説明

電気泳動ゲル膜処理装置

【課題】 電気泳動ゲル膜の一連の処理を自動化させて、処理の均一化、その後の各種分析等の精度を向上させることが可能な電気泳動ゲル膜処理装置を提供すること。
【解決手段】 筐体と、電気泳動ゲル膜投入・載置台と、電気泳動ゲル膜セット台と、電気泳動ゲル膜切断手段と、電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段と、筐体に移動可能に設置され電気泳動ゲル膜切断手段によって切断された電気泳動ゲル膜を電気泳動ゲル膜投入・載置台上から剥離させて保持し、これを電気泳動膜洗浄・洗浄液切り手段位置まで搬送して洗浄・洗浄液切りに供せしめ、その後電気泳動ゲル膜セット台上に搬送して電気泳動ゲル膜を基板上にセットする電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段と、を具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気泳動ゲル膜を所定の大きさに切断し、それを洗浄・洗浄液切りさせて基板上にセットするまでの一連の作業を自動化させた電気泳動ゲル膜処理装置に係り、特に、全ての電気泳動ゲル膜に対して均一な処理を迅速に施すことができ、電気泳動ゲル膜を使用したその後の処理、例えば、電気泳動されたタンパク質の質量分析の精度を高めることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気泳動したゲル膜の処理は次のようにして行われていた。まず、電気泳動したゲル膜をガラス板上に載置する。次に、作業員がピンセットによってこれをガラス板から剥離させる。次に、剥離させたゲル膜をピンセットによって摘んだ状態で洗浄液が入った皿状容器内に浸漬させて洗浄を施す。次に、それを金属製の基板上にセットする。これらの一連の作業を全て作業員が手作業で行なっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、全ての作業を作業員が手作業によって行なっているので作業効率が悪いという問題があった。
又、作業員が手作業で行っているために金属製の基板上に最終的に得られる電気泳動ゲル膜の品質が均一化されないという問題があった。これはその後に行なわれる各種分析、例えば、質量分析の精度を低下させてしまう一因にもなっていた。
又、全ての作業を開放空間内で行っているので、電気泳動ゲル膜が汚染されてしまうという問題があり、又、洗浄に関しても洗浄液が入った皿状容器内に浸漬させて行なっているので、洗浄自体が不安定であるという問題があった。そして、これらもその後に行なわれる各種分析、例えば、質量分析の精度を低下させてしまう一因になっていた。
【0004】
尚、本願に直接関連するものではないが、背景技術を開示するものとして、例えば、特許文献1、特許文献2等がある。
【0005】
【特許文献1】国際公開WO 2004/019025 A1号パンフレット
【特許文献2】特開2005−147838号公報
【0006】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、電気泳動ゲル膜の一連の処理を自動化させて、作業の容易化、処理の均一化、その後の各種分析等の精度を向上させることが可能な電気泳動ゲル膜処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による電気泳動ゲル膜処理装置は、筐体と、上記筐体に設置され電気泳動ゲル膜が投入・載置される電気泳動ゲル膜投入・載置台と、上記筐体に設置され処理済みの電気泳動ゲル膜が基板上にセットされる電気泳動ゲル膜セット台と、上記筐体に設置され上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に載置された電気泳動ゲル膜を所定の大きさに切断する電気泳動ゲル膜切断手段と、上記筐体に設置され洗浄槽内において上記電気泳動ゲル膜を洗浄すると共に洗浄後に付着した洗浄液を切る電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段と、上記筐体に移動可能に設置され上記電気泳動ゲル膜切断手段によって切断された電気泳動ゲル膜を上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上から剥離させて保持し、これを上記電気泳動膜洗浄・洗浄液切り手段位置まで搬送して洗浄・洗浄液切りに供せしめ、その後上記電気泳動ゲル膜セット台上に搬送して電気泳動ゲル膜を基板上にセットする電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台は移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項3による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1又は請求項2記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜セット台は移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台と上記電気泳動ゲル膜セット台は一体化されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による電気泳動ゲル膜処理装置は、求項1〜請求項4の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜切断手段は、上記電気泳動ゲル膜をX方向に沿って切断するX方向切断用カッター機構と、上記電気泳動ゲル膜をX方向に直交するY方向に沿って切断するY方向切断用カッター機構と、を備えているものであることを特徴とするものである。
又、請求項6による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項5記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記X方向切断用カッター機構のX方向切断用カッタと上記Y方向切断用カッター機構のY方向切断用カッタは回転方向に対して非拘束の状態で取り付けられていることを特徴とするものである。
又、請求項7による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項5記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記X方向切断用カッター機構のX方向切断用カッタと上記Y方向切断用カッター機構のY方向切断用カッタの先端は非鋭利な形状になっていることを特徴とするものである。
又、請求項8による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1〜請求項7の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段は、洗浄槽と、該洗浄槽内において洗浄液を霧状に噴霧させる、又は洗浄液をシャワー状に流出させる、又は洗浄液を流水上に流出させる洗浄液流出機構と、洗浄後の電気泳動ゲル膜に対して圧縮空気を吹き付けて付着した洗浄液を飛散させる圧縮空気噴出機構と、から構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項9による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項8記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記洗浄液流出機構によって洗浄液を霧状に噴霧する場合には上記洗浄槽内は選択的に負圧処理される構成となっていて、噴霧された洗浄液が洗浄槽外に飛散しないように構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項10による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項8記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記洗浄液流出機構は、複数個の洗浄液噴霧ノズルを所定の下向き角度で対向・配置させて構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項11による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項8記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記圧縮圧力空気噴出機構は、複数個の圧縮空気噴出ノズルを対向・配置させたものであることを特徴とするものである。
又、請求項12による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1〜請求項11の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段は相互に直交するY方向・Z方向に移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項13による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項12記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段は、上記電気泳動ゲル膜の端を把持する一対の把持板を供えていて、この一対の把持板を適宜開閉させながら上記電気泳動ゲル膜を剥離させて保持するものであることを特徴とするものである。
又、請求項14による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1〜請求項13の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、筐体はカバーで覆われていることを特徴とするものである。
又、請求項15による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1〜請求項14の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上には複数枚分の電気泳動ゲル膜が載置可能であることを特徴とするものである。
又、請求項16による電気泳動ゲル膜処理装置は、請求項1〜請求項15の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台の上方には液滴ノズルが設置されていて、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に載置されている電気泳動ゲル膜に水滴を垂らして乾燥を防止するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように本願発明による電気泳動ゲル膜処理装置は、筐体と、上記筐体に設置され電気泳動ゲル膜が投入・載置される電気泳動ゲル膜投入・載置台と、上記筐体に設置され処理済みの電気泳動ゲル膜が基板上にセットされる電気泳動ゲル膜セット台と、上記筐体に設置され上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に載置された電気泳動ゲル膜を所定の大きさに切断する電気泳動ゲル膜切断手段と、上記筐体に設置され洗浄槽内において上記電気泳動ゲル膜を洗浄すると共に洗浄後に付着した洗浄液を切る電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段と、上記筐体に移動可能に設置され上記電気泳動ゲル膜切断手段によって切断された電気泳動ゲル膜を上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上から剥離させて保持し、これを上記電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段位置まで搬送して洗浄・洗浄液切りに供せしめ、その後上記電気泳動ゲル膜セット台上に搬送して電気泳動ゲル膜を基板上にセットする電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段と、を具備した構成になっているので、従来作業員の手作業に委ねられていた一連の作業、すなわち、電気泳動ゲル膜の処理を全て自動化することができ、それによって、得られる試料の品質を均一化することができると共に品質の向上を図ることができる。そして、その後に行なわれる各種分析、例えば、質量分析等の分析精度を高めることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台を移動可能に構成することにより、一連の作業の円滑化、迅速化を図ることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜セット台を移動可能に構成した場合も同様である。
又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台と上記電気泳動ゲル膜セット台を一体化させた場合には、構成の簡略化を図ることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜切断手段を、上記電気泳動ゲル膜をX方向に沿って切断するX方向切断用カッター機構と、上記電気泳動ゲル膜をX方向に直交するY方向に沿って切断するY方向切断用カッター機構と、を備えたものとした場合には、切断作用の円滑化、迅速化、確実化を図ることができる。
又、上記X方向切断用カッター機構のX方向切断用カッタと上記Y方向切断用カッター機構のY方向切断用カッタは回転方向に非拘束の状態で取り付けることにより、確実な切断と切断品質の向上を図ることができる。
又、上記X方向切断用カッター機構のX方向切断用カッタと上記Y方向切断用カッター機構のY方向切断用カッタの先端を非鋭利な形状とした場合には、電気泳動ゲル膜の切断品質の向上を図ることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段を、洗浄槽と、該洗浄槽内において洗浄液を霧状に噴霧させる、又は洗浄液をシャワー状に流出させる、又は洗浄液を流水上に流出させる洗浄液流出機構と、洗浄後の電気泳動ゲル膜に対して圧縮空気を吹き付けて付着した洗浄液を飛散させる圧縮空気噴出機構と、から構成することにより、洗浄液による洗浄、その後の洗浄液切り工程を円滑且つ迅速に行なうことができる。
又、上記洗浄液流出機構によって洗浄液を霧状に噴霧する場合に上記洗浄槽内は選択的に負圧処理される構成とした場合には、噴霧された洗浄液の洗浄槽外への飛散を防止することができる。
又、上記洗浄液流出機構を、複数個の洗浄液噴霧ノズルを所定の下向き角度で対向・配置させて構成した場合には、洗浄液の飛散を防止しながら効果的な洗浄が可能になる。
又、上記圧縮空気噴出機構を、複数個の圧縮空気噴出ノズルを対向・配置させた構成とした場合には、円滑且つ効率よく付着した洗浄液を飛ばすことができる。
又、上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段を相互に直交するX方向・Y方向に移動可能に構成した場合には、処理中の電気泳動ゲル膜を円滑且つ迅速に搬送することができる。
又、上記上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段を、上記電気泳動ゲル膜の端を把持する一対の把持板を供えていて、この一対の把持板を適宜開閉させながら上記電気泳動ゲル膜を剥離させて保持するものとして構成した場合には、電気泳動ゲル膜を確実に剥離、保持、搬送することができる。
又、筐体をカバーで覆った場合には非開放空間内で一連の処理を行なうことができる。
又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に複数枚分の電気泳動ゲル膜が載置可能な構成にした場合には、作業効率の向上を図ることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台の上方には液滴ノズルが設置されていて、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に載置されている電気泳動ゲル膜に水滴を垂らして乾燥を防止するように構成した場合には、電気泳動ゲル膜の乾燥を防止してその後の処理の円滑化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1乃至図16を参照して本発明の一実施の形態を説明する。まず、筐体1があり、この筐体1は下部ケース3と、この下部ケース3の上方に構築された枠体5とから構成されている。上記下部ケース3は、複数枚の板体によって箱状に形成されたものであり、その中に図示しない電源装置や電磁弁装置等が収容・配置されている。又、上記枠体5は複数本の枠材7によって構築されている。又、上記複数本の枠材7によって形成された開口部には透明板9が設置されていてカバーを構成している。
【0010】
上記筐体1の下部ケース3上には、移動台11が設置されている。この移動台11は、図2に示すように、電気泳動ゲル膜投入・載置台13と電気泳動ゲル膜セット台15とから構成されていて、これら電気泳動ゲル膜投入・載置台13と電気泳動ゲル膜セット台15とが一体化された状態で単一の移動台11として設置されているものである。又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台13上には、電気泳動されたゲル膜が張り付いたガラス板17が載せられるものである。又、上記電気泳動ゲル膜セット台15上には二枚の金属製基板19、19がセットされていて、これら金属製基板19上に処理済の電気泳動ゲル膜18´が載せられることになる。
【0011】
上記移動台11は、X方向(図1中左右方向)に移動可能に構成されている。すなわち、図3に示すように、移動台11の下側であって下部ケース3の上面にはガイドレール21が設置されている。一方、上記移動台11側には足部材23が設けられていて、この足部材23にはピン25を介して支持部材27が取り付けられている。この支持部材27の下面にガイド部材29が取り付けられている。このガイド部材29が上記ガイドレール21に対して移動可能な状態で係合している。
【0012】
一方、図3において、上記ガイドレール21の反対側にはリニアガイド装置31が設置されている。このリニアガイド装置31は、図1に示すように、ハウジング33と、このハウジング33内に収容・配置された図示しないボールネジと、上記ボールネジに螺合された図示しないボールナットと、上記ボールナットに固定されたスライダ35と、上記ボールネジを 回転駆動するステッピングモータ37等から構成されている。そして、移動台11の片側は上記スライダ35に搭載・固定されている。
【0013】
そして、上記ステッピングモータ37を起動させることにより、スライダ35ひいては移動台11を、ガイド部材29とガイドレール21とによるガイド機構にガイドされながらX方向に移動させるものである。
尚、図1において移動台11が図中左側に移動している様子を実線で示し、図中右側に移動している様子を仮想線で示している。
【0014】
上記移動台11の上方には電気泳動ゲル膜切断手段41が設置されている。この電気泳動ゲル膜切断手段41は、図6に拡大して示すように、X方向切断用カッター機構43と、Y方向切断用カッター機構45とから構成されている。上記X方向切断用カッター機構43は、相互に直交するZ方向とY方向に移動可能に構成されている。同様に、Y方向切断用カッター機構45も相互に直交するZ方向とY方向に移動可能に構成されている。
【0015】
上記X方向切断用カッター機構43は、Y方向リニアガイド装置47を備えている。このY方向リニアガイド装置47は、図4、図6に示すように、ハウジング49と、このハウジング49内に収容・配置された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置された図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたスライダ51と、上記ボールネジを駆動するステッピングモータ53等から構成されている。上記ハウジング49はブラケット55を介して梁部材57に取り付けられている。
尚、上記梁部材57は既に説明した枠材7、7間に掛け渡されている部材である。因みに、枠材7、7間には複数枚の梁部材57が掛け渡されている。
【0016】
上記スライダ51にはZ方向リニアガイド装置61が取り付けられている。このZ方向リニアガイド装置61は、図1、図6に示すように、ハウジング63と、このハウジング63内に収容・配置された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置された図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたスライダ65と、上記ボールネジを駆動するステッピングモータ67等から構成されている。
【0017】
上記スライダ65にはX方向切断用カッター部71が取り付けられている。このX方向切断用カッター部71は、板状の支持部材73と、この支持部材73の先端に回転方向に対してフリーな状態で取り付けられたX方向切断用カッター挟持部75と、このX方向切断用カッター挟持部75に挟持されたX方向切断用カッタ77とから構成されている。上記X方向切断用カッター挟持部75はベアリング76を介して上記支持部材73に回転可能な状態で取り付けられている。又、上記X方向切断用カッタ77の先端は非鋭利な形状に構成されている。
【0018】
上記X方向切断用カッター挟持部75を回転可能に取り付けた理由は次のような理由による。この実施の形態の場合には、X方向切断用カッター部71がZ方向に沿って降下することにより、X方向切断用カッタ77が電気泳動ゲル膜18に当接して食い込むことになるが、その際、電気泳動ゲル膜18側に若干の高さの不均一があって、且つ、上記X方向切断用カッター挟持部75側が剛の状態に構成されていた場合には、X方向切断用カッタ77の一部のみが食い込んだ状態になってしまう。これに対して、本実施の形態のように、上記X方向切断用カッター挟持部75を回転可能に取り付けた場合には、電気泳動ゲル膜18側に若干の高さの不均一があっても、上記X方向切断用カッター挟持部75側が適宜回転することにより、X方向切断用カッタ77の全部を電気泳動ゲル膜18に食い込ませることができるものであり、それによって、電気泳動ゲル膜18の確実な切断と切断品質の向上を図るものである。又、上記X方向切断用カッタ77の先端を非鋭利な形状にしているのは電気泳動ゲル膜18の切断をより確実なものとするためである。
因みに、上記X方向切断用カッタ77の先端を鋭利な形状にした場合には、切断後に電気泳動ゲル膜18が確実に離間しないような現象が発生してしまうことがある。
【0019】
一方、上記Y方向切断用カッター機構45は次のような構成になっている。まず、Y方向切断用カッター機構45は、Y方向リニアガイド装置81を備えている。このY方向リニアガイド装置81は、図3、図6に示すように、ハウジング83と、このハウジング83内に収容・配置された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置された図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたスライダ85と、上記ボールネジを駆動するステッピングモータ87等から構成されている。上記ハウジング83はブラケット89を介して梁部材57に取り付けられている。
【0020】
上記スライダ85にはZ方向リニアガイド装置91が取り付けられている。このZ方向リニアガイド装置91は、図1、図6に示すように、ハウジング93と、このハウジング93内に収容・配置された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置された図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたスライダ95と、上記ボールネジを駆動するステッピングモータ97等から構成されている。
【0021】
上記スライダ95にはY方向切断用カッター部101が取り付けられている。このY方向切断用カッター部101は、板状の支持部材103と、この支持部材103の先端に回転方向に対してフリーな状態で取り付けられたY方向切断用カッター挟持部105と、このY方向切断用カッター挟持部105に挟持されたY方向切断用カッタ107とから構成されている。上記Y方向切断用カッター挟持部105はベアリング106を介して上記支持部材103に回転可能な状態で取り付けられている。又、上記Y方向切断用カッタ107の先端は非鋭利な形状に構成されている。
尚、上記Y方向切断用カッター挟持部105を回転可能な状態で取り付けるとともに、上記Y方向切断用カッタ107の先端を非鋭利な形状に構成した理由は、X方向切断用カッター部71の場合と同じである。
【0022】
又、図1、図7、図11〜図16に示すように、上記移動台11の上方には一連の処理において電気泳動ゲル膜を剥離・保持して搬送するための電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111が設置されている。この電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111は、Y方向に移動可能に構成されているとともに把持部をZ方向に昇降自在な状態で備えているものである。以下、詳細に説明していく。
【0023】
図1、図7、図11〜図16に示すように、まず、Y方向リニアガイド装置113が設置されていて、このY方向リニアガイド装置113は、ハウジング115と、このハウジング115内に収容・配置された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置された図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたスライダ117と、上記ボールネジを駆動するステッピングモータ119等から構成されている。上記ハウジング115はブラケット121を介して梁部材57に取り付けられている。
【0024】
上記スライダ117にはZ方向リニアガイド装置131が取り付けられている。このZ方向リニアガイド装置131は、ハウジング133と、このハウジング133内に収容・配置された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置された図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたスライダ135と、上記ボールネジを駆動するステッピングモータ137等から構成されている。
【0025】
上記スライダ135には把持部141が取り付けられている。この把持部141は次のような構成になっている。まず、支持部材143があり、この支持部材143が上記スライダ135に固着されている。上記支持部材143の下端部にはエアーシリンダ機構145が取り付けられている。このエアーシリンダ機構145はシリンダ147とこのシリンダ147に対して移動可能に取り付けられたピストンロッド149等から構成されている。
【0026】
上記ピストンロッド149にはリンク機構151が連結されていて、このリンク機構151の先端には把持部材153、155が取り付けられている。又、上記支持部材143の先端にはストッパ機構157が取り付けられている。上記ストッパ機構157は支持部材159とこの支持部材159の先端に取り付けられたねじ部材161とから構成されている。
【0027】
上記把持部材153、155は一対のコイルスプリング163、163(図中片側のみ示す)によって相互に離間して開成する方向に付勢されている。又、上記ストッパ機構157のねじ部材161が把持部材155に圧接されることにより閉成されるように構成されている。
【0028】
上記構成をなす電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111によって電気泳動ゲル膜18を剥離・保持する構成は次のようなものである。まず、当初は図11に示すような状態にある。その状態からZ方向リニアガイド装置131を駆動して把持部141を降下させる。その結果、図12に示すような状態となる。この時点では把持部材153、155の先端が電気泳動ゲル膜投入・載置台13に当接した状態にある。
【0029】
次に、図13に示すように、エアーシリンダー機構145を駆動してピストンロッド149を伸張させる。それによって、リンク機構151が作用しながら把持部材153、155が先端を支点として回転する。この回転によってねじ部材161による把持部材155への付勢が解除されることになり、把持部材155はコイルスプリング163、163のスプリング力によって把持部材153から離間する。
【0030】
次に、図13に示す状態から移動台11側をX方向に所定量移動させる。それによって、図14に示すように、把持部材153の先端が電気泳動ゲル膜18の端の下側に入り込んだ状態となる。次に、図15に示すように、エアーシリンダー機構145の駆動を停止してピストンロッド149を引っ込める。
それによって、リンク機構151の作用によって把持部材153、155が逆向きに回転してもとの状態に戻る。又、ねじ部材161による把持部材155の付勢が再開されて把持部材153、155が電気泳動ゲル膜18の端を把持した状態で閉じる。
【0031】
そして、図16に示すように、Z方向リニアガイド装置131を駆動して把持部141を上昇させる。それによって、電気泳動ゲル膜18を剥離・保持した状態となる。後は、Y方向リニアガイド装置113を駆動させることにより、把持した電気泳動ゲル膜18を後述する電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段171側に搬送することになる。
【0032】
前記下部ケース3内であって上部の所定位置には上記電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段171が設置されている。この電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段171は、図8乃至図10に示すように、洗浄槽173と、この洗浄槽173内に設置された洗浄液噴霧機構175と、上記洗浄槽173内であって上記洗浄液噴霧機構175の上方に設置された圧縮空気噴出機構177とから構成されている。
【0033】
上記洗浄液噴霧機構175は、対向・配置された一対の洗浄液噴霧ノズル179、179とから構成されている。これら洗浄液噴霧ノズル179、179は、図8に示すように、所定の角度だけ下向きに指向した状態で設置されている。これら一対の洗浄液噴霧ノズル179、179より洗浄液を噴霧するものである。又、上記圧縮空気噴出機構177は、図8に示すように、対向・配置された一対の圧縮空気噴出ノズル181、181とから構成されている。これら一対の圧縮空気噴出ノズル181、181より圧縮空気を噴出するものである。
【0034】
上記洗浄槽173には吸引ノズル183が接続されていて、この吸引ノズル183には図示しない真空ポンプより延長された配管が接続される。そして、洗浄槽173内を選択的に真空引きするように構成されている。洗浄槽173内を真空引きするのは、洗浄槽173内を負圧環境とすることにより、噴霧された洗浄液が外部に飛散することを防止するためである。又、図1に示すように、下部ケース3内には洗浄液タンク185と洗浄液ポンプ187が内装されている。上記洗浄液ポンプ187の吐出配管189が既に説明した一対の洗浄液噴霧ノズル179、179側に接続されているものである。又、図8に示すように、洗浄槽173にはドレンノズル191が設けられていて、使用された洗浄液はこのドレンノズル191とそこに接続される図示しないドレン配管を介して排出されるものである。
【0035】
又、図1に仮想線で示すように、移動台11の上方位置には液滴ノズル201が設置されている。この液滴ノズル201より電気泳動ゲル膜18上に水滴を垂らしてその乾燥を防止するようにしている。
【0036】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、所定の処理が施されることにより得られた電気泳動ゲル膜18が張り付いたガラス板17が電気泳動ゲル膜投入・載置台13上に作業員の手作業によって載せられる。この実施の形態の場合には、所定の大きさの二枚分相当の大きさの電気泳動ゲル膜18がガラス板17に張り付いている。
【0037】
次に、移動台11のX方向への移動動作、電気泳動ゲル膜切断手段41のX方向切断用カッター機構43と、Y方向切断用カッター機構45のY方向への移動動作との適宜の協働作用によって、所定の大きさの二枚の電気泳動ゲル膜18´、18´を得る。詳細に説明すると、まず、移動台11がX方向に所定量だけ移動して、電気泳動ゲル膜18の端をY方向切断用カッター機構45の下方に位置させる。次に、Y方向切断用カッター機構45のZ方向リニアガイド装置91を駆動して、Y方向切断用カッタ107を電気泳動ゲル膜18の上に降下させる。
【0038】
上記Y方向切断用カッタ107の降下によってその先端が電気泳動ゲル膜18に食い込んだ上体となる。その状態で、移動台11をX方向に微小ストロークにて往復動させる。それによって、電気泳動ゲル膜18の先端側(図1中右側)の端が切断除去される。
【0039】
次に、Y方向切断用カッタ107を上昇させるとともに、移動台11をX方向に沿って所定量前進させ、電気泳動ゲル膜18の後方の端部を上記Y方向切断用カッター機構45の下方に位置させる。次に、Y方向切断用カッター機構45のZ方向リニアガイド装置91を駆動して、Y方向切断用カッタ107を電気泳動ゲル膜18の上に降下させる。
【0040】
上記Y方向切断用カッタ107の降下によってその先端が電気泳動ゲル膜18に食い込んだ状態となる。その状態で、移動台11をX方向に微小ストロークにて往復動させる。上記移動台11を往復動させた後移動台11を停止させる。次に、電気泳動ゲル膜18を切断したY方向切断用カッタ107を切断したその位置を保持したまま移動台11を前進させる。それによって、後端側の不要な部分が移動台11の後方辺からテーブル4上の容器6内に切断・落下する。
以上の作用によってY方向の切断は終了することになる。
【0041】
次に、移動台11をX方向に所定量前進させて、X方向切断用カッター機構43の下方に電気泳動ゲル膜18を位置させる。次に、X方向切断用カッター機構43をY方向に所定量だけ移動させて、X方向切断用カッター機構43を電気泳動ゲル膜18のY方向の所定位置に位置させる。次に、X方向切断用カッタ77をZ方向に降下させて、電気泳動ゲル膜18に食い込ませた状態とする。その状態で移動台11をX方向に微小ストロークにて往復動させる。それによって、電気泳動ゲル膜18の所定位置におけるX方向の切断が完了する。
以下、X方向切断用カッター機構45をY方向に所定量だけ移動させながら
同様の作業を3回繰り返す。それによって、二枚の電気泳動ゲル膜18´、18´を得ることができる。
【0042】
次に、切断された二枚の電気泳動ゲル膜を一枚ずつ保持して一連の処理に供せしめることになる。すなわち、移動台11のX方向への移動動作と電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111のZ方向への移動動作等の協働作用によって、一枚の電気泳動ゲル膜を一対の把持部材153、155によって把持する。
【0043】
以下、詳細に説明する。まず、移動台11をX方向に沿って所定量だけ前進させる。それによって、図11に示すような状態とする。すなわち、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111の下方位置に電気泳動ゲル膜18´、18´を位置させるものである。そして、その状態からZ方向リニアガイド装置131を駆動して把持部141を降下させる。その結果、図12に示すような状態となる。この時点では把持部材153、155の先端が電気泳動ゲル膜投入・載置台13に当接した状態にある。
【0044】
次に、図13に示すように、エアーシリンダー機構145を駆動してピストンロッド149を伸張させる。それによって、リンク機構151が作用しながら把持部材153、155が先端を支点として回転する。この回転によってねじ部材161による把持部材155への付勢が解除されることになり、把持部材155はコイルスプリング163、163のスプリング力によって把持部材153から離間する。
【0045】
次に、図13に示す状態から移動台11側をX方向に所定量移動させる。それによって、図14に示すように、把持部材153の先端が電気泳動ゲル膜18の端の下側に入り込んだ状態となる。次に、図15に示すように、エアーシリンダー機構145の駆動を停止してピストンロッド149を引っ込める。
それによって、リンク機構151の作用によって把持部材153、155が逆向きに回転してもとの状態に戻る。又、ねじ部材161による把持部材155の付勢が再開されて把持部材153、155が電気泳動ゲル膜18の端を把持した状態で閉じる。
【0046】
そして、図16に示すように、Z方向リニアガイド装置131を駆動して把持部141を上昇させる。それによって、電気泳動ゲル膜18を剥離・保持した状態となる。後は、Y方向リニアガイド装置113を駆動させることにより、把持した電気泳動ゲル膜18を後述する電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段171側に搬送することになる。
【0047】
電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111は、一枚の電気泳動ゲル膜18´を把持した状態でY方向に適宜移動して、電気泳動ゲル膜18´を洗浄槽173の真上まで搬送する。次いで、把持部をZ方向に降下させることにより、電気泳動ゲル膜18´を洗浄槽173内に入れる。その状態を図8において仮想線で示す。
【0048】
洗浄槽173内では一対の洗浄液噴霧ノズル179、179より洗浄液が噴霧されているので、それによって、電気泳動ゲル膜18´は洗浄されることになる。その際、洗浄槽173内は吸引ノズル183、図示しない吸引配管と真空ポンプによって真空引きされているので、噴霧された洗浄液が不用意に外部に流出することはない。
【0049】
次に、洗浄液切り工程に入る。すなわち、洗浄液噴霧ノズル179、179による洗浄液の噴霧は停止され、代わりに、一対の圧縮空気噴出ノズル181、181より圧縮空気が噴出される。その際、把持部をZ方向に沿って上方に移動させることにより電気泳動ゲル膜18´を洗浄槽173内から引き上げる。その過程で付着した洗浄液が圧縮空気によって飛ばされることになる。
【0050】
次に、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111のZ方向の動作と移動台11のX方向の動作の協働作用によって、把持されている電気泳動ゲル膜18´を一枚の金属製基板19上に載せる。すなわち、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111を所定の速度でZ方向に降下させるとともに移動台11をX方向に所定の速度で移動させることにより、電気泳動ゲル膜18´を金属製基板19上に載せる。
【0051】
次に、電気泳動ゲル膜切断手段41のY方向切断用カッター機構45によって、上記処理済の電気泳動ゲル膜18´の端、すなわち、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111によって把持されていた端の部分を切断・除去する。
以上の工程を経ることにより一枚の電気泳動ゲル膜18´の処理が完了することになる。後は同様の工程を繰り返すことにより残りの一枚の電気泳動ゲル膜18´の処理を行なうものである。
尚、液滴ノズル201より電気泳動ゲル膜18´上に水滴を垂らすことによりその乾燥を防止する作業が適宜のタイミングで実行されるものである。
【0052】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、本実施の形態による電気泳動ゲル膜処理装置によると、従来作業員の手作業に委ねられていた一連の作業、すなわち、電気泳動ゲル膜の処理を全て自動化することができ、それによって、得られる試料の品質を均一化することができると共に品質の向上を図ることができる。そして、その後に行なわれる各種分析、例えば、質量分析等の分析精度を高めることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台13と電気泳動ゲル膜セット台15を移動台11として一体化させ、且つ、X方向に移動可能に構成したので、電気泳動ゲル膜の処理動作の円滑化、迅速化を図ることができる。又、構成の簡略化を図ることができる。
又、上記電気泳動膜切断手段41を、上記電気泳動ゲル膜をX方向に沿って切断するX方向切断用カッター機構43と、上記電気泳動ゲル膜をX方向に直交するY方向に沿って切断するY方向切断用カッター機構45とを備えた構成になっているので、切断作用の円滑化、迅速化、確実化を図ることができる。
又、上記X方向切断用カッター機構43のX方向切断用カッタ77とY方向切断用カッタ機構45のY方向切断用カッタ107は回転方向に非拘束の状態で取り付けられているので、電気泳動ゲル膜を確実に切断することができるとともに切断品質の向上を図ることができる。
又、上記X方向切断用カッタ77と上記Y方向切断用カッタ107の先端を非鋭利な形状としているので電気泳動ゲル膜の切断品質の向上を図ることができる。
又、上記電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段171を、洗浄槽173と、該洗浄槽173内において洗浄液を霧状に噴霧させる洗浄液噴霧機構175と、洗浄後の電気泳動ゲル膜に対して圧縮空気を吹き付けて付着した洗浄液を飛散させる圧縮空気噴出機構175とから構成しているので、洗浄液による洗浄、その後の洗浄液切り工程を円滑且つ迅速に行なうことができる。
又、上記洗浄槽173内を選択的に真空引きして負圧にしているので、洗浄液噴霧機構175により噴霧された洗浄液が洗浄槽173外に飛散することを防止することができる。
又、上記洗浄液噴霧機構175を、一対の洗浄液噴霧ノズル179、179を所定の下向き角度で対向・配置させて構成しているので、洗浄液の飛散を防止しながら効果的な洗浄が可能になる。
又、上記圧縮空気噴出機構177を、一対の圧力空気噴出ノズル181、181を対向・配置させた構成としているので、円滑且つ効率よく付着した洗浄液を飛ばすことができる。
又、上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111を相互に直交するY方向とZ方向に移動可能に構成しているので、処理中の電気泳動ゲル膜を円滑且つ迅速に搬送することができる。
又、上記上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段111を、相互に弾圧されることにより上記電気泳動ゲル膜の端を把持する一対の把持板153、155とから構成しているので、電気泳動ゲル膜を確実に剥離、保持、搬送することができる。
又、筐体をカバーで覆った構成になっているので、非開放空間内で一連の処理を行なうことができる。
又、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台13上に複数枚分の電気泳動ゲル膜が載置可能な構成にしているので、作業効率の向上を図ることができる。
【0053】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
まず、前記一実施の形態では二枚分の電気泳動ゲル膜を処理の対象としているがそれに限定されるものではなく、一枚分の電気泳動ゲル膜、三枚以上の電気泳動ゲル膜を処理の対象として想定した構成も考えられる。
又、電気泳動ゲル膜切断手段、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段、電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段の構成としては図示した以外にも様々な構成が考えられる。
例えば、前記一実施の形態の場合には、洗浄液を霧状に噴霧するように構成したが、これをシャワー状に流下させる、流水状に流出させるように構成することが想定される。
その他、図示した構成はあくまで一例であってそれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は電気泳動ゲル膜を所定の大きさに切断し、それを洗浄・乾燥させて基板上にセットするまでの一連の作業を自動化させた電気泳動ゲル膜処理装置に係り、特に、全ての電気泳動ゲル膜に対して均一な処理を迅速に施すことができ、電気泳動ゲル膜を使用したその後の処理、例えば、質量分析の精度を高めることができるように工夫したものに関し、例えば、タンパク質の質量分析を行なうための試料を得るときに好的である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜処理装置の全体の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜処理装置の全体の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のIII−III断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のV−V断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜切断手段の構成を示す一部側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段の構成を示す一部側面図である。
【図8】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段の構成を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施の形態を示す図で、図8のIX−IX断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態を示す図で、図8のX−X矢視図である。
【図11】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段による電気泳動ゲル膜の剥離、保持、搬送動作を順次示す一部側面図である。
【図12】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段による電気泳動ゲル膜の剥離、保持、搬送動作を順次示す一部側面図である。
【図13】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段による電気泳動ゲル膜の剥離、保持、搬送動作を順次示す一部側面図である。
【図14】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段による電気泳動ゲル膜の剥離、保持、搬送動作を順次示す一部側面図である。
【図15】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段による電気泳動ゲル膜の剥離、保持、搬送動作を順次示す一部側面図である。
【図16】本発明の一実施の形態を示す図で、電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段による電気泳動ゲル膜の剥離、保持、搬送動作を順次示す一部側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
3 下部ケース
5 枠体
7 枠材
9 透明板
11 移動台
13 電気泳動ゲル膜投入・載置台
15 電気泳動ゲル膜セット台
18 切断前の電気泳動ゲル膜
18´ 切断後の電気泳動ゲル膜
41 電気泳動ゲル膜切断手段
43 X方向切断用カッター機構
45 Y方向切断用カッター機構
111 電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段
171 電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段





















【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
上記筐体に設置され電気泳動ゲル膜が投入・載置される電気泳動ゲル膜投入・載置台と、
上記筐体に設置され処理済みの電気泳動ゲル膜が基板上にセットされる電気泳動ゲル膜セット台と、
上記筐体に設置され上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に載置された電気泳動ゲル膜を所定の大きさに切断する電気泳動ゲル膜切断手段と、
上記筐体に設置され洗浄槽内において上記電気泳動ゲル膜を洗浄すると共に洗浄後に付着した洗浄液を切る電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段と、
上記筐体に移動可能に設置され上記電気泳動ゲル膜切断手段によって切断された電気泳動ゲル膜を上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上から剥離させて保持し、これを上記電気泳動膜洗浄・洗浄液切り手段位置まで搬送して洗浄・洗浄液切りに供せしめ、その後上記電気泳動ゲル膜セット台上に搬送して電気泳動ゲル膜を基板上にセットする電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段と、
を具備したことを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜投入・載置台は移動可能に構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜セット台は移動可能に構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜投入・載置台と上記電気泳動ゲル膜セット台は一体化されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜切断手段は、上記電気泳動ゲル膜をX方向に沿って切断するX方向切断用カッター機構と、上記電気泳動ゲル膜をX方向に直交するY方向に沿って切断するY方向切断用カッター機構と、を備えているものであることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記X方向切断用カッター機構のX方向切断用カッタと上記Y方向切断用カッター機構のY方向切断用カッタは回転方向に対して非拘束の状態で取り付けられていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項7】
請求項5記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記X方向切断用カッター機構のX方向切断用カッタと上記Y方向切断用カッター機構のY方向切断用カッタの先端は非鋭利な形状になっていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜洗浄・洗浄液切り手段は、洗浄槽と、該洗浄槽内において洗浄液を霧状に噴霧する、又は洗浄液をシャワー状に流出させる、又は洗浄液を流水状に流出させる洗浄液流出機構と、洗浄後の電気泳動ゲル膜に対して圧縮空気を吹き付けて付着した洗浄液を飛散させる圧縮空気噴出機構と、から構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項9】
請求項8記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記洗浄液流出機構によって洗浄液を霧状に噴霧する場合には上記洗浄槽内は選択的に負圧処理される構成となっていて、噴霧された洗浄液が洗浄槽外に飛散しないように構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項10】
請求項8記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記洗浄液流出機構は、複数個の洗浄液噴霧ノズルを所定の下向き角度で対向・配置させて構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項11】
請求項8記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記圧縮圧力空気噴出機構は、複数個の圧縮空気噴出ノズルを対向・配置させたものであることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段は相互に直交するY方向・Z方向に移動可能に構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項13】
請求項12記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜剥離・保持・搬送手段は、上記電気泳動ゲル膜の端を把持する一対の把持板を供えていて、この一対の把持板を適宜開閉させながら上記電気泳動ゲル膜を剥離させて保持するものであることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項14】
請求項1〜請求項13の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
筐体はカバーで覆われていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項15】
請求項1〜請求項14の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上には複数枚分の電気泳動ゲル膜が載置可能であることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。
【請求項16】
請求項1〜請求項15の何れかに記載の電気泳動ゲル膜処理装置において、
上記電気泳動ゲル膜投入・載置台の上方には液滴ノズルが設置されていて、上記電気泳動ゲル膜投入・載置台上に載置されている電気泳動ゲル膜に水滴を垂らして乾燥を防止するように構成されていることを特徴とする電気泳動ゲル膜処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−192732(P2007−192732A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12599(P2006−12599)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成17年11月30日〜12月2日 文部科学省・経済産業省主催の「地域発先端テクノフェア2005」に出品
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【出願人】(595034204)SUS株式会社 (40)
【Fターム(参考)】