説明

電気機器収納ラック用の配電構造

【課題】配電系統の一部で電気的な異常や短絡が発生した場合でも、その影響が他の配電系統に及ぶのを解消して、電気的なトラブルを最小限化できる電気機器収納ラック用の配電構造を提供する。
【解決手段】電気機器2を収容するラック本体3に対して、電圧が異なる複数の電源を供給する配電構造である。配電構造は、電圧が異なる電源ケーブル20・21と、複数個の主分配コンセント22、および副分配コンセント23と、複数の高圧給電系統24と、複数の低圧給電系統25などで分岐し独立した構造とする。さらに、高圧給電系統24は、複数の高圧コンセントバー45を電気的に接続して構成する。各低圧給電系統25は低圧コンセントバー55で構成する。主分配コンセント22および副分配コンセント23を、ラック本体3の外面に露出する状態で、ラック本体3の上面の装着壁15に集約配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばサーバーラックなどの電気機器収納ラックに設けられる配電構造に関する。配電構造は、分配用コンセントおよびコンセントバーなどの配電器具で構成してある。
【背景技術】
【0002】
この種の配電構造は、例えば特許文献1に見ることができる。そこでは、電気機器を収納するためのラックの内部に縦長の配線ダクトを配置し、配線ダクトの一部に開口した縦長の窓に多数個の電源コンセントを直線列状に配置している。ラック内に収納した電気機器の電源プラグを電源コンセントに接続することにより、各機器を電源に接続できる。
【0003】
本発明の配電構造においては、サーバーラックの内部にコンセントバーを配置して、ラック内に収容した各サーバーの電源プラグをコンセントバーに接続するが、この種のコンセントバーは、例えば特許文献2に公知である。そこでは、四角棒状のコンセントバー本体の長手方向に沿って多数個のコンセントを直線列状に配置している。コンセントバー本体の一端には、各コンセントから導出した電線を接続するための端子台が設けてある。コンセントバーは、電気機器を収納するためのラックのフレームに取付けて使用する。
【0004】
特許文献3には、サーバー、ルーターなどの電気機器を収納するラック用の分電盤ユニットが開示されている。分電盤ユニットは、断面がコ字状の筐体の内部にブレーカーと複数のコンセントを配置し、筐体の開口面を揺動開閉可能に支持されたパネルで覆って構成してある。分電盤ユニットは、ラックのマウントアングルに取付けて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−300744号公報(段落番号0012、図1、図2)
【特許文献2】特開2004−296223号公報(段落番号0009、図1)
【特許文献3】特開2003−070110号公報(段落番号0010、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の配電構造に従うと、サーバーラックに収容した多数個のサーバーの収容台数に見合うコンセントバーをラックフレームに装着して、個々のサーバーに配電することになる。しかし、サーバーラック1台あたりのサーバーの収容台数は多くなる傾向にあり、それに伴いサーバーラック1台あたりのコンセントバーの使用個数は増加しており、全てのコンセントバーを使い勝手のよいスペースに配置するのが難しくなっている。とくに、サーバーラック内にハーフサーバーを収容する場合には、フルサーバーを収容する場合の2倍の数のコンセントが必要となり、コンセントバーをいかに配置するかが問題となる。また、サーバーラックには電源ケーブル以外に通信ケーブルも配線しなければならない。さらに近年では、エネルギー効率を上げ、省電力化を図るためにサーバーの電源として200Vの電源が多用されつつあるが、200Vの電源とは別に、表示装置あるいは空調用ファン等の駆動電源として100Vの電源を用意する必要がある。そのため、ラック内に200V用のコンセントバーと、100V用のコンセントバーと、通信ケーブルを配置するためのスペースを確保する必要がある。
【0007】
サーバーラックにおけるサーバーの収容台数が多くなるのに伴って、配電構造における電気的な異常や短絡が問題となる。例えば、電源に近い側に配置したコンセントバーで電気的な異常や短絡が発生し、あるいはトラッキング等により電源プラグが発火した場合には、問題を起したコンセントバーに接続されたコンセントバーにもその影響が及び、一度に多数個のサーバーがダウンしてしまうおそれがある。こうした、電気的なトラブルを解消するには、電源系統をできるだけ分岐して独立させるとよいが、そうすると配電構造が複雑になり、その配置スペースを確保することがさらに困難となる。また、メンテナンスのためにサーバーをラック本体に対して着脱する際に配電構造が邪魔になり、メンテナンス作業に余分な手間がかかるおそれもある。
【0008】
本発明の目的は、配電系統の一部で電気的な異常や短絡が発生した場合でも、その影響が他の配電系統に及ぶのを解消して、電気的なトラブルを最小限化できる電気機器収納ラック用の配電構造を提供することにある。
本発明の目的は、サーバーラックに対して電圧が異なる複数の電源を供給する場合であっても、分配用コンセントおよびコンセントバーなどの配電器具を無理なく配置でき、しかもメンテナンス作業の手間を軽減できる、使い勝手に優れた電気機器収納ラック用の配電構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気機器収納ラック用の配電構造は、一群の電気機器2を収容するラック本体3に対して、電圧が異なる複数の電源を供給する。配電構造は、高電圧の電源ケーブル20および低電圧の電源ケーブル21と、複数個の高圧電源用の主分配コンセント22と、少なくともひとつの低圧電源用の副分配コンセント23と、ラック本体3の内部に配置される複数の高圧給電系統24と、複数の低圧給電系統25とを含む。主分配コンセント22および副分配コンセント23は、それぞれ箱状の筐体26・36と、筐体26・36に組付けた複数の分岐コンセント27・37を備えている。各高圧給電系統24は、複数の高圧コンセントバー45を電気的に接続して構成する。各低圧給電系統25は低圧コンセントバー55で構成する。主分配コンセント22と電源ケーブル20、および副分配コンセント23と電源ケーブル21とは、各電源ケーブル20・21から分岐した1次主電源コード28および1次副電源コード38を介して接続する。主分配コンセント22と高圧コンセントバー45、および副分配コンセント23と低圧コンセントバー55とは、各分岐コンセント27・37に接続した複数の2次主電源コード46、および複数の2次副電源コード56を介して接続する。主分配コンセント22および副分配コンセント23を、ラック本体3の上面に立設した装着壁15に集約配置して、ラック本体3の外の開放空間へ向かって露出してあることを特徴とする。
【0010】
1次主電源コード28の中途部に着脱可能なコネクタープラグ31とコネクターソケット32を設ける。接続した状態のコネクタープラグ31およびコネクターソケット32は、装着壁15の上部に張り出したコード支持棚16に載置し、固定具33でコード支持棚16に固定する。筐体26・36を装着壁15に装着した状態における分岐コンセント27・37は、装着壁15と平行な筐体26・36の接続壁面26a・36aに露出させる。
【0011】
ラック本体3の内部に設けられる各高圧給電系統24は、複数個の高圧コンセントバー45を電気的に接続して構成する。各高圧コンセントバー45は、ラック本体3の出入口5に臨むラックフレーム4に沿って縦列状に固定する。各高圧コンセントバー45のソケット45aがラック本体3の出入口5を指向する状態で、各高圧コンセントバー45をラックフレーム4に固定する。
【0012】
電気機器は、ラックフレーム4に多段状に配置した一群のサーバー2からなる。ラック本体3の上面に、サーバー2において熱交換した後の排気を天井空間8へ送給案内するダクト構造を設ける。ダクト構造は、ラック本体3の上壁に固定される四角筒状のダクトベース11と、ダクトベース11の上面に固定されるダクト部12と、ダクトベース11の内部に配置されて、排気をダクト部12の側へ送給するファンユニット13を備えている。装着壁15を兼ねるダクトベース11の周囲壁に、主分配コンセント22および副分配コンセント23を集約配置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、電源ケーブル20・21と、複数個の主分配コンセント22と、副分配コンセント23と、主分配コンセント22において分岐される複数の高圧給電系統24と、副分配コンセント23において分岐される低圧給電系統25などで配電構造を構成した。さらに、各高圧給電系統24は、複数の高圧コンセントバー45を電気的に接続して構成した。このように、電気機器2用の配電構造を分岐し独立した構造にすると、例えば高圧給電系統24の一部で電気的な異常や短絡が発生した場合でも、その影響が他の高圧給電系統24に及ぶのを解消できる。また、分岐されたひとつの給電系統が発火した場合でも、分岐された他の給電系統が延焼するのを防止できる。従って、一度に多数個の電気機器2が作動を停止し、あるいは機能不全に陥るのを解消して、電気的なトラブルを最小限化できる。
【0014】
また、高圧給電系統24の一部で電気的な異常や短絡が発生した場合には、機能が損なわれた高圧コンセントバー45を交換するだけで配電機能を復旧できるので、配電機能の復旧をより少ない手間と時間で迅速に行なえる。さらに、主分配コンセント22および副分配コンセント23を装着壁15に集約配置して、ラック本体3の外面の開放空間へ向かって露出させるので、両コンセント22・23の点検、あるいは2次主電源コード46および2次副電源コード56の接続あるいは分離操作を、ラック本体3の外の開放空間で簡便に行なうことができる。加えて、配電構造を構成する各部材のうちで、複数の高圧コンセントバー45および低圧コンセントバー55のみをラック本体3の内部に配置するので、ラック内で配電構造が占めるスペースを少なくでき、その分だけ配電構造を合理的に配置して、使い勝手を向上できる。
【0015】
1次主電源コード28の中途部に着脱可能なコネクタープラグ31とコネクターソケット32を設けると、これら両者31・32を分離しあるいは接続することで、電源ケーブル20と配電構造との間の電気的な接続状態を迅速に切換えることができる。従って、ラック本体3に収容した一群の電気機器2の点検あるいは交換などの作業を行う場合に、作業の対象となるラック本体3の電源、あるいは作業対象の給電系統の電源のみを必要に応じて遮断できる。また、稼動中の他のラック本体3における電気機器2の作動を停止する必要がないので、サービスの提供等を継続した状態のままで、電気機器2の点検、交換作業などを行える。
【0016】
また、コード支持棚16に載置したコネクタープラグ31およびコネクターソケット32を、固定具33でコード支持棚16に固定するので、地震等の災害時に1次主電源コード28が跳ね飛ばされて、コネクタープラグ31が分離するのを防止できる。また、筐体26・36に設けた分岐コンセント27・37を、装着壁15と平行な筐体26・36の接続壁面26a・36aに露出させるので、2次主電源コード46の電源プラグ47の着脱を主分配コンセント22と正対した状態で的確に行える。同様に、2次副電源コード56の電源プラグ57の着脱を副分配コンセント23と正対した状態で的確に行える。
【0017】
高圧給電系統24が、複数個の高圧コンセントバー45を電気的に接続して構成してあると、電気的な異常や短絡が発生した高圧コンセントバー45を交換するだけで配電機能を復旧できるので、配電機能の復旧をより少ない手間と時間で迅速に行なえる。また、ソケット45aがラック本体3の出入口5を指向する状態で、各高圧コンセントバー45をラックフレーム4に固定すると、各電気機器2の高圧コンセントバー45に対する接続や分離を、接続すべきソケット45aを目視しながら簡便に、しかも的確に行える。
【0018】
ラック本体3の上部にダクト構造が設けてあるサーバーラック1において、装着壁15を兼ねるダクトベース11の周囲壁に、主分配コンセント22および副分配コンセント23を集約配置すると、先の周囲壁を利用する分だけ配電構造を簡素化できる。また、ラック本体3に固定されたダクトベース11の周囲壁を装着壁15として利用するので、装着壁15を別途設ける場合に比べて、サーバーシステムを構築する費用を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る配電構造の要部を示す背面図である。
【図2】本発明に係る配電構造を備えたサーバーシステムの背面図である。
【図3】本発明に係るサーバーラックの縦断側面図である。
【図4】本発明に係る配電構造の概略を示す配線説明図である。
【図5】本発明に係る主分配コンセントを示す背面図である。
【図6】本発明に係る高圧コンセントバーの取付構造を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例) 図1ないし図6は、本発明をサーバーシステムに適用した実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2、図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0021】
図2において、符号1は床に設置されたサーバーラック(電気機器収納ラック)であり、その内部にはサーバー(電気機器)2が多段状に収容してある。サーバーラック1は、ラック本体3と、ラック本体3の内部に設けたラックフレーム4と、ラック本体3の前面および後面の出入口5を開閉する揺動可能なドア6などで構成してある。サーバー2は、フルサーバーに比べて前後寸法が小さなハーフサーバーであって、図3に示すようにラック本体3の前後の出入口5からラックフレーム4に実装されて、排気面同士が間隔をあけて対向する状態で取付けてある。
【0022】
前後のサーバー2の排気面の間には、各サーバー2から排出された熱気を天井へ向かって流動案内する排気通路7が設けてある。図示していないが、各サーバー2の内部には送風ファンが設けてあり、送風ファンを駆動することにより、ドア6のドアパネル6aを介してサーバー室内の冷気を吸込み、内部の発熱部品を冷却でき、熱交換後の排気は排気面から排気通路7へ排出できる。排気通路7の左右側面は区画壁で塞いであり、従って、サーバー2から排気通路7に排出された熱気が外へ漏れてサーバーラック1に充満することはない。各サーバー2への冷気の供給を効率よく行うために、ドアパネル6aはハニカムメッシュで形成してある。
【0023】
ラック本体3の内部の排気通路7へ放出された排気は、ラック本体3の上部に設けたダクト構造を介して天井空間8へ強制的に送給される。図3に示すようにダクト構造は、ラック本体3の上壁に固定される四角筒状のダクトベース11と、ダクトベース11の上面に固定されるダクト部12と、ダクトベース11の内部に配置されて、排気通路7内の排気をダクト部12を介して天井空間8へ送給するファンユニット13と、導風ダクト14などで構成してある。ダクトベース11の後側の周囲壁は装着壁15を兼ねており、この装着壁15に後述する主分配コンセント22、および副分配コンセント23が集約配置されて、ラック本体3の外の開放空間に露出させてある。各コンセント22・23、あるいはコード類の点検作業等を容易化するためである。装着壁15の上部にはコード支持棚16がブラケット19で支持されて、後ろ向きに張出してある(図1参照)。コード支持棚16は、パンチングメタル、あるいはエキスパンドメタルで形成してある。
【0024】
ダクト部12は、ダクトベース11に固定される固定ダクト12aと、固定ダクト12aに対して上下スライドする可動ダクト12bとからなり、いずれも不燃ダンボールを素材にして構成してある。ファンユニット13は複数のファンで構成してある。導風ダクト14の内部には、排気の吸込み方向を前後に切換えるシャッター17が配置してある。シャッター17を図3に示す状態から、時計回転方向へ90度回動すると、導風ダクト14の後半部が開放されて、フルサーバーを実装したラック本体3の後部に設けられる排気通路7内の排気を天井空間8へ送給できる。各図において符号18は、後述する電源ケーブル20・21および通信ケーブルなどをラック列に沿って支持するケーブルブルラックである。
【0025】
図示していないが、天井空間8に達した排気は、別室に設けた空気調和機へ送給されて冷却され、天井内に配置した冷気ダクトを介して戻され、天井に開口した冷気吹出口からサーバー室内へ吹出される。この冷気の循環によって、サーバー2を適温状態に保持している。冷気吹出口は、サーバーラック1のラック列の間の通路に面して天井の多数個所に開口してある。
【0026】
一群のサーバー2を収容するラック本体3には、各サーバー2を電源ケーブル20に接続し、さらにファンユニット13などの補助機器を電源ケーブル21に接続するための配電構造が設けてある。
【0027】
図4において配電構造は、3個の高圧電源用の主分配コンセント22と、低圧電源用の副分配コンセント23と、ラック本体3の内部に配置される4系統の高圧給電系統24と、2系統の低圧給電系統25とを備えている。3個の主分配コンセント22のうちのひとつは、将来のサーバー増設に備えて設けた予備のコンセントであり、この実施例では、図1に示すように、下段側の主分配コンセント22を予備用として、2系統の高圧給電系統24を増設できるようにした。
【0028】
図5において、主分配コンセント22は、プレス成形された四角箱状の金属板製の筐体26と、筐体26の接続壁面26aに組付けた2個の分岐コンセント27と、1次主電源コード28を接続するためのケーブルクランプ29を備えている。主分配コンセント22は、垂直の装着壁15に4個のビスで横長姿勢に固定されて、分岐コンセント27のコンセント口が、装着壁15と平行な接続壁面26aにおいて開口する向きに取付けてある。2個の分岐コンセント27は、1次主電源コード28に対して並列接続してある。分岐コンセント27を、装着壁15と平行な筐体26の接続壁面26aに露出させると、2次主電源コード46の電源プラグ47の着脱を各主分配コンセント22と正対した状態で的確に行える。
【0029】
1次主電源コード28は、200Vの電源を供給する電源ケーブル20から分岐されており、その中途部がコネクタープラグ31とコネクターソケット32を介して、接続ないし分離可能に接続してある。接続した状態のコネクタープラグ31およびコネクターソケット32は、装着壁15の上部のコード支持棚16に載置されて、結束バンド(固定具)33で分離不能にコード支持棚16に固定してある(図1参照)。なお、予備用の主分配コンセント22も、1次主電源コード28を介して電源ケーブル20に接続してある。上記のように、コネクタープラグ31およびコネクターソケット32を、結束バンド(固定具)33でコード支持棚16に固定すると、地震等の災害時に1次主電源コード28が跳ね飛ばされて、コネクタープラグ31が分離するのを防止できる。
【0030】
副分配コンセント23は、プレス成形された四角箱状の金属板製の筐体36と、筐体36の接続壁面36aに組付けた2個の分岐コンセント37と、1次副電源コード38を接続するためのソケット39を備えている。副分配コンセント23は、垂直の装着壁15に4個のビスで横長姿勢に固定されて、分岐コンセント37のコンセント口が、装着壁15と平行な接続壁面36aにおいて開口する向きに取付けてある。これにより、副分配コンセント23および先の主分配コンセント22は、それぞれの分岐コンセント27・37のコンセント口が、ダクトベース11の後側の通路に臨む開放空間に向かって開口するように取付けられる。2個の分岐コンセント37は、1次副電源コード38に対して並列接続してある。1次副電源コード38は、100Vの電源を供給する電源ケーブル21から分岐されており、その導出端に設けたフランジ付きのプラグ40が、副分配コンセント23のソケット39に接続される。
【0031】
高圧給電系統24は、2個の高圧コンセントバー45・45を直列接続して構成する。高圧コンセントバー45は、上下に長い四角棒状の本体部に20個のソケット45aを配置した市販品からなる。本体部の上端から、2次主電源コード46が導出され、その導出端に電源プラグ47が設けてある。また、本体部の下端には、他の高圧コンセントバー45を接続するための分配コンセント48が設けてある。上側に設けた高圧コンセントバー45の2次主電源コード46の長さは、主分配コンセント22に接続するために2mに設定してある。これに対し、下側に設けた高圧コンセントバー45の2次主電源コード46の長さは、上側の高圧コンセントバー45に接続するだけであるため0.5mと短く設定してある。下側の高圧コンセントバー45の電源プラグ47を、上側の高圧コンセントバー45の分配コンセント48に接続することにより、上下の高圧コンセントバー45のそれぞれに200Vの電流が供給される。
【0032】
4系統の各高圧給電系統24を構成する高圧コンセントバー45は、図6に示すように、前後の出入口5・5に臨む状態でラックフレーム4に沿って縦列状に固定してある。詳しくは、ラックフレーム4の上下4個所に取付金具49をビス50で固定し、上下に隣接する高圧コンセントバー45の上端および下端を、それぞれ一対の取付金具49にビス51で固定する。ラックフレーム4に固定された高圧コンセントバー45のソケット45aは、ラック本体3の出入口5・5を指向させてある。したがって、各サーバー2から導出したコードの電源プラグ52を高圧コンセントバー45に接続する作業を、接続すべきソケット45aを目視しながら簡便に行うことができる。また、各サーバー2をラックフレーム4から取外すときに、各サーバー2から導出したコードや電源プラグ52が出入れの邪魔になることもない。
【0033】
低圧給電系統25は、副分配コンセント23の各分岐コンセント37に接続した、低圧コンセントバー55で構成する。低圧コンセントバー55は、左右に長い四角棒状の本体部に4個のソケット55aを配置した市販品からなる。本体部の一端から、2次副電源コード56が導出され、その導出端に、先の分岐コンセント37に接続される電源プラグ57が設けてある。
【0034】
低圧コンセントバー55は、ラックフレーム4の上端同士を繋ぐ前後一対のアングル状の鋼材に装着する。そのために、本体部の装着面の左右2個所に磁石を埋設し、磁石の磁気吸着作用で低圧コンセントバー55を先の鋼材に固定している。2個の低圧コンセントバー55の2次副電源コード56の長さは、いずれも2mに設定してあり、その一方がラックフレーム4の前側に配置され、他方がラックフレーム4の後側に配置してある。低圧コンセントバー55は、100Vの電源で作動するファンユニット13や、ラック本体3に設けられる表示装置、あるいは電動ドライバーなどの電動工具、作業用照明灯等の駆動電源として利用される。図示していないが、ファンユニット13の電源プラグは、ラックフレーム4の前側に配置した低圧コンセントバー55に接続してある。なお、各サーバー2とメインコンピュータを接続する通信ケーブルは、ラック本体3とラックフレーム4との間の左右両側の空間を利用して、ラック本体3の内部に引込まれて、各サーバー2に接続してある。
【0035】
以上のように、サーバー2用の配電構造を分岐し独立した構造にすると、例えば高圧給電系統24の一部で電気的な異常や短絡が発生した場合でも、その影響が他の高圧給電系統24に及ぶのを解消できる。従って、一度に多数個のサーバー2が作動を停止し、あるいは機能不全に陥るのを解消して、電気的なトラブルを最小限化できる。分岐されたひとつの給電系統が発火した場合でも、分岐された他の給電系統が延焼するのを防止できる。また、高圧給電系統24の一部で電気的な異常や短絡が発生した場合には、機能が損なわれた高圧コンセントバー45を交換するだけで配電機能を復旧できるので、配電機能の復旧をより少ない手間と時間で迅速に行なえる。
【0036】
配電構造を構成する各部材のうちで、複数の高圧コンセントバー45および低圧コンセントバー55のみをラック本体3の内部に配置するので、ラック内で配電構造が占めるスペースを少なくでき、その分だけ配電構造を合理的に配置して、使い勝手を向上できる。コネクタープラグ31とコネクターソケット32を分離しあるいは接続することで、電源ケーブル20と配電構造との間の電気的な接続状態を迅速に切換えることができるので、作業対象のラック本体3の電源、あるいは作業対象の給電系統の電源のみを必要に応じて遮断して、サーバー2の点検あるいは交換などの作業を行うことができる。
【0037】
装着壁15を兼ねるダクトベース11の周囲壁に、主分配コンセント22および副分配コンセント23を集約配置するので、先の周囲壁を利用する分だけ配電構造を簡素化できる。また、ラック本体3に固定されたダクトベース11の周囲壁を装着壁15として利用するので、装着壁15を別途設ける場合に比べて、サーバーシステムをより低コストで構築することができる。
【0038】
前後寸法が大きなフルサーバー2を収容するサーバーラック1においては、フルサーバー2の後壁とサーバーラック1の後壁との間に、各サーバー2から排出された熱気を天井空間8へ向かって案内する排気通路7が設けられる。その場合には、シャッター17を回動して導風ダクト14を排気通路7に連通させることにより、排気通路7内の排気を天井空間8へ送給することができる。この場合には、後側の出入口5が壁パネルで閉鎖されるので、フルサーバー2は前側の出入口5から取込んだ冷気で冷却されることになる。
【0039】
上記の実施例では、ダクトベース11の周囲壁を利用して装着壁15としたが、その必要はない。例えば、ダクト構造を備えていないサーバーラックの場合には、ラック本体3の上面に装着壁15を立設し、そこに主分配コンセント22と副分配コンセント23を集約して配置することができる。また、装着壁15を支持する左右一対の支持脚を利用して、コード支持棚16を支持することができる。
【0040】
高圧コンセントバー45のソケット45aの数、および低圧コンセントバー55のソケット55aの数は、いずれも実施例で説明したコンセントバー45・55に限るものではない。例えば、3個以上の高圧コンセントバー45を電気的に接続して各高圧給電系統24を構成することができる。主分配コンセント22、および副分配コンセント23には、各分岐コンセント27・37ごとにブレーカーが付加してあってもよい。本発明の配電構造は、サーバー以外にルーター、あるいは通信機器などを収容するラックにも適用できる。
【符号の説明】
【0041】
2 電気機器(サーバー)
3 ラック本体
4 ラックフレーム
20 高電圧の電源ケーブル
21 低電圧の電源ケーブル
22 主分配コンセント
23 副分配コンセント
24 高圧給電系統
25 低圧給電系統
26・36 筐体
27・37 分岐コンセント
28 1次主電源コード
31 コネクタープラグ
32 コネクターソケット
38 1次副電源コード
45 高圧コンセントバー
55 低圧コンセントバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一群の電気機器(2)を収容するラック本体(3)に対して、電圧が異なる複数の電源を供給する配電構造が設けられており、
配電構造は、高電圧の電源ケーブル(20)および低電圧の電源ケーブル(21)と、複数個の高圧電源用の主分配コンセント(22)と、少なくともひとつの低圧電源用の副分配コンセント(23)と、ラック本体(3)の内部に配置される複数の高圧給電系統(24)と、複数の低圧給電系統(25)とを含み、
主分配コンセント(22)および副分配コンセント(23)は、それぞれ箱状の筐体(26・36)と、筐体(26・36)に組付けた複数の分岐コンセント(27・37)を備えており、
各高圧給電系統(24)は、複数の高圧コンセントバー(45)を電気的に接続して構成され、各低圧給電系統(25)は低圧コンセントバー(55)で構成されており、
主分配コンセント(22)と電源ケーブル(20)、および副分配コンセント(23)と電源ケーブル(21)とは、各電源ケーブル(20・21)から分岐した1次主電源コード(28)および1次副電源コード(38)を介して接続されており、
主分配コンセント(22)と高圧コンセントバー(45)、および副分配コンセント(23)と低圧コンセントバー(55)とが、各分岐コンセント(27・37)に接続した複数の2次主電源コード(46)、および複数の2次副電源コード(56)を介して接続されており、
主分配コンセント(22)および副分配コンセント(23)が、ラック本体(3)の上面に立設した装着壁(15)に集約配置されて、ラック本体(3)の外の開放空間へ向かって露出してあることを特徴とする電気機器収納ラック用の配電構造。
【請求項2】
1次主電源コード(28)の中途部に着脱可能なコネクタープラグ(31)とコネクターソケット(32)が設けられており、
接続した状態のコネクタープラグ(31)およびコネクターソケット(32)が、装着壁(15)の上部に張り出したコード支持棚(16)に載置されて、固定具(33)でコード支持棚(16)に固定されており、
筐体(26・36)を装着壁(15)に装着した状態における分岐コンセント(27・37)が、装着壁(15)と平行な筐体(26・36)の接続壁面(26a・36a)に露出させてある請求項1に記載の電気機器収納ラック用の配電構造。
【請求項3】
ラック本体(3)の内部に設けられる各高圧給電系統(24)が、複数個の高圧コンセントバー(45)を電気的に接続して構成されており、
各高圧コンセントバー(45)は、ラック本体(3)の出入口(5)に臨むラックフレーム(4)に沿って縦列状に固定されており、
各高圧コンセントバー(45)のソケット(45a)がラック本体(3)の出入口(5)を指向する状態で、各高圧コンセントバー(45)がラックフレーム(4)に固定してある請求項1または2に記載の電気機器収納ラック用の配電構造。
【請求項4】
電気機器が、ラックフレーム(4)に多段状に配置した一群のサーバー(2)からなり、
ラック本体(3)の上面に、サーバー(2)において熱交換した後の排気を天井空間(8)へ送給案内するダクト構造が設けられており、
ダクト構造は、ラック本体(3)の上壁に固定される四角筒状のダクトベース(11)と、ダクトベース(11)の上面に固定されるダクト部(12)と、ダクトベース(11)の内部に配置されて前記排気をダクト部(12)の側へ送給するファンユニット(13)を備えており、
装着壁(15)を兼ねるダクトベース(11)の周囲壁に、主分配コンセント(22)および副分配コンセント(23)が集約配置してある請求項1から3のいずれかひとつに記載の電気機器収納ラック用の配電構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105874(P2013−105874A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248471(P2011−248471)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000181572)篠原電機株式会社 (18)
【出願人】(504247358)さくらインターネット株式会社 (1)