説明

電気泳動表示装置及び電気泳動表示装置の製造方法

【課題】反射型ディスプレイのマイクロカプセル型電気泳動表示層を多色表示する場合、表示明度の低下や暗所の環境では視認性が低下するという課題がある。
【解決手段】光源2と光源から光を内部に導入し電気泳動表示層15面側に光を出射させる透明基板に電極層が形成された透明導光板4と、電極層が形成され透明導光板4と対向するように配置された背面電極基板19との間に、カラーフィルター層10と電気泳動表示層15を形成することで、表示明度と視認性の低下を防ぎ、暗所においても視認できるカラー電気泳動表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル型電気泳動表示装置に関するものであり、導光板の透明基板上の透明電極層上に、カラーフィルター層及び電荷を帯びた顔料が封入されたマイクロカプセルから成る電気泳動表示層を形成することで、明るい表示が可能で、暗い環境の中でも視認可能な構造を有するマイクロカプセル型電気泳動表示装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の発達に伴い情報表示も様々な形態を持ってなされている。可変情報表示としては、CRT(陰極線管)や液晶ディスプレイ等が主流となっている。CRTやバックライトを使用するタイプの液晶ディスプレイ等の発光型ディスプレイは、長時間に渡る使用においては見るものの目を疲れさせ、文書等を読むのには適さない。
【0003】
また、フラットパネル表示装置としては、液晶ディスプレイが、その厚さが薄く、小型化が可能であることから、現在様々な用途において広範囲に使用されている。しかし、透過型LCDのような発光タイプのディスプレイは、目が疲労し易く、かつ視野角により光学特性が大きく変動するという問題がある。
【0004】
一方、バックライトを使用しないタイプの液晶ディスプレイは、偏光板の使用による画面の暗さが現れ、視認性が悪いという問題がある。さらに、これらのディスプレイの表示画像はメモリー性を持たず、電気的なエネルギー供給が停止されると同時に消えてしまうという欠点がある。
【0005】
今後さらに普及が予測される電子ブックや携帯情報端末等の携帯可能な情報機器のディスプレイ表示においては、長時間に渡る使用においても目を疲れさせにくく、視認性が良好で、消費電力が少なく、かつ画像のメモリー性を有していることが必要であると考えられる。
【0006】
その中で、特に注目されている表示装置の一つに電子ペーパーがある。これは紙と電子ディスプレイの長所を併せ持つものであり、無電源状態でも画像情報が保持され、さらに書き換え可能であるという特徴を持つ。また、電子ペーパーは、反射型ディスプレイのためコントラスト比が変わらず、視野角が広いという長所がある。例えば、特許文献1のような、マイクロカプセルを利用した電子ペーパー電気泳動表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−221546号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電子ペーパーは太陽光や蛍光灯などの外部からの光を反射させることで視認可能になっているが、夜間や暗所の環境では表示できないという問題がある。また、電子ペーパーは、液晶表示のように透過型にしてバックライトを背面から光を透過させることも困難であった。
【0009】
一方、近年、多色カラーディスプレイが求められており、開発が活発に行われている。多色カラーディスプレイでは、白黒二色表示の電気泳動表示装置上にカラーフィルターを貼り合わせることで、多色表示を行う方式が発表されている。この方法では、例えば、画素電極基板に接着剤層を介して電気泳動表示層、透明電極層、透明基板を積層し、カラーフィルター層を形成した別の透明基板を、接着層を介して貼り合わせる。さらにカラーフィルター層と反対面の透明基板上に、接着剤層を介して保護フィルムを貼り合わせた構造をとる。
【0010】
しかし、上記方式では、カラーフィルター層と電気泳動表示層間に新たに接着剤層を設ける必要があり、カラーフィルター層と電気泳動表示層間に距離が開いてしまうため、観察角度によっては色味が薄れ、視野角が広いという電子ペーパーの長所が失われてしまうことになる。さらに、外光が透明基板やカラーフィルター層などの構成部材を通過することにより、光の利用効率が低下し、表示明度がさらに低下するという問題がある。
【0011】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、多色表示可能なマイクロカプセル型電気泳動表示装置において、光源、導光板、電気泳動表示層、カラーフィルター層を一体にした構造を持ち、光源から取り込まれた光を均一に面内に出射させる構造を有する光源と導光板から成るフロントライトを設けることにより、光利用効率の高い明るい表示を行うことが可能となり、従来の白黒マイクロカプセル型電気泳動表示装置上にカラーフィルターを重ね合わせることにより発生する視野角の狭角化を防ぐとともに、外光が構成部材を透過することによる明度低下の防止、夜間や暗所の環境でも表示内容を視認できるような構造を有する光源一体型のマイクロカプセル電気泳動表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において上述の目的を達成するために、請求項1においては、光源と、前記光源から照射される光を内部に導入して内部を伝播する光を出射面から出射させる透明基板から成る第一基板と、前記第一基板の対向する位置に配置され電極を有する第二基板と、前記第一基板と前記第二基板との間に形成されたカラーフィルター層と、前記カラーフィルター層と接して形成されたオーバーコート層と、前記オーバーコート層と接して形成された透明電極層と、前記透明電極層と接して形成され、マイクロカプセルを含有する電気泳動表示層と、前記電気誘導表示層及び前記第二基板に接して形成された接着剤層と、を備えることを特徴とする電気泳動式表示装置を提供するものである。
【0013】
請求項2においては、前記第一基板は、前記光源から照射される光を内部に導入し、内部を伝播する光を前記カラーフィルター層側の面に出射する導光構造を備えることを特徴とする電気泳動式表示装置を提供するものである。
【0014】
請求項3においては、前記第一基板と前記カラーフィルター層との間にアンダーコート層を備え、前記カラーフィルター層は、カラーインキが前記アンダーコート層上に積層されて形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロカプセル型電気泳動式表示を提供するものである。
【0015】
請求項4においては、前記導光構造の屈折率と前記アンダーコート層の屈折率との差、及び前記アンダーコート層の屈折率と前記オーバーコート層の屈折率との差が、それぞれ0.2以下であることを特徴とする請求項3に記載の電気泳動式表示装置を提供するものである。
【0016】
請求項5においては、前記電気泳動表示層は、正に帯電した第一の色の電気泳動粒子と、負に帯電した第二の電気泳動粒子とが液体分散媒中に内包されたマイクロカプセルを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電気泳動式表示装置を提供するものである。
【0017】
請求項6においては、光源から照射される光を内部に導入して内部を伝播する光を出射面から出射させる透明基板から成る第一基板上にカラーフィルター層を形成する工程と、前記カラーフィルター層と接してオーバーコート層を形成する工程と、前記オーバーコート層と接して透明電極層を形成する工程と、マイクロカプセルを含有する電気泳動表示層を前記透明電極層と接して形成する工程と、前記電気誘導表示層に接して接着剤層を形成する工程と、前記接着剤層を介して、前記第一基板の対向する位置に電極を有する第二基板を設置する工程と、を含んだことを特徴とする電気泳動式表示装置の製造方法を提供するものである。
【0018】
請求項7においては、前記第一基板と前記カラーフィルター層との間にアンダーコート層を形成する工程をさらに含み、カラーフィルター層を形成する工程では、カラーインキを前記アンダーコート層上に積層して前記カラーフィルター層を形成することを特徴とする請求項6に記載の電気泳動式表示装置の製造方法を提供するものである。
【0019】
請求項8においては、前記第一基板上に形成された導光構造の屈折率と前記アンダーコート層の屈折率との差、及び前記アンダーコート層の屈折率と前記オーバーコート層の屈折率との差が、それぞれ0.2以下とすることを特徴とする請求項6または7に記載の電気泳動式表示装置の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、上記の問題を解決するために光源と導光板、電気泳動表示層、カラーフィルター層を一体にした構造を持ち、かつフロントライトの透明導光板を基板として兼用し、フロントライトが前面側から表示面を照らすことにより、表示明度の低下の防止、暗所の環境でも表示内容が視認できるといった効果を奏する。
【0021】
また、透明電極層を設けた透明導光板上に電気泳動表示層を直接形成することにより、電気泳動表示層とカラーフィルター層間が近接した構造になり、カラーフィルターを貼り合わせて形成した表示装置よりも、視野角の狭角化の発生を防げるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電気泳動表示装置1の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に関わるマイクロカプセル表示層に含まれるマイクロカプセルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
電気泳動を利用した表示装置の一つにマイクロカプセルを用いた電気泳動表示装置がある。分散媒が満たされたマイクロカプセル中に正、負に帯電した白色粒子と着色粒子を入れ、外部電圧の印加によってそれぞれの粒子を表示面に引き上げて画像を形成するものである。マイクロカプセルのサイズは数十μm〜数百μmと小さいので、このマイクロカプセルを透明なバインダー材に分散させると、インクのようにコーティングすることができる。
【0025】
透明電極を形成した透明樹脂膜にこのインクをコーティングし、TFTに代表されるアクティブマトリクス駆動用の電極回路を形成した基板に貼り合わせると、アクティブマトリクスディスプレイを得ることができる。通常、透明電極を形成した透明樹脂フィルムに電子インクをコーティングした部品を「前面板」と呼び、アクティブマトリクス駆動用の電極回路を形成した基板を「背面板」と呼んでいる。背面板にはアクティブマトリクスのほか、導電性を有する様々な基板、フィルムを使用することができる。
【0026】
図1は本発明の電気泳動表示装置1の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の電気泳動表示装置1のフロントライト部5には、構成部材として透明基板からなる透明導光板4(第一基板)と光源2が設けられている。光源2は透明導光板4の端側に設けられている。透明導光板4は、光源2から照射される光を内部に導入し、内部を伝播する光を後述するカラーフィルター層10側の面に出射する導光構造を備える。
【0027】
電気泳動表示装置1には、さらに赤色、緑色、及び青色に対応するカラーインク9(9a、9b、及び9c)をアンダーコート層8に設けたカラーフィルター層10、オーバーコート層11、透明電極層12、電気泳動表示層15、導電性接着剤16、画素電極17と背面基板18から成る背面電極基板19(第二基板)によって構成されている。詳細は後述するが、電気泳動表示層15は、白色粒子19及び着色粒子20を内包するマイクロカプセル13とバインダー樹脂14からなる。
【0028】
すなわち、電気泳動表示装置1は、光源2と、光源2から照射される光を内部に導入して内部を伝播する光を出射面から出射させる透明基板から成る第一基板(透明導光板4)と、第一基板の対向する位置に配置され電極を有する第二基板(背面電極基板19)と、第一基板と第二基板との間に形成されたカラーフィルター層10と、カラーフィルター層10と接して形成されたオーバーコート層11と、オーバーコート層11と接して形成された透明電極層12と、透明電極層12と接して形成され、マイクロカプセルを含有する電気泳動表示層15と、電気誘導表示層15及び前記第二基板に接して形成された接着剤層16と、を備える。
【0029】
上記透明導光板4の光出射面7側にアンダーコート層8を所定の塗工方式で塗工し、前記アンダーコート層8上にカラーインキ9を塗布することによってカラーフィルター層10が形成されている。すなわち、カラーフィルター層10は、第一基板上に設けられたアンダーコート層8上にカラーインキ9が積層されて形成される。
【0030】
上記カラーフィルター層10を覆うようにオーバーコート層11が形成されており、オーバーコート層11の表面上に透明電極層12が形成されている。次に、透明電極層12上にマイクロカプセル13とバインダー樹脂14を分散させた塗工液を所定の塗工方法で塗工することで、電気泳動表示層15が形成される。
【0031】
また、導電層及び表層に剥離層としてシリコン層を設けた導電性剥離基板上に、導電性接着剤16を塗工し、導電性接着剤基板を形成し、電気泳動表示層15と導電性接着剤16面を貼り合わせる。
【0032】
次いで、導電性接着剤16面と、画素電極17と背面基板18から成る背面電極基板19の画素電極17面と、を貼り合せることで、本発明の電気泳動表示装置1を得る。
【0033】
すなわち、本発明の電気泳動表示装置1は、光源2から照射される光を内部に導入して内部を伝播する光を出射面から出射させる透明基板から成る第一基板上にカラーフィルター層10を形成する工程と、カラーフィルター層10と接してオーバーコート層11を形成する工程と、オーバーコート層11と接して透明電極層12を形成する工程と、マイクロカプセルを含有する電気泳動表示層15を透明電極層12と接して形成する工程と、電気誘導表示層15と接して接着剤層を形成する工程と、接着剤層を介して、第一基板の対向する位置に電極を有する第二基板を設置する工程と、を含んだ製造方法によって製造される。
【0034】
透明導光板4は、楔状の形状が連続するように形成されており、楔形形状の一方を急斜面とし、他方をその斜面よりも緩やかな傾斜角度とした構造を有することが好ましい。これは、光入射面を介して前記透明導光板4内に導入された光の一部が、該構造により光射出面方向に反射されることで、前記光射出面と直交する光が前記光射出面より均一に射出され、前記光射出面より電気泳道表示層15へ射出される光の全体としての強度が増大するためである。斜面の構成や形状は上記のものに限定されず、上記効果を奏する構造を持つ導光板であればいかなる構成や形状であってもよい。また、前記透明導光板4の基板は、前記光源2から入射した光が表示面を照らし、かつカラーフィルター層10及び電気泳動表示層15を保持する支持体として機能し、その材料としては、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの各種透明基板を挙げることができる。
【0035】
透明導光板4の厚さは限定されるものではないが、透明導光板4が曲げを伴う連続加工に耐える可撓性を有する材料が好適であり、このような材料であればロールツーロールで製造することが可能となり、大幅な製造コスト削減につながる。
【0036】
アンダーコート層8には、ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル計樹脂等を使用し、ダイコート、バーコート、スピンコート、スクリーン印刷、オフセット印刷等の所定の塗工方法で形成する。
【0037】
カラーフィルター層10のカラーインク層9の形成方法としては、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷など種々の印刷法を用いることができる。
【0038】
平坦性を持たせるために形成するオーバーコート層11の材料は、特定の樹脂に限定される必要はなく、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シリコン系等の有機樹脂やSi、SiO、Al、Taなどの無機膜をスピンコートやダイコート、バーコート、ロールコート、各種印刷法、あるいは蒸着法によって形成することが可能である。
【0039】
また、透明導光板4、アンダーコート層8、及びオーバーコート層11の各層における光源2から入射した光の屈折率の差は0に近いことが望ましい。具体的には、透明導光板4(導光構造)の屈折率とアンダーコート層8の屈折率との差、及びアンダーコート層8の屈折率とオーバーコート層11の屈折率との差が、それぞれ0.2以下になるようにする。これは、透明導光板4とアンダーコート層8との界面、及びアンダーコート層8とオーバーコート層11との界面における光の反射を抑えることができ、反射光が観察者の目に届くことを抑えることができるためである。
【0040】
また、透明導光板4、アンダーコート層8及びオーバーコート層11の屈折率との差を小さくするため、アンダーコート層8とオーバーコート層11を形成する材料中に屈折率を調整するための調整剤を添加することもできる。添加剤としては、例えば酸化ジルコニウム、酸化チタンといった材料が好適である。
【0041】
オーバーコート層11の厚みは、最薄部分において5μm以下が好ましい。製造される電気泳動表示装置1の視野角の点から、電気泳動表示層15とカラーフィルター層10の距離は、短ければ短いほど好ましいため、オーバーコート層11の最薄部分の厚みが5μmを超える場合には、電気泳動表示装置の視野角が狭くなり、本実施形態の効果を十分に得ることができなくなる可能性がある。
【0042】
透明電極層12には、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)等の光透過性の高い導電性材料の金属材料のほか、カーボンナノチューブやチオフェン系化合物などを用いることができる。透明電極層12の形成には、蒸着法、スパッタ法、CVD法などの乾式成膜法や、塗液を用いた湿式成膜法などの従来技術を用いることができる。
【0043】
導電性接着剤16には、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂等の合成樹脂系接着剤が適しており、特に高誘電体樹脂を使用した接着剤であることが好ましい。
【0044】
導電性接着剤16に、後述するバインダー樹脂14と同様の成分を有した接着剤を用いることで、樹脂の界面の親和性が高まり乖離が起こりにくくなり、また誘電率が類似しているため、マイクロカプセル13に印加される電圧が面で一定になりやすいという利点がある。
【0045】
背面電極基板19を形成する背面基板18には、ガラスやポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、天然樹脂などを単独もしくは複合して用いることができ、その形状は特に限定されない。
【0046】
光源2は、透明導光板4の一端側もしくは両端側に配置されており、LED(発光ダイオード)や棒状の蛍光灯など、点光源、線光源のどちらでもよい。
【0047】
図2は本発明の実施形態に係るマイクロカプセル型電気泳動表示シートのマイクロカプセル表示層に含まれるマイクロカプセルの模式図である。
【0048】
電気泳動表示層15に含まれるマイクロカプセル13は、図2に示すように、マイクロカプセル殻23の内部に白色粒子20、着色粒子21及び分散媒22に分散された状態で封入されている。すなわち、電気泳動表示層15は、正に帯電した第一の色の電気泳動粒子と、負に帯電した第二の電気泳動粒子とが液体分散媒中に内包されたマイクロカプセルを含有する。マイクロカプセル13の平均粒径は20〜60μmが好適であり、篩い分けや比重分離法等の任意の方法により精製することができる。
【0049】
着色粒子21は、無機炭素等の無機顔料のほか、ガラスあるいは樹脂等の微粉末、これらの複合体などを使用できる。白色粒子20としては、公知の酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛などの白色無機顔料、酢酸ビニルエマルジョンなどの有機化合物、さらにはこれらの複合体などを使用できる。
なお、白色粒子20及び着色粒子21は必要に応じて、粒子の表面を種々の界面活性剤、分散剤、有機及び無機化合物、金属等を用いて処理することで、所望の表面電荷を付与することができるのみならず、分散媒22中での異種粒子間の静電気力等による凝集を防ぐことにより、分散安定性を向上させることができる。
【0050】
分散媒22には、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、各種エステル類、アルコール類、または、その他の樹脂などを単独もしくは適宜混合した溶媒を用いることができ、これを、混合コアセルベーションなどの相分離法、界面重合法、in−situ法などの公知の方法を用いて製造したマイクロカプセル13に封入する。カプセル殻は、アラビアゴム、メタクリル酸樹脂、尿素樹脂、ユリア樹脂などがある。
【0051】
マイクロカプセル13は水を主成分とする分散液中に分散され、これにウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、ポリ乳酸などの誘電体樹脂からなるバインダー樹脂14を投入することで、マイクロカプセル13の塗工液が形成される。この塗工液における全体重量に対する固形分重量比の好適な範囲は、塗工液の塗工方法にもよるため幅広く、凡そ20〜60%である。上記バインダー樹脂14は単独もしくは混合して使用することができる。
【0052】
マイクロカプセル13塗工液を透明導光板4上に塗工する方法は、ダイコート、バーコート、マイクログラビアコート、スクリーン印刷など種々の方法を採り得る。
【0053】
上記の構造を備えた本発明の電気泳動表示装置1は、光源2から照射された光が透明導光板4内部を伝播し、カラーフィルター層10及び電気泳動表示層15側に光が出射される。これにより、カラーフィルター層10などを形成することによる明度の低下を防ぎ、さらに暗い環境の中においても表示面の視認ができ、また、見易さの面でも紙の白色に近く、また、屋外の直射日光の下でも問題なく使用することができる。
【0054】
図1のように形成した層の電気泳動表示装置1は、透明電極層12と背面電極基板19側からの電圧印加により表示することが可能となり、電極に正または負電圧を選択的に印加することで、色を表現することができる。
【0055】
電気泳動表示層15は、図1の断面図に示すように、マイクロカプセル13を多数含んでおり、電極層の電界の向きを制御することで、上述の原理に基づきマイクロカプセル13内の粒子を移動させることで表示させることができる。
【0056】
電気泳動表示層15のマイクロカプセル13中の各粒子は粘性の高い分散媒22に分散されているため、一度電界を印加した後は、電源が切断されても粒子の位置は変化しない。このように、表示画像が消えないメモリー性を有するので、書き換え時のみに電界を印加すればよい。
【実施例1】
【0057】
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、以下のようにして、マイクロカプセル13を作製した。テトラクロロエチレン溶媒に、ポリエチレン樹脂で表面を被覆した平均粒径3μmの酸化チタン粉末(白色粒子20)と、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4μmのカーボンブラック粉末(着色粒子21)とが分散された分散液を作製した。
【0058】
次いで、この分散液について、水にゼラチンとポリスチレンスルホン酸ナトリウムとを配合した水溶液と混合し、液温40℃の状態で、ホモジナイザーにより攪拌し、エマルジョン溶液を得た。
次に、得られたエマルジョン溶液と40℃に調整された水にアラビアゴムを配合した水溶液とを、ディスペンサーを用いて混合し、酢酸を用いて溶液をpH4に調整し、コアセルベーションによりマイクロカプセル殻23を形成した。
【0059】
さらに、液温5℃に低下させた後、37重量%ホルマリン溶液を加えてマイクロカプセル殻23を硬化させ、白色粒子20(酸化チタン粒子)と着色粒子21として黒色粒子(カーボンブラック粒子)を分散した透明分散媒22が封入されたマイクロカプセル13を得た。その後、篩い分けにより、体積基準による平均粒径が45μmであり、粒径が30μmから65μmまでの範囲に含まれるマイクロカプセル13の割合が75%以上であるマイクロカプセル群を得た。
【0060】
次に、固形分40重量%の純水に分散させたマイクロカプセル13を、固形分40重量%のウレタン系バインダー樹脂14、界面活性剤、増粘剤と混合し、マイクロカプセル塗工液を作製した。
【0061】
厚さ700μmのポリカーボネート製の透明導光板4シート上に、インクジェット用アンダーコート層液ダイアロマーIJ2101(大日精化工業株式会社)を膜厚10μmで形成した。
【0062】
上記受像層に対し、基材端部にある位置合わせ模様を基準にインクジェット装置を用いて、各画素に対応したカラーインクとして赤色、緑色、青色を印刷し、カラーフィルター層10を形成した。
【0063】
次いで、カラーフィルター層10の表面上に、オーバーコート層11としてアクリル樹脂に屈折率調整剤として酸化ジルコニウムを分散させた塗工液を、バーコーターにより膜厚5μmで形成した。
上述のオーバーコート層11の屈折率について、別途基材にオーバーコート層11を形成し、その屈折率を測定したところ、平均屈折率は1.54であった。本実施例において形成した透明導光板4の平均屈折率は1.58であったため、両者の屈折率差は0.04であり、透明導光板4の平均屈折率に対して5%以内であった。
【0064】
次いで、透明電極層12としてITO層を上述のオーバーコート層11の表面上に蒸着し、さらにITO層上にマイクロカプセル塗工液を膜厚が24μmになるように塗工し、60℃10分間乾燥させ、電気泳動表示層15を得た。
【0065】
さらに、マイクロカプセル13層上に導電性接着剤16層を形成して作製した前面板に、アクティブマトリクスの背面電極を貼り合わせた。また、光源や光源カバーとで接続することで、光源一体型のマイクロカプセル型電気泳動表示装置を得た。これを駆動させたところ、問題なく所望の動作を得た。また、フロントライトの光源2により、明度の低下がなく、暗い環境においても表示画像を視認することができた。
【符号の説明】
【0066】
1・・・電気泳動表示装置
2・・・光源
3・・・光源カバー
4・・・透明導光板
5・・・フロントライト部
6・・・光入射面
7・・・光出射面
8・・・アンダーコート層
9・・・カラーインク層
10・・・カラーフィルター層
11・・・オーバーコート層
12・・・透明電極層
13・・・マイクロカプセル
14・・・バインダー樹脂
15・・・電気泳動表示層
16・・・導電性接着剤
17・・・画素電極
18・・・背面基板
19・・・背面電極基板
20・・・白色粒子
21・・・着色粒子
22・・・分散媒
23・・・マイクロカプセル殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から照射される光を内部に導入して内部を伝播する光を出射面から出射させる透明基板から成る第一基板と、
前記第一基板の対向する位置に配置され電極を有する第二基板と、
前記第一基板と前記第二基板との間に形成されたカラーフィルター層と、
前記カラーフィルター層と接して形成されたオーバーコート層と、
前記オーバーコート層と接して形成された透明電極層と、
前記透明電極層と接して形成され、マイクロカプセルを含有する電気泳動表示層と、
前記電気誘導表示層及び前記第二基板に接して形成された接着剤層と、
を備えることを特徴とする電気泳動式表示装置。
【請求項2】
前記第一基板は、前記光源から照射される光を内部に導入し、内部を伝播する光を前記カラーフィルター層側の面に出射する導光構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動式表示装置。
【請求項3】
前記カラーフィルター層は、前記第一基板上に設けられたアンダーコート層上にカラーインキが積層されて形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気泳動式表示装置。
【請求項4】
前記導光構造の屈折率と前記アンダーコート層の屈折率との差、及び前記アンダーコート層の屈折率と前記オーバーコート層の屈折率との差が、それぞれ0.2以下であることを特徴とする請求項3に記載の電気泳動式表示装置。
【請求項5】
前記電気泳動表示層は、正に帯電した第一の色の電気泳動粒子と、負に帯電した第二の電気泳動粒子とが液体分散媒中に内包されたマイクロカプセルを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電気泳動式表示装置。
【請求項6】
光源から照射される光を内部に導入して内部を伝播する光を出射面から出射させる透明基板から成る第一基板上にカラーフィルター層を形成する工程と、
前記カラーフィルター層と接してオーバーコート層を形成する工程と、
前記オーバーコート層と接して透明電極層を形成する工程と、
マイクロカプセルを含有する電気泳動表示層を前記透明電極層と接して形成する工程と、
前記電気誘導表示層と接して接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層を介して、前記第一基板の対向する位置に電極を有する第二基板を設置する工程と、
を含んだことを特徴とする電気泳動式表示装置の製造方法。
【請求項7】
をさらに含み、
カラーフィルター層を形成する工程では、前記第一基板上にアンダーコート層を形成し、前記アンダーコート層上にカラーインキを積層して前記カラーフィルター層を形成することを特徴とする請求項6に記載の電気泳動式表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第一基板上に形成された導光構造の屈折率と前記アンダーコート層の屈折率との差、及び前記アンダーコート層の屈折率と前記オーバーコート層の屈折率との差が、それぞれ0.2以下とすることを特徴とする請求項6または7に記載の電気泳動式表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−73127(P2013−73127A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213617(P2011−213617)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】