説明

電気泳動表示装置の製造方法

【課題】タック性がある接着剤を使用する場合であっても、タックフリーにして、貼り合わせ時被着面との密着性や摩擦を低減し、すべりや再剥離を容易とすることで、位置決めを容易にし、所望の接着力を回復させて、組み立て作業性、接着性などに優れる電気泳動表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第一の電極基板100上に絶縁性の構造体103からなる複数のセル104を形成する構造体形成工程と、前記構造体の上面に熱可塑性接着剤層105を形成する接着剤層形成工程と、電気泳動インク106を前記セルに充填するインク充填工程と、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層に介在層を形成し、該介在層を介して前記第一の電極基板に第二の電極基板200とを対向させて仮配置する仮配置工程と、前記介在層を荷重又は圧力手段により除去して電極基板同士を接着させることにより貼り合わせる貼合工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界等の作用により可逆的に視認状態を変化させることができる電気泳動表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示ディスプレイの低消費電力化、薄型軽量化、フレキシブル化等の需要が増してきており、その一つとして電子ペーパーに注目が集まってきている。このような電子ペーパーの一つとして電気泳動インク等を用いた電気泳動表示装置が知られている。この電気泳動表示装置は、少なくとも一方が透明な二枚の電極基板を対向するように配置させ、対向配置した電極間に電気泳動インクを設け、表示パネルとした構成となっている。そして、この表示パネルに電界を印加することにより透明電極面に表示を得ようとするものである。
【0003】
用いる電気泳動インクは、一種類ないしは複数種の電荷をもった電気泳動粒子が、分散媒に分散されたものであり、外部から電界を付与することにより、粒子が分散媒中を移動して、任意の表示を得るものである。この電気泳動インクには、電気泳動粒子の他に非帯電粒子や、界面活性剤、染料、分散剤、などの添加剤が付与される場合もある。
【0004】
このような電気泳動表示装置は、電界の向きを制御することにより、電気泳動インク中の電気泳動粒子を移動させて、所望の表示を得ることができるものであり、低コストで、視野角が通常の印刷物並みに広く、消費電力が小さく、表示のメモリ性を有する等の長所を持っている。
しかしながら、電気泳動インクに用いられる電気泳動粒子は、長期保存に伴って粒子同士が凝集すること、繰り返し表示を行っているうちに粒子が偏在すること等によって、表示の劣化が生じやすいといった問題を有しているため、電気泳動インクを微細に隔離された多数のセル(小区画)に分割して充填することにより、粒子同士の凝集や偏在を抑制する方法が知られている。
【0005】
この電気泳動インクを微細に隔離するセル(小区画)の形成には、マイクロカプセル、エンボス、フォトレジスト等を用いて形成するものであるが、マイクロカプセル以外の方法を用いる場合には、電気泳動粒子同士の凝集や偏在を抑制するために、一方の基板側に形成された構造体と、他方の基板の間に隙間ができないように接着剤等を介して接着させることが必要となる。
【0006】
そこで、構造体の上面と対向基板とを接着剤を介して接着させる方法としては、例えば、1)少なくとも一方が透明質に構成された一組の対向配置した電極板間に多孔性スペーサを介して電気泳動粒子を分散させた分散系を不連続相に分割して封入する構造の電気泳動表示装置に於いて、上記対向電極板の一方を可撓性に構成し、且つ他の電極板を透明な剛体で構成すると共に、これら両電極板間に介装される上記多孔性スペーサに対して少なくとも上記可撓性電極板と熱融着可能な熱可塑性接着層を具備させるように構成したことを特徴とする電気泳動表示装置(例えば、特許文献1参照)、2)構造体の上面と対向基板とを接着剤を介して接着させる方法として、例えば、一対の対向する電極基板と該電極基板間に位置する隔壁とで密封され構成された複数のセルに、電気泳動分散液(以下、「電気泳動インク」という)を収容した電気泳動表示装置の製造方法において、一方の電極基板に、頂部平面の高さのバラツキが他方の電極基板の厚みの10%以下となるように隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記隔壁の頂部平面に、該頂部平面の幅の10〜100%の幅を有する粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、隔壁で囲まれる各部位に、少なくとも電気泳動粒子と分散液とを含む電気泳動インクを充填する充填工程と、他方の電極基板を前記粘着剤層に固着させてセルを構成する固着工程と、を有することを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。なお、上記構造体を、スペーサ、柱、隔壁、リブ等と称される場合もある。
【0007】
上記特許文献1及び2などに記載される構造体の上面と対向基板とを接着層を介して接着させる方法にあっては、貼り合わせ工程や保管時の対向面への不慮の接着を回避したり、インク塗布工程で余剰粒子の除去するために、接着層は粘着性なし(タックフリー)が望ましいとされている。接着性の材料を用いる場合、不慮の接着を回避する方法として、対向基板面にシリコーン皮膜などの易剥離層を形成する方法等も知られているが、被着体に塗布してしまうと接着ができなくなり、本来の目的を達成できない。
【0008】
一方で、フィルム基材を用いる場合、基材の耐熱温度や、膨張・収縮などの抑制を考慮すると低温プロセスが望ましいが、低温で接着可能な低Tg(ガラス転移温度)の熱可塑性接着剤(いわゆるホットメルト接着剤)は、室温で粘着性(タック性)がある場合が多く、前述した問題と両立できないという課題があるのが現状である。
【0009】
他方で、少なくとも一方が透明な対向する二枚の基板間に、隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、該セル内に少なくとも1種以上の粉体粒子から構成される少なくとも1種類以上の表示媒体を封入し、基板内に発生させた電界により表示媒体を移動させて情報を表示する情報表示用パネルの製造方法であって、隔壁上面に接着剤を配置する接着剤層形成工程において、1)隔壁を形成した基板の水平移動と同期させて、表面に接着剤を付着させた転写ロールを前記隔壁上面に接触させた状態で回転させることにより、前記転写ロールに付着させた接着剤を前記隔壁上面に転写することを特徴とする情報表示用パネルの製造方法(例えば、特許文献3参照)、2)隔壁を形成した基板の水平移動と同期させて、表面に接着剤付フィルムを支持した転写ロールを前記隔壁上面に接触させた状態で回転させることにより、前記接着剤付フィルムの接着剤を前記隔壁上面に転写することを特徴とする情報表示用パネルの製造方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献3及び4に示される当該パネルは、電極基板間に粉体を封じ込めた表示媒体であり、液体の電気泳動インクを用いた電気泳動表示装置とは基本的に技術思想が異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−223936号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2009−251214号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2006−184893号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2006−184894号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、製造工程の温度環境でタック性がある接着剤を使用する場合であっても、タックフリーにして、貼り合わせ時被着面との密着性や摩擦を低減し、すべりや再剥離を容易とすることで、位置決めを容易にし、かつ、二枚の電極基板を所望の接着力を回復させて貼り合わせることにより、組み立て作業性、接着性に優れ、しかも、経時的にも優れた接着性を有するので、電気泳動表示装置の構造的耐久性や表示耐久性にも優れた電気泳動表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、第一の電極基板上に絶縁性の構造体からなる複数のセルを形成する構造体形成工程と、前記構造体の上面に特定の接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、特定組成の電気泳動インクを前記セルに充填するインク充填工程と、前記構造体の上面に形成した特定の接着剤層に介在層を形成し、該介在層を介して前記第一の電極基板に第二の電極基板とを対向させて仮配置する仮配置工程と、前記介在層を荷重又は圧力手段により除去して前記第一の電極基板と前記第二の電極基板とを接着させることにより、前記第一の電極基板と前記第二の電極基板を貼り合わせる貼合工程とを有することにより、上記目的の電気泳動表示装置の製造方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0014】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) 第一の電極基板上に絶縁性の構造体からなる複数のセルを形成する構造体形成工程と、前記構造体の上面に熱可塑性接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、少なくとも一種類以上の電気泳動粒子と溶媒とを含む電気泳動インクを前記セルに充填するインク充填工程と、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層に介在層を形成し、該介在層を介して前記第一の電極基板に第二の電極基板とを対向させて仮配置する仮配置工程と、前記介在層を荷重又は圧力手段により除去して前記第一の電極基板と前記第二の電極基板とを接着させることにより、前記第一の電極基板と前記第二の電極基板を貼り合わせる貼合工程と、を有することを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
(2) 前記介在層が、前記電気泳動インクの溶媒及び/又は粒子により形成されることを特徴とする上記(1)記載の電気泳動表示装置の製造方法。
(3) 前記介在層が、微粒子を別途介在させることにより形成されることを特徴とする上記(1)記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造工程の温度環境でタック性がある接着剤を使用する場合であっても、タックフリーにして、貼り合わせ時被着面との密着性や摩擦を低減し、すべりや再剥離を容易とすることで、位置決めを容易にすると共に、接着工程で所望の接着力を回復させて二枚の電極基板を貼り合わせることにより、組み立て作業性、接着性に優れ、しかも、経時的にも優れた接着性を有するので、電気泳動表示装置の構造的耐久性や表示耐久性にも優れた電気泳動表示装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)〜(f)は、本発明の電気泳動表示装置の製造方法の一例となる製造工程を各工程ごとに説明する概略図面であり、構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層に介在層を形成するまでの製造工程を説明する概略図面である。
【図2】(a)〜(c)は、図1(f)からの続きであり、電気泳動表示装置が得られるまでの製造工程を説明するための概略図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明の電気泳動表示装置の製造方法の一例となる製造工程を各工程ごとに説明する概略図面である。
本発明方法は、図1に示すように、第一の電極基板上に絶縁性の構造体からなる複数のセルを形成する工程〔構造体形成工程、図1(a)参照〕と、前記構造体の上面に熱可塑性接着剤層を形成する工程〔接着剤層形成工程、図1(a)〜(c)参照〕と、少なくとも一種類以上の電気泳動粒子と溶媒とを含む電気泳動インクを前記セルに充填する工程〔インク充填工程、図1(d)参照〕と、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層に介在層を形成し〔介在層形成工程、図1(e)又は(f)参照、〕、該介在層を介して前記第一の電極基板に第二の電極基板とを対向させて仮配置する工程〔仮配置工程、図2(a)、(b)参照〕と、前記介在層を荷重又は圧力手段により除去して前記第一の電極基板と前記第二の電極基板とを接着させることにより、前記第一の電極基板と前記第二の電極基板を貼り合わせる工程〔貼合工程、図2(b)、(c)参照〕とを有することを特徴とするものである。以下に、各工程ごとに、図1(a)〜(f)及び図2(a)〜(c)を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
<構造体形成工程>
構造体形成工程では、第一の電極基板100上に立設した絶縁性の構造体103,103…からなる複数の小部屋(セル104,104…)を形成する(図1(a)参照)。複数のセル104は、立設した構造体103によりそれぞれ分離されており、円形、矩形(長方形、正方形)、六角形等の様々な形状で設けることができる。なお、構造体103は、その形状や目的から、スペーサ、柱、隔壁、リブ等と称される場合がある。
【0019】
第一の電極基板100上に立設する構造体103は、PETフィルム等の樹脂材料を用いて形成することができる。例えば、一定の厚みを有するPETフィルムなどの合成樹脂にレーザー加工して正方形や六角形、円形等の形状を形成することにより、複数のセル104を形成することができる。また、第一の電極層102上に絶縁層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いて当該絶縁層をパターニングすることにより、複数のセル104を形成することができる。他にも、第一の電極層102上に熱可塑性の樹脂を形成し、ホットエンボスのような方法で井桁状の構造体103からなるセル104を形成することも可能である。
【0020】
第一の電極基板100は、電極を有する基板であればよく、例えば、図1(a)に示すように、第一の基材101上に第一の電極層102を設けた構成とし、当該第一の電極層102上に絶縁性の構造体103を形成することができる。
第一の基材101は、例えば、ガラス、石英、サファイア、MgO、LiF、CaF等の透明な無機材料、弗素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の有機高分子のフィルムまたはセラミック等を用いて形成することができる。
【0021】
第一の電極層102は、例えば、ITO、ZnO、SnO等の透明導電性材料や、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の金属を用いて形成することができる。また、PODET/PVSやPODET/PSSなどの導電性ポリマーや、酸化チタン系、酸化亜鉛系、酸化スズ系などの透明導電材料でも良い。これらの材料は、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法により形成することができる。第一の電極層102の形状は、対向電極となる第二の電極層の形状に応じて適宜選択することができる。なお、第一の電極層102は、第一の基材101に接して設けてもよいし、第一の基材101上にTFT素子などを設けてもよい。
【0022】
本発明方法において、第一の電極基板100が前面側電極基板となる場合には、第一の電極基板100を介して電気泳動インクで形成される文字等の表示を視認するため、第一の基材101、第一の電極層102としては、透光性を有する材料で形成することが好ましい。
【0023】
<接着剤層形成工程>
本発明方法において、接着剤層形成工程では、構造体103の上面に熱可塑性接着剤層105を形成する(図1(a)、(b)、(c)参照)。
用いる熱可塑性接着剤層105は、加熱して溶融・軟化した状態か、溶媒中に溶解・分散し、流動可能な状態として、構造体103の上面に塗布されて接着剤層105を形成した後、硬化させることで構造体103の上面だけに接着剤を固定化させることができる。これにより、セル内部への熱可塑性接着剤の流入などを抑制することが可能となる。
用いる熱可塑性接着剤は、構造体上面に接着層形成可能で、電気泳動インク充填時に含有する溶媒に流出しないものであり、主成分には、EVA系、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリエステル系などの樹脂材料が挙げられる。さらに、塗膜を薄く均一に形成する点から、好ましくは、これら樹脂材料が、芳香族系、ケトン系、水などの溶媒に溶解もしくは分散されていても良い。
さらには、前記の理由により、低融点、低Tgで溶解もしくは軟化する樹脂材料が望ましい。
溶媒に溶解された熱可塑性接着剤の一例としては、バイロン10ss、30SS、30XS、50AS、50DS、50TS、53SS、55ss、GK18CS、GK19C(以上、東洋紡社製、非晶性ポリエステル樹脂系接着剤)、バイロンUR3200、UR8700(以上、東洋紡社製、ポリエステルウレタン系接着剤)、PES−310S30、PES−310SA40、PES−320S30、PES−340S30、PES−345S30、PES−380S30、PES−390S30、PES−390SA45(以上、東亞合成社製、ポリエステル系接着剤)などを挙げることができる。
【0024】
本発明方法において、熱可塑性接着剤層105は、用いる熱可塑性接着剤の特性に合わせて、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット、転写等の各種方法を用いて形成することができるが、特に転写法を用いることが好ましい。本実施形態では、転写法を用いるものであり、図1(a)〜(c)に示すように、表面に熱可塑性接着剤301が形成された基材300を、構造体103の上面に接触させた後に剥がすことにより、基材表面に接着剤の一部を構造体103の上面に転写することができる。転写法を用いることで、接着剤層105を構造体103の上面に対し、選択的に、かつ容易に形成することが可能となるためである。
この接着剤層105の厚さは、電気泳動表示装置の大きさ、用途、構造体の大きさ等により変動するものであるが、十分に接着力を発現させる点から1μm以上であり、かつ、構造体の形状を維持する目的から、基板間ギャップの5〜40%とすることが望ましい。また、構造体103の上面に形成する接着剤層105の面積は、構造体103の上面面積に対して、40〜110%とすることが好ましい。
【0025】
<インク充填工程>
インク充填工程では、図1(d)に示すように、第一の電極基板100上に形成されたセル104に、電気泳動インク106を充填する。
電気泳動インク106を充填する方法としては、例えば、ダイコーターなどによるコーティングや、第一の電極基板の任意箇所に配した電気泳動インクをバーコーター、ドクターブレード、コンマロールなど、略接触によって、塗り広げてもよいものであるし、スクリーン印刷、あるいはインクジェットなどの印刷法やディスペンサーによる充填など、セル内にインクを充填することが可能な方法であれば、各種方法を用いることができる。本実施形態の図面は、ダイコーター400を用いて、電気泳動インク106を充填するものである。なお、電気泳動インク106は、帯電した電気泳動粒子を含むため、強度の電界や、静電気の存在しない場所が望ましく、さらには、粒子の偏在を防ぐために振動や、傾斜などがない場所が望ましい。
【0026】
用いる電気泳動インク106としては、少なくとも、1種類以上の電気泳動粒子と溶剤などの溶媒を含むものであれば良いものである。
用いることができる電気泳動粒子としては、例えば、有色または無色(白色)の無機顔料粒子、有機顔料粒子、高分子微粒子等を用いることができ、これらは各単独(1種)又は2種以上を混合して用いることができる。また、親油性表面処理されている微粒子であってよいものである。
具体的な一例としては、正に帯電した白粒子と、負に帯電した黒粒子と、これらの粒子を分散させる溶剤(溶媒)で形成することができる。白粒子としては、酸化チタン等の白色顔料や、白色の樹脂粒子、または白色に着色された樹脂粒子等を用いることができる。黒粒子としては、チタンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料や、黒色に着色された樹脂粒子等を用いることができる。これら粒子は、コントラスト表示可能な範囲で様々な色の粒子を任意に用いることも可能であり、白と赤、白と青、黄色と黒などのような組合せとすることもできる。また、白粒子のみ又は黒粒子のみといった1種類の帯電粒子のみを用いる構成とすることもできる。
これらの電気泳動粒子は、平均粒子径が0.05〜20μmのものが用いられ、特に好ましくは、平均粒子径が0.1〜10μmのものが望ましい。また、これらの微粒子の合計含有量は、電気泳動インクに対して、好ましくは、5〜95質量%、更に好ましくは、10〜80質量%とすることが望ましい。
本発明では、上記電気泳動粒子は、後述するように、接着層に接触して介在層として作用させることができ、貼り合わせ工程において荷重又は圧力手段によって介在層を除去(側方に逃げる形で除去、または、加熱で軟化した接着剤層に埋没)されるものである。
【0027】
また、用いる溶媒は、絶縁性で電気泳動粒子を分散可能なものであり、また、接着層に不溶で、かつ、接着層に接触して介在層として作用するものであり、さらに後述する貼合工程において荷重又は圧力手段によって除去(側方に逃げる形で除去)されるようなものならばよく、例えば、炭化水素系、芳香族系、エステル系、ケトン系、テルペン系、アルコール系、シリコーン系、フッ素系等の溶媒を各単独又は2種類以上を混合して用いることができる。好ましくは、次の工程で、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層に粘着性を低減させた粘着性低減層を効率的に形成せしめる点から、炭化水素系溶媒、芳香族系、テルペン系、シリコーン系から選ばれる少なくとも1種の溶媒の使用が望ましい。
炭化水素系溶媒としては、炭素数6以上14以下のノルマルパラフィン系溶媒、アイソパーE(エクソンモービル社製)、アイソパーG(エクソンモービル社製)、アイソパーL(エクソンモービル社製)、アイソゾール200(日本石油化学社製)、アイソゾール300(日本石油化学社製)などのイソパラフィン系用溶媒、シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン、ナフテゾール(日本石油化学社製)などのナフテン系溶媒の少なくとも1種を挙げることができ、また、芳香族系溶媒では、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジイソプロピルナフタレンなどの少なくとも1種を上げることができ、また、テルペン系溶媒では、テレピン油(α−ピネン)β−ピネン、p−メンタン、ジペンテン、ピナン、リモネン、p−サイメン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレンなどの少なくとも1種を挙げることができ、また、シリコーン系溶媒では、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイルなどの少なくとも1種を挙げることができる。
これらの溶媒の含有量としては、用いる電気泳動粒子や溶媒種により変動するものであり、電気泳動インク全量に対して、20〜80%質量となるように含有することが好ましく、更に好ましくは、35〜65質量%とすることが望ましい。
【0028】
また、電気泳動インク106としては、上記1種類以上の電気泳動粒子と溶媒に他に、更に、分散剤、電荷制御剤などとを含有することができる。
用いることができる分散剤としては、例えば、脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、高級アルコール、高級脂肪酸、レチシン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキヂエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、HLB値が9以下で分子量が低いものが好ましく、更に好ましくは、後述する貼り合わせ工程で、接着層の表面から除去可能なものが望ましい。
これらの分散剤の含有量としては用いる電気泳動粒子や溶媒種によって適宜決定されるが、電気泳動インク全量に対して、0.01〜50.0質量%となるように含有されることが好ましく、更に好ましくは、0.5〜30質量%となるように含有することが望ましい。
また、電荷制御剤としては、電気泳動表示に用いられている各種タイプ、例えば、脂肪酸時エタノールアミド、ポリエチレングリコールアルキルアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンを適宜量用いることができる。好ましくは、後述する貼り合わせ工程で、接着層の表面から除去可能なものが望ましい。
【0029】
本発明方法において、電気泳動インクを充填する際は、電気泳動インク中に溶存したり巻き込まれる気体を除去するとともに、充填前、充填時、又は充填後の各過程において、表示範囲に空気等の気体が極力入り込まない、もしくは残らないようにすることが好ましい。
具体的な一手法として、おのおのの工程を減圧環境下で行うか、おのおのを塗布したのちに、減圧環境下で放置するが挙げられる。
これにより、電気泳動インク中の空隙や、セル内の空気と電気泳動インクとの置換が促進され、パネル内に気泡が残ってしまう可能性を低減でき、また、基板同士を貼り合わせた後(封止後)の基板間には気泡の混入が抑えられるため、表示ムラや表示欠陥、気泡の成長による劣化等が抑制され、長期に渡って安定した表示品質を持つ電気泳動表示装置を得ることが可能となる。
【0030】
他の方法としては、電気泳動インクを充填する以前に、予め塗布面表面に対して、電気泳動インクのぬれ性を向上させるぬれ性調整工程を付加してもよい。
このぬれ性調整工程としては、例えば、溶剤処理、酸処理、アルカリ処理、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV処理、UVイトロ処理、レーザー処理、電子線による処理、イオン注入法による処理、イオンビームによる処理、イオン照射による処理、プライマー処理、界面活性剤処理、スパッタリングによる処理、(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)、ポリマー層形成及び無機層形成を行う方法等が挙げられる。これらは複数組み合わせて用いることもできるし、これらに限定されるものでもない。
また、基板表面の汚れを予め除去するために、溶剤による洗浄等の処理、例えば、アルコール類による洗浄等を組み合わせて行うことにより、より効果的にぬれ性の調整が可能となる。
絶縁性の構造体103からなる複数のセル104,104…の内壁や角部分等まで十分に電気泳動インクを行き渡らせ、空気等の気体を絶縁性の構造体103,103…からなる複数のセル104,104…内から追い出すために好ましい工程である。
【0031】
充填前の電気泳動インクに含まれている気体を除去する方法としては、例えば、電気泳動インクを撹拌棒などで撹拌する方法、加温する方法、加温しつつ撹拌する方法、超音波による方法、減圧による方法、遠心力による方法、消泡剤等の添加剤添加による方法等が挙げられる。また、電気泳動インクの充填時の脱気方法としては、加温しつつ充填する方法、減圧下において充填する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一方、電気泳動インクの充填後の脱気方法としては、充填後の基板に超音波をかける方法、加温する方法、遠心力による方法、減圧下におく方法、一定時間静置する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、これらの方法を組み合わせて用いても良い。
【0032】
<介在層形成工程>
本発明方法では、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層105に介在層を形成する。
本工程における介在層は、タック性がある上記熱可塑性接着剤を使用する場合であっても、タックフリーにして、貼り合わせ時被着面との密着性や摩擦を低減し、すべりや再剥離を容易とすることで、位置決め(仮配置)を容易にするために形成するものであり、例えば、図1(e)に示すように、前記構造体103の上面に形成した熱可塑性接着剤層105の少なくとも上層に前記インク充填工程によるインクの溶媒及び/又は粒子により構成したり、または、図1(f)に示すように、前記構造体103の上面に形成した熱可塑性接着剤層105の上面に、微粒子を別途介在させることにより構成することができる。
上記電気泳動インクの溶媒及び/又は粒子(電気泳動粒子)により形成される介在層107、または、微粒子を別途介在させることにより形成される介在層108は、後述するように、2枚の電極基板を貼り合わせ工程において荷重又は圧力手段によって除去、具体的には、溶媒では接着剤層の両側側方に逃げる形で接着剤層から除去されるものであり、また、インクの粒子や別途介在させた微粒子では、加熱等で軟化した接着剤層に埋没させて接着剤層から除去されるものであり、これらにより、介在層107又は108が除去されて熱可塑性接着剤層105が所定の接着力を回復するものとなる。
【0033】
インクの溶媒及び/又は粒子より構成される介在層では、電気泳動インク106の充填時に、前記した電気泳動インク106に含有される溶媒、好ましくは、炭化水素系溶媒及び/又は粒子が構造体103上面の熱可塑性接着剤層105の少なくとも上層となる上面に接触して形成される。また、上記溶媒のうち1種類以上の溶媒を直接熱可塑性接着剤層105の上面に塗布、例えば、インクジェット法、ダイコーター、スプレーなどにより塗布することにより形成することもできる。
【0034】
また、別途介在させる微粒子による介在層では、構造体103上面の熱可塑性接着剤層105の上面に付着等させることにより、タックフリーとするものである。
別途介在させる微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタン、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機微粒子および無機酸化物微粒子や、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、セルロース、でんぷんなどの有機微粒子などを用いることができ、それぞれの複合材料であっても良い。好ましくは、粒子径が接着層の膜厚よりも小さく、インクやインク溶媒への影響がない、無機微粒子および無機酸化物微粒子の使用が望ましい。
なお、インクの溶媒及び/又は粒子による介在層、または、別途介在させる微粒子による介在層を形成するための使用量は、環境温度、熱可塑性接着剤種などにより変動するものであるが、熱可塑性接着剤層105をタックフリーとなる量で調整される。また、インクの溶媒のみによる介在層では、後述するように、除去後は充填された電気泳動インクの溶媒として作用することができるので、充填される電気泳動インクの溶媒量を介在層形成用溶媒量を含有するかたちで、前記インク充填工程での溶媒量を予め若干少なめで調整しても良いものである。
【0035】
<仮配置工程、図2(a)、(b)参照>
この仮配置工程は、前記第一の電極基板100に第二の電極基板200とを対向させて仮配置するものであり、上記インクの溶媒及び/又は粒子や、別途介在させた微粒子による介在層107、108により、熱可塑性接着剤層105の上層はタックフリーとなり、第二の電極基板200の貼り合わせ時、被着面との密着性や摩擦を低減し、すべりや再剥離を容易とすることで、仮配置(位置決め)を正確に行うことができるものとなる。
【0036】
<貼合工程>
本発明方法において、貼り合わせ工程は、図2(b)に示すように、上記仮配置工程により、第一の電極基板100と第二の電極基板200を対向配置させた状態で、荷重又は圧力手段によって介在層107又は108を除去することにより、熱可塑性接着剤層の接着力を回復させて、前記第一の電極基板100と前記第二の電極基板200とを熱接着させて貼り合わせるものである。この工程を経ることにより、電気泳動インク106は、セル104内に封止されて、図2(c)に示す電気泳動表示装置Aが製造されるものとなる。
【0037】
本貼り合わせ工程における熱接着させる手段としては、例えば、加熱ローラー、加熱加圧ローラー、加熱プレス、などにより行うことができ、好ましくは、貼り合わせ面の空気を順次押し出して除去、並びに、介在層の除去も可能な点から、加熱加圧ローラー(いわゆる熱ラミネーター)が望ましい。
【0038】
本貼り合わせ工程を詳述すれば、インク溶媒による介在層では、荷重又は圧力手段、貼り合わせ幅や被貼り合わせ対象物を勘案し、具体的には、0.1〜1000N程度の荷重をかけたラミネーター又は0.1〜100kPaの荷重をかけた弾性体および平面版による面押しなどの圧力手段により、溶媒による介在層107を接着剤層の両側側方に逃げる形で接着剤層から除去することにより熱可塑性接着剤105の接着力を回復させて、前記第一の電極基板100と前記第二の電極基板200とを接着させるものである。
また、インクの粒子、または、別途介在させる微粒子による介在層108では、具体的には、接着層が軟化する温度以上に加熱しながら、前記した荷重および圧力手段を使用することにより、加熱で軟化した接着剤層に微粒子を埋没させて接着剤層から除去して、熱可塑性接着剤105の接着力を回復させて前記第一の電極基板100と前記第二の電極基板200とを接着させるものである。
更に、インクの溶媒及び粒子による介在層では、上記の溶媒による除去態様と粒子の接着剤層中への埋没による態様の組み合わせで当該介在層が接着剤層から除去されることにより熱可塑性接着剤105の接着力を回復して前記第一の電極基板100と前記第二の電極基板200とを接着させるものである。
以上の工程により目的の電気泳動表示装置(電気泳動表示パネル)を得ることができる。
【0039】
本発明方法において用いられる第二の電極基板200としては、上記第一の電極基板100と同様であり、第二の基材201、第二の電極層202により構成することができ、例えば、透明樹脂フィルムや透明ガラス等にITO等の透明導電性材料を塗工法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の蒸着法等により形成した光透過性のものや、樹脂フィルム、樹脂板、ガラス、セラミックス等の非導電性物質表面に金属等の導電性材料膜(層)を形成したものや、金属板を用いることができる。また、第一の電極基板100及び第二の電極基板200の貼り合せの際に、貼り合せ工程を真空内で行うことで、更に、表示エリア内への気泡の混入を防いでも良い。
【0040】
本発明方法において、上記工程で基板100及び200を貼り合わせて電気泳動インクとした後に、電気泳動表示装置の用途(使用用途、書換方法等)に応じて、基板に別の光透過性電極、非光透過性電極、樹脂フィルム、樹脂、木、金属、セラミックス、紙、布及び/又はガラスと貼り合わせることも可能である。
また、基板に樹脂フィルムを用いた場合には、溶媒透過抑制効果や気体透過抑制効果を有する樹脂フィルムやその他基材を貼り合わせることによって、溶媒透過抑制効果や気体透過抑制効果を増大させることも可能である。
その他、電気泳動表示装置の強度を上げるために、別の基材を貼り合わせて補強することや、表示装置の装飾用に別の基材として紙や布等を貼り合わせることも可能である。
【0041】
このように構成される本発明方法では、第一の電極基板100上に絶縁性の構造体103,103…からなる複数のセル104,104…を形成する構造体形成工程と、前記構造体103の上面に熱可塑性接着剤層105を形成する接着剤層形成工程と、少なくとも一種類以上の電気泳動粒子と溶媒とを含む電気泳動インク106を前記セル104に充填するインク充填工程と、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層105に介在層107または108を形成し、該介在層を介して前記第一の電極基板100に第二の電極基板200とを対向させて仮配置する工程と、前記介在層107又は108を荷重又は圧力手段により除去して前記第一の電極基板100と前記第二の電極基板200とを熱接着させることにより、前記第一の電極基板100と前記第二の電極基板200を貼り合わせる工程とを有することにより、製造工程の温度環境でタック性がある熱可塑性接着剤を使用する場合であっても、タックフリーにして、貼り合わせ時被着面との密着性や摩擦を低減し、すべりや再剥離を容易とすることで、位置決め(仮配置)を容易にし、かつ、2枚の電極基板を所望の接着力に回復させることにより、確実に貼り合わせることができるため、組み立て作業性、接着性に優れ、しかも、経時的にも優れた接着性を有するので、電気泳動表示装置の構造的耐久性や表示耐久性にも優れた従来にない優れた電気泳動表示装置の製造方法が提供されるものとなる。
また、本発明方法により得られる電気泳動表示装置は、高コントラストな表示の実現と、繰り返し表示時においても高い信頼性を持ってコントラスト表示することができ、応答性にも優れ、表示特性の劣化がきわめて少ない電気泳動表示装置となるものである。
【0042】
本発明は、上述の如く構成されるものであるが、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができる。
例えば、電気泳動インクを2種類以上に分け、塗布と乾燥を複数回に分けて実施しても良い。
また、製造された際に、複数の種類(色)の電気泳動インクを、ある種のパターンを表示するように制御して並べる場合のような、マルチカラー、フルカラー電気泳動表示装置を得ようとする場合には、基板100をアドレスしてインクジェット等により各種カラーインクを充填していく方法や、充填しない部分をフォトマスクのようなものでマスクして、マスクされていない部分にのみ充填した後、マスクを除去し、さらに充填しない部分をフォトマスクのようなものでマスクして、マスクされていない部分にのみ充填することを繰り返して、マルチカラー、フルカラー電気泳動表示装置を得ることもできる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施するに適した実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1、図1及び図2準拠)
<構造体形成工程>
第一の電極基板(ITO−PETフィルム)に、アクリレート系レジストフィルムを、真空ラミネーターを用いて貼り合わせた後、フォトレジスト法によりハニカム形状のパターンを有する構造体を形成した。
【0045】
<接着剤形成工程>
PETフィルム(商品名「ルミラー」、厚さ50μm、東レ社製)上に、溶剤で希釈した熱可塑性接着剤(ホットメルト樹脂、バイロン55ss、東洋紡社製)を、コンマロールを用いて膜厚12μm塗布した後に乾燥させた。次に、上記熱可塑性接着剤層が形成されたPETフィルムと、構造体が形成された第一の電極基板とを120℃の熱ラミネーターに通し、熱された状態のまま引き剥がすことにより、PETフィルムに形成された熱可塑性接着剤層の一部を構造体の上面に転写した。構造体の上面全体に形成された熱可塑性接着剤層の膜厚は、6〜8μmであった。
【0046】
<インク充填工程>
構造体の上面に形成された熱可塑性接着剤を冷却した後、第一の電極基板にダイコーターを用いて電気泳動インク〔白粒子(親油性表面処理された酸化チタン)(負帯電)10質量%、黒粒子(カーボンブラックにより着色されたアクリル粒子)(正帯電)10質量%、ヒドロキシラウリルアミン3質量%、溶媒としてアイソパーG(沸点153〜180℃)77質量%〕を塗布することにより、構造体からなるセルに電気泳動インクを充填した。
次に、電気泳動インクが形成された部分の外周にディスペンサーを用いて紫外線硬化型接着剤(TB3052D、スリーボンド社製)を塗布してメインシール部分を形成した。
【0047】
<介在層形成工程、仮配置工程、貼合工程>
上記電気泳動インクの充填時に、前記接着層が形成された構造体上面に対して、約5μm厚くインクを塗布し、構造体上面に電気泳動インクの層を形成することにより、熱可塑性接着剤層の上層に介在層を形成した。次いで、第一の電極基板に対して対向基板となる第二の電極基板を微調整しながら所定の位置に位置決めして配置した。この際、介在層の形成により、タックフリーになっており、位置決めが容易であった。
上記位置決め後、120℃に設定された加熱加圧ローラー間を、2回通過(各時間10秒以内)させて第一の電極基板に対して対向基板となる第二の電極基板とを貼り合わせた。このとき、介在層である溶媒およびインク中の微粒子は、圧力手段(荷重100Nのラミネーター)により除去されて、熱可塑性接着剤は元の接着剤力に回復して、所定の接着力を発現した。
上記貼り合わせの際に、セル形成部の外周に形成したメインシール部に紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化することにより、電気泳動表示装置を作製した。
【0048】
(実施例2)
上記実施例1において、介在層をシリカ微粒子とし、インク塗布工程に先立ち、予め構造体上面に形成された接着層に接触させ、接着層の粘着力(タック)により付着させた。さらに、構造体形成面を下向きにし、振動を付与したのちに、エアブローして、余剰な微粒子を除去した。
当該介在層を形成したのちに、上記実施例1のインク充填工程と同様の工程を経て電気泳動表示装置を作製した。
この実施例2においては、熱可塑性接着剤層の厚さは6μm、シリカ微粒子は1μm以下のものを使用した。この介在層の形成により、タックフリーとなり位置決めが容易であった。
上記位置決め後、上記実施例1と同様に、120℃に設定された加熱加圧ローラーを2回通過させて第一の電極基板に対して対向基板となる第二の電極基板とを貼り合わせた。このとき、介在層は荷重100Nのラミネーターにより接着層に埋没して除去されるとともに、熱可塑性接着剤層が所定の接着力を回復し、所定の接着力を発現した。
【0049】
(実施例3)
上記実施例1において、介在層をインクの溶媒(アイソパーG)とし、当該介在層を形成した以外は、上記実施例1と同様の工程を経て電気泳動表示装置を作製した。
この実施例3においては、熱可塑性接着剤層の厚さは6μm、介在層の厚さは5μmであった。この介在層の形成により、タックフリーとなり位置決めが容易であった。
上記位置決め後、実施例1と同様に、120℃に設定された加熱加圧ローラーを2回通過させて第一の電極基板に対して対向基板となる第二の電極基板とを貼り合わせた。このとき、介在層は荷重100Nのラミネーターにより除去されて、熱可塑性接着剤層が所定の接着力を回復し、所定の接着力を発現した。また、封止されるインク組成が、上記実施例1の電気泳動インク組成の濃度(最終溶媒濃度77質量%)となるように、インク充填工程での溶媒(アイソパーG)の使用量を5〜20質量%程度少なめに設定した。
【0050】
上記実施例1〜3で得られた各電気泳動表示装置の表示エリア内には気泡の混入は無く電極基板間の間隔は均一であった。さらに、シール部の接着性も問題は無かった。この電気泳動表示装置の電極基板間に±50Vの電圧を交互に印加することにより、高コントラストの白黒表示可能であることが確認できた。
更に、得られた電気泳動表示装置を、50℃乾燥条件下に1ヶ月放置した後でも、初期と表示特性の変化が見られない、非常に表示劣化しにくい電気泳動表示装置が得られた。また、セル内に気泡が成長した様子が見られず、電極基板間隔を均一に制御でき、電極基板同士の接着は確実に貼合されており、基板同士の剥がれもなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板などの掲示板、電子値札、電子棚札、電子広告、モバイル機器の表示部等の用途に用いることができる電気泳動表示装置の好適な製造方法である。
【符号の説明】
【0052】
100 第一の電極基板
101 第一の基材
102 第一の電極層
103 構造体
104 セル
105 接着剤層
106 電気泳動インク
107 インクの溶媒による介在層
108 インクの粒子又は別途介在させて微粒子による介在層
200 第二の電極基板
201 第二の基材
202 第二の電極層
300 基材
301 接着剤
400 ダイコーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極基板上に絶縁性の構造体からなる複数のセルを形成する構造体形成工程と、前記構造体の上面に熱可塑性接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、少なくとも一種類以上の電気泳動粒子と溶媒とを含む電気泳動インクを前記セルに充填するインク充填工程と、前記構造体の上面に形成した熱可塑性接着剤層に介在層を形成し、該介在層を介して前記第一の電極基板に第二の電極基板とを対向させて仮配置する仮配置工程と、前記介在層を荷重又は圧力手段により除去して前記第一の電極基板と前記第二の電極基板とを接着させることにより、前記第一の電極基板と前記第二の電極基板を貼り合わせる貼合工程と、を有することを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記介在層が、前記電気泳動インクの溶媒及び/又は粒子により形成されることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記介在層が、微粒子を別途介在させることにより形成されることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159634(P2012−159634A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18446(P2011−18446)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】