説明

電気泳動表示用シートの製造方法、電気泳動表示用シートおよびその用途

【課題】基材シート表面の一部だけに電気泳動表示用マイクロカプセルを正確なパターン形状で効率的に担持させることができる電気泳動表示用シートの製造方法、それにより得られる電気泳動表示用シートおよびその用途の提供。
【解決手段】 電気泳動表示用シートの製造方法は、(a)基材フィルム上に導電層を形成してなる帯状の基材シートを連続走行させ、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス・リバースコート方式の塗工装置を用いて、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を塗工する工程と、(b)前記塗工液を乾燥させて、前記導電層上に前記マイクロカプセルを含む層を形成し、マイクロカプセル担持部と導電層露出部とが幅方向に交互に配置されている電気泳動表示用シートを得る工程とを包含する。この製造方法により得られる電気泳動表示用シートは、電気泳動表示装置および電子機器に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示用シートの製造方法、電気泳動表示用シートおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置は、例えば、帯電微粒子を分散媒中に分散させておき、電圧を印加したときの帯電微粒子の挙動によって、文字データや画像データなどを表示する。帯電微粒子と分散媒とが異なる色で着色されていると、電圧印加によって、帯電微粒子が分散媒の表面に移動したときには帯電微粒子の色が観察され、帯電微粒子が分散媒の底に移動したときには分散液の色が観察されることになる。アドレス指定して電圧を印加できる電極を備えておけば、アドレス毎に異なる色が表示でき、任意の文字データや画像データを表示できるようになる。表示データが書き換え可能であると共に、電気的な信号が存在しなくなっても、そのまま表示データを保持することができる。
【0003】
電気泳動表示装置には、通常のディスプレイなどのような固定的な装置のほか、電子ペーパーや電子ブックなどのように、薄いシート状で手軽に持ち運びが可能であり、自在に湾曲させることができるフレキシブルな表示ディスプレイの技術も提案されている。
【0004】
このような電気泳動表示装置において、帯電微粒子の分散液、すなわち電気泳動表示用分散液をマイクロカプセル化しておく技術が提案されている。透明樹脂などからなる微小球状のマイクロカプセルに電気泳動表示用分散液を封入し、得られた電気泳動表示用マイクロカプセルを基材シート表面に担持させることにより、可撓性のあるシート状の電気泳動表示装置が容易に構成できる。電気泳動表示用分散液が一部に偏在したり移動したりすることがなくなり、電子ペーパーなどのように、使用時の姿勢が様々に変わったり、湾曲させたりする用途にも適した技術となる。
【0005】
このようなマイクロカプセル技術を利用して電気泳動表示用シートを製造するには、各種のコーティング技術が適用される。電気泳動表示用マイクロカプセルを塗工する手段としては、ダイコーター、エアナイフコーターなどが知られている。
【0006】
従来、各種の塗工液を工業的に生産性よく塗工する技術として、一対のロール間に基材シートを挟み込んで走行させ、片側のロールに付着させた塗工液を基材シートに移行させるロールコーター技術が知られている。塗工ロールに微細な凹凸からなるグラビアパターンが形成されたグラビアロールを使用するグラビアコーターも知られている。グラビアコーターは、パターン上の塗工や印刷にも利用されている。
【0007】
電気泳動表示用マイクロカプセルは、基材シート上に実質的に単層かつ実質的に稠密的に担持させておくことが望まれる。マイクロカプセルが複数個重なり合ったり、マイクロカプセル同士の間に大きな隙間が存在したりすると、表示特性のバラツキや表示抜けが発生し、表示品質を大きく低下させる。
【0008】
さらに、電気泳動表示用シートとしては、基材シート表面の全体にマイクロカプセルが担持されたもののほか、一部にマイクロカプセルが存在せず、基材シート表面または基材シート表面に形成された電極や導電層が露出している部分を設けておくことがある。例えば、基材シート表面の一部だけに画像データや文字データを表示したい場合や、基材シートの一部を表示以外の目的に利用したい場合、電気泳動表示用シートに電圧を印加するための配線を接続する電極端子を設けたい場合などである。このように、基材シート表面の一部だけにマイクロカプセルを所定のパターン形状で担持させるには、何らかの工夫が必要である。
【0009】
例えば、特許文献1には、スロットダイコーティング法またはエアナイフコーティング法により、基材シート表面に電気泳動表示用マイクロカプセルを担持させる技術が開示されている。また、特許文献2には、フォトリソグラフィー技術を用いて、複数種類の電気泳動表示用マイクロカプセルを基板上の所定のパターン位置に担持させる技術が開示されている。この技術では、マイクロカプセル分散液にフォトレジスト材料を配合しておき、基板に塗工されたマイクロカプセル分散液の層をパターン形成する。
【特許文献1】特表2002−526812号公報
【特許文献2】特開2002−365668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記のような製造技術では、電気泳動表示用マイクロカプセルが所定のパターン形状で配置された高品質の電気泳動表示用シートを生産性良く製造することが困難であった。特に、電子ペーパーのような使用形態では、経済的に大量に安定した高品質の電気泳動表示用シートを製造することが要求されるが、このような工業的生産に適した技術が見当たらなかった。
【0011】
例えば、グラビアコーターは、厚膜の塗工が難しい。グラビアパターンの凹凸が大きなグラビアロールを用いると、基材シートに塗工されたマイクロカプセル塗工膜にグラビアパターンの跡が残存し、マイクロカプセルを均一に塗工することが難しい。また、グラビアロールが基材シートに強く接触するので、基材シート上に形成された導電層が傷つきやすい。
【0012】
特許文献1の技術で採用されているエアナイフコーティング法は、シート表面の一部だけにマイクロカプセルを担持させることができない。スロットダイコーティング法では、スロット形状を工夫することでパターン状にマイクロカプセルを担持させることも可能であるが、狭いスロットダイからマイクロカプセル塗工液を吐出させるには、吐出精度の高いポンプを用いる必要があり、このような吐出精度の高いポンプを通過するマイクロカプセルは損傷を受けやすい。マイクロカプセルが損傷を受けると、電気泳動表示装置として機能しない。
【0013】
特許文献2の技術は、電気泳動表示用マイクロカプセルをパターン状に配置するのに、フォトリソグラフィー技術を利用するので、微細なパターン形成に向いているが、複雑な装置設備や処理工程が必要であり、生産効率が悪く、製造コストが上昇する。
【0014】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、基材シート表面の一部だけに電気泳動表示用マイクロカプセルを正確なパターン形状で効率的に担持させることができる電気泳動表示用シートの製造方法、それにより得られる電気泳動表示用シートおよびその用途を提供することにある。
【0015】
上記問題とは別に、従来の製造技術では、得られた電気泳動表示用シートの取扱いが難しいという問題もある。
【0016】
上記したように、マイクロカプセル塗工液を塗工し、乾燥させた直後の電気泳動表示用シートを、そのままでロール状に巻回したり重ねておいたりすると、マイクロカプセル層が、隣接する電気泳動表示用シートの基材シート表面と接触して、マイクロカプセルが基材シートとの間でブロッキングを起こしやすい。電気泳動表示用シートを用いるために、巻回ロールから引き出そうとすると、基材シート裏面に付着したマイクロカプセルが損傷を受けたり脱落したりする。
【0017】
そこで、電気泳動表示用シートをロール状に巻回する際に、マイクロカプセル層の表面に離型剤を塗布しておくことが考えられた。また、離型剤が塗布されたシートを挟んで、電気泳動表示用シートを巻回することも考えられた。これによって、マイクロカプセルが基材シート裏面とブロッキングを起こすことが回避され、巻回ロールから電気泳動表示用シートを引き出すと、マイクロカプセルが基材シート裏面から容易に分離し、マイクロカプセルが損傷を受けることがなくなると考えられた。
【0018】
ところが、マイクロカプセル表面に離型剤が付着したままで、マイクロカプセル層が形成されている側の表面に別の部材を貼り合わせて用いようとすると、離型剤の作用により、充分な密着性または貼合せ強度が得られないという問題が発生する。
【0019】
それゆえ、本発明の別の課題は、得られた電気泳動表示用シートを、巻回ロールから引き出して用いても、マイクロカプセルが損傷を受けることがなく、電気泳動表示用シートを別の部材と良好に貼り合わせることができるなど、取扱い性に優れた電気泳動表示用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス・リバースコート方式の塗工装置を用いることにより、基材シート表面の一部だけに電気泳動表示用マイクロカプセルを正確なパターン形状で効率的に配置できること、ならびに、得られた電気泳動表示シートに再剥離フィルムを貼着することにより、表面保護だけでなく、製造時の取り扱い、保管や輸送などが容易になり、しかも表面が平滑化されることを見出して、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、基材フィルム上に導電層を形成してなる基材シートの前記導電層上に電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層を形成してなる電気泳動表示用シートを製造する方法であって、(a)基材フィルム上に導電層を形成してなる帯状の基材シートを連続走行させ、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス・リバースコート方式の塗工装置を用いて、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を前記基材シートに塗工する工程と、(b)前記工程(a)の後、前記塗工液を乾燥させて、前記導電層上に前記マイクロカプセルを含む層を形成し、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されている電気泳動表示用シートを得る工程と、を包含することを特徴とする。前記工程(a)において、平均粒子径20μm以上、200μm以下の電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を前記基材シートに塗工することが好ましい。前記工程(b)において、前記マイクロカプセルを含む層の厚さが、乾燥後の厚さで、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0022】
前記製造方法は、好ましくは、(c)前記工程(b)の後、前記マイクロカプセルを含む層に再剥離フィルムを貼着し、得られたシートを巻き取る工程をさらに包含する。
【0023】
本発明の電気泳動表示用シートは、基材フィルム上に導電層を形成してなる基材シートの前記導電層上に電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層を形成してなる電気泳動表示用シートであって、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されていることを特徴とする。前記マイクロカプセルを含む層が形成されている側の表面に再剥離フィルムが貼着されていることが好ましい。
【0024】
本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、前記データ表示部が前記電気泳動表示用シートで構成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の電子機器は、データ表示手段を備えている電子機器であって、前記データ表示手段が前記電気泳動表示装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、基材シート上に電気泳動表示用マイクロカプセルが所定のパターン形状で配置された電気泳動表示用シートを工業的規模で生産性高く製造することを可能にする。得られた本発明の電気泳動表示用シートは、基材シート上に形成された電気泳動表示用マイクロカプセルのパターン形状が正確であり、輪郭が明瞭ではみ出しがなく、高品質である。それゆえ、それを用いた電気泳動表示装置および電子機器は、表示特性のバラツキや表示抜けがなく、極めて優れた表示品質を有する。
【0027】
電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層に再剥離フィルムを貼着すれば、電気泳動表示用マイクロカプセルの損傷や脱落、電気泳動表示用分散液の漏出などを効果的に防止でき、製造時の取り扱いが容易になり、巻回ロールの形態で保管や輸送が可能になり、さらに、表面が非常に平滑化になるので、別の部材を貼着する際に貼り合わせが良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法、電気泳動表示用シートおよびその用途について、詳細にかつ具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの説明に限定されるものではなく、下記の例示以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜変更して実施することができ、いずれも本発明の範囲内に包含される。
【0029】
≪≪一般的な説明≫≫
本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、基材フィルム上に導電層を形成してなる基材シートの前記導電層上に電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層を形成してなる電気泳動表示用シートを製造する方法であって、(a)基材フィルム上に導電層を形成してなる帯状の基材シートを連続走行させ、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス方式であり、かつリバースコート方式(以下「キス・リバースコート方式」ということがある。)の塗工装置を用いて、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を前記基材シートに塗工する工程と、(b)前記工程(a)の後、前記塗工液を乾燥させて、前記導電層上に前記マイクロカプセルを含む層を形成し、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されている電気泳動表示用シートを得る工程と、を包含することを特徴とする。ここで、「電気泳動表示用マイクロカプセル」とは、カプセル殻体に電気泳動表示用分散液を内包してなるマイクロカプセルを意味し、「電気泳動表示分散液」とは、分散媒中に電気泳動粒子を含有する分散液を意味する。
【0030】
≪電気泳動粒子≫
本発明において、「電気泳動粒子」とは、分散媒中で電気泳動性を有する固体粒子、つまり分散媒中で正または負の電荷を有し、外部電場に応答して前記分散媒中を実質的に移動する固体粒子を意味する。電気泳動粒子として、分散媒中で電気泳動性を有しないか、あるいは電気泳動性が不充分な固体粒子を用いる場合には、必要に応じて、例えば、帯電性基を有するカップリング剤で処理するなど、従来公知の方法により、固体粒子に充分な電気泳動性を付与すればよい。
【0031】
電気泳動粒子を構成する固体粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、顔料粒子が用いられる。あるいは、染料で着色したポリマー粒子や顔料を含有させたポリマー粒子を用いてもよい。これらの固体粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの固体粒子のうち、顔料粒子が好ましい。
【0032】
電気泳動粒子を構成する固体粒子に用いる顔料粒子としては、例えば、白色系では、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、亜鉛華などの無機顔料;黄色系では、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、クロムイエロー、黄鉛などの無機顔料や、ファーストイエローなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルイエローなどの縮合アゾ化合物類、ベンズイミダゾロンアゾイエローなどのアゾ錯塩類、フラバンスイエローなどの縮合多環類、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、ニトロ化合物、ピグメントイエローなどの有機顔料;橙色系では、モリブデートオレンジなどの無機顔料や、ベンズイミダゾロンアゾオレンジなどのアゾ錯塩類、ペリノンオレンジなどの縮合多環類などの有機顔料;赤色系では、ベンガラ、カドミウムレッドなどの無機顔料や、マダレーキなどの染色レーキ類、レーキレッドなどの溶解性アゾ化合物類、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルスカーレッドなどの縮合アゾ化合物類、チオインジゴボルドーなどの縮合多環類、シンカシヤレッドY、ホスタパームレッドなどのキナクリドン顔料、パーマネントレッド、ファーストスローレッドなどのアゾ系顔料などの有機顔料;紫色系では、マンガンバイオレットなどの無機顔料や、ローダミンレーキなどの染色レーキ類、ジオキサジンバイオレットなどの縮合多環類などの有機顔料;青色系では、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの無機顔料や、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン類、インダンスレンブルーなどのインダンスレン類、アルカリブルーなどの有機顔料;緑色系では、エメラルドグリーン、クロームグリーン、酸化クロム、ビリジアンなどの無機顔料や、ニッケルアゾイエローなどのアゾ錯塩類、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのニトロソ化合物類、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン類などの有機顔料;黒色系では、カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒などの無機顔料や、アニリンブラックなどの有機顔料;などから構成される固体粒子が挙げられる。これらの固体粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの固体粒子のうち、酸化チタンなどの白色系の顔料粒子や、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色系の顔料粒子が好ましい。
【0033】
なお、酸化チタンを用いる場合、その種類は、特に限定されるものではなく、一般に白色系の顔料として用いられるものであれば、例えば、ルチル型またはアナターゼ型のいずれの酸化チタンでもよいが、光触媒活性による着色剤の退色などを考えた場合、光触媒活性が低いルチル型の酸化チタンが好ましく、さらに光触媒活性を低減させるために、Si処理、Al処理、Si−Al処理、Zn−Al処理などを施した酸化チタンであれば、より好ましい。
【0034】
電気泳動粒子を構成する固体粒子にポリマー粒子を用いる場合、その構成ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、ポリハロゲン化オレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、メラミン系ポリマー、尿素系ポリマーなどが挙げられる。ここで、「ポリマー」とは、ホモポリマーだけでなく、少量の共重合可能な他のモノマーを共重合させたコポリマーを含むものとする。これらのポリマー粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのポリマー粒子を着色する染料としては、例えば、下記の分散媒に添加し得る染料として列挙した下記の染料が挙げられる。また、これらのポリマー粒子に含有させる顔料としては、例えば、電気泳動粒子を構成する固体粒子に用いる顔料として列挙した上記のような顔料が挙げられる。
【0035】
電気泳動粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、体積平均粒子径で、その下限が好ましくは0.1μm、より好ましくは0.2μm、また、その上限が好ましくは5μm、より好ましくは3μmである。平均粒子径が0.1μm未満であると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、平均粒子径が5μmを超えると、粒子自体の着色度を必要以上に高くする必要があり、顔料などの使用量が増大したり、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度(表示応答性)が低下したりすることがある。
【0036】
電気泳動粒子を分散媒(すなわち、電気泳動表示装置に用いた場合に電気泳動粒子を分散させておく溶媒)に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位は、特に限定されるものではないが、例えば、絶対値で、好ましくは30mV以上、より好ましくは40mV以上、さらに好ましくは50mV以上である。ゼータ電位は、絶対値が大きい限り、正または負のいずれであってもよく、特に限定されるものではない。ゼータ電位の絶対値が30mV以上であると、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示応答性やコントラストなどの表示特性が大きく向上する。
【0037】
電気泳動粒子は、1粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正または負のいずれの電気泳動粒子であってもよく、2粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正の電気泳動粒子と、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が負の電気泳動粒子との組合せである。なお、2粒子系の電気泳動表示装置の場合、コントラストを高めるために、これらの電気泳動粒子は、光学的反射特性、例えば、色調が異なっている必要がある。
【0038】
電気泳動粒子は、電気泳動表示用分散液に用いる分散媒に、そのまま分散させてもよいが、その表面にカップリング剤を反応させたり、その表面をポリマーで被覆したりして、表面処理を行ってから分散させてもよい。この場合、電気泳動粒子を構成する固体粒子が顔料粒子であって、前記顔料粒子がカップリング剤またはポリマーで表面処理されていることが好ましい。なお、本発明では、このように表面処理された電気泳動粒子を単に電気泳動粒子と呼ぶことがある。
【0039】
表面処理された電気泳動粒子は、電気泳動粒子として単離してもよいし、電気泳動表示液に用いる分散媒と同じ種類の分散媒を表面処理に用いた場合には、表面処理した後に得られた分散液を、そのままで、あるいは適宜分散媒を添加して充分に混合するなどしてから、電気泳動表示用分散液の製造に用いればよい。なお、電気泳動粒子を単離するには、例えば、表面処理した後に得られた分散液を遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物だけを電気泳動粒子として回収すればよい。さらに、こうして得られた電気泳動粒子を分散媒に再分散し、遠心分離し、そして沈降物だけを回収するという操作を少なくとも1回、好ましくは複数回、より好ましくは3回またはそれ以上行って、電気泳動粒子を洗浄してもよい。遠心分離の条件は、使用する機器に応じて適宜設定すればよく、特に限定されることはないが、微細な粉体の分散液を遠心分離して沈降した粉体を回収する際に用いられる通常の条件、例えば、10,000Gで15〜30分間を用いればよい。
【0040】
<カップリング剤>
電気泳動粒子の表面に反応させるカップリング剤としては、帯電性基を有するカップリング剤や長鎖アルキル基を有するカップリング剤、あるいは、帯電性基と長鎖アルキル基を有するカップリング剤を用いることができる。帯電性基を有するカップリング剤を用いれば、電気泳動粒子の帯電性を高めて、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が容易になり、その応答速度(表示応答性)が高くなるという効果が得られ、長鎖アルキル基を有するカップリング剤を用いれば、電気泳動粒子の分散媒中への分散性が向上するという効果が得られる。
【0041】
帯電性基を有するカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、ジアミノシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、トリアミノプロピル−トリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシランヘキサメチルジシラザン、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
長鎖アルキル基を有するカップリング剤としては、例えば、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルドデシルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピネートなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカップリング剤のうち、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルドデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどが好ましい。
【0043】
帯電性基と長鎖アルキル基を有するカップリング剤としては、例えば、オクタデシルジメチル−3−(トリメトキシリル)プロピルアンモニウムクロライド、ドデカフルオロオクチルトリクロロシラン、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピル(ジオクチルスルフェート)チタネートなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカップリング剤のうち、オクタデシルジメチル−3−(トリメトキシリル)プロピルアンモニウムクロライド、ドデカフルオロオクチルトリクロロシランなどが好ましい。
【0044】
電気泳動粒子の表面にカップリング剤を反応させる方法としては、例えば、超音波浴槽内に分散媒と電気泳動粒子とカップリング剤を仕込み、攪拌しながら超音波分散する方法や、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインドミルなどの分散装置を用いて分散する方法、Vブレンダーなどで分散媒と電気泳動粒子を強制攪拌しながら、カップリング剤を乾燥空気や窒素ガスで噴霧する乾式法、分散媒に電気泳動粒子を適当に分散させてスラリー状にしたところにカップリング剤を添加する湿式法、予め加温した分散媒と電気泳動粒子を激しく攪拌しながらカップリング剤をスプレーするスプレー法などが挙げられる。
【0045】
<被覆ポリマー>
電気泳動粒子の表面をポリマーで被覆すれば、電気泳動粒子の分散媒中への分散性および耐湿性が向上するという効果が得られる。電気泳動粒子の表面を被覆するポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、ポリハロゲン化オレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、メラミン系ポリマー、尿素系ポリマーなどが挙げられる。ここで、「ポリマー」とは、ホモポリマーだけでなく、少量の共重合可能な他のモノマーを共重合させたコポリマーを含むものとする。これらのポリマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
特に、電気泳動粒子の表面をラジカル重合により形成されるポリマーで被覆する場合には、反応性基を有する重合性モノマー、帯電性基を有する重合性モノマー、長鎖アルキル基を有する重合性モノマー、その他の重合性モノマーを用いることができる。
【0047】
反応性基を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式:
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
【化3】

【0051】
【化4】

【0052】
【化5】

【0053】
などで示されるアジリジン基を有する重合性モノマー;2−ビニル−2−オキサゾリジン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリジン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリジン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリジン、2−ビニル−5−エチル−2−オキサゾリジン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリジン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリジン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリジン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリジン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリジン、2−イソプロペニル−4,5−ジメチル−2−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン基を有する重合性モノマー;アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド;N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシイソブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシシクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシイソブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキルアミド基を有する重合性モノマー;下記式:
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】


などで示されるエポキシ基を有する重合性モノマー;下記式:
【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】


などで示されるチオエポキシ基(エピスルフィド基)を有する重合性モノマー;下記式:
【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】


などで示されるイソシアナト基を有する重合性モノマー;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
帯電性基を有する重合性モノマーとしては、例えば、クロルスチレン、スチレンスルホン酸、アクリル酸、アクリル酸トリフルオロエチレン、アクリル酸ニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸トリフルオロエチレン、メタクリル酸ニトリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸tert−ブチルアミノエチル、アクリ酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸クロロヒドロキシプロピル、メタクリル酸クロロヒドロキシプロピル、アクリル酸トリクロロエチル、メタクリル酸トリクロロエチルなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
長鎖アルキル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸ノナデシル、アクリル酸アラキル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸ヘプタシル、アクリル酸ノナシル、アクリル酸ドテリアシル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸ノナデシル、メタクリル酸アラキル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ヘプタシル、メタクリル酸ノナシル、メタクリル酸ドデリアシルなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0067】
その他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどのスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
電気泳動粒子の表面をポリマーで被覆する方法としては、例えば、適当な溶媒に電気泳動粒子を構成する固体粒子を分散させた状態で、上記のような重合性モノマーを懸濁重合させる方法などが挙げられる。この場合、懸濁重合に先立って、固体粒子の表面を上記のようなカップリング剤で処理しておけば、固体粒子の表面で重合性モノマーを効率よく反応させることができるので好ましい。
【0069】
≪電気泳動表示用分散液≫
電気泳動粒子は、分散媒中に分散させることにより、電気泳動表示用分散液に用いられる。電気泳動表示用分散液は、1粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正または負のいずれの電気泳動粒子を含有していてもよく、2粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正の電気泳動粒子と、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が負の電気泳動粒子との組合せを含有している。
【0070】
分散液中における電気泳動粒子の濃度(分散液の質量に対する粒子の質量%)は、その下限が好ましくは1質量%、より好ましくは2質量%、さらに好ましくは5質量%であり、また、その上限が好ましくは25質量%、より好ましくは23質量%、さらに好ましくは20質量%である。電気泳動粒子の濃度が1質量%未満であると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の濃度が25質量%を超えると、分散液の粘度が高くなり、分散処理が困難になることや、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の凝集が生じて、その応答速度(表示応答性)が低下することがある。
【0071】
<分散媒>
電気泳動粒子を分散させる分散媒としては、電気泳動表示用分散液に一般的に用いられる従来公知の分散媒を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、有機溶媒が好ましい。
【0072】
分散媒として用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−デカンなどのパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤;二硫化炭素;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、沸点および引火点が高く、毒性もほとんどないことから、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼンなどの長鎖アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどが好ましい。
【0073】
分散媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、得られる分散液の全量に対して、その下限が好ましくは40質量%、より好ましくは50質量%、さらに好ましくは60質量%であり、また、その上限が好ましくは95質量%、より好ましくは92質量%、さらに好ましくは90質量%である。分散媒の使用量が、40質量%未満であると、分散液の粘度が高くなり、電気泳動性粒子の電気泳動性が低下することがある。逆に、分散媒の使用量が95質量%を超えると、電気泳動粒子の濃度が低くなり、電気泳動表示装置に用いた場合に、コントラストなどの表示特性が低下することがある。
【0074】
分散媒は、電気泳動表示用分散液を1粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、電気泳動粒子のコントラストを高めるために、例えば、染料などで着色することが好ましいが、2粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、逆に、光学的反射特性、例えば、色調が異なる少なくとも2種類の電気泳動粒子のコントラストを阻害しないように、無色透明であることが好ましい。
【0075】
<染料>
分散媒を着色する場合、着色に用いる染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、油溶性染料が好ましく、特に使いやすさの点で、アゾ染料およびアントラキノン染料がより好ましい。アゾ染料およびアントラキノン染料としては、例えば、黄色系染料として、オイルイエロー3G(オリエント化学工業(株)製)などのアゾ化合物類;橙色系染料として、ファーストオレンジG(BASF AG製)などのアゾ化合物類;青色系染料として、マクロレックスブルーRR(バイエル AG製)などのアントラキノン類;緑色系染料として、スミプラストグリーンG(住友化学(株)製)などのアントラキノン類;茶色系染料として、オイルブラウンGR(オリエント化学工業(株)製)などのアゾ化合物類;赤色系染料として、オイルレッド5303(有本化学工業(株)製)およびオイルレッド5B(オリエント化学工業(株)製)などのアゾ化合物類;紫色系染料として、オイルバイオレット#730(オリエント化学工業(株)製)などのアントラキノン類;黒色系染料として、スーダンブラックX60(BASF AG製)などのアゾ化合物や、アントラキノン系のマクロレックスブルーFR(バイエル AG製)とアゾ系のオイルレッドXO(関東化学(株)製)の混合物が挙げられる。これらの染料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0076】
染料の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、分散媒100質量部に対して、その下限が好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.5質量部、さらに好ましくは1質量部であり、また、その上限が10質量部である。染料の使用量が0.1質量部未満であると、分散媒の着色が不充分となり、電気泳動粒子に対する充分なコントラストが得られないことがある。逆に、染料の使用量が10質量部を超えると、必要以上に染料を用いることになり、製造コストが上昇することがある。
【0077】
電気泳動表示用分散液は、電気泳動粒子および分散媒に加えて、必要に応じて、他の成分を含有することができる。他の成分としては、例えば、分散剤、電荷制御剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0078】
<分散剤>
分散剤は、例えば、分散媒中における電気泳動粒子の分散を補助するために用いられる。分散媒に添加し得る分散剤としては、例えば、分散媒に溶解可能なアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、ブロック型ポリマーおよびグラフト型ポリマーなどの分散剤や、各種カップリング剤などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0079】
分散剤の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、分散媒100質量部に対して、その下限が好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.2質量部、さらに好ましくは0.5質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは8質量部、さらに好ましくは5質量部である。分散剤の使用量が0.1質量部未満であると、電気泳動粒子を分散させる効果が小さいことがある。逆に、分散剤の使用量が10質量部を超えると、電気泳動粒子を分散させる効果が飽和すると共に、必要以上に分散剤を用いることになり、製造コストが上昇することがある。
【0080】
<電荷制御剤>
電荷制御剤は、例えば、分散媒中における電気泳動粒子の電気泳動性を調整にするために用いられる。分散媒に添加し得る電荷制御剤としては、例えば、ボントロンE−81(オリエント化学(株)製)などのクロム錯体;ボントロンE−84(オリエント化学(株)製)などの亜鉛錯体;トンボロンE−88(オリエント化学(株)製)などのアルミニウム錯体;ボントロンE−89(オリエント化学(株)製)などのフェノール縮合物;ボントロンN−01(オリエント化学(株)製)などのアジン化合物;ボントロンS−34(オリエント化学(株)製)などのアゾクロム錯体;ボントロンX−11(オリエント化学(株)製)などの鉄錯体;などが挙げられる。これらの電荷制御剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0081】
電荷制御剤の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、分散媒100質量部に対して、その下限が好ましくは0.01質量部、より好ましくは0.05質量部、さらに好ましくは0.1質量部であり、また、その上限が好ましくは5.0質量部、より好ましくは3.0質量部、さらに好ましくは2.0質量部である。電荷制御剤の使用量が0.01質量部未満であると、電気泳動性を調整する効果が少ないことがある。逆に、電荷制御剤の使用量が5.0質量部を超えると、電気泳動性を調整する効果が飽和すると共に、必要以上に電荷制御剤を用いることになり、製造コストが上昇することがある。
【0082】
<粘度調整剤>
粘度調整剤は、例えば、分散媒中における電気泳動粒子の沈降を防止するために用いられる。分散媒に添加し得る粘度調整剤としては、ディスパロン101(楠本化成(株)製)などの植物油重合系化合物、ディスパロン3350(楠本化成(株)製)などのポリエーテル・エステル型界面活性剤、ディスパロン305(楠本化成(株)製)などの水添ひまし油系化合物、ディスパロン6500(楠本化成(株)製)などの脂肪族アマイドワックス系、ベントン760(エレメンティス・ピー・エル・シー製)の有機変性スメクタイトなどが挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0083】
粘度調整剤を用いる場合、その使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、分散媒100質量部に対して、その下限が好ましくは0.01質量部、より好ましくは0.05質量部、さらに好ましくは0.1質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは1質量部である。粘度調整剤の使用量が0.01質量部未満であると、粘度を調整する効果が少ないことがある。逆に、粘度調整剤の使用量が10質量部を超えると、分散液の粘度が高くなりすぎることがある。
【0084】
≪電気泳動表示用分散液の製造≫
電気泳動粒子と分散媒とを含有する電気泳動表示用分散液は、前記分散媒中に前記電気泳動粒子を分散させることにより製造される。
【0085】
電気泳動粒子は、単離して粉体状で用いてもよいし、所定の分散媒中に前記電気泳動粒子を含有する分散液として用いてもよい。後者の場合、分散液は、電気泳動粒子と分散媒とを含有する混合物を意味し、粘度の低い液体状から粘度の高いスラリー状までのいかなる形態であってもよい。かかる分散液に用いる分散媒は、電気泳動表示用分散液に用いる分散媒と同じ種類の分散媒であることが好ましい。
【0086】
分散媒中に電気泳動粒子を分散させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の微粒子分散技術を用いることができる。分散方法としては、例えば、電気泳動粒子を分散媒に添加した後、または、添加しながら、分散処理を行う方法;分散媒を電気泳動粒子に添加した後、または、添加しながら、分散処理を行う方法;電気泳動粒子と分散媒とを混合した後、または、混合しながら、分散処理を行う方法;分散媒の一部に電気泳動粒子を分散させた分散液に、残りの分散媒を添加した後、または、添加しながら、さらに分散処理を行う方法;などが挙げられる。なお、分散処理は、従来公知のいかなる手段を用いて行ってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、超音波ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインドミル、Vブレンダーなどを用いることができる。
【0087】
また、分散処理と同時に電気泳動粒子をカップリング剤で処理する場合には、例えば、Vブレンダーなどで分散媒および電気泳動粒子などを強制攪拌しながら、カップリング剤を乾燥空気や窒素ガスで噴霧する乾式法、電気泳動粒子を分散媒に適当に分散させてスラリー状になったところにカップリング剤を添加する湿式法、予め加温した分散媒および電気泳動粒子などを激しく攪拌しながらカップリング剤をスプレーするスプレー法などを用いることができる。
【0088】
≪電気泳動表示用マイクロカプセル≫
電気泳動表示用分散液は、カプセル殻体に内包させることにより、電気泳動表示用マイクロカプセルに用いられる。電気泳動表示用マイクロカプセル(以下「マイクロカプセル」ということがある。)は、カプセル殻体に電気泳動表示用分散液を内包してなる。マイクロカプセルは、1粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正または負のいずれかの電気泳動粒子を含有する電気泳動表示用分散液を内包しており、2粒子系の電気泳動表示装置に用いる場合には、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正の電気泳動粒子と、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が負の電気泳動粒子との組合せを含有する電気泳動表示用分散液を内包している。なお、電気泳動表示用分散液は、カプセル殻体に内包された以降も、製造時の分散状態を維持していることが好ましいが、必ずしも製造時の分散状態と全く同じ分散状態を保持している必要はない。
【0089】
マイクロカプセルの形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球形などの粒子状であることが好ましい。マイクロカプセルが粒子状である場合、その平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、体積平均粒子径で、その下限が好ましくは10μm、より好ましくは15μmであり、さらに好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは300μm、より好ましくは250μm、さらに好ましくは200μmである。平均粒子径が10μm未満であると、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示部分において充分な表示濃度が得られず、表示特性が低下することがある。逆に、平均粒子径が300μmを超えると、マイクロカプセルの機械的強度が不充分となり、マイクロカプセルの割れが多くなることがあり、また、電気泳動表示装置に用いた場合に、マイクロカプセル内に封入した分散液中の電気泳動粒子の電気泳動特性が充分に発揮されず、表示のための駆動電圧も高くなることがある。
【0090】
マイクロカプセルの粒度分布は、特に限定されるものではないが、例えば、最大ピーク粒子径(マイクロカプセルの体積を基準とした粒子径頻度分布における最大ピークに対応する粒子径)を中心として、その前後、前記最大ピーク粒子径の40%に相当する粒子径長さの粒子径範囲に、好ましくは80体積%以上、より好ましくは85体積%以上のマイクロカプセルが存在する粒径分布である。前記粒子径範囲に80体積%未満のマイクロカプセルが存在するような粒度分布であると、マイクロカプセルを分散させた塗工液を調製して、基材シートに塗工した場合に、マイクロカプセルが一層に塗布されずに、部分的に二層以上の多層となることがある。
【0091】
<カプセル殻体>
マイクロカプセルを構成するカプセル殻体は、従来公知のマイクロカプセルにおけるカプセル殻体と同様の材料を用いて形成することができる。例えば、マイクロカプセルをコアセルベーション法で製造する場合は、ゼラチンなどの等電点を有する化合物やポリエチレンイミンなどのカチオン性化合物と、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、デンプンのフタル酸エステル、ポリアクリル酸などのアニオン性化合物との組合せが好ましい。マイクロカプセルをIn−situ重合法で製造する場合は、メラミン−ホルマリン樹脂(メラミン−ホルマリンプレポリマー)、ラジカル重合性モノマーなどが好ましい。マイクロカプセルを界面重合法で製造する場合は、ポリアミン、グリコール、多価フェノールなどの親水性モノマーと、多塩基酸ハライド、多価イソシアナートなどの疎水性モノマーとの組合せが好ましく、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素などからなるカプセル殻体が形成される。
【0092】
カプセル殻体を製造する際に架橋剤として多価アミンを用いれば、耐熱保存性などに優れたカプセル殻体を有するマイクロカプセルを得ることができる。多価アミンの使用量は、カプセル殻体に必要とされる所望の物性が極端に損なわれない限り、特に限定されるものではない。多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−プロピレンジアミン、へキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン;ポリ(1〜5)アルキレン(C〜C)ポリアミン・アルキレン(C〜C18)オキシド付加物などの脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシリレンジアミンなどの芳香族多価アミン;ピペラジンなどの脂環式多価アミン;3,9−ビス−アミノプロピル2,4、8,10−テトラオキサスピロ−[5.5]ウンデカンなどの複素環式ジアミン;などが挙げられる。これらの多価アミンは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
マイクロカプセルを構成するカプセル殻体の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは0.1μmであり、また、その上限が好ましくは5μm、より好ましくは4μm、さらに好ましくは3μmである。カプセル殻体の厚さが0.1μm未満であると、マイクロカプセルの機械的強度が不充分となり、マイクロカプセルの割れが多くなることがある。逆に、カプセル殻体の厚さが5μmを超えると、マイクロカプセルの透明性が低下して、コントラストが低下することがあり、また、マイクロカプセルの柔軟性が低下して、基材シートに対する密着性が不充分となることがある。
【0094】
≪電気泳動表示用マイクロカプセルの製造方法≫
電気泳動表示用マイクロカプセルは、分散媒中に電気泳動粒子を含有する電気泳動表示用分散液を用いること以外は、従来公知のマイクロカプセル製造法により得ることができる。
【0095】
マイクロカプセル製造法としては、例えば、コアセルベーション法(相分離法)、液中乾燥法、融解分解冷却法、スプレードライング法、パンコーティング法、気中懸濁液被覆法、粉床法などのいわゆる界面沈積法や、界面重合法、In−situ重合法、液中硬化被膜(被覆)法(オリフィス法)、界面反応法(無機化学反応法)などのいわゆる界面反応法などが挙げられる。これらの製造法のうち、コアセルベーション法、In−situ重合法、界面重合法、液中乾燥法、融解分解冷却法が好ましい。これらの製造法におけるマイクロカプセル化工程においては、カプセル殻体に内包される芯物質として、分散媒中に電気泳動粒子を含有する電気泳動表示用分散液が用いられる。このような方法を用いれば、カプセル殻体に前記分散液を内包してなるマイクロカプセルを極めて容易に得ることができる。
【0096】
マイクロカプセル化工程を行う際には、通常、液状物質(この場合、電気泳動表示用分散液)を芯物質としての状態(例えば、液滴状の形態)にする必要があるが、その方法は、特に限定されるものではなく、気相中で噴霧や滴下などを行ったり、オリフィスなどを用いたりして液滴状にしてもよいし、水系媒体または非水系媒体中に分散させることにより液滴状にしてもよい。
【0097】
水系媒体としては、例えば、水や、水と親水性溶剤(例えば、アルコール、ケトン、エステル、グリコールなど)の混合液、水に水溶性高分子(例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ゼラチン、アラビアゴムなど)を溶解させた溶液、水に界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤など)を添加した溶液、あるいは、これらの水系媒体を混合した溶液などが挙げられる。非水系媒体としては、電気泳動表示用分散液に用いた分散媒と実質的に相溶しない有機溶媒が挙げられる。これらの媒体のうち、水系媒体が好ましい。
【0098】
電気泳動表示用分散液を分散させる量は、特に限定されるものではないが、例えば、水系媒体または非水系媒体100質量部に対して、その下限が好ましくは20質量部、より好ましくは30質量部であり、また、その上限が好ましくは200質量部、より好ましくは150質量部である。電気泳動表示用分散液の使用量が、20質量部未満であると、粒度分布の広いマイクロカプセルとなり、生産効率の低下を招くことがある。逆に、電気泳動表示用分散液の使用量が200質量部を超えると、逆懸濁液となり、マイクロカプセルを製造できなくなることがある。
【0099】
カプセル殻体原料の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、電気泳動表示用分散液100質量部に対して、その下限が好ましくは100質量部、より好ましくは500質量部であり、また、その上限が好ましくは5,000質量部、より好ましくは3,000質量部である。カプセル殻体原料の使用量が100質量部未満または5,000質量部であると、所望の厚さを有するカプセル殻体が得られないことがある。
【0100】
マイクロカプセル化工程を行う際には、電気泳動表示用分散液やカプセル殻体原料などの他にも、また、必要に応じて用いる水系媒体または非水系媒体の他にも、適宜他の成分を用いることができる。
【0101】
通常、マイクロカプセル化工程によりマイクロカプセルを製造した後、必要に応じて、マイクロカプセルを濾過などにより単離する。例えば、電気泳動表示用分散液を水系媒体などに分散させてマイクロカプセル化工程を行った場合は、マイクロカプセル製造後、好ましくは、所望の平均粒子径および粒度分布になるようにマイクロカプセルを湿式分級してから、吸引濾過や自然濾過により、マイクロカプセルを水系媒体などから分離する。また、不純物を除去し、製品の品質を向上させるために、得られたマイクロカプセルを洗浄することが好ましい。
【0102】
マクロカプセルを湿式分級する際には、マイクロカプセル化工程で得られた調製液、すなわち水系媒体などにマイクロカプセルを含有する調製液を、そのままで、あるいは、適当な水系媒体などで希釈した後、分級処理し、前記調製液に含まれるマイクロカプセルが所望の平均粒子径や粒径分布を有するようにする。分級処理は、例えば、ふるい式(フィルター式)、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いた方法や装置により行うことができる。平均粒子径が比較的大きいマイクロカプセルは、ふるい式が有効である。
【0103】
≪電気泳動表示用シート≫
電気泳動表示用マイクロカプセルは、基材シート上に担持させることにより、電気泳動表示用シートに用いられる。本発明の電気泳動表示用シートは、基材フィルム上に導電層を形成してなる基材シートの前記導電層上に電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層(以下「マイクロカプセル層」ということがある。)を形成してなる電気泳動表示用シートであって、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されていることを特徴とする。前記電気泳動表示用シートを電気泳動表示装置に用いた場合、前記導電層は、一方の電極として機能する。
【0104】
マイクロカプセルは、基材シート上に、実質的に単層かつ実質的に稠密的に担持させることができる。ここで、「実質的に単層」とは、基材シートの厚さ方向には、1個のマイクロカプセルが担持され、複数個が重なり合った状態になっていないことを意味する。ただし、目的とする機能に支障がなければ、隣り合うマイクロカプセルの一部がわずかに重なることは構わない。他方、「実質的に稠密的」とは、基材シートの面方向には、マイクロカプセル同士が隙間なく最密充填状態で担持されていることを意味する。このとき、マイクロカプセルの平面形状によっては、隣接するマイクロカプセルとの間に局部的な空間が生じることは構わない。また、目的とする機能に支障がなければ、厳密な最密充填状態でなくてもよい場合もある。
【0105】
マイクロカプセル層の厚さは、マイクロカプセルの平均粒子径に応じて変化するので、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは10μm、より好ましくは15μm、さらに好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは200μm、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μmである。厚さが10μm未満であると、電気泳動表示装置に用いた場合、表示部分において充分な表示濃度が得られず、その他の非表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、厚さが300μmを超えると、電気泳動表示装置に用いた場合、マイクロカプセル内に封入した分散液中の電気泳動粒子が充分な電気泳動性を発揮できず、コントラストなどの表示特性が低下したり、表示用の駆動電圧が高くなったりすることがある。
【0106】
マイクロカプセル層において、マイクロカプセルは、塗工液中における形状と同じ形状を有する場合もあるし、塗工後の乾燥工程を経て、変形している場合もある。マイクロカプセルは、例えば、球状である場合や、球が少し変形した形状である場合がある。隣接するマイクロカプセル同士の接触部分や、マイクロカプセルと基材シートとの接触部分などにおいて、マイクロカプセルが押し潰されて変形し、面で接触していてもよい。マイクロカプセルは、完全に単層で均一に配置されている場合のほか、目的とする機能に支障がなければ、マイクロカプセルが部分的に重なっていたり複層を形成していたりしても構わない。また、用途や目的によっては、塗工装置や塗工条件を適宜選択して、マイクロカプセルを単層または複層に担持させたり、離散的または稠密的に担持させたりすることができる。
【0107】
電気泳動表示用シートは、別のシート材料、例えば、再剥離フィルム、電極シート、表面保護シート、着色シートなどを貼着したり、表面に別の塗工材料を塗工したりすることができる。また、電気泳動表示用シートを、別の材料、例えば、シート状や板状の材料に張り付けて用いることができる。さらに、電気泳動表示用シートを所望の大きさや形状に加工して用いることもできる。
【0108】
<基材シート>
基材シートは、基材フィルム上に導電層を形成してなるものであって、前記導電層上にマイクロカプセルを担持する機能を果たす。基材シートとしては、透明性と導電性とを備えていることが好ましく、例えば、透明なプラスチックフィルムの表面に導電層を形成してなる透明導電性フィルムが用いられる。基材シートは、例えば、透過率が80%以上、表面電気抵抗が1,000Ω以下であることが好ましい。透過率が80%未満であると、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。また、表面電気抵抗が1,000Ωを超えると、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度(表示応答性)が低下することがある。
【0109】
ただし、電気泳動表示装置を製造する際に、電気泳動表示用シートに貼着する別の基材シートが透明であれば、前記電気泳動表示用シートに用いる基材シートは、必ずしも透明である必要はない。
【0110】
基材シートを構成する基材フィルムの材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0111】
基材フィルム上に形成する導電層の材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、金属微粒子、金属箔などの無機導電性物質、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンなどの有機導電性物質などが挙げられる。
【0112】
基材フィルム上に導電層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリングなどのドライコーティング法、導電性物質の分散液や溶液を塗布するウェットコーティング法などが挙げられる。
【0113】
基材シートの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは20μm以上、200μm以下である。厚さが20μm未満であると、シワが発生しやすくなることがある。逆に、厚さが200μmを超えると、ロール状に巻回したときなどに巻き径が大きくなって取り扱いが困難になり、使用後の廃棄物量が増加することがある。
【0114】
<接着層>
基材シートには、マクロカプセル層を形成する導電層の表面に接着層を設けてもよい。基材シートに接着層を設ければ、マイクロカプセルを基材シートに効率的に担持させることができる。また、マイクロカプセルを実質的に単層かつ実質的に稠密的に担持させることができ、基材シートに担持されたマイクロカプセルが容易に脱落することがない。
【0115】
接着層の材料としては、マイクロカプセルを構成するカプセル殻体の材料に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オキサゾリン系樹脂、PVP系樹脂、ポリオキシアルキレン系樹脂、セルロース系樹脂などの水溶性もしくは水分散性またはエマルション系の樹脂を用いることができる。接着層の形成は、従来公知のコーティング技術を用いて行うことができる。
【0116】
≪電気泳動表示用シートの製造方法≫
本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を基材シートに塗工して乾燥させることにより、前記基材シート上に前記マイクロカプセルを含む層を形成する方法である。さらに詳しくは、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、(a)基材フィルム上に導電層を形成してなる帯状の基材シートを連続走行させ、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス・リバースコート方式の塗工装置を用いて、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を前記基材シートに塗工する工程と、(b)前記工程(a)の後、前記塗工液を乾燥させて、前記導電層上に前記マイクロカプセルを含む層を形成し、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されている電気泳動表示用シートを得る工程と、を包含する。
【0117】
<塗工液>
マイクロカプセルを分散させる分散媒としては、水性媒体が好ましく、例えば、マイクロカプセルを製造する際に用いる水性媒体として列挙した上記のような水性媒体が挙げられる。
【0118】
マイクロカプセルの形状や平均粒子径は、上記のとおりであるが、工程(a)においては、平均粒子径20μm以上、200μm以下のマイクロカプセルを含有する塗工液を基材シートに塗工することが好ましい。
【0119】
塗工液中におけるマイクロカプセルの含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは25質量%、より好ましくは30質量%、さらに好ましくは35質量%であり、また、その上限が好ましくは70質量%、より好ましくは60質量%、さらに好ましくは50質量%である。マイクロカプセルの含有量が25質量%未満であると、塗工膜にマイクロカプセルが存在しない隙間が生じるので、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示欠陥の原因になることがある。逆に、マイクロカプセルの含有量が70質量%を超えると、マイクロカプセルが凝集しやすく、塗工液の流動性が低下するので、塗工が困難になることがある。
【0120】
塗工液の粘度は、特に限定されるものではないが、例えば、クレブス粘度計の測定値で、好ましくは53KU以上、100KU以下である。塗工液の粘度が低すぎると、マイクロカプセルが分離したり、塗工液の流動性が高く、塗工液を所望の厚さに塗工するのが困難になったりすることがある。逆に、塗工液の粘度が高すぎると、塗工液の流動性が低く、塗工液を所望の厚さに塗工するのが困難になることがある。
【0121】
塗工液には、マイクロカプセルの他に、必要に応じて、分散剤、粘度調整剤、保存剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。マイクロカプセルと基材シートとの接合力が不足する場合には、バインダーを用いることができる。塗工液に添加剤やバインダーを配合する場合、その使用量は、基材シートへの塗工を阻害せず、かつ、添加剤を用いる効果が得られる限り、特に限定されるものではない。
【0122】
<バインダー>
塗工液に配合するバインダーとしては、例えば、有機系バインダーが好ましい。有機系バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、フッ素樹脂系、アルキド樹脂系、アミノ樹脂系、ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、シリコーン樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系、キシレン樹脂系、ケトン樹脂系、ロジン変性マレイン酸樹脂系、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂などの合成樹脂系バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどの天然または合成のゴム系バインダー;セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラックなどの天然樹脂系バインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性の高分子系バインダーなどが挙げられる。なお、合成樹脂系バインダーとしては、可塑性(熱可塑性)のバインダーであってもよいし、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系などの硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用などを含む)のバインダーであってもよい。これらの有機系バインダーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0123】
バインダーの形態としては、例えば、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型、分散型(水/有機溶剤などの任意の溶剤)などが挙げられる。
【0124】
水溶性型のバインダーとしては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂などが挙げられる。
【0125】
エマルション型のバインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン、酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルションなどが挙げられる。
【0126】
<分散剤>
塗工液に配合する分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩;スチレン−マレイン酸共重合体塩;ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物;長鎖アルキル有機スルホン酸塩;ポリリン酸塩;長鎖アルキルアミン塩;ポリアルキレンオキシド;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ペルフルオロアルキル基含有塩、ペルフルオロアルキル基含有エステル、ペルフルオロアルキル基含有オリゴマーなどのフッ素系界面活性剤;アセチレンジオール系やアセチレングリコール系の非イオン性界面活性剤;などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0127】
塗工液に配合する粘度調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系粘度調整剤;ポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ可溶性エマルション、会合型アルカリ可溶性エマルションなどのポリカルボン酸系粘度調整剤;ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、会合型ポリエチレングリコール誘導体などのポリエチレングリコール系粘度調整剤;ポリビニルアルコールなどのその他の水溶性高分子系粘度調整剤;モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトなどのスメクタイト系の粘度調整剤;などが挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0128】
<保存剤>
塗工液に配合する保存剤としては、例えば、有機窒素硫黄化合物、有機窒素ハロゲン化合物、クロルヘキシジン塩、クレゾール系化合物、ブロム系化合物、アルデヒド系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、ハロゲン化環状硫黄化合物、有機ヒ素化合物、有機銅化合物、塩化イソチアゾロン、イソチアゾロンなどが挙げられる。これらの保存剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0129】
<消泡剤>
塗工液に配合する消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、プロルニック型消泡剤、鉱物油系消泡剤、ポリエステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤などが挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0130】
<塗工装置>
マイクロカプセルを分散させた塗工液を基材シートに塗工する装置としては、通常のマイクロカプセルの塗工技術に利用されている塗工装置を用いることができる。基本的な塗工方式として、キスコート方式を採用する塗工装置が好ましい。
【0131】
キスコート方式では、連続走行する基材シートに対して、塗工液が付着した塗工ロールを回転させながら接触させ、塗工ロールから基材シートに塗工液を移行させて、塗工液を基材シートに塗工する。このとき、基材シートが塗工ロールと接触する位置では、基材シートのうち塗工ロールの接触面と反対側の面が開放されており、通常のロールコーターやグラビアコーターなどにおける加圧ロールまたはバックアップロールが存在しない。
【0132】
基材シートは、塗工ロールに軽く押し当てる程度の圧力で接触させられている。具体的には、基材シートに対して、塗工ロールとの接触位置の上流側および下流側にガイドロールを配置しておく。ガイドロール同士の接線方向に沿って直線的に走行する基材シートが、塗工ロールで少し撓ませられるように変形する。基材シートの撓み変形による圧力が、基材シートと塗工ロールの間に作用する。
【0133】
キスコート方式の塗工装置では、基材シートの走行方向と塗工ロールの回転方向を、同じ方向に設定することもできるし、逆方向に設定することもできる。同じ方向で速度差をつけておくこともできる。
【0134】
塗工ロールの回転方向を、基材シートの走行方向に対して逆方向に設定しておく塗工技術をリバースコート方式と呼ぶ。リバースコート方式では、塗工ロールに付着した塗工液は、基材シートとの接点で基材シートに転写される。この接点では、基材シートと塗工ロールとは軽く接しているだけなので、マイクロカプセルに過大な圧力が加わることはない。また、接点においては、塗工液が基材シート塗工ロールの両方から引っ張られて適度な剪断応力が加わるため、塗工液が基材シートに均一に転写される。
【0135】
塗工ロールの回転方向が基材シートの走行方向と同じ場合は、リバースコート方式ではないが、キスコート方式である限り、前記した塗工ロールと基材シートとの接点で、基材シートと塗工ロールとは軽く接しているだけなので、マイクロカプセルに過大な圧力が加わることはない。
【0136】
塗工ロールの周速と基材シートの走行速度との間に適切な差をつけておくと、その速度差によって、塗工液が基材シート上で引き伸ばされて薄く均一な塗工膜が形成されやすくなる。
【0137】
塗工速度、すなわち基材シートの走行速度は、塗工後の乾燥条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.1m/min以上、10m/min以下に設定される。走行速度が0.1m/min未満であると、生産性が悪くなることがある。逆に、走行速度が10m/minを超えると、塗工液が乾燥不良となり、ブロッキングを起こしやすくなることがある。
【0138】
基材シートに塗工された塗工液の厚さは、塗工液に含まれるマイクロカプセルの平均粒子径などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは、湿潤状態で10μm以上、300μm以下、乾燥後の厚さで10μm以上、200μm以下、より好ましくは、乾燥後の厚さで10μm以上、100μm以下に設定される。それゆえ、工程(b)においては、マイクロカプセルを含む層の厚さが、乾燥後の厚さで、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0139】
キスコート方式の塗工装置では、塗工ロールを塗工作業中に基材シートに対して近づけたり離したり移動できるように配置しておける。このようにして塗工ロールと基材シートの間隔を調整すれば、塗工厚さを正確に調整することができる。塗工ロールを基材シートから完全に離した状態にすると、基材シートの長さ方向に断続的に塗工液を塗工することができる。かくして、マイクロカプセル担持部が長さ方向に断続的に配置された電気泳動表示用シートを製造することが可能になる。
【0140】
<マイクログラビアコーター>
マイクログラビアコーターは、キス方式であり、かつ、リバース方式の塗工装置として知られている。具体的には、特公平5−53553号公報に開示された塗工技術を基本にしている。
【0141】
塗工ロールには、外周面にグラビアパターンを有する。グラビアパターンは、微細な凹凸からなるパターン状の模様であり、グラビアパターンに付着した塗工液は、グラビアパターンの凹凸で確実に支持された状態で移送され、基材シートに塗工される。塗工液中のマイクロカプセルは、グラビアパターンの凹凸によって、かきあげられたり移送されたりしやすくなる。また、塗工液の液体成分だけが塗工ロールの表面に付着してしまうことを防止できる。
【0142】
グラビアパターンの大きさや形状は、通常の塗料やインクの塗工に利用されているマイクログラビアコーターで採用されている条件の中から、マイクロカプセルの担持に適した条件が採用できる。例えば、グラビアパターンの深度やピッチ間隔は、塗工液に分散させたマイクロカプセルの平均粒子径に応じて設定することができる。パターン形状としては、塗工ロールの軸方向に対して傾斜した傾斜線を、塗工ロールの周面に螺旋状に並べて配置することができる。あるいは、互いに交差する傾斜線で格子状のグラビアパターンを形成することもできる。その他、通常のマイクログラビアロールに採用されているグラビアパターンを採用することができる。
【0143】
平均粒子径が比較的大きいマイクロカプセルを含む塗工液を塗工するには、グラビアパターンの溝を深く大きく設定しておくことが有効である。
【0144】
グラビアパターンのセル容積は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは50mL/m以上、200mL/m以下に設定される。セル容積が小さすぎると、平均粒子径が大きいマイクロカプセルを担持させるのが困難になることがある。逆に、セル容積が大きすぎると、塗工膜にグラビアパターンの凹凸が転写されてしまい、マイクロカプセルを均一に配置するのが困難になることがある。
【0145】
塗工ロールの外径は、一般的なグラビアコーターにおける塗工ロールの外径よりもかなり小さく設定される。塗工液の組成や塗工条件に応じて変化するが、例えば、直径20mm以上、60mm以下であることが好ましい。
【0146】
塗工ロールの回転は、基材シートの走行方向とは逆方向であり、その回転数は、基材シートの走行速度など他の条件に応じて変化する。基材シートの走行速度に対する塗工ロールの回転数、すなわち周速度を適切に設定することにより、基材シートにマイクロカプセルを均一に担持させることができる。好ましくは、基材シートの走行速度に対する塗工ロールの周速度の比率、すなわち速度比を2倍以上、20倍以下に設定する。速度比が小さすぎると、塗工液の塗工量が不足したり、基材シートに担持されたマイクロカプセルの均一性が低下したりすることがある。速度比が大きすぎると、塗工ロールの回転が速くなりすぎて塗工ロールから基材シートへの塗工液の転写効率が低下し、塗工量が不足したり、塗工液の貯留器から塗工液が溢れたりすることがある。
【0147】
マイクログラビアコーターには、塗工ロールが基材シートと接触する手前側にドクターブレード装置を設けておくことができる。ドクターブレード装置は、塗工ロールに付着した塗工液の量を調整して、基材シートに適切な量の塗工液を供給するのに有効である。
【0148】
<塗工膜の乾燥>
基材シートに塗工された塗工液を乾燥させることにより、マイクロカプセルが基材シートに担持される。塗工液にバインダーが配合されている場合には、バインダーが硬化してマイクロカプセルを基材シートに接合する機能を果たす。
【0149】
乾燥方法としては、従来公知の乾燥技術を用いればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥または強制乾燥が挙げられる。強制乾燥の手段としては、例えば、熱風や遠赤外線などの従来公知の乾燥手段を用いることができる。乾燥条件は、塗工液の粘度や塗工膜の面積などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、乾燥温度は、その下限が好ましくは15℃、より好ましくは20℃であり、また、その上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃である。乾燥時間は、その下限が好ましくは1分間、より好ましくは5分間であり、また、その上限が好ましくは60分間、より好ましくは45分間である。
【0150】
塗工液にバインダーが配合されている場合、塗工液を硬化させる方法としては、塗工液に含まれるバインダーの成分に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、分散媒の蒸発による硬化方法、加熱による硬化方法、紫外線などの放射線照射による硬化方法などが挙げられる。
【0151】
<再剥離フィルムの貼着>
本発明の電気泳動表示用シートは、マイクロカプセル層が形成されている側の表面に再剥離フィルムを貼着することにより、基材シートとマイクロカプセル層と再剥離フィルムとが積層された電気泳動表示用シートとなる。
【0152】
再剥離フィルムは、電気泳動表示用シートの表面に貼着した際に、比較的弱い付着性を示して電気泳動表示用シートと一体化するが、力を加えれば比較的容易に剥離することができる部材である。
【0153】
再剥離フィルムを貼着しておけば、電気泳動表示用シートを重ねる際に、担持されたマイクロカプセルが、隣接する電気泳動表示用シートの裏面に付着してブロッキングを起こすことが防止できる。再剥離フィルムには、マイクロカプセルの表面を被覆してマイクロカプセルを保護する機能もある。また、電気泳動表示用シートを巻回して巻回ロールの状態で運搬したり取り扱ったりするのが容易になる。
【0154】
再剥離フィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、剥離性に優れたポリオレフィン系フィルムが好適であり、具体的には、例えば、微粘着ポリエチレン系フィルムや、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムなどのポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。微粘着ポリエチレン系フィルムとして、粘着性物質を練り込んだ単層構造のフィルムや、微粘着性物質をコーティングした積層構造のフィルムを用いることができる。
【0155】
再剥離フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは40μm、より好ましくは50μmであり、また、その上限が好ましくは120μm、より好ましくは100μmである。再剥離フィルムが薄すぎると、シワが発生しやすくなることがある。再剥離フィルムが厚すぎると、ロール状に巻回したときなどに巻き径が大きくなって取扱いが困難になり、使用後の廃棄物量が増加することがある。
【0156】
電気泳動表示用シートに再剥離フィルムを貼着するには、電気泳動表示用シートと再剥離フィルムとを単に重ねて巻き取ることにより、互いに貼着することができる。巻き取る前に、加圧したり加熱したりすることにより、電気泳動表示用シートと再剥離フィルムとの一体性を高めることもできる。それゆえ、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、好ましくは、工程(b)の後、マイクロカプセルを含む層に再剥離フィルムを貼着し、得られたシートを巻き取る工程を、工程(c)として、さらに包含する。
【0157】
再剥離フィルムを貼着する際に圧力を加えれば、再剥離フィルムを強く貼着できるので有効であるが、圧力が高すぎると、マイクロカプセルの変形や損傷が発生したり、再剥離フィルムを剥離するのが困難になったりすることがある。それゆえ、貼着時に加えてもよい圧力は、好ましくは9.8N/cm(1kgf/cm)以上、196N/cm(20kgf/cm)以下である。
【0158】
<巻回ロール>
再剥離フィルムを貼着した電気泳動表示用シートは、ロールに巻き取って、巻回ロールの形態で、保管や輸送などの取扱いを行うことができる。
【0159】
巻回作業は、通常のシート材料における巻回作業と同様の装置や作業条件を用いて行うことができる。巻回することにより、電気泳動表示用シートと再剥離フィルムとの間に、ある程度の巻き圧が加わった状態にすることができる。この巻き圧は、貼着時に加えてもよい圧力と同程度の圧力に設定することができる。巻き圧が加わった状態で保持された巻回ロールは、マイクロカプセル層の表面が平滑化するという効果が得られる。電気泳動表示用シートの使用時に、マイクロカプセル層と別の部材とを貼り合わせる際に、接着面積が増大するという効果も得られる。
【0160】
≪電気泳動表示装置≫
本発明の電気泳動表示用シートは、例えば、データ表示部の構成要素として、電気泳動表示装置に用いられる。本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、前記データ表示部が本発明の電気泳動表示用シートで構成されていることを特徴とする。本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部が本発明の電気泳動表示用シートで構成されていること以外は、従来公知の電気泳動表示装置と同様である。それゆえ、データ表示部以外の部分、例えば、駆動回路や電源回路などは、従来公知の電気泳動表示装置と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の電気泳動表示装置は、従来公知の電気泳動表示装置のデータ表示部を本発明の電気泳動表示用シートで構成することにより得られる。なお、本発明においては、駆動回路や電源回路などを外部回路に含めることにより、データ表示部だけを電気泳動表示装置ということがある。
【0161】
本発明の電気泳動表示装置は、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正または負のいずれかの電気泳動粒子を用いた場合には、1粒子系の電気泳動表示装置であり、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が正の電気泳動粒子と、分散媒に分散させた場合に分散液が示すゼータ電位が負の電気泳動粒子との組合せを用いた場合には、2粒子系の電気泳動表示装置である。
【0162】
本発明の電気泳動表示装置を製造するにあたり、例えば、電気泳動表示用シートが巻回ロールの形態であれば、これを巻解し、所定の大きさに切断して、そのまま、あるいは再剥離フィルムが貼着されていれば、これを剥離して、基材フィルム上に導電層を形成してなる別の基材シートを、例えば、ラミネート技術などにより貼着すればよい。この場合、別の基材シートの導電層がマイクロカプセル層と対向するようにすれば、電気泳動表示装置において、別の基材シートの導電層が他方の電極として機能する。また、別の基材シートに、アモルファスシリコンやポリシリコンを用いた薄膜トランジスタまたは有機分子を用いた有機トランジスタからなるドライバ層を設けておけば、表示の制御を行うことができる。あるいは、ドライバ層を設けずに、外部装置によって書き換えを行ってもよい。表示を制御する手段は、電気泳動表示装置の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0163】
電気泳動表示用シートに別の基材シートをラミネートする場合、ラミネートの手法および条件などについては、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。この場合、極めて優れた表示特性を安定して発揮し得る電気泳動表示装置を得るには、一般的には、マイクロカプセル層を基材シートに充分に密着させる(接触面積を大きくする)ことが好ましい。基材シートに対する密着性が低いと、表示応答性やコントラストなどの表示特性が低下することがある。密着性を高めるためには、例えば、ラミネート時の温度や圧力を高くすることなどが考えられる。他方、マイクロカプセルについては、カプセル殻体原料の使用量を適宜調節し、柔軟性や接着性を高めることにより、基材シートに対する密着性をより一層高めることができる。この方法を用いれば、ラミネート時の温度や圧力などの条件をある程度緩やかにしても、充分な密着性を得ることができる。
【0164】
ラミネートされた電気泳動表示用シートでデータ表示部を構成し、それ以外の構成部分、例えば、駆動回路や電源回路などを組み込めば、電気泳動表示装置が得られる。あるいは、駆動回路や電源回路などを外部回路に含めることにより、ラミネートされた電気泳動表示用シートで構成されたデータ表示部だけを電気泳動表示装置としてもよい。
【0165】
本発明の電気泳動表示装置において、基材シートの導電層の間隔、すなわち対向する電極の間隔は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは10μmであり、より好ましくは15μm、さらに好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは120μm、より好ましくは80μm、さらに好ましくは60μmである。対向する電極の間隔が10μm未満であると、表示部分において充分な表示濃度が得られず、その他の非表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、対向する電極の間隔が120μmを超えると、マイクロカプセル内に封入した分散液中の電気泳動粒子が充分な電気泳動性を発揮できす、コントラストなどの表示特性が低下したり、表示用の駆動電圧が高くなったりすることがある。
【0166】
本発明の電気泳動表示装置は、例えば、電気泳動粒子を構成する顔料粒子が白色系の顔料粒子であり、分散媒が青色染料で着色されている場合には、最初の表示は薄青色であるが、対向する電極間に電圧を印加すると、電気泳動粒子が一方の電極方向に移動して白色表示または青色表示となるが、電圧の極性を逆にすると、電気泳動粒子が他方の電極方向に移動するので、前記白色表示または青色表示が反転して青色表示または白色表示となる。再び極性を逆にして、電圧をごく短時間印加すると、表示が薄青色に戻る。あるいは、青色表示または白色表示のまま電圧を印加せずに放置すれば、前記表示を長期間維持して記録することもできる。文字データや画像データなどを表示または記録するには、例えば、装置の裏側に位置する電極を所定の基準電位(例えば、0V)とし、装置の表側に位置する電極にドライバ層を設けて、表示面の各位置で前記データの色(この場合、青色または白色)に対応して前記基準電位に対して正電位または負電位とすればよい。このような動作原理に基づく電気泳動表示装置は、データ表示手段を備えている種々の電子機器に適用できる。
【0167】
≪電子機器≫
本発明の電気泳動表示装置は、例えば、データ表示手段として、電子機器に用いられる。本発明の電子機器は、データ表示手段を備えている電子機器であって、前記データ手段が本発明の電気泳動表示装置であることを特徴とする。ここで、「データ表示手段」とは、文字データや画像データなどを表示するための手段を意味する。本発明の電子機器は、データ手段が本発明の電気泳動表示装置であること以外は、従来公知の電子機器と同様である。それゆえ、データ表示手段以外の部分は、従来公知の電子機器と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の電子機器は、従来公知の電子機器におけるデータ表示手段を本発明の電気泳動表示装置で置き換えることにより得られる。
【0168】
本発明の電気泳動表示装置を適用できる電子機器としては、データ表示手段を備えている限り、特に限定されるものではないが、例えば、パーソナルコンピューター、ワークステーション、ワードプロセッサー、ICカード、ICタグ、電子手帳、電子辞書、ICレコーダ、電子ブック、電子ペーパー、電子ノート、電卓、電子新聞、電子ホワイトボード、案内板、広告板、各種ディスプレイ、テレビ、DVDプレーヤー、デジタルスチルカメラ、ビューファインダー型またはモニタ直視型のビデオカメラ、カーナビゲーションシステム、携帯電話、テレビ電話、ページャ、携帯端末、POS用端末、タッチパネルを備えた各種機器などが挙げられる。これらの電子機器は従来公知であるが、そのデータ表示手段を本発明の電気泳動表示装置で置き換えることにより、本発明の電子機器が得られる。
【0169】
≪≪具体例の説明≫≫
以下、図面を参照しながら、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法を具体例により説明するが、本発明の範囲は、これらの説明に限定されるものではなく、下記の具体例以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜変更して実施することができ、いずれも本発明の範囲内に包含される。
【0170】
図1(a)および(b)は、それぞれ、本発明の電気泳動表示用シートの一例を模式的に示す断面図および平面図である。電気泳動表示用シート70は、基材フィルム12上に導電層14を形成してなる基材シート10の導電層14上にマイクロカプセル20を含む層を形成してなる。この具体例では、基材フィルム12は、例えば、PETなどの合成樹脂からなる透明な基材フィルムであり、導電層14は、例えば、ITOなどの導電材料からなる透明電極である。
【0171】
図1(a)に示すように、基材シート10の表面には、略球形状のマイクロカプセル20が、実質的に単層でかつ実質的に稠密的に配置されている。マイクロカプセル20は、略球形状のカプセル殻体22に電気泳動粒子26を含有する電気泳動表示用分散液24を内包してなる。
【0172】
マイクロカプセル20は、バインダー32に埋め込まれた状態で、基材シート10上に担持されている。バインダー32は明確な層を形成しておらず、マイクロカプセル20と基材シート10との接触個所やマイクロカプセル20同士の接触個所だけが少量のバインダー32で接合されていてもよい。また、マイクロカプセル20を被覆するバインダー32を、マイクロカプセル20の平均粒子径よりも充分に厚くすれば、バインダー32がマイクロカプセル20の保護機能を果たすことができる。
【0173】
図1(b)に示すように、マイクロカプセル20は、基材シート10の表面のうち、幅方向の一部の領域だけに配置され、マイクロカプセル担持部18を形成している。残りの部分では、導電層14が露出した導電層露出部16を形成している。なお、この図では、導電層14が幅方向に伸びる多数の線状電極を構成しているが、基材シート10の表面全体に一様な導電層14が形成されていてもよい。
【0174】
なお、実際に製造されて使用される電気泳動表示用シート70では、マイクロカプセル20が互いに押し潰されるように変形して非球形状をなしていたり、基材シート10の表面に対してマイクロカプセル20の一部が少し浮き上がっていたり、あるいはマイクロカプセル20が一部で重なり合っていたりする。場合によっては、マイクロカプセル20が複層で存在していてもよい。
【0175】
図2は、本発明の電気泳動表示装置の一例を模式的に示す断面図である。この電気泳動表示装置は、データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、前記データ表示部が電気泳動表示用シート70で構成されている。電気泳動表示用シート70のうち、マイクロカプセル20の表面には、通常の不透明な電極82が形成された不透明な支持シート80が積層されている。
【0176】
電気泳動表示用シート70の導電層14には、外部回路と接続される配線19が接続されている。電気泳動表示用シート70には、マイクロカプセル20およびバインダー32が存在せず、導電層14が露出している導電層露出部16が存在するので、導電層露出部16の導電層14に配線19を接続することにより、配線が容易にできる。
【0177】
この具体例の電気泳動表示装置は、支持シート80を裏側に、電気泳動表示用シート70を表側に配置して用いられる。マイクロカプセル20を挟んで両側に配置された電極82と導電層14との間にアドレス指定して電圧を印加すれば、電圧印加個所のマイクロカプセル20に電圧が印加される。マイクロカプセル20に封入された電気泳動粒子26が電極82側または導電層14側に移動する。このとき、透明な基材シート10の外面側から観察すると、個々のアドレス位置において、電気泳動粒子26の移動状態によってマイクロカプセル20の表示色が変化し、その集合として文字データや画像データを表示することができる。
【0178】
電気泳動表示粒子26は、電圧を印加して移動させた後、電圧を印加しなくなっても、新たに電圧が印加されるまでは、移動位置を維持する。それゆえ、電圧印加時に表示された文字データや画像データが、電圧を印加しなくなった後でも継続して表示される。
【0179】
図3〜5は、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法に用いる工程および装置を模式的に示す。
【0180】
図5は、電気泳動表示用シート70を製造するための原反となる帯状の電気泳動表示用シートSを示す。電気泳動表示用シートSには、幅方向に断続的に、幅Wでストライプ状のマイクロカプセル担持部18が形成されている。マイクロカプセル担持部18の間には、基材シート10の導電層14が幅Gで露出している導電層露出部16が存在する。
【0181】
電気泳動表示用シートSは、例えば、図4に示すマイクログラビアコーターを用いて製造される。マイクログラビアロール40は、通常のマイクログラビアロールと同様の材質および構造を有するが、一般的なグラビアコーターにおける塗工ロールの外径よりもかなり小さく、例えば、直径20mm以上、60mm以下である。
【0182】
図4に示すように、マイクログラビアロール40は、外周面に、細かな凹凸を機械的な彫刻やエッチング処理によって形成したグラビアパターン部42を有する。図4の場合、グラビアパターン部42は、傾斜直線状の凹溝が円筒状の外周面に螺旋状に巻きついた状態で密接して形成されている。
【0183】
グラビアパターン部42は、マイクログラビアロール40の軸方向に間隔をあけて断続的に3個所に配置されている。グラビアパターン部42の幅は、図5に示すマイクロカプセル担持部18の幅Wに応じて設定される。グラビアパターン部42の間隔は、導電層露出部16の幅Gに応じて設定される。グラビアパターン部42の中間個所44における外周径は、グラビアパターン部42の外周径よりも小さく設定されている。
【0184】
グラビアパターン部42の合計幅は、基材シート10の幅に応じて設定される。なお、グラビアパターン部42の合計幅は、必ずしも基材シート10の幅と一致している必要はない。
【0185】
図3に示すように、マイクログラビアロール40は水平状態で回転自在に支持され、モータ(図示省略)などで回転駆動される。マイクログラビアロール40の下方には、塗工液30の入った貯留器38を備える。塗工液30は、分散媒中にマイクロカプセル20およびバインダー32などを含有する分散液である。バインダー32が液体状であれば、分散媒を用いることなく、バインダー32にマイクロカプセル20を分散させるだけで、塗工液30を調製できる。
【0186】
マイクログラビアロール40の一部は、塗工液30に接触しており、マイクログラビアロール40の回転により、グラビアパターン部42に付着した塗工液30が上側に輸送される。
【0187】
図3に示すように、マイクログラビアロール40の上側でマイクログラビアロール40の前後に離れて、一対のガイドロール60が配置されている。ガイドロール60の下端は、マイクログラビアロール40の上端と同じ位置か、あるいは少し低い位置になるように配置されている。
【0188】
帯状の基材シート10が、一方のガイドロール60の下側に沿って連続的に供給され、マイクログラビアロール40の上側を経て、他方のガイドロール60の下側に沿って送出される。基材シート10は、図示を省略した上流側で、ロール状に巻回されたものを順次引き出して走行させる。
【0189】
マイクログラビアロール40の位置では、基材シート10には、マイクログラビアロール40から比較的小さい圧力が加わり、基材シート10が少し上向きに方向を変えるように変形する。このように、被塗工物の片面だけに軽く圧力を加えて塗工を行う方式は、キスコート方式と呼ばれる。基材シート10を上方から押さえるガイドロール60は、マイクログラビアロール40から離れた位置にあるので、基材シート10がマイクログラビアロール40とガイドロール60とで挟みつけられて大きな力が加わることがない。ガイドロール60とマイクログラビアロール40との上下方向の位置差を調節することにより、基材シート10に加わる圧力の大きさを調整することができる。
【0190】
図3において、基材シート10の走行方向は、矢印で示すように、図の左から右に向かっている。ガイドロール60、60の回転方向およびマイクログラビアロール40の回転方向は、いずれも反時計回りである。その結果、図の左から右に移動する基材シート10に対して、マイクログラビアロール40の外周面は、図の右から左へと逆方向に移動することになる。このような塗工方式は、リバース方式と呼ばれる。
【0191】
マイクログラビアロール40の回転に伴ってグラビアパターン部42に付着した塗工液30が基材シート10の下面に供給され、塗工が行われる。グラビアパターン部42の凹凸形状が、マイクロカプセル20を含有する塗工液30を効率よく持ち上げて輸送することになる。
【0192】
基材シート10の走行速度とマイクログラビアロール40の回転速度とを適切に調節することにより、基材シート10の下面には、実質的に一定の厚さで塗工液30が塗工される。マイクログラビアロール40のうち、グラビアパターン部42が存在しない中間部分および両端部分では、塗工液30は基材シート10に塗工されない。
【0193】
塗工液30が基材シート10と接触する位置の少し手前側に、マイクログラビアロール40の外周面に近接してドクターナイフ装置50が配置されている。貯留器30からマイクログラビアロール40に付着して持ち上げられた塗工液30は、ドクターナイフ装置50の先端とマイクログラビアロール40の外周面との間隙に相当する厚さに調節されてから、基材シート10と接触して塗工される。これにより、基材シート10に形成される塗工液30の厚さがより正確に調節される。
【0194】
塗工液30の塗工厚さは、通常、マイクロカプセル20の平均粒子径よりも少し厚い程度に設定されるが、マイクロカプセル20の平均粒子径の2倍には満たない厚さが好ましい。従って、ドクターナイフ装置50の先端を設置する位置は、塗工するマイクロカプセル20の平均粒子径に応じて調節しておくことが望ましい。もちろん、マイクログラビアロール40の回転数および基材シート10の走行速度も、マイクロカプセル20の平均粒子径に応じて適切な範囲に設定しておくことが望ましい。
【0195】
なお、通常のグラビアコーターで塗工を行うと、グラビアロールから基材シートに塗工液を移行させる際に、グラビアロールとバックアップロールとで基材シートを強く挟み付けるので、塗工液が基材シートの幅よりも外側に押し出されて、基材シートの裏側(上面側)にはみ出して付着することがある。しかし、上記のようなマイクログラビアコーターでは、マイクログラビアロール40は、基材シート10に軽く押し当てられているだけなので、塗工液30が基材シート10の裏側にはみ出して付着することは起こりにくい。塗工液30に大きな圧力が加わらなければ、マイクロカプセル20が損傷を受けたり過度に変形したりすることも起こりにくい。
【0196】
図3に破線で示すように、リバースコート方式のマイクログラビアコーターでは、マイクログラビアロール40の外周面に付着した塗工液30は、マイクログラビアロール40と基材シート10との接点で基材シート10に転写される。このとき、基材シート10とマイクログラビアロール40とは、軽く接しているだけなので、マイクロカプセル20に過大な圧力が加わることがない。また、上記接点では、塗工液30が、基材シート10とマイクログラビアロール40との両方から逆方向に引っ張られて過度なシェアが加わることによって、基材シート10上に実質的に均一に転写されることになる。マイクログラビアロール40のグラビアパターンが、基材シート10に形成される塗工液30の層に転写されるようなことも起こりにくい。
【0197】
基材シート10に所定厚さの塗工液30が塗工された電気泳動表示用シートSは、塗工液30を乾燥させて、マイクロカプセル20を基材シート10に強固に担持させる。塗工液30に含まれる溶媒を蒸発させることにより、残存したバインダー32でマイクロカプセル20を基材シート10に結合させることができる。塗工液30に含まれるバインダー32が硬化して、マイクロカプセル20が埋め込まれたバインダー層が形成されるようにしてもよい。マイクロカプセル20を基材シート10に結合させたり、バインダー32を硬化させたりするには、例えば、送風乾燥、加熱、放射線照射などを行うことができる。
【0198】
基材シート10にマイクロカプセル20が担持された電気泳動表示用シートSが得られた後、電気泳動表示用シートSの一部を切り取って、図1に示す電気泳動表示用シート70が得られる。
【0199】
図6および7は、再剥離フィルム90が貼着された電気泳動表示用シートSと、貼着作業とを模式的に示す。
【0200】
図7に示すように、基材シート10上にマイクロカプセル20が担持された電気泳動表示用シートSを連続的に走行させながら、再剥離フィルム90を走行方向に供給し、ニップロール64、64により、電気泳動表示用シートSと再剥離フィルム90とを挟み付ければ、再剥離フィルム90が電気泳動表示用シートSに貼着される。このとき加える圧力は、再剥離フィルム90が電気泳動表示用シートSに軽く付着する程度でよく、マイクロカプセル20が損傷を受けたり過剰に変形したりするような大きい圧力は加えないようにする。
【0201】
電気泳動表示用シートSと再剥離フィルム90とを圧接させることにより、再剥離フィルム90を充分な力で貼着することができると共に、電気泳動表示用シートSの表面を平滑化する効果も高くなる。再剥離フィルム90の平滑な表面が電気泳動表示用シートSに圧接すると、例えば、マイクロカプセル20が基材シート10から少し浮き上がっていても再剥離フィルム90で抑えつけられて浮き上がりが解消される。また、マイクロカプセル20またはバインダー32の表面に微細な凹凸やうねりが生じていても、平滑な再剥離フィルム90が圧接することで実質的に均一化される。
【0202】
図6に示すように、再剥離フィルム90は、電気泳動表示用シートSにおけるマイクロカプセル担持部18と導電層露出部16の両方を被覆している。再剥離フィルム90は、マイクロカプセル20を保護すると共に、導電層露出部16の表面を保護することもできる。
【0203】
電気泳動表示用シートSの表面が依然として付着性または柔軟性を有する段階で、再剥離フィルム90を貼着すれば、電気泳動表示用シートSと再剥離フィルム90とが確実に一体化され、表面平滑化の効果も良好に発揮される。
【0204】
再剥離フィルム90を貼着した電気泳動表示用シートSは、ロールに巻き取って、巻回ロールRの形態にすることができる。巻回ロールRの形態であれば、保管や輸送などの取扱いが容易である。巻回作業時に、巻回ロールRの形態で巻き圧が発生するような条件で巻き取ることにより、再剥離フィルム90による電気泳動表示用シートSの表面平滑化が促進される。
【0205】
電気泳動表示用シートSを用いるときは、巻回ロールRの一端から解き放すように引き出して、表面の再剥離フィルム90を剥離すればよい。図6に示すように、再剥離フィルム90は、端部を引き離すことで、電気泳動表示用シートSの表面から容易に剥離することができる。再剥離フィルム90を剥離した電気泳動表示用シートSは、そのまま、あるいは、適当な大きさに切断した後、図2に示す電気泳動表示装置70の製造に用いることができる。
【0206】
巻回ロールRは、隣接する電気泳動表示用シートSの層間に再剥離フィルム90が介在しているので、電気泳動表示用シートSの層間が固着したり、マイクロカプセル20が隣接する基材シート10にブロッキングしたりすることがない。
【0207】
特に、電気泳動表示用シートSを、他のフィルムや部材に積層したり、接合したりするまでの中間工程で、電気泳動表示用シートSを保管したり、取り扱ったりする際には、電気泳動表示用シートSにおけるマイクロカプセル20の表面が強い付着性を有することがある。それゆえ、例えば、基材シート10にマイクロカプセル20を含む塗工液30を塗工し、乾燥させた後、塗工液30に含まれるバインダー32が充分に硬化するまでの間には、基材シート10からマイクロカプセル20が脱落したり、移動したり、その表面が損傷を受けたりしやすい。このような場合には、再剥離フィルム90の貼着による保護が有効である。
【実施例】
【0208】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下では、「質量%」を「%」と記すことがある。
【0209】
≪実施例1≫
<電気泳動表示用分散液の製造>
メタノール90gにアミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM−903、信越化学工業(株)製)0.5gを混合し、溶解させた後、2.5%アンモニア水0.5gを添加した。
【0210】
この溶液に酸化チタン(製品名タイペークCR−97、石原産業(株)製;平均粒子径0.25μm)50gを添加し、攪拌しながら50℃で超音波分散処理を60分間行った。次いで、イソプロピルイソステアロイルチタネート(製品名プレンアクトKR−TTS、味の素(株)製)1.5gを添加して、さらに超音波分散処理を60分間行った。この分散液を遠心分離にかけて酸化チタンを回収し、120℃で乾燥させて、表面処理された酸化チタンを得た。
【0211】
ドデシルベンゼン130gに表面処理された酸化チタン14gを添加し、50℃で超音波分散処理を30分間行った。その後、青色染料(製品名オイルブルーF、中央合成化学(株)製)2gを混合し、溶解させて、電気泳動表示用分散液を得た。
【0212】
<電気泳動表示用マイクロカプセルの製造>
水200gにアラビアゴム24g、ゼラチン8gを溶解させた後、43℃に保持した。この溶液を高速分散機(製品名ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)で攪拌しながら、43℃の電気泳動表示用分散液146gを添加した後、攪拌速度を徐々に上げ、1,000rpmで10分間攪拌して、懸濁液を得た。
【0213】
この縣濁液に43℃の温水750gを添加し、10%酢酸水溶液20gを添加した後、10℃以下に冷却し、この温度で1時間保持した。
【0214】
その後、37%ホルマリン10g、10%炭酸ナトリウム水溶液45gを添加し、25℃まで昇温し、この温度で5時間熟成を行って、アラビアゴムとゼラチンとからなるカプセル殻体に電気泳動表示用分散液を内包してなる電気泳動表示用マイクロカプセルの分散液を得た。
【0215】
得られた分散液に含まれる電気泳動表示用マイクロカプセルの平均粒子径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(製品名LA−910、(株)堀場製作所製)で測定したところ、体積平均粒子径で、70μmであった。
【0216】
<電気泳動表示用シートの製造>
得られた電気泳動表示用マイクロカプセルの分散液を吸引濾過して、マイクロカプセル含有量51%のマイクロカプセルペーストを得た。このマイクロカプセルペースト19.6g、バインダー(製品名ポリメントSK−1000、(株)日本触媒製;濃度38質量%)2.6g、脱イオン水5.3gを充分に混合して、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液(1)を得た。固形分濃度は40質量%であり、粘度は62KUであった。なお、粘度はクレブス粘度計(製品名KU−1、ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク製)を用いて測定した。
【0217】
本実施例では、塗工装置として、図3に示す基本構造を備えたマイクログラビアコーター((株)廉井精機製)を用いた。マイクログラビアロールは、直径20mm、塗工幅300mmであり、外周面の全体にグラビアパターンが彫刻されたものを用いた。グラビアパターンは、傾斜直線状の溝を互いに交差させて配置した格子状をなし、密度9.84本/cm(25本/インチ)、深度300μm、セル容積170mL/mであった。このグラビアパターンをグラビアロールの軸方向に断続的に切削して、図4に示すように、幅70mmのグラビアパターン部が、45mmの間隔をあけて、3個所に配置された形態に加工した。
【0218】
基材シートとして、厚さ125μmの透明導電性フィルム(製品名東レハイビームNT02、東レ(株)製;全光線透過率83.5%)を、走行速度1m/minで連続走行させた。
【0219】
マイクログラビアロールの回転数を64rpm(基材シートの走行方向と逆回転)に設定して、前記した塗工液(1)を基材シートに塗工した。得られた電気泳動表示用シートは、90℃、風速10m/minで強制送風するジェット乾燥機で乾燥させた。
【0220】
得られた電気泳動表示用シートは、基材シートの導電層上にマイクロカプセルが実質的に単層かつ実質的に稠密的に担持されていた。図5に示すように、マイクロカプセル層には、マイクロカプセル担持部と導電層露出部とが幅方向に交互に配置されていた。マイクロカプセル担持部の幅Wは70mm、導電層露出部の幅Gは45mmであった。マイクロカプセル担持部からはみ出したマイクロカプセルや、基材シートの裏面に付着したマイクロカプセルは認められなかった。また、マイクロカプセル担持部において、マイクロカプセルの破損や過剰な変形は認められなかった。
【0221】
≪実施例2≫
<塗工液の製造>
実施例1と同様にして得られたマイクロカプセルペースト19.6g、バインダー(製品名ポリメントSK−1000、(株)日本触媒製;濃度38質量%)2.6g、脱イオン水2.2gを充分に混合して、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液(2)を得た。固形分濃度は45質量%であり、粘度は75KUであった。
【0222】
<電気泳動表示用シートの製造>
本実施例では、塗工装置として、実施例1と同様のマイクログラビアコーターを用いた。ただし、グラビアパターンは、傾斜直線状の溝を互いに交差させて配置した格子状をなし、密度6.7本/cm(17本/インチ)、深度430μm、セル容積188mL/mであった。
【0223】
基材シートとして、厚さ125μmの接着層付透明導電性フィルム(製品名ハイビームCF98、東レ(株)製;全光線透過率86.5%)を用い、走行速度1m/minで連続走行させた。
【0224】
得られた塗工液(2)を、マイクログラビアロールの回転数を180rpm(基材シートの走行方向と逆回転)に設定して、基材シートに塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示用シートを製造した。
【0225】
得られた電気泳動表示用シートは、実施例1の電気泳動表示用シートと同様に、品質に優れたものであった。
【0226】
≪実施例3≫
<塗工液の製造>
実施例1と同様にして得られたマイクロカプセルペースト19.6g、バインダー(製品名スーパーフレックス550、第一工業製薬(株)製;濃度45質量%)2.2g、脱イオン水5.7gを充分に混合して、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液(3)を得た。固形分濃度は40質量%であり、粘度は73KUであった。
【0227】
<電気泳動表示用シートの製造>
得られた塗工液(3)を、マイクログラビアロールの回転数を56rpm(基材シートの走行方向と逆回転)に設定して、実施例2と同様の基材シートに塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示用シートを製造した。
【0228】
得られた電気泳動表示用シートは、実施例1の電気泳動表示用シートと同様に、品質に優れたものであった。
【0229】
≪実施例4≫
実施例3で得られた塗工液(3)を、マイクログラビアロールの回転数を140rpm(基材シートの走行方向と逆回転)に設定して、実施例2と同様の基材シートに塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示用シートを製造した。
【0230】
得られた電気泳動表示用シートは、実施例1の電気泳動表示用シートと同様に、品質に優れたものであった。
【0231】
≪比較例1≫
本比較例では、塗工装置として、マイクログラビアコーターではない通常のグラビアコーターを用いた。このグラビアコーターは、グラビアロールとバックアップロールとが対向配置され、その間に基材シートを挟み込んで走行させ、グラビアロールから基材シートに塗工液を塗工する。このグラビアコーターは、キス方式またはリバース方式のいずれでもない。グラビアロールは、直径100mm、塗工幅300mmであり、外周面の全体にグラビアパターンが彫刻されたものを用いた。グラビアパターンは、傾斜直線状の溝を螺旋状に配置した格子状をなし、密度9.84本/cm(25本/インチ)、深度300μm、セル容積170mL/mであった。このグラビアパターンを実施例1と同様に切削して、幅70mmのグラビアパターン部が、45mmの間隔をあけて、3個所に配置された形態に加工した。
【0232】
基材シートとして、実施例1と同様の基材シートを用い、走行速度1m/minで連続走行させた。
【0233】
実施例1で得られた塗工液(1)を、グラビアロールの回転数を1.5rpm(基材シートの走行方向と順回転)に設定して、実施例1と同様の基材シートに塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示用シートを製造した。
【0234】
得られた電気泳動表示用シートは、マイクロカプセル層に斜めのスジが現れており、電気泳動表示用マイクロカプセルが実質的に稠密的に担持されていなかった。また、バックアップロールによる加圧により、基材シートに傷が付いていた。
【0235】
≪比較例2≫
本比較例では、塗工装置として、ダイコーダーを使用した。このダイコーダーのスロットダイを、その長さ方向で断続的に閉塞させることにより、スロットダイから供給される塗工液が、断続的なストライプ状で、基材シートに塗工されるようにした。
【0236】
実施例1で得られた塗工液(1)を実施例1と同様の基材シートに塗工することを試みたが、スロットダイに塗工液を供給する送液ポンプ内で、塗工液中の電気泳動表示用マイクロカプセルが破損してしまい、電気泳動表示用シートを製造できなかった。
【0237】
≪実施例5≫
実施例1で得られた電気泳動表示用シートのマイクロカプセル層上に、下記に示す種々の再剥離フィルムを重ね合わせ、室温で、49N/cm(5kgf/cm)の荷重を加えることにより貼着した後、積層シートをロール上に巻き取って巻回ロールを得た。
【0238】
室温で一日養生した後、巻回ロールから積層シートを引き出し、再剥離フィルムを剥離して、電気泳動表示用シートを得た。このとき、再剥離フィルムの剥離性を下記基準で評価した。
【0239】
次いで、電気泳動表示用シートのマイクロカプセル層上に、別の透明導電性フィルム(製品名東レハイビームNT02、東レ(株)製)の導電層が対向するように重ね合わせ、温度120℃で、39N/cm(4kgf/cm)の荷重を加えることにより、処理速度1mm/sで、ラミネートした。このとき、別の導電性フィルムの密着性を下記基準で評価した。
【0240】
<評価基準>
◎:再剥離フィルムを剥離する際に剥離抵抗がなく、別の導電性フィルムを貼着する際に、隙間なく密着した積層シートが得られる。
○:再剥離フィルムを剥離する際に剥離抵抗がないが、別の導電性フィルムを貼着する際に、積層シートの一部に密着の悪い個所がある。実用的には問題ない。
×:再剥離フィルムを剥離する際に剥離抵抗が大きく、剥離面のマイクロカプセルが損傷しており、実用的でない。
【0241】
<再剥離フィルムおよびその評価>
再剥離フィルム1:厚さ50μmの微粘着ポリエチレン系フィルム(製品名トレテック7531、東レ合成フィルム(株)製)=評価◎
再剥離フィルム2:厚さ60μmの微粘着ポリエチレン系フィルム(製品名トレテック7121、東レ合成フィルム(株)製)=評価◎
再剥離フィルム3:厚さ100μmの微粘着ポリエチレン系フィルム(製品名トレテック7721、東レ合成フィルム(株)製)=評価◎
再剥離フィルム4:厚さ100μmの微粘着ポリエチレン系フィルム(製品名トレテック7111、東レ合成フィルム(株)製)=評価○
再剥離フィルム5:厚さ60μmの微粘着ポリエチレン系フィルム(製品名プロテクトテープ622B、積水化学(株)製)=評価○
再剥離フィルム6:厚さ70μmの微粘着ポリエチレン系フィルム(製品名サニテクトPAC2−70、(株)サンエー化研製)=評価◎
再剥離フィルム7:厚さ100μmの未延伸ポリプロピレン系フィルム(製品名トレファンNO3931、東レ合成フィルム(株)製)=評価○
再剥離フィルム8:厚さ50μmの2軸延伸ポリプロピレン系フィルム(製品名パイレンOTP2002、東洋紡績(株)製)=評価○
再剥離フィルム9:厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名ルミラーT60、東レ(株)製)=評価×。
【0242】
≪実施例6≫
図8は、本発明の電子機器の一実施態様であるICカードの一実施例を示す平面図である。ICカード100は、複数の操作ボタン101と、表示パネル102とを備えている。ICカード100において、データ表示手段としての表示パネル102が本発明の電気泳動表示装置である。
【0243】
≪実施例7≫
図9は、本発明の電子機器の一実施態様である携帯電話の一実施例を示す斜視図である。携帯電話200は、複数の操作ボタン201と、受話口202と、送話口203と、表示パネル204とを備えている。携帯電話200において、データ表示手段としての表示パネル204が本発明の電気泳動表示装置である。
【0244】
≪実施例8≫
図10は、本発明の電子機器の一実施態様である電子ブックの一実施例を示す斜視図である。電子ブック300は、ブック形状のフレーム301と、フレーム301に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー302とを備えている。フレーム301には、表示面を露出させた状態の表示装置303と、操作部304とが設けられている。電子ブック300において、データ表示手段としての表示装置303が本発明の電気泳動表示装置である。
【0245】
≪実施例9≫
図11は、本発明の電子機器の一実施態様である電子ペーパーの一実施例を示す斜視図である。電子ペーパー400は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成されている本体401と、表示ユニット402とを備えている。電子ペーパー400において、データ表示手段としての表示ユニット402が本発明の電気泳動表示装置である。
【0246】
実施例6のICカード、実施例7の携帯電話、実施例8の電子ブック、実施例9の電子ペーパーは、いずれもデータ表示手段が本発明の電気泳動表示装置で構成されているので、表示応答性やコントラストなどの表示特性に極めて優れた電子機器である。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明による電気泳動表示用シートの製造方法は、基材シート上に電気泳動表示用マイクロカプセルが所定のパターン形状で配置された電気泳動表示用シートを工業的規模で生産性高く製造することを可能にする。得られた本発明の電気泳動表示用シートは、電気泳動表示用マイクロカプセルが精度よく配置されているので、それを用いた電気泳動表示装置および電子機器は、表示特性のバラツキや表示抜けがなく、極めて優れた表示品質を有する。再剥離フィルムを貼着した電気泳動表示用シートは、表面保護だけでなく、製造時の取り扱い、保管や輸送などが容易になり、しかも表面が平滑化されるなどの利点を有する。それゆえ、本発明による電気泳動表示用シートの製造方法、電気泳動表示用シートおよびその用途は、極めて優れた表示品質を有するデータ表示手段を提供する一連の技術として、データ表示手段を備えている電子機器に関連する分野で多大の貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】本発明の電気泳動表示用シートの一例を模式的に示す断面図(a)および平面図(b)。
【図2】本発明の電気泳動表示装置の一例を模式的に示す断面図。
【図3】本発明による電気泳動表示用シートの製造方法に用いられる塗工装置および塗工工程の一例を模式的に示す断面図。
【図4】本発明による電気泳動表示用シートの製造方法に用いられる塗工ロールの一例を模式的に示す正面図。
【図5】本発明による電気泳動表示用シートの製造方法により製造された電気泳動表示用シートの一例を模式的に示す平面図。
【図6】再剥離フィルムを貼着した本発明の電気泳動表示用シートの一例を模式的に示す断面図。
【図7】本発明の電気泳動表示用シートに再剥離フィルムを貼着する工程を模式的に示す断面図。
【図8】本発明の電子機器の一実施態様であるICカードの一実施例を示す平面図である。
【図9】本発明の電子機器の一実施態様である携帯電話の一実施例を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器の一実施態様である電子ブックの一実施例を示す斜視図である。
【図11】本発明の電子機器の一実施態様である電子ペーパーの一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0249】
10 基材シート
12 基材フィルム
14 導電層
16 導電層露出部
18 マイクロカプセル担持部
20 マイクロカプセル
22 カプセル殻体
24 電気泳動表示用分散液
26 電気泳動粒子
30 塗工液
32 バインダー
38 貯留器
40 マイクログラビアロール
42 グラビアパターン部
50 ドクターナイフ装置
60 ガイドロール
64 ニップロール
70、S 電気泳動表示用シート
80 支持シート
82 電極
90 再剥離フィルム
R 巻回ロール
100 ICカード
101 操作ボタン
102 表示パネル
200 携帯電話
201 操作ボタン
202 受話口
203 送話口
204 表示パネル
300 電子ブック
301 フレーム
302 カバー
303 表示装置
304 操作部
400 電子ペーパー
401 本体
402 表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に導電層を形成してなる基材シートの前記導電層上に電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層を形成してなる電気泳動表示用シートを製造する方法であって、
(a)基材フィルム上に導電層を形成してなる帯状の基材シートを連続走行させ、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス・リバースコート方式の塗工装置を用いて、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を前記基材シートに塗工する工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記塗工液を乾燥させて、前記導電層上に前記マイクロカプセルを含む層を形成し、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されている電気泳動表示用シートを得る工程と、
を包含することを特徴とする電気泳動表示用シートの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)において、平均粒子径20μm以上、200μm以下の電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を前記基材シートに塗工する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)において、前記マイクロカプセルを含む層の厚さが、乾燥後の厚さで、10μm以上、100μm以下である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
(c)前記工程(b)の後、前記マイクロカプセルを含む層に再剥離フィルムを貼着し、得られたシートを巻き取る工程、
をさらに包含する請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
基材フィルム上に導電層を形成してなる基材シートの前記導電層上に電気泳動表示用マイクロカプセルを含む層を形成してなる電気泳動表示用シートであって、前記マイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持部と、前記導電層が露出している導電層露出部とが、幅方向に交互に配置されていることを特徴とする電気泳動表示用シート。
【請求項6】
前記マイクロカプセルを含む層が形成されている側の表面に再剥離フィルムが貼着されている請求項5記載の電気泳動表示用シート。
【請求項7】
データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、前記データ表示部が請求項5記載の電気泳動表示用シートで構成されていることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項8】
データ表示手段を備えている電子機器であって、前記データ表示手段が請求項7記載の電気泳動表示装置であることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−18235(P2006−18235A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153509(P2005−153509)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)