電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器
【課題】 応答速度の低下や消費電力の増大を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置の駆動方法等を提供する。
【解決手段】 一対の基板間に電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含む電気泳動表示装置の駆動方法であって、表示部の所与の領域の内部で電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う部分書き換え工程S2と、部分書き換え工程が所与の回数繰り返された後に、部分書き換え工程で印加された電圧の非対称性を解消する非対称性解消工程S6と、を含み、部分書き換え工程は、所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を第2色で表示する残像消去工程を含み、非対称性解消工程は、部分書き換え工程で消去された固定画像を構成する画素を第1色で表示する処理を所与の回数繰り返す残像消去対称化工程を含む。
【解決手段】 一対の基板間に電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含む電気泳動表示装置の駆動方法であって、表示部の所与の領域の内部で電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う部分書き換え工程S2と、部分書き換え工程が所与の回数繰り返された後に、部分書き換え工程で印加された電圧の非対称性を解消する非対称性解消工程S6と、を含み、部分書き換え工程は、所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を第2色で表示する残像消去工程を含み、非対称性解消工程は、部分書き換え工程で消去された固定画像を構成する画素を第1色で表示する処理を所与の回数繰り返す残像消去対称化工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても画像を保持できるメモリー性を有する表示パネルが開発され、電子時計等にも使用されている。メモリー性を有する表示パネルとしては、EPD(Electrophoretic Display)すなわち電気泳動表示装置や、メモリー性液晶表示装置等が知られている。
【0003】
電気泳動表示装置においてはDCバランスをとること、すなわち電極間に印加される電界の時間平均をほぼゼロにすることが要求される。特許文献1は、DCバランスが崩れた場合に装置の動作寿命が短くなる可能性を指摘する。つまり、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するためにはDCバランスをとって駆動制御を行うことが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−530201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気泳動表示装置では、応答速度を速めるために、表示部の全体を描画する全面駆動だけでなく書き換え対象である一部のみを描画する部分駆動が行われることがある。例えば、表示された画像を構成する画素だけを部分駆動して、その画像を消去する工程が行なわれる。このとき、書き換え対象である一部の画素と背景である画素との間に斜め方向の電界が生じていて、輪郭部分が膨らんだ画像が表示されているために、画像の輪郭に沿って残像が生じることがある。表示画像の見映えをよくするために、電気泳動表示装置の駆動制御において残像を消去する工程が含まれることが好ましい。
【0006】
このとき、残像を消去する工程で印加される電界についてもDCバランスをとる必要が生じる。そして、そのためのデータを取得、転送する過程において処理時間、電力を使うことになる。その結果、電気泳動表示装置の応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じる可能性がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含む電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え工程と、前記部分書き換え工程が所与の回数繰り返された後に、前記部分書き換え工程で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消工程と、を含み、前記部分書き換え工程は、前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み工程と、前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去工程と、前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去工程と、を含み、前記非対称性解消工程は、前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み工程と、前記第1全面書き込み工程の後に、前記部分書き換え工程で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化工程と、前記残像消去対称化工程の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み工程と、を含み、前記第2全面書き込み工程の後に、再び前記部分書き換え工程を行う。
【0009】
本発明によれば、部分書き換え工程で生じた印加電界の非対称性を、非対称性解消工程を行うことで解消し、DCバランスをとることができる。DCバランスをとることで、長期信頼性の高い電気泳動表示装置を提供できる。部分書き換え工程には、所与の視覚表現の輪郭に沿った残像を消去する残像消去工程が含まれており、残像を消去できるため視認性のよい電気泳動表示装置を提供できる。
【0010】
本発明の残像消去工程(部分書き換え工程の1つの工程)においては、どの視覚表現を表示した場合でも、固定画像を用いて残像の消去を行う。そして、残像消去対称化工程(非対称性解消工程の1つの工程)においても、この固定画像を用いて残像消去工程で生じた印加電界の非対称性を解消する。これらの工程において、視覚表現ごとに異なる画像を用いることも可能である。しかし、その場合には、視覚表現ごとに異なる画像のデータを全て記憶するための記憶容量を必要とし、記憶部にアクセスする時間を要し、当該画像のデータを転送することで電力を消費する。本発明では、1つの固定画像のデータを保存するための記憶容量を用意すればよい。また、記憶部へのアクセスは1度でよく、1つの固定画像のデータを1度転送するだけなので消費電力の増加を抑制できる。残像消去対称化工程が複数回数繰り返された場合であっても、記憶部へのアクセスは1度だけでよく、応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることはない。なお、固定画像は、表示部の所与の領域の内部で表示され得る全ての視覚表現の輪郭部分(視覚表現の輪郭を含み残像として残り得る部分)を包含するような画像である。
【0011】
ここで、第1色と第2色とは、電気泳動表示装置が最低限表示可能な基本色である2色である。例えば、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式では、分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものがある。この方式の電気泳動表示部は、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示可能である。このとき、第1色として電気泳動粒子の1つの色である黒色を割り当て、第2色として白色を割り当ててもよい。逆に、第1色として白色を、第2色として黒色を割り当ててもよい。なお、表示部における所与の領域とは、部分駆動によって所与の視覚表現の書き換えが行われ得る領域をいう。また、所与の視覚表現とは、文字、数字、メッセージ、画像、図形、模様、記号等のいずれか、又はこれらの組み合わせ、一部であってもよい。
【0012】
(2)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像としてもよい。
【0013】
(3)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像としてもよい。
【0014】
これらの発明によれば、残像消去工程と残像消去対称化工程とで用いられる固定画像は、特定の閉じた図形として、又は輪郭形成画素と背景境界画素との集合として与えられる。固定画像は、例えば記憶部等に画像信号として記憶されていてもよい。
【0015】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを全て包含するような閉じた図形であってもよい。ここでの閉じた図形とは、外周で閉じた図形を意味する。図形の内部および外周は単一色で表され、単一色とは第1色であってもよいし、第2色であってもよい。閉じた図形は、外周の画素の情報さえ記憶すれば、その内部は単一色である。従って固定画像を記憶するために必要な記憶容量を減らすことが可能である。また、閉じた図形として例えば正方形、長方形、その他の多角形の形状を選択することができる。この場合には頂点の画素の情報さえ記憶すればよいので、更に記憶容量を減らすことが可能である。
【0016】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の全てについての輪郭形成画素と背景境界画素とを合成した画像、つまりこれらの画素の集合で表される画像であってもよい。輪郭形成画素とは視覚表現の輪郭を形成する画素であって、背景境界画素とは輪郭形成画素と隣接する背景の画素(視覚表現を形成しない画素)である。輪郭形成画素と背景境界画素は、部分駆動の際に生じる斜め方向の電界で残像となり得る。全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素との集合で表される画像を固定画像とすれば、不必要に固定画像の範囲を広げることなく残像消去工程と残像消去対称化工程を適切に行うことができる。
【0017】
(4)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の回数は複数回であってもよい。
【0018】
本発明によれば、部分書き換え工程を複数回繰り返した後に、非対称性解消工程に進む。非対称性解消工程においては、部分書き換え工程で生じた印加電界の非対称性についてまとめてDCバランスをとる。このとき、非対称性解消工程は部分書き換え工程と全く無関係な時間に1回だけ行われてもよい。例えば、電子時計などに電気泳動表示装置を使用した場合、部分書き換え工程(時刻表示の更新)の直後に非対称性解消工程を行うと、時刻表示とは関係のない不要なデータが視認される可能性があり、その場合には商品性が損なわれる恐れがある。本発明によれば、まず部分書き換え工程(時刻表示の更新)を連続して行い、その後にユーザーが視認することのない状況(例えば、不使用時)において非対称性解消工程が行われることを可能にする。これにより、電子時計などに適用した場合にも上記の商品性が損なわれることはなく、さらに、まとめてDCバランスをとるので全体の処理の効率が高まる。
【0019】
このとき、残像消去対称化工程では記憶部から固定画像の情報をただ1度だけ読み出せばよい。そのため、記憶部へのアクセスに起因する処理時間の遅さや、消費電力の増大を避けることが可能になる。特に、部分書き換え工程を繰り返す回数が多い場合には、処理時間を短縮し消費電力を抑制する効果が大きい。
【0020】
(5)本発明は、電気泳動表示装置であって、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部と、前記表示部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え制御と、前記部分書き換え制御を所与の回数繰り返した後に、前記部分書き換え制御で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消制御と、を行い、前記部分書き換え制御において、前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み制御と、前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去制御と、前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去制御と、を行い、前記非対称性解消制御において、前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み制御と、前記第1全面書き込み制御の後に、前記部分書き換え制御で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化制御と、前記残像消去対称化制御の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み制御と、を行い、前記第2全面書き込み制御の後に、再び前記部分書き換え制御を行う。
【0021】
本発明によれば、部分書き換え制御で生じた印加電界の非対称性を、非対称性解消制御を行うことで解消し、DCバランスをとることができる。DCバランスをとることで、長期信頼性の高い電気泳動表示装置を提供できる。ここで、部分書き換え制御には、所与の視覚表現の輪郭に沿った残像を消去する残像消去制御が含まれており、残像を消去できるため視認性のよい電気泳動表示装置を提供できる。
【0022】
本発明の残像消去制御(部分書き換え制御の1つの制御)においては、どの視覚表現を表示した場合でも、固定画像を用いて残像の消去を行う。そして、残像消去対称化制御(非対称性解消制御の1つの制御)においても、この固定画像を用いて残像消去制御で生じた印加電界の非対称性を解消する。これらの制御において、視覚表現ごとに異なる画像を用いることも可能である。しかし、その場合には、視覚表現ごとに異なる画像を全て記憶するための記憶容量を必要とし、記憶部にアクセスする時間を要し、当該画像のデータを転送することで電力を消費する。本発明では、1つの固定画像を保存するための記憶容量を用意すればよく、記憶部へのアクセスは1度でよく、1つの固定画像のデータを1度転送するだけなので消費電力の増加を抑制できる。残像消去対称化制御が複数回数繰り返された場合であっても、記憶部へのアクセスは1度だけでよく、応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることはない。
【0023】
(6)この電気泳動表示装置において、前記制御部は、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像としてもよい。
【0024】
(7)この電気泳動表示装置において、前記制御部は、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像としてもよい。
【0025】
これらの発明によれば、残像消去制御と残像消去対称化制御とで用いられる固定画像は、特定の閉じた図形として、又は輪郭形成画素と背景境界画素との集合として与えられる。固定画像は、例えば記憶部等に画像信号として記憶されていてもよい。
【0026】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを全てを包含するような閉じた図形であってもよい。閉じた図形は、外周の画素の情報さえ記憶すれば、その内部は単一色である。従って固定画像を記憶するために必要な記憶容量を減らすことが可能である。また、閉じた図形として例えば正方形や長方形などの形状であれば、頂点の画素の情報さえ記憶すればよいので、更に記憶容量を減らすことが可能である。
【0027】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の全てについての輪郭形成画素と背景境界画素とを合成した画像、つまりこれらの画素の集合で表される画像であってもよい。輪郭形成画素と背景境界画素は部分駆動の際に生じる斜め方向の電界で残像となり得るためである。このとき、不必要に固定画像の範囲を広げることなく残像消去制御と残像消去対称化制御を適切に行うことができる。
【0028】
(8)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子機器であってもよい。
【0029】
本発明によれば、応答速度の低下や消費電力の増大を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置を含む電子機器を提供できる。このとき、残像がないために電気泳動表示装置の視認性が向上し、DCバランスがとられているために電気泳動表示装置の長期信頼性を得ることができる。
【0030】
(9)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子時計であって、前記表示部は、少なくとも、時桁と分桁を含む時刻表示を行い、前記制御部は、前記部分書き換え制御において、前記時刻表示の前記分桁を前記所与の視覚表現としてもよい。
【0031】
本発明によれば、制御部は、表示が1分おきに変化する電子時計の分桁表示を対象として部分書き換え制御を行う。よって、残像がなく視認性のよい時刻表示を行う電子時計を提供することができる。
【0032】
(10)この電子時計において、前記制御部は、前記残像消去対称化制御を10分に1回行ってもよい。
【0033】
(11)この電子時計において、前記制御部は、前記残像消去対称化制御を1日に1回行ってもよい。
【0034】
これらの発明によれば、制御部は、10分に1回だけ残像消去対称化制御を行うので、処理の効率がよい。さらに、効率を高めるために1日に1回だけ残像消去対称化制御を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態における電気泳動表示装置のブロック図。
【図2】第1実施形態における電気泳動表示装置の画素の構成例を示す図。
【図3】図3(A)は電気泳動素子の構成例を示す図。図3(B)、図3(C)は電気泳動素子の動作の説明図。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、第1実施形態における部分駆動および残像消去の表示例を示す図、およびY−Y線に沿って切断された断面図。
【図5】図5(A)〜図5(B)は、輪郭形成画素と背景境界画素を説明するための図。
【図6】図6(A)〜図6(G)は、固定画像を説明するための図。
【図7】第1実施形態における電気泳動表示装置の駆動方法のフローチャート。
【図8】図8(A)、図8(B)は図7のサブルーチンのフローチャート。
【図9】図9(A)は電子機器の一例である腕時計の図、図9(B)は電子機器の一例である電子ペーパーの図。
【図10】図10(A)〜図10(J)は、第2実施形態における電子時計の表示例を示す図。
【図11】図11(A)〜図11(J)は、比較例における電子時計の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0037】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図8を参照して説明する。
【0038】
1.1.電気泳動表示装置
1.1.1.電気泳動表示装置の構成
図1は、本実施形態に係るアクティブマトリックス駆動方式の電気泳動表示装置100のブロック図である。
【0039】
電気泳動表示装置100は、制御部6、記憶部160、表示部5を含む。制御部6は、表示部5を制御し、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、コントローラー63、共通電源変調回路64を含む。走査線駆動回路61、データ線駆動回路62,共通電源変調回路64は、それぞれコントローラー63と接続されている。コントローラー63は、記憶部160から読み出される画像信号等や図外から供給される同期信号に基づいて、これらを総合的に制御する。なお、制御部6は記憶部160を含む構成であってもよい。例えば、記憶部160は、コントローラー63に内蔵されたメモリーであってもよい。
【0040】
ここで、記憶部160は、SRAM、DRAM、その他のメモリーであってもよく、少なくとも表示部5に表示させる画像のデータ(画像信号)を記憶している。また、記憶部160には、コントローラー63によって制御に必要な情報が記憶される。制御に必要な情報とは、例えば残像消去工程S24(図8(A)参照)が実行された回数である。このとき、コントローラー63は、その情報に基づいて残像消去対称化工程S62(図8(B)参照)において対称化の処理を繰り返す回数を決定できる。
【0041】
表示部5には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68とが形成されており、これらの交差位置に対応して複数の画素40が設けられている。
【0042】
走査線駆動回路61は、m本の走査線66(Y1、Y2、…、Ym)により各画素40に接続されている。走査線駆動回路61は、コントローラー63の制御に従って1行目からm行目までの走査線66を順次選択することで、画素40に設けられた駆動用TFT41(図2参照)のオンタイミングを規定する選択信号を供給する。
【0043】
データ線駆動回路62は、n本のデータ線68(X1、X2、…、Xn)により各画素40に接続されている。データ線駆動回路62は、コントローラー63の制御に従って、画素40のそれぞれに対応する1ビットの画像データを規定する画像信号を画素40に供給する。なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合には、ローレベルの画像信号を画素40に供給し、画像データ「1」を規定する場合には、ハイレベルの画像信号を画素40に供給するものとする。
【0044】
表示部5には、また、共通電源変調回路64から延びる低電位電源線49(Vss)、高電位電源線50(Vdd)、共通電極配線55(Vcom)、第1のパルス信号線91(S1)、第2のパルス信号線92(S2)が設けられており、それぞれの配線は画素40と接続されている。共通電源変調回路64は、コントローラー63の制御に従って上記配線のそれぞれに供給する各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化、Hi−Z)を行う。
【0045】
1.1.2.画素部分の回路構成
図2は、図1の画素40の回路構成図である。なお、図1と同じ配線には同じ番号を付しており、説明は省略する。また、全画素に共通の共通電極配線55については記載を省略している。
【0046】
画素40には、駆動用TFT(Thin Film Transistor)41と、ラッチ回路70と、スイッチ回路80が設けられている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成をとる。
【0047】
駆動用TFT41は、N−MOSトランジスタからなる画素スイッチング素子である。駆動用TFT41のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子に接続されている。ラッチ回路70は転送インバーター70tと帰還インバーター70fとを備えている。インバーター70t、70fには、低電位電源線49(Vss)と高電位電源線50(Vdd)から電源電圧が供給される。
【0048】
スイッチ回路80は、トランスミッションゲートTG1、TG2からなり、ラッチ回路70に記憶された画素データのレベルに応じて、画素電極35(図3(B)、図3(C)参照)に信号を出力する。なお、Vaは、1つの画素40の画素電極へ供給される電位(信号)を意味する。
【0049】
ラッチ回路70に画像データ「1」(ハイレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG1がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S1を供給する。一方、ラッチ回路70に画像データ「0」(ローレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG2がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S2を供給する。このような回路構成により、制御部6はそれぞれの画素40の画素電極に対して供給する電位(信号)を制御することが可能である。なお、画素40の回路構成は一例であり、図2に示すものに限られない。
【0050】
1.1.3.表示方式
本実施形態の電気泳動表示装置100は、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式であるとする。分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものであるとすると、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示できる。ここでは、電気泳動表示装置100は、第1色として黒色を、第2色として白色を表示するものとして説明する。そして、黒(第1色)を表示している画素を白(第2色)で表示すること、又は白を表示している画素を黒で表示することを反転と表現する。
【0051】
図3(A)は、本実施形態の電気泳動素子32の構成を示す図である。電気泳動素子32は素子基板30と対向基板31(図3(B)、図3(C)参照)との間に挟まれている。電気泳動素子32は、複数のマイクロカプセル20を配列して構成される。マイクロカプセル20は、例えば無色透明な分散液と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)27と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)26とを封入している。本実施形態では、例えば白色粒子27は負に帯電しており、黒色粒子26は正に帯電しているとする。
【0052】
図3(B)は、電気泳動表示装置100の表示部5の部分断面図である。素子基板30と対向基板31は、マイクロカプセル20を配列してなる電気泳動素子32を狭持している。表示部5は、素子基板30の電気泳動素子32側に、複数の画素電極35が形成された駆動電極層350を含む。図3(B)では、画素電極35として画素電極35Aと画素電極35Bが示されている。画素電極35により、画素ごとに電位を供給することが可能である(例えば、Va、Vb)。ここで、画素電極35Aを有する画素を画素40Aとし、画素電極35Bを有する画素を画素40Bとする。画素40A、画素40Bは画素40(図1、図2参照)に対応する2つの画素である。
【0053】
一方、対向基板31は透明基板であり、表示部5において対向基板31側に画像表示がなされる。表示部5は、対向基板31の電気泳動素子32側に、平面形状の共通電極37が形成された共通電極層370を含む。なお、共通電極37は透明電極である。共通電極37は、画素電極35と異なり全画素に共通の電極であり、電位Vcomが供給される。
【0054】
共通電極層370と駆動電極層350との間に設けられた電気泳動表示層360に電気泳動素子32が配置されており、電気泳動表示層360が表示領域となる。共通電極37と画素電極(例えば、35A、35B)との間の電位差に応じて、画素毎に所望の表示色を表示させることができる。
【0055】
図3(B)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも高電位である。このとき、負に帯電した白色粒子27が共通電極37側に引き寄せられ、正に帯電した黒色粒子26が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは白を表示していると視認される。
【0056】
図3(C)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも低電位である。このときは逆に、正に帯電した黒色粒子26が共通電極37側に引き寄せられ、負に帯電した白色粒子27が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは黒を表示していると視認される。なお、図3(C)の構成は図3(B)と同様であり説明は省略する。また、図3(B)、図3(C)ではVa、Vb、Vcomを固定された電位として説明したが、実際にはVa、Vb、Vcomは時間とともに電位が変化するパルス信号である。
【0057】
1.2.電気泳動表示装置の駆動方法
1.2.1.輪郭部分の残像
電気泳動表示装置の駆動方法として、表示部の全体を描画する全面駆動だけでなく、書き換えを行う表示部の一部のみを描画する部分駆動が用いられることがある。電圧を印加する対象の画素数を減らすことで、書き換え時のレスポンスを早めることができる。
【0058】
しかし、部分駆動を行った場合に、駆動されない画素(背景)との境界部分で斜め方向に電界が生じる。部分駆動によって表示された文字、数字、図形等を消去した場合に、斜め方向に生じた電界の影響によって、その文字、数字、図形等の輪郭部分が残像として視認されることがある。よって、部分駆動によって部分的な書き換えを行う場合(部分書き換え)には、輪郭部分の残像を消去する操作(残像消去)が必要である。
【0059】
図4(A)〜図4(C)は、それぞれ部分書き込み、部分消去、残像消去を行ったときの表示部5の表示例(左図)と断面図(右図)を示すものである。なお、図4(A)〜図4(C)では表示部5において部分駆動が行われ得る所与の領域のうち6画素×6画素を抜き出して表示している。また、図4(A)〜図4(C)の右図は、それぞれ左図のY−Y線に沿った断面図であり、画素40A、40Bを含む。図4(A)〜図4(C)および図5(A)〜図5(B)においては、表示部5のうち斜線で示された画素は、その画素が黒色で表示されていることを示す。表示部における所与の領域では、部分駆動によって所与の視覚表現の書き換えが行われる。なお、所与の視覚表現とは、文字、数字、メッセージ、画像、図形、模様、記号等のいずれか、又はこれらの組み合わせ、一部である。
【0060】
図4(A)〜図4(C)において、Va、Vbはそれぞれ画素40Aの画素電極35A、画素40Bの画素電極35Bに供給される信号である。なお、画素40Aと画素40Bは隣接しているものとする(図3(B)、図3(C)参照)。画素40Aと画素40Bの回路構成も図2と同じであり、それぞれのラッチ回路に保持された画像データに応じて、Va、VbとしてS1またはS2を出力する。Vcomは共通電源変調回路64から共通電極37に供給される信号である。それぞれの信号Va、Vb、Vcomは、ハイレベル(VH)、ローレベル(VL)、またはハイインピーダンス状態(Hi−Z)をとり得るものとする。また、この例において、画素電極35Bに供給される信号がHi−Zである場合には、斜め方向に生じる電界以外は考慮しないものとする。
【0061】
図4(A)は、部分書き込みを行う場合を示している。表示部5には視覚表現として画像P1が書き込まれ、画素40Aはその輪郭を形成する画素(輪郭形成画素)の1つである。なお、画像P1を形成する黒色の16画素(4画素×4画素)が視覚表現形成画素である。輪郭形成画素は、視覚表現形成画素の一部であって、背景との境界にある画素である。また、画素40Bは背景に含まれる1つの画素であって、輪郭形成画素と隣接する画素(背景境界画素)の1つである。右図を見ると、画素電極35A(Va)の電位はVHであり、画素40Aは黒色で表示される。一方、画素電極35B(Vb)は例えばハイインピーダンス状態であり、画素40Bは背景色である白色の表示を保つ。
【0062】
ここで、図5(A)〜図5(B)を用いて、画像P1における輪郭形成画素R3と背景境界画素R4を説明する。図5(A)のように、輪郭形成画素R3は画像P1の輪郭を形成する黒色の12画素である。そのうちの1つが画素40Aである。図5(B)のように、背景境界画素R4は輪郭形成画素R3と隣接する背景(白色)の16画素であって、そのうち1つが画素40Bである。なお、隣接とは本実施形態では水平、垂直方向だけであるが、斜め方向を含むとしてもよい。例えば、図5(B)において、画素40V、画素40W、画素40X、画素40Yが背景境界画素に含まれるとしてもよい。
【0063】
図4(B)は、部分消去を行う場合を示している。部分書き込みで書き込まれた画像P1を形成する画素(視覚表現形成画素)を白色で表示することで部分消去を行う。画素電極35A(Va)の電位はVLであり、画素40Aは白色となる。このとき、輪郭形成画素とそれに隣接するハイインピーダンス状態(Hi−Z)の背景境界画素との間で斜め方向の電界が生じていて、画像P1は輪郭部分が膨らんだ画像となっていたために、輪郭に沿った残像P2が発生する。この例では、白色を背景として、輪郭に沿って薄い黒色の残像P2が視認される。そのため、次の残像消去が必要になる。
【0064】
図4(C)は、残像消去を行う場合を示している。輪郭の残像P2を消去するために、少なくとも画像P1の輪郭形成画素R3と背景境界画素R4とを含む画像を、背景色と同じ白色で表示する必要がある。このとき、輪郭形成画素R3に含まれる画素40Aと背景境界画素R4に含まれる画素40Bも白色で表示される。右図において、画素40A、画素40Bの画素電極35A(Va)、35B(Vb)の電位はVLであり、負に帯電した白色粒子27が共通電極37側に引き寄せられる方向の電界が印加されている。そして、輪郭の残像P2が消去される。
【0065】
なお、残像消去を行う必要があるのは部分駆動を行った場合だけである。全面駆動を行った場合には、全ての画素が駆動対象であり、斜め方向には電界が生じにくい。よって、全面駆動の場合には残像消去は不要である。
【0066】
1.2.2.DCバランス
残像消去は、文字、数字、図形等自体の表示、消去とは別の付随的な処理である。また、残像消去の工程において電界が印加される時間は、文字、数字、図形等自体の表示、消去と比べると短時間である。そのため、従来、残像消去についてDCバランスが考慮されることはなかった。
【0067】
しかし、残像消去の対象となる画素の電極間では、残像消去によって一定の方向に電界が印加されることになる。そして、残像消去は文字、数字、図形等自体の表示に伴って繰り返されるため、使用され続けると印加電界の非対称性が大きくなる。よって、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するために、残像消去も含めてDCバランスをとる必要がある。そこで、残像消去によって生じた印加電界の非対称性を解消するために、以下の残像消去対称化を行う。
【0068】
なお、図4(A)の部分書き込みが行われた画素については、図4(B)の部分消去によってDCバランスがとられている。画素40Aを含めて黒色で表示された視覚表現形成画素は、部分消去によって白色で表示されている。このとき、視覚表現形成画素について電極間に印加される電界の時間平均はゼロとなりDCバランスがとられる。よって、非対称性を解消する必要があるのは、残像消去の工程において電界が印加された画素についてである。
【0069】
1.2.3.残像消去対称化における問題
ここで、残像消去対称化において、DCバランスをとる必要がある画素の情報は、画像信号として記憶部160(図1参照)から読み出される必要がある。残像消去対称化の工程においては、複数の視覚表現について行われた残像消去について、まとめて対称化する(DCバランスをとる)ことが処理効率の観点から好ましい。しかし、DCバランスをとる必要がある画素が視覚表現ごとに異なっている場合には、残像消去対称化において記憶部160に複数回アクセスして画像信号を取得する必要がある。このことは、電気泳動表示装置の応答速度を低下させ、消費電力を増大させる可能性がある。また、各視覚表現のDCバランスをとる必要がある画素を表すデータを全て記憶部に保存する必要があるので、大きな記憶容量の記憶部を要するというコスト上の問題が発生し得る。
【0070】
本実施形態では、残像消去および残像消去対称化の工程において部分駆動の対象となる画素を固定化すること、すなわち固定画像を構成する画素を駆動することでこれらの問題を解決している。残像消去では固定画像を構成する画素を駆動することで輪郭に沿った残像の消去を行い、残像消去対称化でも固定画像を構成する画素を駆動することで印加電界の非対称性を解消する。すると、残像消去対称化の工程において、まとめて対称化する場合でも、1回だけ記憶部160にアクセスして、固定画像を表す画像信号を取得すればよい。これにより、電気泳動表示装置の応答速度は低下せず、データ転送により消費電力が増大することもない。また、1つの画像信号を保存しておけばよいので、大きな記憶容量の記憶部を必要とするわけではない。なお、残像消去における固定画像と残像消去対称化における固定画像では表示色は反転している。しかし、どちらの場合も駆動の対象となる画素は同じであり、両者を特に区別することなく固定画像と呼ぶものとする。
【0071】
1.2.4.固定画像
このときの固定画像としては、表示される全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを含む必要がある。輪郭形成画素と背景境界画素とは、残像として視認され得るからである。ここで、視覚表現によって輪郭形成画素と背景境界画素とは異なる。よって、固定画像としては表示される全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素が含まれるような閉じた図形であることが考えられる。閉じた図形とは、外周で閉じた図形の意味であり、多角形(例えば四角形)や丸、楕円などの形状の図形も含む。また、固定画像は、表示される全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを合成してできる画像であってもよい。合成とは、例えば各視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素に1を割り当て、その他の画素に0を割り当てて、全ての視覚表現について画素毎に論理和をとるような処理を意味する。このとき、固定画像は、視覚表現のすべての輪郭形成画素と背景境界画素の集合で表される画像となる。
【0072】
図6(A)〜図6(G)を用いて、固定画像の具体例について説明する。この例では、表示される全ての視覚表現は図6(A)に示される数字(0〜9)であるとする。このとき、図6(D)〜図6(G)それぞれの黒で表された画像は固定画像の例を示す。なお、この例では、視覚表現が表示される所与の領域は、12画素×12画素の領域であるとする。
【0073】
図6(B)は、全ての視覚表現(ここでは、図6(A)の0〜9)の輪郭形成画素を合成した画像(黒色部分)である。そして、図6(C)は、全ての視覚表現の背景境界画素を合成した画像(斜線部分)である。なお、黒色部分は図6(B)と同じである。固定画像は、全ての視覚表現についての輪郭形成画素と背景境界画素とを含む必要があるため、図6(B)の黒色部分と図6(C)の斜線部分とを合成した図6(D)の画像(黒色部分)となる。図6(D)の画像が、この例における最小の固定画像となる。
【0074】
また、固定画像は、外周および外周で閉じられた領域を単一色で表した閉じた図形であってもよい。したがって、図6(E)の黒色部分で表される画像であってもよい。また、固定画像は、四角などの単純な図形であってもよいから、図6(F)の黒色の長方形で表される画像であってもよい。また、図6(G)のように12画素×12画素の領域の全てを固定画像としてもよい。
【0075】
図6(D)の場合には駆動する画素が最も少ない固定画像となる。図6(E)の場合には、外周の画素の情報さえ記憶すればよいので、図6(D)と比べて固定画像を記憶するためのデータ量を減らすことが可能である。図6(F)や図6(G)の場合には、頂点の画素の情報さえ記憶すればよいので、更にデータ量を減らすことが可能である。なお、図6(G)を用いる場合には、表示する視覚表現の一部が既知でない場合でも、残像消去および残像消去対称化を正しく実行することができる。
【0076】
以下に残像消去も含めてDCバランスをとることが可能な本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法についてフローチャートを用いて説明する。残像消去および残像消去対称化の工程においては、例えば図6(D)〜図6(G)のいずれかの固定画像を用いることで、応答速度を低下せず、消費電力を増大させず、そのデータの保存に大きな記憶容量を要しない駆動方法を実現できる。本実施形態では、図6(G)のように、表示部の所与の領域全体を固定画像として用いるものとする。
【0077】
1.2.5.メインルーチンのフローチャート
図7は、第1実施形態における電気泳動表示装置の駆動方法のフローチャートである。本実施形態にかかる電気泳動表示装置の駆動方法は、最初に部分書き換え工程S2を行う。部分書き換え工程S2は、電気泳動表示装置の表示部における所与の領域内で、部分駆動によって所与の視覚表現の書き換えを行う。部分書き換え工程S2は、残像消去が行われる残像消去工程を含む。
【0078】
例えば、0〜9の数字が12画素×12画素の領域に部分駆動で書き換えられて、表示部のそれ以外の領域は全面駆動によってのみ書き換えられるとする。このとき、前記の所与の領域とは12画素×12画素の領域であり、所与の視覚表現とは0〜9の数字である。
【0079】
部分書き換え工程S2は、所与の回数繰り返されてもよい(S4)。先の例では、0〜9が順に1度ずつ表示されるとすると、部分書き換え工程S2は10回繰り返される。
【0080】
その後、部分書き換え工程S2が含む残像消去工程によって生じた、DCバランスの不均衡(印加電界の非対称性)を解消するために、非対称性解消工程S6が行われる。非対称性解消工程S6は、残像消去を行う残像消去工程とは逆の表示を行う残像消去対称化工程を含む。
【0081】
例えば、第1色として黒を、第2色として白を表示可能な電気泳動表示装置において、残像消去として輪郭部分を含む画像を白で表示したとする。このとき、残像消去対称化工程では、同じ画像を黒で表示する操作を行う。なお、白を表示する場合と黒を表示する場合とでは、印加する電界の方向は正反対であり、電界が印加される時間は同じであるとする。
【0082】
なお、所与の視覚表現が0〜9の数字である先の例では、部分書き換え工程S2は10回繰り返される。このとき、残像消去対称化工程も輪郭部分を含む画像を黒で表示する処理を10回繰り返すことになる。
【0083】
非対称性解消工程S6の後に、電気泳動表示装置の表示についての終了命令の有無が判断されてもよい(S8)。表示を継続する場合には再びS2に戻り(S8N)、表示を終了する場合にはフローチャートの制御も終了する(S8Y)。例えば、電子時計に用いられる電気泳動表示装置などでは表示が終了することはなく、再びS2〜S6の工程が繰り返される。
【0084】
1.2.6.サブルーチンのフローチャート
1.2.6.1.部分書き換え工程
図8(A)は、部分書き換え工程S2のサブルーチンを示すフローチャートである。本実施形態では、部分書き換え工程S2は、部分書き込み工程S20、部分消去工程S22、残像消去工程S24を含む。
【0085】
部分書き込み工程S20は、表示部の所与の領域に所与の視覚表現を表示する。再び先の例を用いると、部分書き込み工程S20では、12画素×12画素の領域(所与の領域)の全てが白色であるときに、部分駆動により黒色で例えば0の数字(所与の視覚表現)を表示する。
【0086】
部分消去工程S22は、部分書き込み工程S20で書き込まれた所与の視覚表現を消去する。部分消去工程S22では、例えば、部分駆動により白色で0の数字(所与の視覚表現)を表示することで消去を行う。なお、部分消去工程S22は色を反転して同一の表示を行うことで、部分書き込み工程S20との間でDCバランスをとっている。
【0087】
残像消去工程S24は、所与の視覚表現の輪郭部分の残像を消去する。残像消去工程S24では、例えば、0の数字の輪郭を含む固定画像を部分駆動により白色で表示することで消去を行う。但し、残像消去工程S24ではDCバランスがとれていないため、以下の非対称解消工程が必要になる。
【0088】
1.2.6.2.非対称性解消工程
図8(B)は、非対称性解消工程S6のサブルーチンを示すフローチャートである。本実施形態では、非対称性解消工程S6は、第1全面書き込み工程S60、残像消去対称化工程S62、第2全面書き込み工程S64を含む。
【0089】
第1全面書き込み工程S60では、表示部の全体を描画する全面駆動が行われる。そして、第1全面書き込み工程S60は、表示部の所与の領域の全てを、部分書き換え工程S2で所与の視覚表現を表示するのに用いた色にする。
【0090】
例えば、部分書き換え工程S2では、12画素×12画素の領域は白色であり、そこに0の数字を表示するのには黒色を用いていた。第1全面書き込み工程S60は、全面駆動によって前記の12画素×12画素の領域(所与の領域)の全てを黒色にする。このことは、次に続く残像消去対称化工程S62の準備としての意味を持つ。
【0091】
残像消去対称化工程S62は、残像消去工程S24とDCバランスをとるため、残像消去工程S24で部分駆動により白色で表示された固定画像に対して残像消去工程S24とは逆の表示を行う。
【0092】
例えば、残像消去対称化工程S62は、残像消去工程S24と同じ部分駆動によって、0の数字の輪郭を含む固定画像を黒色で表示することでDCバランスをとる。このとき、第1全面書き込み工程S60により12画素×12画素の領域は黒色となっている。そのため、固定画像を黒色で表示してもユーザーに視認されるおそれはない。よって、ユーザーに故障との誤解を生じさせることもなく、残像消去工程S24とDCバランスをとることが可能である。
【0093】
なお、残像消去工程S24が所与の回数繰り返された場合には(S4)、その全てに対してDCバランスをとることが必要であるため、残像消去対称化工程S62においても対称化の処理が繰り返し行われる。例えば、0〜9の数字に対して残像消去工程S24が行われていた場合には、0〜9の各数字の輪郭を含む固定画像を黒色で表示する処理が10回繰り返される。しかし、本実施形態では、0〜9の数字に対して固定画像は共通であるため、固定画像を表す画像データをただ1度だけ記憶部から読み出せばよい。
【0094】
第2全面書き込み工程S64では、表示部の全体を描画する全面駆動が行われる。そして、第2全面書き込み工程S64は、表示部の所与の領域の全てを、部分書き換え工程S2で所与の視覚表現を消去するのに用いた色にする。
【0095】
例えば、部分書き換え工程S2では、12画素×12画素の領域は白色であり、表示された0の数字を消去するのには白色を用いていた。第2全面書き込み工程S64では、全面駆動によって前記の12画素×12画素の領域(所与の領域)の全てを白色にする。このことは、次に続く部分書き換え工程S2の準備としての意味を持つ。
【0096】
なお、第2全面書き込み工程S64は第1全面書き込み工程S60とDCバランスをとることが好ましい。よって、第2全面書き込み工程S64による表示は、表示部の全体において、第1全面書き込み工程S60による表示の白と黒を相互に交換した表示(反転表示)であることが好ましい。
【0097】
図7、図8(A)、図8(B)のフローチャートで示される電気泳動表示装置の駆動方法に従うことにより、DCバランスをとりつつ画像の輪郭に沿った残像を消去する電気泳動表示装置の駆動方法が可能となる。このとき、残像消去工程S24と残像消去対称化工程S62で用いられる固定画像は全ての視覚表現について共通であるため、固定画像のデータをただ1度だけ記憶部から読み出せばよい。そのため、応答速度の低下や消費電力の増大を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置の駆動方法が可能になる。
【0098】
2.電子機器
本発明の第2実施形態について図9〜図10を参照して説明する。なお、図1〜図8と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0099】
前記の電気泳動表示装置100は、様々な電子機器に適用され得る。
【0100】
例えば、図9(A)は電子機器の1つである腕時計1000の正面図である。腕時計1000は、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備える。時計ケース1002の正面には、電気泳動表示装置100からなる表示部1004が設けられ、表示部1004は時刻表示を含む表示1005を行っている。時計ケースの側面には、2つの操作ボタン1011と1012とが設けられている。なお、操作ボタン1011、1012によって、表示1005として時刻、カレンダー、アラームなど様々な表示形態が選択されてもよい。
【0101】
また、例えば図9(B)は電子機器の1つである電子ペーパー1100の斜視図である。電子ペーパー1100は可撓性を有し、電気泳動表示装置100からなる表示領域1101と本体1102を備える。
【0102】
電気泳動表示装置100を含む電子機器は、残像がないために電気泳動表示装置の視認性が向上し、DCバランスがとられているために電気泳動表示装置の長期信頼性を得る。また、残像消去対称化を行うことによる応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることはない。
【0103】
2.1.電子時計
ここで、第2実施形態として、腕時計1000を含む電子時計の実施形態について図10を用いて説明する。また、第2実施形態の比較例について図11を用いて説明する。
【0104】
2.1.1.本実施形態
図10(A)〜図10(J)は本実施形態に係る電子時計の表示部5の表示例を示す。図10(A)〜図10(J)では表示部5のうち時刻表示部分のみを抜き出している。また、領域51は部分駆動が行われ得る領域を示す。図10(A)〜図10(J)に示す実施例では領域51は時刻表示の分桁の一桁目に対応するが、例えば分桁の十桁目も含めて領域51としてもよいし、時刻表示全体を領域51としてもよい。
【0105】
図10(A)〜図10(J)の領域51の拡大図(右図)において、灰色で示す部分は部分駆動の対象でない画素を示す。すなわち、領域51の拡大図で黒色又は白色で表示された画素が部分駆動される。なお、図10(A)〜図10(J)に付された工程番号は図7、図8(A)、図8(B)のフローチャートの工程番号に対応する。
【0106】
図10(A)は、時刻が12:00であることを示している。部分書き込み工程S20が行われ、領域51に黒色で分一桁として0が表示される。
【0107】
図10(B)は、時刻が12:00から12:01に変化する前に、部分消去工程S22が行われ、図10(A)において領域51に黒色で表示されていた0が消去されることを示す。
【0108】
図10(C)は、残像消去工程S24が行われ、領域51に黒色で表示されていた0の輪郭部分の残像が消去されることを示す。このとき、残像消去には固定画像(図10(C)右図の白色で表示された領域)が用いられ、その情報は記憶部160(図1参照)から画像信号として読み出されるものとする。
【0109】
その後、分桁の一桁目が1、2、3、…と変化し、9になるまで図10(A)〜図10(C)と同じ工程が繰り返される。なお、図10(D)〜図10(F)は、それぞれ図10(A)〜図10(C)で分桁の一桁目が9になった場合であるので説明は省略する。
【0110】
図10(G)は、第1全面書き込み工程S60が行われ、領域51を黒色で表示していることを表す。このとき、時桁や区切り(:)や分桁の十桁は白色で表示されてもよい。
【0111】
図10(H)は、図10(C)の残像消去工程S24とDCバランスをとるために、残像消去対称化工程S62が行われることを示す図である。例えばコントローラー63(図1参照)は記憶部160から固定画像の情報を読み出し、図10(C)において白色で表示された0の輪郭を含む固定画像を、図10(H)のように黒色で表示する。なお、図10(G)により、領域51の全面が背景色として黒色で表示されているので、残像消去対称化工程S62による表示がユーザーに視認されることはない。つまり、黒色の背景色に対して黒色で固定画像を表示するので目につかない。
【0112】
その後、分桁の一桁目が1、2、3、…と変化したことに対応して、合わせて10回、図10(H)と同じ処理が繰り返される(図10(H)〜図10(I))。残像消去対称化工程S62は、複数の残像消去工程S24が行われた場合であっても、まとめて対称化の処理を行うことが可能であり、効率化を図ることができる。このとき、用いられる固定画像は共通であり、記憶部160から固定画像の情報を1度だけ読み出せばよい。そのため、記憶部160へのアクセスによる応答速度の低下や消費電力の増大が生じることはない。なお、図10(I)は図10(H)と同一の処理を行っており説明は省略する。
【0113】
図10(J)は、第2全面書き込み工程S64が行われ、領域51を白色で表示していることを表す。このとき、図10(J)における表示は図10(G)の表示とDCバランスがとれるように、図10(G)の表示を反転したものとなっている。
【0114】
なお、図10(A)〜図10(J)の表示例においては、図10(A)と図10(B)、図10(D)と図10(E)、図10(C)と図10(H)、図10(F)と図10(I)、図10(G)と図10(J)のペアでそれぞれDCバランスがとられている。
【0115】
2.1.2.比較例
図11(A)〜図11(J)は比較例における電子時計の表示部5の表示例を示す。なお、本実施形態に係る電子時計(図10(A)〜図10(J))との違いは、図11(C)、図11(F)、図11(H)、図11(I)のみであるので、これらの図についてのみ説明し、その他の重複する説明は省略する。
【0116】
図11(C)は、比較例における電子時計で残像消去工程S24が行われ、領域51に表示されていた0の輪郭部分の残像が消去されることを示している。このとき、0の輪郭を形成している輪郭形成画素と背景境界画素の情報が記憶部160から読み出される。そして、0についての輪郭形成画素と背景境界画素とを含む画像を白色で表示することで残像消去を行う。
【0117】
その後、分桁の一桁目が1、2、3、…と変化し、9になるまで図11(A)〜図11(C)と同じ工程が繰り返される。そして、図11(F)は、分桁の一桁目が9の場合の残像消去工程であり、9の輪郭形成画素と背景境界画素の情報を記憶部160から読み出して、これらを含む画像を白色で表示することで残像消去を行う。図11(C)や図11(F)の残像消去工程S24においては、表示した数字に対応した固有の輪郭形成画素等を記憶部160から読み出す必要がある。
【0118】
図11(H)は、図11(C)の残像消去工程S24に対する残像消去対称化工程S62が行われることを示す図である。図11(H)では、例えばコントローラー63が記憶部160から分桁の一桁目である0の輪郭形成画素と背景境界画素の情報を読み出し、これらを含む画像を黒色で表示してDCバランスをとる。その後、分桁の一桁目を1、2、3、…と変化させて、9になるまで同じ工程が繰り返される(図11(H)〜図11(I))。このとき、コントローラー63は記憶部160から分桁の一桁目の数字に対応した固有の輪郭形成画素等の情報をそれぞれ読み出す必要がある。つまり、比較例の電子時計では、残像消去対称化工程S62において10回も記憶部160へアクセスする必要がある。そのため、応答速度の低下や消費電力の増大が生じる可能性がある。特に、電子時計においては、応答速度の低下はユーザーに表示の違和感を覚えさせ、消費電力の増大により電池の寿命が短くしてしまう可能性がある。
【0119】
第2実施形態に係る電子時計では、固定画像を用いて残像消去工程S24と残像消去対称化工程S62を行うことで、比較例において生じ得るこれらの問題を解決している。
【0120】
2.1.3.本実施形態の変形例
図10(A)〜図10(J)の電子時計の例では、10分毎に残像消去対称化工程S62がおこなわれているが、例えば1日に1回だけ残像消去対称化工程S62が行われてもよい。電子時計にとっては、時刻表示という基本機能とは関係のない残像消去対称化工程S62を1日分まとめて行う方が処理の効率がよい。また、S62を1時間に1回行ってもよい。
【0121】
また、例えば電源をオフするときに残像消去対称化工程S62を行うことで、DCバランスをとることが可能である。例えば、電子機器の1つである電子ペーパー1100(図9(B)参照)の場合には、電源をオンしたときから累積されたアンバランス分を消去するために、電源をオフするときに残像消去対称化工程S62を行うようにしてもよい。
【0122】
3.その他
前記の実施形態においては、電気泳動表示装置は、黒色粒子および白色粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものに限られず、青白等の一粒子系の電気泳動を行っても良く、また、白黒以外の組み合わせでも構わない。
【0123】
そして、電気泳動表示装置に限らず、メモリー性の表示手段に前記の駆動方法が適用されてもよい。例えば、ECD(Electrochromic Display=エレクトロクロミックディスプレイ)、強誘電性液晶ディスプレイ、コレステリック液晶ディスプレイ等である。
【0124】
さらに、前記の実施形態の電子時計は、腕時計に限らず、置き時計、掛け時計、懐中時計などの時計機能を有する機器に広く適用できる。
【0125】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0126】
5…表示部、6…制御部、20…マイクロカプセル、26…黒色粒子、27…白色粒子、30…素子基板、31…対向基板、32…電気泳動素子、35…画素電極、35A…画素電極、35B…画素電極、37…共通電極、40…画素、40A…画素、40B…画素、40V…画素、40W…画素、40X…画素、40Y…画素、41…駆動用TFT(Thin Film Transistor)、49…低電位電源線(Vss)、50…高電位電源線(Vdd)、51…領域、55…共通電極配線(Vcom)、61…走査線駆動回路、62…データ線駆動回路、63…コントローラー、64…共通電源変調回路、66…走査線、68…データ線、70…ラッチ回路、80…スイッチ回路、91…第1のパルス信号線(S1)、92…第2のパルス信号線(S2)、100…電気泳動表示装置、160…記憶部、350…駆動電極層、360…電気泳動表示層、370…共通電極層、1000…腕時計、1002…時計ケース、1003…バンド、1004…表示部、1005…表示、1011…操作ボタン、1012…操作ボタン、1100…電子ペーパー、1101…表示領域、1102…本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても画像を保持できるメモリー性を有する表示パネルが開発され、電子時計等にも使用されている。メモリー性を有する表示パネルとしては、EPD(Electrophoretic Display)すなわち電気泳動表示装置や、メモリー性液晶表示装置等が知られている。
【0003】
電気泳動表示装置においてはDCバランスをとること、すなわち電極間に印加される電界の時間平均をほぼゼロにすることが要求される。特許文献1は、DCバランスが崩れた場合に装置の動作寿命が短くなる可能性を指摘する。つまり、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するためにはDCバランスをとって駆動制御を行うことが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−530201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気泳動表示装置では、応答速度を速めるために、表示部の全体を描画する全面駆動だけでなく書き換え対象である一部のみを描画する部分駆動が行われることがある。例えば、表示された画像を構成する画素だけを部分駆動して、その画像を消去する工程が行なわれる。このとき、書き換え対象である一部の画素と背景である画素との間に斜め方向の電界が生じていて、輪郭部分が膨らんだ画像が表示されているために、画像の輪郭に沿って残像が生じることがある。表示画像の見映えをよくするために、電気泳動表示装置の駆動制御において残像を消去する工程が含まれることが好ましい。
【0006】
このとき、残像を消去する工程で印加される電界についてもDCバランスをとる必要が生じる。そして、そのためのデータを取得、転送する過程において処理時間、電力を使うことになる。その結果、電気泳動表示装置の応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じる可能性がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含む電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え工程と、前記部分書き換え工程が所与の回数繰り返された後に、前記部分書き換え工程で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消工程と、を含み、前記部分書き換え工程は、前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み工程と、前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去工程と、前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去工程と、を含み、前記非対称性解消工程は、前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み工程と、前記第1全面書き込み工程の後に、前記部分書き換え工程で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化工程と、前記残像消去対称化工程の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み工程と、を含み、前記第2全面書き込み工程の後に、再び前記部分書き換え工程を行う。
【0009】
本発明によれば、部分書き換え工程で生じた印加電界の非対称性を、非対称性解消工程を行うことで解消し、DCバランスをとることができる。DCバランスをとることで、長期信頼性の高い電気泳動表示装置を提供できる。部分書き換え工程には、所与の視覚表現の輪郭に沿った残像を消去する残像消去工程が含まれており、残像を消去できるため視認性のよい電気泳動表示装置を提供できる。
【0010】
本発明の残像消去工程(部分書き換え工程の1つの工程)においては、どの視覚表現を表示した場合でも、固定画像を用いて残像の消去を行う。そして、残像消去対称化工程(非対称性解消工程の1つの工程)においても、この固定画像を用いて残像消去工程で生じた印加電界の非対称性を解消する。これらの工程において、視覚表現ごとに異なる画像を用いることも可能である。しかし、その場合には、視覚表現ごとに異なる画像のデータを全て記憶するための記憶容量を必要とし、記憶部にアクセスする時間を要し、当該画像のデータを転送することで電力を消費する。本発明では、1つの固定画像のデータを保存するための記憶容量を用意すればよい。また、記憶部へのアクセスは1度でよく、1つの固定画像のデータを1度転送するだけなので消費電力の増加を抑制できる。残像消去対称化工程が複数回数繰り返された場合であっても、記憶部へのアクセスは1度だけでよく、応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることはない。なお、固定画像は、表示部の所与の領域の内部で表示され得る全ての視覚表現の輪郭部分(視覚表現の輪郭を含み残像として残り得る部分)を包含するような画像である。
【0011】
ここで、第1色と第2色とは、電気泳動表示装置が最低限表示可能な基本色である2色である。例えば、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式では、分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものがある。この方式の電気泳動表示部は、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示可能である。このとき、第1色として電気泳動粒子の1つの色である黒色を割り当て、第2色として白色を割り当ててもよい。逆に、第1色として白色を、第2色として黒色を割り当ててもよい。なお、表示部における所与の領域とは、部分駆動によって所与の視覚表現の書き換えが行われ得る領域をいう。また、所与の視覚表現とは、文字、数字、メッセージ、画像、図形、模様、記号等のいずれか、又はこれらの組み合わせ、一部であってもよい。
【0012】
(2)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像としてもよい。
【0013】
(3)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像としてもよい。
【0014】
これらの発明によれば、残像消去工程と残像消去対称化工程とで用いられる固定画像は、特定の閉じた図形として、又は輪郭形成画素と背景境界画素との集合として与えられる。固定画像は、例えば記憶部等に画像信号として記憶されていてもよい。
【0015】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを全て包含するような閉じた図形であってもよい。ここでの閉じた図形とは、外周で閉じた図形を意味する。図形の内部および外周は単一色で表され、単一色とは第1色であってもよいし、第2色であってもよい。閉じた図形は、外周の画素の情報さえ記憶すれば、その内部は単一色である。従って固定画像を記憶するために必要な記憶容量を減らすことが可能である。また、閉じた図形として例えば正方形、長方形、その他の多角形の形状を選択することができる。この場合には頂点の画素の情報さえ記憶すればよいので、更に記憶容量を減らすことが可能である。
【0016】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の全てについての輪郭形成画素と背景境界画素とを合成した画像、つまりこれらの画素の集合で表される画像であってもよい。輪郭形成画素とは視覚表現の輪郭を形成する画素であって、背景境界画素とは輪郭形成画素と隣接する背景の画素(視覚表現を形成しない画素)である。輪郭形成画素と背景境界画素は、部分駆動の際に生じる斜め方向の電界で残像となり得る。全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素との集合で表される画像を固定画像とすれば、不必要に固定画像の範囲を広げることなく残像消去工程と残像消去対称化工程を適切に行うことができる。
【0017】
(4)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の回数は複数回であってもよい。
【0018】
本発明によれば、部分書き換え工程を複数回繰り返した後に、非対称性解消工程に進む。非対称性解消工程においては、部分書き換え工程で生じた印加電界の非対称性についてまとめてDCバランスをとる。このとき、非対称性解消工程は部分書き換え工程と全く無関係な時間に1回だけ行われてもよい。例えば、電子時計などに電気泳動表示装置を使用した場合、部分書き換え工程(時刻表示の更新)の直後に非対称性解消工程を行うと、時刻表示とは関係のない不要なデータが視認される可能性があり、その場合には商品性が損なわれる恐れがある。本発明によれば、まず部分書き換え工程(時刻表示の更新)を連続して行い、その後にユーザーが視認することのない状況(例えば、不使用時)において非対称性解消工程が行われることを可能にする。これにより、電子時計などに適用した場合にも上記の商品性が損なわれることはなく、さらに、まとめてDCバランスをとるので全体の処理の効率が高まる。
【0019】
このとき、残像消去対称化工程では記憶部から固定画像の情報をただ1度だけ読み出せばよい。そのため、記憶部へのアクセスに起因する処理時間の遅さや、消費電力の増大を避けることが可能になる。特に、部分書き換え工程を繰り返す回数が多い場合には、処理時間を短縮し消費電力を抑制する効果が大きい。
【0020】
(5)本発明は、電気泳動表示装置であって、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部と、前記表示部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え制御と、前記部分書き換え制御を所与の回数繰り返した後に、前記部分書き換え制御で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消制御と、を行い、前記部分書き換え制御において、前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み制御と、前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去制御と、前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去制御と、を行い、前記非対称性解消制御において、前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み制御と、前記第1全面書き込み制御の後に、前記部分書き換え制御で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化制御と、前記残像消去対称化制御の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み制御と、を行い、前記第2全面書き込み制御の後に、再び前記部分書き換え制御を行う。
【0021】
本発明によれば、部分書き換え制御で生じた印加電界の非対称性を、非対称性解消制御を行うことで解消し、DCバランスをとることができる。DCバランスをとることで、長期信頼性の高い電気泳動表示装置を提供できる。ここで、部分書き換え制御には、所与の視覚表現の輪郭に沿った残像を消去する残像消去制御が含まれており、残像を消去できるため視認性のよい電気泳動表示装置を提供できる。
【0022】
本発明の残像消去制御(部分書き換え制御の1つの制御)においては、どの視覚表現を表示した場合でも、固定画像を用いて残像の消去を行う。そして、残像消去対称化制御(非対称性解消制御の1つの制御)においても、この固定画像を用いて残像消去制御で生じた印加電界の非対称性を解消する。これらの制御において、視覚表現ごとに異なる画像を用いることも可能である。しかし、その場合には、視覚表現ごとに異なる画像を全て記憶するための記憶容量を必要とし、記憶部にアクセスする時間を要し、当該画像のデータを転送することで電力を消費する。本発明では、1つの固定画像を保存するための記憶容量を用意すればよく、記憶部へのアクセスは1度でよく、1つの固定画像のデータを1度転送するだけなので消費電力の増加を抑制できる。残像消去対称化制御が複数回数繰り返された場合であっても、記憶部へのアクセスは1度だけでよく、応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることはない。
【0023】
(6)この電気泳動表示装置において、前記制御部は、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像としてもよい。
【0024】
(7)この電気泳動表示装置において、前記制御部は、前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像としてもよい。
【0025】
これらの発明によれば、残像消去制御と残像消去対称化制御とで用いられる固定画像は、特定の閉じた図形として、又は輪郭形成画素と背景境界画素との集合として与えられる。固定画像は、例えば記憶部等に画像信号として記憶されていてもよい。
【0026】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを全てを包含するような閉じた図形であってもよい。閉じた図形は、外周の画素の情報さえ記憶すれば、その内部は単一色である。従って固定画像を記憶するために必要な記憶容量を減らすことが可能である。また、閉じた図形として例えば正方形や長方形などの形状であれば、頂点の画素の情報さえ記憶すればよいので、更に記憶容量を減らすことが可能である。
【0027】
固定画像は、所与の領域に表示される視覚表現の全てについての輪郭形成画素と背景境界画素とを合成した画像、つまりこれらの画素の集合で表される画像であってもよい。輪郭形成画素と背景境界画素は部分駆動の際に生じる斜め方向の電界で残像となり得るためである。このとき、不必要に固定画像の範囲を広げることなく残像消去制御と残像消去対称化制御を適切に行うことができる。
【0028】
(8)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子機器であってもよい。
【0029】
本発明によれば、応答速度の低下や消費電力の増大を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置を含む電子機器を提供できる。このとき、残像がないために電気泳動表示装置の視認性が向上し、DCバランスがとられているために電気泳動表示装置の長期信頼性を得ることができる。
【0030】
(9)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子時計であって、前記表示部は、少なくとも、時桁と分桁を含む時刻表示を行い、前記制御部は、前記部分書き換え制御において、前記時刻表示の前記分桁を前記所与の視覚表現としてもよい。
【0031】
本発明によれば、制御部は、表示が1分おきに変化する電子時計の分桁表示を対象として部分書き換え制御を行う。よって、残像がなく視認性のよい時刻表示を行う電子時計を提供することができる。
【0032】
(10)この電子時計において、前記制御部は、前記残像消去対称化制御を10分に1回行ってもよい。
【0033】
(11)この電子時計において、前記制御部は、前記残像消去対称化制御を1日に1回行ってもよい。
【0034】
これらの発明によれば、制御部は、10分に1回だけ残像消去対称化制御を行うので、処理の効率がよい。さらに、効率を高めるために1日に1回だけ残像消去対称化制御を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態における電気泳動表示装置のブロック図。
【図2】第1実施形態における電気泳動表示装置の画素の構成例を示す図。
【図3】図3(A)は電気泳動素子の構成例を示す図。図3(B)、図3(C)は電気泳動素子の動作の説明図。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、第1実施形態における部分駆動および残像消去の表示例を示す図、およびY−Y線に沿って切断された断面図。
【図5】図5(A)〜図5(B)は、輪郭形成画素と背景境界画素を説明するための図。
【図6】図6(A)〜図6(G)は、固定画像を説明するための図。
【図7】第1実施形態における電気泳動表示装置の駆動方法のフローチャート。
【図8】図8(A)、図8(B)は図7のサブルーチンのフローチャート。
【図9】図9(A)は電子機器の一例である腕時計の図、図9(B)は電子機器の一例である電子ペーパーの図。
【図10】図10(A)〜図10(J)は、第2実施形態における電子時計の表示例を示す図。
【図11】図11(A)〜図11(J)は、比較例における電子時計の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0037】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図8を参照して説明する。
【0038】
1.1.電気泳動表示装置
1.1.1.電気泳動表示装置の構成
図1は、本実施形態に係るアクティブマトリックス駆動方式の電気泳動表示装置100のブロック図である。
【0039】
電気泳動表示装置100は、制御部6、記憶部160、表示部5を含む。制御部6は、表示部5を制御し、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、コントローラー63、共通電源変調回路64を含む。走査線駆動回路61、データ線駆動回路62,共通電源変調回路64は、それぞれコントローラー63と接続されている。コントローラー63は、記憶部160から読み出される画像信号等や図外から供給される同期信号に基づいて、これらを総合的に制御する。なお、制御部6は記憶部160を含む構成であってもよい。例えば、記憶部160は、コントローラー63に内蔵されたメモリーであってもよい。
【0040】
ここで、記憶部160は、SRAM、DRAM、その他のメモリーであってもよく、少なくとも表示部5に表示させる画像のデータ(画像信号)を記憶している。また、記憶部160には、コントローラー63によって制御に必要な情報が記憶される。制御に必要な情報とは、例えば残像消去工程S24(図8(A)参照)が実行された回数である。このとき、コントローラー63は、その情報に基づいて残像消去対称化工程S62(図8(B)参照)において対称化の処理を繰り返す回数を決定できる。
【0041】
表示部5には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68とが形成されており、これらの交差位置に対応して複数の画素40が設けられている。
【0042】
走査線駆動回路61は、m本の走査線66(Y1、Y2、…、Ym)により各画素40に接続されている。走査線駆動回路61は、コントローラー63の制御に従って1行目からm行目までの走査線66を順次選択することで、画素40に設けられた駆動用TFT41(図2参照)のオンタイミングを規定する選択信号を供給する。
【0043】
データ線駆動回路62は、n本のデータ線68(X1、X2、…、Xn)により各画素40に接続されている。データ線駆動回路62は、コントローラー63の制御に従って、画素40のそれぞれに対応する1ビットの画像データを規定する画像信号を画素40に供給する。なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合には、ローレベルの画像信号を画素40に供給し、画像データ「1」を規定する場合には、ハイレベルの画像信号を画素40に供給するものとする。
【0044】
表示部5には、また、共通電源変調回路64から延びる低電位電源線49(Vss)、高電位電源線50(Vdd)、共通電極配線55(Vcom)、第1のパルス信号線91(S1)、第2のパルス信号線92(S2)が設けられており、それぞれの配線は画素40と接続されている。共通電源変調回路64は、コントローラー63の制御に従って上記配線のそれぞれに供給する各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化、Hi−Z)を行う。
【0045】
1.1.2.画素部分の回路構成
図2は、図1の画素40の回路構成図である。なお、図1と同じ配線には同じ番号を付しており、説明は省略する。また、全画素に共通の共通電極配線55については記載を省略している。
【0046】
画素40には、駆動用TFT(Thin Film Transistor)41と、ラッチ回路70と、スイッチ回路80が設けられている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成をとる。
【0047】
駆動用TFT41は、N−MOSトランジスタからなる画素スイッチング素子である。駆動用TFT41のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子に接続されている。ラッチ回路70は転送インバーター70tと帰還インバーター70fとを備えている。インバーター70t、70fには、低電位電源線49(Vss)と高電位電源線50(Vdd)から電源電圧が供給される。
【0048】
スイッチ回路80は、トランスミッションゲートTG1、TG2からなり、ラッチ回路70に記憶された画素データのレベルに応じて、画素電極35(図3(B)、図3(C)参照)に信号を出力する。なお、Vaは、1つの画素40の画素電極へ供給される電位(信号)を意味する。
【0049】
ラッチ回路70に画像データ「1」(ハイレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG1がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S1を供給する。一方、ラッチ回路70に画像データ「0」(ローレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG2がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S2を供給する。このような回路構成により、制御部6はそれぞれの画素40の画素電極に対して供給する電位(信号)を制御することが可能である。なお、画素40の回路構成は一例であり、図2に示すものに限られない。
【0050】
1.1.3.表示方式
本実施形態の電気泳動表示装置100は、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式であるとする。分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものであるとすると、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示できる。ここでは、電気泳動表示装置100は、第1色として黒色を、第2色として白色を表示するものとして説明する。そして、黒(第1色)を表示している画素を白(第2色)で表示すること、又は白を表示している画素を黒で表示することを反転と表現する。
【0051】
図3(A)は、本実施形態の電気泳動素子32の構成を示す図である。電気泳動素子32は素子基板30と対向基板31(図3(B)、図3(C)参照)との間に挟まれている。電気泳動素子32は、複数のマイクロカプセル20を配列して構成される。マイクロカプセル20は、例えば無色透明な分散液と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)27と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)26とを封入している。本実施形態では、例えば白色粒子27は負に帯電しており、黒色粒子26は正に帯電しているとする。
【0052】
図3(B)は、電気泳動表示装置100の表示部5の部分断面図である。素子基板30と対向基板31は、マイクロカプセル20を配列してなる電気泳動素子32を狭持している。表示部5は、素子基板30の電気泳動素子32側に、複数の画素電極35が形成された駆動電極層350を含む。図3(B)では、画素電極35として画素電極35Aと画素電極35Bが示されている。画素電極35により、画素ごとに電位を供給することが可能である(例えば、Va、Vb)。ここで、画素電極35Aを有する画素を画素40Aとし、画素電極35Bを有する画素を画素40Bとする。画素40A、画素40Bは画素40(図1、図2参照)に対応する2つの画素である。
【0053】
一方、対向基板31は透明基板であり、表示部5において対向基板31側に画像表示がなされる。表示部5は、対向基板31の電気泳動素子32側に、平面形状の共通電極37が形成された共通電極層370を含む。なお、共通電極37は透明電極である。共通電極37は、画素電極35と異なり全画素に共通の電極であり、電位Vcomが供給される。
【0054】
共通電極層370と駆動電極層350との間に設けられた電気泳動表示層360に電気泳動素子32が配置されており、電気泳動表示層360が表示領域となる。共通電極37と画素電極(例えば、35A、35B)との間の電位差に応じて、画素毎に所望の表示色を表示させることができる。
【0055】
図3(B)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも高電位である。このとき、負に帯電した白色粒子27が共通電極37側に引き寄せられ、正に帯電した黒色粒子26が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは白を表示していると視認される。
【0056】
図3(C)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも低電位である。このときは逆に、正に帯電した黒色粒子26が共通電極37側に引き寄せられ、負に帯電した白色粒子27が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは黒を表示していると視認される。なお、図3(C)の構成は図3(B)と同様であり説明は省略する。また、図3(B)、図3(C)ではVa、Vb、Vcomを固定された電位として説明したが、実際にはVa、Vb、Vcomは時間とともに電位が変化するパルス信号である。
【0057】
1.2.電気泳動表示装置の駆動方法
1.2.1.輪郭部分の残像
電気泳動表示装置の駆動方法として、表示部の全体を描画する全面駆動だけでなく、書き換えを行う表示部の一部のみを描画する部分駆動が用いられることがある。電圧を印加する対象の画素数を減らすことで、書き換え時のレスポンスを早めることができる。
【0058】
しかし、部分駆動を行った場合に、駆動されない画素(背景)との境界部分で斜め方向に電界が生じる。部分駆動によって表示された文字、数字、図形等を消去した場合に、斜め方向に生じた電界の影響によって、その文字、数字、図形等の輪郭部分が残像として視認されることがある。よって、部分駆動によって部分的な書き換えを行う場合(部分書き換え)には、輪郭部分の残像を消去する操作(残像消去)が必要である。
【0059】
図4(A)〜図4(C)は、それぞれ部分書き込み、部分消去、残像消去を行ったときの表示部5の表示例(左図)と断面図(右図)を示すものである。なお、図4(A)〜図4(C)では表示部5において部分駆動が行われ得る所与の領域のうち6画素×6画素を抜き出して表示している。また、図4(A)〜図4(C)の右図は、それぞれ左図のY−Y線に沿った断面図であり、画素40A、40Bを含む。図4(A)〜図4(C)および図5(A)〜図5(B)においては、表示部5のうち斜線で示された画素は、その画素が黒色で表示されていることを示す。表示部における所与の領域では、部分駆動によって所与の視覚表現の書き換えが行われる。なお、所与の視覚表現とは、文字、数字、メッセージ、画像、図形、模様、記号等のいずれか、又はこれらの組み合わせ、一部である。
【0060】
図4(A)〜図4(C)において、Va、Vbはそれぞれ画素40Aの画素電極35A、画素40Bの画素電極35Bに供給される信号である。なお、画素40Aと画素40Bは隣接しているものとする(図3(B)、図3(C)参照)。画素40Aと画素40Bの回路構成も図2と同じであり、それぞれのラッチ回路に保持された画像データに応じて、Va、VbとしてS1またはS2を出力する。Vcomは共通電源変調回路64から共通電極37に供給される信号である。それぞれの信号Va、Vb、Vcomは、ハイレベル(VH)、ローレベル(VL)、またはハイインピーダンス状態(Hi−Z)をとり得るものとする。また、この例において、画素電極35Bに供給される信号がHi−Zである場合には、斜め方向に生じる電界以外は考慮しないものとする。
【0061】
図4(A)は、部分書き込みを行う場合を示している。表示部5には視覚表現として画像P1が書き込まれ、画素40Aはその輪郭を形成する画素(輪郭形成画素)の1つである。なお、画像P1を形成する黒色の16画素(4画素×4画素)が視覚表現形成画素である。輪郭形成画素は、視覚表現形成画素の一部であって、背景との境界にある画素である。また、画素40Bは背景に含まれる1つの画素であって、輪郭形成画素と隣接する画素(背景境界画素)の1つである。右図を見ると、画素電極35A(Va)の電位はVHであり、画素40Aは黒色で表示される。一方、画素電極35B(Vb)は例えばハイインピーダンス状態であり、画素40Bは背景色である白色の表示を保つ。
【0062】
ここで、図5(A)〜図5(B)を用いて、画像P1における輪郭形成画素R3と背景境界画素R4を説明する。図5(A)のように、輪郭形成画素R3は画像P1の輪郭を形成する黒色の12画素である。そのうちの1つが画素40Aである。図5(B)のように、背景境界画素R4は輪郭形成画素R3と隣接する背景(白色)の16画素であって、そのうち1つが画素40Bである。なお、隣接とは本実施形態では水平、垂直方向だけであるが、斜め方向を含むとしてもよい。例えば、図5(B)において、画素40V、画素40W、画素40X、画素40Yが背景境界画素に含まれるとしてもよい。
【0063】
図4(B)は、部分消去を行う場合を示している。部分書き込みで書き込まれた画像P1を形成する画素(視覚表現形成画素)を白色で表示することで部分消去を行う。画素電極35A(Va)の電位はVLであり、画素40Aは白色となる。このとき、輪郭形成画素とそれに隣接するハイインピーダンス状態(Hi−Z)の背景境界画素との間で斜め方向の電界が生じていて、画像P1は輪郭部分が膨らんだ画像となっていたために、輪郭に沿った残像P2が発生する。この例では、白色を背景として、輪郭に沿って薄い黒色の残像P2が視認される。そのため、次の残像消去が必要になる。
【0064】
図4(C)は、残像消去を行う場合を示している。輪郭の残像P2を消去するために、少なくとも画像P1の輪郭形成画素R3と背景境界画素R4とを含む画像を、背景色と同じ白色で表示する必要がある。このとき、輪郭形成画素R3に含まれる画素40Aと背景境界画素R4に含まれる画素40Bも白色で表示される。右図において、画素40A、画素40Bの画素電極35A(Va)、35B(Vb)の電位はVLであり、負に帯電した白色粒子27が共通電極37側に引き寄せられる方向の電界が印加されている。そして、輪郭の残像P2が消去される。
【0065】
なお、残像消去を行う必要があるのは部分駆動を行った場合だけである。全面駆動を行った場合には、全ての画素が駆動対象であり、斜め方向には電界が生じにくい。よって、全面駆動の場合には残像消去は不要である。
【0066】
1.2.2.DCバランス
残像消去は、文字、数字、図形等自体の表示、消去とは別の付随的な処理である。また、残像消去の工程において電界が印加される時間は、文字、数字、図形等自体の表示、消去と比べると短時間である。そのため、従来、残像消去についてDCバランスが考慮されることはなかった。
【0067】
しかし、残像消去の対象となる画素の電極間では、残像消去によって一定の方向に電界が印加されることになる。そして、残像消去は文字、数字、図形等自体の表示に伴って繰り返されるため、使用され続けると印加電界の非対称性が大きくなる。よって、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するために、残像消去も含めてDCバランスをとる必要がある。そこで、残像消去によって生じた印加電界の非対称性を解消するために、以下の残像消去対称化を行う。
【0068】
なお、図4(A)の部分書き込みが行われた画素については、図4(B)の部分消去によってDCバランスがとられている。画素40Aを含めて黒色で表示された視覚表現形成画素は、部分消去によって白色で表示されている。このとき、視覚表現形成画素について電極間に印加される電界の時間平均はゼロとなりDCバランスがとられる。よって、非対称性を解消する必要があるのは、残像消去の工程において電界が印加された画素についてである。
【0069】
1.2.3.残像消去対称化における問題
ここで、残像消去対称化において、DCバランスをとる必要がある画素の情報は、画像信号として記憶部160(図1参照)から読み出される必要がある。残像消去対称化の工程においては、複数の視覚表現について行われた残像消去について、まとめて対称化する(DCバランスをとる)ことが処理効率の観点から好ましい。しかし、DCバランスをとる必要がある画素が視覚表現ごとに異なっている場合には、残像消去対称化において記憶部160に複数回アクセスして画像信号を取得する必要がある。このことは、電気泳動表示装置の応答速度を低下させ、消費電力を増大させる可能性がある。また、各視覚表現のDCバランスをとる必要がある画素を表すデータを全て記憶部に保存する必要があるので、大きな記憶容量の記憶部を要するというコスト上の問題が発生し得る。
【0070】
本実施形態では、残像消去および残像消去対称化の工程において部分駆動の対象となる画素を固定化すること、すなわち固定画像を構成する画素を駆動することでこれらの問題を解決している。残像消去では固定画像を構成する画素を駆動することで輪郭に沿った残像の消去を行い、残像消去対称化でも固定画像を構成する画素を駆動することで印加電界の非対称性を解消する。すると、残像消去対称化の工程において、まとめて対称化する場合でも、1回だけ記憶部160にアクセスして、固定画像を表す画像信号を取得すればよい。これにより、電気泳動表示装置の応答速度は低下せず、データ転送により消費電力が増大することもない。また、1つの画像信号を保存しておけばよいので、大きな記憶容量の記憶部を必要とするわけではない。なお、残像消去における固定画像と残像消去対称化における固定画像では表示色は反転している。しかし、どちらの場合も駆動の対象となる画素は同じであり、両者を特に区別することなく固定画像と呼ぶものとする。
【0071】
1.2.4.固定画像
このときの固定画像としては、表示される全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを含む必要がある。輪郭形成画素と背景境界画素とは、残像として視認され得るからである。ここで、視覚表現によって輪郭形成画素と背景境界画素とは異なる。よって、固定画像としては表示される全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素が含まれるような閉じた図形であることが考えられる。閉じた図形とは、外周で閉じた図形の意味であり、多角形(例えば四角形)や丸、楕円などの形状の図形も含む。また、固定画像は、表示される全ての視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素とを合成してできる画像であってもよい。合成とは、例えば各視覚表現の輪郭形成画素と背景境界画素に1を割り当て、その他の画素に0を割り当てて、全ての視覚表現について画素毎に論理和をとるような処理を意味する。このとき、固定画像は、視覚表現のすべての輪郭形成画素と背景境界画素の集合で表される画像となる。
【0072】
図6(A)〜図6(G)を用いて、固定画像の具体例について説明する。この例では、表示される全ての視覚表現は図6(A)に示される数字(0〜9)であるとする。このとき、図6(D)〜図6(G)それぞれの黒で表された画像は固定画像の例を示す。なお、この例では、視覚表現が表示される所与の領域は、12画素×12画素の領域であるとする。
【0073】
図6(B)は、全ての視覚表現(ここでは、図6(A)の0〜9)の輪郭形成画素を合成した画像(黒色部分)である。そして、図6(C)は、全ての視覚表現の背景境界画素を合成した画像(斜線部分)である。なお、黒色部分は図6(B)と同じである。固定画像は、全ての視覚表現についての輪郭形成画素と背景境界画素とを含む必要があるため、図6(B)の黒色部分と図6(C)の斜線部分とを合成した図6(D)の画像(黒色部分)となる。図6(D)の画像が、この例における最小の固定画像となる。
【0074】
また、固定画像は、外周および外周で閉じられた領域を単一色で表した閉じた図形であってもよい。したがって、図6(E)の黒色部分で表される画像であってもよい。また、固定画像は、四角などの単純な図形であってもよいから、図6(F)の黒色の長方形で表される画像であってもよい。また、図6(G)のように12画素×12画素の領域の全てを固定画像としてもよい。
【0075】
図6(D)の場合には駆動する画素が最も少ない固定画像となる。図6(E)の場合には、外周の画素の情報さえ記憶すればよいので、図6(D)と比べて固定画像を記憶するためのデータ量を減らすことが可能である。図6(F)や図6(G)の場合には、頂点の画素の情報さえ記憶すればよいので、更にデータ量を減らすことが可能である。なお、図6(G)を用いる場合には、表示する視覚表現の一部が既知でない場合でも、残像消去および残像消去対称化を正しく実行することができる。
【0076】
以下に残像消去も含めてDCバランスをとることが可能な本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法についてフローチャートを用いて説明する。残像消去および残像消去対称化の工程においては、例えば図6(D)〜図6(G)のいずれかの固定画像を用いることで、応答速度を低下せず、消費電力を増大させず、そのデータの保存に大きな記憶容量を要しない駆動方法を実現できる。本実施形態では、図6(G)のように、表示部の所与の領域全体を固定画像として用いるものとする。
【0077】
1.2.5.メインルーチンのフローチャート
図7は、第1実施形態における電気泳動表示装置の駆動方法のフローチャートである。本実施形態にかかる電気泳動表示装置の駆動方法は、最初に部分書き換え工程S2を行う。部分書き換え工程S2は、電気泳動表示装置の表示部における所与の領域内で、部分駆動によって所与の視覚表現の書き換えを行う。部分書き換え工程S2は、残像消去が行われる残像消去工程を含む。
【0078】
例えば、0〜9の数字が12画素×12画素の領域に部分駆動で書き換えられて、表示部のそれ以外の領域は全面駆動によってのみ書き換えられるとする。このとき、前記の所与の領域とは12画素×12画素の領域であり、所与の視覚表現とは0〜9の数字である。
【0079】
部分書き換え工程S2は、所与の回数繰り返されてもよい(S4)。先の例では、0〜9が順に1度ずつ表示されるとすると、部分書き換え工程S2は10回繰り返される。
【0080】
その後、部分書き換え工程S2が含む残像消去工程によって生じた、DCバランスの不均衡(印加電界の非対称性)を解消するために、非対称性解消工程S6が行われる。非対称性解消工程S6は、残像消去を行う残像消去工程とは逆の表示を行う残像消去対称化工程を含む。
【0081】
例えば、第1色として黒を、第2色として白を表示可能な電気泳動表示装置において、残像消去として輪郭部分を含む画像を白で表示したとする。このとき、残像消去対称化工程では、同じ画像を黒で表示する操作を行う。なお、白を表示する場合と黒を表示する場合とでは、印加する電界の方向は正反対であり、電界が印加される時間は同じであるとする。
【0082】
なお、所与の視覚表現が0〜9の数字である先の例では、部分書き換え工程S2は10回繰り返される。このとき、残像消去対称化工程も輪郭部分を含む画像を黒で表示する処理を10回繰り返すことになる。
【0083】
非対称性解消工程S6の後に、電気泳動表示装置の表示についての終了命令の有無が判断されてもよい(S8)。表示を継続する場合には再びS2に戻り(S8N)、表示を終了する場合にはフローチャートの制御も終了する(S8Y)。例えば、電子時計に用いられる電気泳動表示装置などでは表示が終了することはなく、再びS2〜S6の工程が繰り返される。
【0084】
1.2.6.サブルーチンのフローチャート
1.2.6.1.部分書き換え工程
図8(A)は、部分書き換え工程S2のサブルーチンを示すフローチャートである。本実施形態では、部分書き換え工程S2は、部分書き込み工程S20、部分消去工程S22、残像消去工程S24を含む。
【0085】
部分書き込み工程S20は、表示部の所与の領域に所与の視覚表現を表示する。再び先の例を用いると、部分書き込み工程S20では、12画素×12画素の領域(所与の領域)の全てが白色であるときに、部分駆動により黒色で例えば0の数字(所与の視覚表現)を表示する。
【0086】
部分消去工程S22は、部分書き込み工程S20で書き込まれた所与の視覚表現を消去する。部分消去工程S22では、例えば、部分駆動により白色で0の数字(所与の視覚表現)を表示することで消去を行う。なお、部分消去工程S22は色を反転して同一の表示を行うことで、部分書き込み工程S20との間でDCバランスをとっている。
【0087】
残像消去工程S24は、所与の視覚表現の輪郭部分の残像を消去する。残像消去工程S24では、例えば、0の数字の輪郭を含む固定画像を部分駆動により白色で表示することで消去を行う。但し、残像消去工程S24ではDCバランスがとれていないため、以下の非対称解消工程が必要になる。
【0088】
1.2.6.2.非対称性解消工程
図8(B)は、非対称性解消工程S6のサブルーチンを示すフローチャートである。本実施形態では、非対称性解消工程S6は、第1全面書き込み工程S60、残像消去対称化工程S62、第2全面書き込み工程S64を含む。
【0089】
第1全面書き込み工程S60では、表示部の全体を描画する全面駆動が行われる。そして、第1全面書き込み工程S60は、表示部の所与の領域の全てを、部分書き換え工程S2で所与の視覚表現を表示するのに用いた色にする。
【0090】
例えば、部分書き換え工程S2では、12画素×12画素の領域は白色であり、そこに0の数字を表示するのには黒色を用いていた。第1全面書き込み工程S60は、全面駆動によって前記の12画素×12画素の領域(所与の領域)の全てを黒色にする。このことは、次に続く残像消去対称化工程S62の準備としての意味を持つ。
【0091】
残像消去対称化工程S62は、残像消去工程S24とDCバランスをとるため、残像消去工程S24で部分駆動により白色で表示された固定画像に対して残像消去工程S24とは逆の表示を行う。
【0092】
例えば、残像消去対称化工程S62は、残像消去工程S24と同じ部分駆動によって、0の数字の輪郭を含む固定画像を黒色で表示することでDCバランスをとる。このとき、第1全面書き込み工程S60により12画素×12画素の領域は黒色となっている。そのため、固定画像を黒色で表示してもユーザーに視認されるおそれはない。よって、ユーザーに故障との誤解を生じさせることもなく、残像消去工程S24とDCバランスをとることが可能である。
【0093】
なお、残像消去工程S24が所与の回数繰り返された場合には(S4)、その全てに対してDCバランスをとることが必要であるため、残像消去対称化工程S62においても対称化の処理が繰り返し行われる。例えば、0〜9の数字に対して残像消去工程S24が行われていた場合には、0〜9の各数字の輪郭を含む固定画像を黒色で表示する処理が10回繰り返される。しかし、本実施形態では、0〜9の数字に対して固定画像は共通であるため、固定画像を表す画像データをただ1度だけ記憶部から読み出せばよい。
【0094】
第2全面書き込み工程S64では、表示部の全体を描画する全面駆動が行われる。そして、第2全面書き込み工程S64は、表示部の所与の領域の全てを、部分書き換え工程S2で所与の視覚表現を消去するのに用いた色にする。
【0095】
例えば、部分書き換え工程S2では、12画素×12画素の領域は白色であり、表示された0の数字を消去するのには白色を用いていた。第2全面書き込み工程S64では、全面駆動によって前記の12画素×12画素の領域(所与の領域)の全てを白色にする。このことは、次に続く部分書き換え工程S2の準備としての意味を持つ。
【0096】
なお、第2全面書き込み工程S64は第1全面書き込み工程S60とDCバランスをとることが好ましい。よって、第2全面書き込み工程S64による表示は、表示部の全体において、第1全面書き込み工程S60による表示の白と黒を相互に交換した表示(反転表示)であることが好ましい。
【0097】
図7、図8(A)、図8(B)のフローチャートで示される電気泳動表示装置の駆動方法に従うことにより、DCバランスをとりつつ画像の輪郭に沿った残像を消去する電気泳動表示装置の駆動方法が可能となる。このとき、残像消去工程S24と残像消去対称化工程S62で用いられる固定画像は全ての視覚表現について共通であるため、固定画像のデータをただ1度だけ記憶部から読み出せばよい。そのため、応答速度の低下や消費電力の増大を生じることなく、DCバランスのとれた輪郭部分の残像消去を行う電気泳動表示装置の駆動方法が可能になる。
【0098】
2.電子機器
本発明の第2実施形態について図9〜図10を参照して説明する。なお、図1〜図8と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0099】
前記の電気泳動表示装置100は、様々な電子機器に適用され得る。
【0100】
例えば、図9(A)は電子機器の1つである腕時計1000の正面図である。腕時計1000は、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備える。時計ケース1002の正面には、電気泳動表示装置100からなる表示部1004が設けられ、表示部1004は時刻表示を含む表示1005を行っている。時計ケースの側面には、2つの操作ボタン1011と1012とが設けられている。なお、操作ボタン1011、1012によって、表示1005として時刻、カレンダー、アラームなど様々な表示形態が選択されてもよい。
【0101】
また、例えば図9(B)は電子機器の1つである電子ペーパー1100の斜視図である。電子ペーパー1100は可撓性を有し、電気泳動表示装置100からなる表示領域1101と本体1102を備える。
【0102】
電気泳動表示装置100を含む電子機器は、残像がないために電気泳動表示装置の視認性が向上し、DCバランスがとられているために電気泳動表示装置の長期信頼性を得る。また、残像消去対称化を行うことによる応答速度の低下や消費電力の増大といった問題を生じることはない。
【0103】
2.1.電子時計
ここで、第2実施形態として、腕時計1000を含む電子時計の実施形態について図10を用いて説明する。また、第2実施形態の比較例について図11を用いて説明する。
【0104】
2.1.1.本実施形態
図10(A)〜図10(J)は本実施形態に係る電子時計の表示部5の表示例を示す。図10(A)〜図10(J)では表示部5のうち時刻表示部分のみを抜き出している。また、領域51は部分駆動が行われ得る領域を示す。図10(A)〜図10(J)に示す実施例では領域51は時刻表示の分桁の一桁目に対応するが、例えば分桁の十桁目も含めて領域51としてもよいし、時刻表示全体を領域51としてもよい。
【0105】
図10(A)〜図10(J)の領域51の拡大図(右図)において、灰色で示す部分は部分駆動の対象でない画素を示す。すなわち、領域51の拡大図で黒色又は白色で表示された画素が部分駆動される。なお、図10(A)〜図10(J)に付された工程番号は図7、図8(A)、図8(B)のフローチャートの工程番号に対応する。
【0106】
図10(A)は、時刻が12:00であることを示している。部分書き込み工程S20が行われ、領域51に黒色で分一桁として0が表示される。
【0107】
図10(B)は、時刻が12:00から12:01に変化する前に、部分消去工程S22が行われ、図10(A)において領域51に黒色で表示されていた0が消去されることを示す。
【0108】
図10(C)は、残像消去工程S24が行われ、領域51に黒色で表示されていた0の輪郭部分の残像が消去されることを示す。このとき、残像消去には固定画像(図10(C)右図の白色で表示された領域)が用いられ、その情報は記憶部160(図1参照)から画像信号として読み出されるものとする。
【0109】
その後、分桁の一桁目が1、2、3、…と変化し、9になるまで図10(A)〜図10(C)と同じ工程が繰り返される。なお、図10(D)〜図10(F)は、それぞれ図10(A)〜図10(C)で分桁の一桁目が9になった場合であるので説明は省略する。
【0110】
図10(G)は、第1全面書き込み工程S60が行われ、領域51を黒色で表示していることを表す。このとき、時桁や区切り(:)や分桁の十桁は白色で表示されてもよい。
【0111】
図10(H)は、図10(C)の残像消去工程S24とDCバランスをとるために、残像消去対称化工程S62が行われることを示す図である。例えばコントローラー63(図1参照)は記憶部160から固定画像の情報を読み出し、図10(C)において白色で表示された0の輪郭を含む固定画像を、図10(H)のように黒色で表示する。なお、図10(G)により、領域51の全面が背景色として黒色で表示されているので、残像消去対称化工程S62による表示がユーザーに視認されることはない。つまり、黒色の背景色に対して黒色で固定画像を表示するので目につかない。
【0112】
その後、分桁の一桁目が1、2、3、…と変化したことに対応して、合わせて10回、図10(H)と同じ処理が繰り返される(図10(H)〜図10(I))。残像消去対称化工程S62は、複数の残像消去工程S24が行われた場合であっても、まとめて対称化の処理を行うことが可能であり、効率化を図ることができる。このとき、用いられる固定画像は共通であり、記憶部160から固定画像の情報を1度だけ読み出せばよい。そのため、記憶部160へのアクセスによる応答速度の低下や消費電力の増大が生じることはない。なお、図10(I)は図10(H)と同一の処理を行っており説明は省略する。
【0113】
図10(J)は、第2全面書き込み工程S64が行われ、領域51を白色で表示していることを表す。このとき、図10(J)における表示は図10(G)の表示とDCバランスがとれるように、図10(G)の表示を反転したものとなっている。
【0114】
なお、図10(A)〜図10(J)の表示例においては、図10(A)と図10(B)、図10(D)と図10(E)、図10(C)と図10(H)、図10(F)と図10(I)、図10(G)と図10(J)のペアでそれぞれDCバランスがとられている。
【0115】
2.1.2.比較例
図11(A)〜図11(J)は比較例における電子時計の表示部5の表示例を示す。なお、本実施形態に係る電子時計(図10(A)〜図10(J))との違いは、図11(C)、図11(F)、図11(H)、図11(I)のみであるので、これらの図についてのみ説明し、その他の重複する説明は省略する。
【0116】
図11(C)は、比較例における電子時計で残像消去工程S24が行われ、領域51に表示されていた0の輪郭部分の残像が消去されることを示している。このとき、0の輪郭を形成している輪郭形成画素と背景境界画素の情報が記憶部160から読み出される。そして、0についての輪郭形成画素と背景境界画素とを含む画像を白色で表示することで残像消去を行う。
【0117】
その後、分桁の一桁目が1、2、3、…と変化し、9になるまで図11(A)〜図11(C)と同じ工程が繰り返される。そして、図11(F)は、分桁の一桁目が9の場合の残像消去工程であり、9の輪郭形成画素と背景境界画素の情報を記憶部160から読み出して、これらを含む画像を白色で表示することで残像消去を行う。図11(C)や図11(F)の残像消去工程S24においては、表示した数字に対応した固有の輪郭形成画素等を記憶部160から読み出す必要がある。
【0118】
図11(H)は、図11(C)の残像消去工程S24に対する残像消去対称化工程S62が行われることを示す図である。図11(H)では、例えばコントローラー63が記憶部160から分桁の一桁目である0の輪郭形成画素と背景境界画素の情報を読み出し、これらを含む画像を黒色で表示してDCバランスをとる。その後、分桁の一桁目を1、2、3、…と変化させて、9になるまで同じ工程が繰り返される(図11(H)〜図11(I))。このとき、コントローラー63は記憶部160から分桁の一桁目の数字に対応した固有の輪郭形成画素等の情報をそれぞれ読み出す必要がある。つまり、比較例の電子時計では、残像消去対称化工程S62において10回も記憶部160へアクセスする必要がある。そのため、応答速度の低下や消費電力の増大が生じる可能性がある。特に、電子時計においては、応答速度の低下はユーザーに表示の違和感を覚えさせ、消費電力の増大により電池の寿命が短くしてしまう可能性がある。
【0119】
第2実施形態に係る電子時計では、固定画像を用いて残像消去工程S24と残像消去対称化工程S62を行うことで、比較例において生じ得るこれらの問題を解決している。
【0120】
2.1.3.本実施形態の変形例
図10(A)〜図10(J)の電子時計の例では、10分毎に残像消去対称化工程S62がおこなわれているが、例えば1日に1回だけ残像消去対称化工程S62が行われてもよい。電子時計にとっては、時刻表示という基本機能とは関係のない残像消去対称化工程S62を1日分まとめて行う方が処理の効率がよい。また、S62を1時間に1回行ってもよい。
【0121】
また、例えば電源をオフするときに残像消去対称化工程S62を行うことで、DCバランスをとることが可能である。例えば、電子機器の1つである電子ペーパー1100(図9(B)参照)の場合には、電源をオンしたときから累積されたアンバランス分を消去するために、電源をオフするときに残像消去対称化工程S62を行うようにしてもよい。
【0122】
3.その他
前記の実施形態においては、電気泳動表示装置は、黒色粒子および白色粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものに限られず、青白等の一粒子系の電気泳動を行っても良く、また、白黒以外の組み合わせでも構わない。
【0123】
そして、電気泳動表示装置に限らず、メモリー性の表示手段に前記の駆動方法が適用されてもよい。例えば、ECD(Electrochromic Display=エレクトロクロミックディスプレイ)、強誘電性液晶ディスプレイ、コレステリック液晶ディスプレイ等である。
【0124】
さらに、前記の実施形態の電子時計は、腕時計に限らず、置き時計、掛け時計、懐中時計などの時計機能を有する機器に広く適用できる。
【0125】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0126】
5…表示部、6…制御部、20…マイクロカプセル、26…黒色粒子、27…白色粒子、30…素子基板、31…対向基板、32…電気泳動素子、35…画素電極、35A…画素電極、35B…画素電極、37…共通電極、40…画素、40A…画素、40B…画素、40V…画素、40W…画素、40X…画素、40Y…画素、41…駆動用TFT(Thin Film Transistor)、49…低電位電源線(Vss)、50…高電位電源線(Vdd)、51…領域、55…共通電極配線(Vcom)、61…走査線駆動回路、62…データ線駆動回路、63…コントローラー、64…共通電源変調回路、66…走査線、68…データ線、70…ラッチ回路、80…スイッチ回路、91…第1のパルス信号線(S1)、92…第2のパルス信号線(S2)、100…電気泳動表示装置、160…記憶部、350…駆動電極層、360…電気泳動表示層、370…共通電極層、1000…腕時計、1002…時計ケース、1003…バンド、1004…表示部、1005…表示、1011…操作ボタン、1012…操作ボタン、1100…電子ペーパー、1101…表示領域、1102…本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含む電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え工程と、
前記部分書き換え工程が所与の回数繰り返された後に、前記部分書き換え工程で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消工程と、を含み、
前記部分書き換え工程は、
前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み工程と、
前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去工程と、
前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去工程と、を含み、
前記非対称性解消工程は、
前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み工程と、
前記第1全面書き込み工程の後に、前記部分書き換え工程で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化工程と、
前記残像消去対称化工程の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み工程と、を含み、
前記第2全面書き込み工程の後に、再び前記部分書き換え工程を行う、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像とする、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像とする、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の回数は複数回である、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項5】
電気泳動表示装置であって、
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え制御と、
前記部分書き換え制御を所与の回数繰り返した後に、前記部分書き換え制御で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消制御と、を行い、
前記部分書き換え制御において、
前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み制御と、
前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去制御と、
前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去制御と、を行い、
前記非対称性解消制御において、
前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み制御と、
前記第1全面書き込み制御の後に、前記部分書き換え制御で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化制御と、
前記残像消去対称化制御の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み制御と、を行い、
前記第2全面書き込み制御の後に、再び前記部分書き換え制御を行う、電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気泳動表示装置において、
前記制御部は、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像とする、電気泳動表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電気泳動表示装置において、
前記制御部は、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像とする、電気泳動表示装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の電気泳動表示装置を含む電子機器。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれかに記載の電気泳動表示装置を含む電子時計であって、
前記表示部は、
少なくとも、時桁と分桁を含む時刻表示を行い、
前記制御部は、
前記部分書き換え制御において、前記時刻表示の前記分桁を前記所与の視覚表現とする、電子時計。
【請求項10】
請求項9に記載の電子時計であって、
前記制御部は、
前記残像消去対称化制御を10分に1回行う、電子時計。
【請求項11】
請求項9に記載の電子時計であって、
前記制御部は、
前記残像消去対称化制御を1日に1回行う、電子時計。
【請求項1】
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含む電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え工程と、
前記部分書き換え工程が所与の回数繰り返された後に、前記部分書き換え工程で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消工程と、を含み、
前記部分書き換え工程は、
前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み工程と、
前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去工程と、
前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去工程と、を含み、
前記非対称性解消工程は、
前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み工程と、
前記第1全面書き込み工程の後に、前記部分書き換え工程で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化工程と、
前記残像消去対称化工程の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み工程と、を含み、
前記第2全面書き込み工程の後に、再び前記部分書き換え工程を行う、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像とする、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像とする、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の回数は複数回である、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項5】
電気泳動表示装置であって、
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記表示部の所与の領域の内部で前記電気泳動素子に電圧を印加することにより所与の視覚表現の書き換えを行う、部分書き換え制御と、
前記部分書き換え制御を所与の回数繰り返した後に、前記部分書き換え制御で印加された電圧の非対称性を解消する、非対称性解消制御と、を行い、
前記部分書き換え制御において、
前記所与の視覚表現を形成する画素である視覚表現形成画素を前記第1色で表示する、部分書き込み制御と、
前記視覚表現形成画素を前記第2色で表示する、部分消去制御と、
前記所与の領域の内部で固定画像を構成する画素を前記第2色で表示する、残像消去制御と、を行い、
前記非対称性解消制御において、
前記表示部の全ての領域で前記電気泳動素子に電圧を印加する全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第1色で表示する、第1全面書き込み制御と、
前記第1全面書き込み制御の後に、前記部分書き換え制御で消去された前記固定画像を構成する画素を前記第1色で表示する処理を前記所与の回数繰り返す、残像消去対称化制御と、
前記残像消去対称化制御の後に、前記全面駆動を行い、前記所与の領域を前記第2色で表示する、第2全面書き込み制御と、を行い、
前記第2全面書き込み制御の後に、再び前記部分書き換え制御を行う、電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気泳動表示装置において、
前記制御部は、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てを包含する閉じた図形を前記固定画像とする、電気泳動表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電気泳動表示装置において、
前記制御部は、
前記所与の領域に表示される前記視覚表現の全てについて、前記視覚表現の輪郭を形成している輪郭形成画素と、前記輪郭形成画素と隣接する画素のうち前記視覚表現形成画素以外の画素である背景境界画素と、を合成した画素からなる画像を前記固定画像とする、電気泳動表示装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の電気泳動表示装置を含む電子機器。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれかに記載の電気泳動表示装置を含む電子時計であって、
前記表示部は、
少なくとも、時桁と分桁を含む時刻表示を行い、
前記制御部は、
前記部分書き換え制御において、前記時刻表示の前記分桁を前記所与の視覚表現とする、電子時計。
【請求項10】
請求項9に記載の電子時計であって、
前記制御部は、
前記残像消去対称化制御を10分に1回行う、電子時計。
【請求項11】
請求項9に記載の電子時計であって、
前記制御部は、
前記残像消去対称化制御を1日に1回行う、電子時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−118352(P2012−118352A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268777(P2010−268777)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]