説明

電気泳動表示装置、電気泳動表示装置の製造方法、電子機器

【課題】従来に比べて低電圧で駆動可能な電気泳動表示装置とその製造方法およびこれを備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】電気泳動表示装置100は、基板50と、基板50上の空間を複数のセル13に分割する隔壁12と、複数のセル13のそれぞれに充填された電気泳動粒子21を含む分散液20と、複数のセル13を封止する封止膜30とを備え、封止膜30は、分散液20の表面に配置されたイオン性の第1重合性界面活性剤31と、第1重合性界面活性剤31に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤32と、第3重合性界面活性剤33と、第2重合性界面活性剤32と第3重合性界面活性剤33との間において重合性モノマーが重合したポリマー膜36とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置、電気泳動表示装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気泳動表示装置として、一対の基板間の空間が隔壁により複数のセルに分割され、このセル内に電気泳動粒子が分散された分散液が充填されたものが知られている(特許文献1)。
例えば特許文献1では、セル内に分散液が充填された隔壁を、紫外線硬化型樹脂からなる封止膜を用いて封止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−317830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の電気泳動表示装置では、紫外線硬化樹脂をサブミクロンレベルで膜厚を制御しつつ塗布する事が難しいために、封止膜にある程度の厚みを持たせてセル内の分散液を封止せざるを得ない。そうすると、分散液中の電気泳動粒子を所定の方向に移動させるために、一対の電極間に与えられる駆動電圧が高くなるという課題があった。
また、従来の封止膜では、封止膜が覆っている画素中心部の封止膜厚が画素端部の封止膜厚よりも薄くなり、画素中心部分が画素端部に比べて電圧が低くなり電気泳動粒子が画素中心部に集中するという課題があるため、画素内の駆動電圧の制御が難しいという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例の電気泳動表示装置は、基板と、前記基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁と、前記複数のセルのそれぞれに充填された電気泳動粒子を含む分散液と、前記複数のセルを封止する封止膜とを備え、前記封止膜は、前記分散液の表面に配置されたイオン性の第1重合性界面活性剤と、前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤と、第3重合性界面活性剤と、前記第2重合性界面活性剤と前記第3重合性界面活性剤との間において重合性モノマーが重合したポリマー膜と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、互いに反対の極性を有するイオン性の第1重合性界面活性剤と第2重合性界面活性剤とは互いに強く吸着し合い、分散液の表面にむら無く配置されることになる。これにより、第2重合性界面活性剤と第3重合性界面活性剤との間に配置された重合性モノマーを重合させて得られたポリマー膜は膜厚が均一になり易い。したがって、重合性モノマーの量を調整すれば、複数のセルを封止可能であって、膜厚が均一で比較的に薄い封止膜を実現できる。すなわち、低電圧で駆動可能であると共に、優れた表示品質を有する電気泳動表示装置を提供できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例の電気泳動表示装置において、前記第3重合性界面活性剤は、イオン性の重合性界面活性剤であることを特徴とする。
この構成によれば、第1から第3重合性界面活性剤がいずれもイオン性であることから、分散液が充填された複数のセルを有する基板に対して、水溶液中で第1から第3重合性界面活性剤を配置することが可能となる。つまり、生産性と信頼性とを兼ね備えた電気泳動表示装置を提供できる。
【0009】
[適用例3]上記適用例の電気泳動表示装置において、前記第3重合性界面活性剤は、ノニオン性の重合性界面活性剤であるとしてもよい。
【0010】
[適用例4]本適用例の他の電気泳動表示装置は、基板と、前記基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁と、前記複数のセルのそれぞれに充填された電気泳動粒子を含む分散液と、前記複数のセルを封止する封止膜とを備え、前記封止膜は、前記分散液の表面に配置されたイオン性の第1重合性界面活性剤と、前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤と、前記第2重合性界面活性剤に対して疎水性モノマーとイオン性の親水性モノマーとが重合したポリマー膜と、を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、イオン性の親水性モノマーを用いるので、第3重合性界面活性剤を用いずとも、膜厚が比較的に均一で薄い封止膜を実現できる。つまり、低電圧で駆動可能であると共に、簡素な構成で優れた表示品質を有する電気泳動表示装置を提供できる。
【0012】
[適用例5]本適用例の電気泳動表示装置の製造方法は、基板上に複数のセルを区画する隔壁と、前記セル内に充填された電気泳動粒子を含む分散液とを備えた電気泳動表示装置の製造方法であって、前記セル内に充填された前記分散液の表面にイオン性の第1重合性界面活性剤を配置する第1工程と、配置された前記第1重合性界面活性剤に前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤を配置する第2工程と、前記第2重合性界面活性剤に重合性モノマーを配置する第3工程と、配置された前記重合性モノマーに第3重合性界面活性剤を配置する第4工程と、前記重合性モノマーを重合させて、前記複数のセルを封止する封止膜を形成する第5工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、第2工程では、分散液の表面に配置された第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有する第2重合性界面活性剤は強く吸着され、分散液の表面にむら無く配置される。第5工程では、第2重合性界面活性剤と第3重合性界面活性剤との間に配置された重合性モノマーを重合させて、膜厚が均一な封止膜を形成することができる。重合性モノマーの量を調整すれば、複数のセルを封止可能であって、膜厚が均一で比較的に薄い封止膜を形成できる。すなわち、低電圧で駆動可能であると共に、優れた表示品質を有する電気泳動表示装置を製造することができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の電気泳動表示装置の製造方法において、前記第1から前記第4工程は、前記第1重合性界面活性剤、前記第2重合性界面活性剤、前記重合性モノマー、前記第3重合性界面活性剤のそれぞれが導入された水溶液中に、前記分散液が前記セル内に充填された前記基板を浸漬することによって行われ、前記第5工程は、前記水溶液中に重合開始剤を導入することにより行われることを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、第1重合性界面活性剤および第2重合性界面活性剤がイオン性であることから、水溶液中において分散液の表面に互いに強く結びついた第1重合性界面活性剤および第2重合性界面活性剤をむら無く配置することができる。また、水溶液に第3重合性界面活性剤を投入することで、重合性モノマーは第2重合性界面活性剤と第3重合性界面活性剤との間にむら無く配置される。そして、第5工程において水溶液に重合開始剤を導入すれば、第2重合性界面活性剤と第3重合性界面活性剤との間に保持された状態で重合性モノマーを重合させてポリマー化した封止膜を形成することができる。つまり、水中で各工程を進行させることができるので、周囲の環境の影響を受け難く、均一で薄い封止膜を安定的に形成することができる。
【0016】
典型的な例について説明する。水中にて、例えばアニオン性の第1重合性界面活性剤を電気泳動粒子を含む分散液上に配列させる。続いてアニオン性の第1重合性界面活性剤に、カチオン性の第2重合性界面活性剤を吸着させる。さらに、重合性モノマーとアニオン性の第3重合性界面活性剤を導入する。上記の方法で、アニオン性の第1重合性界面活性剤、カチオン性の第2重合性界面活性剤が配列した分散液上に、重合性モノマー、アニオン性の第3重合性界面活性剤が配列する。重合性モノマーは分散液上の第2重合性界面活性剤と、後に導入された第3重合性界面活性剤の間に挟まれる。上記配列状態で、第2および第3重合性界面活性剤と重合性モノマーとを重合させ、形成されたポリマー膜が分散液を封止する。
【0017】
イオン性の第1重合性界面活性剤は、疎水性基を分散液側へ、イオン性基(帯電基)を水溶液へ向けて分散液上に配列している。第1重合性界面活性剤がアニオン性の場合、第2重合性界面活性剤はカチオン性の重合性界面活性剤となる。その際、第1重合性界面活性剤の帯電基と第2重合性界面活性剤の帯電基とが、イオン性の強い結合で吸着している。重合性モノマーは、カチオン性の第2重合性界面活性剤の疎水部とアニオン性の第3重合性界面活性剤の疎水部の間に存在するように、配列している。
【0018】
第3重合性界面活性剤と重合性モノマーの積層構造を形成した後、重合開始剤を導入して重合性モノマーを重合させる事により、分散液上にポリマー膜を形成することができる。
【0019】
分散液上に形成される皮膜の膜厚はサブミクロンからミクロンオーダーである。このため、低電圧で駆動可能な電気泳動表示装置を提供することができる。
【0020】
第3重合性界面活性剤や重合性モノマーの量を調節する事により、ポリマー膜の膜厚をサブミクロン単位で制御することができる。言い換えれば、駆動電圧を制御可能な電気泳動表示装置を製造できる。
【0021】
イオン性の界面活性剤における極性の組み合わせは、上記と逆の組み合わせも可能である。上記の例では、分散液側から、アニオン性重合性界面活性剤、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤であったが、分散液側から、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤、カチオン性重合性界面活性剤としてもよい。
【0022】
本適用例で使用する重合性界面活性剤は正負いずれかの帯電符号を有するイオン性の重合性界面活性剤である事が特徴である。重合性界面活性剤は3種類である。第1から第3重合性界面活性剤のイオン種の組み合わせの例としては、第1がアニオン性、第2がカチオン性、第3がアニオン性、または、第1がカチオン性、第2がアニオン性、第3がカチオン性、である。
さらには、第3重合性界面活性剤はイオン性であることに限定されず、ノニオン性であってもイオン性の第2重合性界面活性剤との間に重合性モノマーを保持することができる。
【0023】
[適用例7]本適用例の他の電気泳動表示装置の製造方法は、基板上に複数のセルを区画する隔壁と、前記セル内に充填された電気泳動粒子を含む分散液とを備えた電気泳動表示装置の製造方法であって、前記セル内に充填された前記分散液の表面にイオン性の第1重合性界面活性剤を配置する第1工程と、配置された前記第1重合性界面活性剤に前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤を配置する第2工程と、前記第2重合性界面活性剤に疎水性モノマーを配置すると共に、前記疎水性モノマーにイオン性の親水性モノマーを配置する第3工程と、前記疎水性モノマーと前記イオン性の親水性モノマーとを重合させて、前記複数のセルを封止する封止膜を形成する第4工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、親水性モノマーがイオン性であるため、第3重合性界面活性剤を用いることなく、比較的に均一で薄い封止膜を形成することができる。つまり、低電圧で駆動可能であると共に、優れた表示品質を有する簡素な構成の電気泳動表示装置を製造することができる。
【0025】
[適用例8]上記適用例の他の電気泳動表示装置の製造方法において、前記第1から前記第3工程は、前記第1重合性界面活性剤、前記第2重合性界面活性剤、前記疎水性モノマー、前記イオン性の親水性モノマーがそれぞれ導入された水溶液中に、前記分散液が前記セル内に充填された前記基板を浸漬することによって行われ、前記第4工程は、前記水溶液中に重合開始剤を導入することにより行われることを特徴とする。
この方法によれば、第1重合性界面活性剤および第2重合性界面活性剤がイオン性であることから、水溶液中において分散液の表面に互いに強く結びついた第1重合性界面活性剤および第2重合性界面活性剤をむら無く配置することができる。また、水溶液にイオン性の親水性モノマーを投入することで、第2重合性界面活性剤と結びついた疎水性モノマーと親水性モノマーとからなる重合性モノマーをむら無く配置することができる。そして、第4工程において水溶液に重合開始剤を導入すれば、第2重合性界面活性剤と結びついた状態で重合性モノマーを重合させてポリマー化した封止膜を形成することができる。つまり、水溶液中で各工程を進行させることができるので、周囲の環境の影響を受け難く、均一で薄い封止膜を安定的に形成することができる。
【0026】
[適用例9]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、上記適用例の電気泳動表示装置を備えるので、高品位な表示を行うことが可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係る電気泳動表示装置の構成を示す概略断面図。
【図2】実施形態1に係る電気泳動表示装置を真上から見た隔壁と分散液の配置図。
【図3】実施形態1に係る電気泳動表示装置における分散液上の重合性界面活性剤と重合性モノマーとの相対的な位置関係を示す模式断面図。
【図4】電気泳動表示装置の製造方法を示すフローチャート。
【図5】(a)〜(e)は電気泳動表示装置の製造方法を示す概略断面図。
【図6】(f)〜(h)は電気泳動表示装置の製造方法を示す概略断面図。
【図7】実施形態2に係る電気泳動表示装置における分散液上の重合性界面活性剤と重合性モノマーとの相対的な位置関係を示す模式断面図。
【図8】電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図。
【図9】電子機器の一例としての電子ノートの構成を示す斜視図。
【図10】変形例の電気泳動表示装置の構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る電気泳動表示装置の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0029】
(実施形態1)
<電気泳動表示装置>
まず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の概略構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、実施形態1に係る電気泳動表示装置の構成を示す概略断面図、図2は電気泳動表示装置を真上から見た図、図3は分散液上の重合性界面活性剤と重合性モノマーとの相対的な位置関係を示す模式断面図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、電気泳動粒子21を含む分散液20が複数のセル13のそれぞれに充填されたセルマトリクス10、素子基板50、対向基板60、などから構成されている。
素子基板50は、平板状の基板本体52と、この基板本体52の一方の面上に形成された複数の画素電極51とを有している。基板本体52には、画素電極51を駆動するための薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor;図示省略)が、表示領域において例えばマトリクス状に配列された画素ごとに設けられている。より具体的には、基板本体52には、画素電極51を駆動するためのTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。
【0031】
基板本体52は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの絶縁性の樹脂材料からなる基板(即ち、樹脂基板)、または、透明なガラス基板などの無機基板からなる。
【0032】
画素電極51は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)等の導電材料から形成されている。
【0033】
対向基板60は、平板状の基板本体62と、この基板本体62の一方の面上に形成された対向電極61とを有している。基板本体62は、素子基板50の基板本体52と同様に、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性の樹脂材料からなる基板(即ち、樹脂基板)、または、透明なガラス基板などの無機基板からなる。
【0034】
対向電極61は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)などの光透過性を有する導電材料から形成されており、素子基板50の複数の画素電極51に対して対向するように基板本体62上に設けられている。つまり、対向電極61は複数の画素に跨る共通電極となっている。
【0035】
セルマトリクス10は、複数のセル13を区画する隔壁12を有している。各セル13には、アイソパー(登録商標)などの分散媒22に電気泳動粒子21を分散させた分散液20が注入されている。
分散液20は、セルマトリクス10の複数のセル13に充填された状態で、素子基板50と対向基板60との間に挟持されている。
【0036】
詳しくは、セルマトリクス10は、平板部11と、この平板部11の一方の面上に配置された隔壁12とを有している。
平板部11上の空間が隔壁12によって分割されることにより複数のセル13が形成されている。隔壁12は、平板部11上で平面的に見て、例えば正方格子状の平面形状を有している(図2参照)。平板部11および隔壁12は一体的に形成されている。
セルマトリクス10(即ち、平板部11および隔壁12)は、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂材料からなる。
なお、隔壁12の平面形状は、正方格子状に限定されるものではなく、例えばハニカム格子状や三角格子状であってもよい。また、本実施形態では、隔壁12が平板部11と一体的に形成されている場合を例に挙げているが、隔壁12と平板部11とが別個に形成され、平板部11の一方の面上に隔壁12が固定されてもよい。
【0037】
また、画素電極51上に平板部11が形成されているので、画素電極51が直接に分散液20に触れない。したがって、画素電極51が分散液20によって例えば侵食されるなどの不具合が防止されている。分散液20に対して化学的に安定した材料を用いて画素電極51が構成されている場合には、セルマトリクス10が隔壁12のみで構成されてもよい。すなわち、素子基板50上に平板部11を介さずに隔壁12が配置されてもよい。これにより、分散液20の電気泳動粒子21を移動させるために画素電極51と対向電極61との間に印加される駆動電圧を低減することができる。
【0038】
本実施形態では、1つの画素電極51上に1つのセル13が構成されるように平板部11および隔壁12が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの画素電極51上に複数のセル13が構成されるように平板部11および隔壁12を形成してもよい。
【0039】
分散液20は、複数の電気泳動粒子21が分散媒22中に分散されてなる液体である。
電気泳動粒子21は、例えば、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子である。顔料粒子を組成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料等がある。また、樹脂粒子を組成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等がある。複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子などがある。これらの各種材料からなる電気泳動粒子21は、例えば正または負に帯電した状態で分散媒22中に分散されている。
【0040】
また、分散液20中に分散される電気泳動粒子21は、1種の帯電粒子に限定されない。例えば、互いに帯電時の極性が異なる白色と黒色の2種の帯電粒子や、色が異なる2種の電気泳動粒子のうちの一方が帯電粒子であってもよい。
【0041】
分散媒22は、親油性の炭化水素系の溶媒であり、例えば、イソパラフィン系溶媒であるアイソパー(登録商標)を含む。即ち、分散媒22は、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーLのうちいずれか1種類を含む液体、もしくは、これらのうちの2種類以上を混合した液体、或いは、これらのうちのいずれか1種類以上と他の種類の炭化水素系の溶媒とを混合した液体である。
【0042】
セルマトリクス10の複数のセル13は、隔壁12を介して平板部11と対向するように設けられた封止膜30によって封止されている。
【0043】
図3に示すように、封止膜30は、隔壁12および分散液20を覆うように順に配置された、例えばアニオン性の第1重合性界面活性剤31と、カチオン性の第2重合性界面活性剤32と、ポリマー膜36と、アニオン性の第3重合性界面活性剤33とを含んで構成されている。
なお、図3では、素子基板50に対向配置される対向基板60を図示省略している。
【0044】
ポリマー膜36は、重合性モノマーが重合反応して形成されている。重合反応には、過硫酸カリウム(KPS)等の重合開始剤が用いられる。
詳しくは後述するが、封止膜30は、イオン性の重合性界面活性剤によって挟まれた重合性モノマーに重合開始剤を添加して重合反応させたポリマー膜36を有するものである。このようなポリマー膜36の形成は、アドミセルポリメリゼーション(AMP)と呼ばれている。
重合性モノマーを挟む一方のイオン性の重合性界面活性剤を分散液20の表面に均一に配置することによって、重合後に得られるポリマー膜36の膜厚をサブミクロン単位で制御可能としたものである。
また、ポリマー膜36は、電気泳動表示装置100の信頼性を確保する観点から水分やガスの侵入を抑制するように疎水性を示すことが好ましい。そのため、重合性モノマーとして疎水性モノマーを用いることが好ましい。
【0045】
疎水性モノマーとしては、その構造中に疎水性基と重合性基とを少なくとも有するもので、疎水性基が脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等を、脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、イソボルニル基等を、芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基であって、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基からなる群から選択されるのが好ましい。
【0046】
アニオン性の第1重合性界面活性剤31は、その構造中に、親油性の炭化水素系溶媒である分散媒22に馴染み易い疎水性基31aと、重合性基31bと、親水性基とを含むものであって、具体的な例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、または特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報または特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報または特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体などを挙げることができる。
アニオン性基(帯電基)としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、カルボニル基およびこれらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。代表的には、疎水性基としてはアクリル基、親水性基としてはエチレンオキサイド、アニオン性基としてはスルホン基などを挙げることができる。
また、第1重合性界面活性剤31は、疎水性基を備えていることから、前述した樹脂製の隔壁12に対しても、その表面に親和して配置させることができる。
なお、第1重合性界面活性剤31は、親水性基を含むことに限定されず、重合性基と、疎水性基と、帯電基とを含む構成のものでも採用することができる。
【0047】
第1重合性界面活性剤31に対して反対の極性を示すカチオン性の第2重合性界面活性剤32は、例えば疎水性基32aと、重合性基32bと、親水性基とを含むものであって、具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
【0048】
カチオン性の第2重合性界面活性剤32のカチオン性基(帯電基)としては、第1アミンカチオン、第2アミンカチオン、第3アミンカチオン、第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。第1アミンカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH3+)などを、第2アミンカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(R2NH2+)などを、第3アミンカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(R3NH+)などを、第四級アンモニウムカチオンとしては(R4N+)などを挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基32aおよび重合性基32bであり、下記に示すものを挙げることができる。前掲のカチオン性基の対アニオンとしては、Cl-、Br-、I-等を挙げることができる。
疎水性基32aとしては、アルキル基、アリール基およびこれらが組み合わされた基からなる群から選択されることが好ましい。
【0049】
重合性基32bとしては、不飽和炭化水素基が好ましく、さらに詳しくは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基からなる群から選択されたものであることが好ましい。このなかでも特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい例として例示できる。
第2重合性界面活性剤32は、第1重合性界面活性剤31と同様に、親水性基を含むことに限定されず、疎水性基32aと、重合性基32bと、帯電基とを含む構成のものでも採用することができる。重合後に得られる封止膜30の厚みをできるだけ薄くしたいという観点からすると、余計な構成を含まず簡素な構成の重合性界面活性剤を用いることが望ましい。
【0050】
アニオン性の第3重合性界面活性剤33は、前述したアニオン性の第1重合性界面活性剤31として挙げられたものを同じく好適に用いることができる。また、第1重合性界面活性剤31と同様に、親水性基を含むことに限定されず、重合性基と、疎水性基と、帯電基とを含む構成のものでも採用することができる。
【0051】
以上述べたように、本実施形態に係る電気泳動表示装置100によれば、セル13内部の分散液20は、重合性モノマーの仕込み量で膜厚が制御可能なポリマー膜36で封止されており、効率よく封止用材料を使用できる。また、封止膜30の膜厚は、サブミクロンからマイクロメートルレベルで制御可能であることから、電気泳動表示における、駆動電圧の低電圧化を実現し易い。このため、電気泳動表示装置100の表示駆動設計における自由度を増やすことが可能になると共に、低消費パワーで表示可能となり、電気泳動表示装置100を用いた例えば電子ペーパーのより一層の省電力化が可能になる。
【0052】
なお、第1重合性界面活性剤31と第2重合性界面活性剤32は、互いに極性が異なっていればよく、一方がカチオン性であれば他方がアニオン性の重合性界面活性剤を用いることができる。同様に一方がアニオン性であれば他方がカチオン性の重合性界面活性剤を用いることができる。
【0053】
上述したように、第1重合性界面活性剤31〜第3重合性界面活性剤33がイオン性であることから、これらの重合性界面活性剤を分散させた水溶液を用いて封止膜30を形成することができる。以降、本実施形態の電気泳動表示装置100の製造方法について述べる。
【0054】
<電気泳動表示装置の製造方法>
本実施形態の電気泳動表示装置100の製造方法について、図4〜図6を参照して説明する。図4は電気泳動表示装置の製造方法を示すフローチャート、図5(a)〜(e)および図6(f)〜(h)は電気泳動表示装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0055】
図4に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100の製造方法は、隔壁形成工程(ステップS1)と、分散液充填工程(ステップS2)と、第1重合性界面活性剤の配置工程(ステップS3)と、第2重合性界面活性剤の配置工程(ステップS4)と、重合性モノマーの配置工程(ステップS5)、第3重合性界面活性剤の配置工程(ステップS6)、重合工程(ステップS7)と、を含む。
【0056】
より具体的には、ステップS1の隔壁形成工程は、図5(a)に示すように、フォトリソグラフィー法等を用いて厚みが平板部11を含む隔壁12を形成する。隔壁12の高さは1μm〜100μm程度であり、隔壁12の幅は5μm〜数10μm程度となっている。平板部11は前述したように駆動電圧の上昇を考慮して厚みを数μm程度としている。
【0057】
ステップS2の分散液充填工程は、図5(b)に示すように、例えばスクリーンを用いた印刷法やインクジェットなどの吐出方法により、隔壁12で囲まれたセル13へ分散液20を充填する。セル13への分散液20の充填性を向上するために、基板本体52には紫外線の照射により生成したオゾンに晒すなどの活性化処理を施してもよい。
【0058】
ステップS3の第1重合性界面活性剤の配置工程では、図5(c)に示すように、まず、分散液20が充填された素子基板50を反転した後、水相70へ浸す。その際、セル13内の分散液20は毛管力や隔壁12と分散液20との相互作用で水相70に分散することなく保持されている。続いて、図5(d)に示すように、第1重合性界面活性剤31を水相70へ導入することにより、分散液20や隔壁12の表面に第1重合性界面活性剤31の単分子膜が形成される。
【0059】
ステップS4の第2重合性界面活性剤の配置工程では、図5(e)に示すように、第1重合性界面活性剤31とは反対の電荷を持つ第2重合性界面活性剤32を水相70に導入して配置する。ステップS3において分散液20や隔壁12の表面には第1重合性界面活性剤31の単分子膜が形成されているので、第1重合性界面活性剤31と等量の第2重合性界面活性剤32をイオン的な引力相互作用で配置することができる。第1重合性界面活性剤31および第2重合性界面活性剤32は単分子層で配置されることが好ましい。分散液20や隔壁12の表面を被覆するための重合性界面活性剤の分子数は基板面積で決まり、例えば10cm角の基板を用いた場合には、水相70を1×10-5mol/L(リットル)程度の濃度の重合性界面活性剤水溶液に調整すればよい。
【0060】
ステップS5の重合性モノマーの配置工程では、図6(f)に示すように、所定量の重合性モノマーとしての疎水性モノマー35を水相70に入れ、ゆっくりと分散させる。疎水的な相互作用により疎水性モノマー35が第2重合性界面活性剤32の近傍に配置される。疎水性モノマー35の濃度もまた基板面積で決まるが、例えば10cm角基板で数100nm程度の膜厚を得る場合は、1×10-2mol/L(リットル)程度の濃度で疎水性モノマー35を水相70に分散させて、第2重合性界面活性剤32に疎水性モノマー35を配置させればよい。
【0061】
ステップS6の第3重合性界面活性剤の配置工程では、図6(g)に示すように、疎水性モノマー35に、イオン性の第3重合性界面活性剤33を水相70に導入することにより配列させる。第3重合性界面活性剤33の分子数は基板の面積で決まる。例えば10cm角基板で、水相70における第3重合性界面活性剤33の濃度を1×10-3mol/L(リットル)程度にすればよい。これにより第3重合性界面活性剤33と疎水性モノマー35とからなるミセル構造が分散液20上および隔壁12上に形成される。
【0062】
ステップS7の重合工程では、図6(h)に示すように、このミセル構造をポリマー膜化するために、例えば水相70を50℃〜80℃程度に加温した後、1×10-3mol/L(リットル)程度の過硫酸カリウム水溶液からなる重合開始剤80を水相70へ導入しながら重合反応を行う。これにより、図3に示したように、疎水性モノマー35は、第2重合性界面活性剤32と第3重合性界面活性剤33との間において、第2重合性界面活性剤32の重合性基32bや第3重合性界面活性剤33の重合性基33bと結びついた状態でポリマー化する。第1重合性界面活性剤31は分散液20の表面近傍で重合性基31b同士が重合する。すなわち、分散液20および隔壁12上にポリマー膜36が均一に形成される。このような製造方法を用いることにより、封止膜30をサブミクロン精度で成膜可能となる。
【0063】
(実施形態2)
<他の電気泳動表示装置>
次に本実施形態の他の電気泳動表示装置について、図7を参照して説明する。図7は実施形態2の電気泳動表示装置における分散液上の重合性界面活性剤と重合性モノマーとの相対的な位置関係を示す模式断面図である。なお、図7では対向基板60を図示省略している。
実施形態2の電気泳動表示装置は、実施形態1に対して重合性界面活性剤と重合性モノマーの構成が異なるものであって、他の構成は実施形態1と同様である。よって、実施形態1と同じ構成については、同じ符号を付して詳細の説明は省略する。
【0064】
図7に示すように本実施形態の電気泳動表示装置200は、分散液20が充填された複数のセル13を封止する封止膜230を有している。封止膜230は、分散液20および隔壁12を覆うように順に配置された、例えばアニオン性の第1重合性界面活性剤31と、カチオン性の第2重合性界面活性剤32と、ポリマー膜38と、を含んで構成されている。ポリマー膜38は、重合性モノマーとしての疎水性モノマー35とイオン性の親水性モノマー37とが重合したものである。つまり、実施形態1における第3重合性界面活性剤33の代わりに、イオン性の親水性モノマー37を適用したものである。
【0065】
イオン性の親水性モノマー37は、その構造中に帯電基(この場合は、アニオン性基)と重合性基とを少なくとも有するものである。アニオン性基としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、カルボニル基およびこれらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。
重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基であって、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基からなる群から選択されるのが好ましい。
【0066】
アニオン性基を有する親水性モノマー37以外のイオン性の親水性モノマーとしては、OH基を有する2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等、エチレンオキサイド基を有するエチルジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等、アミド基を有するアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等、アミノ基を含むN−メチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルアミノエステル類;N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、等のアルキルアミノ基を有する不飽和アミド類等と、ビニルピリジン等のモノビニルピリジン類、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなどのアルキルアミノ基を有するビニルエーテル類;ビニルイミダゾール等、N−ビニル−2−ピロリドン、などを挙げることができる。
【0067】
電気泳動表示装置200の製造方法(封止膜230の形成方法)としては、図4に示した、ステップS1〜ステップS4までは共通である。ステップS5の重合性モノマーの配置工程では、まず、疎水性モノマー35を水相70に導入した後に、イオン性の親水性モノマー37を導入する。これにより、カチオン性の第2重合性界面活性剤32に疎水性モノマー35が配置され、さらに疎水性モノマー35の外側にイオン性の親水性モノマー37が配置される。
ステップS7の重合工程では、第2重合性界面活性剤32および疎水性モノマー35ならびに親水性モノマー37が重合してポリマー膜38となり、所望の膜厚や特性を有する封止膜230が形成される。
【0068】
このような電気泳動表示装置200およびその製造方法によれば、実施形態1に比べて、より簡素な構成および簡素な工程で、低電圧駆動可能であって優れた表示品質を有する電気泳動表示装置200およびその製造方法を提供することができる。
【0069】
(実施形態3)
<電子機器>
次に、前述した電気泳動表示装置100や電気泳動表示装置200を適用した電子機器について、図8および図9を参照して説明する。図8は、電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
図8に示すように、本実施形態の電子機器としての電子ペーパー400は、電子ペーパー400は、可撓性を有し、従来の紙と同様の質感および柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体402を備えて構成されている。本体402には、前述した実施形態1に係る電気泳動表示装置100または実施形態2に係る電気泳動表示装置200が表示部401として搭載されている。
【0070】
図9は、電子機器の一例としての電子ノートの構成を示す斜視図である。
図9に示すように、電子機器としての電子ノート500は、図8で示した電子ペーパー400が複数枚束ねられ、カバー501に挟まれているものである。カバー501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
前述した電子ペーパー400および電子ノート500は、前述した実施形態1に係る電気泳動表示装置100または実施形態2に係る電気泳動表示装置200を備えるので、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0072】
(変形例1)第3重合性界面活性剤33は、アニオン性またはカチオン性の重合性界面活性剤に限定されず、ノニオン性の重合性界面活性剤を用いることもできる。ノニオン性の重合性界面活性剤としては、次のようなものが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどのエチレンオキシド付加型;グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステルなどのポリオールエステル型;多価アルコールアルキルエーテルなどのポリエーテル型;アルカノールアミン脂肪酸アミドなどのアルカノールアミド型が挙げられ、より具体的にはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系等を挙げることができる。
第3重合性界面活性剤33としてノニオン性重合性界面活性剤を用いた場合には、単独で使用できるだけでなく、イオン性重合性界面活性剤と組み合わせて使用できるメリットがある。ノニオン性重合性界面活性剤とイオン性重合性界面活性剤を混合するなどして、所望の特性を有する封止膜30を形成することができる。
【0073】
(変形例2)ポリマー膜36を構成する重合性モノマーは、上記疎水性モノマー35に限定されない。例えば、分子量の大きいモノマーを用いる事により、重合されるポリマー分子量も増大して緻密な膜が形成される。これにより水分やガス進入を防止する封止機能を向上させることが可能になる。
また、例えば多官能型アクリレート等の架橋剤を用いることで、重合形成されるポリマーの分子量を増大させると共に、より緻密な架橋構造を形成できるため、封止機能を向上させることができる。
また、分子量の大きなイオン性重合性界面活性剤を用いることにより、膜構成分子が高分子化する。重合開始点が少なくなるので、重合開始剤の量が分子量の低いイオン性重合性界面活性剤を用いたときに比べて少なく済むという利点もある。
【0074】
(変形例3)封止膜30は、分散液20と隔壁12とを覆って形成されることに限定されない。図10は変形例の電気泳動表示装置の構成を示す概略断面図である。なお、上記電気泳動表示装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
例えば、図10に示すように、変形例の電気泳動表示装置300は、電気泳動粒子21を含む分散液20が複数のセル13のそれぞれに充填されたセルマトリクス10、素子基板50、対向基板60、セル13ごとに分散液20の表面を覆う封止膜330を有している。画素電極51を有する素子基板50と、対向電極61を有する対向基板60とは、セルマトリクス10を挟んで接合されている。封止膜330は、上記実施形態1の電気泳動表示装置100における封止膜30の構成を採用することができる。つまり、イオン性の第1重合性界面活性剤31および第2重合性界面活性剤32ならびに第3重合性界面活性剤33、そして、第2重合性界面活性剤32と第3重合性界面活性剤33との間で重合したポリマー膜36を含むものである。
変形例の電気泳動表示装置330では、第1重合性界面活性剤31は、隔壁12を構成する材料に対して親和性を有する必要はない。これによって、隔壁12や第1重合性界面活性剤31の材料選択の自由度が向上するという利点がある。
【符号の説明】
【0075】
10…セルマトリクス、11…基板としての平板部、12…隔壁、13…セル、20…分散液、21…電気泳動粒子、22…分散媒、30…封止膜、31…第1重合性界面活性剤、31a…疎水性基、31b…重合性基、32…第2重合性界面活性剤、32a…疎水性基、32b…重合性基、33…第3重合性界面活性剤、33a…疎水性基、33b…重合性基、35…疎水性モノマー、36…ポリマー膜、37…親水性モノマー、38…ポリマー膜、100,200,300…電気泳動表示装置、230,330…封止膜、400…電子機器としての電子ペーパー、500…電子機器としての電子ノート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁と、
前記複数のセルのそれぞれに充填された電気泳動粒子を含む分散液と、
前記複数のセルを封止する封止膜とを備え、
前記封止膜は、前記分散液の表面に配置されたイオン性の第1重合性界面活性剤と、前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤と、第3重合性界面活性剤と、前記第2重合性界面活性剤と前記第3重合性界面活性剤との間において重合性モノマーが重合したポリマー膜と、を含むことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第3重合性界面活性剤は、イオン性の重合性界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記第3重合性界面活性剤は、ノニオン性の重合性界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
基板と、
前記基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁と、
前記複数のセルのそれぞれに充填された電気泳動粒子を含む分散液と、
前記複数のセルを封止する封止膜とを備え、
前記封止膜は、前記分散液の表面に配置されたイオン性の第1重合性界面活性剤と、前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤と、前記第2重合性界面活性剤に対して疎水性モノマーとイオン性の親水性モノマーとが重合したポリマー膜と、を含むことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項5】
基板上に複数のセルを区画する隔壁と、前記セル内に充填された電気泳動粒子を含む分散液とを備えた電気泳動表示装置の製造方法であって、
前記セル内に充填された前記分散液の表面にイオン性の第1重合性界面活性剤を配置する第1工程と、
配置された前記第1重合性界面活性剤に前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤を配置する第2工程と、
前記第2重合性界面活性剤に重合性モノマーを配置する第3工程と、
配置された前記重合性モノマーに第3重合性界面活性剤を配置する第4工程と、
前記重合性モノマーを重合させて、前記複数のセルを封止する封止膜を形成する第5工程と、を含むことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1から前記第4工程は、前記第1重合性界面活性剤、前記第2重合性界面活性剤、前記重合性モノマー、前記第3重合性界面活性剤のそれぞれが導入された水溶液中に、前記分散液が前記セル内に充填された前記基板を浸漬することによって行われ、
前記第5工程は、前記水溶液中に重合開始剤を導入することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項7】
基板上に複数のセルを区画する隔壁と、前記セル内に充填された電気泳動粒子を含む分散液とを備えた電気泳動表示装置の製造方法であって、
前記セル内に充填された前記分散液の表面にイオン性の第1重合性界面活性剤を配置する第1工程と、
配置された前記第1重合性界面活性剤に前記第1重合性界面活性剤に対して反対の極性を有するイオン性の第2重合性界面活性剤を配置する第2工程と、
前記第2重合性界面活性剤に疎水性モノマーを配置すると共に、前記疎水性モノマーにイオン性の親水性モノマーを配置する第3工程と、
前記疎水性モノマーと前記イオン性の親水性モノマーとを重合させて、前記複数のセルを封止する封止膜を形成する第4工程と、を含むことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1から前記第3工程は、前記第1重合性界面活性剤、前記第2重合性界面活性剤、前記疎水性モノマー、前記イオン性の親水性モノマーがそれぞれ導入された水溶液中に、前記分散液が前記セル内に充填された前記基板を浸漬することによって行われ、
前記第4工程は、前記水溶液中に重合開始剤を導入することにより行われることを特徴とする請求項7に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−3370(P2013−3370A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134869(P2011−134869)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】