説明

電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器

【課題】マイクロカプセルの耐圧性および耐ブリード性を高め、長期間安定に動作する電気泳動表示装置を構築し得る電気泳動表示シート、信頼性の高い電気泳動表示装置、および信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】電気泳動表示シート21は、基板12と、基板12の一方の面側に設けられ、少なくとも1種の電気泳動粒子5を含む電気泳動分散液10をカプセル本体401に内包する複数のマイクロカプセル40を含有するマイクロカプセル含有層400とを備える。マイクロカプセル40は、ほぼ球状をなして存在しており、そのカプセル本体401は、例えば、メラミン系樹脂よりなる第1のカプセル層とエポキシ系樹脂よりなる第2のカプセル層との2層構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体中に微粒子を分散させた分散系に電界を作用させると、微粒子は、クーロン力により液体中で移動(泳動)することが知られている。この現象を電気泳動といい、近年、この電気泳動を利用して、所望の情報(画像)を表示させるようにした電気泳動表示装置が新たな表示装置として注目を集めている。
この電気泳動表示装置は、電圧の印加を停止した状態での表示メモリー性や広視野角性を有することや、低消費電力で高コントラストの表示が可能であること等の特徴を備えている。
【0003】
また、電気泳動表示装置は、自然光を光源として用いる反射型のディスプレイである。そして、高い視認性を実現するために、透過部の高透明性、反射部の高反射率、吸収部の高吸収率を実現することが求められている。
従来の電気泳動表示装置として、特許文献1には、基板上に、複数のマイクロカプセルとバインダとを含むマイクロカプセル含有層を形成した後、この上に、基板を配置し、上下から加熱加圧することによって、1対の基板とマイクロカプセル含有層とを接合した電気泳動表示装置が開示されている。
【0004】
ここで、マイクロカプセルは、電気泳動粒子が分散された電気泳動分散液を、壁材(殻体)に封入して構成されたものである。この殻体の材料としては、従来、比較的柔軟な材料、例えばアラビアガムとゼラチンの複合材料が多く用いられている。殻体が柔軟な材料によって構成されている場合、マイクロカプセル含有層が加熱加圧されることにより、マイクロカプセルは圧縮されて変形する。このため、形成されたマイクロカプセル含有層は、各マイクロカプセルが上下に潰れた構造(石垣構造)となっている。
【0005】
ところが、柔軟な材料は、一般に、密度が疎であるため、殻体が柔軟な材料のみによって構成されていると、マイクロカプセルの耐圧性(圧力がかかったとき、マイクロカプセルが潰れずに耐えること)および耐ブリード性(マイクロカプセル内に封入された分散液が散逸され難いこと)が不十分となる。その結果、マイクロカプセル含有層と基板とを接合する際の圧力や、表示装置として使用・保存している間に加わる衝撃や押圧によって、マイクロカプセルの破損や分散液の漏出が生じ易く、電気泳動表示装置を長期間安定に動作させるのが困難であるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−58151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、マイクロカプセルの耐圧性および耐ブリード性を高め、長期間安定に動作する電気泳動表示装置を構築し得る電気泳動表示シート、信頼性の高い電気泳動表示装置、および信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明の態様により達成される。
本発明の電気泳動表示シートは、基板と、
前記基板の一方の面側に設けられ、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を殻体に内包する複数のマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル含有層とを備え、
前記マイクロカプセルは、ほぼ球状をなして存在していることを特徴とする。
これにより、マイクロカプセルの耐圧性および耐ブリード性を高め、長期間安定に動作する電気泳動表示装置を構築し得る電気泳動表示シートとすることができる。
【0009】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記マイクロカプセルは、前記マイクロカプセル含有層を一方の主面側から見た平面視において、Heywood円形度値が1.40以下のものの数をN1.40、Heywood円形度値が1.08以下のものの数をN1.08としたとき、下記式によって算出される球粒子率が60%以上であることが好ましい。
球粒子率(%)=(N1.08/N1.40)×100
かかる関係を満足する場合、マイクロカプセル含有層は、球形度の高いマイクロカプセル、すなわち耐圧性および耐ブリード性に優れたマイクロカプセルを多く含んでおり、長期間安定に動作する電気泳動表示装置を構築し得る電気泳動表示シートとすることができる。
【0010】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記各マイクロカプセルは、前記マイクロカプセル含有層の主面と直交する方向に切った断面において、Heywood円形度値が1.00〜1.10であることが好ましい。
断面におけるHeywood円形度値Fcの平均値が前記範囲のマイクロカプセルは、球形度が高く、耐圧性および耐ブリード性に優れたものと評価することができる。
【0011】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記マイクロカプセルの前記殻体は、それぞれ球殻状をなす、第1の層と、該第1の層よりも外側に配置されている第2の層とを有することが好ましい。
これにより、前記殻体に、第1の層と第2の層とがそれぞれ有する特性を相乗的に付与することができる。
【0012】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第2の層は、前記第1の層よりも弾性に優れることが好ましい。
これにより、第2の層は、第1の層よりも弾性に富み、第1の層は、第2の層よりも硬さに富むものとなる。そのため、第1の層には、マイクロカプセルの形状を保持(維持)する保持層としての機能を発揮させることができ、第2の層には、マイクロカプセルに内包されている電気泳動分散液の形状が変化するのを吸収する吸収層としての機能を発揮させることができる。
【0013】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第1の層は、メラミン系樹脂を主材料として構成されることが好ましい。
メラミン系樹脂は3次元網目構造を形成することから、かかる樹脂を用いて形成された第1の層は、優れた硬度を有するものとなる。その結果、第1の層が保持層としての機能を好適に発揮することに起因して、殻体の強度および耐ブリード性が向上するため、前述したような球形状をマイクロカプセルに確実に形成させることができる。
【0014】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第2の層は、エポキシ系樹脂を主材料として構成されることが好ましい。
これにより、第2の層を適度な硬度と弾性とを併せ持つものとすることができ、吸収層としての機能を確実に発揮させることができる。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第1の層と前記第2の層との界面で、これら同士が化学的に結合していることが好ましい。
これにより、第1の層と第2の層との間で剥離が生じるのを確実に防止することができる。
【0015】
本発明の電気泳動表示シートでは、各前記マイクロカプセルは、同じ大きさに形成されていることが好ましい。
これにより、マイクロカプセルが均一に配置されるので、かかる電気泳動表示シートを用いて電気泳動表示装置を構築した際には、電気泳動表示装置は、表示ムラの発生が防止または低減され、より優れた表示性能を発揮するものとなる。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記マイクロカプセルは、前記白色粒子と、該白色粒子と色調の異なる着色粒子とを内包することが好ましい。
これにより、2色以上の表示を実現することができる。
【0016】
本発明の電気泳動表示シートでは、さらに、前記マイクロカプセル含有層は、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を殻体に内包し、前記マイクロカプセルよりも柔軟性に優れ、かつ、粒径が小さい複数の副カプセルを含有し、
前記マイクロカプセルが、前記マイクロカプセル含有層の厚さ方向全体に配置され、
前記副カプセルは、前記マイクロカプセル含有層内で前記マイクロカプセル同士の間に形成された隙間を埋めるように配置されていることが好ましい。
これにより、電気泳動表示装置の表示を均一にすることができるので、コントラストを高めることができる。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記副カプセルは、前記白色粒子と、該白色粒子と色調の異なる着色粒子とを内包することが好ましい。
これにより、2色以上の表示を実現することができる。
【0017】
本発明の電気泳動表示装置は、基板と、
前記基板の一方の面側に設けられ、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を殻体に内包する複数のマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル含有層と、
前記マイクロカプセル含有層の前記基板と反対側に設けられた対向基板とを備え、
前記マイクロカプセルは、ほぼ球状をなして存在していることを特徴とする。
これにより、マイクロカプセルの耐圧性および耐ブリード性を高め、長期間安定に動作する電気泳動表示装置とすることができる。
【0018】
本発明の電気泳動表示装置では、前記マイクロカプセル含有層と前記対向基板とを接合する接着剤層を備えることが好ましい。
これにより、電気泳動表示シートと回路基板とが固定されるので、安定にかつ品質を一定にすることができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
1.電気泳動表示装置
まず、本発明の電気泳動表示シートを適用した電気泳動表示装置(本発明の電気泳動表示装置)について説明する。
【0020】
図1は、本発明の電気泳動表示装置の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図1に示す電気泳動表示装置20は、電気泳動表示シート(フロントプレーン)21と、回路基板(バックプレーン)22と、電気泳動表示シート21と回路基板22とを接合する接着剤層8と、電気泳動表示シート21と回路基板22との間の間隙を気密的に封止する封止部7とを有している。
【0021】
電気泳動表示シート21は、平板状の基部2と基部2の下面に設けられた第2の電極4とを備える基板12と、この基板12の下面(一方の面)側に設けられ、マイクロカプセル40とバインダ41とで構成されたマイクロカプセル含有層400とを有している。
一方、回路基板22は、平板状の基部1と基部1の上面に設けられた複数の第1の電極3とを備える対向基板11と、この対向基板11(基部1)に設けられた、例えばTFT等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)とを有している。
【0022】
以下、各部の構成について順次説明する。
基部1および基部2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有する。
各基部1、2は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する基部1、2を用いることにより、可撓性を有する電気泳動表示装置20、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な電気泳動表示装置20を得ることができる。
【0023】
また、各基部(基材層)1、2を可撓性を有するものとする場合、その構成材料としては、それぞれ、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
このような基部1、2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可撓性を有するものとする場合、20〜500μm程度であるのが好ましく、25〜250μm程度であるのがより好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の柔軟性と強度との調和を図りつつ、電気泳動表示装置20の小型化(特に、薄型化)を図ることができる。
【0025】
これらの基部1、2のマイクロカプセル40側の面、すなわち、基部1の上面および基部2の下面に、それぞれ、層状(膜状)をなす第1の電極3および第2の電極4が設けられている。
第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じ、この電界が電気泳動粒子(表示粒子)5に作用する。
【0026】
本実施形態では、第2の電極4が共通電極とされ、第1の電極3がマトリックス状(行列状)に分割された個別電極(スイッチング素子に接続された画素電極)とされており、第2の電極4と1つの第1の電極3とが重なる部分が1画素を構成する。
なお、第2の電極4も、第1の電極3と同様に複数に分割するようにしてもよい。
また、第1の電極3がストライプ状に分割され、第2の電極も同様にストライプ状に分割され、これらが交差するように配置された形態であってもよい。
【0027】
各電極3、4の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような電極3、4の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.05〜10μm程度であるのが好ましく、0.05〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0028】
なお、各基部1、2および各電極3、4のうち、表示面側に配置される基部および電極(本実施形態では、基部2および第2の電極4)は、それぞれ、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、後述する電気泳動分散液10中における電気泳動粒子5の状態、すなわち電気泳動表示装置20に表示された情報(画像)を目視により容易に認識することができる。
【0029】
電気泳動表示シート21では、第2の電極4の下面に接触して、マイクロカプセル含有層400が設けられている。
このマイクロカプセル含有層400は、電気泳動分散液10をカプセル本体(殻体)401内に封入した複数のマイクロカプセル40が、バインダ41で固定(保持)されている。
【0030】
以下、マイクロカプセル含有層400について説明するが、マイクロカプセル40については後に詳述する。
カプセル本体401内に封入された電気泳動分散液10は、少なくとも1種の電気泳動粒子5(本実施形態では、着色粒子5bと白色粒子5aとの2種)を液相分散媒6に分散(懸濁)してなるものである。
【0031】
電気泳動粒子5の液相分散媒6への分散は、例えば、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、撹拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
液相分散媒6としては、カプセル本体401に対する溶解性が低く、かつ比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。
【0032】
かかる液相分散媒6としては、例えば、各種水(例えば、蒸留水、純水等)、メタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族復素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩またはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0033】
中でも、液相分散媒6としては、脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)を主成分とするものが好ましい。流動パラフィンを主成分とする液相分散媒6は、電気泳動粒子5の凝集抑制効果が高く、かつカプセル本体401の構成材料との親和性が低い(溶解性が低い)ことから好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の表示性能が経時的に劣化するのをより確実に防止または抑制することができる。また、流動パラフィンは、不飽和結合を有しないため耐候性に優れ、および安全性も高いという点からも好ましい。
【0034】
また、液相分散媒6(電気泳動分散液10)中には、必要に応じて、例えば、電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
【0035】
さらに、液相分散媒6を着色する場合には、液相分散媒6に、必要に応じて、アントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
電気泳動粒子5は、荷電を有し、電界が作用することにより、液相分散媒6中を電気泳動し得る粒子である。
かかる電気泳動粒子5には、荷電を有するものであれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0036】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
【0038】
顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができ、かかる粒子は、白色粒子5aとして好適に用いられる。
また、カーボンブラック粒子またはその表面を被覆した粒子は、着色粒子(黒色粒子)5bとして好適に用いられる。
また、電気泳動粒子5の形状は、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。
【0039】
電気泳動粒子5は、液相分散媒6中での分散性を考慮した場合、より小さいものが好適に用いられ、具体的には、その平均粒径が、10〜500nm程度であるのが好ましく、20〜300nm程度であるのがより好ましい。電気泳動粒子5の平均粒径を前記範囲とすることにより、電気泳動粒子5同士の凝集や、液相分散媒6中における沈降を確実に防止して、液相分散媒6中に分散させることができ、その結果、電気泳動表示装置20の表示品質の劣化を好適に防止することができる。
【0040】
なお、本実施形態のように、2種の異なる粒子を用いる場合、2種の粒子の平均粒径を異ならせること、特に、白色粒子5aの平均粒径を着色粒子5bの平均粒径より大きく設定するのが好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の表示コントラストをより向上させることや、保持特性を向上させることができる。
具体的には、着色粒子5bの平均粒径を20〜100nm程度、白色粒子5aの平均粒径を150〜300nm程度とするのが好ましい。
【0041】
また、電気泳動粒子5の比重は、液相分散媒6の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、電気泳動粒子5は、電極3、4間への電圧の印加を停止した後においても、液相分散媒6中において一定の位置に長時間滞留することができる。すなわち、電気泳動表示装置20に表示された情報が長時間保持されることとなる。
バインダ41は、例えば、対向基板11と基板12とを接合する目的、対向基板11および基板12との間にマイクロカプセル40を固定する目的、第1の電極3および第2の電極4間の絶縁性を確保する目的等により供給される。これにより、電気泳動表示装置20の耐久性および信頼性をより向上させることができる。
【0042】
このバインダ41には、各電極3、4、カプセル本体401(マイクロカプセル40)との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料(絶縁性または微小電流のみが流れる樹脂材料)が好適に使用される。
このようなバインダ41としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態では、電気泳動表示シート21と回路基板22とが、接着剤層8を介して接合されている。これにより、電気泳動表示シート21と回路基板22とをより確実に固定することができる。
【0043】
この接着剤層8は、電気泳動表示シート21と回路基板22とを接合(固定)する機能の他、I:絶縁性を有するもの、II:電気泳動表示シート21側から回路基板22へのイオンの拡散を防止する機能、III:電気泳動表示シート21と回路基板22とを接合する際の応力を緩和する機能を有しているのが好ましい。
Iの機能を有することにより、第1の電極3と第2の電極4との間での短絡を確実に防止して、電気泳動粒子5に確実に電界を作用させることができる。
IIの機能を有することにより、回路基板22に設けられた回路(特にスイッチング素子)の特性の低下を防止または抑制することができる。
【0044】
また、IIIの機能を有することにより、電気泳動表示装置20の製造時(作成時)にマイクロカプセル40や回路基板22に設けられたスイッチング素子等の破壊を防止することができる。特に本発明では、マイクロカプセル40と接着剤層8とが、点接触で接触することから、接着剤層8にIIIの機能を付与することにより、マイクロカプセル40に過剰な圧力が付加されるのを防止して、マイクロカプセル40が非球状となるのを的確に防止または抑制することができる。
このような接着剤層8は、ポリウレタンを主材料として構成されているのが好ましい。ポリウレタンは、接着剤層8に、前述したような各種機能を確実に付与することができることから好ましい。
【0045】
ポリウレタンとしては、例えば、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)またはこれらの誘導体のうちの少なくとも1種をイソシアネート成分とし、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)またはこれらの誘導体のうちの少なくとも1種をポリオール成分とするものが挙げられる。
【0046】
なお、接着剤層8の構成材料には、ポリウレタンに代えて、例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ABS樹脂、ビニル−アクリル酸エステル共重合体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
この接着剤層8の平均厚さをA[μm]とし、マイクロカプセル含有層400の平均厚さをB[μm]としたとき、A/Bが0.1〜3なる関係を満足するのが好ましく、0.5〜2なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、特に、前記IおよびIIIの機能の向上を図ることができる。なお、接着剤層8の平均厚さの具体的な値は、1〜30μm程度であるのが好ましく、5〜20μm程度であるのがより好ましい。
【0047】
さらに、基部1と基部2との間であって、それらの縁部に沿って、封止部7が設けられている。この封止部7により、各電極3、4、マイクロカプセル含有層400および接着剤層8が気密的に封止されている。これにより、電気泳動表示装置20内への水分の浸入を防止して、電気泳動表示装置20の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
【0048】
封止部7の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、封止部7は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0049】
さて、本発明では、マイクロカプセル含有層400に含まれるマイクロカプセル40の構成に特徴を有する。以下、このマイクロカプセル40の構成について詳細に説明する。
マイクロカプセル40は、図1に示すように、対向基板11と基板12との間に、縦横に並列するように単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)、かつ、マイクロカプセル含有層400の厚さ方向全体に配設されている。
【0050】
また、本実施形態では、1つのマイクロカプセル40が、隣り合う2つの第1の電極3にまたがるように配置されている。
マイクロカプセル40がこのように配置されることにより、1つの第1の電極3で、それに重なる2つのマイクロカプセル40内の電気泳動粒子5を作動することができる。その結果、1つのマイクロカプセル40内で異なる色が表示されることとなる。
そして、本発明では、以上のように配置されたマイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間で、第2の電極4と接着剤層8とで挟持されても、上下方向に圧縮(圧迫)されることなく、ほぼ球状(球形状)をなしている。
【0051】
ここで、後述するように、電気泳動表示装置20は、通常、回路基板22と電気泳動表示シート21との間に接着剤層8を介在させた状態で、これら同士を接合することにより得られるが、この接合は、回路基板22と電気泳動表示シート21とを接近させた状態で行われる。このように回路基板22と電気泳動表示シート21とを接近させるために、これら同士の間に圧力が付与されるが、この大きさは、通常、0.2〜0.6MPa程度に設定される。このとき、図1に示すように、マイクロカプセル40は、接着剤層8および第2の電極4の双方に対して点接触で接触するため、この接触する部分の単位面積あたりにかかる荷重(圧力)が大きくなり、具体的には、0.8〜2.4MPa程度の圧力が、付与されることとなる。
【0052】
また、本発明の電気泳動表示装置20を可撓性が求められる電子ペーパーに組み込んだ際には、電子ペーパーを撓ませる度に、電気泳動表示装置20にも同様に撓みが生じることになるが、このたびに、回路基板22と電気泳動表示シート21との間に圧力が付与される。
これらの圧力が回路基板22と電気泳動表示シート21との間に付与されたとしても、本発明では、マイクロカプセル40を、第2の電極4と接着剤層8との間で、球状を維持するような強度を有するものとする。かかる構成とすることにより、マイクロカプセル40の耐圧性および耐ブリード性の双方を高めることができることから、電気泳動表示装置20は、長期間安定的に動作し得るものとなる。
【0053】
なお、本明細書中において、マイクロカプセル40の耐圧性とは、「マイクロカプセル40に圧力がかかったとき、マイクロカプセル40が潰れずに耐えること」を言い、マイクロカプセル40の耐ブリード性とは、「マイクロカプセル40内に封入された液相分散媒6がマイクロカプセル40の外側に散逸されないこと」を言うものとする。
このマイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間で、より球状に近い形状を維持した状態で存在しているのが好ましいが、このようなマイクロカプセル40の球状の度合いは、球形度を指標としてその程度を表すことができ、具体的には、Heywood円形度値Fcが指標として好適に用いられる。
【0054】
なお、Heywood円形度値Fcは、下記式(1)によって算出される値である。
Fc=P/{2×sqrt(πA)} ・・・ (1)
[式中、FcはHeywood円形度値を表し、Pは、平面視でのマイクロカプセルの外周長を表し、Aは平面視でのマイクロカプセルの面積(横断面積)を表す。]
すなわち、Heywood円形度値Fcとは、上記式(1)から明らかなように、円形度を評価するマイクロカプセル40について、その平面視での面積Aと同じ面積の円を仮定したとき、この円の外周長{2×sqrt(πA)}と、平面視でのマイクロカプセル40の外周長Pとの比率を表すものである。
【0055】
マイクロカプセル40は、この式によって算出される値Fcが、1に近い程、平面形状が円に近く、立体形状が球に近い(球形度が高い)と評価することができる。
マイクロカプセル含有層400は、球形度の大きいマイクロカプセルを多く含むことが好ましく、具体的には、その一方の主面側から見た平面視において、Heywood円形度値Fcが1.40以下のマイクロカプセル40の数をN1.40、Heywood円形度値Fcが1.08以下のマイクロカプセル40の数をN1.08としたとき、下記式(2)によって算出される球粒子率が60%以上であるのが好ましい。
【0056】
球粒子率=(N1.08/N1.40)×100 ・・・ (2)
この式(2)で求められる球粒子率は、マイクロカプセル40のうち、(マイクロカプセル含有層400に存在するほぼ全てのマイクロカプセル40のHeywood円形度値Fcが1.40以下となっていると仮定すれば、)球形度の高いマイクロカプセル(Heywood円形度値Fcが1.08以下のマイクロカプセル)の割合に相当する。
上記式(2)を用いて求められる、球粒子率が60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である場合、マイクロカプセル含有層400は、球形度の高いマイクロカプセル40、すなわち耐圧性および耐ブリード性に優れたマイクロカプセル40を多く含んでおり、電気泳動表示装置20は長期間安定に動作することができる。
【0057】
以上のようなHeywood円形度値Fc、N1.40、N1.08および球粒子率は、本発明では、マイクロカプセル含有層400を一方の主面側から撮影した顕微鏡写真に所定の画像処理を行った平面画像を基にして、次のようにして求めることができる。
まず、顕微鏡を用い、マイクロカプセル含有層400を、一方の主面側から、例えば、×300の倍率で写真撮影し、マイクロカプセル含有層400の顕微鏡写真を得る。この顕微鏡写真の一例を、図2に示す。
【0058】
次に、この顕微鏡写真の概ね円形をなす画像(円形画像)の輪郭を検出し、その内部を塗りつぶす。
次に、顕微鏡写真の外端に接している円形画像、複数の円形画像が繋がって大きなサイズとなった円形画像、明らかにマイクロカプセルよりもサイズの小さい円形画像を、順次削除することにより、平面画像を得る。このようにして得られた平面画像の一例を、図3に示す。
【0059】
次に、得られた平面画像において、削除されずに残った各円形画像をマイクロカプセル40として、外周長Pおよび面積Aを測定し、Heywood円形度値Fcを算出する。
さらに、Heywood円形度値Fcが1.40以下の円形画像を抽出し、その数N1.40をカウントする。また、Heywood円形度値Fcが1.08以下の円形画像を抽出し、その数N1.08をカウントする。
【0060】
そして、カウントされたN1.08、N1.40の値から、球粒子率=(N1.08/N1.40)×100を算出する。
なお、この平面画像のうち円形画像以外の領域の割合は、20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。円形画像以外の領域は、マイクロカプセル40同士の隙間に相当し、この領域の割合が大きすぎると、表示コントラストが低下するおそれがある。
【0061】
さらに、各マイクロカプセル40は、上記のようにマイクロカプセル含有層400主面側から見た平面視において、その円形度を規定するのに加えて、マイクロカプセル含有層400の主面と直交する方向に切った断面において、その円形度を規定するのが好ましい。このように断面においても、その円形度を規定する構成とすることにより、マイクロカプセル40の球形度をより確実に評価することができる。
【0062】
断面においてマイクロカプセル40の円形度を規定する場合も、Heywood円形度値Fcを用いることができ、例えば、断面において前記と同様にして求められたHeywood円形度値Fcの平均値を求め、この平均値によりマイクロカプセル40の円形度を規定することができる。
具体的には、Heywood円形度値Fcの平均値が1.00〜1.10程度であるが好ましく、1.00〜1.06程度であるのがより好ましい。断面におけるHeywood円形度値Fcの平均値が前記範囲のマイクロカプセル40は、球形度が高く、耐圧性および耐ブリード性に優れたものと評価することができる。
【0063】
以上のようにマイクロカプセル40がほぼ球状をなして存在していると、マイクロカプセル40は、接着剤層8および第2の電極4の双方に対して、円状をなして接触することとなるが、この接触部の直径[μm]は、マイクロカプセル40の直径(粒径)[μm]に対して、1/2以下であるのが好ましく、1/3〜1/5程度であるのが好ましい。かかる観点からもマイクロカプセル40の球形度を評価することができ、この関係を満足するマイクロカプセル40は、球形度が高く、耐圧性および耐ブリード性に優れたものと評価することができる。
【0064】
このようなマイクロカプセル40において、電気泳動粒子5を含む電気泳動分散液10を内包するカプセル本体(殻体)401は、マイクロカプセル40が対向基板11と基板12との間で、前述したような圧力が付与された場合であっても、球状を維持し得る強度を有するものであれば如何なる構成のものであってもよいが、本実施形態では、カプセル本体(殻体)401は、図1に示すように、第1のカプセル層(第1の層)402と、この第1のカプセル層402よりも外側に配置されている第2のカプセル層(第2の層)403とで構成されている。それぞれ球殻状をなす第1のカプセル層402と、その外側を覆うように設けられた第2のカプセル層403との2層でカプセル本体401を構成することにより、カプセル本体401に、これら2層がそれぞれ有する特性を相乗的に付与することができる。
【0065】
具体的には、カプセル本体401を、このような第1のカプセル層402および第2のカプセル層403の2層で構成する場合、第2のカプセル層403は、第1のカプセル層402よりも弾性に優れているのが好ましい。
かかる構成とすることにより、第2のカプセル層403は、第1のカプセル層402よりも弾性に富み、第1のカプセル層402は、第2のカプセル層403よりも硬さに富むものとなる。
【0066】
したがって、第1のカプセル層402には、カプセル本体401(マイクロカプセル40)の形状を保持(維持)する保持層としての機能を発揮させることができる。また、この硬さに富む保持層は、層の密度が密であるので、電気泳動分散液10が浸透し難く、マイクロカプセルの耐ブリード性を高める機能をも発揮させることができる。
また、第2のカプセル層403には、対向基板11と基板12との間に圧力が付与された際に、カプセル本体401(マイクロカプセル40)の形状が変化するのを吸収する吸収層としての機能を発揮させることができる。
【0067】
これら保持層および吸収層としての機能、すなわち、第2のカプセル層403が弾性に富み、第1のカプセル層402硬さに富むことは、引張強さ、引張弾性率、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ、圧縮弾性率等の各種指標を用いて評価することができるが、特に、各層の弾性の差を評価し得る、引張り弾性係数および引張り伸び率のうちの少なくとも一方を用いて評価するのが好ましい。かかる指標は、比較的簡単な装置を用いて測定することができ、保持層および吸収層としての機能を確実に評価することができる。
【0068】
なお、引張り弾性係数とは、応力に対する歪みの量を表すものであり、この値が大きいものほど、外力に対する変形の度合いが小さくなり、硬いものであると評価することができる。この引張り弾性係数は、ISO527−2に規定の条件で測定することができる。
また、引張り伸び率とは、破断時の伸び率を表すものであり、この値が大きいものほど、靭性に優れ、弾性に富むものであると評価することができる。この引張り伸び率は、ISO527−2に規定の条件で測定することができる。
【0069】
具体的には、第1のカプセル層402を保持層としての機能を発揮させる場合、引張り弾性係数は、5×10〜15×10kg/cm程度であるのが好ましく、8×10〜11×10kg/cm程度であるのがより好ましい。また、引張り伸び率は、0.1〜1%程度であるのが好ましく、0.5〜0.9%程度であるのがより好ましい。
さらに、第2のカプセル層403を吸収層としての機能を発揮させる場合、引張り弾性係数は、1×10〜4×10kg/cm程度であるのが好ましく、1×10〜2×10kg/cm程度であるのがより好ましい。また、引張り伸び率は、2〜10%程度であるのが好ましく、3〜6%程度であるのがより好ましい。
以上のことを考慮して、第1のカプセル層402および第2のカプセル層403の構成材料がそれぞれ選択される。
【0070】
第1のカプセル層(保持層)402の構成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素樹脂のようなアミノ樹脂、エポキシ系樹脂およびフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、第1のカプセル層402は、特に、メラミン系樹脂を主材料して構成されているのが好ましい。メラミン系樹脂は3次元網目構造を形成することから、かかる樹脂を用いて形成された第1のカプセル層402は、優れた硬度を有する(高弾性率の)ものとなる。その結果、第1のカプセル層402が保持層としての機能を好適に発揮することに起因して、カプセル本体401の強度および耐ブリード性が向上するため、前述したような球形状をマイクロカプセル40に確実に形成させることができる。
【0071】
なお、第1のカプセル層402を構成する樹脂には、架橋剤により架橋(立体架橋)構造を形成するようにしてもよい。これにより、カプセル本体401の強度および耐ブリード性をさらに向上させることができる。その結果、マイクロカプセル40が非球体となるのをより的確に防止または抑制することができる。
また、第2のカプセル層(吸収層)403の構成材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、アラビアゴムなどのゴムを含む材料、アラビアゴムとセラチンとの複合材料、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂のような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、第2のカプセル層403は、特に、エポキシ系樹脂を主材料して構成されているのが好ましい。これにより、第2のカプセル層403を前述したような弾性率を有する、適度な硬度と弾性とを併せ持つものとすることができる。
【0072】
また、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403とは、これらの界面において化学的に結合しているのが好ましい。これにより、回路基板22と電気泳動表示シート21との間に圧力を付与したとしても、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403との間で剥離が生じるのを確実に防止することができる。その結果、カプセル本体401の強度および耐ブリード性がより向上して、マイクロカプセル含有層400と回路基板22とを接合する際の圧力や、表示装置として使用・保存している間に加わる衝撃や押圧により、マイクロカプセル40が崩壊してしまうのをより確実に防止することができる。
【0073】
このように第1のカプセル層402と第2のカプセル層403とを化学的に結合させるには、第1のカプセル層402および第2のカプセル層403を、それぞれをメラミン系樹脂およびエポキシ系樹脂を主材料として構成する場合、例えば、後述する第1のカプセル層402の形成工程において、メルカプト基と、カルボキシル基および/またはスルホ基とを有する化合物を芯物質分散液に添加して、メルカプト基が導入された第1のカプセル層402を形成し、その後、エポキシ系樹脂材料で構成される第2のカプセル層403を形成するようにすればよい。
【0074】
カプセル本体401の厚さ(本実施形態では、第1のカプセル層402の厚さd1と第2のカプセル層403の厚さd2の合計)は、特に限定されないが、湿潤状態で、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜4μmであるのがより好ましく、0.1〜3μmであるのがさらに好ましい。カプセル本体401の厚さが小さいと、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403との構成材料の組み合わせによっては、十分なカプセル強度が得られない恐れがある。逆に、カプセル本体401の厚さが大きいと、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403との構成材料の組み合わせによっては、透明性が低下して、電気泳動表示装置のコントラストの低下を招く恐れがある。
【0075】
また、第1のカプセル層402の厚さをd1とし、第2のカプセル層403の厚さをd2としたとき、これらの比率d1/d2は、1〜1/5程度であるのが好ましく、1/2〜1/3程度であるのがより好ましい。かかる関係を満足することにより、カプセル本体401に、第1のカプセル層402および第2のカプセル層403の双方の特性を確実に付与することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、カプセル本体401は、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403からなる2層構成とされているが、このような2層構成に限らず、単層または3層以上の多層構成であっても構わない。
カプセル本体401の粒径としては、体積平均粒子径が30〜60μmであることが好ましく、40〜50μmであることがより好ましい。カプセル本体401の粒径がこのような範囲であることにより、寸法精度よくマイクロカプセル含有層400を形成することができる。
カプセル本体401の粒径が前記下限値よりも小さ過ぎると、マイクロカプセル含有層400の両方の面側がマイクロカプセル40で満たされ、表示のコントラストが低下するおそれがある。
【0077】
一方、カプセル本体401の粒径が前記上限値よりも大き過ぎると、マイクロカプセル40同士の隙間43も大きくなることにより、表示のコントラストが低下するおそれがある。
このようなマイクロカプセル40は、その大きさ(粒径)がほぼ均一(同一)に形成されているのが好ましい。具体的には、粒子径の変動係数(CV値)が5〜15%であることが好ましく、変動係数(CV値)が5〜10%であることがより好ましい。これにより、マイクロカプセル40が均一に配置されるので、電気泳動表示装置20では、表示ムラの発生が防止または低減され、より優れた表示性能を発揮することができる。
【0078】
2.電気泳動表示装置の動作方法
このような電気泳動表示装置20は、次のようにして作動する。
以下、電気泳動表示装置20の作動(動作)方法について説明する。
図4は、図1に示す電気泳動表示装置の動作方法を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0079】
電気泳動表示装置20の第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じる。この電界にしたがって、電気泳動粒子5(着色粒子5b、白色粒子5a)は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
例えば、白色粒子5aとして正荷電を有するものを用い、着色粒子(黒色粒子)5bとして負荷電のものを用いた場合、図4(A)に示すように、第1の電極3を正電位とすると、白色粒子5aは、第2の電極4側に移動して、第2の電極4に集まる。一方、着色粒子5bは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。このため、電気泳動表示装置20を上方(表示面側)から見ると、白色粒子5aの色が見えること、すなわち、白色が見えることになる。
【0080】
これとは逆に、図4(B)に示すように、第1の電極3を負電位とすると、白色粒子5aは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。一方、着色粒子5bは、第2の電極4側に移動して、第2の電極4に集まる。このため、電気泳動表示装置20を上方(表示面側)から見ると、着色粒子5bの色が見えること、すなわち、黒色が見えることになる。
このような構成において、電気泳動粒子5(白色粒子5a、着色粒子5b)の帯電量や、電極3または4の極性、電極3、4間の電位差等を適宜設定することにより、電気泳動表示装置20の表示面側には、白色粒子5aおよび着色粒子5bの色の組み合わせや、電極3、4に集合する粒子の数等に応じて、所望の情報(画像)が表示される。
【0081】
ここで、この電気泳動表示装置20では、マイクロカプセル含有層400に含有されるマイクロカプセル40が球状をなして存在していることにより、耐圧性および耐ブリード性に優れている。したがって、このように電気泳動表示装置20を作動させているとき、もしくは、電気泳動表示装置20を保存している間に、電気泳動表示装置に衝撃が加わったり、表示面が押圧されたりした場合でも、マイクロカプセル40の破壊や電気泳動分散液の散逸が防止され、長期間安定に動作することができる。
【0082】
3.電気泳動表示装置の製造方法
このような電気泳動表示装置20は、次のようにして製造することができる。
以下、電気泳動表示装置20の製造方法について説明する。
図5および図6は、それぞれ、図1に示す電気泳動表示装置の製造方法を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図5および図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図5に示す電気泳動表示装置20の製造方法は、マイクロカプセル40を作製するマイクロカプセル作製工程[A1]と、マイクロカプセル40を含むマイクロカプセル分散液を調製するマイクロカプセル分散液調製工程[A2]と、基板12の一方の面側にマイクロカプセル40を含むマイクロカプセル含有層400を形成するマイクロカプセル含有層形成工程[A3]と、マイクロカプセル含有層400の基板12と反対の面側に接着剤層8を形成する接着剤層形成工程[A4]と、接着剤層8のマイクロカプセル含有層400と反対の面側に対向基板11を接触して、接着剤層8と対向基板11とを接合する接合工程[A5]とを有している。
【0083】
以下、各工程について説明する。
[A1]マイクロカプセルの作製工程
[A1−1]第1のカプセル層の形成
まず、電気泳動分散液10を第1のカプセル層402に内包するマイクロカプセルを得る。なお、以下、説明の便宜上、このマイクロカプセルを「マイクロカプセル前駆体」と言うこととする。
【0084】
第1のカプセル層402は、例えば、電気泳動分散液10を芯物質として、各種マイクロカプセル化手法を用いて形成することができる。
マイクロカプセル化手法(第1のカプセル層402への電気泳動分散液10の封入方法)としては、特に限定されないが、例えば、界面重合法、In−situ重合法、相分離法(または、コアセルベーション法)、界面沈降法、スプレードライ法等の各種マイクロカプセル化手法を用いることができる。このマイクロカプセル化手法は、第1のカプセル層402の構成材料等に応じて、適宜選択するようにすればよい。
【0085】
第1のカプセル層402の構成材料として、例えば、メラミン系樹脂や尿素樹脂等のアミノ樹脂を用いる場合、コアセルベーション法を用いることが好ましい。コアセルベーション法によれば、芯物質となる電気泳動分散液10の小滴と、アミノ樹脂のモノマーとホルムアルデヒドとを反応させて得られた初期縮合化合物とを水系媒体中に共存させ、電気泳動分散液10の小滴の表面近傍で初期縮合化合物を縮合反応させることにより、アミノ樹脂層(第1のカプセル層402)を形成することにより、確実にマイクロカプセル前駆体を形成することができる。
【0086】
以下、コアセルベーション法を用いて、アミノ樹脂で構成される第1のカプセル層402(マイクロカプセル前駆体)を形成する形成方法について詳述する。
<i>芯物質分散液の調製
まず、芯物質となる、電気泳動粒子5と液相分散媒6とで構成される電気泳動分散液10を水系媒体に分散させて、電気泳動分散液10の小滴が分散された芯物質分散液を得る。
この水系媒体としては、例えば、水、または、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
【0087】
混合溶媒に混合される親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中における水の配合量は、70〜95質量%であるのが好ましく、75〜95質量%であるのがより好ましく、80〜95質量%であるのがさらに好ましい。
水系媒体は、水や親水性有機溶媒に加えて、さらに他の溶媒を含有していてもよい。
他の溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミニルスクアレン、石油エーテル、テルペン、ヒマシ油、大豆油、パラフィン、ケロシン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の溶媒を用いる場合、水系媒体における他の溶媒の含有率は、30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0089】
水系媒体に分散させる芯物質の量は、特に限定されないが、水系媒体100質量部に対して、5〜70質量部であるのが好ましく、8〜65質量部であるのがより好ましく、10〜60質量部であるのがより好ましい。芯物質の分散量が少ないと、第1のカプセル層402の形成に長時間を必要とすることや、目的とする粒径のマイクロカプセル前駆体が十分に調製されず、マイクロカプセル前駆体の粒径分布が広くなることにより、生産効率が低下する恐れがある。これとは逆に、芯物質の分散量が多いと、芯物質が凝集することや、芯物質中に水系媒体が懸濁すること等により、マイクロカプセルが得られなくなる恐れがある。
【0090】
また、芯物質を水系媒体中に分散させる際には、必要に応じて、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、アラビアゴム等の水溶性高分子、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
水系媒体への分散剤の添加量は、特に限定されないが、第1のカプセル層の形成を阻害しない範囲で適宜調整される。
【0091】
<ii>初期縮合化合物の生成
初期縮合化合物は、アミノ樹脂のモノマーと、ホルムアルデヒドとを縮合反応させることによって得る。
モノマーとしては、メラミンや、尿素およびチオ尿素等の尿素化合物等のアミノ化合物が挙げられ、目的とするカプセル層の構成材料に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
例えば、モノマーとしてメラミンを用いた場合には、メラミン樹脂を与える初期複合化合物が得られ、尿素化合物のいずれかを用いた場合には、尿素樹脂を与える初期複合化合物が得られる。また、メラミンと尿素化合物とを組み合わせて用いた場合には、メラミン樹脂および尿素樹脂が混在する樹脂を与える初期複合化合物が得られる。
モノマーとホルムアルデヒドとの反応は、一般に、水を溶媒として行われる。具体的には、ホルムアルデヒド水溶液にモノマーを添加し、もしくは、モノマーにホルムアルデヒド水溶液を添加し、混合する。これにより、モノマーとホルムアルデヒドとが縮合反応し、初期縮合化合物の水溶液が得られる。この縮合反応は、例えば、攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0093】
この縮合反応に供するモノマーとホルムアルデヒドのモル比(モノマー/ホルムアルデヒド)は、特に限定されないが、1/0.5〜1/10であるのが好ましく、1/1〜1/8であるのがより好ましく、1/1〜1/6であるのがさらに好ましい。モノマー/ホルムアルデヒドのモル比が小さいと、未反応のホルムアルデヒドが多くなり、反応効率が低下する恐れがある。逆に、モノマー/ホルムアルデヒドのモル比が大きいと、未反応のモノマーが多くなり、反応効率が低下する恐れがある。
【0094】
また、この反応系におけるモノマーとホルムアルデヒドの初期濃度(仕込み時点での濃度)は、反応に支障がない限り、より高濃度であることが好ましい。
この縮合反応における反応温度は、特に限定されないが、55〜85℃であるのが好ましく、60〜80℃であるのがより好ましく、65〜75℃であるのがさらに好ましい。
この縮合反応の停止は、例えば、反応終点が認められた時点で、反応液を常温(例えば、25〜30℃)に冷却する等の操作により行われる。
反応時間は、特に限定されず、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
【0095】
<iii>第1のカプセル層の形成
次に、工程<i>で得た芯物質分散液に、<ii>で得た初期縮合化合物を徐々に添加する。これにより、電気泳動分散液10の小滴の表面に、初期縮合化合物が吸着するとともに、縮合反応する。その結果、電気泳動分散液10の小滴の表面に樹脂層(第1のカプセル層402)が形成され、電気泳動分散液10を内包するマイクロカプセル前駆体が得られる。
【0096】
芯物質分散液に添加する初期縮合化合物の添加量は、特に限定されないが、芯物質1質量部に対して、0.5〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのがより好ましく、0.5〜3質量部であるのがさらに好ましい。初期縮合化合物の添加量を調整することにより、第1のカプセル層402の厚さを容易に制御することができる。初期縮合化合物の添加量が少ないと、第1のカプセル層402を十分な厚さで形成するのが難しく、用いるアミノ化合物の種類によっては、得られるマイクロカプセル40の耐圧性および耐ブリード性が不足する恐れがある。また、初期縮合化合物の添加量が多いと、形成される第1のカプセル層402が厚くなることに起因して、第1のカプセル層402の柔軟性および透明性が不十分となる恐れがある。
【0097】
芯物質分散液への初期縮合化合物の添加方法は、特に限定されず、一括添加または逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)のいずれであってもよい。なお、初期縮合化合物の添加に際しては、攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
また、第1のカプセル層402には、メルカプト(チオール)基を導入するのが好ましい。これにより、このメルカプト基を介して、第1のカプセル層402と、後述する第2のカプセル層403とをその界面で化学的に結合させることができるため、第1のカプセル層402と、第2のカプセル層403との密着性の向上を図ることができる。
【0098】
このような第1のカプセル層402へのメルカプト基の導入は、例えば、芯物質分散液に、メルカプト基(−SH基)と、初期縮合化合物のアミノ基と反応し得るカルボキシル基(−COOH基)および/またはスルホ基(−SOH基)とを有する化合物(チオール化合物)を添加した状態で、第1のカプセル層402を形成することにより、行うことができる。
【0099】
具体的には、チオール化合物としては、例えば、システイン(2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、および、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、特に、入手が容易であることから、L−システインが好適に用いられる。
【0100】
芯物質分散液に添加するチオール化合物の添加量は、特に限定されないが、初期縮合化合物100質量部に対して、1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましく、1〜5質量部であるのがさらに好ましい。チオール化合物の添加量が少ないと、第1のカプセル層402に導入されるメルカプト基の量が少なくなり、メルカプト基を導入する効果、すなわち、第1のカプセル層402に第2のカプセル層403を強固に結合させる効果が充分に得られない。また、チオール化合物の添加量が多いと、形成される第1のカプセル層402の強度が低下して、耐圧性や耐ブリード性が不足する恐れがある。
【0101】
芯物質分散液にチオール化合物を添加する方法は、特に限定されないが、例えば、芯物質分散液に初期縮合化合物を添加した後、十分に攪拌してから、チオール化合物を水溶液の形態で添加するのが好ましい。
第1のカプセル層402を形成する際の反応温度は、特に限定されないが、25〜80℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましく、35〜60℃であるのがさらに好ましい。反応時間は、特に限定されず、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
また、縮合反応を行った後、反応液を所定の温度で放置する熟成工程を行うようにしてもよい。熟成温度は、特に限定されないが、例えば、縮合反応を行う際の反応温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されないが、0.5〜5時間であるのが好ましく、1〜3時間であるのがより好ましい。
【0102】
以上のようにして得られたマイクロカプセル前駆体は、分級および洗浄することを目的に、水系媒体に分散した状態で次の工程に供してもよく、吸引濾過や自然濾過等の方法により、水系媒体から分離した後、次の工程に供するようにしてもよい。ただし、濾過に際する衝撃や圧力によって第1のカプセル層402が損傷・破壊してしまうのを確実に防止するという観点からは、水系媒体から分離せずに次の工程に供するのが好ましい。
【0103】
<iv>マイクロカプセル前駆体の分級および洗浄
次に、マイクロカプセル前駆体を、分級および洗浄する。
マイクロカプセル前駆体の分級方法としては、特に限定されないが、例えば、ふるい式、フィルター式、遠心沈降式、自然沈降式等が挙げられる。このうち、回収するマイクロカプセル前駆体の粒子径が比較的大きい場合には、ふるい式を用いるのが好ましい。
マイクロカプセル前駆体の洗浄方法としては、特に限定されないが、例えば、遠心沈降式、自然沈降式等が挙げられる。このうち、マイクロカプセル前駆体の粒子径が比較的大きい場合には、マイクロカプセル前駆体の損傷・破壊を防止するために、自然沈降式を用いるのが好ましい。なお、洗浄は、1回に限らず、複数回行うようにしてもよい。
【0104】
[A1−2]第2のカプセル層の形成
次に、工程[A1−1]で得たマイクロカプセル前駆体(第1のカプセル層402)の外周面に、第2のカプセル層403を形成し、電気泳動分散液10を内包するマイクロカプセル40を得る。
第2のカプセル層403は、例えば、マイクロカプセル前駆体を水系媒体中に分散させたカプセル分散液に、樹脂のプレポリマーを徐々に添加し、マイクロカプセル前駆体の表面に吸着したプレポリマーを、重合反応させることによって形成することができる。これにより、マイクロカプセル前駆体の表面に第2のカプセル層403が形成され、電気泳動分散液10を内包するマイクロカプセル40が得られる。
【0105】
マイクロカプセル前駆体を分散させる水系媒体としては、例えば、工程[A1−1]において電気泳動分散液を分散させる水系媒体と同様のものを挙げることができる。
なお、工程[A1−1]で得られたマイクロカプセル前駆体が水系媒体に分散された状態である場合には、これをそのままでカプセル分散液として用いてもよく、必要に応じて濃縮または希釈した後、カプセル分散液として用いるようにしてもよい。
【0106】
プレポリマーは、重合反応によって樹脂を与えるものであり、樹脂のモノマー、オリゴマーまたはこれらの混合物等が挙げられる。
プレポリマーは、具体的には、第2のカプセル層403の構成材料に応じて適宜選択され、例えば、第2のカプセル層403をエポキシ系樹脂で構成する場合には、エポキシ基を含有する化合物(エポキシ化合物)が用いられる。
【0107】
なお、第2のカプセル層403をエポキシ系樹脂で構成することにより、第2のカプセル層403は、アミノ樹脂で構成される第1のカプセル層402と比較して、確実に弾性に優れるものとなる。さらに、第1のカプセル層402をメルカプト基を有する構成とした場合には、第2のカプセル層403が、第1のカプセル層402の表面にメルカプト基を介して化学的に結合する。その結果、強度に優れたマイクロカプセル40が得られる。
【0108】
エポキシ化合物としては、特に限定されず、1分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いることができるが、中でも、2個以上のエポキシ基を有する水溶性エポキシ化合物が好適に用いられる。
具体的には、エポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
エポキシ化合物の質量平均分子量は、300〜100000程度であるのが好ましく、300〜75000程度であるのがより好ましく、300〜50000程度であるのがさらに好ましい。エポキシ化合物の質量平均分子量が小さいと、用いるエポキシ化合物の種類によっては、形成される第2のカプセル層403の強度が不十分となる恐れがある。また、これとは逆に、エポキシ化合物の質量平均分子量が大きいと、反応系の粘度が高くなり、攪拌が困難となる恐れがある。
【0110】
カプセル分散液に添加するエポキシ化合物の添加量は、特に限定されないが、マイクロカプセル前駆体1質量部に対して、0.5〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのがより好ましく、0.5〜3質量部であるのがさらに好ましい。エポキシ化合物の添加量を調整することにより、第2のカプセル層403の厚さを容易に制御することができる。エポキシ化合物の添加量が少ないと、第2のカプセル層403を十分な厚さで形成するのが難しく、得られるマイクロカプセル40の耐圧性が不足する恐れがある。また、エポキシ化合物の添加量が多いと、形成される第2のカプセル層403の厚さが大きくなりすぎ、柔軟性および透明性が不十分となる恐れがある。
【0111】
カプセル分散液へのエポキシ化合物の添加方法は、特に限定されないが、例えば、カプセル分散液に、エポキシ化合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。添加は、一括添加または逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。また、エポキシ化合物の添加に際しては、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0112】
なお、カプセル分散液には、架橋剤を共存させるのが好ましい。これにより、架橋構造を有する第2のカプセル層403を得ることができる。第2のカプセル層403に架橋構造を形成することにより、第2のカプセル層403の強度、ひいてはカプセル本体401全体の強度が向上するので、その後にマイクロカプセル40を分離したり洗浄したりする際に、カプセル本体401が損傷・破壊することを効果的に抑制することができる。
【0113】
架橋剤としては、プレポリマーがエポキシ化合物である場合には、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物を含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物を含む)、ジチオシュウ酸およびジチオ炭酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
カプセル分散液に添加する架橋剤の添加量は、特に限定されないが、エポキシ化合物100質量部に対して、1〜100質量部であるのが好ましく、5〜90質量部であるのがより好ましく、10〜80質量部であるのがさらに好ましい。架橋剤の添加量が少ないと、第2のカプセル層403の強度を高める効果が十分に得られない。また、架橋剤の添加量が多いと、架橋剤がエポキシ化合物のエポキシ基と過剰に反応し、第2のカプセル層403の柔軟性が低下することがある。
【0114】
カプセル分散液に架橋剤を添加するに際し、架橋剤は、エポキシ化合物とともに添加してもよく、エポキシ化合物の添加前または添加後に添加してもよい。例えば、カプセル分散液に、エポキシ化合物の水溶液を添加し、少し時間をおいて後、攪拌を行いながら、架橋剤を水溶液の形態で滴下することが好ましい。
この第2のカプセル層403を形成する際の反応温度は、特に限定されないが、25〜80℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましく、35〜60℃であるのがさらに好ましい。反応時間は、特に限定されず、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
【0115】
また、第2のカプセル層403を形成した後、反応液を所定の温度で放置する熟成工程を行うようにしてもよい。熟成温度は、特に限定されないが、例えば、第2のカプセル層を形成する際の温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されないが、0.5〜5時間であるのが好ましく、1〜3時間であるのがより好ましい。
【0116】
以上のようにして得られたマイクロカプセル40は、水系媒体に分散した状態で次の工程に供してもよく、吸引濾過や自然濾過等の方法により、水系媒体から分離した後、次の工程に供するようにしてもよいが、マイクロカプセル40を乾燥状態にすると、電気泳動分散液の溶媒がカプセル本体401から浸出して蒸発し、マイクロカプセル40が変形する可能性があるので、水系媒体から分離することなく、次の工程に供することが好ましい。
また、得られたマイクロカプセル40は、分級および洗浄するのが好ましい。これにより、粒度分布が狭く、不純物の少ないマイクロカプセル40を得ることができる。
分級方法および洗浄方法は、例えば、前記工程[A1−1]の場合と同様の方法を挙げることができる。
【0117】
[A2]マイクロカプセル分散液の調製工程
次に、バインダ41を用意し、このバインダ41と、前記工程[A1]で作製されたマイクロカプセル40とを混合してマイクロカプセル分散液を調製する。
マイクロカプセル分散液中におけるマイクロカプセル40の含有量は、30〜60wt%程度であるのが好ましく、40〜60wt%程度であるのがより好ましい。
マイクロカプセル40の含有量を前記範囲に設定すると、マイクロカプセル40が厚さ方向に重ならないように(単層で)、マイクロカプセル含有層400において移動(再配置)させて配設する上で、非常に有利である。
【0118】
[A3]マイクロカプセル含有層400の形成工程
次に、図5(a)に示すように、基板12を用意する。そして、図5(b)に示すように前記工程[A2]で調製したマイクロカプセル分散液を基板12上に供給する。
マイクロカプセル分散液を供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の各種塗布法を用いることができる。
【0119】
次に、必要に応じて、基板12の各部において、マイクロカプセル分散液の厚さ(量)が均一になるように、好ましくはマイクロカプセル40が厚さ方向に重ならないように1個ずつ(単層に)配置されるように均す。
これは、例えば、図5(c)に示すように、スキージ(平板状の治具)100を基板12上を通過させ、マイクロカプセル40を掃くことにより行うことができる。
これにより、マイクロカプセル含有層400が形成され、図5(d)に示すような電気泳動表示シート21が得られる。
【0120】
[A4]接着剤層8形成工程
次に、図6(e)に示すように、マイクロカプセル含有層400上に、接着剤層8を形成する。
これは、例えば、シート状の接着剤層8を、転写法等により、マイクロカプセル含有層400上に配置することにより行うことができる。
【0121】
[A5]回路基板22の接合工程
次に、図6(f)に示すように、接着剤層8上に、別途用意した回路基板22を、第1の電極3が接着剤層8に接触するように重ね合わせる。
これにより、接着剤層8を介して、電気泳動表示シート21と回路基板22とが接合される。
このとき、接着剤層8および回路基板22の自重や、回路基板22と電気泳動表示シート21とを接近するように加圧する(マイクロカプセル含有層400の厚さを減少させる)ことにより、マイクロカプセル含有層400において、マイクロカプセル40の配設密度を均一にすることができる。
【0122】
ここで、回路基板22と電気泳動表示シート21とを接近させる際に、これら同士の間に付与する圧力の大きさは、通常、0.2〜0.6MPa程度に設定される。しかしながら、本発明の電気泳動表示シートでは、このような大きさの圧力が回路基板22と電気泳動表示シート21との間に付与した状態で、マイクロカプセル含有層400が第2の電極4と接着剤層8とで狭持されたとしても、マイクロカプセル含有層400中に含まれるマイクロカプセル40は、上下方向に圧縮(圧迫)されることなく、ほぼ球状(球形状)をなすように設定されている。その結果、回路基板22と電気泳動表示シート21との間に圧力を付与することに起因する、マイクロカプセル40の崩壊や電気泳動分散液10の散逸が確実に防止される。
【0123】
[A6]封止工程
次に、図6(g)に示すように、電気泳動表示シート21および回路基板22の縁部に沿って、封止部7を形成する。
これは、電気泳動表示シート21(基部2)と回路基板22(基部1)との間であって、これらの縁部に沿って封止部7を形成するための材料を、例えば、ディスペンサ等により供給し、固化または硬化させることにより形成することができる。
以上の工程を経て、電気泳動表示装置20が得られる。
【0124】
このようにして得られた電気泳動表示装置では、マイクロカプセル含有層に含有されるマイクロカプセルが球状をなして存在していることにより、耐圧性および耐ブリード性に優れている。したがって、作動させているとき、もしくは、保存している間に、電気泳動表示装置に衝撃が加わったり、表示面が押圧されたりした場合でも、マイクロカプセルの崩壊や電気泳動分散液の散逸が防止され、長期間安定に動作することができる。
なお、接着剤層8は、回路基板22側に設けておき、回路基板22と電気泳動表示シート21とを接合するようにしてもよく、回路基板22および電気泳動表示シート21の双方に設けておき、回路基板22と電気泳動表示シート21とを接合するようにしてもよい。
【0125】
また、例えば、シート状の接着剤層8は、これを撓ませた状態で、その一端部をマイクロカプセル含有層400に接触させ、他端側に向かって順にマイクロカプセル含有層400に接触させて、マイクロカプセル含有層400上に配置するのが好ましい。これにより、マイクロカプセル含有層400と接着剤層8との間に気泡が生じるのを防止することができるとともに、マイクロカプセル40の再配置をより確実に行うことができる。
【0126】
<第2実施形態>
次に、本発明の電気泳動表示シートを適用した電気泳動表示装置の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の電気泳動表示装置の第2実施形態の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図7中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0127】
以下、第2実施形態の電気泳動表示装置について説明するが、前記第1実施形態の電気泳動表示装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7に示す電気泳動表示装置20は、マイクロカプセル含有層400内で、マイクロカプセル40同士の間に形成された隙間を埋めるように複数の副カプセル42が配置されていること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置20と同様である。
すなわち、第2実施形態の電気泳動表示装置20では、マイクロカプセル含有層400は、2種類のマイクロカプセル40、42を有している。
【0128】
本実施形態では、これらのマイクロカプセル40、42のうち、マイクロカプセル40は、各画素の表示に主として寄与する主カプセルとして機能する。
このマイクロカプセル40の構成は、前記第1実施形態で説明したマイクロカプセル40の構成と同様である。なお、本実施形態では、隣り合うマイクロカプセル40同士は、接して配置されているが、離れて配置されていてもよい。
【0129】
副カプセル42は、電気泳動分散液10を副カプセル本体(殻体)421内に封入してなるものであり、マイクロカプセル40よりも柔軟性に優れ、かつ、小さい粒径とされている。かかる構成の副カプセル42は、主カプセルであるマイクロカプセル40同士の間に形成された隙間43を埋める機能を有する。
すなわち、副カプセル42は、接着剤層8とマイクロカプセル40同士との間に形成された隙間43a(図7中下側の隙間)、および、基板12とマイクロカプセル40同士との間に形成された隙間43b(図7中上側の隙間)に、該隙間43a、bを埋めるように変形して配置し得る機能を有する。
【0130】
具体的には、本実施形態では、副カプセル42は、第2の電極4と接着剤層8とで挟持されて、上下方向に圧迫されることに起因して、隙間43a、bの形状に対応して変形し、図7に示すように、縦断面視で、ほぼ三角形状をなしている。
このような構成とすれば、マイクロカプセル含有層400における隙間43a、bが副カプセル42で満たされるので、電気泳動表示装置20の表示の均一化を図ることができる。その結果、電気泳動表示装置の平面視において、均一に表示できる面積が大きくなり、表示のコントラストを高めることができる。
この副カプセル本体421内に封入された電気泳動分散液10は、前記第1実施形態において、マイクロカプセル40のカプセル本体401内に封入された電気泳動分散液10と同様である。
【0131】
副カプセル本体(殻体)421の硬さとしては、マイクロカプセル40よりも軟らかいもの(より変形し易いもの)であればよく、特に、0.2MPa以上の圧力で圧迫されて変形するような硬さであることが好ましく、1MPa以上の圧力で圧迫されて変形するような硬さであることが好ましい。これにより、隙間43a、bの形状に合うように変形し易く、隙間43を確実に埋めることができる。副カプセル本体421の硬さが軟らかすぎると、副カプセル本体421の耐ブリード性、バリア性が低下するので、副カプセル本体421内の電気泳動分散液10が流出するおそれがある。一方、副カプセル本体421の硬さが硬すぎると、副カプセル本体421が十分に変形しないので、変形した場合に比べてコントラストが上昇する効果を十分に得ることができない恐れがある。
【0132】
副カプセル本体421の粒径としては、例えば、カプセル本体401の粒径の1/4〜1/3の大きさであることが好ましい。具体的には、例えば、体積平均粒子径が7〜20μmであることが好ましく、10〜18μmであることがより好ましい。また、粒子径の変動係数(CV値)が5〜15%であることが好ましく、変動係数(CV値)が5〜10%であることがより好ましい。
【0133】
副カプセル本体421の粒径がこのような範囲であることにより、マイクロカプセル40同士の隙間43a、bを確実に埋めることができるので、均一に表示される部分の面積を大きくすることができる。その結果、表示のコントラストが向上する。
副カプセル本体(殻体)421の構成材料としては、マイクロカプセル40よりも柔軟性に優れる材料で構成されていれば良く、例えば、アラビアゴムなどのゴムを含む材料、アラビアゴムとゼラチンとの複合材料、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、ポリアミド、ポリエーテルのような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0134】
中でも、副カプセル本体421は、ゼラチンを含む材料を主材料(特に、ゼラチンを主材料)として構成されたものが好ましい。これにより、副カプセル42の柔軟性を向上させることができ、その形状を自由に変形することができる。また、ゼラチンは、バインダ41として好適に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとの親和性が高いため、バインダ41による副カプセル42の固定力(保持力)をより向上させ得ることからも好ましい。
【0135】
このようなゼラチンとしては、無処理のものの他、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カルシウム等の含有量を減らした脱灰ゼラチン、酸化処理を施しメチオニン残基を減じたゼラチン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような副カプセル42は、その大きさ(粒径)がほぼ均一であることが好ましい。これにより、電気泳動表示装置20では、表示ムラの発生が防止または低減され、より優れた表示性能を発揮することができる。
【0136】
なお、1つの隙間43a、bに、複数個の副カプセル42が配置されてもよい。
副カプセル42には、前述した白色粒子5aと着色粒子(黒色粒子)5bとが内包されている。これにより、マイクロカプセル40と副カプセル42とに内包される電気泳動粒子5が後述するように動作するので、表示を均一にすることができる。
この着色粒子5bは、マイクロカプセル40と副カプセル42とで、黒色、茶褐色、紺色、灰色など同系統(暗色)であれば色が異なっていてもよい。これにより、コントラストが向上し、所望の画像を得ることができる。
なお、副カプセルは、接着剤層8または対向基板11を接合しても、変形しない状態でマイクロカプセル40同士の隙間に配置されていてもよい。
【0137】
以上のような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、第2実施形態では、特に、マイクロカプセル含有層400にマイクロカプセル40とともに副カプセル42が含有されていることにより、次のような効果を得ることができる。
【0138】
すなわち、この電気泳動表示装置20では、副カプセル42内の電気泳動粒子(着色粒子5b、白色粒子5a)は、マイクロカプセル40内の電気泳動粒子と同じように作動し、第1の電極3と第2の電極4との間に電界が生じると、この電界にしたがって、いずれかの電極に向かって電気泳動する。その結果、マイクロカプセル40および副カプセル内の電気泳動粒子のうち、第2の電極に集まった粒子の色が、電気泳動表示装置の上方(表示面側)から視認される。
このとき、副カプセル42が隙間43a、bを埋めているので、電気泳動表示装置20の表示面はマイクロカプセル40と副カプセル42とで満たされ、画像を均一に表示することができる。その結果、電気泳動装置20の均一に表示できる面積を増大することができ、コントラストを高めることができる。
【0139】
なお、本実施形態では、隙間43aおよび隙間43bの双方に副カプセル42が配置(充填)されている場合について説明したが、このような場合に限定されず、各画素が視認される側の隙間、すなわち、基板12とマイクロカプセル40同士との間に形成された隙間43bの一方に選択的に配置されていてもよい。かかる構成とすることにより、隙間43aに副カプセル42を配置しなくてもよいので、副カプセル42の使用量の低減を図ることができる。
【0140】
<電子機器>
以上のような電気泳動表示装置20は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置20を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図8は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図8に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置20で構成されている。
【0141】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図9は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図9中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図9に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図9に示す構成と同様のものである。
【0142】
本体部801は、その側部(図9(a)中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0143】
また、本体部801の表示面側(図9(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0144】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図9中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置20で構成されている。
【0145】
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、本発明の電気泳動表示装置20を適用することが可能である。
以上、本発明の電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0146】
また、本発明の電気泳動表示装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。例えば、第1実施形態と第2実施形態との構成を組み合わせたもの等であってもよい。
また、前記実施形態では、一対の電極が対向して設けられた構成のものについて示したが、本発明は、これに限らず、例えば、一対の電極を同一基板上に設ける構成のものに適用することもできる。
また、前記実施形態では、一対の基板が対向して設けられた構成のものについて示したが、本発明は、これに限らず、例えば、単一の基板を有するものに適用することもできる。
【0147】
また、前記実施形態では、マイクロカプセルは、隣り合う2つの画素電極(電極)にまたがるように配置されているが、本発明では、これに限らず、例えば、マイクロカプセルが、隣り合う3つ以上の画素電極にまたがるように配置されていてもよく、また、隣り合う画素電極にまたがらないように配置されていてもよく、また、これらが混在していてもよい。
【実施例】
【0148】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.電気泳動表示装置の製造
なお、各実施例および各比較例の電気泳動表示装置をそれぞれ5個ずつ製造した。
〔実施例1〕
(A1)マイクロカプセルの作製
(A1−1)電気泳動分散液の調製
まず、平均粒径200nmの球形状の白色粒子と、平均粒径60nmの球形状の黒色粒子を用意した。
なお、白色粒子には、酸化チタン粒子(石原産業社製、「CR−90」)を、黒色粒子には、カーボンブラック粒子を用いた。
次に、白色粒子と黒色粒子とを、重量比で6:1となるように液相分散媒に分散して、電気泳動分散液を調製した。
なお、液相分散媒には、IsoparM(ExonMobilChemical社製)を用いた。
【0149】
(A1−2)第1のカプセル層の形成
100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン5g、尿素5g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水1gを仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温させた。昇温途中、65℃付近で全体が透明になった。70℃に昇温後、同温度で1時間保持した後、30℃まで冷却し、メラミンおよび尿素とホルムアルデヒドとの初期縮合化合物を得た。
【0150】
次に、前記工程(A1−1)で得られた電気泳動分散液を、この初期縮合化合物に滴下し、2時間撹拌した。なお、撹拌の回転速度は、800rpmとした。
その後、1時間かけて70℃まで昇温し、同温度で2時間熟成させた後、常温まで冷却した。以上の工程により、メラミン系樹脂よりなる第1のカプセル層を形成し、電気泳動分散液を内包するマイクロカプセル前駆体を得た。そして、一昼夜撹拌を続けた後、平均粒径42μmのマイクロカプセル前駆体を分級した。
【0151】
(A1−3)第2のカプセル層の形成
300mlのセパラブルフラスコに、ポリカルボン酸[日本触媒社製、「アクアリックHL−415(ポリアクリル酸MW10000、45%水溶液)」]50g、水50gを仕込み、攪拌しながら、エポキシ化合物[ナガセケムテック社製、「デナコールEX521(ポリグリセロール ポリグリシルジルエステル)」]20gを水50gに分散した分散液を、10分間かけて滴下した。この分散液の滴下に際し、反応液の温度は、25℃以上に保った。
【0152】
次に、反応液を、30分攪拌した後、40℃まで昇温し、1時間保持した。その後、反応液を、常温まで冷却することにより、固形分濃度25%の第2のカプセル層形成材を得た。
次に、500mlの平底セパラブルフラスコに、前記工程(A1−2)で得たマイクロカプセル前駆体を100g投入し、脱イオン水を加えて全量を200gとすることにより、カプセル分散液を得た。
【0153】
次に、このカプセル分散液を、攪拌しながら50℃まで昇温し、先に得られた第2のカプセル層形成材180gを添加した。そして、その5分後に、架橋剤として2.5%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液1.0gを、5分間かけて滴下した。
次に、反応液を、50℃に保って5時間反応を行うことにより、マイクロカプセル前駆体(第1のカプセル層)の表面に、エポキシ系樹脂よりなる第2のカプセル層を形成した。
以上の工程により、第1のカプセル層と第2のカプセル層とで構成されるカプセル本体内に電気泳動分散液を内包するマイクロカプセルを得た。そして、一昼夜攪拌を続けた後、平均粒径42μmのマイクロカプセルを分級した。
【0154】
(A2)マイクロカプセル分散液の調製
次に、前記工程(A1)で得られたマイクロカプセルとバインダとを、重量比で1:1となるように混合して、マイクロカプセル分散液を調製した。
なお、バインダには、ドデシルメタクリレート(融点:25℃以下)と2−エチルヘキシルメタクリレート(融点:25℃以下)とを、重量比で9:1となるように混合した混合物を用いた。
【0155】
(A3)マイクロカプセル含有層の形成
次に、ITOで構成される第2の電極が形成されたPET-ITO基板(御池工業社製、「OTEC220B」)を用意した。
次いで、前記工程(A2)で得られたマイクロカプセル分散液を、PET−ITO基板のITO上にドクタブレード法により、平均厚さ45μmのマイクロカプセル含有層を形成した。
【0156】
(A4)接着剤層形成
次に、平均厚さ15μmのシート状の接着剤層を用意し、常温(25℃)下で、マイクロカプセル含有層上に配置した。
なお、形成されたマイクロカプセル含有層の平均厚さは、約60μmであった。
また、接着剤層には、ポリウレタンとEO変性ジシクロペンテニルメタクリレートとを、重量比で19:1の割合で混合した混合物を用いた。
【0157】
(A5)回路基板の接合
次に、接着剤層上に、常温(25℃)下で、ITOよりなる第1の電極が形成された回路基板を配置し、その後、ロール間圧力を0.5MPaに設定してロールラミネータを用いて接合することにより接合体を得た。
(A6)封止工程
次に、前記工程(A5)で得られた接合体の縁部(外周部)をエポキシ系接着剤で封止した。これにより、図1に示す電気泳動表示装置を得た。
【0158】
〔実施例2〕
前記実施例1の(A1−3)の工程を省略して、(A1−1)および(A1−2)の工程を経て得られたマイクロカプセル前駆体(電気泳動分散液をメラミン系樹脂よりなる第1のカプセル層内に内包するマイクロカプセル)を、本実施例のマイクロカプセルとして用いた以外は実施例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
【0159】
〔実施例3〕
マイクロカプセルを、前記工程(A1)に代えて、次に示すような工程(A1’)として作製した以外は、前記実施例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
(A1’)
まず、500mlの平底セパラブルフラスコに、前記実施例1の工程(A1−1)と同様にして得られた電気泳動分散液100gを投入し、脱イオン水を加えて全量を200gとした後、攪拌することにより芯物質分散液を得た。
【0160】
次に、この芯物質分散液を攪拌しながら50℃まで昇温し、前記実施例1の工程(A1−3)と同様にして得られた第2のカプセル層形成材180gを添加した。そして、その5分後に、架橋剤として2.5%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液1.0gを、5分間かけて滴下した。
次に、反応液を、50℃に保って5時間反応を行うことにより、電気泳動分散液をエポキシ系樹脂よりなるカプセル本体内に内包するマイクロカプセルを得た。
【0161】
〔実施例4〕
マイクロカプセルと副カプセルとを含有するマイクロカプセル分散液を用いた以外は前記実施例1と同様に行い、電気泳動表示装置を得た。なお、副カプセルの作製およびマイクロカプセル分散液の調製は次のようにして行った。
(B1)副カプセルの作製
まず、水180部に、アラビアゴム(和光純薬工業社製)24部およびゼラチン(和光純薬工業社製)8部を溶解させて43℃に調温した。この溶液に、同温度に調温した前記工程(A1−1)で調製した電気泳動分散液316部を、攪拌しながら添加して懸濁液を得た。
得られた懸濁液に、温水799部およびウレタンエマルション(第一工業製薬社製、「スーパーフレックス700」)48部を添加した。
【0162】
次に、10wt%酢酸水溶液20部を添加した後、10℃まで冷却してコアセルベーションさせた。冷却後、37wt%ホルマリン水溶液10部および10wt%炭酸ナトリウム水溶液45部を添加し、室温まで昇温させ、90分間熟成させた。
そして、熟成後、アジリジン化合物(日本触媒社製、「ケミタイトPZ−33」)を添加し、50℃まで昇温し、60分間熟成させた。これにより、副マイクロカプセルを得た。
そして、一昼夜撹拌を続けた後、平均粒径12μmの副マイクロカプセルを分級した。
【0163】
(B2)マイクロカプセル分散液の調製
次に、前記工程(A1)で得られたマイクロカプセルと、前記工程(B2)で得られた副カプセルと、前記工程(A2)で用いたのと同様のバインダとを、重量比で7:1:8となるように混合して、マイクロカプセル分散液を調製した。
【0164】
〔比較例1〕
マイクロカプセルを、前記工程(A1)に代えて、次に示すような工程(A1'’)のようにして作製した以外は、前記実施例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
(A1'')
まず、300mlのセパラブルフラスコ中の水180部に、アラビアゴム(和光純薬工業社製)24部およびゼラチン(和光純薬工業社製)8部を溶解させて43℃に調温した。この溶液に、同温度に調温した前記工程(A1−1)で調製した電気泳動分散液316部を、1000rpmで攪拌しながら添加して懸濁液を得た。
得られた懸濁液に、温水799部およびウレタンエマルション(第一工業製薬社製、「スーパーフレックス700」)48部を添加した。
【0165】
次に、10wt%酢酸水溶液20部を添加した後、10℃まで冷却してコアセルベーションさせた。冷却後、37wt%ホルマリン水溶液10部および10wt%炭酸ナトリウム水溶液45部を添加し、室温まで昇温させ、90分間熟成させた。
そして、熟成後、アジリジン化合物(日本触媒社製、「ケミタイトPZ−33」)を添加し、50℃まで昇温し、60分間熟成させた。これにより、電気泳動分散液をアラビアゴムとゼラチンとの複合材料で構成されたカプセル本体内に内包するマイクロカプセルを得た。
そして、一昼夜撹拌を続けた後、平均粒径54μmのマイクロカプセルを分級した。
〔比較例2〕
前記比較例1の(A1'')の工程において、電気液道分散液を攪拌する回転数を600rpmとして、平均粒径75μmのマイクロカプセルを分級した以外は、比較例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
【0166】
2.評価
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示装置について、それぞれ5個ずつ、球粒子率、耐圧性(ラミネート耐圧試験)、耐ブリード性、表示コントラストの評価を行った。
また、耐圧性(硬球落下試験)の評価を、各実施例および各比較例において、前記工程(A4)が施される前のPET−ITO基板上にマイクロカプセル含有層が形成されたものを用いて行った。
【0167】
(1)球粒子率
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示シートについて、前記第1実施形態で説明した方法を用いて、それぞれ、球粒子率を求めた。
(2)耐圧性
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示シートの耐圧性は、ラミネート耐圧試験および硬球落下試験を行うことにより評価した。
【0168】
(2−A)ラミネート耐圧試験
各実施例および各比較例の電気泳動表示装置において、顕微鏡(×100または×300)を用いて、潰れずに残ったマイクロカプセルの数を測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の80%以上であった。
○:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の70%以上80%未満であった。
△:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の50%以上70%未満であった。
×:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の50%未満であった。
【0169】
(2−B)硬球落下試験
各実施例および各比較例において、前記工程(A4)が施される前のPET−ITO基板上にマイクロカプセル含有層が形成されたものを、それぞれ、定盤(約3mm厚の硬質ラバー)上に、マイクロカプセル含有層側を上側にして載置し、硬球(約10mmφ、約5g)を10cmの高さから落下させた。
その後、顕微鏡(×100または×300)を用いて、潰れずに残ったマイクロカプセルの数を測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0170】
◎:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の80%以上であった。
○:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の70%以上80%未満であった。
△:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の50%以上70%未満であった。
×:潰れずに残ったマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の50%未満であった。
【0171】
(3)耐ブリード性加熱試験
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示装置を、70℃雰囲気下で100時間放置した。
その後、電気泳動分散液が散逸したり、潰れたりしていないマイクロカプセルの数を測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0172】
◎:電気泳動分散液が散逸していないマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の80%以上であった。
○:電気泳動分散液が散逸していないマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の70%以上80%未満であった。
△:電気泳動分散液が散逸していないマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の50%以上70%未満であった。
×:電気泳動分散液が散逸していないマイクロカプセルの数が、全マイクロカプセル数の50%未満であった。
【0173】
(4)表示コントラスト
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示装置の両電極間に20Vの直流電圧を0.4秒間印加したときの白および黒の反射率をそれぞれ、マクベス分光光度濃度計(GretagMacbeth社製、「SpectroEye」)を用いて測定し、下記式(3)によりコントラストを求めた。
なお、白および黒の反射率は、極を切り替えて印加することにより別々に測定し、各反射率は電気泳動表示装置の片面全体について測定した値とした。
コントラスト=(白反射率)/(黒反射率) ・・・ (3)
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表1に示す。
【0174】
【表1】

【0175】
表1に示すように、各実施例の電気泳動表示装置は、いずれも、球粒子率が大きく、耐圧性、耐ブリード性、コントラストに優れていた。特に、カプセル本体が、メラミン系樹脂によって構成された第1のカプセル層と、エポキシ系樹脂によって構成された第2のカプセル層よりなる電気泳動表示装置(実施例1、実施例4)は、耐圧性および耐ブリード性に優れていた。
【0176】
さらに、マイクロカプセル含有層に副カプセルが含有された実施例4の電気泳動表示装置では、副カプセルがマイクロカプセル同士の隙間を埋めているので、表示を均一にすることができた。その結果、白色粒子の反射率を高めることができ、高いコントラストを得ることができた。
これに対し、各比較例では、各実施例に比較して、球粒子率が小さく、耐圧性、耐ブリード性が劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1実施形態の電気泳動表示装置の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】Heywood円形度値を測定するための顕微鏡写真の一例を示す図である。
【図3】図2に示す顕微鏡写真に画像処理を行った平面画像の一例を示す図である。
【図4】図1に示す電気泳動表示装置の作動原理を示す模式図である。
【図5】図1に示す電気泳動表示装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図6】図1に示す電気泳動表示装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態の電気泳動表示装置の縦断面を模式的に示す図である。
【図8】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0178】
1‥‥基部 2‥‥基部 3‥‥第1の電極 4‥‥第2の電極 5‥‥電気泳動粒子(表示粒子) 5a‥‥白色粒子 5b‥‥着色粒子(黒色粒子) 6‥‥液相分散媒 7‥‥封止部 8‥‥接着剤層 10‥‥電気泳動分散液 11‥‥対向基板 12‥‥基板 20‥‥電気泳動表示装置 21‥‥電気泳動表示シート 22‥‥回路基板 40‥‥マイクロカプセル 41‥‥バインダ 42‥‥副カプセル 43、43a、43b‥‥隙間 100‥‥スキージ 400‥‥マイクロカプセル含有層 401‥‥カプセル本体 402‥‥第1のカプセル層 403‥‥第2のカプセル層 421‥‥副カプセル本体 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a、802b‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面側に設けられ、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を殻体に内包する複数のマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル含有層とを備え、
前記マイクロカプセルは、ほぼ球状をなして存在していることを特徴とする電気泳動表示シート。
【請求項2】
前記マイクロカプセルは、前記マイクロカプセル含有層を一方の主面側から見た平面視において、Heywood円形度値が1.40以下のものの数をN1.40、Heywood円形度値が1.08以下のものの数をN1.08としたとき、下記式によって算出される球粒子率が60%以上である請求項1に記載の電気泳動表示シート。
球粒子率(%)=(N1.08/N1.40)×100
【請求項3】
前記各マイクロカプセルは、前記マイクロカプセル含有層の主面と直交する方向に切った断面において、Heywood円形度値が1.00〜1.10である請求項1または2に記載の電気泳動表示シート。
【請求項4】
前記マイクロカプセルの前記殻体は、それぞれ球殻状をなす、第1の層と、該第1の層よりも外側に配置されている第2の層とを有する請求項1ないし3のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項5】
前記第2の層は、前記第1の層よりも弾性に優れる請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項6】
前記第1の層は、メラミン系樹脂を主材料として構成される請求項5に記載の電気泳動表示シート。
【請求項7】
前記第2の層は、エポキシ系樹脂を主材料として構成される請求項6に記載の電気泳動表示シート。
【請求項8】
前記第1の層と前記第2の層との界面で、これら同士が化学的に結合している請求項4ないし7のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項9】
各前記マイクロカプセルは、同じ大きさに形成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項10】
前記マイクロカプセルは、前記白色粒子と、該白色粒子と色調の異なる着色粒子とを内包する請求項1ないし9のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項11】
さらに、前記マイクロカプセル含有層は、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を殻体に内包し、前記マイクロカプセルよりも柔軟性に優れ、かつ、粒径が小さい複数の副カプセルを含有し、
前記マイクロカプセルが、前記マイクロカプセル含有層の厚さ方向全体に配置され、
前記副カプセルは、前記マイクロカプセル含有層内で前記マイクロカプセル同士の間に形成された隙間を埋めるように配置されている請求項1ないし10のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項12】
前記副カプセルは、前記白色粒子と、該白色粒子と色調の異なる着色粒子とを内包する請求項11に記載の電気泳動表示シート。
【請求項13】
基板と、
前記基板の一方の面側に設けられ、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を殻体に内包する複数のマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル含有層と、
前記マイクロカプセル含有層の前記基板と反対側に設けられた対向基板とを備え、
前記マイクロカプセルは、ほぼ球状をなして存在していることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項14】
前記マイクロカプセル含有層と前記対向基板とを接合する接着剤層を備える請求項13に記載の電気泳動表示装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−109766(P2009−109766A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282281(P2007−282281)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)