12に示すように、まず必要に応じて操作摘み23を押し込み操作することによってスライダ20を移動させて係止状態とし、DINレール100の前方に電気機器の筐体1を配置する。そして、後方(図中に示す矢印C1方向)に向けて電気機器の筐体1を移動させることにより、DINレール100の一対の被係止部101A,101Bにスライダ20の上側係止部26Aおよび下側係止部26Bを当接させる。
【0078】
ここで、上述したように、上側係止部26Aおよび下側係止部26Bの背面は、いずれも傾斜面にて構成されているため、上側係止部26Aおよび下側係止部26Bの背面にDINレール100の一対の被係止部101A,101Bが当接することによってスライダ20の上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに遠ざかる方向に向かって移動することになる。これにより、上側可動部21Aに設けられた鉤状部29aは、筐体本体10に設けられた収容部19aを規定する上部側の壁面上を移動することになる。
【0079】
図13に示すように、上側係止部26Aおよび下側係止部26Bが互いに遠ざかる方向(すなわち、図中に示すA1方向およびA2方向)に向かってスライド移動することにより、DINレール100の一対の被係止部101A,101Bがこれら上側係止部26Aおよび下側係止部26Bの先端に達した状態において、スライダ20のリンク部22の回動アーム27cが、上述した所定の角度βよりもさらに小さい角度だけ回動するように予め設定を行なっておけば、さらに電気機器の筐体1を後方(図中に示す矢印C1方向)に向けて移動させることにより、外力が取り除かれた状態となる。なお、その際、上側可動部21Aに設けられた鉤状部29aは、筐体本体10に設けられた収容部19aを規定する上部側の壁面を越えて規制部19bに達することはない。
【0080】
したがって、図14に示すように、DINレール100の一対の被係止部101A,101Bがこれら上側係止部26Aおよび下側係止部26Bを越えて前方に達することにより、第1連結部28aおよび第2連結部28bにおいて発現している弾性付勢力によって上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに近づく方向(すなわち、図中に示すB1方向およびB2方向)に向かってスライド移動して係止状態に戻ることになり、電気機器の筐体1のDINレール100への取付けが完了する。
【0081】
このように、本実施の形態における電気機器の筐体1とすることにより、ワンタッチ操作での前方からの電気機器の筐体1のDINレール100への取付けが可能になり、非常に簡便にその取付け作業を行なうことができる。
【0082】
一方、本実施の形態における電気機器の筐体1をDINレール100から取外す際には、図15に示すように、まず操作摘み23を引き上げ操作することによってスライダ20を移動させて係止解除状態とする。当該操作により、スライダ20のリンク部22の回動アーム27cは、上述した係止解除位置にまで達するために必要な角度αだけ回動することになり、上側可動部21Aに設けられた鉤状部29aは、筐体本体10に設けられた収容部19aを規定する上部側の壁面を越えて規制部19bに達することになる。
【0083】
そのため、鉤状部29aおよび規制部19bからなる第2ロック機構が機能することになり、第1連結部28aおよび第2連結部28bにおいて発現している弾性付勢力に抗して上側可動部21Aおよび下側可動部21Bが互いに近づく方向に向かってスライド移動することが規制されることになる。したがって、上側係止部26Aおよび下側係止部26Bがそれぞれ取付溝部10Cから退避した状態が維持されることになり、図16に示すように、そのまま前方(図中に示す矢印C2方向)に向けて電気機器の筐体1を移動させることにより、電気機器の筐体1のDINレール100からの取外しが完了する。
【0084】
このように、本実施の形態における電気機器の筐体1とすることにより、ワンタッチ操作での前方に向けての電気機器の筐体1のDINレール100からの取外しが可能になり、非常に簡便にその取外し作業を行なうことができる。したがって、当該構成を採用すれば、DINレール100に対して複数の電気機器が互いに隣接するように並んで取付けられている場合等において、隣接する電気機器を取外すことなく、これらの間に位置する電気機器を正面からDINレール100に対して垂直方向に抜き差しできることになり、利便性が飛躍的に向上することになる。
【0085】
なお、本実施の形態においては、規制部19bを規定する上部側の壁面についても、これを比較的急峻な傾きを有する傾斜面にて構成している。そのため、操作摘み23を引き上げ操作する際に、スライダ20の上側可動部21Aが必要以上にスライド移動してしまうことが未然に防止されることになる。
【0086】
以上において説明した本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、上述したように、スライダ20の上側可動部21Aと下側可動部21Bとを連動してスライド移動させるためのリンク部22が、弧状形状を有する第1連結部28aおよび第2連結部28bを含んでいる。したがって、リンク部22が動作する際に、当該弧状形状を有する第1連結部28aおよび第2連結部28bがそれぞれ開くように撓むことになり、結果として応力緩和が図られ、局所的に応力集中が発生することがなくなる。したがって、繰り返しの取付けや取外しを行なった場合にもリンク部22が破損してしまうことが未然に防止できることになる。
【0087】
また、本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、上述したように、係止状態から係止解除状態に移行する際に弧状形状を有する第1連結部28aおよび第2連結部28bが大きく開くように撓むため、上側可動部21Aおよび下側可動部21Bのストロークを非常に大きく確保することができる。そのため、DINレール100の一対の被係止部101A,101Bと上側係止部26Aおよび下側係止部26Bとの噛み合い部分の長さを、上側可動部21Aおよび下側可動部21Bがスライド移動する方向に沿って長くすることができることになり、取付状態における保持力を十分に大きく確保することが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、上述したように、リンク部22が平面視略N字状の形状を有しているため、当該リンク部を直角に屈曲させた形状とした場合に比べ、スライダ20の幅方向の外形を大幅に狭小化させることができる。したがって、筐体本体10の幅が狭い電気機器に対してもその適用が可能になるメリットも得られる。
【0089】
また、本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、上述したように、単一の部材からなるスライダ20を筐体本体10の背面10bに付設するのみの簡素な構成で取付機構が実現できるため、部品点数の大幅な削減が可能となり、製造コストを従来に比して大幅に抑制できるメリットも得られる。
【0090】
さらには、本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、上述したように、リンク部22に設けられた回動シャフト25が、筐体本体10に設けられた軸支孔15から脱落することが防止された構成であるため、繰り返しの取付けや取外しによっても取付機構が破損してしまうことが未然に防止されている。以下においては、これに関連し、当該抜け防止機構を具備させた上で筐体本体10の背面10bにスライダ20を付設する具体的な組付手順および組付構造について説明する。
【0091】
図17ないし図19は、本実施の形態における電気機器の筐体において、スライダを筐体本体に組付ける手順を説明するための概略斜視図、模式背面図および模式側面図である。図20は、本実施の形態における電気機器の筐体の、リンク部の可動域と組付位置との位置関係を示す模式図である。また、図21は、本実施の形態における電気機器の筐体のリンク部の筐体本体への組付構造を示す概略斜視図である。
【0092】
スライダ20を筐体本体10に組付けるに際しては、図17に示すように、まずスライダ20を筐体本体10の背面10b上に載置する。その際、図18に示すように、スライダ20は、組付け後における位置よりも、若干、筐体本体10の上部寄りの位置に位置決めして載置する。
【0093】
より詳細には、図17に示すように、筐体本体10の上側突出部10Aに設けられた上下一対のガイド溝部14Aは、その上端側が開放された状態にあり、当該一対のガイド溝部14Aの開放された上端よりも上部側にスライダ20の上側可動部21Aに設けられた上下一対の鍔部24Aがそれぞれ配置されるようにする。これにより、スライダ20のリンク部22は、筐体本体10の取付溝部10Cの上部寄りの位置に配置されることになり、スライダ20の下側可動部21Bは、筐体本体10の取付溝部10Cの下部寄りの位置に配置されることになる。ここで、筐体本体10の下側突出部10Bに設けられたガイド溝部14Bも、その上端側が開放された状態にあり、当該ガイド溝部14Bの開放された上端よりも上部側にスライダ20の下側可動部21Bに設けられた鍔部24Bが配置されることになる。
【0094】
また、図18に示すように、上述した如くに位置決めされてスライダ20が筐体本体10の背面10b上に載置された状態においては、スライダ20に設けられた回動シャフト25および鉤状部29aの先端が筐体本体10の背面10bに当接することになり、スライダ20は、全体として筐体本体10の背面10bから所定の距離を持って浮いた状態となる。
【0095】
次に、図19に示すように、スライダ20の下側可動部21Bを筐体本体10の背面10bに密着するように筐体本体10に対して押し込みつつ下方に押し下げることにより、下側可動部21Bに設けられた鍔部24Bを下側突出部10Bに設けられたガイド溝部14B内に挿入する。その際、図19および図20に示すように、リンク部22の第1連結部28aおよび第2連結部28bは、大きく開くように撓み変形することになり、これに伴って回動アーム27cも下方に移動しつつ大きく回動することになる。
【0096】
当該回動アーム27cの回動に伴い、図20に示すように、回動アーム27cに設けられた回動シャフト25も大きく回動することになる。その結果、図20および図21に示すように、回動シャフト25に設けられた一対の抜け止め部25aと筐体本体10の軸支孔15の周囲に設けられた一対の抜け止め部挿入用孔15aとが合致するように対向配置されることになる。この状態において、回動シャフト25を軸支孔15に挿入することにより、図19に示す状態とする。
【0097】
次に、図19に示す状態において、スライダ20の上側可動部21Aを斜め上方から筐体本体10の背面10bに密着するように筐体本体10に対して押し込むことにより、上側可動部21Aに設けられた上下一対の鍔部24Aを上側突出部10Aに設けられた一対のガイド溝部14B内にそれぞれ挿入する。このとき、筐体本体10の背面10bに当接している鉤状部29aは、当該鉤状部29aが設けられたロック部29の梁部分が撓むことにより、ロック溝部19の規制部19b内に案内されて収容されることになる。
【0098】
以上により、スライダ20が、筐体本体10に対して組付けられることになる。なお、組付け直後においては、電気機器の筐体1は、図10に示した係止解除状態を採ることになる。
【0099】
ここで、図20に示すように、係止状態にある場合のリンク部22の回動アーム27cの回動方向における位置を係止位置として基準にとると、回動シャフト25に設けられた一対の抜け止め部25aと筐体本体10の軸支孔15の周囲に設けられた一対の抜け止め部挿入用孔15aとが合致するように対向配置された場合の回動アーム27cの回動方向における位置である組付位置にまで回動アーム27cを到達させるためには、当該回動アーム27cを図中に示す角度γだけ回動させることが必要になる。
【0100】
この角度γは、回動アーム27cを係止位置から係止解除位置に到達させるために必要な上述した角度αよりもさらに大きい角度であるため、上記組付位置は、DINレール100に対して電気機器の筐体1を取付けたり取外したりする際の回動アーム27cの可動域内には含まれないことになる。したがって、上記組付構造を採用することにより、当該可動域においては、回動シャフト25に設けられた一対の抜け止め部25aが、回動シャフト25が軸支孔15から脱落することを防止する抜け止め機能を発揮することになる。
【0101】
換言すれば、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態において、係止解除状態よりもさらに上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに遠ざかる方向に向かってスライド移動させられた状態において、抜け止め部25aが配置されることとなる位置に対応した位置に、抜け止め部挿入用孔15aが設けられることにより、回動シャフト25が軸支孔15から脱落することが防止されるとともに、その組付けが可能とされることになる。
【0102】
図22は、上述した本実施の形態に基づいた第1変形例における電気機器の筐体のリンク部の動作を示す模式図である。上述した本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、係止状態において、リンク部22が平面視略N字状の形状を有するように構成した場合を例示したが、必ずしもリンク部22を当該構成とする必要はない。
【0103】
たとえば、図22に示すように、係止状態において、上側スライドアーム27aおよび下側スライドアーム27bが、いずれも回動アーム27cと略直交することとなるようにリンク部22を形成してもよい。ただし、この場合にも、図22に示すように、回動アーム27cと上側スライドアーム27aおよび下側スライドアーム27bとを連結する第1連結部28aおよび第2連結部28bが、いずれも回動軸Oから遠ざかる方向に向かって膨出する弧状形状を有するように構成することが必要である。このように構成することにより、上述した各種の効果を得ることが可能になる。
【0104】
図23および図24は、上述した本実施の形態に基づいた第2変形例および第3変形例における電気機器の筐体のリンク部の筐体本体への組付構造を示す概略斜視図である。上述した本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、リンク部22の回動アーム27cに設けられた回動シャフト25に一対の抜け止め部25aが突設されるとともに、筐体本体10の背面10bに設けられた軸支孔15の周囲に一対の抜け止め部挿入用孔15aが穿設された構成の組付構造を採用した場合を例示したが、必ずしも当該組付構造を採用する必要はない。
【0105】
たとえば、図23に示すように、リンク部22の回動アーム27cに設けられた回動シャフト25に一対の抜け止め部25aを突設し、筐体本体10の背面10bに設けられた軸支孔15の周囲にスリット状の切り欠きを複数設けることにより、当該スリット状の切り欠きによって挟み込まれた部分を撓み変形可能な一対の抜け止め部挿入用舌片15bとして構成してもよい。
【0106】
このように構成した場合には、回動シャフト25を軸支孔15に挿入する際に、抜け止め部挿入用舌片15bに抜け止め部25aが当接することで抜け止め部挿入用舌片15bが撓み変形することになり、これにより抜け止め部25aの挿入が可能となり、挿入後においては、当該抜け止め部挿入用舌片15bが返し(ストッパ)となって回動シャフト25が軸支孔15から脱落することが防止される。
【0107】
また、たとえば、図24に示すように、リンク部22の回動アーム27cに設けられた回動シャフト25にフランジ状の抜け止め部25aを突設し、筐体本体10の背面10bに設けられた軸支孔15の周囲に抜け止め部挿入用孔15aを穿設するとともに、軸支孔15と抜け止め部挿入用孔15aとの境界部分にスリット状の切り欠きを一対設け、当該スリット状の切り欠きと抜け止め部挿入用孔15aとによって挟み込まれた部分を撓み変形可能な一対の抜け止め部挿入用舌片15bとして構成してもよい。
【0108】
このように構成した場合にも、回動シャフト25を軸支孔15に挿入する際に、抜け止め部挿入用舌片15bに抜け止め部25aが当接することで抜け止め部挿入用舌片15bが撓み変形することになり、これにより抜け止め部25aの挿入が可能となり、挿入後においては、当該抜け止め部挿入用舌片15bが返し(ストッパ)となって回動シャフト25が軸支孔15から脱落することが防止される。
【0109】
なお、図23および図24に示した如くのリンク部22の筐体本体10への組付構造を採用した場合には、回動シャフト25の回動方向における全域において抜け止め機能が発揮されることになるため、DINレール100に対して電気機器の筐体1を取付けたり取外したりする際の回動アーム27cの可動域内に、筐体本体10に対する回動アーム27cの組付位置が含まれるように構成してもよい。
【0110】
図25は、上述した本実施の形態に基づいた第4変形例における電気機器の筐体のスライダの斜視図であり、図26は、左側ケーシングの斜視図である。また、図27は、当該第4変形例における電気機器の筐体の係止状態を示す要部断面図である。なお、図27は、筐体本体10にスライダ20を組付けた状態において、電気機器の筐体1を前方から見てこれを左右に二分するように切断した場合の下側突出部10B近傍の断面図である。
【0111】
上述した本実施の形態における電気機器の筐体1にあっては、係止状態において、上側可動部21Aと下側可動部21Bとが互いに遠ざかる方向にスライド移動することを規制する第1ロック機構が、スライダ20に設けられた鉤状部29aと筐体本体10に設けられた収容部19aとによって構成されることにより、当該第1ロック機構が、スライダ20の上側可動部21Aと筐体本体10の上側ガイド部13Aとの間にのみ設けられた構成とした場合を例示したが、さらにスライダ20の下側可動部21Bと筐体本体10の下側ガイド部13Bとの間に第1ロック機構を設ける構成としてもよい。
【0112】
その場合には、たとえば図25に示すように、スライダ20の下側可動部21Bの下端から下方に向けて棒状に延びるロック部30を形成するとともに、図26に示すように、筐体本体10の下側ガイド部13Bを構成する部分の左側ケーシング11aの背面10bの所定位置に、その底面が傾斜した形状を有する傾斜溝部18を形成することにより、これらによって第1ロック機構を構成すればよい。
【0113】
ロック部30は、電気機器の筐体1の後方に向けて膨らむ湾曲形状を有するように構成されることが好ましく、その先端に鉤状の先端部30aを有している。また、傾斜溝部18は、上側に配置された第1傾斜面18aと、下側に配置された第2傾斜面18bとを有している。なお、第1傾斜面18aは、第2傾斜面18bに比べて、比較的急峻な傾斜面にて構成されている。
【0114】
これにより、図27に示すように、スライダ20が筐体本体10に組付けられた状態においては、スライダ20に設けられた先端部30aが筐体本体10に設けられた傾斜溝部18内に位置することになる。より詳細には、係止状態においては、図示するように、先端部30aが第1傾斜面18aに当接することになり、係止解除状態においては、その図示は省略するが、先端部30aが第2傾斜面18bに当接することになる。
【0115】
ここで、第1傾斜面18aは、比較的緩やかであるものの所定の傾きを有する傾斜面にて構成されているため、相当程度の大きさの外力が加えられない限り、先端部30aが当該第1傾斜面18aを越えて第2傾斜面18bに移動することはない。したがって、当該第1傾斜面18aがストッパとして機能することになり、筐体本体10がDINレール100に取付けられた状態が安定的に維持されることになる。
【0116】
そのため、上記のように構成した場合には、第1ロック機構が、スライダ20の上側可動部21Aと筐体本体10の上側ガイド部13Aとの間およびスライダ20の下側可動部21Bと筐体本体10の下側ガイド部13Bとの間の双方に設けられることになるため、係止状態においてDINレール100に取付けられた電気機器の筐体1がぐらついたり脱落したりすることがより確実に防止できることになる。
【0117】
なお、係止状態から係止解除状態へ移行する際にロック部30が第1傾斜面18aを乗り越えて第2傾斜面18b上に移動するとともに、係止解除状態から係止状態へ移行する際にロック部30が第1傾斜面18aに確実に当接するようにするためには、当該ロック部30が弾性変形することが必要となる。そのため、図27に示すように、ロック部30の根元部30bを他の部分に比べて細く構成すること等により、ロック部30がよりスムーズに弾性変形するように構成することが好ましい。
【0118】
(実施の形態2)
図28は、本発明の実施の形態2における電気機器の筐体の係止状態を示す斜視図であり、図29は、本実施の形態における電気機器の筐体のスライダの斜視図である。また、図30は、本実施の形態における電気機器の筐体の係止状態および係止解除状態を示す要部背面図である。
【0119】
図28に示すように、本実施の形態における電気機器の筐体2は、上述した実施の形態1における電気機器の筐体1と比較した場合に、筐体本体10がより幅広の形状を有している点と、スライダ20にリンク部22A,22Bが対となるように左右に一対設けられている点とにおいて、主として相違している。
【0120】
図28および図29に示すように、スライダ20は、単一の部材にて構成されており、上側可動部21Aと、下側可動部21Bと、これら上側可動部21Aと下側可動部21Bとを連結するようにこれらの間において並行して位置する左側リンク部22Aおよび右側リンク部22Bとを主として有している。
【0121】
ここで、左側リンク部22Aおよび右側リンク部22Bは、第2の方向である電気機器の筐体2の前後方向に沿って見た場合に線対称形状を有しており、そのそれぞれが、上側スライドアーム27a、下側スライドアーム27b、回動アーム27c、第1連結部28aおよび第2連結部28bを含んでいる。
【0122】
また、スライダ20の上側可動部21Aには、DINレール100の一方の被係止部101Aを係止するために上側係止部26A1,26A2が設けられており、スライダ20の下側可動部21Bには、DINレール100の他方の被係止部101Bを係止するために下側係止部26B1,26B2が設けられている。
【0123】
これら上側係止部26A1,26A2および下側係止部26B1,26B2は、それぞれスライダ20の左右方向の端部に対応するように配置されている。これにより、DINレール100の延びる方向に沿ってより広い範囲で電気機器の筐体2がDINレール100に係合することになり、より安定的な固定が実現できることになるとともに、スライダ20を射出成形にて製作する際に上述した係止部を成形するために必要になる開口部の開口面積が減少することでスライダ20の機械的強度が高まることにもなる。
【0124】
このように構成した場合には、図30に示すように、上側可動部21Aと下側可動部21Bとが近づいた状態である係止状態において、左側リンク部22Aおよび右側リンク部22Bがいずれも平面視した場合に略N字状の形状を有することになり、上側可動部21Aと下側可動部21Bとが遠ざかった状態である係止解除状態において、左側リンク部22Aおよび右側リンク部22Bの第1連結部28aおよび第2連結部28bがそれぞれ大きく撓むことによって大きく開いた状態となる。
【0125】
したがって、線対称となるように左右に一対設けられた左側リンク部22Aおよび右側リンク部22Bの各々の回動アーム27cが、それぞれ回動軸O1,O2を回転中心として回動することにより、上側可動部21Aと下側可動部21Bとが近づいたり遠ざかったりすることになるため、上述した実施の形態1における場合と同様に、ワンタッチ操作での電気機器の筐体2のDINレール100への取付けおよびDINレール100からの取外しが可能になる。
【0126】
なお、スライダ20に左側リンク部22Aおよび右側リンク部22Bを線対称となるように左右に一対設けることにより、上述した取付け動作および取外し動作の際にスライダ20に加わる力の均衡化も図られることになり、スライダ20のスライド動作がより安定することにもなる。
【0127】
上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、スライダ20が筐体本体10の背面10b上に露出した状態で組付けられるように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもそのように構成する必要はなく、スライダ20が筐体本体10の内部に配置されていてもよい。ただし、その場合にも、少なくとも係止状態において上側係止部26Aおよび下側係止部26Bが取付溝部10C内に配置されることとなるように、筐体本体10およびスライダ20を構成することが必要である。
【0128】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、スライダ20のリンク部22に設けられた回動アーム27cの回動軸O(またはO1,O2)が、筐体本体10の背面10bに直交するように配置された場合を例示して説明を行なったが、必ずしもそのように構成する必要はなく、当該回動軸O(またはO1,O2)が筐体本体10の側面に直交するように配置されていてもよい。
【0129】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、スライダ20に回動シャフト25が突設されるとともに筐体本体10に軸支孔15が穿設された場合を例示して説明を行なったが、必ずしもそのように構成する必要はなく、スライダ20に孔を穿設するとともに筐体本体10にシャフトを突設し、当該孔に当該シャフトを挿通させることでスライダ20の回動アーム27cが回動可能に筐体本体10によって支承されるように構成してもよい。
【0130】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、スライダ20の上側可動部21Aのみに操作摘み23を設けた場合を例示して説明を行なったが、当該操作摘み23をスライダ20の下側可動部21Bのみに設けることとしてもよいし、上側可動部21Aおよび下側可動部21Bの両方に設けることとしてもよい。
【0131】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0132】
1,2 電気機器の筐体、10 筐体本体、10A 上側突出部、10B 下側突出部、10C 取付溝部、10a 前面、10b 背面、11a 左側ケーシング、11b 右側ケーシング、12a,12b 内部空間、13A 上側ガイド部、13B 下側ガイド部、14A,14B ガイド溝部、15 軸支孔、15a 抜け止め部挿入用孔、15b 抜け止め部挿入用舌片、18 傾斜溝部、18a 第1傾斜面、18b 第2傾斜面、19 ロック溝部、19a 収容部、19b 規制部、20 スライダ、21A 上側可動部、21B 下側可動部、22 リンク部、22A 左側リンク部、22B 右側リンク部、23 操作摘み、24A,24B 鍔部、25 回動シャフト、25a 抜け止め部、26A,26A1,26A2 上側係止部、26B,26B1,26B2 下側係止部、27a 上側スライドアーム、27b 下側スライドアーム、27c 回動アーム、28a 第1連結部、28b 第2連結部、29 ロック部、29a 鉤状部、30 ロック部、30a 先端部、30b 根元部、100 DINレール、101A,101B 被係止部、O,O1,O2 回動軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向における両端に外側に向かって突設された一対の被係止部を有する取付用レールに対してその取付けが可能とされた電気機器の筐体であって、
機器本体が収容される筐体本体と、
前記筐体本体の背面に組付けられた単一の部材からなるスライダとを備え、
前記筐体本体の背面には、取付用レールを受け入れるための取付溝部と、前記取付溝部を挟み込むように位置する第1突出部および第2突出部とが設けられ、
前記スライダは、前記第1突出部と前記第2突出部とを結ぶ方向である第1の方向に沿ってスライド移動可能に構成された第1可動部および第2可動部と、前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に連動してスライド移動するように前記第1可動部と前記第2可動部とを連結するリンク部とを有し、
前記第1可動部は、前記第1突出部によってスライド移動可能に支持され、
前記第2可動部は、前記第2突出部によってスライド移動可能に支持され、
前記第1可動部の前記取付溝部に面する部分には、前記取付溝部側に向かって突出する第1係止部が設けられ、
前記第2可動部の前記取付溝部に面する部分には、前記取付溝部側に向かって突出する第2係止部が設けられ、
前記リンク部は、前記第1可動部から前記第1の方向に沿って連続して延びる第1スライドアームと、前記第2可動部から前記第1の方向に沿って連続して延びる第2スライドアームと、前記筐体本体によって回動可能に支承され、前記第1の方向と交差する方向に沿って延びる回動アームと、前記第1スライドアームの先端と前記回動アームの一端とにそれぞれ連続し、前記第1スライドアームと前記回動アームとを連結する第1連結部と、前記第2スライドアームの先端と前記回動アームの他端とにそれぞれ連続し、前記第2スライドアームと前記回動アームとを連結する第2連結部とを含み、
前記第1連結部および前記第2連結部の各々は、前記回動アームの回動軸から遠ざかる方向に向かって膨出する弧状形状を有し、
前記第1可動部と前記第2可動部とが近接配置された第1の状態において、前記第1係止部および前記第2係止部がそれぞれ前記取付溝部内に配置されることにより、前記取付溝部内に受け入れられた取付用レールの一対の被係止部のうちの一方が前記筐体本体の背面と直交する第2の方向において前記第1係止部に係止されるとともに、取付用レールの一対の被係止部のうちの他方が前記第2の方向において前記第2係止部に係止され、これにより前記筐体本体が取付用レールに取付けられ、
前記第1可動部と前記第2可動部とが前記第1の状態よりも遠隔配置された第2の状態において、前記第1係止部および前記第2係止部がそれぞれ前記取付溝部から退避して配置されることにより、前記筐体本体が前記取付溝部内に受け入れられた取付用レールから取外されるとともに、弧状形状を有する前記第1連結部および前記第2連結部のそれぞれが開くように撓むことにより、前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに近づく方向に弾性付勢されるように構成された、電気機器の筐体。
【請求項2】
前記第1連結部が、前記第1の状態において、前記第2連結部よりも前記第2可動部寄りの位置に配置されている、請求項1に記載の電気機器の筐体。
【請求項3】
前記第1の状態において、前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに遠ざかる方向にスライド移動することを規制する第1ロック機構をさらに備えた、請求項1または2に記載の電気機器の筐体。
【請求項4】
弧状形状を有する前記第1連結部および前記第2連結部によって発現される弾性付勢力に抗することにより、前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに近づく方向にスライド移動することを規制する第2ロック機構をさらに備えた、請求項3に記載の電気機器の筐体。
【請求項5】
前記回動アームに回動シャフトが突設されるとともに、前記筐体本体に軸支孔が穿設され、前記軸支孔に前記回動シャフトが挿入されることにより、前記回動アームが前記筐体本体によって回動可能に支承されている、請求項4に記載の電気機器の筐体。
【請求項6】
前記回動シャフトに抜け止め部が突設されるとともに、前記軸支孔の周囲に抜け止め部挿入用孔が穿設され、これにより前記回動シャフトが前記軸支孔から脱落することが防止されるとともに、その組付けが可能とされている、請求項5に記載の電気機器の筐体。
【請求項7】
前記第2ロック機構によって前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに近づく方向にスライド移動することが規制された状態よりも、さらに前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに遠ざかる方向にスライド移動させられた状態において、前記抜け止め部が配置されることとなる位置に対応した位置に、前記抜け止め部挿入用孔が配置されている、請求項6に記載の電気機器の筐体。
【請求項8】
前記第1可動部および前記第2可動部のうちの少なくとも一方に、前記第1可動部および前記第2可動部のスライド移動を操作するための操作摘みが設けられている、請求項1から7のいずれかに記載の電気機器の筐体。
【請求項9】
前記操作摘みが、前記第1の方向に沿って前記筐体本体から外側に向かって引き出されている、請求項8に記載の電気機器の筐体。
【請求項10】
前記取付用レールに対する前記筐体本体の取付けの際に、前記第1係止部および前記第2係止部に取付用レールの一対の被係止部が当接することによって前記第1可動部と前記第2可動部とが互いに遠ざかる方向にスライド移動するように、前記第1係止部の背面および前記第2係止部の背面がそれぞれ傾斜面にて構成されている、請求項1から9のいずれかに記載の電気機器の筐体。
【請求項11】
前記リンク部が、前記取付溝部の底面上に配置されている、請求項1から10のいずれかに記載の電気機器の筐体。
【請求項12】
前記リンク部が、前記第1可動部と前記第2可動部とを連結するように並行して一対設けられ、
前記一対のリンク部が、前記第2の方向に沿って見た場合に線対称形状を有している、請求項1から11のいずれかに記載の電気機器の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−102142(P2013−102142A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222951(P2012−222951)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】