電気泳動表示装置およびその製造方法
【課題】電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造とフルカラーの電気泳動表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置される素子基板30および対向基板31と、素子基板30と対向基板31との間に配置され、画素領域を区画する隔壁45と、少なくとも素子基板30、対向基板31および隔壁45によって囲まれた複数のセル51内に封入される電気泳動材料と、を有し、素子基板30および対向基板31の少なくともいずれか一方には、厚さ方向を貫通してセル51に達すると共に、当該セル51内に電気泳動材料を注入するための注入口31Aが複数形成されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置される素子基板30および対向基板31と、素子基板30と対向基板31との間に配置され、画素領域を区画する隔壁45と、少なくとも素子基板30、対向基板31および隔壁45によって囲まれた複数のセル51内に封入される電気泳動材料と、を有し、素子基板30および対向基板31の少なくともいずれか一方には、厚さ方向を貫通してセル51に達すると共に、当該セル51内に電気泳動材料を注入するための注入口31Aが複数形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置デバイスは、酸化チタン粒子やカーボン粒子に高分子と電荷を付与し、溶媒液中を泳動させることによって表示を行っている。表示品質を高めるために、電気泳動粒子の平均粒子径が数十〜数百nmである必要がある。そのため、液晶のように、対向配置された一対のガラス基板の周囲をシール材で封止したセルに、上記のような電気泳動材料を封入した場合、表示パネルを縦にすると重力の作用により電気泳動粒子が時間と共に沈降してしまい、良好な表示を得ることができなくなってしまう。
【0003】
そこで、表示エリアに対応するセル領域を複数に区切る構造とすることで、電気泳動粒子の沈降の影響を小さくして、良好な表示が長期的、かつ、継続的に得られるようにする必要がある。
このような課題を解決するために、一対の基板間に隔壁を形成して電気泳動粒子の沈降を画素領域内で留めておく構造が提案されている。
例えば下記特許文献1では、素子基板上に、表示エリアを画素領域ごとに区切る隔壁を形成して各画素領域内にインクジェットを用いて電気泳動材料を注入した後、素子基板上に隔壁を介して対向基板を貼り合わせることによって製造される表示パネルが開示されている。
また、特許文献2では、隔壁に設けられた開口を介して隣り合う画素領域が連通されており、行方向あるいは列方向で連通する複数の画素領域内に電気泳動材料を流し込むことによって製造される表示パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−10796号公報
【特許文献2】特開2005−276251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、電気泳動材料を注入した後に対向基板を貼り合わせることから、セル内への気泡の混入やこれに起因して十分な接着面積を確保することができない他、貼り合わせ領域に電気泳動材料が付着して接着力が弱くなるなどして、信頼性の面で問題があった。一方、特許文献2では、一方向に並ぶ複数の画素領域に同一の電気泳動材料を注入することになるため、多色粒子による表示を行いたい場合に粒子の種類に制限があり、十分な色表示ができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造とフルカラーの電気泳動表示装置およびその製造方法を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置される第1基板および第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、画素領域を区画する隔壁と、少なくとも前記第1基板、前記第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に封入される電気泳動材料と、を有し、前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方には、厚さ方向を貫通して前記セルに達すると共に、当該セル内に前記電気泳動材料を注入するための注入口が複数形成されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、隔壁によって区画された画素領域に対応するセル内に電気泳動材料が保持されており、これら各セル内に電気泳動材料を注入するための注入口が形成されていることから、製造時において、隔壁を介して第1基板と第2基板とを貼り合わせた後に、各セル内に電気泳動材料を注入することによって本実施形態の電気泳動表示装置が得られる。つまり、第1基板および第2基板同士を貼り合わせた後に電気泳動材料を注入することができれば、これらの貼り合わせ領域に電気泳動材料が付着して接着力が弱くなるのを防止できるとともに、各セル内への気泡の混入も最小限に抑えることができる。
また、セルに連通する注入口を介して電気泳動材料を注入することができるので、セルごとに異なる電気泳動材料を注入することも可能となり、フルカラー表示が可能なものとなっている。
また、画素領域ごとに区画されたセル内に電気泳動材料が保持されるので、電気泳動表示装置を縦にした状態で使用したとしても、電気泳動粒子の沈降を各セル内で留めておくことができるので、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えることができる。
したがって、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造を有する電気泳動表示装置が得られる。
【0009】
また、前記第1基板あるいは前記第2基板の外面に、前記注入口を封止するための封止基板が設けられている構成としてもよい。
これによれば、封止基板によって複数の注入口を一度に閉塞することができるので、個々に注入口を閉塞するに比べて簡単かつ確実に閉塞することができる。
【0010】
また、前記注入口が前記第1基板および前記第2基板の両方に形成されている構成としてもよい。
これによれば、第1基板側および第2基板側の両方から電気泳動材料を注入することが可能になる。
【0011】
また、前記注入口が形成されていない前記セルの前記隔壁に、前記注入口が形成された前記セルに連通する連通孔が形成されている構成としてもよい。
これによれば、製造時において、1つの注入口を介して1つのセル内に注入された電気泳動材料が、該セルから隔壁に形成された貫通孔を介して隣のセル内に流入することとなり、少ない注入口であっても複数のセルに電気泳動材料を注入させることができる。
【0012】
また、前記セルごとに前記注入口が設けられている構成としてもよい。
これによれば、各セルに対して異なる電気泳動材料を注入することができるので、よりフルカラーに近い表示が可能な電気泳動表示装置が得られる。
【0013】
また、前記複数のセルごとに1つの前記注入口が設けられている構成としてもよい。
これによれば、注入口の数が少なくても、複数のセルに対して同時に電気泳動材料を注入することが可能になる。
【0014】
また、前記注入口の一部が前記隔壁と平面視で重なっている構成としてもよい。
これによれば、隣り合う複数のセルに対して同一の電気泳動材料を注入することができる。
【0015】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、第1基板上に複数の画素領域を区画する隔壁を形成する工程と、前記第1基板上に前記隔壁を介して第2基板を貼り合わせる工程と、前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に設けられた注入口を介して、少なくとも前記第1基板、第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に電気泳動材料を注入する工程と、前記注入口を封止する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
これによれば、電気泳動材料を注入する前に、隔壁を介して第1基板および第2基板を貼り合わせて空の表示パネルを製造して、第1基板あるいは第2基板に設けられた注入口を介して各セル内に電気泳動材料を注入することにより、隔壁と基板との貼り合わせ領域に付着した電気泳動材料の分散媒による接着不良や材料の未充填を防止することができる。これにより、品質および信頼性の高い電気泳動表示装置が得られる。また、各画素領域に異なる電気泳動材料を注入することができるため、最適なフルカラー表示が行えるようになる。また、各セル内に注入する電気泳動材料の粒子量を変更することによって階調表示が可能となり、より最適な色品質を実現することのできる電気泳動表示装置が得られる。
【0017】
また、前記電気泳動材料を注入する工程の前に、前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に、基板の厚さ方向を貫通する注入口を形成する工程を有する方法としてもよい。
これによれば、隔壁の大きさに応じて注入口の位置や大きさ等を適宜設定することができる。
【0018】
また、前記電気泳動材料を注入する工程において、前記セルごとに区画された材料保持部を有する材料ホルダーを利用し、前記材料ホルダーと、前記注入口が形成された前記第1基板あるいは前記第2基板とを密着させた後、真空状態から大気に戻すことによって前記材料ホルダーから前記セル内に前記電気泳動材料が注入される製造方法としてもよい。
【0019】
これによれば、従来の液晶装置の製造方法を用いて製造することができるため、設備投資費用を大幅に削減させることができる。
【0020】
また、前記注入口を前記隔壁の近傍に形成する製造方法としてもよい。
これによれば、材料注入時に基板の変形等が生じることを防いで材料ホルダーと基板との間に隙間を生じさせることなく、各セル内に電気泳動材料を注入することができる。
【0021】
また、前記注入口の周辺に前記電気泳動材料をはじくような疎溶媒性処理を施しておく製造方法としてもよい。
これによれば、電気泳動材料の注入時に、材料の染み出しやその後の封止のための接着剤あるいは粘着材との密着不良などが生じるのを防止できる。
【0022】
また、前記材料保持部内に前記電気泳動材料を保持するための金属あるいは樹脂からなる繊維部材を配置する製造方法としてもよい。
これによれば、繊維部材に電気泳動材料を保持させることができるので、材料ホルダーからの電気泳動材料の染み出しを防止できるとともに、その後に行う注入口の封止を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の電気泳動表示装置を示す概略構成を示す部分断面図。
【図2】同、電気泳動表示装置の等価回路図。
【図3】1画素の構成を示す等価回路図。
【図4】1画素の構成を示す断面図。
【図5】電気泳動表示装置の製造プロセスについて示す断面図。
【図6】電気泳動表示装置の製造プロセスについて示す断面図。
【図7】インクホルダーの製造方法を示す図。
【図8】インクホルダーの変形例を示す平面図。
【図9】インクホルダーの変形例を示す平面図。
【図10】第2実施形態の電気泳動装置の全体構成を示す断面図。
【図11】電気泳動表示装置の製造方法について示す断面図。
【図12】隔壁と注入口との位置関係の他の例を示す平面図。
【図13】隔壁の変形例を示す断面図。
【図14】隔壁の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図8を用いて説明する。
図1は、本実施形態の電気泳動表示装置を示す概略構成を示す部分断面図である。図2は、同、電気泳動表示装置の等価回路図である。図3は、1画素の構成を示す等価回路図である。図4は、1画素の構成を示す断面図である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、素子基板30と、素子基板(第1基板)30に対向配置された対向基板(第2基板)31とこれらの間に挟持される電気泳動素子32とにより構成されている。また、対向基板31の外面側には、接着剤やホットメルトからなる接着層4を介して封止基板12が設けられている。そして、素子基板30と対向基板31とが重なる領域には複数の画素40が配置されてなる表示部5が形成されている。各画素40には、種類の異なる電気泳動材料が封入されており、画素40ごとに異なる色表示が行える構成となっている。
【0026】
表示部5には、複数の画素40が行方向および列方向にマトリクス状に配列されている。表示部5の周辺には、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62が配置されている。表示部5には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68A,68Bとが設けられており、これらの交差位置に対応して画素40が設けられている。
本実施形態の走査線66は、表示部5内において2つに分岐された第1走査線66Aおよび第2走査線66Bを有する。
なお、「行方向」とは、表示部における「水平方向」のことであり、図2の左右方向に対応する。「列方向」とは、水平方向に直交する「垂直方向」のことであり、図2の上下方向に対応する。
【0027】
画素40には、電気泳動素子32を構成する電気泳動層132、2つの選択トランジスタTR1,TR2(図3)、複数の画素電極35A,35Bが少なくとも備えられている。画素40内における画素電極35A,35Bの数は、一つずつでも複数ずつであってもでもよい。
【0028】
図3に示すように、選択トランジスタTR1は、ゲートに第1走査線66Aが接続され、ソースにデータ線68Aが接続され、ドレインに画素電極35Aが接続されている。また、選択トランジスタTR2は、ゲートに第2走査線66Bが接続され、ソースにデータ線68Bが接続され、ドレインに画素電極35Bが接続されている。
ここで、選択トランジスタTR1,TR2のドレインと保持容量線(不図示)との間に保持容量が配置された構成とすることも可能である。保持容量線は、例えば、走査線66と平行して形成される。また、電気泳動素子32に電圧を印加するための、保持容量以外の手段を具備しても良い。
【0029】
画素40内に設けられた複数の画素電極35Aどうしは、例えば不図示の接続電極を介して選択トランジスタTR1に接続され、同様に、画素40内に設けられた複数の画素電極35Bどうしは、不図示の接続電極を介して選択トランジスタTR2に接続されている。これによって、画素電極35A,35Bどうしが互いに独立駆動されるようになっている。
【0030】
また、走査線駆動回路61は、複数の走査線66を介して各画素40に接続されており、各走査線66を順次選択し、画素40に設けられた選択トランジスタTR1,TR2をそれぞれオン状態とするタイミングを規定する選択信号を、選択した走査線66を介して供給する。また、データ線駆動回路62は、複数のデータ線68A,68Bを介して各画素40に接続されており、各画素40に対応する画素データを規定する画像信号を画素40に供給する。
【0031】
図4に示すように、素子基板30を構成する基板本体71は、ガラスやプラスチック、金属等で構成されている。この基板本体71は、視認側と反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。素子基板30の電気泳動素子32が配置される側の面には、図2に示した走査線66、データ線68A,68B、選択トランジスタTR1,TR2などを含む駆動層(不図示)が形成されており、その最上層に互いに独立して駆動される画素電極35A,35Bが複数設けられている。
【0032】
具体的には、基板本体71の電気泳動素子32側の一面に半導体層41aが形成され、半導体層41aを覆うようにゲート絶縁膜41bが形成されている。半導体層41aには、例えばアモルファスシリコン、多結晶シリコン等の非単結晶シリコン材料、酸化物半導体材料、In−Ga−Zn−O等の透明酸化物半導体材料、フルオレン−ビチオフェン共重合体等の有機物半導体材料、等を用いることができる。半導体層41aに酸化物半導体材料を用いる場合には、ゲート絶縁膜41bにも酸化物絶縁材料を用いることが望ましく、また、半導体層41aに有機物半導体材料を用いる場合には、ゲート絶縁膜41bにも有機絶縁材料を用いることが望ましい。
【0033】
ゲート絶縁膜41b上には、選択トランジスタTR1,TR2のゲート電極41eとして機能する走査線66A,66Bが形成されている。走査線66A,66Bには、例えばAl−Nd合金とMoとの金属積層膜等を用いることができる。その他、Al単体、ITO、Cu、Cr、Ta、Mo、Nb、Ag、Pt、Pd、In、Ndやそれらの合金等を用いることができる。第1層間絶縁膜74が、走査線66A,66Bを覆うように基板本体71の全面に形成されている。第1層間絶縁膜74には、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化酸化膜等の無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料を用いることができる。第1層間絶縁膜74上には、コンタクトホール75を介して半導体層41aのソース領域と電気的に接続されたデータ線68A,68Bが形成されている。データ線68A,68Bにも走査線66と同様の材料を用いることができる。なお、図2では、ゲート電極が半導体層41aより図2中の上側に形成されるトップゲート構造となっているが、ゲート電極が半導体層41aより下側に形成されるボトムゲート構造であってもよい。
【0034】
第2層間絶縁膜76が、データ線68A,68Bを覆うように第1層間絶縁膜74上の全面に形成されている。第2層間絶縁膜76には、第1層間絶縁膜74と同様、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化酸化膜等の無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料を用いることができる。第2層間絶縁膜76上には、コンタクトホール77を介して半導体層41aのドレイン領域と電気的に接続された画素電極35A,35Bが形成されている。画素電極35A,35Bは、例えばITO(インジウム・スズ酸化物)等の透明導電材料やAl等の金属材料などにより形成されており、後述する対向電極37との間で電気泳動素子32に電圧を印加する電極である。ここでは、画素電極35A,35Bの平面形状は図示しないが、円形状であっても略矩形状であってもよく、その他の形状でもよい。
【0035】
一方、対向基板31を構成する基板本体79は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、視認側に配置されるため透明基板が用いられる。基板本体79の電気泳動素子32側の面には対向電極37が形成されている。対向電極37は画素電極35A,35Bとともに電気泳動素子32に電圧を印加する電極であり、MgAg(マグネシウム銀)、ITO、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などの透明導電材料から形成されている。
【0036】
素子基板30と対向基板31とは隔壁45を介して貼り合わされている。そして、隔壁45によって画素領域ごとに区画されたセル51内には電気泳動層132が形成され、これによって、素子基板30と対向基板310との間の電気泳動素子32が構成される。
電気泳動層132は、互いに異なる色に着色された2種類の帯電粒子(負帯電粒子26、正帯電粒子27)と、これらを分散保持する透明な分散媒21と、からなる電気泳動材料によって形成される。
【0037】
また、セル51ごとに封入される電気泳動材料が異なっており、例えば、隣り合うセル51どうしにおいて負帯電粒子26および正帯電粒子27の色が異なっている。例えば、3種類以上の電気泳動材料を用いることもでき、走査線あるいはデータ線の延在方向に並ぶ各セル51内の電気泳動層132の種類を異ならせることが可能である。ここで、各セル51内に配置される負帯電粒子26と正帯電粒子27との色の関係が互いに補色の関係にある。これにより、各画素40において異なる色の表示が可能となっている。
なお、着色された帯電粒子と、この帯電粒子の色と補色の関係にある色に着色された分散媒とからなる電気泳動材料を用いてもよい。
【0038】
本実施形態の対向基板31には、基板本体79および対向電極37の厚さ方向を貫通して、少なくとも素子基板30、対向基板31および隔壁45によって区画形成されたセル51に達する貫通孔が複数形成されており、これが製造時に電気泳動材料を注入するための注入口31Aとして機能する。注入口31Aは、セル51ごとに設けられ、隔壁45の近傍であって平面視において隔壁45とは重ならない位置に形成されている。
【0039】
これら注入口31Aの内側には各セル51内に配置された電気泳動材料が入り込んでおり、素子基板30の電気泳動素子32とは反対側の面(外面)に、接着層4を介して貼り合わされた封止基板12によって、各注入口31Aのそれぞれの開口側が閉塞されている。
また、注入口31Aの平面視形状は円形、楕円形、矩形あるいはその他の形状であってもよい。
【0040】
[電気泳動表示装置の製造方法]
図5および図6は、電気泳動表示装置の製造プロセスについて示す断面図である。
まず、図5(a)に示すように、素子基板30上に各画素領域(画素40)を区画形成する隔壁45を形成する。
ここでは、樹脂フィルムからなる基板本体71上に走査線66、データ線68、選択トランジスタ41および画素電極35A,35Bなどの駆動層(不図示)が予め形成された素子基板30を用意し、この駆動層(不図示)の表面上に、感光性樹脂材料(例えば、感光性ポリイミド等)を厚さ15〜30μmとなるように、スピンコートあるいは印刷法を用いて塗布する。この塗布膜を乾燥させた後、フォトリソグラフィによって複数の画素領域を区切る格子状になるようにパターン形成し、高さ1〜10μmの隔壁45を形成する。
【0041】
次に、図5(b)に示すように、素子基板30上に隔壁45を介して対向基板31を対向配置させて貼り合わせる。
対向基板31として、樹脂フィルムからなる基板本体79の一面に対向電極37が予め形成されたものを用意する。この対向基板31を隔壁45の素子基板30とは反対側の端部上に配置して、接着剤あるいは粘着材を介して貼り合わせ、隔壁45の開口側を閉塞する。これにより、素子基板30、対向基板31および隔壁45によって囲まれた複数のセル51が形成され、空の表示パネル10Aが得られる。
【0042】
次に、対向基板31にその厚さ方向を貫通する注入口31Aを複数形成する。
図5(c)に示すように、先の工程において形成した表示パネル10Aのセル51(画素)ごとに対向基板31の外面側からレーザーを照射することによって、基板本体79および対向電極37の厚さ方向を貫通する貫通孔34を形成する。このとき、隔壁45の近傍に貫通孔34を形成することが好ましい。この貫通孔34は、後の工程においてセル51内に電気泳動材料を注入するための注入口31Aとして機能する。注入口31A(貫通孔34)の直径が小さすぎると、後に電気泳動材料をセル51内に注入することが困難となり、大きすぎると電気泳動材料があふれ出す(にじみの要因となる)おそれがあるため、直径を1〜30μmの範囲内で設定することが好適である。なお、帯電粒子の粒径が100〜600nmであるため、孔径が10μm程度あれば十分に注入可能である。
また、使用するレーザーの種類としては、YAGレーザーあるいはCO2レーザーが挙げられる。
対向基板31を貼り合わせた後に注入口31Aを形成することによって、表示パネル10Aの各セル51に応じて、注入口31Aの形成位置や大きさ等を適宜設定することができる。
【0043】
なお、先の工程において、予め、複数の注入口31Aが形成された対向基板31を貼り合わせても良い。これにより、穿設工程を削減できて製造時間を短縮できる。
【0044】
次に、対向基板31の外面31bに開口する注入口31Aの周辺部に、電気泳動材料32Aをはじくような疎溶媒性処理を施す。これにより、後の工程において電気泳動材料32Aを注入する際に、外面31b上への材料の染み出しやその後の開口封止のための接着剤あるいは粘着材との密着不良などが生じるのを防止できる。
【0045】
次に、図5(d)に示すように、注入口31Aを介して、空の各セル51内に電気泳動材料32Aを注入する。
本実施形態では、表示パネル10A内に電気泳動材料32Aを注入する際にインクホルダー(材料ホルダー)80を利用する。インクホルダー80は、隔壁81によって区画された複数の材料保持部82と、隔壁81の一端側に接続されて各材料保持部82の底面を構成する底部83とにより構成されている。各材料保持部82の一端側は開放され、内部に表示パネル10Aの各セル51に対応した電気泳動材料32Aがそれぞれ配置されている。底部83には、表示パネル10Aの各セル51に対応する位置に注入口83aが形成されている。そして、後の工程において、インクホルダー80を表示パネル10A上に載置させた場合に、インクホルダー80の注入口83aと、表示パネル10Aの注入口31Aとが平面視で重なるようにする。注入口83aの孔径は、注入口31Aを構成する貫通孔34の孔径と略等しい。
【0046】
また、インクホルダー80の各材料保持部82内には、親溶媒性処理が施された繊維部材84(図7)が配置されている。繊維部材84としては、樹脂繊維あるいは金属繊維が挙げられる。このような繊維部材84に分散媒21を含浸させて電気泳動材料32Aを材料保持部82内に保持させることにより、電気泳動材料32Aの染み出しを防止できるとともに、その後の封止のための接着剤あるいは粘着材との密着不良等も防止することができる。
【0047】
そして、真空チャンバ内に表示パネル10Aとインクホルダー80とを配置する。このような真空雰囲気下において表示パネル10Aの対向基板31上にインクホルダー80を対向配置させた状態で、表示パネル10Aの注入口31Aとインクホルダー80の注入口83aとが平面視で重なるように位置合わせを行う。
【0048】
次に、図6(a)に示すように、表示パネル10Aとインクホルダー80とを密着させた状態で大気圧に戻すことにより、インクホルダー80の各材料保持部82内の電気泳動材料32Aが注入口83aおよび注入口31Aを介して、表示パネル10Aの各セル51内に注入される。
【0049】
ここで、注入口31Aが隔壁45の近傍に形成されていることから、注入時に、対向基板31の変形が防止されてインクホルダー80と対向基板31との間に隙間が生じることがなく、この結果、各セル51内に電気泳動材料32Aを良好に注入することができる。
このようにして、図6(b)に示すように各セル51内に電気泳動層132が形成され、これら複数の電気泳動層132により、素子基板30と対向基板31との間に電気泳動素子32が構成される。
以上により、本実施形態の電気泳動表示装置100が完成する。
【0050】
図7は、インクホルダーの製造方法を示す図である。
上記したインクホルダー80は、以下の方法によって形成されたものである。
図7に示すように、まず、樹脂基板あるいは金属基板からなる底部83の一面側にフォトリソグラフィ(感光性ポリイミド)あるいは鍍金等により隔壁81を作製し、注入用の電気泳動材料32Aを入れておくための複数の材料保持部82を形成する。
次に、レーザー等により、底部83の、材料保持部82に対応する位置に複数の注入口83aを形成する。ここで、注入口83aの内周面に対して、電気泳動材料32Aをはじく疎溶媒性処理を施す。
次に、各材料保持部82内に電気泳動材料32Aを保持させるための繊維部材84を配置する。
その後、例えばインクジェット法などを用いて、各材料保持部82内に、表示パネル10Aの各セル51に対応する電気泳動材料32Aをそれぞれ配置(注入)する。
このようにしてインクホルダー80は形成される。
なお、隔壁81の材料保持部82側の壁面に対して親溶媒性処理を施して、材料保持力を向上させてもよい。
【0051】
本実施形態の電気泳動表示装置100およびその製造方法によれば、隔壁45によって区画された複数の画素領域に対応する各セル51内に電気泳動材料32A(電気泳動層132)が保持されており、これらセル51ごとに電気泳動材料32Aを注入するための注入口31Aが形成されていることから、製造時において、隔壁45を介して素子基板30と対向基板31とを貼り合わせた後に、各セル51内に電気泳動材料32Aを注入することによって本実施形態の電気泳動表示装置100が得られる。つまり、素子基板30および対向基板31同士を貼り合わせた後に電気泳動材料32Aを注入することができれば、これら基板30,31と隔壁45との貼り合わせ領域に電気泳動材料32Aが付着して接着力が弱くなるのを防止できるとともに、各セル51内への気泡の混入を抑えることができる、あるいは気泡の混入をなくすことができる。
【0052】
また、セル51に連通する注入口31Aを介して電気泳動材料32Aを注入することができるので、セル51ごとに異なる電気泳動材料32Aを注入することも可能となり、フルカラー表示が可能な表示装置となっている。
【0053】
また、画素領域ごとに区画されたセル51内に電気泳動材料32Aが保持されるので、電気泳動表示装置100を縦にした状態で使用したとしても、粒子26,27の沈降を各セル51内で留めておくことができるので、各粒子26,27の沈降を最小限に抑えることができる。
したがって、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造を有する電気泳動表示装置100が得られる。
【0054】
また、封止基板12によって対向基板31に設けられた複数の注入口31Aを一度に封止する構成のため、各注入口31Aを個々に閉塞する場合に比べて簡単且つ確実に閉塞することができる。
【0055】
また、本実施形態の製造方法によれば、電気泳動材料32Aを注入する前に、隔壁45を介して素子基板30および対向基板31を貼り合わせて空の表示パネル10Aを製造しておくことにより、電気泳動材料32Aの分散媒21による接着不良や材料の未充填を防止することができる。これにより、品質および信頼性の高い電気泳動表示装置100が得られる。また、各画素領域(セル51)に異なる種類の電気泳動材料32Aを注入することができるため、最適なフルカラー表示が行えるようになる。また、各セル51内に注入する電気泳動材料32Aの粒子量を変更することによって階調表示が可能となり、より最適な色品質を実現することのできる電気泳動表示装置100が得られる。
【0056】
また、電気泳動材料32Aを注入する工程において、セル51ごとに区画された材料保持部82を有するインクホルダー80を利用し、このインクホルダー80と、注入口31Aが形成された対向基板31とを密着させた後、真空状態から大気に戻すことによってインクホルダー80の各材料保持部82からセル51内に電気泳動材料32Aがそれぞれ注入されるようになっている。このため、従来の液晶装置の製造方法を用いて製造することができるため、設備投資費用を大幅に削減させることができる。
【0057】
また、本実施形態の電気泳動表示装置100およびその製造方法であれば、複数種類の電気泳動材料を用いることができるので、容易にフルカラー表示を実現することが可能である。
【0058】
なお、インクホルダー80の底部83の構成は上記に限ったものではなく、例えば、図8(a)に示すようにメッシュ状に構成されていてもよい。これにより、表示パネル10A側の注入口31Aとの位置ずれによる注入不良を防ぐことができる。ここでは、対向基板31を構成する基板本体79と同じ材料(ここでは、PET)を用いて底部83を構成する。これにより、基板本体79と底部83との線膨張係数が等しくなるので、寸法変化に伴うズレが生じにくくなる。なお、同じ材料に限らず、線膨張係数の近い材料を用いて構成してもよい。
【0059】
また、対向基板31の外面に電気泳動材料32Aが付着してしまうのを防止するために、図8(b)に示すように、注入口31A以外の部分をマスクMで覆うようにしてもよい。マスクMには、注入口31Aに対応する貫通孔83bが形成されている。
【0060】
一般的に、樹脂材料からなるインクホルダー80の底部83は環境変化により伸縮し、その寸法変化が無機材料に比べて大きい。インクホルダー80(底部83)に寸法変化が生じた場合、各材料保持部82に連通する注入口83aと、表示パネル10A側の注入口31Aとの位置がずれてしまい、電気泳動材料32Aを上手く注入することができなくなってしまう。
【0061】
そこで、図9に示すように、インクホルダー80の底部83に形成する注入口83aと、表示パネル10Aの対向基板31に形成する注入口31Aとの平面視形状を楕円または矩形状にするとともに、これらが互いに直交する方向に延在するように構成する。
これにより、インクホルダー80側の底部83の寸法変化を許容することができる。つまり、底部83の寸法変化によって注入口83aの延在方向の寸法が変化したとしても、平面視において少なくともその一部分が、注入口31Aと重なることになるため、インクホルダー80から表示パネル10A側へと確実に電気泳動材料32Aを注入させることが可能となる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態の電気泳動装置の全体構成を示す断面図である。
以下に示す本実施形態の電気泳動表示装置200の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、素子基板および素子基板の構成において異なる。よって、以下の説明では、素子基板について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、図1〜図7と共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0063】
本実施形態の電気泳動表示装置200は、2種類の電気泳動層132A,132Bからなる電気泳動素子32を備えており、対向基板31側だけでなく、素子基板30側にも電気泳動材料を注入するための注入口30Aが設けられている。
【0064】
本実施形態では、走査線あるいはデータ線の延在方向に沿って互いに表示色の異なる画素40A,40Bが交互に配置されている。
画素40Aは、透明な分散媒21中に複数の緑色の負帯電粒子26(G)と複数の赤色の正帯電粒子27(R)とを有する電気泳動層132Aが、セル51A内に封入されてなる。一方、画素40Bは、透明な分散媒21中に複数の黒色の負帯電粒子26(Bk)と複数の白色の正帯電粒子27(Bk)とを有する電気泳動層132Bが、セル51B内に封入されてなる。
これら各粒子26,27の対向電極37側で視認される面積に応じて、各画素40A,40Bにおける表示色の階調が制御される。
【0065】
素子基板30には、セル51Aごとに、分散媒21、複数の緑色の負帯電粒子26(G)および複数の赤色の正帯電粒子27(R)を有する電気泳動材料32Bを注入するための注入口31Aが1つずつ形成されている。注入口31Aは、基板本体71および、選択トランジスタや画素電極を有する駆動層(不図示)の厚さ方向を貫通してなる。
基板本体71の電気泳動素子32とは反対側の外面には、接着層4を介して封止基板12が貼り合わされており、これによって各セル51Aに連通する注入口30Aの開口が閉塞されている。
【0066】
対向基板31には、セル51Bごとに、分散媒21、複数の黒色の負帯電粒子26(Bk)および複数の白色の正帯電粒子27(W)を有する電気泳動材料32Cを注入するための注入口31Aが1つずつ形成されている。注入口31Aは、上記実施形態と同様に、基板本体79と対向電極37の厚さ方向を貫通してなるものである。そして各注入口31Aの開口が基板本体79の外面に接着層4を介して貼り合わされた封止基板12によって閉塞された構成となっている。
【0067】
[電気泳動表示装置の製造方法]
図11は、電気泳動表示装置の製造方法について示す断面図である。
本実施形態では、2つのインクホルダー(材料ホルダー)90,91を用いて電気泳動材料の注入を行う。
各インクホルダー90,91には、各セル51A,51Bに注入するための電気泳動材料がそれぞれ保持されている。先の実施形態で使用したインクホルダー80は、各セル51に対応して複数の材料保持部82を有しており、各材料保持部82内にそれぞれ異なる複数種類の電気泳動材料が保持される構成となっていたが、本実施形態で使用する各インクホルダー90,91はそれぞれ1種類の電気泳動材料32A,32Cしか保持しないため材料保持部82も1つであり、単なる有底箱型の構成となっている。このため、インクホルダー90,91の製造も簡単である。また、各インクホルダー90,91の底部93には、表示パネル20Aにおける各セル51A,51Bの注入口31A,31Bに対応する位置に注入口93a,93bが複数形成されている。
【0068】
上記したインクホルダー90,91を用いて本実施形態の電気泳動表示装置200を製造する場合には、まず、複数のセル51A,51Bを有する空の表示パネル20Aを用意する。表示パネル20Aは、先の実施形態の表示パネル10Aの製造方法と略同様の方法を用いて製造され、ここでは、セル51Aごとに素子基板30の外面側からレーザーを照射することによって注入口31Aを形成し、セル51Bごとに対向基板31の外面側からレーザーを照射することによって注入口31Aを形成する。
【0069】
次に、真空雰囲気下において、表示パネル20Aにおける素子基板30の外面側にインクホルダー90を対向配置させるとともに、対向基板31の外面側にインクホルダー91を対向配置させた後、各インクホルダー90,91の注入口93a,93bと表示パネル20Aの注入口31A,31Bとが平面視で重なるように位置合わせを行う。
【0070】
次に、表示パネル20Aとインクホルダー90,91とを密着させた状態で大気圧に戻すことにより、インクホルダー90内の電気泳動材料32Bが注入口93a,31Aを介して各セル51A内に注入され、インクホルダー91内の電気泳動材料32Cが注入口93b,31Aを介して各セル51B内に注入される。
【0071】
このようにして、図10に示したように、各セル51A内に電気泳動層132Aが形成され、各セル51B内に電気泳動層132Bが形成される。これら2種類の電気泳動層132A,132Bにより、素子基板30と対向基板31との間に電気泳動素子32が形成され、本実施形態の電気泳動表示装置200が完成する。
【0072】
先の実施形態では、複数種類の電気泳動材料を保持する必要があったため、複数の領域に区画形成されてなるインクホルダーを用いたが、本実施形態の電気泳動表示装置200およびその製造方法によれば、それぞれ1種類の電気泳動材料を保持すればよいため、各インクホルダー90,91内を区切る必要がなく、構成が簡単なものとなっている。また、各インクホルダー90,91の各材料保持部82内にそれぞれ材料を充填させる工程も簡単である。よって、品質および歩留まりの向上に繋がるとともに、インクホルダー90,91の製造が容易になるため安価なものとなり、初期投資にかかるコストを削減できる。
また、本実施形態の電気泳動表示装置200であっても、フルカラー表示が可能となる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
図12に示すように、複数のセル51ごとに1つの注入口31Aが形成されていてもよい。注入口31Aの一部が隔壁45と平面視で重なるように形成することで、隣り合う複数のセル51に対して同時に同じ電気泳動材料を注入することができる。ここのとき、隣り合うセル51を仕切る隔壁45上に注入口31Aを形成してもよいが、隔壁45の十字部分に注入口31Aを形成することで4つのセル51に対応できる。
【0075】
また、図13に示すように、注入口31Aと対向する隔壁45の一部分を他の部分よりも低く形成してもよい。これにより、注入口31Aを介して複数のセル51内に電気泳動材料が注入しやすくなる。また、注入口31Aの孔径も最小限にすることができる。
【0076】
また、図14に示すように、任意の複数のセル51に対してそれぞれ注入口31Aを形成し、注入口31Aが形成されていないセル51を区画する隔壁45の一部に、注入口31Aが設けられたセル51に連通する連通孔45aを形成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
12…封止基板、30A,31,31A…注入口、32A,32B,32C…電気泳動材料、34,83b…貫通孔、40,40A,40B…画素、45,81…隔壁、51,51A,51B…セル、80,90,91…インクホルダー、82…材料保持部、84…繊維部材、100,200…電気泳動表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置デバイスは、酸化チタン粒子やカーボン粒子に高分子と電荷を付与し、溶媒液中を泳動させることによって表示を行っている。表示品質を高めるために、電気泳動粒子の平均粒子径が数十〜数百nmである必要がある。そのため、液晶のように、対向配置された一対のガラス基板の周囲をシール材で封止したセルに、上記のような電気泳動材料を封入した場合、表示パネルを縦にすると重力の作用により電気泳動粒子が時間と共に沈降してしまい、良好な表示を得ることができなくなってしまう。
【0003】
そこで、表示エリアに対応するセル領域を複数に区切る構造とすることで、電気泳動粒子の沈降の影響を小さくして、良好な表示が長期的、かつ、継続的に得られるようにする必要がある。
このような課題を解決するために、一対の基板間に隔壁を形成して電気泳動粒子の沈降を画素領域内で留めておく構造が提案されている。
例えば下記特許文献1では、素子基板上に、表示エリアを画素領域ごとに区切る隔壁を形成して各画素領域内にインクジェットを用いて電気泳動材料を注入した後、素子基板上に隔壁を介して対向基板を貼り合わせることによって製造される表示パネルが開示されている。
また、特許文献2では、隔壁に設けられた開口を介して隣り合う画素領域が連通されており、行方向あるいは列方向で連通する複数の画素領域内に電気泳動材料を流し込むことによって製造される表示パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−10796号公報
【特許文献2】特開2005−276251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、電気泳動材料を注入した後に対向基板を貼り合わせることから、セル内への気泡の混入やこれに起因して十分な接着面積を確保することができない他、貼り合わせ領域に電気泳動材料が付着して接着力が弱くなるなどして、信頼性の面で問題があった。一方、特許文献2では、一方向に並ぶ複数の画素領域に同一の電気泳動材料を注入することになるため、多色粒子による表示を行いたい場合に粒子の種類に制限があり、十分な色表示ができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造とフルカラーの電気泳動表示装置およびその製造方法を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置される第1基板および第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、画素領域を区画する隔壁と、少なくとも前記第1基板、前記第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に封入される電気泳動材料と、を有し、前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方には、厚さ方向を貫通して前記セルに達すると共に、当該セル内に前記電気泳動材料を注入するための注入口が複数形成されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、隔壁によって区画された画素領域に対応するセル内に電気泳動材料が保持されており、これら各セル内に電気泳動材料を注入するための注入口が形成されていることから、製造時において、隔壁を介して第1基板と第2基板とを貼り合わせた後に、各セル内に電気泳動材料を注入することによって本実施形態の電気泳動表示装置が得られる。つまり、第1基板および第2基板同士を貼り合わせた後に電気泳動材料を注入することができれば、これらの貼り合わせ領域に電気泳動材料が付着して接着力が弱くなるのを防止できるとともに、各セル内への気泡の混入も最小限に抑えることができる。
また、セルに連通する注入口を介して電気泳動材料を注入することができるので、セルごとに異なる電気泳動材料を注入することも可能となり、フルカラー表示が可能なものとなっている。
また、画素領域ごとに区画されたセル内に電気泳動材料が保持されるので、電気泳動表示装置を縦にした状態で使用したとしても、電気泳動粒子の沈降を各セル内で留めておくことができるので、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えることができる。
したがって、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造を有する電気泳動表示装置が得られる。
【0009】
また、前記第1基板あるいは前記第2基板の外面に、前記注入口を封止するための封止基板が設けられている構成としてもよい。
これによれば、封止基板によって複数の注入口を一度に閉塞することができるので、個々に注入口を閉塞するに比べて簡単かつ確実に閉塞することができる。
【0010】
また、前記注入口が前記第1基板および前記第2基板の両方に形成されている構成としてもよい。
これによれば、第1基板側および第2基板側の両方から電気泳動材料を注入することが可能になる。
【0011】
また、前記注入口が形成されていない前記セルの前記隔壁に、前記注入口が形成された前記セルに連通する連通孔が形成されている構成としてもよい。
これによれば、製造時において、1つの注入口を介して1つのセル内に注入された電気泳動材料が、該セルから隔壁に形成された貫通孔を介して隣のセル内に流入することとなり、少ない注入口であっても複数のセルに電気泳動材料を注入させることができる。
【0012】
また、前記セルごとに前記注入口が設けられている構成としてもよい。
これによれば、各セルに対して異なる電気泳動材料を注入することができるので、よりフルカラーに近い表示が可能な電気泳動表示装置が得られる。
【0013】
また、前記複数のセルごとに1つの前記注入口が設けられている構成としてもよい。
これによれば、注入口の数が少なくても、複数のセルに対して同時に電気泳動材料を注入することが可能になる。
【0014】
また、前記注入口の一部が前記隔壁と平面視で重なっている構成としてもよい。
これによれば、隣り合う複数のセルに対して同一の電気泳動材料を注入することができる。
【0015】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、第1基板上に複数の画素領域を区画する隔壁を形成する工程と、前記第1基板上に前記隔壁を介して第2基板を貼り合わせる工程と、前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に設けられた注入口を介して、少なくとも前記第1基板、第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に電気泳動材料を注入する工程と、前記注入口を封止する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
これによれば、電気泳動材料を注入する前に、隔壁を介して第1基板および第2基板を貼り合わせて空の表示パネルを製造して、第1基板あるいは第2基板に設けられた注入口を介して各セル内に電気泳動材料を注入することにより、隔壁と基板との貼り合わせ領域に付着した電気泳動材料の分散媒による接着不良や材料の未充填を防止することができる。これにより、品質および信頼性の高い電気泳動表示装置が得られる。また、各画素領域に異なる電気泳動材料を注入することができるため、最適なフルカラー表示が行えるようになる。また、各セル内に注入する電気泳動材料の粒子量を変更することによって階調表示が可能となり、より最適な色品質を実現することのできる電気泳動表示装置が得られる。
【0017】
また、前記電気泳動材料を注入する工程の前に、前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に、基板の厚さ方向を貫通する注入口を形成する工程を有する方法としてもよい。
これによれば、隔壁の大きさに応じて注入口の位置や大きさ等を適宜設定することができる。
【0018】
また、前記電気泳動材料を注入する工程において、前記セルごとに区画された材料保持部を有する材料ホルダーを利用し、前記材料ホルダーと、前記注入口が形成された前記第1基板あるいは前記第2基板とを密着させた後、真空状態から大気に戻すことによって前記材料ホルダーから前記セル内に前記電気泳動材料が注入される製造方法としてもよい。
【0019】
これによれば、従来の液晶装置の製造方法を用いて製造することができるため、設備投資費用を大幅に削減させることができる。
【0020】
また、前記注入口を前記隔壁の近傍に形成する製造方法としてもよい。
これによれば、材料注入時に基板の変形等が生じることを防いで材料ホルダーと基板との間に隙間を生じさせることなく、各セル内に電気泳動材料を注入することができる。
【0021】
また、前記注入口の周辺に前記電気泳動材料をはじくような疎溶媒性処理を施しておく製造方法としてもよい。
これによれば、電気泳動材料の注入時に、材料の染み出しやその後の封止のための接着剤あるいは粘着材との密着不良などが生じるのを防止できる。
【0022】
また、前記材料保持部内に前記電気泳動材料を保持するための金属あるいは樹脂からなる繊維部材を配置する製造方法としてもよい。
これによれば、繊維部材に電気泳動材料を保持させることができるので、材料ホルダーからの電気泳動材料の染み出しを防止できるとともに、その後に行う注入口の封止を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の電気泳動表示装置を示す概略構成を示す部分断面図。
【図2】同、電気泳動表示装置の等価回路図。
【図3】1画素の構成を示す等価回路図。
【図4】1画素の構成を示す断面図。
【図5】電気泳動表示装置の製造プロセスについて示す断面図。
【図6】電気泳動表示装置の製造プロセスについて示す断面図。
【図7】インクホルダーの製造方法を示す図。
【図8】インクホルダーの変形例を示す平面図。
【図9】インクホルダーの変形例を示す平面図。
【図10】第2実施形態の電気泳動装置の全体構成を示す断面図。
【図11】電気泳動表示装置の製造方法について示す断面図。
【図12】隔壁と注入口との位置関係の他の例を示す平面図。
【図13】隔壁の変形例を示す断面図。
【図14】隔壁の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図8を用いて説明する。
図1は、本実施形態の電気泳動表示装置を示す概略構成を示す部分断面図である。図2は、同、電気泳動表示装置の等価回路図である。図3は、1画素の構成を示す等価回路図である。図4は、1画素の構成を示す断面図である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、素子基板30と、素子基板(第1基板)30に対向配置された対向基板(第2基板)31とこれらの間に挟持される電気泳動素子32とにより構成されている。また、対向基板31の外面側には、接着剤やホットメルトからなる接着層4を介して封止基板12が設けられている。そして、素子基板30と対向基板31とが重なる領域には複数の画素40が配置されてなる表示部5が形成されている。各画素40には、種類の異なる電気泳動材料が封入されており、画素40ごとに異なる色表示が行える構成となっている。
【0026】
表示部5には、複数の画素40が行方向および列方向にマトリクス状に配列されている。表示部5の周辺には、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62が配置されている。表示部5には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68A,68Bとが設けられており、これらの交差位置に対応して画素40が設けられている。
本実施形態の走査線66は、表示部5内において2つに分岐された第1走査線66Aおよび第2走査線66Bを有する。
なお、「行方向」とは、表示部における「水平方向」のことであり、図2の左右方向に対応する。「列方向」とは、水平方向に直交する「垂直方向」のことであり、図2の上下方向に対応する。
【0027】
画素40には、電気泳動素子32を構成する電気泳動層132、2つの選択トランジスタTR1,TR2(図3)、複数の画素電極35A,35Bが少なくとも備えられている。画素40内における画素電極35A,35Bの数は、一つずつでも複数ずつであってもでもよい。
【0028】
図3に示すように、選択トランジスタTR1は、ゲートに第1走査線66Aが接続され、ソースにデータ線68Aが接続され、ドレインに画素電極35Aが接続されている。また、選択トランジスタTR2は、ゲートに第2走査線66Bが接続され、ソースにデータ線68Bが接続され、ドレインに画素電極35Bが接続されている。
ここで、選択トランジスタTR1,TR2のドレインと保持容量線(不図示)との間に保持容量が配置された構成とすることも可能である。保持容量線は、例えば、走査線66と平行して形成される。また、電気泳動素子32に電圧を印加するための、保持容量以外の手段を具備しても良い。
【0029】
画素40内に設けられた複数の画素電極35Aどうしは、例えば不図示の接続電極を介して選択トランジスタTR1に接続され、同様に、画素40内に設けられた複数の画素電極35Bどうしは、不図示の接続電極を介して選択トランジスタTR2に接続されている。これによって、画素電極35A,35Bどうしが互いに独立駆動されるようになっている。
【0030】
また、走査線駆動回路61は、複数の走査線66を介して各画素40に接続されており、各走査線66を順次選択し、画素40に設けられた選択トランジスタTR1,TR2をそれぞれオン状態とするタイミングを規定する選択信号を、選択した走査線66を介して供給する。また、データ線駆動回路62は、複数のデータ線68A,68Bを介して各画素40に接続されており、各画素40に対応する画素データを規定する画像信号を画素40に供給する。
【0031】
図4に示すように、素子基板30を構成する基板本体71は、ガラスやプラスチック、金属等で構成されている。この基板本体71は、視認側と反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。素子基板30の電気泳動素子32が配置される側の面には、図2に示した走査線66、データ線68A,68B、選択トランジスタTR1,TR2などを含む駆動層(不図示)が形成されており、その最上層に互いに独立して駆動される画素電極35A,35Bが複数設けられている。
【0032】
具体的には、基板本体71の電気泳動素子32側の一面に半導体層41aが形成され、半導体層41aを覆うようにゲート絶縁膜41bが形成されている。半導体層41aには、例えばアモルファスシリコン、多結晶シリコン等の非単結晶シリコン材料、酸化物半導体材料、In−Ga−Zn−O等の透明酸化物半導体材料、フルオレン−ビチオフェン共重合体等の有機物半導体材料、等を用いることができる。半導体層41aに酸化物半導体材料を用いる場合には、ゲート絶縁膜41bにも酸化物絶縁材料を用いることが望ましく、また、半導体層41aに有機物半導体材料を用いる場合には、ゲート絶縁膜41bにも有機絶縁材料を用いることが望ましい。
【0033】
ゲート絶縁膜41b上には、選択トランジスタTR1,TR2のゲート電極41eとして機能する走査線66A,66Bが形成されている。走査線66A,66Bには、例えばAl−Nd合金とMoとの金属積層膜等を用いることができる。その他、Al単体、ITO、Cu、Cr、Ta、Mo、Nb、Ag、Pt、Pd、In、Ndやそれらの合金等を用いることができる。第1層間絶縁膜74が、走査線66A,66Bを覆うように基板本体71の全面に形成されている。第1層間絶縁膜74には、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化酸化膜等の無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料を用いることができる。第1層間絶縁膜74上には、コンタクトホール75を介して半導体層41aのソース領域と電気的に接続されたデータ線68A,68Bが形成されている。データ線68A,68Bにも走査線66と同様の材料を用いることができる。なお、図2では、ゲート電極が半導体層41aより図2中の上側に形成されるトップゲート構造となっているが、ゲート電極が半導体層41aより下側に形成されるボトムゲート構造であってもよい。
【0034】
第2層間絶縁膜76が、データ線68A,68Bを覆うように第1層間絶縁膜74上の全面に形成されている。第2層間絶縁膜76には、第1層間絶縁膜74と同様、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化酸化膜等の無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料を用いることができる。第2層間絶縁膜76上には、コンタクトホール77を介して半導体層41aのドレイン領域と電気的に接続された画素電極35A,35Bが形成されている。画素電極35A,35Bは、例えばITO(インジウム・スズ酸化物)等の透明導電材料やAl等の金属材料などにより形成されており、後述する対向電極37との間で電気泳動素子32に電圧を印加する電極である。ここでは、画素電極35A,35Bの平面形状は図示しないが、円形状であっても略矩形状であってもよく、その他の形状でもよい。
【0035】
一方、対向基板31を構成する基板本体79は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、視認側に配置されるため透明基板が用いられる。基板本体79の電気泳動素子32側の面には対向電極37が形成されている。対向電極37は画素電極35A,35Bとともに電気泳動素子32に電圧を印加する電極であり、MgAg(マグネシウム銀)、ITO、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などの透明導電材料から形成されている。
【0036】
素子基板30と対向基板31とは隔壁45を介して貼り合わされている。そして、隔壁45によって画素領域ごとに区画されたセル51内には電気泳動層132が形成され、これによって、素子基板30と対向基板310との間の電気泳動素子32が構成される。
電気泳動層132は、互いに異なる色に着色された2種類の帯電粒子(負帯電粒子26、正帯電粒子27)と、これらを分散保持する透明な分散媒21と、からなる電気泳動材料によって形成される。
【0037】
また、セル51ごとに封入される電気泳動材料が異なっており、例えば、隣り合うセル51どうしにおいて負帯電粒子26および正帯電粒子27の色が異なっている。例えば、3種類以上の電気泳動材料を用いることもでき、走査線あるいはデータ線の延在方向に並ぶ各セル51内の電気泳動層132の種類を異ならせることが可能である。ここで、各セル51内に配置される負帯電粒子26と正帯電粒子27との色の関係が互いに補色の関係にある。これにより、各画素40において異なる色の表示が可能となっている。
なお、着色された帯電粒子と、この帯電粒子の色と補色の関係にある色に着色された分散媒とからなる電気泳動材料を用いてもよい。
【0038】
本実施形態の対向基板31には、基板本体79および対向電極37の厚さ方向を貫通して、少なくとも素子基板30、対向基板31および隔壁45によって区画形成されたセル51に達する貫通孔が複数形成されており、これが製造時に電気泳動材料を注入するための注入口31Aとして機能する。注入口31Aは、セル51ごとに設けられ、隔壁45の近傍であって平面視において隔壁45とは重ならない位置に形成されている。
【0039】
これら注入口31Aの内側には各セル51内に配置された電気泳動材料が入り込んでおり、素子基板30の電気泳動素子32とは反対側の面(外面)に、接着層4を介して貼り合わされた封止基板12によって、各注入口31Aのそれぞれの開口側が閉塞されている。
また、注入口31Aの平面視形状は円形、楕円形、矩形あるいはその他の形状であってもよい。
【0040】
[電気泳動表示装置の製造方法]
図5および図6は、電気泳動表示装置の製造プロセスについて示す断面図である。
まず、図5(a)に示すように、素子基板30上に各画素領域(画素40)を区画形成する隔壁45を形成する。
ここでは、樹脂フィルムからなる基板本体71上に走査線66、データ線68、選択トランジスタ41および画素電極35A,35Bなどの駆動層(不図示)が予め形成された素子基板30を用意し、この駆動層(不図示)の表面上に、感光性樹脂材料(例えば、感光性ポリイミド等)を厚さ15〜30μmとなるように、スピンコートあるいは印刷法を用いて塗布する。この塗布膜を乾燥させた後、フォトリソグラフィによって複数の画素領域を区切る格子状になるようにパターン形成し、高さ1〜10μmの隔壁45を形成する。
【0041】
次に、図5(b)に示すように、素子基板30上に隔壁45を介して対向基板31を対向配置させて貼り合わせる。
対向基板31として、樹脂フィルムからなる基板本体79の一面に対向電極37が予め形成されたものを用意する。この対向基板31を隔壁45の素子基板30とは反対側の端部上に配置して、接着剤あるいは粘着材を介して貼り合わせ、隔壁45の開口側を閉塞する。これにより、素子基板30、対向基板31および隔壁45によって囲まれた複数のセル51が形成され、空の表示パネル10Aが得られる。
【0042】
次に、対向基板31にその厚さ方向を貫通する注入口31Aを複数形成する。
図5(c)に示すように、先の工程において形成した表示パネル10Aのセル51(画素)ごとに対向基板31の外面側からレーザーを照射することによって、基板本体79および対向電極37の厚さ方向を貫通する貫通孔34を形成する。このとき、隔壁45の近傍に貫通孔34を形成することが好ましい。この貫通孔34は、後の工程においてセル51内に電気泳動材料を注入するための注入口31Aとして機能する。注入口31A(貫通孔34)の直径が小さすぎると、後に電気泳動材料をセル51内に注入することが困難となり、大きすぎると電気泳動材料があふれ出す(にじみの要因となる)おそれがあるため、直径を1〜30μmの範囲内で設定することが好適である。なお、帯電粒子の粒径が100〜600nmであるため、孔径が10μm程度あれば十分に注入可能である。
また、使用するレーザーの種類としては、YAGレーザーあるいはCO2レーザーが挙げられる。
対向基板31を貼り合わせた後に注入口31Aを形成することによって、表示パネル10Aの各セル51に応じて、注入口31Aの形成位置や大きさ等を適宜設定することができる。
【0043】
なお、先の工程において、予め、複数の注入口31Aが形成された対向基板31を貼り合わせても良い。これにより、穿設工程を削減できて製造時間を短縮できる。
【0044】
次に、対向基板31の外面31bに開口する注入口31Aの周辺部に、電気泳動材料32Aをはじくような疎溶媒性処理を施す。これにより、後の工程において電気泳動材料32Aを注入する際に、外面31b上への材料の染み出しやその後の開口封止のための接着剤あるいは粘着材との密着不良などが生じるのを防止できる。
【0045】
次に、図5(d)に示すように、注入口31Aを介して、空の各セル51内に電気泳動材料32Aを注入する。
本実施形態では、表示パネル10A内に電気泳動材料32Aを注入する際にインクホルダー(材料ホルダー)80を利用する。インクホルダー80は、隔壁81によって区画された複数の材料保持部82と、隔壁81の一端側に接続されて各材料保持部82の底面を構成する底部83とにより構成されている。各材料保持部82の一端側は開放され、内部に表示パネル10Aの各セル51に対応した電気泳動材料32Aがそれぞれ配置されている。底部83には、表示パネル10Aの各セル51に対応する位置に注入口83aが形成されている。そして、後の工程において、インクホルダー80を表示パネル10A上に載置させた場合に、インクホルダー80の注入口83aと、表示パネル10Aの注入口31Aとが平面視で重なるようにする。注入口83aの孔径は、注入口31Aを構成する貫通孔34の孔径と略等しい。
【0046】
また、インクホルダー80の各材料保持部82内には、親溶媒性処理が施された繊維部材84(図7)が配置されている。繊維部材84としては、樹脂繊維あるいは金属繊維が挙げられる。このような繊維部材84に分散媒21を含浸させて電気泳動材料32Aを材料保持部82内に保持させることにより、電気泳動材料32Aの染み出しを防止できるとともに、その後の封止のための接着剤あるいは粘着材との密着不良等も防止することができる。
【0047】
そして、真空チャンバ内に表示パネル10Aとインクホルダー80とを配置する。このような真空雰囲気下において表示パネル10Aの対向基板31上にインクホルダー80を対向配置させた状態で、表示パネル10Aの注入口31Aとインクホルダー80の注入口83aとが平面視で重なるように位置合わせを行う。
【0048】
次に、図6(a)に示すように、表示パネル10Aとインクホルダー80とを密着させた状態で大気圧に戻すことにより、インクホルダー80の各材料保持部82内の電気泳動材料32Aが注入口83aおよび注入口31Aを介して、表示パネル10Aの各セル51内に注入される。
【0049】
ここで、注入口31Aが隔壁45の近傍に形成されていることから、注入時に、対向基板31の変形が防止されてインクホルダー80と対向基板31との間に隙間が生じることがなく、この結果、各セル51内に電気泳動材料32Aを良好に注入することができる。
このようにして、図6(b)に示すように各セル51内に電気泳動層132が形成され、これら複数の電気泳動層132により、素子基板30と対向基板31との間に電気泳動素子32が構成される。
以上により、本実施形態の電気泳動表示装置100が完成する。
【0050】
図7は、インクホルダーの製造方法を示す図である。
上記したインクホルダー80は、以下の方法によって形成されたものである。
図7に示すように、まず、樹脂基板あるいは金属基板からなる底部83の一面側にフォトリソグラフィ(感光性ポリイミド)あるいは鍍金等により隔壁81を作製し、注入用の電気泳動材料32Aを入れておくための複数の材料保持部82を形成する。
次に、レーザー等により、底部83の、材料保持部82に対応する位置に複数の注入口83aを形成する。ここで、注入口83aの内周面に対して、電気泳動材料32Aをはじく疎溶媒性処理を施す。
次に、各材料保持部82内に電気泳動材料32Aを保持させるための繊維部材84を配置する。
その後、例えばインクジェット法などを用いて、各材料保持部82内に、表示パネル10Aの各セル51に対応する電気泳動材料32Aをそれぞれ配置(注入)する。
このようにしてインクホルダー80は形成される。
なお、隔壁81の材料保持部82側の壁面に対して親溶媒性処理を施して、材料保持力を向上させてもよい。
【0051】
本実施形態の電気泳動表示装置100およびその製造方法によれば、隔壁45によって区画された複数の画素領域に対応する各セル51内に電気泳動材料32A(電気泳動層132)が保持されており、これらセル51ごとに電気泳動材料32Aを注入するための注入口31Aが形成されていることから、製造時において、隔壁45を介して素子基板30と対向基板31とを貼り合わせた後に、各セル51内に電気泳動材料32Aを注入することによって本実施形態の電気泳動表示装置100が得られる。つまり、素子基板30および対向基板31同士を貼り合わせた後に電気泳動材料32Aを注入することができれば、これら基板30,31と隔壁45との貼り合わせ領域に電気泳動材料32Aが付着して接着力が弱くなるのを防止できるとともに、各セル51内への気泡の混入を抑えることができる、あるいは気泡の混入をなくすことができる。
【0052】
また、セル51に連通する注入口31Aを介して電気泳動材料32Aを注入することができるので、セル51ごとに異なる電気泳動材料32Aを注入することも可能となり、フルカラー表示が可能な表示装置となっている。
【0053】
また、画素領域ごとに区画されたセル51内に電気泳動材料32Aが保持されるので、電気泳動表示装置100を縦にした状態で使用したとしても、粒子26,27の沈降を各セル51内で留めておくことができるので、各粒子26,27の沈降を最小限に抑えることができる。
したがって、電気泳動粒子の沈降を最小限に抑えて良好な表示を長期的に得ることができるとともに、信頼性が高く、かつ、フルカラー表示が可能なセル構造を有する電気泳動表示装置100が得られる。
【0054】
また、封止基板12によって対向基板31に設けられた複数の注入口31Aを一度に封止する構成のため、各注入口31Aを個々に閉塞する場合に比べて簡単且つ確実に閉塞することができる。
【0055】
また、本実施形態の製造方法によれば、電気泳動材料32Aを注入する前に、隔壁45を介して素子基板30および対向基板31を貼り合わせて空の表示パネル10Aを製造しておくことにより、電気泳動材料32Aの分散媒21による接着不良や材料の未充填を防止することができる。これにより、品質および信頼性の高い電気泳動表示装置100が得られる。また、各画素領域(セル51)に異なる種類の電気泳動材料32Aを注入することができるため、最適なフルカラー表示が行えるようになる。また、各セル51内に注入する電気泳動材料32Aの粒子量を変更することによって階調表示が可能となり、より最適な色品質を実現することのできる電気泳動表示装置100が得られる。
【0056】
また、電気泳動材料32Aを注入する工程において、セル51ごとに区画された材料保持部82を有するインクホルダー80を利用し、このインクホルダー80と、注入口31Aが形成された対向基板31とを密着させた後、真空状態から大気に戻すことによってインクホルダー80の各材料保持部82からセル51内に電気泳動材料32Aがそれぞれ注入されるようになっている。このため、従来の液晶装置の製造方法を用いて製造することができるため、設備投資費用を大幅に削減させることができる。
【0057】
また、本実施形態の電気泳動表示装置100およびその製造方法であれば、複数種類の電気泳動材料を用いることができるので、容易にフルカラー表示を実現することが可能である。
【0058】
なお、インクホルダー80の底部83の構成は上記に限ったものではなく、例えば、図8(a)に示すようにメッシュ状に構成されていてもよい。これにより、表示パネル10A側の注入口31Aとの位置ずれによる注入不良を防ぐことができる。ここでは、対向基板31を構成する基板本体79と同じ材料(ここでは、PET)を用いて底部83を構成する。これにより、基板本体79と底部83との線膨張係数が等しくなるので、寸法変化に伴うズレが生じにくくなる。なお、同じ材料に限らず、線膨張係数の近い材料を用いて構成してもよい。
【0059】
また、対向基板31の外面に電気泳動材料32Aが付着してしまうのを防止するために、図8(b)に示すように、注入口31A以外の部分をマスクMで覆うようにしてもよい。マスクMには、注入口31Aに対応する貫通孔83bが形成されている。
【0060】
一般的に、樹脂材料からなるインクホルダー80の底部83は環境変化により伸縮し、その寸法変化が無機材料に比べて大きい。インクホルダー80(底部83)に寸法変化が生じた場合、各材料保持部82に連通する注入口83aと、表示パネル10A側の注入口31Aとの位置がずれてしまい、電気泳動材料32Aを上手く注入することができなくなってしまう。
【0061】
そこで、図9に示すように、インクホルダー80の底部83に形成する注入口83aと、表示パネル10Aの対向基板31に形成する注入口31Aとの平面視形状を楕円または矩形状にするとともに、これらが互いに直交する方向に延在するように構成する。
これにより、インクホルダー80側の底部83の寸法変化を許容することができる。つまり、底部83の寸法変化によって注入口83aの延在方向の寸法が変化したとしても、平面視において少なくともその一部分が、注入口31Aと重なることになるため、インクホルダー80から表示パネル10A側へと確実に電気泳動材料32Aを注入させることが可能となる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態の電気泳動装置の全体構成を示す断面図である。
以下に示す本実施形態の電気泳動表示装置200の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、素子基板および素子基板の構成において異なる。よって、以下の説明では、素子基板について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、図1〜図7と共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0063】
本実施形態の電気泳動表示装置200は、2種類の電気泳動層132A,132Bからなる電気泳動素子32を備えており、対向基板31側だけでなく、素子基板30側にも電気泳動材料を注入するための注入口30Aが設けられている。
【0064】
本実施形態では、走査線あるいはデータ線の延在方向に沿って互いに表示色の異なる画素40A,40Bが交互に配置されている。
画素40Aは、透明な分散媒21中に複数の緑色の負帯電粒子26(G)と複数の赤色の正帯電粒子27(R)とを有する電気泳動層132Aが、セル51A内に封入されてなる。一方、画素40Bは、透明な分散媒21中に複数の黒色の負帯電粒子26(Bk)と複数の白色の正帯電粒子27(Bk)とを有する電気泳動層132Bが、セル51B内に封入されてなる。
これら各粒子26,27の対向電極37側で視認される面積に応じて、各画素40A,40Bにおける表示色の階調が制御される。
【0065】
素子基板30には、セル51Aごとに、分散媒21、複数の緑色の負帯電粒子26(G)および複数の赤色の正帯電粒子27(R)を有する電気泳動材料32Bを注入するための注入口31Aが1つずつ形成されている。注入口31Aは、基板本体71および、選択トランジスタや画素電極を有する駆動層(不図示)の厚さ方向を貫通してなる。
基板本体71の電気泳動素子32とは反対側の外面には、接着層4を介して封止基板12が貼り合わされており、これによって各セル51Aに連通する注入口30Aの開口が閉塞されている。
【0066】
対向基板31には、セル51Bごとに、分散媒21、複数の黒色の負帯電粒子26(Bk)および複数の白色の正帯電粒子27(W)を有する電気泳動材料32Cを注入するための注入口31Aが1つずつ形成されている。注入口31Aは、上記実施形態と同様に、基板本体79と対向電極37の厚さ方向を貫通してなるものである。そして各注入口31Aの開口が基板本体79の外面に接着層4を介して貼り合わされた封止基板12によって閉塞された構成となっている。
【0067】
[電気泳動表示装置の製造方法]
図11は、電気泳動表示装置の製造方法について示す断面図である。
本実施形態では、2つのインクホルダー(材料ホルダー)90,91を用いて電気泳動材料の注入を行う。
各インクホルダー90,91には、各セル51A,51Bに注入するための電気泳動材料がそれぞれ保持されている。先の実施形態で使用したインクホルダー80は、各セル51に対応して複数の材料保持部82を有しており、各材料保持部82内にそれぞれ異なる複数種類の電気泳動材料が保持される構成となっていたが、本実施形態で使用する各インクホルダー90,91はそれぞれ1種類の電気泳動材料32A,32Cしか保持しないため材料保持部82も1つであり、単なる有底箱型の構成となっている。このため、インクホルダー90,91の製造も簡単である。また、各インクホルダー90,91の底部93には、表示パネル20Aにおける各セル51A,51Bの注入口31A,31Bに対応する位置に注入口93a,93bが複数形成されている。
【0068】
上記したインクホルダー90,91を用いて本実施形態の電気泳動表示装置200を製造する場合には、まず、複数のセル51A,51Bを有する空の表示パネル20Aを用意する。表示パネル20Aは、先の実施形態の表示パネル10Aの製造方法と略同様の方法を用いて製造され、ここでは、セル51Aごとに素子基板30の外面側からレーザーを照射することによって注入口31Aを形成し、セル51Bごとに対向基板31の外面側からレーザーを照射することによって注入口31Aを形成する。
【0069】
次に、真空雰囲気下において、表示パネル20Aにおける素子基板30の外面側にインクホルダー90を対向配置させるとともに、対向基板31の外面側にインクホルダー91を対向配置させた後、各インクホルダー90,91の注入口93a,93bと表示パネル20Aの注入口31A,31Bとが平面視で重なるように位置合わせを行う。
【0070】
次に、表示パネル20Aとインクホルダー90,91とを密着させた状態で大気圧に戻すことにより、インクホルダー90内の電気泳動材料32Bが注入口93a,31Aを介して各セル51A内に注入され、インクホルダー91内の電気泳動材料32Cが注入口93b,31Aを介して各セル51B内に注入される。
【0071】
このようにして、図10に示したように、各セル51A内に電気泳動層132Aが形成され、各セル51B内に電気泳動層132Bが形成される。これら2種類の電気泳動層132A,132Bにより、素子基板30と対向基板31との間に電気泳動素子32が形成され、本実施形態の電気泳動表示装置200が完成する。
【0072】
先の実施形態では、複数種類の電気泳動材料を保持する必要があったため、複数の領域に区画形成されてなるインクホルダーを用いたが、本実施形態の電気泳動表示装置200およびその製造方法によれば、それぞれ1種類の電気泳動材料を保持すればよいため、各インクホルダー90,91内を区切る必要がなく、構成が簡単なものとなっている。また、各インクホルダー90,91の各材料保持部82内にそれぞれ材料を充填させる工程も簡単である。よって、品質および歩留まりの向上に繋がるとともに、インクホルダー90,91の製造が容易になるため安価なものとなり、初期投資にかかるコストを削減できる。
また、本実施形態の電気泳動表示装置200であっても、フルカラー表示が可能となる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
図12に示すように、複数のセル51ごとに1つの注入口31Aが形成されていてもよい。注入口31Aの一部が隔壁45と平面視で重なるように形成することで、隣り合う複数のセル51に対して同時に同じ電気泳動材料を注入することができる。ここのとき、隣り合うセル51を仕切る隔壁45上に注入口31Aを形成してもよいが、隔壁45の十字部分に注入口31Aを形成することで4つのセル51に対応できる。
【0075】
また、図13に示すように、注入口31Aと対向する隔壁45の一部分を他の部分よりも低く形成してもよい。これにより、注入口31Aを介して複数のセル51内に電気泳動材料が注入しやすくなる。また、注入口31Aの孔径も最小限にすることができる。
【0076】
また、図14に示すように、任意の複数のセル51に対してそれぞれ注入口31Aを形成し、注入口31Aが形成されていないセル51を区画する隔壁45の一部に、注入口31Aが設けられたセル51に連通する連通孔45aを形成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
12…封止基板、30A,31,31A…注入口、32A,32B,32C…電気泳動材料、34,83b…貫通孔、40,40A,40B…画素、45,81…隔壁、51,51A,51B…セル、80,90,91…インクホルダー、82…材料保持部、84…繊維部材、100,200…電気泳動表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置される第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、画素領域を区画する隔壁と、
少なくとも前記第1基板、前記第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に封入される電気泳動材料と、を有し、
前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方には、厚さ方向を貫通して前記セルに達すると共に、当該セル内に前記電気泳動材料を注入するための注入口が複数形成されている
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第1基板あるいは前記第2基板の外面に、前記注入口を封止するための封止基板が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記注入口が前記第1基板および前記第2基板の両方に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記注入口が形成されていない前記セルの前記隔壁に、前記注入口が形成された前記セルに連通する連通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記セルごとに前記注入口が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記複数のセルごとに1つの前記注入口が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
前記注入口の一部が前記隔壁と平面視で重なっている
ことを特徴とする請求項6に記載の電気泳動表示装置。
【請求項8】
第1基板上に複数の画素領域を区画する隔壁を形成する工程と、
前記第1基板上に前記隔壁を介して第2基板を貼り合わせる工程と、
前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に設けられた注入口を介して、少なくとも前記第1基板、前記第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に電気泳動材料を注入する工程と、
前記注入口を封止する工程と、を有する
ことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記電気泳動材料を注入する工程の前に、
前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に、基板の厚さ方向を貫通する注入口を形成する工程を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記電気泳動材料を注入する工程において、
前記セルごとに区画された材料保持部を有する材料ホルダーを利用し、
前記材料ホルダーと、前記注入口が形成された前記第1基板あるいは前記第2基板とを密着させた後、真空状態から大気に戻すことによって前記材料ホルダーから前記セル内に前記電気泳動材料が注入される
ことを特徴とする請求項8または9に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記注入口を前記隔壁の近傍に形成する
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記注入口の周辺に前記電気泳動材料をはじくような疎溶媒性処理を施しておく
ことを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記材料保持部内に前記電気泳動材料を保持するための金属あるいは樹脂からなる繊維部材を配置することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項1】
互いに対向配置される第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、画素領域を区画する隔壁と、
少なくとも前記第1基板、前記第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に封入される電気泳動材料と、を有し、
前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方には、厚さ方向を貫通して前記セルに達すると共に、当該セル内に前記電気泳動材料を注入するための注入口が複数形成されている
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第1基板あるいは前記第2基板の外面に、前記注入口を封止するための封止基板が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記注入口が前記第1基板および前記第2基板の両方に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記注入口が形成されていない前記セルの前記隔壁に、前記注入口が形成された前記セルに連通する連通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記セルごとに前記注入口が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記複数のセルごとに1つの前記注入口が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
前記注入口の一部が前記隔壁と平面視で重なっている
ことを特徴とする請求項6に記載の電気泳動表示装置。
【請求項8】
第1基板上に複数の画素領域を区画する隔壁を形成する工程と、
前記第1基板上に前記隔壁を介して第2基板を貼り合わせる工程と、
前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に設けられた注入口を介して、少なくとも前記第1基板、前記第2基板および前記隔壁によって囲まれた複数のセル内に電気泳動材料を注入する工程と、
前記注入口を封止する工程と、を有する
ことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記電気泳動材料を注入する工程の前に、
前記第1基板および前記第2基板の少なくともいずれか一方に、基板の厚さ方向を貫通する注入口を形成する工程を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記電気泳動材料を注入する工程において、
前記セルごとに区画された材料保持部を有する材料ホルダーを利用し、
前記材料ホルダーと、前記注入口が形成された前記第1基板あるいは前記第2基板とを密着させた後、真空状態から大気に戻すことによって前記材料ホルダーから前記セル内に前記電気泳動材料が注入される
ことを特徴とする請求項8または9に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記注入口を前記隔壁の近傍に形成する
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記注入口の周辺に前記電気泳動材料をはじくような疎溶媒性処理を施しておく
ことを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記材料保持部内に前記電気泳動材料を保持するための金属あるいは樹脂からなる繊維部材を配置することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−194261(P2012−194261A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56778(P2011−56778)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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