電気泳動ゲルから生体分子を単離し、かつ収集する方法、カセット、ゲル及び装置
簡単に、より効率よく、かつ効果的に電気泳動ゲルから生体分子バンドを単離する電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法を提供する。この方法は、少なくとも一つのローディングウェル及び少なくとも一つの収集ウェルを有する電気泳動カセットが用いられる。関心対象の生体分子を含むサンプルは、少なくとも一つのローディングウェルに配置され、バッファ又は水は、少なくとも一つの収集ウェルに配置される。その後、サンプルをゲル内の異なる成分バンドで移動及び分離させるため電界が印加される。関心対象の成分が、少なくとも一つの収集ウェルに配置された場合、電界は終了され、収集ウェル内のバッファ又は水は除去され、これによって、関心対象のサンプル成分の単離及び収集が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「電気泳動ゲルから生体分子を単離し、収集する方法、カセット、ゲル及び装置」という名称の2006年8月31日出願の米国特許仮出願第60/824,210号、及び「電気泳動ゲルから生体分子を単離し、収集する方法、カセット、ゲル及び装置」という名称の2006年10月13日出願の米国特許仮出願第60/829,517号に対する優先権の利益を主張する。これらの特許出願はともに、参照によりその全体を本願明細書に引用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、電気泳動ゲルからバンドを単離及び収集することを可能にする電気泳動の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ゲル電気泳動は、例えば新しい薬物の研究対象を特定したり、新しい診断テストを特定したりする生科学的サンプルの成分を分析するための公知の手段である。ゲル電気泳動の間、通常は個別には見えず、生物学的サンプルの中で分離されるサンプルの個々の成分は、可視の個々のバンドに分離される。
【0004】
プロテインサンプルやDNA分子のサンプルのようなサンプルは一度電気泳動の手順を行われると、特定のプロテインやDNAバンドなどの特定のサンプル成分のバンドを電気泳動ゲルから除去することが望まれる。電機泳動ゲルからサンプルのバンドを収集する方法は、ゲルから特定された関心対象のバンドを切り出し、切除されたゲルから関心対象のサンプル成分を回復させ、又はゲルにスリットを入れ、関心対象のサンプル成分を捕まえるために固定面にカップを挿入したりすることを含む。しかしながら、このような方法は十分でなく、望まないサンプルの希釈につながることがある。さらに、このような方法は、使い捨ての商業用の製品を用いたハイスループット方法にはよく適合しない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、電気泳動ゲルから生体分子バンドのより効果的及び効率的な単離のための電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法が提供される。具体的な実施例では、電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、使い捨て可能な閉じられた電気泳動カセットを含む。このため、消費者は、外部のベンダー(供給元)から閉じられた電気泳動カセット製品を購入することができ、本明細書において提供される方法を実行するために購入した製品を使用することができる。
【0006】
本明細書で提供される第1の態様は、電気泳動ゲルから生体分子又はバンドを単離する方法であり、この方法は、閉じられた電気泳動カセットを提供し又は取得する工程と、生体分子を含むサンプルを、少なくとも一つのローディングウェルに、電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通してロードする工程と、収集ウェルへ生体分子を電気泳動で移動させるために、電気泳動カセットの電極の間に電界を印加する工程と、関心対象の生体分子又はバンドを含む液体を、収集ウェルから収集開口を通して除去し、それによって関心対象の生体分子又はバンドを単離する工程と、を含む。この方法では、閉じられた電気泳動カセットは、壁を有する分離チャンバであって、この分離チャンバの少なくとも一つの壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口の配列を備える分離チャンバと、この分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、電気泳動ゲルの中に少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルを含むウェルの配列と、を含む。それぞれのローディングウェルは、一つのローディング開口とアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルは、一つの収集開口とアクセス可能であり、ローディングウェルのそれぞれは、電気泳動レーンにおいて少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる。収集ウェルは、液体で満たされており、少なくとも二つの電極は、少なくとも一つのアノード及び少なくとも一つのカソードを含み、ウェル及び開口の列(ウェルの配列及び開口の配列)は、アノード及びカソードの間に配置されている。
【0007】
この態様のある実施形態においては、収集ウェルは水で満たされ、他の実施形態では、収集ウェルはバッファで満たされている。
【0008】
他の実施形態では、開口を有する壁は、内面と外面を備え、内面及び外面は、液体と接していない。さらに他の実施形態に置いては、閉じられた電気泳動カセットは、電気泳動の分離を行うために用いられるランニングバッファに浸されていない。他の実施形態においては、収集ウェルと接している電気泳動ゲルの上に液体はない。他の実施形態においては、収集ウェルの中の液体と電気泳動の分離を行うために用いられるランニングバッファとの間に液体は連通していない。また、他の実施形態においては、収集ウェルの中の液体は、ローディング及び収集中、電気泳動カセットにおいて他の液体と全く接触しない。他の実施形態においては、収集ウェルの中の液体と他の液体との間に液体の連通はない。
【0009】
他の実施形態においては、電気泳動カセット内の唯一の液体は、収集ウェルの中の液体及び選択的にサンプルウェルの中の液体である。他の実施形態では、収集ウェルの中の液体は、選択的に電気泳動カセット内に存在する他の液体から単離されている。
【0010】
さらなる又は別の実施形態においては、この態様の方法はまた、生体分子が収集ウェルの内部にある場合に電界を終了させる工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに収集工程の後、収集ウェルに液体をロードする工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子の電気泳動を、電気泳動レーンに配置された収集ウェルの中に行わせるために電極の間に電界を印加する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに収集開口を通して収集ウェルから第2生体分子を収集する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子が収集ウェルの内部にある場合に電界を終了させる工程を含む。他の実施形態においては、方法は極性を逆にする工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子の電気泳動を、電気泳動レーンに配置された第2収集ウェルの中に行わせるために電極の間に電界を印加する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2の収集開口を通して第2収集ウェルから第2生体分子を収集する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子が第2収集ウェルの内部にある場合に電界を終了させる工程を含む。
【0011】
さらなる又は別の実施形態においては、この態様の方法は、電界を印加する間、生体分子の位置を監視する工程を含む。他の実施形態においては、監視はサンプルの生体分子を損傷しない。他の実施形態においては、監視はUV(紫外線)光で照射する工程を含む。他の実施形態においては、監視は白色光、青色光又は可視光によって照射する工程を含む。他の実施形態においては、監視は蛍光を検出する工程を含む。他の実施形態においては、監視は持続する。さらなる又は別の実施形態においては、方法はまた、バンド又は生体分子の電気泳動での輸送の間、電界を印加する手段と複数のバンド又は生体分子を監視する手段とを組み合わせる装置に電気泳動カセットをロードする工程を含む。
【0012】
さらなる又は別の実施形態においては、方法はさらに、電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングを通り過ぎた生体分子の泳動を監視する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングの勾配を通った生体分子の泳動を監視する工程を含む。他の実施形態においては、勾配は、直線勾配である。
【0013】
さらなる又は別の実施形態においては、電気泳動カセットは、色素も含む。他の実施形態においては、サンプルは、ローディングウェルにロードされる前に色素と結合されており、一方、他の実施形態においては、サンプルは、ローディングウェルにロードされた後、色素と結合されている。さらなる又は別の実施形態においては、方法は、複数の公知の分子マーカーを有する標準物質のローディングを含み、ある実施形態では、そのようなマーカーは色素を含む。
【0014】
そのような方法のある実施形態では、生体分子はDNA又はそのフラグメントであり、他の実施形態では、生体分子はRNA又はそのフラグメントである。そのような方法のさらに別の実施形態では、生体分子はペプチドであり、他の実施形態では、生体分子はプロテイン又はそのフラグメントである。他の実施形態では、そのような方法は、収集した後に生体分子をローディングウェルへロードする工程を含む。ある実施形態では、そのようなローディングウェルは生体分子を単離し、収集することに用いられた電気泳動カートリッジと異なる電気泳動カートリッジに配置されている。他の実施形態では、方法はさらに収集の後、生体分子を分析する工程を含む。ある実施形態では、生体分子は質量分析法により分析される。他の実施形態では、方法はまた生化学的処理において生体分子を用いる工程を含む。ある実施形態では、生化学的処理とは、クローニング反応であり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、連結反応(ライゲーション)である。ある実施形態では、生化学的処理とは、制限酵素クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、ハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理とは、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10〜1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10〜500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10〜100倍向上した。
【0015】
さらなる又は別の実施形態においては、そのような方法で用いられる電界は、パルス電場である。ある実施形態では、パルス電場は、パルス電圧を用いて生成され、一方、他の実施形態では、そのようなパルス電場は、パルス電流により生成される。他の実施形態では、そのようなパルス電場は、パルス電力により生成される。さらなる又は別の実施形態においては、そのような方法で用いられる電界は、一定の電界である。ある実施形態では、そのような一定の電界は、一定の電圧を印加することにより生成される。ある実施形態では、そのような一定の電界は、一定の電流を流すことにより生成される。他の実施形態では、そのような一定の電界は、一定の電力を供給されることにより生成される。
【0016】
さらなる又は別の実施形態においては、電気泳動ゲルはアガロースを含み、一方、他の実施形態では、電気泳動ゲルはポリアクリルアミドを含む。さらに他の実施形態では、電気泳動ゲルはアガロース及びポリアクリルアミドを含む。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれのローディングウェルの幅は、3mmから5mmであり、電気泳動ゲルにおけるそれぞれのローディングウェルの高さは、1mmから2.5mmである。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれの収集ウェルの幅は、3mmから5mmであり、電気泳動ゲルにおけるそれぞれの収集ウェルの高さは、1mmから2.5mmである。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれのローディングウェルの容量は10μLから30μLである。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれの収集ウェルの容量は10μLから30μLである。
【0017】
他の態様において、電気泳動ゲルから生体分子又はバンドを単離する電気泳動カセットが本明細書で提供される。そのようなカセットは、壁を有する分離チャンバであって、この分離チャンバの少なくとも一つの壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口の配列を備える分離チャンバと、この分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、電気泳動ゲルの中の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルを含むウェルの配列と、を含む。それぞれのローディングウェルは、ローディング開口の下に配置され、それぞれの収集ウェルは、収集開口の下に配置され、ローディングウェルのそれぞれは、電気泳動レーンにおいて少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる。収集ウェルは、液体で満たされており、少なくとも二つの電極は、少なくとも一つのアノード及び少なくとも一つのカソードであり、ウェルの配列及び開口の列は、電極の間に配置されている。壁の上の少なくとも一つのマーキングは、少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一つの収集開口を含む開口の列を有する。少なくとも一つのマーキングは、少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一つの収集開口との間に配置される。他の実施形態においては、マーキング又は複数のマーキングは、電気泳動レーンの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本明細書で開示される方法に用いられる一つの実施形態に係る電気泳動カセットの概略図である。
【図2】図2A及びBは,本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの2つの実施形態の断面外略図(図1のIV線に沿う)である。
【図3】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図4】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図5】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた二つの収集ウェル(CW1及びCW2)による分離及び単離方法の概略代表図であり、関心対象のバンドはCW1においては分解されなかった。tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図6】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた三つの収集ウェル(CW1、CW2及びCW3)による分離及び単離方法の概略代表図であり、関心対象のバンドはCW1においては分解されなかった。tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図7】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による二次元の分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンドを示す。
【図8】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による別の二次元の分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンドを示す。
【図9】図9A〜Fは本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図である。
【図10】図10A〜Eは、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図であり、ローディングウェル(LW)と収集ウェル(CW)の相対的な位置が示されている。
【図11】図11A〜Fは本明細書で開示される二次元の分離及び単離方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図である。
【図12】図12A〜Eは、本明細書で開示される二次元の分離及び単離方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図であり、ローディングウェル(LW)と収集ウェル(CW)の相対的な位置が示されている。
【図13】図13A〜Cは、関心対象の800bp(第4バンド)の単離及び収集を表す画像である。図13Aは、収集ウェルを通過した第1バンド(100bp)、第2バンド(200bp)及び第3バンド(400bp)の画像である。図13Bは、収集ウェルに入った第4バンドの画像である。図13Cは、他のE−GEL(登録商標)カセット(エチジウムボロマイドを含む2%の二重結合)上を移動する800bpの第4バンドの画像である。
【図14】図14A〜Cは、予め染められた〜21kDプロテインマーカーの単離及び収集を示す画像である。図14Aは、収集ウェルの端の〜21kDプロテインマーカー(ピンクバンド)の画像である。図14Bは、収集ウェルの〜21kDプロテインマーカーの画像である。図14Cは、異なるゲルの上を移動する〜21kDプロテインマーカーのTの画像である。
【0019】
本方法及び組成物の特徴及び利点は、本方法の原理、組成物、装置、機械が用いられる実施形態を記載した明細書の詳細な説明と、これに添付される図面を参照することによりさらによく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
電気泳動を用いてサンプル成分を分離した後、電気泳動カセットに含まれるサンプル成分を電気泳動ゲルから分離、単離、収集するのに利用できる電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法が本明細書で開示される。本明細書で開示される方法を用いて分離、単離、収集されるサンプル成分は、電気泳動で分離可能なすべての分子をいう。そのような分子としては、限定されないがペプチド、ポリペプチド、プロテイン、オリゴヌクレオチド、DNAやRNAなどの生体分子を含む。これらの電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、これまでのゲル−分離バンドにおける生体分子の単離方法よりも、より単純で効率的な方法を提供する。電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、特に使い捨ての商業的な製品に適している。
【0021】
本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、電気泳動ゲルを用いて他の分子から分離可能なすべての分子を分離し、単離し、収集するのに用いられる。電気泳動分離は、例えば、電気泳動の移動度(すなわち電荷)、分子量(すなわち質量電荷比)又はこれらの組み合わせにおける違いに基づいている。例えば、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、オリゴヌクレオチド、DNA及、RNAのような核酸、ペプチド、ポリペプチド、プロテインなどを分離、単離及び収集するのに用いられる。加えて、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAのような核酸、ペプチド、ポリペプチド、及びプロテインを、汚染されている又は汚染されていない他の荷電された(プラスの電荷又はマイナスの電荷)又は非荷電の(中性の)材料から精製するのに用いられる。
【0022】
定義
他に定義されていない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び化学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する
一般的に、本明細書で用いられる用語はこの分野で公知であり共通して用いられているものである。例えば「上」及び「下」、「トップ」及び「底」、「上に」「下に」又は「上側」又は「下側」などの方向の用語は、装置を使用する間の部品の方向について言及する。用語が単数で用いられている場合は、発明者はその用語の複数の場合も意図している。参照として援用された文献に用いられた用語及び定義と相違があった場合には、本出願で用いられた用語が本明細書において与えられる定義となる。開示の全体を通して採用された次の用語は、特に示されない限り、次のような意味を有するものと理解されるべきである。
【0023】
本明細書で用いられる用語「サンプル」は、電気泳動ゲルを用いて分離しうる複数のユニークな分子種の混合を言う。例えば、サンプルは核酸の混合、オリゴヌクレオチドの混合、DNAの混合、RNAの混合、又はこれらの組み合わせであってもよい。加えて、例えば、サンプルは、アミノ酸の混合、ペプチドの混合、プロテインの混合又はこれらの組み合わせであってもよい。また、例えば、サンプルは分子種の混合及び複数の汚染物質であってもよい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「室温」は20℃から25℃の範囲の温度を指す。
【0025】
本明細書で用いられるバイオポリマー又は生体分子とは、限定されないが、核酸、プロテイン、多糖類、脂質、又は他の高分子を含む。核酸とはDNA,RNA,オリゴヌクレオチド及びそのフラグメントと類似物を含む。核酸配列はゲノムのDNA、RNA、ミトコンドリアの核酸、葉緑体の核酸又は分離された遺伝材料を有する他の細胞小器官であってもよい。
【0026】
本明細書において用いられるプロテインは、複合の、一つ以上の長い、折りたたみポロペプチド鎖を含む3次元の物質である。鎖は、アミノ酸と呼ばれる小さな化学的単位を含む。すべてのアミノ酸は炭素、水素、酸素及び窒素を含む。一部は硫黄も含む。「ペプチド」は、2又はそれ以上のアミノ酸を含む化合物である。アミノ酸は、ペプチド鎖を形成するように一列に互いに繋がっている。ペプチドの生物学的な生成に関わる20の天然の異なるアミノ酸があり、どのアミノ酸もペプチド鎖を形成するために順に繋がっている。ペプチドの生物学的な生成において採用される天然のアミノ酸は、すべてL−構造を有する。合成ペプチドは、従来の合成方法を採用し、L−アミノ酸、D−アミノ酸、又は二つの異なる構成のアミノ酸の多様なバリエーションを用いて準備し得る。あるペプチド鎖は、数アミノ酸単位しか含まない。短いペプチド鎖、例えば10未満のアミノ酸単位を有するものは、しばしば「オリゴペプチド」と呼ばれ、接頭辞「オリゴ」は「少ない」を意味する。多くの、例えば100まで又はそれ以上のアミノ酸の単位を含む他のペプチド鎖は、「ポリペプチド」と呼ばれる。接頭辞「ポリ」は「多い」を意味する。さらに一定数のアミノ酸の単位を含む他のペプチド鎖は、その一定数を意味する接頭辞を用いて、例えばオクタペプチドと呼ばれ、ここで、接頭辞「オクタ」は8を意味する。慣例として「ポリペプチド」は3又はそれ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドと考えられる。「オリゴペプチド」は通常、「短い」ポリペプチド鎖の特別な種類であると考えられている。このように、本明細書では、「ポリペプチド」の記載はオリゴペプチドも含むと理解される。さらに、「ペプチド」へのいずれの言及も、ポリペプチド、オリゴペプチドを含む。各異なるアミノ酸配列は、異なるポリペプチド鎖を形成する。ある限定されない例示では、ポリペプチドは40から4000のアミノ酸、50から3000のアミノ酸又は75から2000のアミノ酸を含む。
【0027】
本明細書で用いられる「核酸分子」は、リボヌクレオシド(アデノシン、ジアノシン、ウリジン、シチジンの「RNA分子」)又はデオキシヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシジアノシン、デオキシチミジン、デオキシシチジンの「DNA分子」)、又は単鎖又は2重鎖のらせん形のそのリン酸エステル類似物(ホスホロチオエート、チオエートなど)のリン酸エステルの重合体を言う。2重鎖のDNA−DNA,DNA−RNA,及びRNA−RNAのらせんが可能である。核酸分子という用語、特にDNA又はRNA分子は、分子の第一又は第二次構造を言うものであり、特定の第三次構造に制限するものではない。このように、この用語は2重鎖のDNA分子を含み、とりわけ、線状又は環状のDNA分子(すなわち制限フラグメント)、プラスミド、及び染色体を含む。特に2重鎖のDNA分子の構造を論じる場合、配列はDNAの非転写鎖(mRNAと相同の配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向に配列を与える通常の慣例に従って開示されてよい。「遺伝子組換えDNA分子」は、分子の生物学的な操作を受けたDNA分子である。(Sambrookら、Molecular Cloning, A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)
【0028】
本明細書で用いられる用語「並べられた」又は「並び」は、少なくとも二つの対象物が、線状に配置されていることを言う。本明細書において対象物が並んでいる、又は並んで、とは、それらの中心がこの線から対象物の幅の50%までずれる場合のことを言う。
【0029】
本明細書で用いられる「カオトロピック剤」又は「カオトロプ」とは、プロテイン又は核酸の第二次又は三次構造を変更させることができるものである。
【0030】
本明細書で用いられる「汚染物質」とは、本明細書で説明される方法及び装置を用いて単離又は収集されていないサンプルのすべての成分を言う。例えば、汚染物質は、塩、バッファ、プロテイン、ペプチド、核酸及びアミノ酸を含む。
【0031】
本明細書で用いられる用語「電気泳動レーン」とは、ローディングウェルとこれに対応する収集ウェルとの間の領域を言う。ローディングウェル又は収集ウェルの幅は、(どちらが大きくとも)電気泳動レーンの幅を規定する。
【0032】
生体分子及び/又はサンプルバンドの単離の方法
電気泳動ゲルからサンプル成分を分離、単離、収集する電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法の実施形態を以下に詳細に述べる。これらの例は、添付図面に示される。
【0033】
本明細書で開示される方法は、一つはローディングウェルでもう一つは収集ウェルの2つのウェル方法である。また、方法は、二つ以上のローディングウェル及び二つ以上の収集ウェルを有する電気泳動ゲルの複数のウェル方法であってもよい。2つのウェル方法及び複数のウェル方法の、多様な実施形態がここに示される。
【0034】
本明細書で提供される一つの態様は、電気泳動ゲルから生体分子又はサンプルバンドを単離する方法であり、方法は、
(1)電気泳動カセットが、(i)壁の少なくとも一枚が、少なくとも一列のローディング開口と少なくとも一列の収集開口を有する、壁を備える分離チャンバと;(ii)分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルマトリックスであって、少なくとも一列のローディングウェルと少なくとも一列の収集ウェルを有し、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる、電気泳動ゲルマトリックスと;(vi)ウェル及び開口の列がこれらの電極の間に配置されている、二つの電極とを含む、閉じられた電気泳動カセットを提供又は取得する工程と、
(2)関心対象の生体分子(プロテインなど)を含む複数の成分のサンプルを、少なくとも一つのローディングウェルに、電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通してロードする工程と、
(3)二つの電極の間に電界を印加し、収集ウェルへ生体分子の電気泳動での移動を行わせる工程と、
(4)収集ウェルから関心対象の生体分子又はバンドを有する液体を、収集開口を通して除去し、それによって関心対象の生体分子又はバンドを単離する工程と、
を含む。
【0035】
ローディングウェルは、通常、マイクロピペッタ(微量分注入器)のようなマイクロリッタースケールの液体を取り扱う器具の先端が開口を通り、ウェルに液体を分注できるように、ローディング開口の下に配置されて、ローディング開口を通してアクセス可能である。収集ウェルは、通常、マイクロピペッタ(微量分注入器)のようなマイクロリッタースケールの液体を取り扱う器具の先端が開口を通り、ウェルから液体を除去できるように、収集開口の下に配置されて、収集開口を通してアクセス可能である。
【0036】
本発明の方法を使用している間、電界が印加されると、液体は収集ウェルに存在する。このため、本方法は、通常収集ウェルを、収集開口を通して水又はバッファのような液体で満たす工程を含む。
【0037】
本明細書に開示される方法において用いられる電気泳動ゲルカセットの限定されない例示として、かつ使用されるカセットにおける限定されない装置の例として、米国特許第5,582,702号、米国特許第5,865,974号、米国特許第6,562,213号が開示され、それぞれ、その全体が参照としてここに援用される。
【0038】
ある実施形態において、本明細書に開示される方法において用いられる電気泳動カセットは、閉じられた電気泳動カセットである。閉じられた電気泳動ゲルカセットは、少なくとも4枚の壁を有し、壁によって囲まれた分離チャンバを形成するように壁は密閉されており、分離チャンバは、そこに形成される少なくとも2つのウェルを有する電気泳動ゲルマトリックスを含む。さらに、そのようなカセットの少なくとも一枚の壁は、分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルに形成されたウェルへ、カセットの外部からアクセスするため、又はカセットの内部の空の分離チャンバにカセットの外部からアクセスするために、開孔(本明細書で開口とも呼ばれる)の配列を有する。そのような閉じられたカセットはまた、電気泳動分離を引き起こすのに必要な、またある実施形態においては、分離されたサンプルバンドを目で見ることができるようにするのに必要なすべての化合物を含む。また、そのような閉じられたカセットは使い捨て可能である。ある実施形態では、電気泳動ゲルは、外部の供給元から入手する分離チャンバに投入/重合され、他の実施形態では、分離チャンバは最終消費者が電気泳動ゲルを分離チャンバに投入/重合するまでは、電気泳動ゲルの使用前には電気泳動カセットを含まない。
【0039】
図1及び図2は、本明細書で開示される方法において用いられる閉じられたカセットの一実施形態を示す。図1は、外観図であり、図2は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。カセット10は、それぞれが所定の厚みを有する底壁19、側壁12、14、及び上壁18を有する3次元の分離チャンバを備える。カセット10は、実質的に壁12、14、16及び19に囲まれて閉じられているが、本明細書で開示されるように開口(36及び37)をも含み、選択的に通気孔(34及び/又は32)を含むこともできる。壁の厚さは0.1〜10mmであり、ある実施形態では1.5mmである。他の実施形態では、厚さは9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmである。
【0040】
カセット10の長さは、50から200mmの範囲である。カセット10の幅は50〜150mmの範囲であり、カセット10の高さは、1〜10mmの範囲である。一実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ160ミリメーター(mm)、100mm及び6mmである。他の実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ100ミリメーター(mm)、80mm及び6mmである。他の実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ100mm、80mm及び6mmである。他の実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ108mm、135mm及び6.7mmである。
【0041】
カセット10は、選択的に通気孔32及び34を含み、電極23及び21で電気化学反応のゆえに、電気泳動の間に生じる可能性のある気体分子(酸素及び/又は水素)を逃がすことができる。ある実施形態では、通風孔は、0.5〜2mmの径の範囲にわたり、他の実施形態では、通風孔は、0.5〜1mmの径の範囲にわたる。他の実施形態では、通風孔は、1〜2mmの径の範囲にわたり、一実施形態では、通風孔は、1mm径である。ある実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜10個であってよい。他の実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜6個であってよく、他の実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜3個であってよい。また他の実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜2個であってよく、他の実施形態では、一つの通風孔がそれぞれの電極と関連している。通風孔又は孔は、電極上のどこに位置してもよく、図1は本明細書に開示される方法において用いられるカセットに含まれる通風孔の位置に関し、二つの可能な実施形態を示している。
【0042】
ある実施形態では、開口36は、ローディング開口であり、開口37は、収集開口である。他の実施形態では、開口36は、収集開口であり、開口37は、ローディング開口である。カセット10は、開口36及び37から所定の距離を離れた位置に配置されるマーキング25を含んでよい。図1及び図2に示されるある実施形態では、マーキング25は収集開口37から所定の距離を離れて配置されているが、そのようなマーキングはローディング開口36から所定の距離を離れて配置されていてもよい。図1及び図2に示される限定されない実施形態において、マーキング25は、開口36及び37と平行な線に沿って開口36及び37の間に配置されているが、開口36及び37と直接的に位置合わせをされているわけではない(図1参照)。また、別の実施形態においては、マーキング25は開口36及び37の間に配置されており、開口36及び37と直接的に位置合わせをされている。他の実施形態では、マーキング25は開口36及び電極21の間に配置されており、他の実施形態では、マーキング25は開口37及び電極23の間に配置されている。さらに他の実施形態では、マーキング25は、電極21及び23の間であればどこに配置されていてもよい。そのようなマーキングの機能が本明細書に開示される。開口からマーキングまでの距離は1〜100mmである。ある実施形態では、距離は1〜75mmの範囲であり、他の実施形態では、距離は1〜50mmの範囲である。他の実施形態では、距離は1〜25mmの範囲であり、他の実施形態では、距離は1〜10mmの範囲である。他の実施形態では、距離は1〜5mmの範囲であり、一実施形態では、距離は1mmである。
【0043】
図2A及図2Bの断面図60に示されるように、分離チャンバは電気泳動ゲルマトリックス16を含む。これは適切なものであればどのような電気泳動ゲルマトリックス16であってもよく、以下に論じられる。分離チャンバは、符号21及び23の2つの導電可能な電極を含み、外部の直流(DC)電源に接続された場合、電気泳動の分離に必要な電界を印加する。図1及び図2に示される実施形態において、電極21はカソードであり電極23はアノードである。しかしながら、他の実施形態では、電極21はアノードであり電極23はカソードである。
【0044】
分離チャンバは、符号20及び22のイオン交換マトリックスを選択的に含んでもよい。図1から3で示される実施形態では、電極21はカソードであり電極23はアノードであり、マトリックス20はカチオン交換、マトリックス22はアニオン交換マトリックスである。しかしながら、他の実施形態では、電極21はアノードであり電極23はカソードであり、マトリックス20はアニオン交換、マトリックス22はカチオン交換マトリックスである。
【0045】
分離チャンバはまた、それぞれ独立して、電気泳動ゲルマトリックスで占められているか、占められていないか、又はバッファで占められている内部容積29及び30を選択的に含む。占められていない内部容積29、30は、電気泳動の間に発生した気体が蓄積する容積として用いられてもよい。あるいは、上述したように、カートリッジ10は、選択的に、容積29及び/又は30に蓄積された気体を通気する少なくとも2つの通気孔32及び34(各電極に一つの孔)を含んでもよい。カセット10が通気孔32及び34を含む場合、これらは電気泳動が始まる直前に開けられ、テストが完成した後に閉じられることが、汚染の可能性を低減するうえで好ましい。
【0046】
さらに、カートリッジ10は、電極21を支持する傾斜部27を備えてもよい。傾斜部27は、電極21と電極21の上を覆うイオン交換マトリックス22の表面とが持続的に接触することを容易にする。これにより、電極21の近傍で発生した気泡は、放出されると直ちに空の容積30の方へ向かう。ある実施形態では、傾斜部27は、カートリッジ10と一体的に形成され、かつ約45度の角度で底壁19の方へ傾斜している。
【0047】
また、図2A及び図2Bにおける断面図60に示されているのは、電気泳動ゲルマトリックス16に形成されているウェル38及び39である。このようなウェルは開口36及び37の下に配置されている。図1に示されるように、開口36及び37とこれに対応するウェル38及び39は、二列に構成され、一列は電気泳動分離を受ける生体分子のサンプルを導入するために用いられ、他の列は関心対象の生体分子又は個体群を収集するために用いられる。しかしながら、本明細書において開示される方法に用いられる開口及びウェルの構成は、2列に限定されるものではなく、本明細書において論じられる様々な種類の配列のような他の構成を含むこともできる。一実施形態では、カートリッジ10は複数の開口及び複数のウェルを含み、複数の開口及び複数のウェルは1〜200個の開口と1〜200個のウェルである。他の実施形態では、複数の開口及び複数のウェルは1〜100個の開口と1〜100個のウェルである。また他の実施形態では、複数の開口及び複数のウェルは1〜50個の開口と1〜50個のウェルである。ある実施形態では、カートリッジ10は開口96及びウェル96を含み、ある実施形態では、カートリッジ10は開口48及びウェル48を含む。開口36、37及びウェル38、39の寸法は本明細書で論じられるが、しかしながら、ある実施形態では、ウェル38、39は0.5〜5mm幅の寸法を有し、1〜5mmの長さで、3〜5mmの深さである。
【0048】
ウェルは適切な方法であればいずれの方法でも形成できる。例えば電気泳動ゲルマトリックスがまだ液体の状態の場合に、電気泳動ゲルマトリックスのアセンブリの間、分離チャンバ内で「コーム」を電気泳動ゲルマトリックス16に導入することにより形成される。「コーム」は上壁18の開口を経由して電気泳動ゲルマトリックス内へ突出するように配置される突出する歯を有する。マトリックスがコーム状の特徴の周囲でゲル状に固体化する場合に、ウェルが電気泳動ゲルマトリックス内に形成される。コームが電気泳動ゲルマトリックス及び開口から引き抜かれた場合に、ウェルは、サンプル、バッファ又は水のような液体をロード可能である。コームはローディングの直前に取り除かれてもよく、ローディングの一定時間前に取り除かれてもよい。例えばローディングの5秒前から1日前、ローディングの10秒前から12時間前、ローディングの10秒前から30分前、に取り除かれてもよい。あるいは、コームは電気泳動ゲルマトリックス及び開口から引き抜かれ、カセット(開口及び対応するウェルを含む)の上はテープで覆われて、潜在的な汚染からウェルを密閉し保護することとなる。密閉テープはその後ローディングの直前に除去される。又はローディングの数時間前に除去してもよい。例えば、ローディングの5秒前から1日前、ローディングの10秒前から12時間前の範囲である。
【0049】
本明細書で開示される関心対象の生体分子の分離、単離、又は収集の方法において、開口36、37及びウェル38、39はローディング又は収集の開口又はウェルのいずれにも設定することができる。対応するローディングウェルの下に配置されるローディング開口は、サンプルをローディングウェルにロードするために用いられる。一方、収集開口は、収集開口の下に配置された収集ウェルから関心対象の生体分子を収集するために用いられる。
【0050】
図1及び図2を参照すると、本明細書で開示される関心対象の生体分子の分離、単離、収集の方法は、次のようなものである。電気泳動の分離前に、生体分子のサンプルは、ローディング開口36を経由してローディングウェル38に配置される。一方、バッファ又は水のような液体が、収集開口37を経由して収集ウェル39に配置される。使用されていないいずれのローディングウェルも、液体で満たしてもよい。電極21及び23に接続された外部の電源は、サンプル成分の電気泳動での移動を行い、電気泳動で分離した成分を検出したバンドに移動させるために、電源をオンにして必要な電界を供給する。それぞれのバンドは、それぞれ単一の生体分子種を有し、又は電気泳動で移動する類似する特徴を有する種の混合を含んでもよい。電気泳動の分離は、関心対象の生体分子を含む関心対象のサンプルバンドが収集ウェル39に入るまで続けることができ、その時点で電源はオフにされる。収集ウェル39内の液体は収集開口37を通じて除去される。収集ウェル39から除去された液体は、関心対象の生体分子を含む関心対象のサンプルバンドを含んでいる。収集されたサンプルバンドは、分析的評価に使用されるか、クローニングのような生物学的処理に用いられる。ある実施形態では、生化学的処理は、制限酵素のクローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理は、ハイスループットの再結合クローニングである。ある実施形態では、生化学的処理は、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10〜1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10〜500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10〜100倍向上した。さらに、必要な場合は、収集されたサンプルは、本明細書で開示された方法を繰り返すことでさらに精製される。電源は、通常は直流(DC)電源である。
【0051】
他の実施形態では、収集ウェル39は液体で再度満たされることができ、直流(DC)電源が再度入れられて、電気泳動ゲルマトリックス16に残存しているバンドの移動及び分離を継続する。電気泳動の分離は関心対象の異なる生体分子を含む関心対象の異なるサンプルバンドが収集ウェル39に入るまで続けることができ、その時点で直流(DC)電源が再度オフにされる。収集ウェル39の内部の液体は、収集開口37を通して除去され、収集されたサンプルバンドは上述したようにして用いられる。
【0052】
別の実施形態では、収集ウェル39に液体を再度充満させることができ、直流(DC)電源を再びオンにし、極性が逆にされる。関心対象の異なる生体分子を含む関心対象の異なるサンプルバンドがウェル39に入るまで電気泳動分離を継続してもよい。入った時点で電流(DC)電源を再びオフにする。収集ウェル39内の液体は収集開口37を通して除去し、収集したサンプルバンドは上述した方法で使用しても良い。
【0053】
別の実施形態では、関心対象のバンド、又はその一部が電界を終了させる前に収集ウェルを通過して移動した場合に、上記の逆のモードを適用することができる。そのような実施形態では、電界は逆にされ、収集し損なったバンド又はその一部は、収集ウェルに戻るように移動し、上述したようにして収集される。
【0054】
他の実施形態では、上に開示された逆のモードは、収集ウェルの幅よりも大きな幅を有するバンドを有する拡散したバンドの収集の生産性を向上させるのに用いられる。そのような実施形態では、関心対象の拡散したバンドは、最後尾が収集ウェルに入るまで、収集ウェルを通過して移動され、電界が終了され、収集ウェル内部の液体が除去される。収集ウェルはそれからまた液体で満たされ、電界は電極を逆にして、再度印加される。関心対象のバンドの残りの部分は収集ウェルに戻り、上述の方法で収集される。これらの実施形態は関心対象のバンドを収集し単離するために2つのフラクションを用いるが、関心対象のバンドを収集し単離するフラクションの数は3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上であってもよいことは理解されている。ある実施形態では、使用されるフラクションの数は、収集ウェルの幅と比較した移動するバンド幅に依存する。バンドが広ければ、より多くのフラクションが必要とされる。
【0055】
他の実施形態では、拡散したバンドの収集の生産性には、逆のモードは用いない。そのような実施形態では、関心対象の拡散したバンドは、先導する端部が収集ウェルから出ようとするまで、収集ウェルの中に移動することを許される。そこで電界が終了され、収集ウェル内部の液体は除去される。収集ウェルはそれから液体で再度満たされ、電界が再度印加される。これらの実施形態は関心対象のバンドを収集し単離するために2つのフラクションを用いるが、関心対象のバンドを収集し単離するフラクションの数は3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上であってもよいことは理解されている。ある実施形態では、使用されるフラクションの数は、収集ウェルの幅と比較した移動するバンド幅に依存する。バンドが広ければ、より多くのフラクションが必要とされる。
【0056】
別の実施形態では、マーキング25は、収集開口37からマーキング25までの距離をサンプルバンドの電気泳動の移動率で割ることにより、関心対象のバンドが収集ウェル39に入る時間を計算するのに用いられる。
【0057】
図3から6は、本明細書で開示される電気泳動ゲルから生体分子及び/又は1つ又は複数のバンドの単離方法の限定されない実施形態の図である。2つのウェル方法が図3に示されており、サンプルは、電気泳動カセットのローディング開口を通して、電気泳動カセットに入った電気泳動ゲル内のローディングウェル(LW)にロードされる。サンプルは電気泳動で分離されるべき少なくとも2つのユニークな分子種を含んでいると考えられるし、通常含んでいる。少なくとも一つのユニークな分子種は、サンプル成分が分離された後、電気泳動ゲルから単離される。電界を印加させるより前に(t=0)、サンプルは、電気泳動ゲルの中のローディングウェルに配置され、水又はバッファが収集ウェル(CW)にロードされる。電界はその後印加されて、サンプル成分は収集ウェルに向かって移動を始める。いくらか時間が経過した後、(t1>t0)サンプル成分は、収集ウェルに向かって移動し続けながら、個々のバンドに分離する。サンプル成分の電気泳動分離及び移動は、関心対象のバンドのサンプル成分(*で示される)が、ある時間(tn)で収集ウェルに移動するまで継続され、そこで電界は終了される。図3から6の大きな点線は時間の経過を指すことに注意されたい。収集ウェル内のサンプル成分は、除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0058】
関心対象の成分バンドより先に移動するどんなサンプル成分のバンドも、収集ウェルを通過して移動し、電気泳動ゲルに戻り、ゲルの中で移動し続ける。図3に示される実施態様では、もしそのような成分が関心対象の成分で、第1の関心対象のバンドを除去した後のものである場合には、収集ウェルは水又はバッファで再度満たされて、そのバンドが収集ウェルに戻ってくるように電界の電極は逆にされる(tn+1)。関心対象の第2バンドが収集ウェル内にある場合は、電界は再度終了され、かつ第2バンドはある時間で(tn−m)収集ウェルから除去される。
【0059】
2つのウェル方法の他の実施形態は、図4に示される。サンプルは、電気泳動ゲル内に配置されるローディングウェルにロードされ、かつサンプル成分が分離された後、少なくとも2つの関心対象のサンプルバンドが、電気泳動ゲルから除去される。電界を印加させるより前に(t=0)、サンプルは電気泳動ゲルの中のローディングウェルに配置され、水又はバッファが収集ウェル(CW)にロードされる。電界はその後印加されて、サンプル成分は収集ウェルに向かって移動を始める。いくらか時間が経過した後(t1>t0)、サンプル成分は、収集ウェルに向かって移動し続けるにしたがって、個々のバンドに分離する。サンプル成分の電気泳動分離及び移動は、関心対象のバンドである第1サンプル成分(*で示される)が収集ウェルに移動するまで(t3>t2)継続され、そこで電界は終了される。収集ウェル内のサンプル成分は、除去されて、次に適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。収集ウェルは、それから水又はバッファで再度満たされ、関心対象の第2バンドが収集ウェルに移動するまで(tn)電界が再度印加され、その時点で電界が終了され、第2サンプル成分は、収集ウェルから除去される。第2サンプル成分は、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されてもよいか、又は化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。再度、関心対象のバンドより先に移動した任意のサンプルは、上述に開示のように極性を逆にすることによって電気泳動ゲルから単離及び除去されることができる。
【0060】
図5は、関心対象の少なくとも2つのサンプル成分を分離、単離、収集する複数のウェル方法の限定されない実施形態を示す。ここでは、サンプル成分は、収集ウェルに移動する前には分解されていない。本実施形態で開示される複数のウェル方法では、一つのローディングウェル(LW)と電気泳動レーンで互いに並ぶ二つの収集ウェル(CW1及びCW2)を有する電気泳動ゲルを用いる。この本実施形態では、電界を印加するより前に(t=0)、サンプルは電気泳動ゲルの中のローディングウェルに配置され、水又はバッファが収集ウェル(CW1及びCW2)にロードされる。電界はその後印加されて、サンプル成分は収集ウェルに向かって移動を始める。時間の経過後、(t1>t0)サンプル成分のほとんどは個々のバンドに分離されるが、関心対象の2つの成分は分解されずに残存している。サンプル成分は、第1収集ウェル(CW1)に向かって移動し続け、関心対象の2つの成分がCW1に入った場合(t2>t1)、これらは分解されずに残存している。サンプル成分の電気泳動による分離及び移動は、関心対象の第1バンド(*で示される)及び第2バンド(**で示される)が分解し、関心対象の第1バンドがある時間(t3>t2)で第2収集ウェル(CW2)に入るまで継続される。電界は終了され、第1サンプル成分は、CW2から除去され、次に適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。収集ウェルはその後水又はバッファで再び満たされ、関心対象の第2バンドがある時間(tn)でCW2に入るまで電界は再度印加される。入った時点で電界は終了され、第2サンプル成分は収集ウェルから除去される。第2サンプル成分はさらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられてよい。再び、関心対象のバンドより前に移動したどのサンプルバンドも、上述したように電極を逆にすることによって、電気泳動ゲルから単離され、除去され得る。
【0061】
上に開示され、図5で例示された方法は、CW1に届くより前に分解された成分を含む、3つ以上の関心対象の成分の単離に適用できることが理解される。さらに、分解しにくいサンプル成分は、上に開示の複数のウェル方法を用いるよりも2つのウェル方法を用いた方が分離、単離、収集されやすいことが理解される。2つのウェル(ローディングウェル及び収集ウェル)の間の距離が大きくなるので、サンプル成分は分解しやすくなるからである。あるいは、ゲルの組成及び/又は電界は、サンプル成分の分離の特徴に影響を与えるように、変更してもよい。これにより、サンプルバンドの分解及び関心対象の1つ又は複数のバンドの収集が可能になる。
【0062】
関心対象のサンプル成分がCW2に入る前に分解されていない場合のために、第3収集ウェル(CW3)を含む、複数のウェル方法の他の実施形態が図6に示される。図6に示す関心対象の2つのサンプル成分は、上記に開示された方法を用いて電気泳動ゲルから分離、単離及び収集される。
【0063】
関心対象の2つのサンプル成分が、CW3に入る前に分解されていない場合、関心対象のサンプル成分の電気泳動による分離は継続され、4番目、5番目、6番目、7番絵、8番目などの収集ウェルが、バンドが分解されるまで用いられることは理解される。必要な収集ウェルの数は、個々のサンプル成分の電気泳動の特徴に依存する。あるいは、電気泳動ゲルの特性及び電界のパラメータを調整することにより、収集ウェルの過剰な数や、非常に大きなゲルを必要とせずに、バンドの分解が達成される。本明細書で開示される方法に用いられるウェルの多様な配置、電気泳動ゲル、電界のパラメータが本明細書に開示されている。
【0064】
そのような方法のある実施形態では、DNA又はその大きなフラグメントは、より小さなオリゴヌクレオチド又は核酸から分離精製される。電気泳動の間、DNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから電気泳動ゲルへ移動しない。より小さいオリゴヌクレオチド又は核酸は、電気泳動ゲルへ移動しDNA又はその大きなフラグメントをローディングウェルに残す。精製されたDNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0065】
そのような方法のある実施形態では、RNA又はその大きなフラグメントは、より小さなオリゴヌクレオチド又は核酸から分離精製される。電気泳動の間、RNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから電気泳動ゲルへ移動しない。より小さいオリゴヌクレオチド又は核酸は、電気泳動ゲルへ移動しRNA又はその大きなフラグメントをローディングウェルに残す。精製されたRNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0066】
そのような方法のある実施形態では、大きなプロテインは、より小さなペプチド又はアミノ酸から分離精製される。電気泳動の間、大きなプロテインはローディングウェルから電気泳動ゲルへ移動しない。より小さいペプチド又はアミノ酸は、電気泳動ゲルへ移動し大きなプロテインをローディングウェルに残す。精製されたプロテインは、その後ローディングウェルから除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、又は化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0067】
本明細書で開示される関心対象のサンプル成分を分離、単離及び収集する方法の他の実施形態が、図7及び図8に示される。そのような方法では、ローディングウェルは、収集ウェル又は複数の収集ウェルと直接的に並んでいない。その代わり、収集ウェル又は複数の収集ウェルは、ローディングウェルに対して平行な電気泳動レーンにあり(図11参照)、かつ、2対の電極が、二次元(2D)電気泳動により、関心対象のバンドを分離、単離及び収集するのに用いられる。このような二次元(2D)電気泳動の方法において、サンプルは、電気泳動ゲル内に配置されたローディングウェル(LW)にロードされる。サンプルは電気泳動で分離される少なくとも2つのユニークな分子種を含み、少なくとも一つのユニークな分子種は、サンプル成分が分離されたあと、単離されることになる。第1の電界の印加(t=0)より前に、サンプルは、電気泳動ゲル内のローディングウェルに配置され、かつ水又はバッファが収集ウェル(CW)にロードされる。第1回目の電界の印加が、それぞれローディングウェルの上及び収集ウェルの下(図7及び8において+及び−の記号で示される)に配置された電極の間で行われる。サンプル成分は、収集ウェルの方へ、しかし収集ウェルとは異なる電気泳動レーンにおいて移動を始める。ある時間の経過後(t1>t0)、サンプル成分は移動しながら個々のバンドに分離される。サンプル成分の電気泳動による分離及び移動は、関心対象のサンプル成分バンド(*で示される)が、ある時間(t2>t1)において収集ウェルの隣に来るまで継続される。その時点で電界が終了される。第2の電界は、その後ローディングウェル及び収集ウェルの左右(第1の一対の電極と直交する)に配置された電極の間に印加される。分離されたサンプルバンドは、関心対象のサンプル成分が収集ウェル内に来るまで1つ又は複数の収集ウェルの方向へ移動する。関心対象のサンプル成分は、収集ウェルから除去されて、次に適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。図7及び図8は、電気泳動ゲルの上側にローディングウェルを、下側に収集ウェルを示しているが、ローディングウェルが下側で収集ウェルが上側であってもよいことが理解される。さらに、このような二次元の方法は、複数のローディングウェル及び複数の収集ウェルを用いて実行できることが理解されるであろう(ローディングウェル及び収集ウェルの構成の限定されない例を示す図11を参照)。
【0068】
本明細書で提供される方法によって単離される生体分子又は本明細書で提供される方法によって収集されるサンプル成分は、単離された生体分子に関する実質的にすべての公知の方法で用いられ、又は分析されることが理解される。例えば、ある実施形態では、収集した関心対象のサンプル成分は、質量分析法を用いてさらに分析される。例えば、収集された関心対象のサンプル成分は、クローニングやライゲーション反応のようなDNA組換えの処理に用いてもよい。ある実施形態では、生化学的処理は制限酵素クローニングであり、他の実施形態では生化学的処理はハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理は、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10〜1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10〜500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10〜100倍向上した。他の例として、収集された関心対象のサンプル成分は、PCR反応、フラグメントレングス多型解析、DNAシーケンス解析に用いられることができる。ある実施形態では、収集された関心対象のサンプル成分は、その後抗体の生成に用いられるプロテインである。ある実施形態では、収集された関心対象のサンプル成分は、精製されたオリゴヌクレオチドである。
【0069】
ある実施形態では、関心対象の多量の成分は、ウェル配列から収集した量を貯めることにより得られる。そのような実施形態では、ウェル配列は粗試料を精製するのに用いられる。他の実施形態では、多くの2ウェルシステムから収集した量が貯められる。さらに他の実施形態では、サンプルは、一つの大きなローディングウェルにロードされ、関心対象のサンプル成分は、一つの大きな収集ウェルから収集される。
【0070】
本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法を用いて得られる関心対象のサンプル成分の回収率は、10%から100%の範囲である。ある実施形態では、回収率は、50%から95%である。他の実施形態では、回収率は、50%から70%である。他の実施形態では、回収率は、70%から95%である。
【0071】
本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、10基から10000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集するのに用いられる。ある実施形態では、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、50塩基から5000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集することに用いられる。ある実施形態では、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、100塩基から5000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集するのに用いられる。ある実施形態では、本明細書において開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、100塩基から1000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集することに用いられる。
【0072】
本明細書で提供される他の態様は、電気泳動ゲルから生体分子又はサンプルバンドを単離する方法であり、その方法は、
(1)電気泳動カセットが、(i)壁の少なくとも一枚が、少なくとも一列のローディング開口と少なくとも一列の収集開口を有する開口の配列を有する、壁を備える分離チャンバと;(ii)分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルマトリックスであって、少なくとも一列のローディングウェルと少なくとも一列の収集ウェルを備えるウェルの配列を有し、それぞれのローディングウェルがローディング開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる、電気泳動ゲルマトリックスと;(vi)少なくとも一つのアノードと少なくとも一つのカソードを含む少なくとも二つの電極であって、ウェル及び開口の列がアノードとカソードとの間に配置されている、少なくとも二つの電極とを含む、電気泳動カセットを提供又は取得する工程と、
(2)関心対象の生体分子(プロテインなど)など複数の成分を含むサンプルを、少なくとも一つのローディングウェルに、電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通してロードする工程と、
(3)二つの電極の間に電界を印加させ、収集ウェルへ生体分子の電気泳動での移動を行わせる工程と、
(4)収集ウェルから関心対象の生体分子又はバンドを含む液体を、収集開口を通して除去し、それによって関心対象の生体分子又はバンドを単離する工程と、
を含む。
【0073】
ある実施形態では、そのような電気泳動カセットは、壁に囲まれた分離チャンバを形成するように密閉された少なくとも4枚の壁を有する、かつ分離チャンバは、少なくとも2つのウェルを有する電気泳動ゲルマトリックスを含む。さらに、そのようなカセットの少なくとも一枚の壁は、分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルに形成されたウェルへ、カセットの外部からアクセスするため、又はカセットの内部の空の分離チャンバにカセットの外部からアクセスするために、開孔(本明細書で開口とも呼ばれる)の配列を有する。そのようなカセットはまた、電気泳動分離を引き起こすのに必要なすべての化合物を含み、ある実施形態においては、分離されたサンプルバンドを目で見ることができるようにする。また、そのようなカセットは使い捨て可能である。ある実施形態では、電気泳動ゲルは、外部の供給元によって分離チャンバに入れられ、他の実施形態では、分離チャンバは最終消費者が電気泳動ゲルを分離チャンバに入れるまでは、電気泳動カセットの使用前には電気泳動ゲルを含まない。
【0074】
ある実施形態では、電気泳動カセットは液体バッファを含むカセット内の領域に電極を有する。ある実施形態では、液体バッファを含む領域は、電気泳動ゲルと同じ平面にあり、一方、他の実施形態では、液体バッファを含む領域は、電気泳動ゲルの平面の上又は下に配置される。他の実施形態では、電極は電気泳動ゲルのような、液体バッファを必要とせずに印加した電界を促進させるイオンを含むゲルに直接接触している。他の実施形態では、電極は電気泳動ゲルのような、液体バッファを必要とせずに印加した電界を促進させるイオンを含むゲルに埋め込まれている。他の実施形態では、電極は電気泳動ゲルのような、液体バッファを必要とせずに印加した電界を促進させるイオンを含むゲルに間接的に接触している。間接的な接触とは、他のゲル材料を介して接触していてもよく、単純な電気的接触であってもよい。
【0075】
関心対象のサンプル成分の分離、単離、又は収集の別の方法は、スラブゲル電気泳動を用いるオープンシステムである。スラブゲルは、ランニングバッファに浸漬されず、カセット内に含まれない。そのような方法では、スラブゲルは上面と下面を含み、上面は液体に接触していない。又はスラブゲルは電気泳動分離に用いられるランニングバッファに浸漬してはいない。そのような方法では、例えば、スラブゲルは電極に直接的又は間接的に接触するように配置され、電界はサンプルの電気泳動での移動のために印加される。間接的な接触は、電極をスラブゲルとタンクとの間のウィッキング(wicking)手段を有するバッファのタンクに配置するウィッキング技術を用いることによって達成される。又は間接的な接触は、電極とスラブゲルとの間に配置したゲルマトリックスを用いて達成される。さらに、そのような方法に用いられるスラブゲルは、電気泳動カセットのために本明細書で開示されるローディングウェル及び収集ウェルの配列を含み、開口は用いられないが、分離、単離及び収集の方法は、電気泳動カセットのために本明細書で開示されたものと同じである。収集ウェル内の液体と他の液体との間には流体連絡はなく、収集ウェル内の液体と電気泳動分離に用いられるランニングバッファとの間には流体連絡はない。さらに、収集ウェル内の液体は、ローディング又は収集の間、電気泳動カセットの他の液体とは接触しない。収集ウェルに接触している電気泳動スラブゲルの上には液体はない。さらに、収集ウェル内の液体及び選択的にサンプルウェル内の液体は、電気泳動カセット内の唯一の液体であり、収集ウェル内の液体は、電気泳動カセット内に選択的に存在する他の液体から単離される。
【0076】
電気泳動ゲルにおけるウェルの設計及びパターン
上記及び図3から8に開示された限定されない実施形態は、一つのローディングウェル及び少なくとも一つの収集ウェルに一つのカラムを利用している。しかしながら、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法の他の実施形態では、複数のウェル及び開口の配列を用い、複数のローディングウェル及びローディング開口が複数の収集ウェル及び収集開口とともに用いられる。そのようなウェルと開口の配列は、「r×c」配列として開示され、rは列の数、cはカラムの数である。そのような配列の列の数r、カラムの数cは、それぞれ独立しており、そのため、本明細書において開示される方法に用いられるウェル及び開口の配列は対象的な配列(r=c)又は非対称的な配列(r≠c)である。ウェル及び開口の配列は、例えば少なくとも1列、少なくとも2列、少なくとも3列、少なくとも4列、少なくとも5列、少なくとも6列、少なくとも7列、少なくとも8列、少なくとも9列、少なくとも10列、少なくとも11列、少なくとも12列、少なくとも15列、少なくとも20列、少なくとも50列、又は少なくとも100列が、それぞれ独立して少なくとも1カラム、少なくとも2カラム、少なくとも3カラム、少なくとも4カラム、少なくとも5カラム、少なくとも6カラム、少なくとも7カラム、少なくとも8カラム、少なくとも9カラム、少なくとも10カラム、少なくとも11カラム、少なくとも12カラム、少なくとも15カラム、少なくとも20カラム、少なくとも50カラム、又は少なくとも100カラムと組み合わせである。
【0077】
本明細書で開示される方法で用いられるウェル及び開口の配列の限定されない他の例は、r×1配列、r×2配列、r×3配列、r×4配列、r×5配列、r×6配列、r×7配列、r×8配列、r×9配列、r×10配列、r×11配列、r×12配列、r×13配列、r×14配列、r×15配列、r×16配列、r×17配列、r×18配列、r×19配列、r×20配列、r×21配列、r×22配列、r×23配列、r×24配列、r×25配列、r×26配列であり、rは整数2から26であるが、これに限定されない。
【0078】
本明細書で開示される方法で用いられるウェル及び開口の配列の限定されない他の例は、1×c配列、2×c配列、3×c配列、4×c配列、5×c配列、6×c配列、7×c配列、8×c配列、9×c配列、10×c配列、11×c配列、12×c配列、13×c配列、14×c配列、15×c配列、16×c配列、17×c配列、18×c配列、19×c配列、20×c配列、21×c配列、22×c配列、23×c配列、24×c配列、25×c配列、26×c配列、であり、cは整数2から26であるが、これに限定されない。
【0079】
本明細書で開示される方法で用いられるウェルの配列におけるウェル及び開口の配置は、図9に表されるものを含むが、これに限定されない。このような配置は、図9E〜図9Fに示されるような格子状の配置で、列が互い違いに変化する形であってよい。あるいは、ウェル及び開口の配置は、図9A〜図9Dに示されるようなパターンであってよい。そのような配列のパターンのウェル及び開口の数は、2から200、2から150、2から96、2から48、2から24、又は2から12である。
【0080】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は等間隔であり、ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの範囲である。ある実施形態では、ウェル及び開口の配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は等間隔であり、ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間である。
【0081】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの範囲の第1間隔及び5mmから10cmの範囲のインクリメントステップにより、左から右へ直線状インクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの範囲の第1間隔及び5mmから10cmの範囲のインクリメントにより、左から右へ直線状インクリメントで減少できる。
【0082】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの範囲の間のインクリメントのステップとにより、左から右へ非直線状のインクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの間のインクリメントのステップとにより、左から右へ非直線状のインクリメントで減少できる。
【0083】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの範囲の間のインクリメントのステップとにより、上から下へ直線状のインクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェルの配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの間のインクリメントのステップとにより、上から下へ直線状のインクリメントで減少できる。
【0084】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの範囲の間のインクリメントのステップとにより、上から下へ非直線状のインクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェルの配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの間のインクリメントのステップとにより、上から下へ非直線状のインクリメントで減少できる。
【0085】
ウェル及び開口の配列のそれぞれのウェル及び開口は、他と独立して、円、半円、四角形、長方形、三角形又は楕円形であってよい。異なる形状のウェルの寸法は次のようである。
円形のウェル:直径が2mmから15mmの間、深さが1mmから6mmの間。ある実施形態では、直径は2mmから10mmの間、深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、直径は2mm〜5mmの間、深さは1mmから6mmの間。
半円のウェル:半径が1mmから7.5mmの間。深さは、1mmから6mmの間。ある実施形態では、半径は1mmから5mmの間、深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、半径は1mmから3mmの間、深さは1mmから6mmの間。
四角形のウェル:長さ及び幅は2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
長方形のウェル:長さは2mmから15mmの間。幅は2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は、2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は、2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
三角形のウェル:長さは2mmから15mmの間。高さは2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから10mmの間。高さは2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから5mmの間。高さは2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
楕円形のウェル:長さは2mmから15mmの間。高さは2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから10mmの間。高さは2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから5mmの間。高さは2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
【0086】
ウェルは円形又は楕円形であってもよいが、本発明のウェルは、電気泳動の方向に実質的に平坦な壁を有する四角形、長方形、半円又は三角形のウェルであることが好ましい。電気泳動の方向に平坦でない壁は、電気泳動の間サンプルバンドの形に悪影響を与える可能性があり、このためサンプル成分の分離に影響を及ぼす可能性があるからである。加えて、ウェルの深さは電気泳動ゲルの厚さよりも小さくあるべきであり、その場合ウェルの底部は、電気泳動カセットの壁ではなく、電気泳動ゲルで形成される。
【0087】
ウェルの配列のそれぞれのウェルは、他のウェルと独立して150nLから14mLの範囲の容積を有してよい。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから10mLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5uLから1mLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから500μLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから200μLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから100μLの範囲である。限定されないが、500μLから14mLの範囲の容積を有するウェルを含む大きな容積のウェルを、大きなサンプル容積から関心対象の成分を分離、単離、及び収集するのに用いてもよい。
【0088】
本明細書で開示される方法において用いられる電気泳動ゲルの収集ウェル及び開口とローディングウェル及び開口の配置の限定されない例は、図10及び図12に示されている。
【0089】
ゲルカセットのポリマー成分は、可視光に透明、紫外線に透明、赤外線に透明、又は可視光及び紫外線両方に透明なポリマーからなってもよい。本明細書で開示されるゲルカセットを製造するために用いられる限定されないポリマーの例としては、スチレンアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリルベースのポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、グリコール−修飾ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アセタール及びその共重合体である。ゲルカセットのポリマー成分は、熱エンボス、キャスティング処理、熱成形、光造形法処理、機械的処理及び圧延処理などの成形技術を用いて製造できる。さらなる又は別の実施形態では、成形技術は射出成形及び圧縮成形である。
【0090】
本明細書に開示されるように、ゲルカセットは二つの電極、アノード及びカソードを含む。ウェル及び開口の配列は電極の間に配置される。そのような電極を用いて、電気泳動での移動を起こし、サンプル成分を分離させるのに用いられる電界を生じさせる。電気泳動カセットの電極は電気的に導電可能な金属性の材料又は電気的に導電可能な非金属性の材料であり、プラチナ、パラジウム、金、銅、鉛、アルミニウム、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、グラファイト、又はカーボンを含むがこれに限定されない。あるいは、電気泳動カセットの電極は、導電性の金属又は非金属で覆われた非導電性の材料であり、プラチナ、パラジウム、金、銅、鉛、アルミニウム、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、グラファイト、カーボン、又はこれらの組み合わせを含むがこれに限定されない。
【0091】
加えて、ゲルカセットは第1の一対の電極に直交する第2の一対の電極を含んでもよい。その場合、ウェルの配列は、第1及び第2の一対の電極の間に配置される。そのような電極の配置は、本明細書で開示されているようなサンプル成分の二次元(2D)電気泳動での移動及び分離を可能にする。
【0092】
電気泳動ゲルカセットにおける開口の配列は、少なくとも一つの列又はカラムのローディング開口を有し、サンプルは、ローディング開口の下に配置された対応するローディングウェルへ開口を通してロードされる。加えて、開口の配列は、少なくとも一つの列又はカラムの収集開口を有し、分離又は単離されたサンプル成分又は精製されたサンプルが、収集ウェルの上に配置された対応する収集開口を通して収集ウェルから除去される。
【0093】
本明細書で開示される方法の別の態様では、収集ウェルは、電気泳動ゲルを通してサンプルを電気泳動により輸送させるより前に、又は輸送の間、被覆された粒子をロードされる。そのような方法は、サンプルから生体分子を単離することにより、生体分子を精製するのに用いられる。本明細書で述べられる方法、電気泳動システム、アセンブリ、装置及びカセットを用いて生体分子を単離するのに用いられる粒子は、関心対象の生体分子に特に結合する部分で被覆されている。そのような部分は粒子の表面に共有結合又は非共有結合で結合している。ある実施形態では、そのような部分は粒子の表面に吸着されている。本明細書で述べられる方法、電気泳動システム、アセンブリ、装置及びカセットに用いられる生体分子に特異的な部分は、限定されないが、関心対象の生体分子に相補的な特異的シーケンスを有するオリゴヌクレオチド、一般的なシーケンスを有するオリゴヌクレオチド、例えば、PolyA、プライマー、抗体、特異的な抗体、ペプチド、プロテインA又はG、レクチン、受容体、ビオチン、アビヂン、ストレプトアビヂン、グルタチオン、His−タグ及びセルロース結合領域(CBD)などである。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、免疫沈降法により単離される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、塩を含むバッファにより単離される。
【0094】
ある実施形態では、粒子は収集ウェルから除去され、他の実施形態では、関心対象の生体分子は粒子から解放され、その生体分子を含む溶液は、収集ウェルから除去される。単離された生体分子は、クローニングやライゲーションを含むがこれに限定されない他の生物学的処理に用いられる。このため、関心対象の成分は、視覚化プロセスの間に損傷を受けないことが望まれる。ある実施形態では、生化学的処理とは制限酵素のクローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とはハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理とは、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の遺伝組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10から1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10から500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10から100倍向上した。他の実施形態では、単離された生体分子は、配列決定法、質量分析方法、核酸アレイ及び/又はプロテインアレイを用いて分析される。他の実施形態では、単離された生体分子は配列上でスポットされる。他の実施形態では、単離された生体分子は免疫の抗原として用いられる。
【0095】
本明細書で述べられる方法、電気泳動システム、アセンブリ、装置及びカセットを用いて生体分子を単離するために用いられる粒子は、球状又はトロイダル状の粒子又はビーズであってもよい。粒子はガラス又はポリマーのビーズであってもよく、ポリマーのビーズは、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルアミドのビーズ、ポリメチルアクリレートのビーズ、アガロースのビーズ、誘導化セルロース繊維、カルボキシル化ポリエチレンのビーズ、ポリ塩化ビニルのビーズ、ポリメチルアクリレートのビーズ、ポリプロピレンのビーズ、ラテックスビーズ、ポリテトラフルオロエチレンのビーズ、又はポリアクリロニトリルのビーズを含むが、これに限定されない。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約500マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約250マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約100マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約50マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約50マイクロメートルから約500マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約50マイクロメートルから約250マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約50マイクロメートルから約100マイクロメートルである。
【0096】
ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のpHを上げることによって生体分子に特異的な部分から解放される。他の実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のpHを下げることによって生体分子に特異的な部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のイオン強度を上げることによって生体分子の特定の部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のイオン強度を下げることによって生体分子の特定の部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体に還元剤を添加することによって生体分子に特異的な部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、生体分子に特異的な部分に結合するにあたり関心対象の生体分子と競合する競合試薬を添加することによって、生体分子に特異的な部分から解放される。そのような競合試薬は、Hisタグ固定化ビーズ用のイミダゾール、グルタチオン標識ビーズ用の還元型グルタチオン、GSTタグを開裂する因子Xaのようなプロテアーゼを含むがこれに限定されない。
【0097】
ある態様では、電気泳動ゲルの中に収集ウェルは存在しない。しかしながら、1つ以上の収集開口は存在する。これらの態様では、分離されたサンプル成分は、収集開口を通してアクセス可能なゲルの一領域を除去できる収集器具を挿入することにより、電気泳動ゲルから単離される。器具は、例えばゲルに穴を開け、除去したゲルのスライスを収集できるようなものである。通常、ゲルのスライスは、本明細書で開示されている収集ウェルの寸法と形状の範囲である。
【0098】
電気泳動ゲルの各ローディングウェルは、電気泳動レーンの最初に配置され、各ローディングウェルは、電気泳動レーンに沿って配置される対応するローディングウェルの少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる。
【0099】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルカセットは、選択的に各アノードと電気泳動ゲルの間に配置されるカチオンイオン交換マトリックス及び各カソードと電気泳動ゲルの間に配置されるアニオンイオン交換マトリックスを有してもよい。ゲルカセットに組み込まれるカチオン交換マトリックスの制限されない例は、CM25−120Sephadexであり、ゲルカセットに組み込まれるアニオン交換マトリックスの制限されない例は、WA−30であり、ともに米国、セントルイスのシグマ社により商業的に入手可能である。
【0100】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルカセットは、選択的に少なくとも一つのゲルコームによって占められるウェルを分離チャンバに予め投入した電気泳動ゲルを有してもよい。1つ又は複数のコームは、ウェルをローディングウェル及び収集ウェルとして使用できるように除去される。あるいは、本明細書開の方法に使用される電気泳動ゲルカセットは空であり、ユーザーが適切なコームを用いて電気泳動ゲルを投入し、ローディングウェル及び収集ウェルとして使用できるウェル配列を作成してもよい。
【0101】
ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットは、電気泳動ゲルカセットの少なくとも一枚の壁に配置される少なくとも一つのマーキングを有する。かかるマーキングは、バンドが移動する電気泳動レーンの近傍に配置されてよく、又はマーカーはバンドが移動する電気泳動レーンの中に配置されてもよい。このようなマーキングは、関心対象のサンプルバンドが本明細書で開示される収集ウェルにいつ配置されるかを決定する補助として用いてもよい。
【0102】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、ゲルを形成するどのような材料をも含む。例えば、合成ポリマー、天然ポリマー及びこれらの組み合わせを含むがこれに限定されない。そのような合成ポリマーの例は、直線状ポリアクリルアミド、架橋結合ポリアクリルアミド及びポリビニルピロリドンを含むがこれに限定されない。そのような天然ポリマーの例は、アガロース、カラギーナン、キトサンのような多糖類を含むがこれに限定されない。
【0103】
ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、アクリルアミドを含み、例えば、約2.5%から約30%、又は約5%から約20%の濃度のアクリルアミドを含む。ある実施形態では、そのようなポリアクリルアミドの電気泳動ゲルは、1%から10%の架橋剤を含み、架橋剤はビスアクリルアミドを含むがこれに限定されない。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、アガロースを含み、例えば、約0.1%から約5%、約0.5%から約4%、又は約1%から約3%の濃度のアガロースを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、2%のアガロースを含み、他の実施形態では、本明細書において開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、0.8%のアガロースを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、1%のアガロースを含み、他の実施形態では、本明細書において開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、0.5%のアガロースを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、アクリルアミド及びアガロースを含む。例えば、電気泳動ゲルは、約2.5%から約30%のアクリルアミド及び約0.1%から約5%のアガロースか、又は約5%から約20%のアクリルアミド及び約0.2%から約2.5%のアガロースを含む。ある実施形態では、そのようなポリアクリルアミド/アガロースの電気泳動ゲルは、1%から10%の架橋剤を含み、架橋剤はビスアクリルアミドを含むがこれに限定されない。
【0104】
本明細書で開示される方法のある実施形態では、電気泳動カセット内の電気泳動ゲルは、勾配ゲルである。本明細書で開示される方法の他の実施形態では、電気泳動ゲルカセット内の電気泳動ゲルは、高度に架橋結合したゲルである。
【0105】
本明細書で開示される方法のある実施形態では、電気泳動カセット内の電気泳動ゲルは、変性ゲルである。ゲル、サンプル又はゲル及びサンプルは、洗浄剤、カオトロピック材、又はこれらの組み合わせを含む。カオトロピック材は、トリフルオロ酢酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、尿素、塩化グアニジン、及びグアニジンイソチオシアネートを含むがこれに限定されない。変性洗浄剤は、限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。
【0106】
ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセット及び電気泳動ゲルは、E−PAGE(商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)及びE−GEL(登録商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)である。ある実施形態では、E−PAGE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)カセット/ゲルは、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する。他の実施形態では、E−GEL(登録商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)は、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する。ある実施形態では、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する0.8%のE−GEL(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)カセット/ゲルが用いられる。他の実施形態では、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する2%のE−GEL(登録商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)が用いられる。
【0107】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルバッファは、どのような電気泳動バッファであってもよく、両性イオン緩衝液を含むがこれに限定されない。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で5から9のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で6から8.5のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で6から8のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で6から7のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で5から9のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で6から8.5のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で6から8のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で6から7のpHを有する。
【0108】
ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約5から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約6から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約6から約8のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約6から約7のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約5から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約6から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約6から約8のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約6から約7のpKaを有するバッファを含む。
【0109】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルバッファは、コハク酸エステル、クエン酸塩、ホウ酸塩、マレイン酸エステル、カコジル酸塩、N−(2−アセトアミド)イミノ2酢酸(ADA)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N、N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N、N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(バイシン)、(2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1、1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)、トリス−アセテート−EDTA(TAE)、グリシン、ビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。さらに、そのようなゲルバッファはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を含んでもよい。
【0110】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルバッファの濃度は、約10mMから約1Mである。ある実施形態では、濃度は、約20mMから約500mMであり、他の実施形態では、濃度は、約50mMから約300mMの間である。
【0111】
サンプル成分の電気泳動での移動は、定電圧、パルス電圧、定電流、パルス電流、定電力、又はパルス電力により達成される。本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの電極にかけられる電界(V/cm)は、一定のものでもパルスであってもよい。以下に提供される電界の範囲を達成するために印加される電圧、印加される電流、又は印加される電圧の大きさは、電気泳動カセットの寸法やバッファの導電性によって変化するものであることが理解される。例えば、印加される電圧は5Vから2000Vの範囲であり、ある実施形態では、印加される電圧は5Vから1000V、5Vから500V、5Vから250V、又は5Vから100Vの範囲である。例えば、印加される電流は5mAから400mAであり、ある実施形態では、印加される電流は5mAから200mA、5mAから100mA、5mAから50mA、又は5mAから25mAである。ある実施形態では、印加される電流は60mAである。例えば、印加される電力は5mAから400mAであり、ある実施形態では、印加される電力は、25mWから400W、25mWから100W、25mWから50W、又は25mWから25Wである。ある実施形態では、印加される電力は4.5Wである。さらに、印加される電圧(一定又はパルス)の極性は陽性でも陰性でもよく、印加される電流(一定でもパルスでも)の極性は陽性でも陰性でもよい。
【0112】
ある実施形態では、印加される一定の電界の大きさは、1V/cmから100V/cmの間である。ある実施形態では、一定の電界の大きさは、1V/cmから50V/cmの間である。ある実施形態では、一定の電界の大きさは、1V/cmから25V/cmの間である。ある実施形態では、一定の電界の大きさは、1V/cmから15V/cmの間である。ある実施形態では一定の電界の大きさは、1V/cmから10V/cmの間である。
【0113】
パルスの電界のプロファイルは、方形波、三角波、正弦波であってよく、そのようなプロファイルは対称でも非対称でもよい。パルスの電界は、一定のベースラインに加えられ、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから100V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから50V/cmであり、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから25V/cm、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから10V/cmである。ある実施形態では、この電界のベースラインに加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから100V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから50V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界に加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから25V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界に加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから10V/cmである。
【0114】
対称な方形波のパルス電界に関し、ベースライン電界に加えてかけられるパルス電界の時間(ON)は、パルス電界がかけられない時間(OFF)と同じである。ある実施形態では、ONとOFFの時間は1ミリ秒から60秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から40秒の間である。あるONとOFFの時間は1ミリ秒から30秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から20秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から10秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から5秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から1秒の間である。
【0115】
非対称な方形波のパルス電界に関し、電界のベースラインに加えてかけられるパルス電界の時間(ON)は、パルス電界がかけられない時間(OFF)と同じではない。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から60秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から60秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から40秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から40秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から20秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から20秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から10秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から10秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から5秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から5秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から1秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から1秒の間である。
【0116】
対称な三角波のパルス電界に関し、印加される最大電界までランプ電圧比(V/s)が上がる時間は、印加されるベースライン電界にランプ電圧比(V/s)が下がる時間と同じである。ある実施形態では、ランプ電圧アップとランプ電圧ダウンとは10mV/sから100V/sの間である。非対称な三角波のパルス電界に関し、印加される最大電界にランプ電圧比(V/s)が上がる時間は、印加されるベースライン電界にランプ電圧比(V/s)が下がる時間と同じではない。ある実施形態では、ランプ電圧アップは独立して10mV/sから100V/sの間であり、ランプ電圧ダウンは独立して10mV/sから100V/sの間である。
【0117】
対称な正弦波のパルス電界に関し、周期と周波数は一定であり、正弦波の最小の電界は、印加されるベースライン電界と同じである。非対称な正弦波のパルス電界に関し、周期及び周波数は調整され、正弦波の最小の電界は、引火されるベースライン電界と同じである。
【0118】
ある実施形態では、生体分子又は関心対象のバンドが収集ウェルに配置されると、交番電界が印加される。このためウェル内の生体分子又はバンドを維持できる。ある実施形態では、交番電界の周波数は、0.1Hzから1kHzの範囲にわたり、他の実施形態では、周波数は1Hzから1kHzの範囲である。ある実施形態では、交番電界の周波数は、0.5Hzから1kHzの範囲であり、他の実施形態では、周波数は0.5Hzから0.5kHzの範囲である。
【0119】
ある実施形態では、電界はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置、E−GEL(登録商標)I−BASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置、E−BASE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて印加される。
【0120】
可視化及び回収
電気泳動カセットにおける電気泳動ゲルは、本明細書で開示される方法を実行している間、監視される。監視は本明細書において可視化とも呼ばれ、関心対象のサンプルバンドが収集ウェルに移動した時と、これに加え、本明細書で開示される2次元法の場合には、いつ第1電界から第2電界へ切り替えるかを決定するのに用いられる。この可視化は継続的でも断続的でもよい。
【0121】
電気泳動ゲルのサンプルバンドの可視化は、(電気泳動カセット内の)電気泳動ゲルを適当な波長の光で照明し、色素、染色剤、又はサンプルバンドと関連する他のインジケータで観察できるようにすることで達成される。本明細書で開示される分離、単離及び収集の方法に用いられる可視化の方法のある実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、1つ又は複数のローディングウェルに加える前に、サンプルに加えられる。他の実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、サンプルを1つ又は複数のローディングウェルに加える前に、1つ又は複数のローディングウェルに加えられる一方、他の実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、サンプルを1つ又は複数のローディングウェルに加えた後に、1つ又は複数のローディングウェルに加えられる。あるいは、本明細書で開示される分離、単離及び収集の方法に用いられる可視化の方法のある実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、電気泳動での移動の間サンプル成分に結合するように、電気泳動ゲルに加えられる。さらに本明細書で開示される分離、単離及び収集の方法に用いられる可視化の方法のさらに他の実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータはサンプル成分に共有結合的に付着される。
【0122】
可視化のために用いられるシステム、色素又は染色剤は、蛍光であってもよく、蛍光でなくてもよい。本明細書で開示される方法に用いられるシステム、色素又は染色剤の限定されない例としては、SYBR SAFE(商標)染色剤(インビトロジェン社、カールスバッド)、エチジウムブロマイド、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、SYBR(登録商標)染色剤(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)グリーン(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)グリーンI(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)グリーンII(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)ゴールド(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYPRO(登録商標)ルビー(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYPRO(登録商標)オレンジ(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYPRO(登録商標)タンジェリン(インビトロジェン社、カールスバッド)、GELGREEN(商標)(Biotium社、ヘイワード)、GELRED(商標)(Biotium社、ヘイワード)、SEEBLUE(登録商標)染色剤(インビトロジェン社、カールスバッド)、LUMIO(商標)検出システム(インビトロジェン社、カールスバッド)、LUMIO(商標)グリーン(インビトロジェン社、カールスバッド)、LUMIO(商標)レッド(インビトロジェン社、カールスバッド)である。
【0123】
他の実施形態では、可視化は、サンプル成分を銀色に染色することで達成される。他の実施形態では、可視化は、造影剤を加えることで高められる。他の実施形態では、可視化は、蛍光増強剤を加えることで高められる。他の実施形態では、可視化は、カセット又は収集ウェルの領域を、コントラストを与えてウェル内のバンドが容易に見えるように、異なった色又は質感にすることで高められる。他の実施形態では、可視化は、よりコントラストを与えてウェル内のバンドが容易に見えるように、カートリッジの底にステッカーを貼ることで高められる。
【0124】
可視化のために用いられる光は、単色又は多色であってよい。例えば、多色灯は、白色光、UV光又は赤外光であり、単色灯は、レーザーや発光ダイオード(LED)を用いたり、白色光、UV光又は赤外光のような光源を特定のスペクトルでフィルタリングしたりしてもよい。そのような単色光の望まれる波長は、用いられる色素又は染色剤の特定のスペクトルの特性に依存するものであり、当業者はそのような単色の光を得る方法を知っているものと理解される。
【0125】
ある実施形態では、可視化はサンプルの電気泳動の分離の間、電気泳動カセットが配置される独立型「ライトボックス」で実行される。そのようなライトボックスの中で、電気泳動カセットは上又は下から照らされる。監視はCCDカメラ又はビデオカメラを用いて実行されるか、又は分離、単離及び収集を実行する使用者の直接的な観察により行われる。そのような可視化の他の実施形態においては、電気泳動/監視装置が用いられ、監視手段(CCDカメラもしくはビデオカメラ、又は直接の観察)及び電界を印加する手段は一つの装置に結合されている。さらに、他の実施形態では、電気泳動の間に電気泳動カセットを冷却する手段が組み込まれている。そのような冷却は、冷却ガスの流れ(例えば、液体窒素)、ファン、ペルチェ冷却装置により実行される。
【0126】
ある実施形態では、可視化はDARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーター又はSAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターを用いて達成される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。
【0127】
ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。
【0128】
ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置及びE−GEL(登録商標)SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のリアルタイムトランスイルミネーターを用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置に接続され、分離はリアルタイムで、又は分離が完成した後に監視される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置及びE−GEL(登録商標)SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のリアルタイムトランスイルミネーターを用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置に接続される。
【0129】
ある実施形態では、可視化は、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットが接続されているE−BASE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置と、蛍光色素もしくは染色剤又は可視色素もしくは染色剤を監視するための落射照明と、を用いて達成される。ある実施形態では、可視化は、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)カセットが接続されているE−BASE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置と、蛍光色素もしくは染色剤又は可視色素もしくは染色剤を監視するための落射照明と、を用いて達成される。上記に提供される実施形態では、落射照明は、白色光、青色光、レーザー又は発光ダイオード(LED)を含むがこれに限定されない本明細書記載の光源を用いて達成できる。
【0130】
電気泳動ゲルカセットは、電気泳動の間、カセットを保持するように構成されたカセット電気泳動基部の上で電気泳動に使われ、観察される。電気泳動基部は、電気泳動分離のために電力を供給する電気的接続を提供し、電力供給部を含む。本発明のこれらの態様では、電気泳動基部カセットは、カセットが基部に配置された場合に、基部がカセットの底面下で開き、光源から光がカセットへ上向きに向けられるように構成されている。カセット電気泳動基部の全体は、電気泳動の間、又は電気泳動の後、カセットを基部から除去せずにカセット内のゲルの中にある分離されつつある又は分離された分子を観察できるよう、光源の上に配置されている。好ましくは、カセットがカセット電気泳動基部に配置されている場合、カセットの下、すなわち基部の最も下の面(カセットの一つ以上の縁でカセットを支持する基盤の領域)からカセットの底面までの空間の高さは、約10cm未満であり、約5cm未満であり、約3cm未満であり、約2cm未満であり、約1cm未満である。ある実施形態では、カセット電気泳動基部が平坦な上面を有する光源の上に置かれた場合、光源の上面からカセットの底壁までの距離は0から2mm、2から4mm、4から6mm、6から8mm、8から10mmである。
【0131】
好ましい実施形態における電力供給基部は、電気泳動の時間、電流及び/又は電圧などのプログラムの設定が可能なものである。また、好ましい実施形態において、電流の極性は、スイッチ又はボタンの手段によって反対にできる。
【0132】
カセット電気泳動基部は、好ましくは、標準的な電気の出力口にプラグを差し込めるようなAC/DCアダプタが組み込まれているか、標準的な電気の出力口(50/60HZで100〜240VACの出力)にプラグを差し込めるようなコネクタもしくは電源コードを含むか、又はそれらに接続できる。電力供給基部の電力出力は、約5から約240VDCの範囲であり、例えば、10から240VDC、又は20から100VDC、又は約48VDCである。例示の実施形態における最小の電流出力は、約0.4A、0.5A、0.6A、0.7A、0.8A、0.9A又は1Aである。ある例示の実施形態における電力供給装置は、アノード及びカソードの極性を変更することができる。これらの実施形態において、アノード及びカソードの極性の切り替えは、スイッチ、ダイヤル又はボタンの手段で使用者が制御できる。
【0133】
電力供給基部は、一つ、好ましくは二つ以上の電気泳動プログラムによってプログラムされる。プログラムは電気泳動の間及び/又は電気泳動期間に供給される電圧又は電流を決定できる。ある例示的な実施形態においては、少なくとも一つのプログラムは、使用者がアノードとカソードの極性を切り替えることができる「逆(リバース)」プログラムである。ある実施形態におけるプログラムは、例えば、の電力供給電気泳動カセット基部のパネル上に設けられたボタンを使用することにより、使用者によって調整可能である。電力供給基部は、オン/オフスイッチ又はボタン及び、実行中のプログラム、電気泳動の残り時間、電圧又は電流のうち少なくとも一つを表示するLCDディスプレイを有するのが好ましい。電力供給電気泳動カセット基部はさらに、例えば、電源供給がオンになっていることを示すためのLED光のようなインジケータ光と、電気泳動が完了したことを示す音を発するアラームと、を含むことができる。
【0134】
電力供給カセット基部は、好ましくは、使用者が電気泳動の極性を切り替えることができるプログラム又は制御スイッチ又はボタンを含む。ある好ましい実施形態では、使用者が制御ボタンを用いて選択できる「逆」プログラムが含まれている。逆プログラムは、例えば15秒から15分、30秒から10分、1分から5分などの所与の時間、極性を逆にすることができる。逆プログラムの間、電圧の出力は、標準的な電気泳動の分離プログラムの間に使用される電圧の出力と、同じであっても異なっていてもよい。
【0135】
ある例示的な実施形態では、カセットは、プロテイン、ペプチド、核酸分子又は核酸フラグメントの単離に用いられる。それには例えば、2つ以上のウェルを有するゲルを含み、この2つ以上のウェルのうち少なくとも第1のウェル及び第2のウェルが一つの電気泳動レーンにならんでいるクローニングカセットを使用する。また、カセットは、第1のウェルにサンプルをロードし、第2のウェルから分離されたフラグメントを摘出するための開口をウェル上に有する。そのようなクローニングカセットは、2006年8月31日に出願された米国特許仮出願第60/824,210号に述べられ、その全体が参照のため本明細書に援用される。
【0136】
ある例示的な実施形態では、カセットが基部に配置された場合、光源はカセットの下側の基部の空間に挿入される。又はカセット電気泳動基部は、光源を含む光源基部の上に配置されてもよく、この場合、光源は光が発せられる光源基部の一部又は表面である。これらの実施形態では、カセットの下の空間(カセット電気泳動基部の最も底の面で、それが載っている面に接触した部分からカセットの底壁まで)は、少なくとも2mmであり、例えば、2から4mm、4から6mm、6から8mm、8から10mm、1cmから2cm、2cmから4cm、4cmから6cm、6cmから8cm、8cmから10cm、又は10cm以上であってもよい。光源は、上方(基部の上に配置されたカセットに向かって)に方向付けられるものであればどのようなタイプのものであってもよい。光源によって発せられる光は、どのような波長であってもよく、例えばUV、可視、赤外線の波長又はこれらの組み合わせであってもよい。分子の分離は、カセット電気泳動基部の下に配置された光源基部の一部である光源手段によって、電気泳動の間、電気泳動が行われている状態で観察できる。
【0137】
カセット電気泳動基部が光源基部の上に配置されている実施形態では、光源基部の光源(光を発する部分)は、電気泳動基部内のカセットの下の空間の少なくとも一部分を占める。ある実施形態では、90%以上、95%以上、97%以上又は実質的にすべての電気泳動基部に配置されたカセットの下の空いた空間のすべてを占める。例示的な実施形態では、カセット電気泳動基部は、光源を含む光源基部の上に配置され、光源は、電気泳動基部に配置されたカセットの直接下の電気泳動基部内の空間に適合する。
【0138】
本明細書で開示される方法のある実施形態は電気泳動システム/装置を含み、電気泳動システム/装置は、電気泳動の間カセットを支持するカセット電気泳動基部と、電力供給装置と、カセット電気泳動基部に支持されるカセットの中に、光が上方へ方向付けられるように、カセット電気泳動基部へ可逆的に係合できる光源と、を含む。好ましい実施形態では、光源基部は、光源(光源基部の光を発する部分)の寸法が、カセット電気泳動基部内の開口又は空間の寸法と合い、カセットの境界の外に光を発しないで、カセットの中すなわち上方へ光を方向づけられるように構成されている。
【0139】
カセット電気泳動基部は、光源の上に単純に置かれるか、又は適当な手段で光源に可逆的に係合してもよい。例えば、ある例示的な実施形態では、光源は、カセット電気泳動基部が摺動して係合できるスロットもしくは溝を有する支持部又は基礎領域を含んでよく、又は基部を光源の上に位置させるために、及び/又は光源に係合させるために、一つ以上のガイド、タブ、リム、肩部、ピン、段差、柱、フランジ、留め金を有してよい。ある例示的な実施形態では、カセット電気泳動基部の一つ以上の下面上の一つ以上のタブ、リム、肩部、段差、柱、ピン又は他の突起は、光源基部の上にカセット電気泳動基部を配置するために、光源基部の一つ以上の上面における一つ以上の穴、スロット、凹部又はガイドに適合する。ある例示的な実施形態では、光源基部の一つ以上の上面における一つ以上のタブ、リム、肩部、段差、柱、ピン又は他の突起は、光源基部の上にカセット電気泳動基部を配置するために、カセット電気泳動基部の一つ以上の下面における一つ以上の穴、スロット、凹部又はガイドに適合する。
【0140】
光源は、電気的コネクタ(電源コード)を、カセット電気泳動基部のコネクタとは別に有し、オン/オフスイッチ又はボタンを、カセット電気泳動基部のそれとは別に有する。ある好ましい実施形態では、光源は可視光源である。ある好ましい実施形態では、光源はLED光源である。
【0141】
光源は、以下に詳述される光源のいずれであってもよい。好ましい実施形態では、光源はカセットの底部を通して可視光を発する。光源は、選択的に本明細書で説明される光源から発せられる光にフィルターをかけるフィルターを含んでよい。ある実施形態では、カセット電気泳動基部に用いられるカセットの底壁は、光源から発せられた光にフィルターをかけることができる。好ましくは、ゲルが生体分子(プロテイン、ペプチド又は核酸分子)を結合する色素を含むか、又はサンプルがゲルにロードされた際に色素を含む。好ましくは、生体分子に標識をつけるために用いられる色素は、蛍光色素である。蛍光色素は、カセットの底壁を通して送られる波長の光を吸収し、カセットの上壁を通して送られる波長の光を発する。(カセットの上壁は、選択的に、励起した蛍光色素分子の色素が発したのではない波長の光にフィルターをかけるためのフィルターを含む。あるいは、観察者は、ゲルの観察又は撮像のために、フィルターを含むフィルター付き眼鏡、カメラ又は撮像装置を使用してもよい。)核酸やプロテインなどの生体分子の電気泳動の可視検出に用いられる色素、光源及びフィルターの例は本明細書に開示されている。
【0142】
本明細書で開示される方法のある実施形態では、電気泳動ゲルの観察及びランニング、ならびに核酸分子、核酸フラグメント、プロテイン又はペプチドのような生体分子の単離のための電気泳動システムには、電気泳動の間カセットが置かれる基部(「カセット電気泳動基部」とも呼ばれる)が含まれる。カセットは、基部に配置されたカセットの電極に接触する少なくとも2つの電気的接触部及び電気出力口のような電源に接続可能な少なくとも一つのコネクタ、さらに、カセット電気泳動基部に可逆的に係合するように構成された光源基部を含む。従って、カセット電気泳動基部は、カセットが電気泳動の間に置かれる電源供給装置であり、電源供給装置は、カセットを通して設定電流を供給し、及び/又は基部に置かれたカセットの電極を横切る設定電圧を提供する。カセット電気泳動基部は、カセットの少なくとも一つの縁に沿ってカセットに係合ように構成される。カセット電気泳動基部は、電気泳動カセットが基部に置かれている場合に、電気泳動の分離が起きるカセットの領域で、カセットの下に空間が存在するように構成されている。(すなわち、分子の分離が起きるゲルの領域に対応するカセットの下の領域であり、基部はどんな構造も有さず、カセットの下に置かれた光源からカセットの方向に上向きに送られる光を遮断したり不明瞭にしたりするような部品を有さずにむしろ開いている。)
【0143】
光源基部は、電気泳動基部の下に位置づけられた際に、電気泳動基部の中に置かれたカセットの方向へ上向きに光を向ける光源を含む。光源基部は、電源コード及び好ましくはオン/オフスイッチを含む。
【0144】
電気泳動のランニング/観察システムの電気泳動カセット基部も、オン/オフスイッチを含み、好ましくは、一つ以上の電圧又は電流の出力、電圧又は電流の出力のプログラムされた持続期間、電圧又は電流の経過時間、及び/又は電流の極性を制御する一つ以上の追加のスイッチ、ボタン、又はダイヤルを有する。基部/電源供給装置は、好ましくは、電気泳動のランニングの経過時間及び電圧もしくは電流の出力の少なくとも一つを表示する液晶ディスプレイ(LCD)又はLEDディスプレイのようなディスプレイパネルを有する。
【0145】
他の実施形態では、可視化は、電気泳動を行わせる電源供給装置と、可視化システムの両方を単一の一体型装置に統合するシステムを用いることにより達成される(例えば、米国仮出願に記載されているように)。例えば、ある実施形態では、可視化は、本明細書で開示された可視化システムに一体化されているE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電源供給装置を用いて達成される。
【0146】
これらの態様におけるゲルカセットは、電気泳動ゲルを観察及びランニングする基部の上で電気泳動に使用され、観察される。電気泳動ゲルは、電気泳動の間、カセットを位置づけるための基部(「一体化された電気泳動カセット基部」とも呼ばれる)を含む。一体化された電気泳動カセット基部は、基部の上に位置づけられたカセットの電極に接触する少なくとも2つの電気的接触部及び電源供給装置に接続可能な少なくとも一つのコネクタ、及び基部の上に置かれたカセットに光を送ることのできる少なくとも一つの光源を含む。したがって、一体化された電気泳動カセット基部は、電源供給装置と光源とが結合されたものであり、電気泳動の間その上にカセットが位置づけられる。電源供給装置はカセットを通して設定電流を供給し及び/又は基部の上に置かれたカセットの電極を横切って設定電圧を供給する。電気泳動カセット基部は、オン/オフスイッチを有し、好ましくは一つ以上の電圧又は電流の出力、電圧又は電流の出力のプログラムされた持続期間及び/又は電圧又は電流の経過時間を制御する一つ以上の追加のスイッチ、ボタン、又はダイヤルを有する。好ましい実施形態では、一体化された光源を有するカセット電気泳動基部は、電気泳動が一定方向(通常はウェルからアノードに向かって進む)に起こった後、続いて電気泳動の方向を逆にするような、アノード及びカソードの極性を逆にする一つ以上の制御部を有する。基部/電源供給装置は、好ましくは、電気泳動のランニング及び電圧もしくは電流の出力の少なくとも一つを表示する液晶ディスプレイ(LCD)又はLEDディスプレイのようなディスプレイパネルも有する。
【0147】
ある実施形態では、断続的な可視化が本明細書で開示されるマーキングを含む電気泳動カセットを用いて達成される。そのようなマーキングは、関心対象のサンプルバンドがいつ収集ウェルに配置されるかを決定するのに用いられるので、ゲルカセットを継続的に監視する必要はない。そのような方法では、関心対象のサンプルバンドが、収集ウェルの前に配置されたマーキングを通過するのが観察される。関心対象のサンプルバンドが次の収集ウェルに移動するのに必要な時間は、収集ウェルからマーキングまでの距離を、バンドの移動率で割ることにより計算できる。サンプル成分は、その後収集ウェルから除去される。
【0148】
ある実施形態では、関心対象のサンプル成分は、他の生物学的処理に用いられる。他の生物学的処理は、クローニング又はライゲーションを含むがこれに限られない。このため、関心対象の成分は、可視化プロセスの間に損傷を受けないことが好ましい。ある実施形態では、生化学的処理とは、制限酵素のクローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とは、ハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理とは、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10から1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10から500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10から100倍向上した。DNAの場合、損傷は照明に用いられる光(例えば、UV光)又は可視化のために用いられる色素(例えば、エチジウムブロマイド)によって起きる場合がある。ある実施形態では、UV光ではなく可視光が、関心対象のサンプル成分への損傷を最小にする及び/又は除去するために用いられる。他の実施形態では、可視光及びSYBR安全色素が可視化及び関心対象のサンプル成分への損傷を最小にする及び/又は除去するために用いられる。
【0149】
1つ又は複数の収集ウェルからのサンプル成分の回収は、先端が一つ又は先端が複数のピペットを含む手動のマイクロピペッタによって達成されてもよく、又は成分は収集ウェルからロボットピペットシステムで除去されてもよい。
【0150】
本明細書で提供される他の態様は、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、装置及び方法で用いられるキットである。そのようなキットは、本明細書で開示された複数のウェルの電気泳動ゲルカセット及び電源供給装置を含む。ある実施形態では、そのようなキットは、本明細書で開示された2つの列のウェルを有する電気泳動ゲルカセット及び電源供給装置を含む。ある実施形態では、そのような電気泳動ゲルカセットは、アガロースを含み、他の実施形態では、そのような電気泳動ゲルカセットは、ポリアクリルアミドを含む。他の実施形態では、そのような電気泳動ゲルカセットは、アガロース及びポリアクリルアミドを含む。
【0151】
当業者は、本発明がここに特に示され開示されたもののみに限られるものではないことを理解するであろう。本発明は、純粋に本発明の例として意図され、その範囲を制限するものではない次の実施例を考慮してさらに明確にされる。
【0152】
次の実施例は例示のためであり、本明細書で開示された本発明を限定する意図はない。
【0153】
実施例
実施例1
SYBR SAFE(商標)ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)とともにE−GEL(登録商標)0.8%のダブルコームのカセットを使用して、水で希釈して最終容積が20μLになるよう10μLの低オリゴヌクレオチドマスラダー(Cat.#10068−013 インビトロジェン社、カールスバッド)を、ウェルの第1列のそれぞれのウェルにロードした。ウェルの第二列のそれぞれのウェルに30μLの水を加えた。ゲルは、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)トランスイルミネーターの上に置かれたE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いてランした。15分後、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)トランスイルミネーターは、マスラダー成分を分離するバンドの進行を監視するため、電源をオンにした。図13は、関心対象の800bpオリゴヌクレオチド(4番目のバンド)の単離及び収集を撮影した画像である。図13Aでは、第1番目のバンド(100bp)、第2番目のバンド(200bp)、及び第3番目のバンド(400bp)がウェルの2番目の列の収集ウェルを通ったことが観察されている。第3番目のバンドが収集ウェルを出て、第4番目のバンドが収集ウェルに入るのが観察された場合(図13B)、電界をさらに2分間継続し、その後電界をオフにした。第4番目のバンド(800bp)に含まれる液体をマイクロピペッタを用いて収集ウェルから収集した。収集された液体は、さらに別のE−GEL(登録商標)カセット(エチジウウムブロマイドを含む2%のダブルコーム)(インビトロジェン社、カールスバッド)上でランすると、汚染されたバンドを有さない一つのバンドのみが得られた(図13C)。E−GEL(登録商標)カセット(エチジウウムブロマイドを含む2%のダブルコーム)(インビトロジェン社、カールスバッド)の収集バンドの強度は、E−GEL(登録商標)カセット(エチジウウムブロマイドを含む2%のダブルコーム)(インビトロジェン社、カールスバッド)の上でランしたオリジナルのマスラダーで観察された強度とほとんど同じであり、このことからサンプルのロスが最小限であったことが示された。
【0154】
実施例2
48.8%のE−PAGE(商標)ゲルカセットを用いて、15μlのE−PAGE(商標)SEEBLUE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の予め染色されたマーカー(Cat.#LC5700 インビトロジェン社、カールスバッド)をウェルの第1列のそれぞれのウェルにロードし、20μLの水をウェルの第2列のそれぞれのウェルにロードした。ゲルはE−BASE(登録商標)(プログラムEP)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いてランした。図14Aは、ランの33分後に撮影された画像を示し、指定されたバンド(〜21kD)が次のウェルの縁に届いた段階で、さらに水を第2番目のウェルにロードし(追加〜10ul)、かつゲルをさらに3分ランした。この時点で指定されたバンドはウェルの中にある(図14B)。ランを停止し、ウェルの中身をマイロピペッターで収集した。収集された液体を、別のE−PAGE(商標)ゲルカセット(インビトロジェン社、カールスバッド)でランすると、一つのバンド(図14C)が示された。
【0155】
実施例3
DNA染色を内部に含まずに投入された0.8%のE−Gel Clonewellカセット(インビトロジェン社、カールスバッド)(非変性非サイズ分離ゲル)を用いて、GSTを含む組換えにより発現させた融合タンパク質を含む細胞溶解物のサンプルを、ウェルの第1列にロードし、固定化されたグルタチオンとともに30μlのアガロースビーズのスラリーをウェルの第2列にロードした。ゲルは、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いて約30分間ランした。GST標識されたプロテインだけがビーズに結合し、サンプルの他の成分は収集ウェルを通過して移動した。、又はGST標識されたプロテインの方向には移動しなかった。又はローディングウェルの中に残存した。電力供給装置を停止し、収集ウェルの中のpHを低くするか、還元グルタチオンを含む競合バッファを収集ウェルに追加するか、又は因子XaのようなプロテアーゼをGST標識を開裂するために加えることにより、精製されたプロテインをウェルの中の液体に放出させた。精製されたプロテインを含む液体は、マイクロピペッタを用いて収集した。ビーズは収集ウェルの中に残した。
【0156】
実施例4
0.8%のE−Gel Clonewellカセットを用いて、PCR反応の変性生成物の混合物を含むサンプルを、ウェルの第1列にロードし、配列特異的なオリゴヌクレオチドで固定化したアガロースビーズのスラリー30μlをウェルの第2列にロードした。ゲルは、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いて約30分間ランし、移動状態はE−GEL(登録商標)SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)トランスイルミネーターで、全てのDNAバンドがウェルの第2列を通過して移動するのを監視した。この時点で、相補的なシーケンスを有するバンドのみがビーズに結合されているので、ランを停止した。塩、カオトロピック剤又は高いpHを結合DNAを溶離するために加え、溶離したDNAを含む液体は、マイクロピペッタを用いて収集した。
【0157】
本発明は、実施形態と関連して開示されたが、述べられた特定の形式に発明を限定する意図はなく、反対に、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の趣旨及び範囲に含まれる変更、修正及び均等物を包含することが意図されている。
【0158】
前述の記載は、発明の実例にすぎないことは理解されるべきである。見出しは便宜のためのものに過ぎず、見出しの下の開示を見出しのみに限定する意図はない。本発明から離れることなく、当業者によって、種々の変更や修正が実施できる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲に収まるすべての変更、修正、相違を包含するものである。
【0159】
この明細書で言及されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、特定かつ個別に参照として援用されるのと同じ程度に、その全体が参照としてここに援用される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「電気泳動ゲルから生体分子を単離し、収集する方法、カセット、ゲル及び装置」という名称の2006年8月31日出願の米国特許仮出願第60/824,210号、及び「電気泳動ゲルから生体分子を単離し、収集する方法、カセット、ゲル及び装置」という名称の2006年10月13日出願の米国特許仮出願第60/829,517号に対する優先権の利益を主張する。これらの特許出願はともに、参照によりその全体を本願明細書に引用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、電気泳動ゲルからバンドを単離及び収集することを可能にする電気泳動の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ゲル電気泳動は、例えば新しい薬物の研究対象を特定したり、新しい診断テストを特定したりする生科学的サンプルの成分を分析するための公知の手段である。ゲル電気泳動の間、通常は個別には見えず、生物学的サンプルの中で分離されるサンプルの個々の成分は、可視の個々のバンドに分離される。
【0004】
プロテインサンプルやDNA分子のサンプルのようなサンプルは一度電気泳動の手順を行われると、特定のプロテインやDNAバンドなどの特定のサンプル成分のバンドを電気泳動ゲルから除去することが望まれる。電機泳動ゲルからサンプルのバンドを収集する方法は、ゲルから特定された関心対象のバンドを切り出し、切除されたゲルから関心対象のサンプル成分を回復させ、又はゲルにスリットを入れ、関心対象のサンプル成分を捕まえるために固定面にカップを挿入したりすることを含む。しかしながら、このような方法は十分でなく、望まないサンプルの希釈につながることがある。さらに、このような方法は、使い捨ての商業用の製品を用いたハイスループット方法にはよく適合しない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、電気泳動ゲルから生体分子バンドのより効果的及び効率的な単離のための電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法が提供される。具体的な実施例では、電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、使い捨て可能な閉じられた電気泳動カセットを含む。このため、消費者は、外部のベンダー(供給元)から閉じられた電気泳動カセット製品を購入することができ、本明細書において提供される方法を実行するために購入した製品を使用することができる。
【0006】
本明細書で提供される第1の態様は、電気泳動ゲルから生体分子又はバンドを単離する方法であり、この方法は、閉じられた電気泳動カセットを提供し又は取得する工程と、生体分子を含むサンプルを、少なくとも一つのローディングウェルに、電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通してロードする工程と、収集ウェルへ生体分子を電気泳動で移動させるために、電気泳動カセットの電極の間に電界を印加する工程と、関心対象の生体分子又はバンドを含む液体を、収集ウェルから収集開口を通して除去し、それによって関心対象の生体分子又はバンドを単離する工程と、を含む。この方法では、閉じられた電気泳動カセットは、壁を有する分離チャンバであって、この分離チャンバの少なくとも一つの壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口の配列を備える分離チャンバと、この分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、電気泳動ゲルの中に少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルを含むウェルの配列と、を含む。それぞれのローディングウェルは、一つのローディング開口とアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルは、一つの収集開口とアクセス可能であり、ローディングウェルのそれぞれは、電気泳動レーンにおいて少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる。収集ウェルは、液体で満たされており、少なくとも二つの電極は、少なくとも一つのアノード及び少なくとも一つのカソードを含み、ウェル及び開口の列(ウェルの配列及び開口の配列)は、アノード及びカソードの間に配置されている。
【0007】
この態様のある実施形態においては、収集ウェルは水で満たされ、他の実施形態では、収集ウェルはバッファで満たされている。
【0008】
他の実施形態では、開口を有する壁は、内面と外面を備え、内面及び外面は、液体と接していない。さらに他の実施形態に置いては、閉じられた電気泳動カセットは、電気泳動の分離を行うために用いられるランニングバッファに浸されていない。他の実施形態においては、収集ウェルと接している電気泳動ゲルの上に液体はない。他の実施形態においては、収集ウェルの中の液体と電気泳動の分離を行うために用いられるランニングバッファとの間に液体は連通していない。また、他の実施形態においては、収集ウェルの中の液体は、ローディング及び収集中、電気泳動カセットにおいて他の液体と全く接触しない。他の実施形態においては、収集ウェルの中の液体と他の液体との間に液体の連通はない。
【0009】
他の実施形態においては、電気泳動カセット内の唯一の液体は、収集ウェルの中の液体及び選択的にサンプルウェルの中の液体である。他の実施形態では、収集ウェルの中の液体は、選択的に電気泳動カセット内に存在する他の液体から単離されている。
【0010】
さらなる又は別の実施形態においては、この態様の方法はまた、生体分子が収集ウェルの内部にある場合に電界を終了させる工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに収集工程の後、収集ウェルに液体をロードする工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子の電気泳動を、電気泳動レーンに配置された収集ウェルの中に行わせるために電極の間に電界を印加する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに収集開口を通して収集ウェルから第2生体分子を収集する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子が収集ウェルの内部にある場合に電界を終了させる工程を含む。他の実施形態においては、方法は極性を逆にする工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子の電気泳動を、電気泳動レーンに配置された第2収集ウェルの中に行わせるために電極の間に電界を印加する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2の収集開口を通して第2収集ウェルから第2生体分子を収集する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに第2生体分子が第2収集ウェルの内部にある場合に電界を終了させる工程を含む。
【0011】
さらなる又は別の実施形態においては、この態様の方法は、電界を印加する間、生体分子の位置を監視する工程を含む。他の実施形態においては、監視はサンプルの生体分子を損傷しない。他の実施形態においては、監視はUV(紫外線)光で照射する工程を含む。他の実施形態においては、監視は白色光、青色光又は可視光によって照射する工程を含む。他の実施形態においては、監視は蛍光を検出する工程を含む。他の実施形態においては、監視は持続する。さらなる又は別の実施形態においては、方法はまた、バンド又は生体分子の電気泳動での輸送の間、電界を印加する手段と複数のバンド又は生体分子を監視する手段とを組み合わせる装置に電気泳動カセットをロードする工程を含む。
【0012】
さらなる又は別の実施形態においては、方法はさらに、電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングを通り過ぎた生体分子の泳動を監視する工程を含む。他の実施形態においては、方法はさらに電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングの勾配を通った生体分子の泳動を監視する工程を含む。他の実施形態においては、勾配は、直線勾配である。
【0013】
さらなる又は別の実施形態においては、電気泳動カセットは、色素も含む。他の実施形態においては、サンプルは、ローディングウェルにロードされる前に色素と結合されており、一方、他の実施形態においては、サンプルは、ローディングウェルにロードされた後、色素と結合されている。さらなる又は別の実施形態においては、方法は、複数の公知の分子マーカーを有する標準物質のローディングを含み、ある実施形態では、そのようなマーカーは色素を含む。
【0014】
そのような方法のある実施形態では、生体分子はDNA又はそのフラグメントであり、他の実施形態では、生体分子はRNA又はそのフラグメントである。そのような方法のさらに別の実施形態では、生体分子はペプチドであり、他の実施形態では、生体分子はプロテイン又はそのフラグメントである。他の実施形態では、そのような方法は、収集した後に生体分子をローディングウェルへロードする工程を含む。ある実施形態では、そのようなローディングウェルは生体分子を単離し、収集することに用いられた電気泳動カートリッジと異なる電気泳動カートリッジに配置されている。他の実施形態では、方法はさらに収集の後、生体分子を分析する工程を含む。ある実施形態では、生体分子は質量分析法により分析される。他の実施形態では、方法はまた生化学的処理において生体分子を用いる工程を含む。ある実施形態では、生化学的処理とは、クローニング反応であり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、連結反応(ライゲーション)である。ある実施形態では、生化学的処理とは、制限酵素クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、ハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理とは、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10〜1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10〜500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10〜100倍向上した。
【0015】
さらなる又は別の実施形態においては、そのような方法で用いられる電界は、パルス電場である。ある実施形態では、パルス電場は、パルス電圧を用いて生成され、一方、他の実施形態では、そのようなパルス電場は、パルス電流により生成される。他の実施形態では、そのようなパルス電場は、パルス電力により生成される。さらなる又は別の実施形態においては、そのような方法で用いられる電界は、一定の電界である。ある実施形態では、そのような一定の電界は、一定の電圧を印加することにより生成される。ある実施形態では、そのような一定の電界は、一定の電流を流すことにより生成される。他の実施形態では、そのような一定の電界は、一定の電力を供給されることにより生成される。
【0016】
さらなる又は別の実施形態においては、電気泳動ゲルはアガロースを含み、一方、他の実施形態では、電気泳動ゲルはポリアクリルアミドを含む。さらに他の実施形態では、電気泳動ゲルはアガロース及びポリアクリルアミドを含む。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれのローディングウェルの幅は、3mmから5mmであり、電気泳動ゲルにおけるそれぞれのローディングウェルの高さは、1mmから2.5mmである。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれの収集ウェルの幅は、3mmから5mmであり、電気泳動ゲルにおけるそれぞれの収集ウェルの高さは、1mmから2.5mmである。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれのローディングウェルの容量は10μLから30μLである。ある実施形態では、電気泳動ゲルのそれぞれの収集ウェルの容量は10μLから30μLである。
【0017】
他の態様において、電気泳動ゲルから生体分子又はバンドを単離する電気泳動カセットが本明細書で提供される。そのようなカセットは、壁を有する分離チャンバであって、この分離チャンバの少なくとも一つの壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口の配列を備える分離チャンバと、この分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、電気泳動ゲルの中の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルを含むウェルの配列と、を含む。それぞれのローディングウェルは、ローディング開口の下に配置され、それぞれの収集ウェルは、収集開口の下に配置され、ローディングウェルのそれぞれは、電気泳動レーンにおいて少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる。収集ウェルは、液体で満たされており、少なくとも二つの電極は、少なくとも一つのアノード及び少なくとも一つのカソードであり、ウェルの配列及び開口の列は、電極の間に配置されている。壁の上の少なくとも一つのマーキングは、少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一つの収集開口を含む開口の列を有する。少なくとも一つのマーキングは、少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一つの収集開口との間に配置される。他の実施形態においては、マーキング又は複数のマーキングは、電気泳動レーンの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本明細書で開示される方法に用いられる一つの実施形態に係る電気泳動カセットの概略図である。
【図2】図2A及びBは,本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの2つの実施形態の断面外略図(図1のIV線に沿う)である。
【図3】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図4】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図5】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた二つの収集ウェル(CW1及びCW2)による分離及び単離方法の概略代表図であり、関心対象のバンドはCW1においては分解されなかった。tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図6】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた三つの収集ウェル(CW1、CW2及びCW3)による分離及び単離方法の概略代表図であり、関心対象のバンドはCW1においては分解されなかった。tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンド、**は関心対象の第2バンドを示す。
【図7】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による二次元の分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンドを示す。
【図8】一つのローディングウェル(LW)に関連付けられた一つの収集ウェル(CW)による別の二次元の分離及び単離方法の概略代表図であり、tは時間を示し、点線は時間が経過したことを示し、*は関心対象の第1バンドを示す。
【図9】図9A〜Fは本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図である。
【図10】図10A〜Eは、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図であり、ローディングウェル(LW)と収集ウェル(CW)の相対的な位置が示されている。
【図11】図11A〜Fは本明細書で開示される二次元の分離及び単離方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図である。
【図12】図12A〜Eは、本明細書で開示される二次元の分離及び単離方法に用いられる電気泳動カセットの開口及びウェルパターンの概略代表図であり、ローディングウェル(LW)と収集ウェル(CW)の相対的な位置が示されている。
【図13】図13A〜Cは、関心対象の800bp(第4バンド)の単離及び収集を表す画像である。図13Aは、収集ウェルを通過した第1バンド(100bp)、第2バンド(200bp)及び第3バンド(400bp)の画像である。図13Bは、収集ウェルに入った第4バンドの画像である。図13Cは、他のE−GEL(登録商標)カセット(エチジウムボロマイドを含む2%の二重結合)上を移動する800bpの第4バンドの画像である。
【図14】図14A〜Cは、予め染められた〜21kDプロテインマーカーの単離及び収集を示す画像である。図14Aは、収集ウェルの端の〜21kDプロテインマーカー(ピンクバンド)の画像である。図14Bは、収集ウェルの〜21kDプロテインマーカーの画像である。図14Cは、異なるゲルの上を移動する〜21kDプロテインマーカーのTの画像である。
【0019】
本方法及び組成物の特徴及び利点は、本方法の原理、組成物、装置、機械が用いられる実施形態を記載した明細書の詳細な説明と、これに添付される図面を参照することによりさらによく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
電気泳動を用いてサンプル成分を分離した後、電気泳動カセットに含まれるサンプル成分を電気泳動ゲルから分離、単離、収集するのに利用できる電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法が本明細書で開示される。本明細書で開示される方法を用いて分離、単離、収集されるサンプル成分は、電気泳動で分離可能なすべての分子をいう。そのような分子としては、限定されないがペプチド、ポリペプチド、プロテイン、オリゴヌクレオチド、DNAやRNAなどの生体分子を含む。これらの電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、これまでのゲル−分離バンドにおける生体分子の単離方法よりも、より単純で効率的な方法を提供する。電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、特に使い捨ての商業的な製品に適している。
【0021】
本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、電気泳動ゲルを用いて他の分子から分離可能なすべての分子を分離し、単離し、収集するのに用いられる。電気泳動分離は、例えば、電気泳動の移動度(すなわち電荷)、分子量(すなわち質量電荷比)又はこれらの組み合わせにおける違いに基づいている。例えば、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、オリゴヌクレオチド、DNA及、RNAのような核酸、ペプチド、ポリペプチド、プロテインなどを分離、単離及び収集するのに用いられる。加えて、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法は、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAのような核酸、ペプチド、ポリペプチド、及びプロテインを、汚染されている又は汚染されていない他の荷電された(プラスの電荷又はマイナスの電荷)又は非荷電の(中性の)材料から精製するのに用いられる。
【0022】
定義
他に定義されていない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び化学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する
一般的に、本明細書で用いられる用語はこの分野で公知であり共通して用いられているものである。例えば「上」及び「下」、「トップ」及び「底」、「上に」「下に」又は「上側」又は「下側」などの方向の用語は、装置を使用する間の部品の方向について言及する。用語が単数で用いられている場合は、発明者はその用語の複数の場合も意図している。参照として援用された文献に用いられた用語及び定義と相違があった場合には、本出願で用いられた用語が本明細書において与えられる定義となる。開示の全体を通して採用された次の用語は、特に示されない限り、次のような意味を有するものと理解されるべきである。
【0023】
本明細書で用いられる用語「サンプル」は、電気泳動ゲルを用いて分離しうる複数のユニークな分子種の混合を言う。例えば、サンプルは核酸の混合、オリゴヌクレオチドの混合、DNAの混合、RNAの混合、又はこれらの組み合わせであってもよい。加えて、例えば、サンプルは、アミノ酸の混合、ペプチドの混合、プロテインの混合又はこれらの組み合わせであってもよい。また、例えば、サンプルは分子種の混合及び複数の汚染物質であってもよい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「室温」は20℃から25℃の範囲の温度を指す。
【0025】
本明細書で用いられるバイオポリマー又は生体分子とは、限定されないが、核酸、プロテイン、多糖類、脂質、又は他の高分子を含む。核酸とはDNA,RNA,オリゴヌクレオチド及びそのフラグメントと類似物を含む。核酸配列はゲノムのDNA、RNA、ミトコンドリアの核酸、葉緑体の核酸又は分離された遺伝材料を有する他の細胞小器官であってもよい。
【0026】
本明細書において用いられるプロテインは、複合の、一つ以上の長い、折りたたみポロペプチド鎖を含む3次元の物質である。鎖は、アミノ酸と呼ばれる小さな化学的単位を含む。すべてのアミノ酸は炭素、水素、酸素及び窒素を含む。一部は硫黄も含む。「ペプチド」は、2又はそれ以上のアミノ酸を含む化合物である。アミノ酸は、ペプチド鎖を形成するように一列に互いに繋がっている。ペプチドの生物学的な生成に関わる20の天然の異なるアミノ酸があり、どのアミノ酸もペプチド鎖を形成するために順に繋がっている。ペプチドの生物学的な生成において採用される天然のアミノ酸は、すべてL−構造を有する。合成ペプチドは、従来の合成方法を採用し、L−アミノ酸、D−アミノ酸、又は二つの異なる構成のアミノ酸の多様なバリエーションを用いて準備し得る。あるペプチド鎖は、数アミノ酸単位しか含まない。短いペプチド鎖、例えば10未満のアミノ酸単位を有するものは、しばしば「オリゴペプチド」と呼ばれ、接頭辞「オリゴ」は「少ない」を意味する。多くの、例えば100まで又はそれ以上のアミノ酸の単位を含む他のペプチド鎖は、「ポリペプチド」と呼ばれる。接頭辞「ポリ」は「多い」を意味する。さらに一定数のアミノ酸の単位を含む他のペプチド鎖は、その一定数を意味する接頭辞を用いて、例えばオクタペプチドと呼ばれ、ここで、接頭辞「オクタ」は8を意味する。慣例として「ポリペプチド」は3又はそれ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドと考えられる。「オリゴペプチド」は通常、「短い」ポリペプチド鎖の特別な種類であると考えられている。このように、本明細書では、「ポリペプチド」の記載はオリゴペプチドも含むと理解される。さらに、「ペプチド」へのいずれの言及も、ポリペプチド、オリゴペプチドを含む。各異なるアミノ酸配列は、異なるポリペプチド鎖を形成する。ある限定されない例示では、ポリペプチドは40から4000のアミノ酸、50から3000のアミノ酸又は75から2000のアミノ酸を含む。
【0027】
本明細書で用いられる「核酸分子」は、リボヌクレオシド(アデノシン、ジアノシン、ウリジン、シチジンの「RNA分子」)又はデオキシヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシジアノシン、デオキシチミジン、デオキシシチジンの「DNA分子」)、又は単鎖又は2重鎖のらせん形のそのリン酸エステル類似物(ホスホロチオエート、チオエートなど)のリン酸エステルの重合体を言う。2重鎖のDNA−DNA,DNA−RNA,及びRNA−RNAのらせんが可能である。核酸分子という用語、特にDNA又はRNA分子は、分子の第一又は第二次構造を言うものであり、特定の第三次構造に制限するものではない。このように、この用語は2重鎖のDNA分子を含み、とりわけ、線状又は環状のDNA分子(すなわち制限フラグメント)、プラスミド、及び染色体を含む。特に2重鎖のDNA分子の構造を論じる場合、配列はDNAの非転写鎖(mRNAと相同の配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向に配列を与える通常の慣例に従って開示されてよい。「遺伝子組換えDNA分子」は、分子の生物学的な操作を受けたDNA分子である。(Sambrookら、Molecular Cloning, A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)
【0028】
本明細書で用いられる用語「並べられた」又は「並び」は、少なくとも二つの対象物が、線状に配置されていることを言う。本明細書において対象物が並んでいる、又は並んで、とは、それらの中心がこの線から対象物の幅の50%までずれる場合のことを言う。
【0029】
本明細書で用いられる「カオトロピック剤」又は「カオトロプ」とは、プロテイン又は核酸の第二次又は三次構造を変更させることができるものである。
【0030】
本明細書で用いられる「汚染物質」とは、本明細書で説明される方法及び装置を用いて単離又は収集されていないサンプルのすべての成分を言う。例えば、汚染物質は、塩、バッファ、プロテイン、ペプチド、核酸及びアミノ酸を含む。
【0031】
本明細書で用いられる用語「電気泳動レーン」とは、ローディングウェルとこれに対応する収集ウェルとの間の領域を言う。ローディングウェル又は収集ウェルの幅は、(どちらが大きくとも)電気泳動レーンの幅を規定する。
【0032】
生体分子及び/又はサンプルバンドの単離の方法
電気泳動ゲルからサンプル成分を分離、単離、収集する電気泳動システム、アセンブリ、装置、カセット及び方法の実施形態を以下に詳細に述べる。これらの例は、添付図面に示される。
【0033】
本明細書で開示される方法は、一つはローディングウェルでもう一つは収集ウェルの2つのウェル方法である。また、方法は、二つ以上のローディングウェル及び二つ以上の収集ウェルを有する電気泳動ゲルの複数のウェル方法であってもよい。2つのウェル方法及び複数のウェル方法の、多様な実施形態がここに示される。
【0034】
本明細書で提供される一つの態様は、電気泳動ゲルから生体分子又はサンプルバンドを単離する方法であり、方法は、
(1)電気泳動カセットが、(i)壁の少なくとも一枚が、少なくとも一列のローディング開口と少なくとも一列の収集開口を有する、壁を備える分離チャンバと;(ii)分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルマトリックスであって、少なくとも一列のローディングウェルと少なくとも一列の収集ウェルを有し、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる、電気泳動ゲルマトリックスと;(vi)ウェル及び開口の列がこれらの電極の間に配置されている、二つの電極とを含む、閉じられた電気泳動カセットを提供又は取得する工程と、
(2)関心対象の生体分子(プロテインなど)を含む複数の成分のサンプルを、少なくとも一つのローディングウェルに、電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通してロードする工程と、
(3)二つの電極の間に電界を印加し、収集ウェルへ生体分子の電気泳動での移動を行わせる工程と、
(4)収集ウェルから関心対象の生体分子又はバンドを有する液体を、収集開口を通して除去し、それによって関心対象の生体分子又はバンドを単離する工程と、
を含む。
【0035】
ローディングウェルは、通常、マイクロピペッタ(微量分注入器)のようなマイクロリッタースケールの液体を取り扱う器具の先端が開口を通り、ウェルに液体を分注できるように、ローディング開口の下に配置されて、ローディング開口を通してアクセス可能である。収集ウェルは、通常、マイクロピペッタ(微量分注入器)のようなマイクロリッタースケールの液体を取り扱う器具の先端が開口を通り、ウェルから液体を除去できるように、収集開口の下に配置されて、収集開口を通してアクセス可能である。
【0036】
本発明の方法を使用している間、電界が印加されると、液体は収集ウェルに存在する。このため、本方法は、通常収集ウェルを、収集開口を通して水又はバッファのような液体で満たす工程を含む。
【0037】
本明細書に開示される方法において用いられる電気泳動ゲルカセットの限定されない例示として、かつ使用されるカセットにおける限定されない装置の例として、米国特許第5,582,702号、米国特許第5,865,974号、米国特許第6,562,213号が開示され、それぞれ、その全体が参照としてここに援用される。
【0038】
ある実施形態において、本明細書に開示される方法において用いられる電気泳動カセットは、閉じられた電気泳動カセットである。閉じられた電気泳動ゲルカセットは、少なくとも4枚の壁を有し、壁によって囲まれた分離チャンバを形成するように壁は密閉されており、分離チャンバは、そこに形成される少なくとも2つのウェルを有する電気泳動ゲルマトリックスを含む。さらに、そのようなカセットの少なくとも一枚の壁は、分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルに形成されたウェルへ、カセットの外部からアクセスするため、又はカセットの内部の空の分離チャンバにカセットの外部からアクセスするために、開孔(本明細書で開口とも呼ばれる)の配列を有する。そのような閉じられたカセットはまた、電気泳動分離を引き起こすのに必要な、またある実施形態においては、分離されたサンプルバンドを目で見ることができるようにするのに必要なすべての化合物を含む。また、そのような閉じられたカセットは使い捨て可能である。ある実施形態では、電気泳動ゲルは、外部の供給元から入手する分離チャンバに投入/重合され、他の実施形態では、分離チャンバは最終消費者が電気泳動ゲルを分離チャンバに投入/重合するまでは、電気泳動ゲルの使用前には電気泳動カセットを含まない。
【0039】
図1及び図2は、本明細書で開示される方法において用いられる閉じられたカセットの一実施形態を示す。図1は、外観図であり、図2は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。カセット10は、それぞれが所定の厚みを有する底壁19、側壁12、14、及び上壁18を有する3次元の分離チャンバを備える。カセット10は、実質的に壁12、14、16及び19に囲まれて閉じられているが、本明細書で開示されるように開口(36及び37)をも含み、選択的に通気孔(34及び/又は32)を含むこともできる。壁の厚さは0.1〜10mmであり、ある実施形態では1.5mmである。他の実施形態では、厚さは9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmである。
【0040】
カセット10の長さは、50から200mmの範囲である。カセット10の幅は50〜150mmの範囲であり、カセット10の高さは、1〜10mmの範囲である。一実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ160ミリメーター(mm)、100mm及び6mmである。他の実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ100ミリメーター(mm)、80mm及び6mmである。他の実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ100mm、80mm及び6mmである。他の実施形態では、カセット10の長さ、幅及び高さは、それぞれ108mm、135mm及び6.7mmである。
【0041】
カセット10は、選択的に通気孔32及び34を含み、電極23及び21で電気化学反応のゆえに、電気泳動の間に生じる可能性のある気体分子(酸素及び/又は水素)を逃がすことができる。ある実施形態では、通風孔は、0.5〜2mmの径の範囲にわたり、他の実施形態では、通風孔は、0.5〜1mmの径の範囲にわたる。他の実施形態では、通風孔は、1〜2mmの径の範囲にわたり、一実施形態では、通風孔は、1mm径である。ある実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜10個であってよい。他の実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜6個であってよく、他の実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜3個であってよい。また他の実施形態では、各電極に関連する通風孔の数は、1〜2個であってよく、他の実施形態では、一つの通風孔がそれぞれの電極と関連している。通風孔又は孔は、電極上のどこに位置してもよく、図1は本明細書に開示される方法において用いられるカセットに含まれる通風孔の位置に関し、二つの可能な実施形態を示している。
【0042】
ある実施形態では、開口36は、ローディング開口であり、開口37は、収集開口である。他の実施形態では、開口36は、収集開口であり、開口37は、ローディング開口である。カセット10は、開口36及び37から所定の距離を離れた位置に配置されるマーキング25を含んでよい。図1及び図2に示されるある実施形態では、マーキング25は収集開口37から所定の距離を離れて配置されているが、そのようなマーキングはローディング開口36から所定の距離を離れて配置されていてもよい。図1及び図2に示される限定されない実施形態において、マーキング25は、開口36及び37と平行な線に沿って開口36及び37の間に配置されているが、開口36及び37と直接的に位置合わせをされているわけではない(図1参照)。また、別の実施形態においては、マーキング25は開口36及び37の間に配置されており、開口36及び37と直接的に位置合わせをされている。他の実施形態では、マーキング25は開口36及び電極21の間に配置されており、他の実施形態では、マーキング25は開口37及び電極23の間に配置されている。さらに他の実施形態では、マーキング25は、電極21及び23の間であればどこに配置されていてもよい。そのようなマーキングの機能が本明細書に開示される。開口からマーキングまでの距離は1〜100mmである。ある実施形態では、距離は1〜75mmの範囲であり、他の実施形態では、距離は1〜50mmの範囲である。他の実施形態では、距離は1〜25mmの範囲であり、他の実施形態では、距離は1〜10mmの範囲である。他の実施形態では、距離は1〜5mmの範囲であり、一実施形態では、距離は1mmである。
【0043】
図2A及図2Bの断面図60に示されるように、分離チャンバは電気泳動ゲルマトリックス16を含む。これは適切なものであればどのような電気泳動ゲルマトリックス16であってもよく、以下に論じられる。分離チャンバは、符号21及び23の2つの導電可能な電極を含み、外部の直流(DC)電源に接続された場合、電気泳動の分離に必要な電界を印加する。図1及び図2に示される実施形態において、電極21はカソードであり電極23はアノードである。しかしながら、他の実施形態では、電極21はアノードであり電極23はカソードである。
【0044】
分離チャンバは、符号20及び22のイオン交換マトリックスを選択的に含んでもよい。図1から3で示される実施形態では、電極21はカソードであり電極23はアノードであり、マトリックス20はカチオン交換、マトリックス22はアニオン交換マトリックスである。しかしながら、他の実施形態では、電極21はアノードであり電極23はカソードであり、マトリックス20はアニオン交換、マトリックス22はカチオン交換マトリックスである。
【0045】
分離チャンバはまた、それぞれ独立して、電気泳動ゲルマトリックスで占められているか、占められていないか、又はバッファで占められている内部容積29及び30を選択的に含む。占められていない内部容積29、30は、電気泳動の間に発生した気体が蓄積する容積として用いられてもよい。あるいは、上述したように、カートリッジ10は、選択的に、容積29及び/又は30に蓄積された気体を通気する少なくとも2つの通気孔32及び34(各電極に一つの孔)を含んでもよい。カセット10が通気孔32及び34を含む場合、これらは電気泳動が始まる直前に開けられ、テストが完成した後に閉じられることが、汚染の可能性を低減するうえで好ましい。
【0046】
さらに、カートリッジ10は、電極21を支持する傾斜部27を備えてもよい。傾斜部27は、電極21と電極21の上を覆うイオン交換マトリックス22の表面とが持続的に接触することを容易にする。これにより、電極21の近傍で発生した気泡は、放出されると直ちに空の容積30の方へ向かう。ある実施形態では、傾斜部27は、カートリッジ10と一体的に形成され、かつ約45度の角度で底壁19の方へ傾斜している。
【0047】
また、図2A及び図2Bにおける断面図60に示されているのは、電気泳動ゲルマトリックス16に形成されているウェル38及び39である。このようなウェルは開口36及び37の下に配置されている。図1に示されるように、開口36及び37とこれに対応するウェル38及び39は、二列に構成され、一列は電気泳動分離を受ける生体分子のサンプルを導入するために用いられ、他の列は関心対象の生体分子又は個体群を収集するために用いられる。しかしながら、本明細書において開示される方法に用いられる開口及びウェルの構成は、2列に限定されるものではなく、本明細書において論じられる様々な種類の配列のような他の構成を含むこともできる。一実施形態では、カートリッジ10は複数の開口及び複数のウェルを含み、複数の開口及び複数のウェルは1〜200個の開口と1〜200個のウェルである。他の実施形態では、複数の開口及び複数のウェルは1〜100個の開口と1〜100個のウェルである。また他の実施形態では、複数の開口及び複数のウェルは1〜50個の開口と1〜50個のウェルである。ある実施形態では、カートリッジ10は開口96及びウェル96を含み、ある実施形態では、カートリッジ10は開口48及びウェル48を含む。開口36、37及びウェル38、39の寸法は本明細書で論じられるが、しかしながら、ある実施形態では、ウェル38、39は0.5〜5mm幅の寸法を有し、1〜5mmの長さで、3〜5mmの深さである。
【0048】
ウェルは適切な方法であればいずれの方法でも形成できる。例えば電気泳動ゲルマトリックスがまだ液体の状態の場合に、電気泳動ゲルマトリックスのアセンブリの間、分離チャンバ内で「コーム」を電気泳動ゲルマトリックス16に導入することにより形成される。「コーム」は上壁18の開口を経由して電気泳動ゲルマトリックス内へ突出するように配置される突出する歯を有する。マトリックスがコーム状の特徴の周囲でゲル状に固体化する場合に、ウェルが電気泳動ゲルマトリックス内に形成される。コームが電気泳動ゲルマトリックス及び開口から引き抜かれた場合に、ウェルは、サンプル、バッファ又は水のような液体をロード可能である。コームはローディングの直前に取り除かれてもよく、ローディングの一定時間前に取り除かれてもよい。例えばローディングの5秒前から1日前、ローディングの10秒前から12時間前、ローディングの10秒前から30分前、に取り除かれてもよい。あるいは、コームは電気泳動ゲルマトリックス及び開口から引き抜かれ、カセット(開口及び対応するウェルを含む)の上はテープで覆われて、潜在的な汚染からウェルを密閉し保護することとなる。密閉テープはその後ローディングの直前に除去される。又はローディングの数時間前に除去してもよい。例えば、ローディングの5秒前から1日前、ローディングの10秒前から12時間前の範囲である。
【0049】
本明細書で開示される関心対象の生体分子の分離、単離、又は収集の方法において、開口36、37及びウェル38、39はローディング又は収集の開口又はウェルのいずれにも設定することができる。対応するローディングウェルの下に配置されるローディング開口は、サンプルをローディングウェルにロードするために用いられる。一方、収集開口は、収集開口の下に配置された収集ウェルから関心対象の生体分子を収集するために用いられる。
【0050】
図1及び図2を参照すると、本明細書で開示される関心対象の生体分子の分離、単離、収集の方法は、次のようなものである。電気泳動の分離前に、生体分子のサンプルは、ローディング開口36を経由してローディングウェル38に配置される。一方、バッファ又は水のような液体が、収集開口37を経由して収集ウェル39に配置される。使用されていないいずれのローディングウェルも、液体で満たしてもよい。電極21及び23に接続された外部の電源は、サンプル成分の電気泳動での移動を行い、電気泳動で分離した成分を検出したバンドに移動させるために、電源をオンにして必要な電界を供給する。それぞれのバンドは、それぞれ単一の生体分子種を有し、又は電気泳動で移動する類似する特徴を有する種の混合を含んでもよい。電気泳動の分離は、関心対象の生体分子を含む関心対象のサンプルバンドが収集ウェル39に入るまで続けることができ、その時点で電源はオフにされる。収集ウェル39内の液体は収集開口37を通じて除去される。収集ウェル39から除去された液体は、関心対象の生体分子を含む関心対象のサンプルバンドを含んでいる。収集されたサンプルバンドは、分析的評価に使用されるか、クローニングのような生物学的処理に用いられる。ある実施形態では、生化学的処理は、制限酵素のクローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理は、ハイスループットの再結合クローニングである。ある実施形態では、生化学的処理は、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10〜1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10〜500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10〜100倍向上した。さらに、必要な場合は、収集されたサンプルは、本明細書で開示された方法を繰り返すことでさらに精製される。電源は、通常は直流(DC)電源である。
【0051】
他の実施形態では、収集ウェル39は液体で再度満たされることができ、直流(DC)電源が再度入れられて、電気泳動ゲルマトリックス16に残存しているバンドの移動及び分離を継続する。電気泳動の分離は関心対象の異なる生体分子を含む関心対象の異なるサンプルバンドが収集ウェル39に入るまで続けることができ、その時点で直流(DC)電源が再度オフにされる。収集ウェル39の内部の液体は、収集開口37を通して除去され、収集されたサンプルバンドは上述したようにして用いられる。
【0052】
別の実施形態では、収集ウェル39に液体を再度充満させることができ、直流(DC)電源を再びオンにし、極性が逆にされる。関心対象の異なる生体分子を含む関心対象の異なるサンプルバンドがウェル39に入るまで電気泳動分離を継続してもよい。入った時点で電流(DC)電源を再びオフにする。収集ウェル39内の液体は収集開口37を通して除去し、収集したサンプルバンドは上述した方法で使用しても良い。
【0053】
別の実施形態では、関心対象のバンド、又はその一部が電界を終了させる前に収集ウェルを通過して移動した場合に、上記の逆のモードを適用することができる。そのような実施形態では、電界は逆にされ、収集し損なったバンド又はその一部は、収集ウェルに戻るように移動し、上述したようにして収集される。
【0054】
他の実施形態では、上に開示された逆のモードは、収集ウェルの幅よりも大きな幅を有するバンドを有する拡散したバンドの収集の生産性を向上させるのに用いられる。そのような実施形態では、関心対象の拡散したバンドは、最後尾が収集ウェルに入るまで、収集ウェルを通過して移動され、電界が終了され、収集ウェル内部の液体が除去される。収集ウェルはそれからまた液体で満たされ、電界は電極を逆にして、再度印加される。関心対象のバンドの残りの部分は収集ウェルに戻り、上述の方法で収集される。これらの実施形態は関心対象のバンドを収集し単離するために2つのフラクションを用いるが、関心対象のバンドを収集し単離するフラクションの数は3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上であってもよいことは理解されている。ある実施形態では、使用されるフラクションの数は、収集ウェルの幅と比較した移動するバンド幅に依存する。バンドが広ければ、より多くのフラクションが必要とされる。
【0055】
他の実施形態では、拡散したバンドの収集の生産性には、逆のモードは用いない。そのような実施形態では、関心対象の拡散したバンドは、先導する端部が収集ウェルから出ようとするまで、収集ウェルの中に移動することを許される。そこで電界が終了され、収集ウェル内部の液体は除去される。収集ウェルはそれから液体で再度満たされ、電界が再度印加される。これらの実施形態は関心対象のバンドを収集し単離するために2つのフラクションを用いるが、関心対象のバンドを収集し単離するフラクションの数は3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上であってもよいことは理解されている。ある実施形態では、使用されるフラクションの数は、収集ウェルの幅と比較した移動するバンド幅に依存する。バンドが広ければ、より多くのフラクションが必要とされる。
【0056】
別の実施形態では、マーキング25は、収集開口37からマーキング25までの距離をサンプルバンドの電気泳動の移動率で割ることにより、関心対象のバンドが収集ウェル39に入る時間を計算するのに用いられる。
【0057】
図3から6は、本明細書で開示される電気泳動ゲルから生体分子及び/又は1つ又は複数のバンドの単離方法の限定されない実施形態の図である。2つのウェル方法が図3に示されており、サンプルは、電気泳動カセットのローディング開口を通して、電気泳動カセットに入った電気泳動ゲル内のローディングウェル(LW)にロードされる。サンプルは電気泳動で分離されるべき少なくとも2つのユニークな分子種を含んでいると考えられるし、通常含んでいる。少なくとも一つのユニークな分子種は、サンプル成分が分離された後、電気泳動ゲルから単離される。電界を印加させるより前に(t=0)、サンプルは、電気泳動ゲルの中のローディングウェルに配置され、水又はバッファが収集ウェル(CW)にロードされる。電界はその後印加されて、サンプル成分は収集ウェルに向かって移動を始める。いくらか時間が経過した後、(t1>t0)サンプル成分は、収集ウェルに向かって移動し続けながら、個々のバンドに分離する。サンプル成分の電気泳動分離及び移動は、関心対象のバンドのサンプル成分(*で示される)が、ある時間(tn)で収集ウェルに移動するまで継続され、そこで電界は終了される。図3から6の大きな点線は時間の経過を指すことに注意されたい。収集ウェル内のサンプル成分は、除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0058】
関心対象の成分バンドより先に移動するどんなサンプル成分のバンドも、収集ウェルを通過して移動し、電気泳動ゲルに戻り、ゲルの中で移動し続ける。図3に示される実施態様では、もしそのような成分が関心対象の成分で、第1の関心対象のバンドを除去した後のものである場合には、収集ウェルは水又はバッファで再度満たされて、そのバンドが収集ウェルに戻ってくるように電界の電極は逆にされる(tn+1)。関心対象の第2バンドが収集ウェル内にある場合は、電界は再度終了され、かつ第2バンドはある時間で(tn−m)収集ウェルから除去される。
【0059】
2つのウェル方法の他の実施形態は、図4に示される。サンプルは、電気泳動ゲル内に配置されるローディングウェルにロードされ、かつサンプル成分が分離された後、少なくとも2つの関心対象のサンプルバンドが、電気泳動ゲルから除去される。電界を印加させるより前に(t=0)、サンプルは電気泳動ゲルの中のローディングウェルに配置され、水又はバッファが収集ウェル(CW)にロードされる。電界はその後印加されて、サンプル成分は収集ウェルに向かって移動を始める。いくらか時間が経過した後(t1>t0)、サンプル成分は、収集ウェルに向かって移動し続けるにしたがって、個々のバンドに分離する。サンプル成分の電気泳動分離及び移動は、関心対象のバンドである第1サンプル成分(*で示される)が収集ウェルに移動するまで(t3>t2)継続され、そこで電界は終了される。収集ウェル内のサンプル成分は、除去されて、次に適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。収集ウェルは、それから水又はバッファで再度満たされ、関心対象の第2バンドが収集ウェルに移動するまで(tn)電界が再度印加され、その時点で電界が終了され、第2サンプル成分は、収集ウェルから除去される。第2サンプル成分は、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されてもよいか、又は化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。再度、関心対象のバンドより先に移動した任意のサンプルは、上述に開示のように極性を逆にすることによって電気泳動ゲルから単離及び除去されることができる。
【0060】
図5は、関心対象の少なくとも2つのサンプル成分を分離、単離、収集する複数のウェル方法の限定されない実施形態を示す。ここでは、サンプル成分は、収集ウェルに移動する前には分解されていない。本実施形態で開示される複数のウェル方法では、一つのローディングウェル(LW)と電気泳動レーンで互いに並ぶ二つの収集ウェル(CW1及びCW2)を有する電気泳動ゲルを用いる。この本実施形態では、電界を印加するより前に(t=0)、サンプルは電気泳動ゲルの中のローディングウェルに配置され、水又はバッファが収集ウェル(CW1及びCW2)にロードされる。電界はその後印加されて、サンプル成分は収集ウェルに向かって移動を始める。時間の経過後、(t1>t0)サンプル成分のほとんどは個々のバンドに分離されるが、関心対象の2つの成分は分解されずに残存している。サンプル成分は、第1収集ウェル(CW1)に向かって移動し続け、関心対象の2つの成分がCW1に入った場合(t2>t1)、これらは分解されずに残存している。サンプル成分の電気泳動による分離及び移動は、関心対象の第1バンド(*で示される)及び第2バンド(**で示される)が分解し、関心対象の第1バンドがある時間(t3>t2)で第2収集ウェル(CW2)に入るまで継続される。電界は終了され、第1サンプル成分は、CW2から除去され、次に適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。収集ウェルはその後水又はバッファで再び満たされ、関心対象の第2バンドがある時間(tn)でCW2に入るまで電界は再度印加される。入った時点で電界は終了され、第2サンプル成分は収集ウェルから除去される。第2サンプル成分はさらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられてよい。再び、関心対象のバンドより前に移動したどのサンプルバンドも、上述したように電極を逆にすることによって、電気泳動ゲルから単離され、除去され得る。
【0061】
上に開示され、図5で例示された方法は、CW1に届くより前に分解された成分を含む、3つ以上の関心対象の成分の単離に適用できることが理解される。さらに、分解しにくいサンプル成分は、上に開示の複数のウェル方法を用いるよりも2つのウェル方法を用いた方が分離、単離、収集されやすいことが理解される。2つのウェル(ローディングウェル及び収集ウェル)の間の距離が大きくなるので、サンプル成分は分解しやすくなるからである。あるいは、ゲルの組成及び/又は電界は、サンプル成分の分離の特徴に影響を与えるように、変更してもよい。これにより、サンプルバンドの分解及び関心対象の1つ又は複数のバンドの収集が可能になる。
【0062】
関心対象のサンプル成分がCW2に入る前に分解されていない場合のために、第3収集ウェル(CW3)を含む、複数のウェル方法の他の実施形態が図6に示される。図6に示す関心対象の2つのサンプル成分は、上記に開示された方法を用いて電気泳動ゲルから分離、単離及び収集される。
【0063】
関心対象の2つのサンプル成分が、CW3に入る前に分解されていない場合、関心対象のサンプル成分の電気泳動による分離は継続され、4番目、5番目、6番目、7番絵、8番目などの収集ウェルが、バンドが分解されるまで用いられることは理解される。必要な収集ウェルの数は、個々のサンプル成分の電気泳動の特徴に依存する。あるいは、電気泳動ゲルの特性及び電界のパラメータを調整することにより、収集ウェルの過剰な数や、非常に大きなゲルを必要とせずに、バンドの分解が達成される。本明細書で開示される方法に用いられるウェルの多様な配置、電気泳動ゲル、電界のパラメータが本明細書に開示されている。
【0064】
そのような方法のある実施形態では、DNA又はその大きなフラグメントは、より小さなオリゴヌクレオチド又は核酸から分離精製される。電気泳動の間、DNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから電気泳動ゲルへ移動しない。より小さいオリゴヌクレオチド又は核酸は、電気泳動ゲルへ移動しDNA又はその大きなフラグメントをローディングウェルに残す。精製されたDNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0065】
そのような方法のある実施形態では、RNA又はその大きなフラグメントは、より小さなオリゴヌクレオチド又は核酸から分離精製される。電気泳動の間、RNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから電気泳動ゲルへ移動しない。より小さいオリゴヌクレオチド又は核酸は、電気泳動ゲルへ移動しRNA又はその大きなフラグメントをローディングウェルに残す。精製されたRNA又はその大きなフラグメントはローディングウェルから除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0066】
そのような方法のある実施形態では、大きなプロテインは、より小さなペプチド又はアミノ酸から分離精製される。電気泳動の間、大きなプロテインはローディングウェルから電気泳動ゲルへ移動しない。より小さいペプチド又はアミノ酸は、電気泳動ゲルへ移動し大きなプロテインをローディングウェルに残す。精製されたプロテインは、その後ローディングウェルから除去されて、さらに適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、又は化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。
【0067】
本明細書で開示される関心対象のサンプル成分を分離、単離及び収集する方法の他の実施形態が、図7及び図8に示される。そのような方法では、ローディングウェルは、収集ウェル又は複数の収集ウェルと直接的に並んでいない。その代わり、収集ウェル又は複数の収集ウェルは、ローディングウェルに対して平行な電気泳動レーンにあり(図11参照)、かつ、2対の電極が、二次元(2D)電気泳動により、関心対象のバンドを分離、単離及び収集するのに用いられる。このような二次元(2D)電気泳動の方法において、サンプルは、電気泳動ゲル内に配置されたローディングウェル(LW)にロードされる。サンプルは電気泳動で分離される少なくとも2つのユニークな分子種を含み、少なくとも一つのユニークな分子種は、サンプル成分が分離されたあと、単離されることになる。第1の電界の印加(t=0)より前に、サンプルは、電気泳動ゲル内のローディングウェルに配置され、かつ水又はバッファが収集ウェル(CW)にロードされる。第1回目の電界の印加が、それぞれローディングウェルの上及び収集ウェルの下(図7及び8において+及び−の記号で示される)に配置された電極の間で行われる。サンプル成分は、収集ウェルの方へ、しかし収集ウェルとは異なる電気泳動レーンにおいて移動を始める。ある時間の経過後(t1>t0)、サンプル成分は移動しながら個々のバンドに分離される。サンプル成分の電気泳動による分離及び移動は、関心対象のサンプル成分バンド(*で示される)が、ある時間(t2>t1)において収集ウェルの隣に来るまで継続される。その時点で電界が終了される。第2の電界は、その後ローディングウェル及び収集ウェルの左右(第1の一対の電極と直交する)に配置された電極の間に印加される。分離されたサンプルバンドは、関心対象のサンプル成分が収集ウェル内に来るまで1つ又は複数の収集ウェルの方向へ移動する。関心対象のサンプル成分は、収集ウェルから除去されて、次に適用可能な種々の分析的技術で分析されるか、化学的、生化学的又は分子生物学的処理に用いられる。図7及び図8は、電気泳動ゲルの上側にローディングウェルを、下側に収集ウェルを示しているが、ローディングウェルが下側で収集ウェルが上側であってもよいことが理解される。さらに、このような二次元の方法は、複数のローディングウェル及び複数の収集ウェルを用いて実行できることが理解されるであろう(ローディングウェル及び収集ウェルの構成の限定されない例を示す図11を参照)。
【0068】
本明細書で提供される方法によって単離される生体分子又は本明細書で提供される方法によって収集されるサンプル成分は、単離された生体分子に関する実質的にすべての公知の方法で用いられ、又は分析されることが理解される。例えば、ある実施形態では、収集した関心対象のサンプル成分は、質量分析法を用いてさらに分析される。例えば、収集された関心対象のサンプル成分は、クローニングやライゲーション反応のようなDNA組換えの処理に用いてもよい。ある実施形態では、生化学的処理は制限酵素クローニングであり、他の実施形態では生化学的処理はハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理は、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、一方、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10〜1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10〜500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10〜100倍向上した。他の例として、収集された関心対象のサンプル成分は、PCR反応、フラグメントレングス多型解析、DNAシーケンス解析に用いられることができる。ある実施形態では、収集された関心対象のサンプル成分は、その後抗体の生成に用いられるプロテインである。ある実施形態では、収集された関心対象のサンプル成分は、精製されたオリゴヌクレオチドである。
【0069】
ある実施形態では、関心対象の多量の成分は、ウェル配列から収集した量を貯めることにより得られる。そのような実施形態では、ウェル配列は粗試料を精製するのに用いられる。他の実施形態では、多くの2ウェルシステムから収集した量が貯められる。さらに他の実施形態では、サンプルは、一つの大きなローディングウェルにロードされ、関心対象のサンプル成分は、一つの大きな収集ウェルから収集される。
【0070】
本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法を用いて得られる関心対象のサンプル成分の回収率は、10%から100%の範囲である。ある実施形態では、回収率は、50%から95%である。他の実施形態では、回収率は、50%から70%である。他の実施形態では、回収率は、70%から95%である。
【0071】
本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、10基から10000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集するのに用いられる。ある実施形態では、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、50塩基から5000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集することに用いられる。ある実施形態では、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、100塩基から5000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集するのに用いられる。ある実施形態では、本明細書において開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法は、100塩基から1000塩基を有する核酸のシーケンスを分離、単離及び収集することに用いられる。
【0072】
本明細書で提供される他の態様は、電気泳動ゲルから生体分子又はサンプルバンドを単離する方法であり、その方法は、
(1)電気泳動カセットが、(i)壁の少なくとも一枚が、少なくとも一列のローディング開口と少なくとも一列の収集開口を有する開口の配列を有する、壁を備える分離チャンバと;(ii)分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルマトリックスであって、少なくとも一列のローディングウェルと少なくとも一列の収集ウェルを備えるウェルの配列を有し、それぞれのローディングウェルがローディング開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる、電気泳動ゲルマトリックスと;(vi)少なくとも一つのアノードと少なくとも一つのカソードを含む少なくとも二つの電極であって、ウェル及び開口の列がアノードとカソードとの間に配置されている、少なくとも二つの電極とを含む、電気泳動カセットを提供又は取得する工程と、
(2)関心対象の生体分子(プロテインなど)など複数の成分を含むサンプルを、少なくとも一つのローディングウェルに、電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通してロードする工程と、
(3)二つの電極の間に電界を印加させ、収集ウェルへ生体分子の電気泳動での移動を行わせる工程と、
(4)収集ウェルから関心対象の生体分子又はバンドを含む液体を、収集開口を通して除去し、それによって関心対象の生体分子又はバンドを単離する工程と、
を含む。
【0073】
ある実施形態では、そのような電気泳動カセットは、壁に囲まれた分離チャンバを形成するように密閉された少なくとも4枚の壁を有する、かつ分離チャンバは、少なくとも2つのウェルを有する電気泳動ゲルマトリックスを含む。さらに、そのようなカセットの少なくとも一枚の壁は、分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルに形成されたウェルへ、カセットの外部からアクセスするため、又はカセットの内部の空の分離チャンバにカセットの外部からアクセスするために、開孔(本明細書で開口とも呼ばれる)の配列を有する。そのようなカセットはまた、電気泳動分離を引き起こすのに必要なすべての化合物を含み、ある実施形態においては、分離されたサンプルバンドを目で見ることができるようにする。また、そのようなカセットは使い捨て可能である。ある実施形態では、電気泳動ゲルは、外部の供給元によって分離チャンバに入れられ、他の実施形態では、分離チャンバは最終消費者が電気泳動ゲルを分離チャンバに入れるまでは、電気泳動カセットの使用前には電気泳動ゲルを含まない。
【0074】
ある実施形態では、電気泳動カセットは液体バッファを含むカセット内の領域に電極を有する。ある実施形態では、液体バッファを含む領域は、電気泳動ゲルと同じ平面にあり、一方、他の実施形態では、液体バッファを含む領域は、電気泳動ゲルの平面の上又は下に配置される。他の実施形態では、電極は電気泳動ゲルのような、液体バッファを必要とせずに印加した電界を促進させるイオンを含むゲルに直接接触している。他の実施形態では、電極は電気泳動ゲルのような、液体バッファを必要とせずに印加した電界を促進させるイオンを含むゲルに埋め込まれている。他の実施形態では、電極は電気泳動ゲルのような、液体バッファを必要とせずに印加した電界を促進させるイオンを含むゲルに間接的に接触している。間接的な接触とは、他のゲル材料を介して接触していてもよく、単純な電気的接触であってもよい。
【0075】
関心対象のサンプル成分の分離、単離、又は収集の別の方法は、スラブゲル電気泳動を用いるオープンシステムである。スラブゲルは、ランニングバッファに浸漬されず、カセット内に含まれない。そのような方法では、スラブゲルは上面と下面を含み、上面は液体に接触していない。又はスラブゲルは電気泳動分離に用いられるランニングバッファに浸漬してはいない。そのような方法では、例えば、スラブゲルは電極に直接的又は間接的に接触するように配置され、電界はサンプルの電気泳動での移動のために印加される。間接的な接触は、電極をスラブゲルとタンクとの間のウィッキング(wicking)手段を有するバッファのタンクに配置するウィッキング技術を用いることによって達成される。又は間接的な接触は、電極とスラブゲルとの間に配置したゲルマトリックスを用いて達成される。さらに、そのような方法に用いられるスラブゲルは、電気泳動カセットのために本明細書で開示されるローディングウェル及び収集ウェルの配列を含み、開口は用いられないが、分離、単離及び収集の方法は、電気泳動カセットのために本明細書で開示されたものと同じである。収集ウェル内の液体と他の液体との間には流体連絡はなく、収集ウェル内の液体と電気泳動分離に用いられるランニングバッファとの間には流体連絡はない。さらに、収集ウェル内の液体は、ローディング又は収集の間、電気泳動カセットの他の液体とは接触しない。収集ウェルに接触している電気泳動スラブゲルの上には液体はない。さらに、収集ウェル内の液体及び選択的にサンプルウェル内の液体は、電気泳動カセット内の唯一の液体であり、収集ウェル内の液体は、電気泳動カセット内に選択的に存在する他の液体から単離される。
【0076】
電気泳動ゲルにおけるウェルの設計及びパターン
上記及び図3から8に開示された限定されない実施形態は、一つのローディングウェル及び少なくとも一つの収集ウェルに一つのカラムを利用している。しかしながら、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、カセット及び方法の他の実施形態では、複数のウェル及び開口の配列を用い、複数のローディングウェル及びローディング開口が複数の収集ウェル及び収集開口とともに用いられる。そのようなウェルと開口の配列は、「r×c」配列として開示され、rは列の数、cはカラムの数である。そのような配列の列の数r、カラムの数cは、それぞれ独立しており、そのため、本明細書において開示される方法に用いられるウェル及び開口の配列は対象的な配列(r=c)又は非対称的な配列(r≠c)である。ウェル及び開口の配列は、例えば少なくとも1列、少なくとも2列、少なくとも3列、少なくとも4列、少なくとも5列、少なくとも6列、少なくとも7列、少なくとも8列、少なくとも9列、少なくとも10列、少なくとも11列、少なくとも12列、少なくとも15列、少なくとも20列、少なくとも50列、又は少なくとも100列が、それぞれ独立して少なくとも1カラム、少なくとも2カラム、少なくとも3カラム、少なくとも4カラム、少なくとも5カラム、少なくとも6カラム、少なくとも7カラム、少なくとも8カラム、少なくとも9カラム、少なくとも10カラム、少なくとも11カラム、少なくとも12カラム、少なくとも15カラム、少なくとも20カラム、少なくとも50カラム、又は少なくとも100カラムと組み合わせである。
【0077】
本明細書で開示される方法で用いられるウェル及び開口の配列の限定されない他の例は、r×1配列、r×2配列、r×3配列、r×4配列、r×5配列、r×6配列、r×7配列、r×8配列、r×9配列、r×10配列、r×11配列、r×12配列、r×13配列、r×14配列、r×15配列、r×16配列、r×17配列、r×18配列、r×19配列、r×20配列、r×21配列、r×22配列、r×23配列、r×24配列、r×25配列、r×26配列であり、rは整数2から26であるが、これに限定されない。
【0078】
本明細書で開示される方法で用いられるウェル及び開口の配列の限定されない他の例は、1×c配列、2×c配列、3×c配列、4×c配列、5×c配列、6×c配列、7×c配列、8×c配列、9×c配列、10×c配列、11×c配列、12×c配列、13×c配列、14×c配列、15×c配列、16×c配列、17×c配列、18×c配列、19×c配列、20×c配列、21×c配列、22×c配列、23×c配列、24×c配列、25×c配列、26×c配列、であり、cは整数2から26であるが、これに限定されない。
【0079】
本明細書で開示される方法で用いられるウェルの配列におけるウェル及び開口の配置は、図9に表されるものを含むが、これに限定されない。このような配置は、図9E〜図9Fに示されるような格子状の配置で、列が互い違いに変化する形であってよい。あるいは、ウェル及び開口の配置は、図9A〜図9Dに示されるようなパターンであってよい。そのような配列のパターンのウェル及び開口の数は、2から200、2から150、2から96、2から48、2から24、又は2から12である。
【0080】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は等間隔であり、ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの範囲である。ある実施形態では、ウェル及び開口の配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は等間隔であり、ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間である。
【0081】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの範囲の第1間隔及び5mmから10cmの範囲のインクリメントステップにより、左から右へ直線状インクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの範囲の第1間隔及び5mmから10cmの範囲のインクリメントにより、左から右へ直線状インクリメントで減少できる。
【0082】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの範囲の間のインクリメントのステップとにより、左から右へ非直線状のインクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェル及び開口の配列の列におけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの間のインクリメントのステップとにより、左から右へ非直線状のインクリメントで減少できる。
【0083】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの範囲の間のインクリメントのステップとにより、上から下へ直線状のインクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェルの配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの間のインクリメントのステップとにより、上から下へ直線状のインクリメントで減少できる。
【0084】
ある実施形態では、ウェル及び開口の配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの範囲の間のインクリメントのステップとにより、上から下へ非直線状のインクリメントで増加できる。あるいは、ある実施形態では、ウェルの配列のカラムにおけるウェル同士の間隔、開口同士の間隔は、第1ウェルの中心からその隣のウェルの中心までを計測して5mmから10cmの間の第1間隔と、5mmから10cmの間のインクリメントのステップとにより、上から下へ非直線状のインクリメントで減少できる。
【0085】
ウェル及び開口の配列のそれぞれのウェル及び開口は、他と独立して、円、半円、四角形、長方形、三角形又は楕円形であってよい。異なる形状のウェルの寸法は次のようである。
円形のウェル:直径が2mmから15mmの間、深さが1mmから6mmの間。ある実施形態では、直径は2mmから10mmの間、深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、直径は2mm〜5mmの間、深さは1mmから6mmの間。
半円のウェル:半径が1mmから7.5mmの間。深さは、1mmから6mmの間。ある実施形態では、半径は1mmから5mmの間、深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、半径は1mmから3mmの間、深さは1mmから6mmの間。
四角形のウェル:長さ及び幅は2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
長方形のウェル:長さは2mmから15mmの間。幅は2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は、2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さ及び幅は、2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
三角形のウェル:長さは2mmから15mmの間。高さは2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから10mmの間。高さは2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから5mmの間。高さは2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
楕円形のウェル:長さは2mmから15mmの間。高さは2mmから15mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから10mmの間。高さは2mmから10mmの間。深さは1mmから6mmの間。ある実施形態では、長さは2mmから5mmの間。高さは2mmから5mmの間。深さは1mmから6mmの間。
【0086】
ウェルは円形又は楕円形であってもよいが、本発明のウェルは、電気泳動の方向に実質的に平坦な壁を有する四角形、長方形、半円又は三角形のウェルであることが好ましい。電気泳動の方向に平坦でない壁は、電気泳動の間サンプルバンドの形に悪影響を与える可能性があり、このためサンプル成分の分離に影響を及ぼす可能性があるからである。加えて、ウェルの深さは電気泳動ゲルの厚さよりも小さくあるべきであり、その場合ウェルの底部は、電気泳動カセットの壁ではなく、電気泳動ゲルで形成される。
【0087】
ウェルの配列のそれぞれのウェルは、他のウェルと独立して150nLから14mLの範囲の容積を有してよい。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから10mLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5uLから1mLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから500μLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから200μLの範囲である。ある実施形態では、それぞれのウェルの容積は、他のウェルと独立して5μLから100μLの範囲である。限定されないが、500μLから14mLの範囲の容積を有するウェルを含む大きな容積のウェルを、大きなサンプル容積から関心対象の成分を分離、単離、及び収集するのに用いてもよい。
【0088】
本明細書で開示される方法において用いられる電気泳動ゲルの収集ウェル及び開口とローディングウェル及び開口の配置の限定されない例は、図10及び図12に示されている。
【0089】
ゲルカセットのポリマー成分は、可視光に透明、紫外線に透明、赤外線に透明、又は可視光及び紫外線両方に透明なポリマーからなってもよい。本明細書で開示されるゲルカセットを製造するために用いられる限定されないポリマーの例としては、スチレンアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリルベースのポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、グリコール−修飾ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アセタール及びその共重合体である。ゲルカセットのポリマー成分は、熱エンボス、キャスティング処理、熱成形、光造形法処理、機械的処理及び圧延処理などの成形技術を用いて製造できる。さらなる又は別の実施形態では、成形技術は射出成形及び圧縮成形である。
【0090】
本明細書に開示されるように、ゲルカセットは二つの電極、アノード及びカソードを含む。ウェル及び開口の配列は電極の間に配置される。そのような電極を用いて、電気泳動での移動を起こし、サンプル成分を分離させるのに用いられる電界を生じさせる。電気泳動カセットの電極は電気的に導電可能な金属性の材料又は電気的に導電可能な非金属性の材料であり、プラチナ、パラジウム、金、銅、鉛、アルミニウム、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、グラファイト、又はカーボンを含むがこれに限定されない。あるいは、電気泳動カセットの電極は、導電性の金属又は非金属で覆われた非導電性の材料であり、プラチナ、パラジウム、金、銅、鉛、アルミニウム、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、グラファイト、カーボン、又はこれらの組み合わせを含むがこれに限定されない。
【0091】
加えて、ゲルカセットは第1の一対の電極に直交する第2の一対の電極を含んでもよい。その場合、ウェルの配列は、第1及び第2の一対の電極の間に配置される。そのような電極の配置は、本明細書で開示されているようなサンプル成分の二次元(2D)電気泳動での移動及び分離を可能にする。
【0092】
電気泳動ゲルカセットにおける開口の配列は、少なくとも一つの列又はカラムのローディング開口を有し、サンプルは、ローディング開口の下に配置された対応するローディングウェルへ開口を通してロードされる。加えて、開口の配列は、少なくとも一つの列又はカラムの収集開口を有し、分離又は単離されたサンプル成分又は精製されたサンプルが、収集ウェルの上に配置された対応する収集開口を通して収集ウェルから除去される。
【0093】
本明細書で開示される方法の別の態様では、収集ウェルは、電気泳動ゲルを通してサンプルを電気泳動により輸送させるより前に、又は輸送の間、被覆された粒子をロードされる。そのような方法は、サンプルから生体分子を単離することにより、生体分子を精製するのに用いられる。本明細書で述べられる方法、電気泳動システム、アセンブリ、装置及びカセットを用いて生体分子を単離するのに用いられる粒子は、関心対象の生体分子に特に結合する部分で被覆されている。そのような部分は粒子の表面に共有結合又は非共有結合で結合している。ある実施形態では、そのような部分は粒子の表面に吸着されている。本明細書で述べられる方法、電気泳動システム、アセンブリ、装置及びカセットに用いられる生体分子に特異的な部分は、限定されないが、関心対象の生体分子に相補的な特異的シーケンスを有するオリゴヌクレオチド、一般的なシーケンスを有するオリゴヌクレオチド、例えば、PolyA、プライマー、抗体、特異的な抗体、ペプチド、プロテインA又はG、レクチン、受容体、ビオチン、アビヂン、ストレプトアビヂン、グルタチオン、His−タグ及びセルロース結合領域(CBD)などである。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、免疫沈降法により単離される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、塩を含むバッファにより単離される。
【0094】
ある実施形態では、粒子は収集ウェルから除去され、他の実施形態では、関心対象の生体分子は粒子から解放され、その生体分子を含む溶液は、収集ウェルから除去される。単離された生体分子は、クローニングやライゲーションを含むがこれに限定されない他の生物学的処理に用いられる。このため、関心対象の成分は、視覚化プロセスの間に損傷を受けないことが望まれる。ある実施形態では、生化学的処理とは制限酵素のクローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とはハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理とは、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の遺伝組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10から1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10から500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10から100倍向上した。他の実施形態では、単離された生体分子は、配列決定法、質量分析方法、核酸アレイ及び/又はプロテインアレイを用いて分析される。他の実施形態では、単離された生体分子は配列上でスポットされる。他の実施形態では、単離された生体分子は免疫の抗原として用いられる。
【0095】
本明細書で述べられる方法、電気泳動システム、アセンブリ、装置及びカセットを用いて生体分子を単離するために用いられる粒子は、球状又はトロイダル状の粒子又はビーズであってもよい。粒子はガラス又はポリマーのビーズであってもよく、ポリマーのビーズは、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルアミドのビーズ、ポリメチルアクリレートのビーズ、アガロースのビーズ、誘導化セルロース繊維、カルボキシル化ポリエチレンのビーズ、ポリ塩化ビニルのビーズ、ポリメチルアクリレートのビーズ、ポリプロピレンのビーズ、ラテックスビーズ、ポリテトラフルオロエチレンのビーズ、又はポリアクリロニトリルのビーズを含むが、これに限定されない。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約500マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約250マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約100マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約10マイクロメートルから約50マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約50マイクロメートルから約500マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約50マイクロメートルから約250マイクロメートルである。ある実施形態では、そのような粒子の寸法は、約50マイクロメートルから約100マイクロメートルである。
【0096】
ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のpHを上げることによって生体分子に特異的な部分から解放される。他の実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のpHを下げることによって生体分子に特異的な部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のイオン強度を上げることによって生体分子の特定の部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体のイオン強度を下げることによって生体分子の特定の部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、収集ウェル内の液体に還元剤を添加することによって生体分子に特異的な部分から解放される。ある実施形態では、関心対象の生体分子は、生体分子に特異的な部分に結合するにあたり関心対象の生体分子と競合する競合試薬を添加することによって、生体分子に特異的な部分から解放される。そのような競合試薬は、Hisタグ固定化ビーズ用のイミダゾール、グルタチオン標識ビーズ用の還元型グルタチオン、GSTタグを開裂する因子Xaのようなプロテアーゼを含むがこれに限定されない。
【0097】
ある態様では、電気泳動ゲルの中に収集ウェルは存在しない。しかしながら、1つ以上の収集開口は存在する。これらの態様では、分離されたサンプル成分は、収集開口を通してアクセス可能なゲルの一領域を除去できる収集器具を挿入することにより、電気泳動ゲルから単離される。器具は、例えばゲルに穴を開け、除去したゲルのスライスを収集できるようなものである。通常、ゲルのスライスは、本明細書で開示されている収集ウェルの寸法と形状の範囲である。
【0098】
電気泳動ゲルの各ローディングウェルは、電気泳動レーンの最初に配置され、各ローディングウェルは、電気泳動レーンに沿って配置される対応するローディングウェルの少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる。
【0099】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルカセットは、選択的に各アノードと電気泳動ゲルの間に配置されるカチオンイオン交換マトリックス及び各カソードと電気泳動ゲルの間に配置されるアニオンイオン交換マトリックスを有してもよい。ゲルカセットに組み込まれるカチオン交換マトリックスの制限されない例は、CM25−120Sephadexであり、ゲルカセットに組み込まれるアニオン交換マトリックスの制限されない例は、WA−30であり、ともに米国、セントルイスのシグマ社により商業的に入手可能である。
【0100】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルカセットは、選択的に少なくとも一つのゲルコームによって占められるウェルを分離チャンバに予め投入した電気泳動ゲルを有してもよい。1つ又は複数のコームは、ウェルをローディングウェル及び収集ウェルとして使用できるように除去される。あるいは、本明細書開の方法に使用される電気泳動ゲルカセットは空であり、ユーザーが適切なコームを用いて電気泳動ゲルを投入し、ローディングウェル及び収集ウェルとして使用できるウェル配列を作成してもよい。
【0101】
ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットは、電気泳動ゲルカセットの少なくとも一枚の壁に配置される少なくとも一つのマーキングを有する。かかるマーキングは、バンドが移動する電気泳動レーンの近傍に配置されてよく、又はマーカーはバンドが移動する電気泳動レーンの中に配置されてもよい。このようなマーキングは、関心対象のサンプルバンドが本明細書で開示される収集ウェルにいつ配置されるかを決定する補助として用いてもよい。
【0102】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、ゲルを形成するどのような材料をも含む。例えば、合成ポリマー、天然ポリマー及びこれらの組み合わせを含むがこれに限定されない。そのような合成ポリマーの例は、直線状ポリアクリルアミド、架橋結合ポリアクリルアミド及びポリビニルピロリドンを含むがこれに限定されない。そのような天然ポリマーの例は、アガロース、カラギーナン、キトサンのような多糖類を含むがこれに限定されない。
【0103】
ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、アクリルアミドを含み、例えば、約2.5%から約30%、又は約5%から約20%の濃度のアクリルアミドを含む。ある実施形態では、そのようなポリアクリルアミドの電気泳動ゲルは、1%から10%の架橋剤を含み、架橋剤はビスアクリルアミドを含むがこれに限定されない。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、アガロースを含み、例えば、約0.1%から約5%、約0.5%から約4%、又は約1%から約3%の濃度のアガロースを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、2%のアガロースを含み、他の実施形態では、本明細書において開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、0.8%のアガロースを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、1%のアガロースを含み、他の実施形態では、本明細書において開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、0.5%のアガロースを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルは、アクリルアミド及びアガロースを含む。例えば、電気泳動ゲルは、約2.5%から約30%のアクリルアミド及び約0.1%から約5%のアガロースか、又は約5%から約20%のアクリルアミド及び約0.2%から約2.5%のアガロースを含む。ある実施形態では、そのようなポリアクリルアミド/アガロースの電気泳動ゲルは、1%から10%の架橋剤を含み、架橋剤はビスアクリルアミドを含むがこれに限定されない。
【0104】
本明細書で開示される方法のある実施形態では、電気泳動カセット内の電気泳動ゲルは、勾配ゲルである。本明細書で開示される方法の他の実施形態では、電気泳動ゲルカセット内の電気泳動ゲルは、高度に架橋結合したゲルである。
【0105】
本明細書で開示される方法のある実施形態では、電気泳動カセット内の電気泳動ゲルは、変性ゲルである。ゲル、サンプル又はゲル及びサンプルは、洗浄剤、カオトロピック材、又はこれらの組み合わせを含む。カオトロピック材は、トリフルオロ酢酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、尿素、塩化グアニジン、及びグアニジンイソチオシアネートを含むがこれに限定されない。変性洗浄剤は、限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。
【0106】
ある実施形態では、本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセット及び電気泳動ゲルは、E−PAGE(商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)及びE−GEL(登録商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)である。ある実施形態では、E−PAGE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)カセット/ゲルは、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する。他の実施形態では、E−GEL(登録商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)は、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する。ある実施形態では、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する0.8%のE−GEL(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)カセット/ゲルが用いられる。他の実施形態では、1列のローディングウェルと1列の収集ウェルとの、2列のウェルを有する2%のE−GEL(登録商標)カセット/ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)が用いられる。
【0107】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルバッファは、どのような電気泳動バッファであってもよく、両性イオン緩衝液を含むがこれに限定されない。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で5から9のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で6から8.5のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で6から8のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で6から7のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で5から9のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で6から8.5のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で6から8のpHを有する。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で6から7のpHを有する。
【0108】
ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約5から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約6から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約6から約8のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは室温で約6から約7のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約5から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約6から約8.5のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約6から約8のpKaを有するバッファを含む。ある実施形態では、ゲルバッファは25℃で約6から約7のpKaを有するバッファを含む。
【0109】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルバッファは、コハク酸エステル、クエン酸塩、ホウ酸塩、マレイン酸エステル、カコジル酸塩、N−(2−アセトアミド)イミノ2酢酸(ADA)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N、N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N、N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(バイシン)、(2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1、1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)、トリス−アセテート−EDTA(TAE)、グリシン、ビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス)又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。さらに、そのようなゲルバッファはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を含んでもよい。
【0110】
本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動ゲルバッファの濃度は、約10mMから約1Mである。ある実施形態では、濃度は、約20mMから約500mMであり、他の実施形態では、濃度は、約50mMから約300mMの間である。
【0111】
サンプル成分の電気泳動での移動は、定電圧、パルス電圧、定電流、パルス電流、定電力、又はパルス電力により達成される。本明細書で開示される方法に用いられる電気泳動カセットの電極にかけられる電界(V/cm)は、一定のものでもパルスであってもよい。以下に提供される電界の範囲を達成するために印加される電圧、印加される電流、又は印加される電圧の大きさは、電気泳動カセットの寸法やバッファの導電性によって変化するものであることが理解される。例えば、印加される電圧は5Vから2000Vの範囲であり、ある実施形態では、印加される電圧は5Vから1000V、5Vから500V、5Vから250V、又は5Vから100Vの範囲である。例えば、印加される電流は5mAから400mAであり、ある実施形態では、印加される電流は5mAから200mA、5mAから100mA、5mAから50mA、又は5mAから25mAである。ある実施形態では、印加される電流は60mAである。例えば、印加される電力は5mAから400mAであり、ある実施形態では、印加される電力は、25mWから400W、25mWから100W、25mWから50W、又は25mWから25Wである。ある実施形態では、印加される電力は4.5Wである。さらに、印加される電圧(一定又はパルス)の極性は陽性でも陰性でもよく、印加される電流(一定でもパルスでも)の極性は陽性でも陰性でもよい。
【0112】
ある実施形態では、印加される一定の電界の大きさは、1V/cmから100V/cmの間である。ある実施形態では、一定の電界の大きさは、1V/cmから50V/cmの間である。ある実施形態では、一定の電界の大きさは、1V/cmから25V/cmの間である。ある実施形態では、一定の電界の大きさは、1V/cmから15V/cmの間である。ある実施形態では一定の電界の大きさは、1V/cmから10V/cmの間である。
【0113】
パルスの電界のプロファイルは、方形波、三角波、正弦波であってよく、そのようなプロファイルは対称でも非対称でもよい。パルスの電界は、一定のベースラインに加えられ、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから100V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから50V/cmであり、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから25V/cm、このベースライン電界の大きさは、0V/cmから10V/cmである。ある実施形態では、この電界のベースラインに加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから100V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから50V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界に加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから25V/cmである。ある実施形態では、このベースライン電界に加えてかけられるパルスの電界の大きさは、1V/cmから10V/cmである。
【0114】
対称な方形波のパルス電界に関し、ベースライン電界に加えてかけられるパルス電界の時間(ON)は、パルス電界がかけられない時間(OFF)と同じである。ある実施形態では、ONとOFFの時間は1ミリ秒から60秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から40秒の間である。あるONとOFFの時間は1ミリ秒から30秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から20秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から10秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から5秒の間である。あるONとOFFとの時間は1ミリ秒から1秒の間である。
【0115】
非対称な方形波のパルス電界に関し、電界のベースラインに加えてかけられるパルス電界の時間(ON)は、パルス電界がかけられない時間(OFF)と同じではない。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から60秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から60秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から40秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から40秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から20秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から20秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から10秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から10秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から5秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から5秒の間である。ある実施形態では、ONの時間は独立して1ミリ秒から1秒の間であり、OFFの時間は独立して1ミリ秒から1秒の間である。
【0116】
対称な三角波のパルス電界に関し、印加される最大電界までランプ電圧比(V/s)が上がる時間は、印加されるベースライン電界にランプ電圧比(V/s)が下がる時間と同じである。ある実施形態では、ランプ電圧アップとランプ電圧ダウンとは10mV/sから100V/sの間である。非対称な三角波のパルス電界に関し、印加される最大電界にランプ電圧比(V/s)が上がる時間は、印加されるベースライン電界にランプ電圧比(V/s)が下がる時間と同じではない。ある実施形態では、ランプ電圧アップは独立して10mV/sから100V/sの間であり、ランプ電圧ダウンは独立して10mV/sから100V/sの間である。
【0117】
対称な正弦波のパルス電界に関し、周期と周波数は一定であり、正弦波の最小の電界は、印加されるベースライン電界と同じである。非対称な正弦波のパルス電界に関し、周期及び周波数は調整され、正弦波の最小の電界は、引火されるベースライン電界と同じである。
【0118】
ある実施形態では、生体分子又は関心対象のバンドが収集ウェルに配置されると、交番電界が印加される。このためウェル内の生体分子又はバンドを維持できる。ある実施形態では、交番電界の周波数は、0.1Hzから1kHzの範囲にわたり、他の実施形態では、周波数は1Hzから1kHzの範囲である。ある実施形態では、交番電界の周波数は、0.5Hzから1kHzの範囲であり、他の実施形態では、周波数は0.5Hzから0.5kHzの範囲である。
【0119】
ある実施形態では、電界はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置、E−GEL(登録商標)I−BASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置、E−BASE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて印加される。
【0120】
可視化及び回収
電気泳動カセットにおける電気泳動ゲルは、本明細書で開示される方法を実行している間、監視される。監視は本明細書において可視化とも呼ばれ、関心対象のサンプルバンドが収集ウェルに移動した時と、これに加え、本明細書で開示される2次元法の場合には、いつ第1電界から第2電界へ切り替えるかを決定するのに用いられる。この可視化は継続的でも断続的でもよい。
【0121】
電気泳動ゲルのサンプルバンドの可視化は、(電気泳動カセット内の)電気泳動ゲルを適当な波長の光で照明し、色素、染色剤、又はサンプルバンドと関連する他のインジケータで観察できるようにすることで達成される。本明細書で開示される分離、単離及び収集の方法に用いられる可視化の方法のある実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、1つ又は複数のローディングウェルに加える前に、サンプルに加えられる。他の実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、サンプルを1つ又は複数のローディングウェルに加える前に、1つ又は複数のローディングウェルに加えられる一方、他の実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、サンプルを1つ又は複数のローディングウェルに加えた後に、1つ又は複数のローディングウェルに加えられる。あるいは、本明細書で開示される分離、単離及び収集の方法に用いられる可視化の方法のある実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータは、電気泳動での移動の間サンプル成分に結合するように、電気泳動ゲルに加えられる。さらに本明細書で開示される分離、単離及び収集の方法に用いられる可視化の方法のさらに他の実施形態では、色素、染色剤又は他のインジケータはサンプル成分に共有結合的に付着される。
【0122】
可視化のために用いられるシステム、色素又は染色剤は、蛍光であってもよく、蛍光でなくてもよい。本明細書で開示される方法に用いられるシステム、色素又は染色剤の限定されない例としては、SYBR SAFE(商標)染色剤(インビトロジェン社、カールスバッド)、エチジウムブロマイド、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、SYBR(登録商標)染色剤(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)グリーン(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)グリーンI(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)グリーンII(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYBR(登録商標)ゴールド(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYPRO(登録商標)ルビー(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYPRO(登録商標)オレンジ(インビトロジェン社、カールスバッド)、SYPRO(登録商標)タンジェリン(インビトロジェン社、カールスバッド)、GELGREEN(商標)(Biotium社、ヘイワード)、GELRED(商標)(Biotium社、ヘイワード)、SEEBLUE(登録商標)染色剤(インビトロジェン社、カールスバッド)、LUMIO(商標)検出システム(インビトロジェン社、カールスバッド)、LUMIO(商標)グリーン(インビトロジェン社、カールスバッド)、LUMIO(商標)レッド(インビトロジェン社、カールスバッド)である。
【0123】
他の実施形態では、可視化は、サンプル成分を銀色に染色することで達成される。他の実施形態では、可視化は、造影剤を加えることで高められる。他の実施形態では、可視化は、蛍光増強剤を加えることで高められる。他の実施形態では、可視化は、カセット又は収集ウェルの領域を、コントラストを与えてウェル内のバンドが容易に見えるように、異なった色又は質感にすることで高められる。他の実施形態では、可視化は、よりコントラストを与えてウェル内のバンドが容易に見えるように、カートリッジの底にステッカーを貼ることで高められる。
【0124】
可視化のために用いられる光は、単色又は多色であってよい。例えば、多色灯は、白色光、UV光又は赤外光であり、単色灯は、レーザーや発光ダイオード(LED)を用いたり、白色光、UV光又は赤外光のような光源を特定のスペクトルでフィルタリングしたりしてもよい。そのような単色光の望まれる波長は、用いられる色素又は染色剤の特定のスペクトルの特性に依存するものであり、当業者はそのような単色の光を得る方法を知っているものと理解される。
【0125】
ある実施形態では、可視化はサンプルの電気泳動の分離の間、電気泳動カセットが配置される独立型「ライトボックス」で実行される。そのようなライトボックスの中で、電気泳動カセットは上又は下から照らされる。監視はCCDカメラ又はビデオカメラを用いて実行されるか、又は分離、単離及び収集を実行する使用者の直接的な観察により行われる。そのような可視化の他の実施形態においては、電気泳動/監視装置が用いられ、監視手段(CCDカメラもしくはビデオカメラ、又は直接の観察)及び電界を印加する手段は一つの装置に結合されている。さらに、他の実施形態では、電気泳動の間に電気泳動カセットを冷却する手段が組み込まれている。そのような冷却は、冷却ガスの流れ(例えば、液体窒素)、ファン、ペルチェ冷却装置により実行される。
【0126】
ある実施形態では、可視化はDARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーター又はSAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターを用いて達成される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。
【0127】
ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置を用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のトランスイルミネーターに接続されるか、その上に配置される。
【0128】
ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置及びE−GEL(登録商標)SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のリアルタイムトランスイルミネーターを用いて達成され、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットは、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置に接続され、分離はリアルタイムで、又は分離が完成した後に監視される。ある実施形態では、可視化はE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置及びE−GEL(登録商標)SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)のリアルタイムトランスイルミネーターを用いて達成され、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)は、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置に接続される。
【0129】
ある実施形態では、可視化は、電気泳動ゲルを含む電気泳動カセットが接続されているE−BASE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置と、蛍光色素もしくは染色剤又は可視色素もしくは染色剤を監視するための落射照明と、を用いて達成される。ある実施形態では、可視化は、E−PAGE(商標)カセット又はE−GEL(登録商標)カセット(インビトロジェン社、カールスバッド)カセットが接続されているE−BASE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の電力供給装置と、蛍光色素もしくは染色剤又は可視色素もしくは染色剤を監視するための落射照明と、を用いて達成される。上記に提供される実施形態では、落射照明は、白色光、青色光、レーザー又は発光ダイオード(LED)を含むがこれに限定されない本明細書記載の光源を用いて達成できる。
【0130】
電気泳動ゲルカセットは、電気泳動の間、カセットを保持するように構成されたカセット電気泳動基部の上で電気泳動に使われ、観察される。電気泳動基部は、電気泳動分離のために電力を供給する電気的接続を提供し、電力供給部を含む。本発明のこれらの態様では、電気泳動基部カセットは、カセットが基部に配置された場合に、基部がカセットの底面下で開き、光源から光がカセットへ上向きに向けられるように構成されている。カセット電気泳動基部の全体は、電気泳動の間、又は電気泳動の後、カセットを基部から除去せずにカセット内のゲルの中にある分離されつつある又は分離された分子を観察できるよう、光源の上に配置されている。好ましくは、カセットがカセット電気泳動基部に配置されている場合、カセットの下、すなわち基部の最も下の面(カセットの一つ以上の縁でカセットを支持する基盤の領域)からカセットの底面までの空間の高さは、約10cm未満であり、約5cm未満であり、約3cm未満であり、約2cm未満であり、約1cm未満である。ある実施形態では、カセット電気泳動基部が平坦な上面を有する光源の上に置かれた場合、光源の上面からカセットの底壁までの距離は0から2mm、2から4mm、4から6mm、6から8mm、8から10mmである。
【0131】
好ましい実施形態における電力供給基部は、電気泳動の時間、電流及び/又は電圧などのプログラムの設定が可能なものである。また、好ましい実施形態において、電流の極性は、スイッチ又はボタンの手段によって反対にできる。
【0132】
カセット電気泳動基部は、好ましくは、標準的な電気の出力口にプラグを差し込めるようなAC/DCアダプタが組み込まれているか、標準的な電気の出力口(50/60HZで100〜240VACの出力)にプラグを差し込めるようなコネクタもしくは電源コードを含むか、又はそれらに接続できる。電力供給基部の電力出力は、約5から約240VDCの範囲であり、例えば、10から240VDC、又は20から100VDC、又は約48VDCである。例示の実施形態における最小の電流出力は、約0.4A、0.5A、0.6A、0.7A、0.8A、0.9A又は1Aである。ある例示の実施形態における電力供給装置は、アノード及びカソードの極性を変更することができる。これらの実施形態において、アノード及びカソードの極性の切り替えは、スイッチ、ダイヤル又はボタンの手段で使用者が制御できる。
【0133】
電力供給基部は、一つ、好ましくは二つ以上の電気泳動プログラムによってプログラムされる。プログラムは電気泳動の間及び/又は電気泳動期間に供給される電圧又は電流を決定できる。ある例示的な実施形態においては、少なくとも一つのプログラムは、使用者がアノードとカソードの極性を切り替えることができる「逆(リバース)」プログラムである。ある実施形態におけるプログラムは、例えば、の電力供給電気泳動カセット基部のパネル上に設けられたボタンを使用することにより、使用者によって調整可能である。電力供給基部は、オン/オフスイッチ又はボタン及び、実行中のプログラム、電気泳動の残り時間、電圧又は電流のうち少なくとも一つを表示するLCDディスプレイを有するのが好ましい。電力供給電気泳動カセット基部はさらに、例えば、電源供給がオンになっていることを示すためのLED光のようなインジケータ光と、電気泳動が完了したことを示す音を発するアラームと、を含むことができる。
【0134】
電力供給カセット基部は、好ましくは、使用者が電気泳動の極性を切り替えることができるプログラム又は制御スイッチ又はボタンを含む。ある好ましい実施形態では、使用者が制御ボタンを用いて選択できる「逆」プログラムが含まれている。逆プログラムは、例えば15秒から15分、30秒から10分、1分から5分などの所与の時間、極性を逆にすることができる。逆プログラムの間、電圧の出力は、標準的な電気泳動の分離プログラムの間に使用される電圧の出力と、同じであっても異なっていてもよい。
【0135】
ある例示的な実施形態では、カセットは、プロテイン、ペプチド、核酸分子又は核酸フラグメントの単離に用いられる。それには例えば、2つ以上のウェルを有するゲルを含み、この2つ以上のウェルのうち少なくとも第1のウェル及び第2のウェルが一つの電気泳動レーンにならんでいるクローニングカセットを使用する。また、カセットは、第1のウェルにサンプルをロードし、第2のウェルから分離されたフラグメントを摘出するための開口をウェル上に有する。そのようなクローニングカセットは、2006年8月31日に出願された米国特許仮出願第60/824,210号に述べられ、その全体が参照のため本明細書に援用される。
【0136】
ある例示的な実施形態では、カセットが基部に配置された場合、光源はカセットの下側の基部の空間に挿入される。又はカセット電気泳動基部は、光源を含む光源基部の上に配置されてもよく、この場合、光源は光が発せられる光源基部の一部又は表面である。これらの実施形態では、カセットの下の空間(カセット電気泳動基部の最も底の面で、それが載っている面に接触した部分からカセットの底壁まで)は、少なくとも2mmであり、例えば、2から4mm、4から6mm、6から8mm、8から10mm、1cmから2cm、2cmから4cm、4cmから6cm、6cmから8cm、8cmから10cm、又は10cm以上であってもよい。光源は、上方(基部の上に配置されたカセットに向かって)に方向付けられるものであればどのようなタイプのものであってもよい。光源によって発せられる光は、どのような波長であってもよく、例えばUV、可視、赤外線の波長又はこれらの組み合わせであってもよい。分子の分離は、カセット電気泳動基部の下に配置された光源基部の一部である光源手段によって、電気泳動の間、電気泳動が行われている状態で観察できる。
【0137】
カセット電気泳動基部が光源基部の上に配置されている実施形態では、光源基部の光源(光を発する部分)は、電気泳動基部内のカセットの下の空間の少なくとも一部分を占める。ある実施形態では、90%以上、95%以上、97%以上又は実質的にすべての電気泳動基部に配置されたカセットの下の空いた空間のすべてを占める。例示的な実施形態では、カセット電気泳動基部は、光源を含む光源基部の上に配置され、光源は、電気泳動基部に配置されたカセットの直接下の電気泳動基部内の空間に適合する。
【0138】
本明細書で開示される方法のある実施形態は電気泳動システム/装置を含み、電気泳動システム/装置は、電気泳動の間カセットを支持するカセット電気泳動基部と、電力供給装置と、カセット電気泳動基部に支持されるカセットの中に、光が上方へ方向付けられるように、カセット電気泳動基部へ可逆的に係合できる光源と、を含む。好ましい実施形態では、光源基部は、光源(光源基部の光を発する部分)の寸法が、カセット電気泳動基部内の開口又は空間の寸法と合い、カセットの境界の外に光を発しないで、カセットの中すなわち上方へ光を方向づけられるように構成されている。
【0139】
カセット電気泳動基部は、光源の上に単純に置かれるか、又は適当な手段で光源に可逆的に係合してもよい。例えば、ある例示的な実施形態では、光源は、カセット電気泳動基部が摺動して係合できるスロットもしくは溝を有する支持部又は基礎領域を含んでよく、又は基部を光源の上に位置させるために、及び/又は光源に係合させるために、一つ以上のガイド、タブ、リム、肩部、ピン、段差、柱、フランジ、留め金を有してよい。ある例示的な実施形態では、カセット電気泳動基部の一つ以上の下面上の一つ以上のタブ、リム、肩部、段差、柱、ピン又は他の突起は、光源基部の上にカセット電気泳動基部を配置するために、光源基部の一つ以上の上面における一つ以上の穴、スロット、凹部又はガイドに適合する。ある例示的な実施形態では、光源基部の一つ以上の上面における一つ以上のタブ、リム、肩部、段差、柱、ピン又は他の突起は、光源基部の上にカセット電気泳動基部を配置するために、カセット電気泳動基部の一つ以上の下面における一つ以上の穴、スロット、凹部又はガイドに適合する。
【0140】
光源は、電気的コネクタ(電源コード)を、カセット電気泳動基部のコネクタとは別に有し、オン/オフスイッチ又はボタンを、カセット電気泳動基部のそれとは別に有する。ある好ましい実施形態では、光源は可視光源である。ある好ましい実施形態では、光源はLED光源である。
【0141】
光源は、以下に詳述される光源のいずれであってもよい。好ましい実施形態では、光源はカセットの底部を通して可視光を発する。光源は、選択的に本明細書で説明される光源から発せられる光にフィルターをかけるフィルターを含んでよい。ある実施形態では、カセット電気泳動基部に用いられるカセットの底壁は、光源から発せられた光にフィルターをかけることができる。好ましくは、ゲルが生体分子(プロテイン、ペプチド又は核酸分子)を結合する色素を含むか、又はサンプルがゲルにロードされた際に色素を含む。好ましくは、生体分子に標識をつけるために用いられる色素は、蛍光色素である。蛍光色素は、カセットの底壁を通して送られる波長の光を吸収し、カセットの上壁を通して送られる波長の光を発する。(カセットの上壁は、選択的に、励起した蛍光色素分子の色素が発したのではない波長の光にフィルターをかけるためのフィルターを含む。あるいは、観察者は、ゲルの観察又は撮像のために、フィルターを含むフィルター付き眼鏡、カメラ又は撮像装置を使用してもよい。)核酸やプロテインなどの生体分子の電気泳動の可視検出に用いられる色素、光源及びフィルターの例は本明細書に開示されている。
【0142】
本明細書で開示される方法のある実施形態では、電気泳動ゲルの観察及びランニング、ならびに核酸分子、核酸フラグメント、プロテイン又はペプチドのような生体分子の単離のための電気泳動システムには、電気泳動の間カセットが置かれる基部(「カセット電気泳動基部」とも呼ばれる)が含まれる。カセットは、基部に配置されたカセットの電極に接触する少なくとも2つの電気的接触部及び電気出力口のような電源に接続可能な少なくとも一つのコネクタ、さらに、カセット電気泳動基部に可逆的に係合するように構成された光源基部を含む。従って、カセット電気泳動基部は、カセットが電気泳動の間に置かれる電源供給装置であり、電源供給装置は、カセットを通して設定電流を供給し、及び/又は基部に置かれたカセットの電極を横切る設定電圧を提供する。カセット電気泳動基部は、カセットの少なくとも一つの縁に沿ってカセットに係合ように構成される。カセット電気泳動基部は、電気泳動カセットが基部に置かれている場合に、電気泳動の分離が起きるカセットの領域で、カセットの下に空間が存在するように構成されている。(すなわち、分子の分離が起きるゲルの領域に対応するカセットの下の領域であり、基部はどんな構造も有さず、カセットの下に置かれた光源からカセットの方向に上向きに送られる光を遮断したり不明瞭にしたりするような部品を有さずにむしろ開いている。)
【0143】
光源基部は、電気泳動基部の下に位置づけられた際に、電気泳動基部の中に置かれたカセットの方向へ上向きに光を向ける光源を含む。光源基部は、電源コード及び好ましくはオン/オフスイッチを含む。
【0144】
電気泳動のランニング/観察システムの電気泳動カセット基部も、オン/オフスイッチを含み、好ましくは、一つ以上の電圧又は電流の出力、電圧又は電流の出力のプログラムされた持続期間、電圧又は電流の経過時間、及び/又は電流の極性を制御する一つ以上の追加のスイッチ、ボタン、又はダイヤルを有する。基部/電源供給装置は、好ましくは、電気泳動のランニングの経過時間及び電圧もしくは電流の出力の少なくとも一つを表示する液晶ディスプレイ(LCD)又はLEDディスプレイのようなディスプレイパネルを有する。
【0145】
他の実施形態では、可視化は、電気泳動を行わせる電源供給装置と、可視化システムの両方を単一の一体型装置に統合するシステムを用いることにより達成される(例えば、米国仮出願に記載されているように)。例えば、ある実施形態では、可視化は、本明細書で開示された可視化システムに一体化されているE−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電源供給装置を用いて達成される。
【0146】
これらの態様におけるゲルカセットは、電気泳動ゲルを観察及びランニングする基部の上で電気泳動に使用され、観察される。電気泳動ゲルは、電気泳動の間、カセットを位置づけるための基部(「一体化された電気泳動カセット基部」とも呼ばれる)を含む。一体化された電気泳動カセット基部は、基部の上に位置づけられたカセットの電極に接触する少なくとも2つの電気的接触部及び電源供給装置に接続可能な少なくとも一つのコネクタ、及び基部の上に置かれたカセットに光を送ることのできる少なくとも一つの光源を含む。したがって、一体化された電気泳動カセット基部は、電源供給装置と光源とが結合されたものであり、電気泳動の間その上にカセットが位置づけられる。電源供給装置はカセットを通して設定電流を供給し及び/又は基部の上に置かれたカセットの電極を横切って設定電圧を供給する。電気泳動カセット基部は、オン/オフスイッチを有し、好ましくは一つ以上の電圧又は電流の出力、電圧又は電流の出力のプログラムされた持続期間及び/又は電圧又は電流の経過時間を制御する一つ以上の追加のスイッチ、ボタン、又はダイヤルを有する。好ましい実施形態では、一体化された光源を有するカセット電気泳動基部は、電気泳動が一定方向(通常はウェルからアノードに向かって進む)に起こった後、続いて電気泳動の方向を逆にするような、アノード及びカソードの極性を逆にする一つ以上の制御部を有する。基部/電源供給装置は、好ましくは、電気泳動のランニング及び電圧もしくは電流の出力の少なくとも一つを表示する液晶ディスプレイ(LCD)又はLEDディスプレイのようなディスプレイパネルも有する。
【0147】
ある実施形態では、断続的な可視化が本明細書で開示されるマーキングを含む電気泳動カセットを用いて達成される。そのようなマーキングは、関心対象のサンプルバンドがいつ収集ウェルに配置されるかを決定するのに用いられるので、ゲルカセットを継続的に監視する必要はない。そのような方法では、関心対象のサンプルバンドが、収集ウェルの前に配置されたマーキングを通過するのが観察される。関心対象のサンプルバンドが次の収集ウェルに移動するのに必要な時間は、収集ウェルからマーキングまでの距離を、バンドの移動率で割ることにより計算できる。サンプル成分は、その後収集ウェルから除去される。
【0148】
ある実施形態では、関心対象のサンプル成分は、他の生物学的処理に用いられる。他の生物学的処理は、クローニング又はライゲーションを含むがこれに限られない。このため、関心対象の成分は、可視化プロセスの間に損傷を受けないことが好ましい。ある実施形態では、生化学的処理とは、制限酵素のクローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とは、ハイスループットの組換えクローニングである。ある実施形態では、生化学的処理とは、TOPO(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の制限クローニングであり、他の実施形態では、生化学的処理とは、GATEWAY(登録商標)(インビトロジェン社 カールスバッド)の組換えクローニングである。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は10から1000倍向上した。他の実施形態では、効率は10から500倍向上した。ある実施形態では、そのようなクローニング方法の効率は、10から100倍向上した。DNAの場合、損傷は照明に用いられる光(例えば、UV光)又は可視化のために用いられる色素(例えば、エチジウムブロマイド)によって起きる場合がある。ある実施形態では、UV光ではなく可視光が、関心対象のサンプル成分への損傷を最小にする及び/又は除去するために用いられる。他の実施形態では、可視光及びSYBR安全色素が可視化及び関心対象のサンプル成分への損傷を最小にする及び/又は除去するために用いられる。
【0149】
1つ又は複数の収集ウェルからのサンプル成分の回収は、先端が一つ又は先端が複数のピペットを含む手動のマイクロピペッタによって達成されてもよく、又は成分は収集ウェルからロボットピペットシステムで除去されてもよい。
【0150】
本明細書で提供される他の態様は、本明細書で開示される電気泳動システム、アセンブリ、装置及び方法で用いられるキットである。そのようなキットは、本明細書で開示された複数のウェルの電気泳動ゲルカセット及び電源供給装置を含む。ある実施形態では、そのようなキットは、本明細書で開示された2つの列のウェルを有する電気泳動ゲルカセット及び電源供給装置を含む。ある実施形態では、そのような電気泳動ゲルカセットは、アガロースを含み、他の実施形態では、そのような電気泳動ゲルカセットは、ポリアクリルアミドを含む。他の実施形態では、そのような電気泳動ゲルカセットは、アガロース及びポリアクリルアミドを含む。
【0151】
当業者は、本発明がここに特に示され開示されたもののみに限られるものではないことを理解するであろう。本発明は、純粋に本発明の例として意図され、その範囲を制限するものではない次の実施例を考慮してさらに明確にされる。
【0152】
次の実施例は例示のためであり、本明細書で開示された本発明を限定する意図はない。
【0153】
実施例
実施例1
SYBR SAFE(商標)ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド)とともにE−GEL(登録商標)0.8%のダブルコームのカセットを使用して、水で希釈して最終容積が20μLになるよう10μLの低オリゴヌクレオチドマスラダー(Cat.#10068−013 インビトロジェン社、カールスバッド)を、ウェルの第1列のそれぞれのウェルにロードした。ウェルの第二列のそれぞれのウェルに30μLの水を加えた。ゲルは、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)トランスイルミネーターの上に置かれたE−GEL(登録商標)POWERBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いてランした。15分後、DARK READER(登録商標)(Clare Chemicals社、ドロレス)トランスイルミネーターは、マスラダー成分を分離するバンドの進行を監視するため、電源をオンにした。図13は、関心対象の800bpオリゴヌクレオチド(4番目のバンド)の単離及び収集を撮影した画像である。図13Aでは、第1番目のバンド(100bp)、第2番目のバンド(200bp)、及び第3番目のバンド(400bp)がウェルの2番目の列の収集ウェルを通ったことが観察されている。第3番目のバンドが収集ウェルを出て、第4番目のバンドが収集ウェルに入るのが観察された場合(図13B)、電界をさらに2分間継続し、その後電界をオフにした。第4番目のバンド(800bp)に含まれる液体をマイクロピペッタを用いて収集ウェルから収集した。収集された液体は、さらに別のE−GEL(登録商標)カセット(エチジウウムブロマイドを含む2%のダブルコーム)(インビトロジェン社、カールスバッド)上でランすると、汚染されたバンドを有さない一つのバンドのみが得られた(図13C)。E−GEL(登録商標)カセット(エチジウウムブロマイドを含む2%のダブルコーム)(インビトロジェン社、カールスバッド)の収集バンドの強度は、E−GEL(登録商標)カセット(エチジウウムブロマイドを含む2%のダブルコーム)(インビトロジェン社、カールスバッド)の上でランしたオリジナルのマスラダーで観察された強度とほとんど同じであり、このことからサンプルのロスが最小限であったことが示された。
【0154】
実施例2
48.8%のE−PAGE(商標)ゲルカセットを用いて、15μlのE−PAGE(商標)SEEBLUE(登録商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)の予め染色されたマーカー(Cat.#LC5700 インビトロジェン社、カールスバッド)をウェルの第1列のそれぞれのウェルにロードし、20μLの水をウェルの第2列のそれぞれのウェルにロードした。ゲルはE−BASE(登録商標)(プログラムEP)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いてランした。図14Aは、ランの33分後に撮影された画像を示し、指定されたバンド(〜21kD)が次のウェルの縁に届いた段階で、さらに水を第2番目のウェルにロードし(追加〜10ul)、かつゲルをさらに3分ランした。この時点で指定されたバンドはウェルの中にある(図14B)。ランを停止し、ウェルの中身をマイロピペッターで収集した。収集された液体を、別のE−PAGE(商標)ゲルカセット(インビトロジェン社、カールスバッド)でランすると、一つのバンド(図14C)が示された。
【0155】
実施例3
DNA染色を内部に含まずに投入された0.8%のE−Gel Clonewellカセット(インビトロジェン社、カールスバッド)(非変性非サイズ分離ゲル)を用いて、GSTを含む組換えにより発現させた融合タンパク質を含む細胞溶解物のサンプルを、ウェルの第1列にロードし、固定化されたグルタチオンとともに30μlのアガロースビーズのスラリーをウェルの第2列にロードした。ゲルは、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いて約30分間ランした。GST標識されたプロテインだけがビーズに結合し、サンプルの他の成分は収集ウェルを通過して移動した。、又はGST標識されたプロテインの方向には移動しなかった。又はローディングウェルの中に残存した。電力供給装置を停止し、収集ウェルの中のpHを低くするか、還元グルタチオンを含む競合バッファを収集ウェルに追加するか、又は因子XaのようなプロテアーゼをGST標識を開裂するために加えることにより、精製されたプロテインをウェルの中の液体に放出させた。精製されたプロテインを含む液体は、マイクロピペッタを用いて収集した。ビーズは収集ウェルの中に残した。
【0156】
実施例4
0.8%のE−Gel Clonewellカセットを用いて、PCR反応の変性生成物の混合物を含むサンプルを、ウェルの第1列にロードし、配列特異的なオリゴヌクレオチドで固定化したアガロースビーズのスラリー30μlをウェルの第2列にロードした。ゲルは、E−GEL(登録商標)IBASE(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)電力供給装置を用いて約30分間ランし、移動状態はE−GEL(登録商標)SAFE IMAGER(商標)(インビトロジェン社、カールスバッド)トランスイルミネーターで、全てのDNAバンドがウェルの第2列を通過して移動するのを監視した。この時点で、相補的なシーケンスを有するバンドのみがビーズに結合されているので、ランを停止した。塩、カオトロピック剤又は高いpHを結合DNAを溶離するために加え、溶離したDNAを含む液体は、マイクロピペッタを用いて収集した。
【0157】
本発明は、実施形態と関連して開示されたが、述べられた特定の形式に発明を限定する意図はなく、反対に、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の趣旨及び範囲に含まれる変更、修正及び均等物を包含することが意図されている。
【0158】
前述の記載は、発明の実例にすぎないことは理解されるべきである。見出しは便宜のためのものに過ぎず、見出しの下の開示を見出しのみに限定する意図はない。本発明から離れることなく、当業者によって、種々の変更や修正が実施できる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲に収まるすべての変更、修正、相違を包含するものである。
【0159】
この明細書で言及されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、特定かつ個別に参照として援用されるのと同じ程度に、その全体が参照としてここに援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)少なくとも一枚の壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む、壁を備える分離チャンバと、
ii)前記分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、
iii)それぞれのローディングウェルがローディング開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれのローディングウェルが、電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでおり、前記収集ウェルが液体で満たされている、前記電気泳動ゲル内の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルと、
iv)前記ウェル及び前記開口の列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つの前記アノード及び少なくとも一つの前記カソードを含む少なくとも二つの電極と、
を含む閉じられた電気泳動カセットを取得する工程と、
b)前記電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通して、少なくとも一つのローディングウェルに、生体分子を含むサンプルをロードする工程と、
c)前記生体分子を収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、二つの前記電極の間に電界を印加する工程と、
d)前記収集開口を通して前記収集ウェルから前記生体分子を除去し、それによって前記生体分子を単離する工程と、
を含む、電気泳動ゲルから生体分子を単離する方法。
【請求項2】
前記収集ウェルが水で満たされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収集ウェルがバッファで満たされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体分子が前記収集ウェル内にある場合に、前記工程c)の電界を終了させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開口を含む壁が内面及び外面を含み、
前記内面及び前記外面が液体に接触しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閉じられた電気泳動カセットが、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファに浸漬されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記収集ウェル内の液体と他の液体との間に流体連絡がない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記収集ウェル内の液体と、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファとの間に流体連絡がない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記収集ウェル内の液体が、ローディング又は収集の間、前記電気泳動カセット内の他の液体と接触しない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記収集ウェル内の液体及び選択的にサンプルウェル内の液体が前記電気泳動カセット内の唯一の液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記収集ウェル内の液体が、前記電気泳動カセットに選択的に存在する他の液体から単離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
収集ウェルに接触する前記電気泳動ゲルの上には液体が存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
収集工程の後、前記収集ウェルに液体をロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第2生体分子を前記収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記収集開口を通して前記収集ウェルから前記第2生体分子を収集する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2生体分子が前記収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電界の極性を逆にする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第2生体分子を、前記電気泳動レーン内に配置された第2収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
第2収集開口を通して前記第2収集ウェルから前記第2生体分子を収集する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2生体分子が、前記第2収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電界を印加している間、前記生体分子の配置を監視する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記監視が、前記サンプル中の前記生体分子を損傷しない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記監視が、UV光で照明する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記監視が、白色光、青色光又は可視光で照明する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記監視が蛍光を検出する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記監視が定常的である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
複数の公知の分子マーカーを含む標準物質をロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングを通り過ぎて移動する前記生体分子を監視する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングの勾配を通り過ぎて移動する前記生体分子を監視する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記マーキングの勾配がマーキングの直線勾配である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電界がパルス電界である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードするより前に色素と結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードされた後に色素と結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記電気泳動カセットが色素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記電気泳動ゲルがアガロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記電気泳動ゲルがポリアクリルアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記電気泳動ゲルがアガロース及びポリアクリルアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記生体分子がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記生体分子がRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記生体分子がペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記生体分子がプロテインである、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
電界を印加する手段及びバンドの電気泳動での輸送の間複数のバンドを監視する手段を含む装置に、前記電気泳動カセットをロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記工程d)からの生体分子を、ローディングウェルへロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記工程d)からの生体分子を分析する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記生体分子が質量分析法により分析される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記生体分子を生化学的処理に用いる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記生化学的処理がクローニング反応である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記生化学的処理が、ライゲーション反応である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
それぞれのローディングウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれのローディングウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
それぞれの収集ウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれの収集ウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
それぞれのローディングウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
それぞれの収集ウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
a)i)少なくとも一枚の壁が、少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む開口の配列を含む、壁を備える分離チャンバと、
ii)少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルを含むウェルの配列を含む電気泳動ゲルであって、それぞれのローディングウェルがローディング開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが液体で満たされており、それぞれの前記ローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる、前記分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、
iii)前記ウェル及び開口の列の配列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つのアノード及び少なくとも一つのカソードを含む少なくとも二つの電極と、
を含む閉じられた電気泳動カセットを取得する工程と、
b)前記電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通して、少なくとも一つのローディングウェルに、サンプルをロードする工程と、
c)前記サンプルを複数のバンドに電気泳動分離させるために、かつ前記バンドを収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、二つの前記電極の間に電界を印加する工程と、
d)前記収集開口を通して前記収集ウェルからサンプルバンドを除去し、それによって前記サンプルバンドを単離する工程と、
を含む、電気泳動ゲルからバンドを単離する方法。
【請求項53】
前記収集ウェルが水で満たされる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記収集ウェルがバッファで満たされる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記バンドが前記収集ウェル内にある場合に、前記工程c)の電界を終了させる工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記開口を含む壁が内面及び外面を含む開口を含み、
前記内面及び前記外面が液体に接触しない、
請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記閉じられた電気泳動カセットが、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファに浸漬されていない、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記収集ウェル内の液体と他の液体との間に流体連絡がない、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記収集ウェル内の液体と、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファとの間に流体連絡がない、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記収集ウェル内の液体が、ローディング又は収集の間、前記電気泳動カセット内の他の液体と接触しない、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記収集ウェル内の液体及び選択的にサンプルウェル内の液体が、前記電気泳動カセット内の唯一の液体である、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
前記収集ウェル内の液体が、前記電気泳動カセットに選択的に存在する他の液体から単離されている、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
収集ウェルに接触する前記電気泳動ゲルの上には液体が存在しない、請求項52に記載の方法。
【請求項64】
収集工程の後、前記収集ウェルに液体をロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
第2バンドを前記収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記収集開口を通して前記収集ウェルから前記第2バンドを収集する工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第2バンドが前記収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記電界の極性を逆にする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項69】
第2バンドを、前記電気泳動レーン内に配置された第2収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
第2収集開口を通して前記第2収集ウェルから前記第2バンドを収集する工程をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第2バンドが、前記第2収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
電界を印加している間、少なくとも一つのバンドの配置を監視する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項73】
前記監視が前記サンプルを損傷しない、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記監視がUV光で照明する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記監視が白色光、青色光又は可視光で照明する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記監視が蛍光を検出する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記監視が定常的である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
複数の公知の分子マーカーを含む標準物質をロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項79】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングを通り過ぎて移動するバンドを監視する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項80】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングの勾配を通り過ぎて移動するバンドを監視する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項81】
前記マーキングの勾配がマーキングの直線勾配である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記電界がパルス電界である、請求項52に記載の方法。
【請求項83】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードするより前に色素と結合される、請求項52に記載の方法。
【請求項84】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードされた後に色素と結合される、請求項52に記載の方法。
【請求項85】
前記電気泳動カセットが色素をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項86】
前記電気泳動ゲルがアガロースを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項87】
前記電気泳動ゲルがポリアクリルアミドを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項88】
前記電気泳動ゲルがアガロース及びポリアクリルアミドを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項89】
前記サンプルがDNA又はそのフラグメントを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項90】
前記サンプルがRNA又はそのフラグメントを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項91】
前記サンプルがペプチドを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項92】
前記サンプルがプロテイン又はそのフラグメントを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項93】
電界を印加する手段及びバンドの電気泳動での輸送の間複数のバンドを監視する手段を含む装置に、前記電気泳動カセットをロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項94】
前記工程d)からのバンドを、ローディングウェルへロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項95】
前記工程d)からのバンドを分析する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項96】
前記バンドが質量分析法により分析される、請求項43に記載の方法。
【請求項97】
前記工程d)からのバンドを生化学的処理に用いる工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項98】
前記生化学的処理がクローニング反応である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記生化学的処理がライゲーション反応である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
それぞれのローディングウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれのローディングウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項52に記載の方法。
【請求項101】
それぞれの収集ウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれの収集ウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項52に記載の方法。
【請求項102】
それぞれのローディングウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項52に記載の方法。
【請求項103】
それぞれの収集ウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項52に記載の方法。
【請求項104】
i)少なくとも一枚の壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む、壁を有する分離チャンバと、
ii)前記分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、
iii)それぞれのローディングウェルがローディング開口の下に配置され、それぞれの収集ウェルが収集開口の下に配置され、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでおり、前記収集ウェルが液体で満たされている、前記電気泳動ゲル内の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルと、
iv)前記ウェル及び開口の列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つの前記アノード及び少なくとも一つの前記カソードを含む少なくとも二つの電極と、
v)少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む壁上の少なくとも一つのマーキングであって、少なくとも一列の前記ローディング開口及び少なくとも一列の前記収集開口の間に配置される少なくとも一つのマーキングと、
を備える電気泳動ゲルから生体分子を単離する、電気泳動カセット。
【請求項105】
電気泳動ゲルが、
i)少なくとも一枚の壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む、壁を有する分離チャンバと、
ii)前記分離チャンバに含まれる前記電気泳動ゲルと、
iii)それぞれのローディングウェルがローディング開口の下に配置され、それぞれの収集ウェルが収集開口の下に配置され、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでおり、前記収集ウェルが液体で満たされている、前記電気泳動ゲル内の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルと、
iv)前記ウェル及び開口の列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つの前記アノード及び少なくとも一つの前記カソードを含む少なくとも二つの電極と、
v)少なくとも一列の前記ローディング開口及び少なくとも一列の前記収集開口を含む壁上の少なくとも一つのマーキングであって、少なくとも一列の前記ローディング開口及び少なくとも一列の前記収集開口の間に配置される少なくとも一つの前記マーキングと、
を備える、
電気泳動ゲルから生体分子を単離する電気泳動カセット及び電力供給装置を備える、キット。
【請求項1】
a)i)少なくとも一枚の壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む、壁を備える分離チャンバと、
ii)前記分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、
iii)それぞれのローディングウェルがローディング開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれのローディングウェルが、電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでおり、前記収集ウェルが液体で満たされている、前記電気泳動ゲル内の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルと、
iv)前記ウェル及び前記開口の列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つの前記アノード及び少なくとも一つの前記カソードを含む少なくとも二つの電極と、
を含む閉じられた電気泳動カセットを取得する工程と、
b)前記電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通して、少なくとも一つのローディングウェルに、生体分子を含むサンプルをロードする工程と、
c)前記生体分子を収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、二つの前記電極の間に電界を印加する工程と、
d)前記収集開口を通して前記収集ウェルから前記生体分子を除去し、それによって前記生体分子を単離する工程と、
を含む、電気泳動ゲルから生体分子を単離する方法。
【請求項2】
前記収集ウェルが水で満たされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収集ウェルがバッファで満たされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体分子が前記収集ウェル内にある場合に、前記工程c)の電界を終了させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開口を含む壁が内面及び外面を含み、
前記内面及び前記外面が液体に接触しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閉じられた電気泳動カセットが、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファに浸漬されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記収集ウェル内の液体と他の液体との間に流体連絡がない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記収集ウェル内の液体と、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファとの間に流体連絡がない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記収集ウェル内の液体が、ローディング又は収集の間、前記電気泳動カセット内の他の液体と接触しない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記収集ウェル内の液体及び選択的にサンプルウェル内の液体が前記電気泳動カセット内の唯一の液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記収集ウェル内の液体が、前記電気泳動カセットに選択的に存在する他の液体から単離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
収集ウェルに接触する前記電気泳動ゲルの上には液体が存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
収集工程の後、前記収集ウェルに液体をロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第2生体分子を前記収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記収集開口を通して前記収集ウェルから前記第2生体分子を収集する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2生体分子が前記収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電界の極性を逆にする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第2生体分子を、前記電気泳動レーン内に配置された第2収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
第2収集開口を通して前記第2収集ウェルから前記第2生体分子を収集する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2生体分子が、前記第2収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電界を印加している間、前記生体分子の配置を監視する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記監視が、前記サンプル中の前記生体分子を損傷しない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記監視が、UV光で照明する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記監視が、白色光、青色光又は可視光で照明する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記監視が蛍光を検出する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記監視が定常的である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
複数の公知の分子マーカーを含む標準物質をロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングを通り過ぎて移動する前記生体分子を監視する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングの勾配を通り過ぎて移動する前記生体分子を監視する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記マーキングの勾配がマーキングの直線勾配である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電界がパルス電界である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードするより前に色素と結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードされた後に色素と結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記電気泳動カセットが色素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記電気泳動ゲルがアガロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記電気泳動ゲルがポリアクリルアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記電気泳動ゲルがアガロース及びポリアクリルアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記生体分子がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記生体分子がRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記生体分子がペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記生体分子がプロテインである、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
電界を印加する手段及びバンドの電気泳動での輸送の間複数のバンドを監視する手段を含む装置に、前記電気泳動カセットをロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記工程d)からの生体分子を、ローディングウェルへロードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記工程d)からの生体分子を分析する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記生体分子が質量分析法により分析される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記生体分子を生化学的処理に用いる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記生化学的処理がクローニング反応である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記生化学的処理が、ライゲーション反応である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
それぞれのローディングウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれのローディングウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
それぞれの収集ウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれの収集ウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
それぞれのローディングウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
それぞれの収集ウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
a)i)少なくとも一枚の壁が、少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む開口の配列を含む、壁を備える分離チャンバと、
ii)少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルを含むウェルの配列を含む電気泳動ゲルであって、それぞれのローディングウェルがローディング開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが収集開口を通してアクセス可能であり、それぞれの収集ウェルが液体で満たされており、それぞれの前記ローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでいる、前記分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、
iii)前記ウェル及び開口の列の配列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つのアノード及び少なくとも一つのカソードを含む少なくとも二つの電極と、
を含む閉じられた電気泳動カセットを取得する工程と、
b)前記電気泳動カセットの少なくとも一つのローディング開口を通して、少なくとも一つのローディングウェルに、サンプルをロードする工程と、
c)前記サンプルを複数のバンドに電気泳動分離させるために、かつ前記バンドを収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、二つの前記電極の間に電界を印加する工程と、
d)前記収集開口を通して前記収集ウェルからサンプルバンドを除去し、それによって前記サンプルバンドを単離する工程と、
を含む、電気泳動ゲルからバンドを単離する方法。
【請求項53】
前記収集ウェルが水で満たされる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記収集ウェルがバッファで満たされる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記バンドが前記収集ウェル内にある場合に、前記工程c)の電界を終了させる工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記開口を含む壁が内面及び外面を含む開口を含み、
前記内面及び前記外面が液体に接触しない、
請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記閉じられた電気泳動カセットが、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファに浸漬されていない、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記収集ウェル内の液体と他の液体との間に流体連絡がない、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記収集ウェル内の液体と、前記電気泳動の分離を引き起こすために用いられるランニングバッファとの間に流体連絡がない、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記収集ウェル内の液体が、ローディング又は収集の間、前記電気泳動カセット内の他の液体と接触しない、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記収集ウェル内の液体及び選択的にサンプルウェル内の液体が、前記電気泳動カセット内の唯一の液体である、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
前記収集ウェル内の液体が、前記電気泳動カセットに選択的に存在する他の液体から単離されている、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
収集ウェルに接触する前記電気泳動ゲルの上には液体が存在しない、請求項52に記載の方法。
【請求項64】
収集工程の後、前記収集ウェルに液体をロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
第2バンドを前記収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記収集開口を通して前記収集ウェルから前記第2バンドを収集する工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第2バンドが前記収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記電界の極性を逆にする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項69】
第2バンドを、前記電気泳動レーン内に配置された第2収集ウェルへ電気泳動で移動させるために、前記二つの電極の間に電界を印加する工程をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
第2収集開口を通して前記第2収集ウェルから前記第2バンドを収集する工程をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第2バンドが、前記第2収集ウェル内にある場合に、前記電界を終了させる工程をさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
電界を印加している間、少なくとも一つのバンドの配置を監視する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項73】
前記監視が前記サンプルを損傷しない、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記監視がUV光で照明する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記監視が白色光、青色光又は可視光で照明する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記監視が蛍光を検出する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記監視が定常的である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
複数の公知の分子マーカーを含む標準物質をロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項79】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングを通り過ぎて移動するバンドを監視する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項80】
前記電気泳動カセットの少なくとも一つの壁に配置されたマーキングの勾配を通り過ぎて移動するバンドを監視する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項81】
前記マーキングの勾配がマーキングの直線勾配である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記電界がパルス電界である、請求項52に記載の方法。
【請求項83】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードするより前に色素と結合される、請求項52に記載の方法。
【請求項84】
前記サンプルが、前記ローディングウェルにロードされた後に色素と結合される、請求項52に記載の方法。
【請求項85】
前記電気泳動カセットが色素をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項86】
前記電気泳動ゲルがアガロースを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項87】
前記電気泳動ゲルがポリアクリルアミドを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項88】
前記電気泳動ゲルがアガロース及びポリアクリルアミドを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項89】
前記サンプルがDNA又はそのフラグメントを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項90】
前記サンプルがRNA又はそのフラグメントを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項91】
前記サンプルがペプチドを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項92】
前記サンプルがプロテイン又はそのフラグメントを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項93】
電界を印加する手段及びバンドの電気泳動での輸送の間複数のバンドを監視する手段を含む装置に、前記電気泳動カセットをロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項94】
前記工程d)からのバンドを、ローディングウェルへロードする工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項95】
前記工程d)からのバンドを分析する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項96】
前記バンドが質量分析法により分析される、請求項43に記載の方法。
【請求項97】
前記工程d)からのバンドを生化学的処理に用いる工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項98】
前記生化学的処理がクローニング反応である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記生化学的処理がライゲーション反応である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
それぞれのローディングウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれのローディングウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項52に記載の方法。
【請求項101】
それぞれの収集ウェルの幅が3mmから5mmであり、それぞれの収集ウェルの高さが1mmから2.5mmである、請求項52に記載の方法。
【請求項102】
それぞれのローディングウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項52に記載の方法。
【請求項103】
それぞれの収集ウェルの容積が10μLから30μLの範囲である、請求項52に記載の方法。
【請求項104】
i)少なくとも一枚の壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む、壁を有する分離チャンバと、
ii)前記分離チャンバに含まれる電気泳動ゲルと、
iii)それぞれのローディングウェルがローディング開口の下に配置され、それぞれの収集ウェルが収集開口の下に配置され、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでおり、前記収集ウェルが液体で満たされている、前記電気泳動ゲル内の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルと、
iv)前記ウェル及び開口の列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つの前記アノード及び少なくとも一つの前記カソードを含む少なくとも二つの電極と、
v)少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む壁上の少なくとも一つのマーキングであって、少なくとも一列の前記ローディング開口及び少なくとも一列の前記収集開口の間に配置される少なくとも一つのマーキングと、
を備える電気泳動ゲルから生体分子を単離する、電気泳動カセット。
【請求項105】
電気泳動ゲルが、
i)少なくとも一枚の壁が少なくとも一列のローディング開口及び少なくとも一列の収集開口を含む、壁を有する分離チャンバと、
ii)前記分離チャンバに含まれる前記電気泳動ゲルと、
iii)それぞれのローディングウェルがローディング開口の下に配置され、それぞれの収集ウェルが収集開口の下に配置され、それぞれのローディングウェルが電気泳動レーンにおける少なくとも一つの収集ウェルと並んでおり、前記収集ウェルが液体で満たされている、前記電気泳動ゲル内の少なくとも一列のローディングウェル及び少なくとも一列の収集ウェルと、
iv)前記ウェル及び開口の列がアノード及びカソードの間に配置されている、少なくとも一つの前記アノード及び少なくとも一つの前記カソードを含む少なくとも二つの電極と、
v)少なくとも一列の前記ローディング開口及び少なくとも一列の前記収集開口を含む壁上の少なくとも一つのマーキングであって、少なくとも一列の前記ローディング開口及び少なくとも一列の前記収集開口の間に配置される少なくとも一つの前記マーキングと、
を備える、
電気泳動ゲルから生体分子を単離する電気泳動カセット及び電力供給装置を備える、キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−502962(P2010−502962A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526932(P2009−526932)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077383
【国際公開番号】WO2008/028127
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077383
【国際公開番号】WO2008/028127
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
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