説明

電気泳動ディスプレイユニット

固定されたフレーム時間を有する電気泳動ディスプレイユニット(1)は、駆動に比較的柔軟性がない。タイミングパラメータを有するライン駆動信号を導入することによって、フレームレートを可変とすることができる。可変フレームレートによれば、振動パルス(Sh)からの光学的乱れが低減し、グレー値の数が増加する。タイミングパラメータはライン駆動信号の開始の遅延を表し、および/又はライン駆動信号の持続時間を表す。ラインは行を有することが好ましい。可能な全ての列駆動信号や、列駆動信号ごとの又はフレームごとの、行遅延時間を規定する行遅延パラメータが、コントローラ(20)に結合されるメモリに記憶される。振動パルス(Sh)は最小の行遅延時間で供給され、リセットパルス(R)は最大の行遅延時間で供給され、駆動パルス(Dr)はフレキシブルな行遅延時間で供給され、これは、所定の時間間隔と複数ビットにより規定されるステップ値との積に対応する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動ディスプレイユニット、電気泳動ディスプレイユニットを有する表示装置、電気泳動ディスプレイユニットを駆動する方法、および電気泳動ディスプレイユニットを駆動するプロセッサ・プログラム・プロダクトに関する。
【0002】
このタイプの表示装置の例は、モニタ、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、電子ブック、電子新聞、および電子マガジンである。
【背景技術】
【0003】
従来技術の電気泳動ディスプレイユニットは、国際特許出願WO99/53373号から既知である。この特許出願は、2つの基板を有する電子インクディスプレイを開示しており、この2つの基板のうちの一方の基板は透明であって共通電極(対向電極としても知られる)を有し、他方の基板は行および列に配される画素電極が備えられている。行電極と列電極との間の交差部は画素に関係している。画素は共通電極の一部と画素電極との間に形成される。画素電極はトランジスタのドレインに結合され、そのトランジスタのソースは列電極に結合され、そのトランジスタのゲートは行電極に結合されている。画素、トランジスタ、並びに行電極および列電極の構成は、協働して、アクティブマトリックスを形成する。行ドライバ(選択ドライバ)は、行駆動信号、即ち、或る行の画素を選択する選択信号を供給し、列ドライバ(データドライバ)は、列駆動信号即ちデータ信号を、列電極およびトランジスタを介して、選択された行の画素に供給する。データ信号は表示されるべきデータに対応しており、選択信号と協働して、1つ以上の画素を駆動する駆動信号(の一部)を形成する。
【0004】
更に、画素電極と透明基板に備えられる共通電極との間に、電子インクが備えられる。電子インクは、直径がおよそ10ミクロンから50ミクロンの複数のマイクロカプセルを有する。各マイクロカプセルは、液体中に懸濁する、正に帯電した白の粒子と負に帯電した黒の粒子とを有する。正の電界が画素電極に印加されると、白の粒子は、マイクロカプセルの、透明基板に向けられた側へと移動し、画素が観測者に見えるようになる。同時に、黒の粒子は、マイクロカプセルの反対側の画素電極に移動し、そこでは黒の粒子は観測者から見えないようになる。負の電界を画素電極に印加することによって、黒の粒子は、マイクロカプセルの、透明基板に向けられた側の共通電極に移動し、画素は観測者に暗く見える。同時に、白の粒子は、マイクロカプセルの反対側の画素電極に移動し、そこでは白の粒子は観測者から見えないようになる。電界が取り除かれると、表示装置は粒子の移動により得られた状態をそのまま保ち、双安定性を示す。
【0005】
電気泳動ディスプレイユニットの光学応答の画素履歴依存性を低減するために、データ依存信号が供給される前にプリセットデータ信号が供給される。プリセットデータ信号はパルスを有し、このパルスは、電気泳動粒子を2つの電極のうちの一方の電極に静止した状態から解放するのに十分なエネルギーではあるが、この粒子を他方の電極に到達させるには小さすぎるエネルギーを表す。画素履歴依存性が低減したので、画素の履歴に関わらず、同一データに対する光学応答は実質的に等しい。基本的なメカニズムは、表示装置が所定の状態、例えば黒の状態に切り換えられた後、電気泳動粒子が静止状態になるという事実によって、説明できる。次に白の状態への切換えが生じたとき、粒子の始動速度はゼロに近いので粒子の運動量は小さい。これによって、履歴依存性が大きくなり、この大きい依存性に打ち勝つために長い切換時間が必要である。プリセットデータ信号の印加によって、電気泳動粒子の運動量が増加し、したがってこの依存性が低減する(そして、より短い切換時間が可能である)。
【0006】
電気泳動ディスプレイユニットの画素を更新するには、行ごとに、当該行を選択(駆動)するためにその行に選択信号を供給する行駆動動作、およびパルス(例えば、プリセットデータ信号のパルス、データ依存信号のパルスなど)を画素に供給する列駆動動作が必要である。(各行を次々に駆動し、行ごとに全ての列を同時に一回駆動することによって)全ての行の全ての画素を一回駆動するのに必要な時間間隔は、フレーム期間と呼ばれる。
【0007】
最初のフレームの組の間、プリセットデータ信号のパルスは画素に供給され、各パルスは1フレーム期間の持続期間を有する。1番目のパルスは、例えば正の振幅を有し、2番目のパルスは負の振幅を有し、3番目のパルスは正の振幅を有する、などである。これらの交互に現れるパルスの持続時間が比較的短い限りは、画素の表示するグレー値はこれらのパルスによって変化しない。
【0008】
1つ以上のフレーム期間を有する2番目のフレームの組の間、データ依存信号の1つ以上のパルスが供給される。データ依存信号は、ゼロフレーム期間、1フレーム期間、2フレーム期間から、例えば15フレーム期間の持続時間を有する。これによって、ゼロフレーム期間の持続時間を有するデータ依存信号は、例えば、(画素が完全な黒を既に表示していた場合)完全な黒を表示する画素に対応する(特定のグレー値を表示する場合は、ゼロフレーム期間の持続時間を有するパルスで駆動したとき、言い換えると、振幅ゼロのパルスで駆動したとき、このグレー値は変化しない)。15フレーム期間の持続時間を有するデータ依存信号は、連続する15個のパルスを有し、例えば、完全な白を表示する画素に対応する。1フレーム期間から14フレーム期間の持続時間を有するデータ依存信号は、1個のパルスから連続する14個のパルスを有し、例えば、完全な黒と完全な白との間の限られた数のグレー値のうちの1つのグレー値を表示する画素に対応する。
【0009】
各フレームは、同じ固定の持続時間を有するので、電気泳動ディスプレイユニットの駆動はかなり柔軟性に欠ける。プリセットデータ信号のパルスは固定の持続時間であり、最初のフレームの組の間に粒子の乱れの原因で起こり得る光学的乱れが低減されるようにこのパルスを短くすることができない。グレー値の数は限られており増やすことができず、連続する2つのグレー値の間の差はかなり大きい。
【0010】
既知の電気泳動ディスプレイユニットは、特に、電気泳動ディスプレイユニットの駆動に比較的柔軟性がないので、不利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特に、比較的柔軟性のある駆動方式を備えた電気泳動ディスプレイユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、独立請求項によって規定される。従属請求項は有利な実施形態を規定する。
【0013】
本発明の他の目的は、特に、比較的柔軟性のある駆動方式を備えた電気泳動ディスプレイユニットを有する表示装置を提供すること、並びに、比較的柔軟性のある駆動方式を備えた電気泳動ディスプレイユニットで使用する(又は電気泳動ディスプレイユニットと組み合わせて使用する)ための、電気泳動ディスプレイユニットを駆動する方法、および電気泳動ディスプレイユニットを駆動するプロセッサプログラムプロダクトを提供することである。
【0014】
本発明による電気泳動ディスプレイユニットは、
−画素を伴なうラインを有する電気泳動表示パネル、
−上記ラインを駆動するラインドライバ、および
−タイミングパラメータを有するライン駆動信号を上記ラインドライバに供給するコントローラであって、上記電気泳動ディスプレイユニットのフレームレートを変えるために上記タイミングパラメータを変えるコントローラ、
を有する。
【0015】
タイミングパラメータを有するライン駆動信号を使用することによって、これらのタイミングパラメータを変更することで電気泳動ディスプレイユニットのフレームレートを変更することができる。これによって、もっとフレキシブルな駆動になる。
【0016】
一実施例では、上記タイミングパラメータは、上記ライン駆動信号の開始を遅延させることにより形成される。少なくとも1つのラインの駆動の開始を遅延させることによって、1つ以上のラインの駆動が遅延するフレームの持続時間はもはや固定されないが、使用されるライン遅延時間に依存する。ラインは列又は行に対応する。一般的に、フレーム遅延時間は全てのライン遅延時間の合計である。通常は、専らではないが、フレームにおける全ての行は、同じライン遅延時間を有し、この場合、フレーム遅延時間はこのライン遅延時間とラインの数との積である。ライン遅延時間は1つ以上のフレームごとに変えることができ、この結果、可変フレーム遅延時間および可変フレームレートになる。結果として、駆動は以下に示すようにもっとフレキシブルになる。
【0017】
従来のフレームレートは例えば50Hzであり、従来のフレームレートは、ライン遅延時間を導入できるように、例えば130Hzまで増加する。このフレームレートにおいて、最小フレーム時間は7.7msである。0msと45.9msとの間のフレーム遅延を導入することによって、最大フレーム時間は53.6msである。プリセットデータ信号のパルスを供給すると、最小のフレーム遅延が導入される(言い換えると、遅延が全く導入されない)。この場合、130Hzのフレームレートにおいて光学的乱れが生じる。斯かる乱れは、50Hzのフレームレートにおける光学的乱れと比較して、見えにくい。データ依存信号のパルスを供給すると、1つ以上のフレームの間、0msと45.9msとの間のフレーム遅延が導入される。結果として、表示されるべきグレー値をもっと正確に規定できる。これによって、例えば1つのフレームは第1のフレーム遅延時間を有し、他のフレームは第1のフレーム遅延時間とは異なる第2のフレーム遅延時間を有する。このとき、例えば、1つの画素は、この1つのフレームの間に15Vの振幅のパルスが供給されることによって、この1つのフレームの間に駆動し、他のフレームの間に0Vの振幅のパルスが供給されることによって、他のフレームの間に駆動する。これによって、1つのフレーム期間に比例して、グレー値の表示が変化するようになる。他の画素は、この1つのフレームの間に0Vの振幅のパルスが供給されることによって、この1つのフレームの間に駆動し、他のフレームの間に15Vの振幅のパルスが供給されることによって、他のフレームの間に駆動する。これによって、他のフレーム期間に比例して、グレー値が変化するようになる。このようにして、異なる画素は異なるグレーレベルを表示できる。
【0018】
別の実施例では、上記タイミングパラメータは、ラインのライン駆動信号の持続期間により形成される。この実施例は、先に言及した実施例と組み合わせることができる。
【0019】
タイミングパラメータが既定の時間間隔と複数のビットにより規定されるステップ値との積に対応する場合、タイミングパラメータを容易に実現できる。
【0020】
ラインが行である場合、1つ以上の行ドライバが、行の画素を駆動するとき、当該行の画素に結合される全てのトランジスタを導通状態にして、その後に1つ以上の列ドライバが列および導通トランジスタを通じてデータを当該行の画素に供給することができるので、本発明は特に有利である。1つ以上の行ドライバが当該行の全てのトランジスタを制御するので、行遅延時間を容易に導入できる。行ドライバは選択ドライバとしても知られている。
【0021】
本発明による電気泳動ディスプレイユニットの一実施例は、請求項6に規定されている。コントローラに結合される又は組み込まれるメモリに、例えば、全ての可能な列駆動信号(各列駆動信号は、データ依存信号の1つ以上のパルスに先行するプリセットデータ信号のパルスを有する)や、例えば、列駆動信号ごとの及び/又はフレームごとの行遅延時間を規定する行遅延パラメータなどのタイミングパラメータに関する情報を記憶することによって、複数の列駆動信号のうちの画素に供給されるべき列駆動信号を選択するときに必要な行遅延量が自動的に発生する。おそらく別の行遅延時間を必要とする同じ行の他の画素は、このフレームの間、0Vの振幅のパルスで駆動され、これによって、これら他の画素の前のグレー値が変わらずに表示されるようになる。列駆動信号はデータ信号としても知られている。
【0022】
振動パルスは、例えば、上で説明されたプリセットデータ信号のパルスに対応する。駆動パルスは、例えば、上で説明されたデータ依存信号のパルスに対応する。リセットパルスは駆動パルスに先行し、駆動パルスの固定開始点(固定された黒又は固定された白)を規定することによって、電気泳動ディスプレイユニットの光学応答を更に向上させる。あるいは、リセットパルスは駆動パルスに先行し、駆動パルスのフレキシブルな開始点(黒又は白であり、後続する駆動パルスによって規定されるべきグレー値に依存して選択され、このグレー値に最も近い)を規定することによって、電気泳動ディスプレイユニットの光学応答を更に向上させる。振動パルスは通常はフレームができるだけ短いことを必要とし、リセットパルスは通常はフレームが例えばできるだけ長いことを必要とするので、上記第1の行遅延時間は固定された行遅延時間であり、上記第1の行遅延時間は上記第2の行遅延時間よりも短い。表示されるべきグレー値の可能な数を増加させるために駆動パルスは通常はフレームがフレキシブルであることを必要とするので、上記第3の行遅延時間はフレキシブルな行遅延時間である。第2の行遅延時間は固定とすることもでき、フレキシブルとすることもできる。
【0023】
表示装置は電子ブックとすることができ、情報を記憶する記憶媒体はメモリスティック、集積回路、メモリ、又は、例えばディスプレイユニット上に表示されるべき本の内容を記憶する他の記憶装置とすることができる。
【0024】
本発明による方法および本発明によるプロセッサ・プログラム・プロダクトの実施例は、本発明による電気泳動ディスプレイユニットの実施例に対応する。
【0025】
本発明は、特に、従来の固定されたフレーム時間は駆動を柔軟性のないものとする洞察に基づいており、特に、タイミングパラメータを有するライン駆動信号を導入することによってフレーム時間を可変とすることができるという基本的な概念に基づいている。
【0026】
本発明は、特に、比較的柔軟性のある駆動方式を備えた電気泳動ディスプレイユニットを提供する問題を解決し、特に、プリセットデータ信号のパルスからの起こり得る光学的乱れを低減する点、および可能なグレー値の数を増加させるという点で、有利である。
【0027】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施例を基準にして明らかであり、これらの実施例を基準にして説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1に(断面で)示される電気泳動ディスプレイユニットの画素11は、ベース基板2と、例えばポリエチレンの2つの基板3、4との間に存在する電子インクを持つ電気泳動フィルム(ベース基板2に積層されている)と、を有する。これら基板のうちの一方の基板3には透明画素電極5が備えられ、他方の基板4には透明共通電極6が備えられる。電子インクは、直径が約10ミクロンから50ミクロンの複数のマイクロカプセル7を有する。各マイクロカプセル7は、液体10に懸濁した、正に帯電した白の粒子8と負に帯電した黒の粒子9とを有する。正の電界が画素電極5に印加されると、白の粒子8は、マイクロカプセル7の、共通電極6を向いている側に移動し、画素は観測者に見えるようになる。同時に、黒の粒子9は、マイクロカプセル7の反対側に移動し、そこでは黒の粒子9は観測者から見えないようにされる。画素電極5に負の電界を印加することによって、黒の粒子9は、マイクロカプセル7の、共通電極6を向いている側に移動し、画素は観測者に暗く見える(図示せず)。電界が取り除かれると、粒子8、9はその移動により得られた状態をそのまま保ち、ディスプレイは双安定性を示し、電力を実質的に消費しない。
【0029】
図2に示される電気泳動ディスプレイユニット1は表示パネルDPを有し、この表示パネルDPは、行電極即ち選択電極41、42、43と列電極即ちデータ電極31、32、33との交差部の領域に、画素11のマトリックスを有する。これらの画素11は全て共通電極6に結合され、各画素11はそれ自身の画素電極5に結合されている。電気泳動ディスプレイユニット1は、更に、行電極41、42、43に結合された行ドライバ40と列電極31、32、33に結合された列ドライバ30とを有し、各画素11のアクティブスイッチング素子12を有する。電気泳動ディスプレイユニット1はこれらのアクティブスイッチング素子12(この実施例では(薄膜)トランジスタ)によって駆動される。行ドライバ40は行電極41、42、43を連続的に選択し、一方、列ドライバ30はデータ信号を列電極31、32、33に供給する。好ましくは、コントローラ20は入力部21を介して到達する入力データを先ず処理し、次いでデータ信号を発生する。列ドライバ30と行ドライバ40との間の相互同期は、駆動ライン23および24を介して行われる。行ドライバ40からの選択信号はトランジスタ12を介して画素電極5を選択する。トランジスタ12のドレイン電極は画素電極5に電気的に結合され、トランジスタ12のゲート電極は行電極41、42、43に電気的に結合され、トランジスタ12のソース電極は列電極31、32、33に電気的に結合されている。同時に、列電極31、32、33に存在するデータ信号が、トランジスタ12のドレイン電極に結合される画素11の画素電極5に送られる。トランジスタの代わりに、ダイオード、MIMなどの他のスイッチング素子を使用することができる。データ信号および選択信号は協働して駆動信号(の一部)を形成する。
【0030】
入力部21を介して受け取ることができる画像情報などの入力データは、コントローラ20によって処理される。さらに、コントローラ20は新たな画像に関する新たな画像情報の到達を検出し、それに応答して、受け取った画像情報の処理を開始する。画像情報のこの処理には、この新たな画像情報の読込み、コントローラ20のメモリに記憶された以前の画像とこの新たな画像との比較、温度センサとの相互連絡、駆動波形のルックアップテーブルを含むメモリのアクセス、などが含まれる。最後に、コントローラ20は、画像情報の処理がいつ完了するのかを検出する。
【0031】
次いで、コントローラ20は、駆動ライン23を介して列ドライバ30に供給されるべきデータ信号を発生し、駆動ライン24を介して行ドライバ40に供給されるべき選択信号を発生する。データ信号は、全ての画素11に対して同じであるデータ非依存信号と、画像11ごとに違うかもしれないし違わないかもしれないデータ依存信号と、を有する。データ非依存信号はプリセットパルスを形成する振動パルスを有し、データ依存信号は、1つ以上のリセットパルスと1つ以上の駆動パルスとを有する。振動パルスはエネルギーを表すパルスを有しており、このエネルギーは、電気泳動粒子8、9を2つの電極5、6のうちの一方の電極での静止状態から解放するのに十分なエネルギーであるが、粒子8、9を電極5、6のうちの他方の電極に到達させるには小さすぎるエネルギーである。履歴依存性が低くなったので、画素の履歴に関わらず、同一データに対する光学応答は実質的に等しい。したがって、振動パルスによって、電気泳動ディスプレイユニットの光学応答の画素履歴依存性が低減する。リセットパルスは駆動パルスに先行して駆動パルスのフレキシブルな開始点を規定することによって、さらに光学応答を向上させる。この開始点は黒レベル又は白レベルとすることができ、この開始点は、後続する駆動パルスによって規定されるグレー値に依存して選択され、このグレー値に最も近い。あるいは、リセットパルスは、データ非依存信号の一部を形成することができ、駆動パルスに先行して駆動パルスの固定開始点を規定することによって、電気泳動ディスプレイユニットの光学応答を更に向上させることができる。この開始点は固定された黒レベル又は固定された白レベルとすることができる。
【0032】
図3には、電気泳動ディスプレイユニット1を駆動するための、画素11に印加される電圧を時間tの関数として表す波形が示されている。この波形は、列ドライバ30を介して供給されるデータ信号を使用して生成される。この波形は、振動パルスShと、その後に続くリセットパルスRの組合せと、駆動パルスDrの組合せと、を有する。例えば、4つのグレーレベルを有する電気泳動ディスプレイユニットに対しては、16個の異なる波形が、例えばルックアップテーブルメモリなどの、コントローラ20の一部を形成するおよび/又はコントローラ20に結合されるメモリに記憶される。入力部21を介して受け取られるデータに応答して、コントローラ20は1つ以上の画素11に対して波形を選択し、対応するドライバ30、40を介して、対応するトランジスタ12および対応する1つ以上の画素11に、対応する選択信号およびデータ信号を供給する。
【0033】
フレーム期間は、各行を次々に駆動して行ごとに全ての列を一回駆動することによって電気泳動ディスプレイユニット1の全ての画素11を一回駆動するために使用される時間間隔に対応する。データ非依存フレーム期間(フレーム期間のデータ非依存部分)の間、データ非依存信号が画素11に供給され、データ依存フレーム期間(フレーム期間のデータ依存部分)の間、データ依存信号が画素11に供給される。したがって、図3では、各パルスは、2つの連続する遷移の間の特別な電圧レベルとして示されており、別個のフレーム期間を表す。
【0034】
最初のフレームの組の間、振動パルスShが画素11に供給され、各振動パルスは1フレーム期間の持続時間を有する。1番目の振動パルスは例えば正の振幅を有し、2番目の振動パルスは負の振幅を有し、3番目の振動パルスは正の振幅を有する、などである。交番する振幅を有するこれらの振動パルスは、フレーム期間が比較的短い限りは、画素11によって表示されるグレー値を変更しない。
【0035】
1つ以上のフレーム期間を有する2番目のフレームの組の間、リセットパルスRの組合せは、更に以下に記載されるように供給される。1つ以上のフレーム期間を有する3番目のフレームの組の間、駆動パルスDrの組合せが供給され、駆動パルスDrの組合せは、ゼロフレーム期間の持続時間を有し実際にゼロの振幅を有するパルスであるか、又は1フレーム期間、2フレーム期間から、例えば15フレーム期間の持続時間を有する。これによって、ゼロフレーム期間の持続時間を有する駆動パルスDrは、例えば、(画素11が既に完全な黒を表示していた場合)完全な黒を表示する画素に対応する(特定のグレー値を表示していた場合は、ゼロフレーム期間の持続時間を有するパルスで駆動したとき、言い換えると、振幅がゼロのパルスで駆動したとき、このグレー値は変化しない)。15フレーム期間の持続時間を有する駆動パルスDrの組合せは、連続する15個のパルスを有し、例えば、完全な白を表示する画素11に対応する。1フレーム期間から14フレーム期間の持続時間を有する駆動パルスDrの組合せは、1個のパルスから連続する14個のパルスを有し、例えば、完全な黒と完全な白との間の限られた数のグレー値のうちの1つのグレー値を表示する画素11に対応する。
【0036】
リセットパルスRは駆動パルスDrに先行して駆動パルスDrの固定開始点(固定された黒又は固定された白)を規定することによって、電気泳動ディスプレイユニット1の光学応答をさらに向上させる。あるいは、リセットパルスRは、駆動パルスDrに先行して駆動パルスDrのフレキシブルな開始点(黒又は白であり、このフレキシブルな開始点は、後続する駆動パルスによって規定されるべきグレー値に依存して選択され、このグレー値に最も近い)を規定することによって、電気泳動ディスプレイユニットの光学応答を更に向上させる。
【0037】
従来の電気泳動ディスプレイユニット1は全てのフレームが同じ固定の持続時間を有するので、従来の電気泳動ディスプレイユニット1の駆動にはあまり柔軟性がない。振動パルスShは固定の持続時間であり、最初のフレームの組の間における粒子の乱れの原因で起こり得る光学的な乱れが低減されるようにこのパルスを短くすることができない。グレー値の数は限られており、増加させることができず、連続する2つのグレー値の間の差はかなり大きい。
【0038】
本発明によれば、タイミングパラメータを有するライン駆動信号を導入することによって、コントローラ20は、1つ以上のタイミングパラメータの変更により、電気泳動ディスプレイユニット1のフレームレートを変更することができる。タイミングパラメータは、例えば、行駆動信号などのライン駆動信号の開始を遅延させることによって、形成される。行駆動信号の供給を遅らせることによって、固定されていないフレーム期間の持続時間であって、対応する行の行駆動信号を遅延させるために使用される行遅延時間の遅延量に依存するフレーム期間の持続時間が得られる。結果として得られるフレーム期間の増加量は、全ての行遅延時間の合計である。通常は、専らではないが、フレーム内の複数の行の各々は同じ行遅延時間を有し、フレーム期間の増加量は、この行遅延時間と行の数との積となる。行遅延時間はフレームごとに変えることができ、可変のフレーム期間と可変のフレームレートになる。斯かる可変フレームレートにより、以下に示すように、さらに柔軟な駆動が可能となる。
【0039】
従来のフレームレートは例えば50Hzであり、これが130Hzまで増加する。このフレームレートにおいて、最小のフレーム期間は7.7msecである。0msecと45.9msecとの間のフレーム期間増加量を導入することによって、最大フレーム期間は53.6msecである。振動パルスShを供給すると、最小フレーム期間(言い換えると、全く遅延がない)が導入される。130Hzのフレームレートにおける光学的な乱れは、50Hzのフレームレートにおける光学的な乱れよりも目に見えない。画素11を介して表示されるべきグレー値は、1つ以上のフレーム期間の間に1つ以上の駆動パルスDrを画素11に供給することによって、実現される。複数のフレーム期間のうちの1つ以上のフレーム期間の間、駆動パルスDrを供給すると、0msecと45.9msecとの間のフレーム期間増加量が導入される。結果として、1つ以上の駆動パルスDrをもっと正確に規定することができ、表示されるべきグレー値がもっと正確に規定される。これによって、例えば、1つのフレームは第1のフレーム期間を有し、他のフレームは第1のフレーム期間とは異なる第2のフレーム期間を有する。例えば、1つの画素11は、1つのフレーム期間の間に15Vの振幅のパルスが当該1つの画素11に供給されることによって、当該1つのフレーム期間の間に駆動される。当該1つの画素11は、他のフレーム期間の間に0Vの振幅のパルスが当該1つの画素11に供給されることによって、当該他のフレーム期間の間に駆動され、これによって、以前のグレー値と変わらない表示になる。他の画素11は、1つのフレーム期間の間に0Vの振幅のパルスが当該他の画素11に供給されることによって、当該1つのフレーム期間の間に駆動され、これによって、以前のグレー値と変わらない表示になる。当該他の画素11は、他のフレーム期間の間に15Vの振幅のパルスが当該他の画素11に供給されることによって、当該他のフレーム期間の間に駆動される。したがって、より精度の高いもっと多くのグレーレベルを画素11によって表示できる。
【0040】
図4は、固定の行駆動信号を有する旧式のフレームFo(上のグラフ)と、フレキシブルな行駆動信号を有する新しいフレームFn(中央のグラフと下のグレラフ)と、を示す。上のグラフでは、理解しやすいように、旧式のフレームFoごとに、2つの旧式の(遅延のない)行駆動信号r1、r2のみが示されている。中央のグラフでは、理解しやすいように、新しいフレームFnごとに、2つの新しい(遅延した)行駆動信号r3、r4のみが示されている。行駆動信号r3は行遅延量d1を有し、行駆動信号r4は行遅延量d2を有する。言い換えると、遅延量d1は行駆動信号r3の開始の遅延量に対応する。遅延量d2は行駆動信号r4の開始の遅延量に対応する。下のグラフでは、理解しやすいように、新しいフレームFnごとに、2つの新しい行駆動信号r5、r6のみが示されている。行駆動信号r5、r6は行駆動信号r3、r4よりも長い持続時間を有し、この実施例によれば、専らではないが、行駆動信号r5;r6のうちの1つの行駆動信号の持続時間は行駆動信号r3;r4のうちの1つの行駆動信号の持続時間とその行遅延量d1;d2との合計に等しいくなっている。これによって、旧式のフレームFoよりも長い持続時間の新しいフレームFnが得られ、この持続期間は、全ての行を駆動するために使用される行遅延時間の合計、および/又は全ての行を駆動する全ての行駆動信号の持続時間に依存する。行ごとの行遅延時間および/又は行駆動信号の持続時間を変更することによって、フレームレートはフレキシブルになる。もちろん、行駆動信号のフレキシブルな持続時間によるフレキシブルなフレームレートの生成は、クロック周波数を変えることによって簡単な方法で実現できる。あるいは、フレキシブルな持続時間を実現するために、行駆動信号の終端を遅延させることができる。
【0041】
第1の行遅延パラメータは振動パルスShのための第1の行遅延時間を規定し、第2の行遅延パラメータはリセットパルスRのための第2の行遅延時間を規定し、第3の行遅延パラメータは駆動パルスDrのための第3の行遅延時間を規定する。通常、第1および第2の遅延時間は固定の行遅延時間である。振動パルスShはフレームができるだけ短いことを要求し、リセットパルスRはフレームが例えばできるだけ長いことを要求するので、第1の行遅延時間は第2の行遅延時間よりも短い。駆動パルスDrは表示可能なグレー値の数を増加させるためにフレームがフレキシブルであることを要求するので、第3の行遅延時間はフレキシブルな行遅延時間である。あるいは、第2の行遅延時間をフレキシブルな行遅延時間とすることができる。
【0042】
コントローラ20に結合される又は組み込まれるメモリ(図示せず)は、表示されるべき情報を記憶するためおよび/又は全ての可能な列駆動信号を記憶するため、使用される。各列駆動信号は、例えば、1つ以上のリセットパルスRおよび1つ以上の駆動パルスDrに先行する振動パルスShを有する。メモリは、行遅延時間および/又は持続時間などのタイミングパラメータに関する情報を記憶するためにも使用される。必要なタイミングパラメータは、画素11に供給されるべき複数の列駆動信号のうちの1つを選択するときに自動的に生成される。同じ行の中の、(別のグレー値を生成するために)別のフレーム期間をおそらく必要とする他の画素11は、このフレームの間、0Vの振幅のパルスで駆動され、これによって、他の画素11は前のグレー値と変わらない表示をする。
【0043】
例えば、行遅延時間は、例えば0.30μsecの所定の時間間隔と例えば8ビット(256ステップ)などの複数ビットにより規定されるステップ値nとの積に対応する。そのとき、行遅延時間は、行遅延パラメータによりステップ値n(0≦n≦255)の形で規定できる。メモリから列駆動信号と、対応する8ビットの行遅延パラメータとを読み出した後、コントローラ20は、行遅延時間を発生するために、ステップ値nに所定の時間間隔を乗算する。行駆動信号の持続時間はこの積にも対応する。
【0044】
実験において、例えば130Hzのフレームレートでは、12.78μsecの行時間が得られた。(上記の処理を実行するための)処理時間は例えば54.3μsecであるので、600行では、最小のフレーム期間は54.3+12.78*600=7722μsec≒7.7msecになる。n*0.30μsecの行遅延時間を導入することによって、フレーム期間は7.7+0.18*n msecになる。そのとき、最大フレーム期間は7.7+0.18*255msec=53.6msecである。
【0045】
上記の実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者は添付された特許請求の範囲から逸脱することなく多くの他の実施例を設計できることに注意すべきである。動詞「有する」およびその活用形の使用は、請求項に記載された以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。構成要素が単数であることは、斯かる要素の複数の存在を排除するものではない。本発明は、幾つかの別個の素子を有するハードウェアによって、および適切にプログラムされたコンピュータによって、実現できる。幾つかの手段を列挙する装置クレームでは、それらの手段の幾つかを同一のハードウェアのアイテムによって実現できる。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せを有利に使用できないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】画素を(断面で)示す。
【図2】電気泳動ディスプレイユニットを概略的に示す。
【図3】電気泳動ディスプレイユニットを駆動するための波形を示す。
【図4】固定の行駆動信号を有する旧式のフレームと、フレキシブルな行駆動信号を有する新しいフレームと、を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−画素を伴なうラインを有する電気泳動表示パネル、
−前記ラインを駆動するラインドライバ、および
−タイミングパラメータを有するライン駆動信号を前記ラインドライバに供給するコントローラであって、前記電気泳動ディスプレイユニットのフレームレートを変えるために前記タイミングパラメータを変えるコントローラ、
を有する、電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項2】
前記タイミングパラメータは、前記ライン駆動信号の開始を遅延させることにより形成される、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項3】
前記タイミングパラメータは、ラインのライン駆動信号の持続期間により形成される、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項4】
前記タイミングパラメータは、既定の時間間隔と複数ビットによって規定されるステップ値との積に対応する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項5】
ラインは行に相当する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項6】
前記コントローラに結合される又は組み込まれるメモリであって、前記タイミングパラメータに関する情報を記憶するメモリを更に有する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項7】
前記情報は行遅延パラメータを有し、前記駆動信号は列駆動信号および行駆動信号を有し、前記列駆動信号および前記行駆動信号は、
−第1の行遅延時間を規定する第1の行遅延パラメータを有する振動パルス、
−第2の行遅延時間を規定する第2の行遅延パラメータを有する1つ以上のリセットパルス、
−第3の行遅延時間を規定する第3の行遅延パラメータを有する1つ以上の駆動パルス、
を提供し、
前記第1の行遅延時間は固定された行遅延時間であり、前記第1の行遅延時間は前記第2の行遅延時間よりも短く、前記第3の行遅延時間はフレキシブルな行遅延時間である、請求項6に記載の電気泳動ディスプレイユニット。
【請求項8】
請求項1に記載された電子泳動ディスプレイユニットと、表示されるべき情報を記憶する記憶媒体と、を有する表示装置。
【請求項9】
画素を伴なうラインを有する電気泳動表示パネルを有する電気泳動ディスプレイユニットを駆動する方法であって、前記方法は、
−前記電気泳動ディスプレイユニットのフレームレートを変えるためにライン駆動信号のタイミングパラメータを変えるステップ、および
−前記ラインを前記ライン駆動信号で駆動するステップ、
を有する、方法。
【請求項10】
電気泳動ディスプレイユニットを駆動するコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、
−ライン駆動信号に応答して、前記電気泳動ディスプレイユニットの画素を伴なうラインを駆動する機能、および
−前記電気泳動ディスプレイユニットのフレームレートを変えるために、変えられるタイミングパラメータを有するライン駆動信号を供給する機能、
を有する、コンピュータプログラム。
【請求項11】
電気泳動ディスプレイユニットの画素を伴なうラインを駆動するために、タイミングパラメータを有するライン駆動信号をラインドライバに供給するコントローラであって、前記電気泳動ディスプレイユニットのフレームレートを変えるために前記タイミングパラメータを変えるコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−519018(P2007−519018A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518474(P2006−518474)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051123
【国際公開番号】WO2005/006292
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】