説明

電気泳動表示装置用分散液およびその用途

【課題】コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能な電気泳動表示装置用分散液およびその用途を提供すること。
【解決手段】電気泳動表示装置用分散液は、溶媒中に少なくとも1種類以上の電気泳動粒子と少なくとも1種類以上の該電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子とを含有し、該微粒子の添加量が該電気泳動粒子100質量%に対して5質量%以下(0質量%を含まない)である。この分散液は、その用途として、電気泳動表示装置用マイクロカプセル、電気泳動表示装置用塗工液組成物、電気泳動表示装置用シート、電気泳動表示装置および電子機器に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置用分散液およびその用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、電気泳動表示装置用分散液、ならびに、その用途として、該分散液が殻体に内包されている電気泳動表示装置用マイクロカプセル、該マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有する電気泳動表示装置用塗工液組成物、該塗工液組成物を用いて得られる電気泳動表示装置用シート、電気泳動表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置は、例えば、電気泳動粒子を溶媒中に分散させておき、電圧を印加したときの電気泳動粒子の挙動により、文字データや画像データなどを表示する。例えば、電気泳動粒子と溶媒とが異なる色で着色されていると、電圧印加により、電気泳動粒子が溶媒の表面に移動したときには電気泳動粒子の色が観察され、電気泳動粒子が溶媒の底部に移動したときには分散液の色が観察されることになる。アドレス指定して電圧を印加できる電極を備えておけば、アドレスごとに異なる色が表示でき、任意の文字データや画像データを表示できるようになる。しかも、表示データが書き換え可能であると共に、電気的な信号が存在しなくなっても、そのまま表示データを保持することができるという利点がある。
【0003】
通常、電気泳動粒子の分散液は、対向電極基板間の空間に封入されるが、電圧印加により、電気泳動粒子は、一方の電極基板の表面に移動し、電圧印加を停止した後でも、ファンデルワールス力により電極基板の表面に付着した状態を保持する。ところが、電気泳動粒子は球形であるので、隣接する電気泳動粒子間に間隙が形成され、この間隙に着色された溶媒が侵入して、混色が起こったり、コントラストが低下したりするという問題点があった。そこで、例えば、特許文献1には、電気泳動粒子よりも粒径が小さい充填粒子を多量に添加し、隣接する電気泳動粒子間に形成された間隙を充填粒子で埋めることにより、混色の発生やコントラストの低下を防止する技術が提案されている。
【0004】
また、表示データを書き換えるために、印加電圧の極性を切り替えても、電気泳動粒子は、鏡像力により、電極基板の表面に付着したまま残留してしまい、混色が発生したり、コントラストが低下したりするという問題点があった。そこで、特許文献2には、電気泳動粒子より粒径が小さい剥離粒子を添加し、電気泳動粒子に剥離粒子を衝突させて、電極基板の表面から電気泳動粒子を離脱させることにより、混色の発生やコントラストの低下を防止する技術が提案されている。
【特許文献1】特表2006−520483号公報
【特許文献2】特開2007−249139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示された技術では、電気泳動粒子および充填粒子が実質的に同一の電気泳動特性を有する必要があるが、粒子径が異なる2種類の粒子の電気泳動特性を実質的に同一に調整するのは困難である。また、特許文献2に開示された技術では、剥離粒子の帯電特性を制御する必要があるが、主粒子の表面に逆の帯電性を有する小粒子を付着させて剥離粒子の帯電特性を制御するのは困難である。
【0006】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、比較的簡単な手段で、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能である電気泳動表示装置用分散液、ならびに、その用途として、該分散液が殻体に内包されている電気泳動表示装置用マイクロカプセル、該マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有する電気泳動表示装置用塗工液組成物、該塗工液組成物を用いて得られる電気泳動表示装置用シート、電気泳動表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討の結果、溶媒中に電気泳動粒子を含有する電気泳動表示装置用分散液に、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子を所定の添加量で添加すれば、電気泳動粒子の分散安定性と、電気泳動表示装置におけるデータ表示時の電気泳動粒子の凝集安定性とを両立させることができ、その結果、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能である電気泳動表示装置用分散液が得られることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、溶媒中に少なくとも1種類以上の電気泳動粒子と少なくとも1種類以上の該電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子とを含有する電気泳動表示装置用分散液であって、該微粒子の添加量が該電気泳動粒子100質量%に対して5質量%以下(0質量%を含まない)であることを特徴とする分散液を提供する。
【0009】
本発明の電気泳動表示装置用分散液において、前記電気泳動粒子に対する前記微粒子の粒子径比(微粒子の粒子径/電気泳動粒子の粒子径)は、好ましくは1/1,000以上であり、より好ましくは1/500以上、さらに好ましくは1/200以上、最も好ましくは1/100以上であり、また、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/30以下、さらに好ましくは1/50以下である。また、前記微粒子は、好ましくは金属酸化物の微粒子、より好ましくはシリカ微粒子、チタニア微粒子、アルミナ微粒子およびジルコニア微粒子よりなる群から選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくはヒュームドシリカ、ヒュームドチタニア、ヒュームドアルミナおよびヒュームドジルコニアよりなる群から選択される少なくとも1種である。さらに、前記微粒子の反射率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上、最も好ましくは40%以上であり、また、好ましくは100%以下である。
【0010】
また、本発明は、本発明の電気泳動表示装置用分散液の用途として、本発明の電気泳動表示装置用分散液が殻体に内包されていることを特徴とする電気泳動表示装置用マイクロカプセル;本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有することを特徴とする電気泳動表示装置用塗工液組成物;本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層を有することを特徴とする電気泳動表示装置用シート;データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、該データ表示部が本発明の電気泳動表示装置用シートで構成されていることを特徴とする電気泳動表示装置;ならびに、データ表示手段を備えている電子機器であって、該データ表示手段が本発明の電気泳動表示装置であることを特徴とする電子機器;を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気泳動表示装置用分散液は、電気泳動粒子に加えて、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子を所定の添加量で含有するので、電気泳動粒子の分散安定性と、電気泳動表示装置におけるデータ表示時の電気泳動粒子の凝集安定性とを両立させることができ、その結果、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能である。
【0012】
また、本発明の電気泳動表示装置用分散液に添加する微粒子の化学構造によっては、コントラストの低下を防止する水分を微粒子に吸着させることが可能となるので、このような微粒子を含有する電気泳動表示装置用分散液を用いて作製された電気泳動表示装置は、高温条件下で長時間(例えば、70℃で24時間)放置した場合であっても、表示性能が低下しないという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
≪電気泳動表示装置用分散液≫
本発明の電気泳動表示装置用分散液(以下「本発明の分散液」または単に「分散液」ということがある。)は、溶媒中に少なくとも1種類以上の電気泳動粒子と少なくとも1種類以上の該電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子とを含有する電気泳動表示装置用分散液であって、該微粒子の添加量が該電気泳動粒子100質量%に対して5質量%以下(0質量%を含まない)であることを特徴とする。
【0014】
本発明の分散液は、溶媒中に、電気泳動粒子に加えて、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子を所定の添加量で含有する。それゆえ、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子が至適な量で電気泳動粒子の表面に付着することにより、電気泳動粒子の分散特性および凝集特性を制御することができる。換言すれば、電気泳動粒子の分散安定性と、電気泳動表示装置におけるデータ表示時の電気泳動粒子の凝集安定性とを両立させることができ、その結果、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能になる。
【0015】
以下、本発明の分散液について、詳しく説明するが、本発明の分散液は下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0016】
<微粒子>
本発明の分散液に添加される微粒子は、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子である限り、例えば、化学的および物理的構造について、特に限定されるものではない。微粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下、最も好ましくは0.05μm以下であり、また、好ましくは0.001μm以上である。微粒子の粒子径が大きすぎると、電気泳動粒子に付着する微粒子の数が少なくなるので、電気泳動粒子の分散特性および凝集特性を至適に制御できないことがある。逆に、微粒子の粒子径が小さすぎると、入手するのが困難であり、入手できたとしても、取り扱い性が悪いことがある。なお、微粒子の粒子径とは、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名「LB−500」)を用いて測定した体積平均粒子径を意味する。
【0017】
本発明の分散液において、電気泳動粒子に対する微粒子の粒子径比(微粒子の粒子径/電気泳動粒子の粒子径)は、特に限定されるものではないが、好ましくは1/1,000以上、より好ましくは1/500以上、さらに好ましくは1/200以上、最も好ましくは1/100以上であり、また、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/30以下、さらに好ましくは1/50以下である。電気泳動粒子に対する微粒子の粒子径比が小さすぎるか、あるいは、大きすぎると、電気泳動粒子に付着する微粒子の数が充分ではないので、電気泳動粒子の分散特性および凝集特性を至適に制御できないことがある。
【0018】
本発明の分散液に添加される微粒子は、電気泳動粒子に付着する限り、無機化合物または有機化合物のいずれであってもよい。微粒子が無機化合物である場合、その化学的構造は、特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属炭酸塩、金属リン酸塩などが挙げられる。これらの無機化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの無機化合物のうち、価格が安いことや粒子径が小さいことから、金属酸化物が好適である。
【0019】
金属酸化物としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。本発明では、ケイ素を金属の範疇に含めるものとする。また、粒子径が小さいことから、例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームドチタニア、ヒュームドアルミナ、ヒュームドジルコニアが特に好適である。
【0020】
金属酸化物の市販品としては、例えば、日本アエロジル株式会社などから入手可能な商品名「AEROSIL(登録商標)50」、「AEROSIL(登録商標)90」、「AEROSIL(登録商標)90G」、「AEROSIL(登録商標)130」、「AEROSIL(登録商標)200」、「AEROSIL(登録商標)200V」、「AEROSIL(登録商標)200CF」、「AEROSIL(登録商標)200FAD」、「AEROSIL(登録商標)300」、「AEROSIL(登録商標)300CF」、「AEROSIL(登録商標)380」、「AEROSIL(登録商標)R972」、「AEROSIL(登録商標)R972V」、「AEROSIL(登録商標)R972CF」、「AEROSIL(登録商標)R974」、「AEROSIL(登録商標)380PE」、「AEROSIL(登録商標)R976」、「AEROSIL(登録商標)R976S」、「AEROSIL(登録商標)R202」、「AEROSIL(登録商標)R805」、「AEROSIL(登録商標)R812」、「AEROSIL(登録商標)R812S」、「AEROSIL(登録商標)OX50」、「AEROSIL(登録商標)TT600」、「AEROSIL(登録商標)MOX80」、「AEROSIL(登録商標)MOX170」、「AEROSIL(登録商標)COK84」、「AEROSIL(登録商標)RX200」、「AEROSIL(登録商標)RY200」、「AEROSIL(登録商標)RY200S」、「AEROSIL(登録商標)RX300−5」、「AEROSIL(登録商標)RX300」、「AEROSIL(登録商標)R8200」、「AEROSIL(登録商標)R9200」、「AEROSIL(登録商標)RX50」、「AEROSIL(登録商標)NAX50」、「AEROSIL(登録商標)NX90」、「AEROSIL(登録商標)RY50」、「AEROSIL(登録商標)NY50」、「AEROSIL(登録商標)R104」、「AEROSIL(登録商標)R106」、「AEROSIL(登録商標)NA50H」、「AEROSIL(登録商標)NA50Y」、「AEROSIL(登録商標)RA200H」、「AEROSIL(登録商標)RA200HS」、「AEROSIL(登録商標)NA200Y」、「AEROSIL(登録商標)R816」、「AEROSIL(登録商標)RM50」、「AEROSIL(登録商標)R711」、「AEROSIL(登録商標)R7200」、「AEROXIDE(登録商標)TiO2 T805」、「AEROXIDE(登録商標)TiO2 P25」、「AEROXIDE(登録商標)TiO2 PF2」、「AEROXIDE(登録商標)TiO2 NKT90」、「AEROXIDE(登録商標)Alu C」、「AEROXIDE(登録商標)Alu C805」、「VP ZIRCONOXID(登録商標)3−YSZ」などが挙げられる。
【0021】
本発明の分散液に添加される微粒子は、親水性または疎水性のいずれであってもよい。電気泳動粒子が親水性であれば、親水性の微粒子を用いることが好ましい。また、電気泳動粒子が疎水性であれば、疎水性の微粒子を用いることが好ましい。すなわち、電気泳動粒子および微粒子の性質(親水性または疎水性)を一致させた方が、溶媒中における電気泳動粒子および微粒子の分散性が良好になるので好ましい。ただし、電気泳動粒子および微粒子の種類や特性によっては、必ずしも性質(親水性または疎水性)を一致させることが最良の態様にならない場合がある。
【0022】
親水性または疎水性を区別する指標として、メタノール疎水化度を用いてもよい。例えば、電気泳動粒子および微粒子が疎水性であれば、微粒子のメタノール疎水化度は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上であり、また、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下、最も好ましくは70%以下である。微粒子の疎水化度が小さすぎるか、あるいは、大きすぎると、溶媒中における電気泳動粒子および微粒子の分散性が低下することがある。なお、メタノール疎水化度とは、下記の実施例で説明する方法を用いて測定された値である。
【0023】
本発明の分散液中における微粒子の添加量は、電気泳動粒子100質量%に対して、通常は5質量%以下(0質量%を含まない)であるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。微粒子の添加量が少なすぎるか、あるいは、多すぎると、電気泳動粒子の分散特性および凝集特性を至適に制御できないことがある。電気泳動粒子は、分散安定性の向上と電気泳動表示装置におけるデータ表示時の電気泳動粒子の凝集安定性という互いに相反する機能が求められる。そのため、電気泳動表示装置の表示性能を向上させるには、電気泳動粒子に対して適切な添加量で微粒子を添加することが必要である。
【0024】
本発明の分散液に微粒子を添加する方法は、特に限定されるものではなく、分散液に微粒子を添加しても、分散液を調製する前の電気泳動粒子に微粒子を添加してもよい。いずれの方法であっても、微粒子は、電気泳動粒子の分散特性および凝集特性を至適に制御するという効果を発揮する。
【0025】
本発明の分散液に添加される微粒子の反射率は、特に限定されるものではないが、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上、最も好ましくは40%以上である。微粒子の反射率が小さすぎると、電気泳動表示装置における白表示の反射率が低下することがある。微粒子の反射率の上限は100%である。なお、微粒子の反射率とは、下記の実施例で説明する方法を用いて測定された値である。
【0026】
<電気泳動粒子>
本発明の分散液に添加する電気泳動粒子は、電気泳動性を有する固体粒子、すなわち分散液中で正または負の極性を示す着色粒子であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、顔料粒子が用いられる。あるいは、染料で着色したポリマー粒子や顔料を含有させたポリマー粒子を用いてもよい。これらの固体粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの固体粒子のうち、顔料粒子が好適である。なお、電気泳動粒子として、分散液中で電気泳動性を有しない固体粒子を用いる場合には、従来公知の方法で電気泳動性を付与すればよい。あるいは、分散液中で電気泳動性を有する固体粒子と電気泳動性を有しない固体粒子とを併用してもよい。
【0027】
電気泳動粒子に用いる顔料粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、白色系では、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、亜鉛華などの無機顔料;黄色系では、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、クロムイエロー、黄鉛などの無機顔料や、ファーストイエローなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルイエローなどの縮合アゾ化合物類、ベンズイミダゾロンアゾイエローなどのアゾ錯塩類、フラバンスイエローなどの縮合多環類、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、ニトロ化合物、ピグメントイエローなどの有機顔料;橙色系では、モリブデートオレンジなどの無機顔料や、ベンズイミダゾロンアゾオレンジなどのアゾ錯塩類、ベリノンオレンジなどの縮合多環類などの有機顔料;赤色系では、ベンガラ、カドミウムレッドなどの無機顔料や、マダレーキなどの染色レーキ類、レーキレッドなどの溶解性アゾ化合物類、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルスカーレッドなどの縮合アゾ化合物類、チオインジゴボルドーなどの縮合多環類、シンカシヤレッドY、ホスタパームレッドなどのキナクリドン顔料、パーマネントレッド、ファーストスローレッドなどのアゾ系顔料などの有機顔料;紫色系では、マンガンバイオレットなどの無機顔料や、ローダミンレーキなどの染色レーキ類、ジオキサジンバイオレットなどの縮合多環類などの有機顔料;青色系では、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの無機顔料や、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン類、インダンスレンブルーなどのインダンスレン類、アルカリブルーなどの有機顔料;緑色系では、エメラルドグリーン、クロームグリーン、酸化クロム、ビリジアンなどの無機顔料や、ニッケルアゾイエローなどのアゾ錯塩類、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのニトロソ化合物類、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン類などの有機顔料;黒色系では、カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒などの無機顔料や、アニリンブラックなどの有機顔料;などで構成される粒子が挙げられる。これらの顔料粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの顔料粒子のうち、酸化チタンなどの白色系の顔料粒子や、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色系の顔料粒子が好適である。
【0028】
なお、酸化チタンの微粒子を用いる場合、その種類は、特に限定されるものではなく、一般に白色系の顔料として用いられるものであれば、例えば、ルチル型またはアナターゼ型のいずれでもよいが、酸化チタンの光触媒活性による着色剤の退色などを考えた場合、光触媒活性の低いルチル型であることが好ましく、さらに、光触媒活性を低減させるために、Si処理、Al処理、Si−Al処理、Zr−Al処理などを施した酸化チタンであれば、より好ましい。
【0029】
電気泳動粒子にポリマー粒子を用いる場合、その構成ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、ポリハロゲン化オレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、メラミン系ポリマー、尿素系ポリマーなどが挙げられる。なお、「ポリマー」とは、ホモポリマーだけでなく、少量の共重合可能な他のモノマーを共重合させたコポリマーを含むものとする。これらのポリマー粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのポリマー粒子を着色する染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶媒を着色する染料として列挙した下記のような染料が挙げられる。また、これらのポリマー粒子に含有させる顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、電気泳動粒子に用いる顔料として列挙した上記のような顔料が挙げられる。
【0030】
本発明の分散液中における電気泳動粒子の添加量は、分散液100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。電気泳動粒子の添加量が少なすぎると、充分な色度が得られず、電気泳動表示装置に用いた場合、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の添加量が多すぎると、分散液の粘度が高くなり、分散処理が困難になることや、電気泳動表示装置に用いた場合、データ表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の凝集が生じて、コントラストが低下したり、電気泳動粒子の応答時間(表示応答性)が低下したりすることがある。
【0031】
電気泳動粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。電気泳動粒子の粒子径が小さすぎると、充分な色度が得られず、電気泳動表示装置に用いた場合、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の粒子径が大きすぎると、粒子自体の着色度を必要以上に高くする必要があり、顔料などの使用量が増大することや、電気泳動表示装置に用いた場合、データ表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答時間(表示応答性)が低下することがある。なお、電気泳動粒子の粒子径とは、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名「LB−500」)を用いて測定した体積平均粒子径を意味する。
【0032】
電気泳動粒子は、溶媒にそのまま分散させてもよいが、その表面にカップリング剤を反応させたり、その表面をポリマーグラフト処理したり、その表面をポリマーで被覆したりしてから分散させてもよい。このような表面処理を行う場合、電気泳動粒子は、カップリング剤またはポリマーで表面処理された顔料粒子であることが好ましい。なお、本発明では、このように表面処理された電気泳動粒子を単に電気泳動粒子と呼ぶことがある。
【0033】
<溶媒>
本発明の分散液に用いる溶媒としては、従来から一般的に電気泳動表示装置用分散液に用いられている溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、より詳しくは、実質的に水に不溶性(疎水性)であり、マイクロカプセルの殻体とその機能を阻害する程度に相互作用しないものであればよく、例えば、高絶縁性の有機溶媒が好適である。
【0034】
高絶縁性の有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカンなどのパラフィン系炭化水素、アイソパー(登録商標)シリーズ(エクソン化学株式会社製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、沸点および引火点が高く、毒性もほとんどないことから、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼンなどの長鎖アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタン、アイソパー(登録商標)シリーズ(エクソン化学株式会社製)、ジメチルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類が好適である。特に、酸化チタンやチタンブラック(比重が約4)などの電気泳動粒子に対して、アイソパー(登録商標)シリーズ(エクソン化学株式会社製)(比重が約0.8)やシリコーンオイル類(比重が約0.9)などの溶媒を組み合わせた場合のように、電気泳動粒子と溶媒との比重差が大きいほど、本発明の効果がより発揮される。
【0035】
一般に、電気泳動表示には、分散液中の溶媒の色と電気泳動粒子の色とのコントラストで表示する方法と、分散液中の少なくとも2種類の電気泳動粒子の互いの色のコントラストで表示する方法とがある。
【0036】
溶媒を着色する場合には、電気泳動粒子の色(例えば、酸化チタンの微粒子であれば白色)に対して、充分なコントラストが得られる程度に着色することが好ましい。
【0037】
溶媒を着色する場合、着色に用いられる染料としては、特に限定されるものではないが、油溶性染料が好適であり、使いやすさの観点から、アゾ染料およびアントラキノン染料などが特に好適である。具体的には、黄色系染料として、オイルイエロー3G(オリエント化学工業株式会社製)などのアゾ化合物類;橙色系染料として、ファーストオレンジG(バスフ・アクチエンゲゼルシャフト製)などのアゾ化合物類;青色系染料として、マクロレックスブルーRR(バイエル・アクチエンゲゼルシャフト製)などのアントラキノン類;緑色系染料として、スミプラスト(登録商標)グリーンG(住友化学株式会社製)などのアントラキノン類;茶色系染料として、オイルブラウンGR(オリエント化学工業株式会社製)などのアゾ化合物類;赤色系染料として、オイルレッド5303(有本化学工業株式会社製)およびオイルレッド5B(オリエント化学工業株式会社製)などのアゾ化合物類;紫色系染料として、オイルバイオレット#730(オリエント化学工業株式会社製)などのアントラキノン類;黒色系染料として、スーダンブラックX60(バスフ・アクチエンゲゼルシャフト製)などのアゾ化合物や、アントラキノン系のマクロレックスブルーFR(バイエル・アクチエンゲゼルシャフト製)とアゾ系のオイルレッドXO(関東化学株式会社製)との混合物が挙げられる。これらの染料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の分散液には、溶媒、電気泳動粒子および微粒子以外に、必要に応じて、染料、分散剤、電荷制御剤、粘度調整剤などを添加してもよい。これらの添加量は、電気泳動粒子および微粒子の機能を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、10質量%を上限として、適宜設定すればよい。
【0039】
<電気泳動表示装置用分散液の物性>
本発明の分散液の粘度は、特に限定されるものではないが、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下、最も好ましくは10mPa・s以下である。分散液の粘度が高すぎると、電気泳動表示装置に用いた場合、データ表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の凝集が生じて、コントラストが低下したり、電気泳動粒子の応答時間(表示応答性)が低下したりすることがある。分散液の粘度の下限は、特に限定されるものではないが、0.1mPa・s程度である。なお、分散液の粘度とは、例えば、B型粘度計(例えば、株式会社トキメック製、商品名「BM−HM型」)を用いて、温度25℃で測定した値である。また、分散液の粘度を測定する前には、分散液に対して充分な超音波分散を行った後、直ちに粘度測定を行う方が好ましい。粘度の値の振れが少ない測定を行うことができるからである。
【0040】
本発明の分散液の動粘度は、特に限定されるものではないが、好ましくは100mm/sec以下、より好ましくは50mm/sec以下、さらに好ましくは20mm/sec以下、最も好ましくは10mm/sec以下である。分散液の動粘度が高すぎると、電気泳動表示装置に用いた場合、データ表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、電気泳動粒子の応答時間(表示応答性)が低下することがある。分散液の動粘度の下限は、特に限定されるものではないが、0.1mm/sec程度である。なお、分散液の動粘度とは、例えば、自動マイクロ粘度計(例えば、アントン・パール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフトゥンク製、商品名「AMVn」)を用いて、温度20℃、傾斜角60°で測定した値である。
【0041】
≪電気泳動表示装置用マイクロカプセル≫
本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルは、本発明の電気泳動表示装置用分散液が殻体に内包されていることを特徴とする。
【0042】
さらに詳しくは、本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルは、ある態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液が殻体に内包されている電気泳動表示装置用マイクロカプセルであって、該殻体がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有することを特徴とする。このような電気泳動表示装置用マイクロカプセルにおいて、前記外殻は、好ましくは、メラミン架橋されたエポキシ樹脂で構成される。
【0043】
また、本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルは、別の態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液が殻体に内包されている電気泳動表示装置用マイクロカプセルであって、カプセル強度が0.6MPa以上であることを特徴とする。このような電気泳動表示装置用マイクロカプセルにおいて、前記殻体は、好ましくは、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有し、また、前記外殻は、より好ましくは、メラミン架橋されたエポキシ樹脂で構成される。
【0044】
なお、以下では、これらの電気泳動表示装置用マイクロカプセルを区別することなく、「本発明のマイクロカプセル」または単に「マイクロカプセル」ということがある。
【0045】
以下、本発明のマイクロカプセルについて詳しく説明するが、本発明のマイクロカプセルは下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0046】
<マイクロカプセルの形状>
本発明のマイクロカプセルは、球状、円柱状、直方体状などの様々な形状をとることができるが、マイクロカプセルの強度や、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有する電気泳動表示装置用塗工液組成物の塗工性を考慮すると、球状が好適である。
【0047】
本発明のマイクロカプセルのアスペクト比(縦/横)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。マイクロカプセルのアスペクト比が約1.0であると、マイクロカプセルが真球に近くなるので、最も好ましい。マイクロカプセルのアスペクト比が小さすぎるか、あるいは、大きすぎると、マイクロカプセルの強度が低下したり、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有する電気泳動表示装置用塗工液組成物の塗工性が低下したりすることがある。
【0048】
<マイクロカプセルの物性>
本発明のマイクロカプセルのカプセル強度は、通常は0.6MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上である。マイクロカプセルのカプセル強度の上限は、特に限定されるものではないが、カプセル強度が非常に高いと、マイクロカプセルの柔軟性が低下し、電気泳動表示装置用シートを作製する際に、マイクロカプセルと隣接するマイクロカプセルとの間に空隙ができるので、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示性能が低下することがある。それゆえ、マイクロカプセルのカプセル強度の上限は、例えば、50MPa程度である。なお、マイクロカプセルのカプセル強度とは、微小圧縮試験機(例えば、株式会社島津製作所製、商品名「MCT−W500」)を用いて測定したマイクロカプセルの圧縮強度を意味する。
【0049】
本発明のマイクロカプセルは、電気泳動表示装置に用いた場合に、下記の実施例で説明する鋼球落下試験において、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上、さらに好ましくは30cm以上の高さから鋼球を落下させても、鋼球落下部のマイクロカプセルが潰れることがない。一般に、マイクロカプセルが、鋼球落下試験において、上記の高さよりも低い高さから鋼球を落下させると、鋼球落下部のマイクロカプセルが潰れるようなカプセル強度しか有しない場合、このようなマイクロカプセルを用いた電気泳動表示装置をデータ表示手段として備えた電子機器を使用中に、例えば、手を滑らせて電子機器を落下させると、落下の衝撃でマイクロカプセルが潰れてしまい、電気泳動表示装置のデータ表示部にデータ表示ができない部分が生じるので、好ましくない。
【0050】
本発明のマイクロカプセルは、ある程度の柔軟性を有しており、その形状は、外部圧力により変化するので、特に限定されるものではないが、外部圧力がない場合には、真球状などの粒子状であることが好ましい。
【0051】
本発明のマイクロカプセルの粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、また、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。マイクロカプセルの粒子径が小さすぎると、電気泳動表示装置に用いた場合に、データ表示部分で充分な表示濃度が得られないことがある。逆に、マイクロカプセルの粒子径が大きすぎると、マイクロカプセルのカプセル強度が低下したり、電気泳動表示装置に用いた場合に、マイクロカプセルに封入した分散液中における電気泳動粒子の電気泳動特性が充分に発揮されず、データ表示のための駆動電圧も高くなったりすることがある。なお、マイクロカプセルの粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名「LA−910」)を用いて測定した体積平均粒子径を意味する。
【0052】
本発明のマイクロカプセルの粒子径の変動係数(すなわち、粒度分布の狭さ)は、特に限定されるものではないが、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。マイクロカプセルの粒子径の変動係数が大きすぎると、有効な粒子径を有するマイクロカプセルが少なく、多数のマイクロカプセルを用いる必要が生じることがある。
【0053】
なお、本発明のマイクロカプセルの粒子径やその変動係数は、マイクロカプセルを製造する際に水系媒体に分散させた分散液の粒子径や粒度分布に大きく依存する。それゆえ、分散液の分散条件を適宜調整することにより、所望の粒子径やその変動係数を有するマイクロカプセルを得ることができる。
【0054】
<マイクロカプセルの殻体>
本発明のマイクロカプセルは、ある態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂から構成される内殻とエポキシ樹脂から構成される外殻とを有する殻体に内包されている。一般に、内殻を構成するアミノ樹脂は不浸透性が高く、外殻を構成するエポキシ樹脂は耐薬品性や機械的性質に優れている。しかも、内殻を構成するアミノ樹脂と外殻を構成するエポキシ樹脂とは、メルカプト基を介して互いに強固に結合しているので、カプセル強度が向上している。それゆえ、このようなマイクロカプセルは、分散液の滲出が起こりにくく、電気泳動表示装置を作製する際に印加されるラミネート圧力により破壊されることもない。従って、電気泳動表示装置に用いた場合に、高いコントラストを示すと共に、高温高湿条件下に長時間(例えば、60℃、90%RHで24時間)放置した場合であっても、低いリーク電流値を示す。また、例えば、バインダー樹脂と混合された形態、すなわち電気泳動表示装置用塗工液組成物や電気泳動表示装置用シートの形態でも、長期間にわたり安定に室温保存することができる。
【0055】
上記のようなマイクロカプセルにおいて、内殻はメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成されている。内殻は、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより形成することができる。なお、内殻を構成するアミノ樹脂がメルカプト基を有することは、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により分析することができる。
【0056】
上記のようなマイクロカプセルにおいて、外殻はエポキシ樹脂で構成されている。外殻は、内殻に分散液が内包されたマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより形成することができる。なお、外殻を形成する際に、エポキシ基を有する化合物に架橋剤を反応させるか、および/または、エポキシ基を有する化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加すれば、外殻の強度や不浸透性が向上し、マイクロカプセルがより高い性能を有するようになるので、好ましい。
【0057】
本発明によるマイクロカプセルの製造方法において、別の態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に、分散剤として、ガラクトース単位およびアラビノース単位を合計して10質量%以上含有する多糖類を用いて、分散させた後、該芯物質の表面に殻体を形成する。この場合、マイクロカプセルの殻体は、最も内側の壁層が、マイクロカプセルの作製に用いた多糖類の還元糖部分(具体的には、アルデヒド基やケトン基を有する単糖部分)が開始点となる反応により形成される樹脂状反応生成物で構成される限り、特に限定されるものではないが、具体的には、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される壁層および/またはエポキシ樹脂で構成される壁層を有する殻体であればよく、例えば、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される壁層を有する単層の殻体、エポキシ樹脂で構成される壁層を有する単層の殻体、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する2層の殻体、エポキシ樹脂で構成される内殻とメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される外殻とを有する2層の殻体、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される第1壁層とエポキシ樹脂で構成される第2壁層と第2壁層の外側に少なくとも1層の第3以降の壁層とを有する多層の殻体などが挙げられる。これらの殻体は、いずれも充分なカプセル強度を示すが、これらの殻体のうち、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する2層の殻体が特に好適である。
【0058】
上記のように、分散剤として、ガラクトースやアラビノースなどの水溶性単糖類が結合したポリマー構造を有する特定の多糖類を用いた場合、かかる多糖類の還元糖部分(具体的には、アルデヒド基やケトン基を有する単糖部分)が殻体を形成する反応の開始点となり、また、かかる多糖類は、このような開始点を多く有することから、殻体が緻密な構造を有するようになり、カプセル強度や溶剤耐性が向上することになる。
【0059】
なお、多層の殻体において、第3以降の壁層は、例えば、コアセルベーション法、In−situ重合法、界面重合法などの従来公知の方法により、従来公知のマイクロカプセルにおけるカプセル殻体と同様の材料を用いて形成することができる。第3以降の壁層を形成する材料としては、第3以降の壁層をコアセルベーション法で製造する場合は、例えば、ゼラチンなどの等電点を有する化合物やポリエチレンイミンなどのカチオン性化合物と、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、デンプンのフタル酸エステル、ポリアクリル酸などのアニオン性化合物との組合せが好適である。また、第3以降の壁層をIn−situ重合法で製造する場合は、例えば、メラミン−ホルマリン樹脂(メラミン−ホルマリンプレポリマー)、ラジカル重合性モノマーなどが好適である。さらに、第3以降の壁層を界面重合法で製造する場合は、例えば、ポリアミン、グリコール、多価フェノールなどの親水性モノマーと、多塩基酸ハライド、多価イソシアナートなどの疎水性モノマーとの組合せが好適であり、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素などで構成される壁層が形成される。
【0060】
本発明のマイクロカプセルの殻体の厚さ(殻体が多層である場合は、全ての壁層の合計厚さ、例えば、殻体が2層である場合は、内殻と外殻との合計厚さ)は、湿潤状態で、好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。マイクロカプセルの殻体の厚さが小さすぎると、充分なカプセル強度が得られないことがある。逆に、マイクロカプセルの殻体の厚さが大きすぎると、透明性が低下するので、電気泳動表示装置に用いた場合に、コントラスト低下の原因となることや、マイクロカプセルの柔軟性が低下するので、電気泳動表示装置用シートを作製する場合に、電極フィルムなどへの密着性が不充分になることがある。なお、マイクロカプセルの殻体の厚さは、例えば、マイクロカプセルを壊して、壊れた箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、得られた写真から殻体の厚さを求めるのが簡便である。
【0061】
≪電気泳動表示装置用マイクロカプセルの製造方法≫
本発明による電気泳動表示装置用マイクロカプセルの製造方法は、ある態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより、該芯物質の表面にメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻を形成し、次いで、該芯物質が該内殻に内包されているマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより、該内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻を形成することを特徴とする。このような製造方法において、好ましくは、前記外殻を形成する際に、エポキシ基を有する化合物に架橋剤を反応させるか、および/または、エポキシ基を有する化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加する。
【0062】
本発明による電気泳動表示装置用マイクロカプセルの製造方法は、別の態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に、ガラクトース単位およびアラビノース単位を合計して10質量%以上含有する多糖類を用いて、分散させた後、該芯物質の表面に殻体を形成することを特徴とする。
【0063】
なお、以下では、これらの製造方法を区別することなく、「本発明の製造方法」ということがある。
【0064】
以下、本発明の製造方法を、マイクロカプセルの殻体が特に好適なメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する2層の殻体である場合について、各工程に従って詳しく説明するが、本発明の製造方法は下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0065】
<芯物質の分散>
まず、本発明の電気泳動表示装置用分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させる。水系媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、または、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。水と親水性有機溶媒とを併用する場合、水の使用量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下である。
【0066】
親水性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0067】
水系媒体は、水や親水性有機溶媒以外に、さらに他の溶媒を併用してもよい。他の溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、石油エーテル、テルペン、ヒマシ油、大豆油、パラフィン、ケロシンなどが挙げられる。これらの他の溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。水や親水性有機溶媒以外に、他の溶媒を併用する場合、その使用量は、特に限定されるものではないが、水と親水性有機溶媒とを含む水系媒体100質量%に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0068】
芯物質を水系媒体に分散させる量としては、特に限定されるものではないが、水系媒体100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。芯物質の分散量が少なすぎると、芯物質の濃度が低いので、カプセル殻体の形成に長時間を必要とし、目的のマイクロカプセルが調製できないことや、粒径分布が広いマイクロカプセルとなり、生産効率が低下することがある。逆に、芯物質の分散量が多すぎると、芯物質が凝集することや、芯物質中に水系媒体が懸濁してしまい、マイクロカプセルが製造できなくなることがある。
【0069】
芯物質を水系媒体中に分散させる際には、必要に応じて、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、アラビアゴム、大豆多糖類、ガティガムなどの多糖類)、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤)などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの分散剤の添加量は、内殻の形成を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。
【0070】
本発明の製造方法において、別の態様では、本発明の電気泳動表示装置用分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に、分散剤として、ガラクトース単位およびアラビノース単位を合計して10質量%以上含有する多糖類を用いて、分散させる。
【0071】
分散剤として用いる多糖類は、ガラクトース単位およびアラビノース単位の合計含有量が通常は10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。なお、多糖類におけるガラクトース単位およびアラビノース単位の合計含有量は、多糖類を加水分解した後、加水分解物について、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)により分析することができる。
【0072】
上記のような多糖類としては、例えば、不二製油株式会社製の商品名「ソヤファイブ(登録商標)Sシリーズ」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の商品名「SMシリーズ」などの大豆多糖類;三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の商品名「ガティガムSD」などのガティガム;などが挙げられる。これらの多糖類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの多糖類のうち、大豆多糖類および/またはガティガムが特に好適である。
【0073】
本発明に用いる多糖類の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。多糖類の数平均分子量が小さすぎると、マイクロカプセルの溶剤耐性が低下することがある。逆に、多糖類の数平均分子量が大きすぎると、多糖類水溶液の粘度が高くなりすぎて、内殻の形成を阻害することがある。なお、多糖類の数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;例えば、標準ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0074】
芯物質を水系媒体に分散させる際における多糖類水溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、多糖類水溶液100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、最も好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、最も好ましくは35質量%以下である。多糖類水溶液の濃度が低すぎると、芯物質を安定に分散させる効果が得られないことがある。逆に、多糖類水溶液の濃度が高すぎると、多糖類水溶液の粘度が高くなりすぎて、内殻の形成を阻害することがある。
【0075】
上記のような特定の多糖類を分散剤として用いる場合には、必要に応じて、他の分散剤を併用してもよい。他の分散剤としては、特に限定されるものではないが、芯物質を水系媒体中に分散させる際に、必要に応じて、用いることができる分散剤として列挙した上記のような分散剤が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの分散剤の添加量は、内殻の形成を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。
【0076】
<初期縮合物の調製>
次いで、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下「アミノ化合物」ということがある。)とホルムアルデヒドとを反応させて初期縮合物を用意する。
【0077】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物は、いわゆるアミノ樹脂(すなわち、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂)の前駆体となる化合物である。特定の初期縮合物を用いることにより、アミノ樹脂で構成される内殻を形成できるが、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物を存在させることにより、初期縮合物から得られるアミノ樹脂にメルカプト基を導入することができる。
【0078】
初期縮合物については、(1)尿素およびチオ尿素(以下「尿素化合物」ということがある。)のうち少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、尿素樹脂を与える初期縮合物となり、(2)メラミンとホルムアルデヒドとを反応させる場合は、メラミン樹脂を与える初期縮合物となり、(3)ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミン(以下「グアナミン化合物」ということがある。)のうち少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、グアナミン樹脂を与える初期縮合物となる。また、(4)尿素化合物、メラミンおよびグアナミン化合物のうち少なくとも2種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、尿素樹脂、メラミン樹脂およびグアナミン樹脂のうち少なくとも2種が混在する樹脂を与える初期縮合物となる。これらの初期縮合物(1)〜(4)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0079】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応は、一般に、溶媒として水が用いられる。それゆえ、反応形態としては、例えば、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドに水を添加してホルムアルデヒド水溶液を調製し、得られたホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法などが挙げられる。ホルムアルデヒド水溶液を調製する必要がないこと、ホルムアルデヒド水溶液の入手が容易であることなど、経済性の観点から、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法が好ましい。また、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合する場合、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を添加しても、アミノ化合物にホルムアルデヒド水溶液を添加してもよい。なお、縮合反応は、例えば、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0080】
アミノ化合物としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンが好ましく、メラミン、メラミンと尿素との組合せ、メラミンとベンゾグアナミンとの組合せがより好ましい。
【0081】
アミノ化合物としては、上記のようなアミノ化合物以外に、さらに他のアミノ化合物を用いてもよい。他のアミノ化合物としては、例えば、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素、アセチレン尿素などが挙げられる。これらの他のアミノ化合物を用いる場合は、これらの他のアミノ化合物を含めて、初期縮合物の原料となるアミノ化合物として扱うものとする。
【0082】
初期縮合物を得る反応において、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの添加量は、特に限定されるものではないが、アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比で、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/8以上、さらに好ましくは1/6以上であり、また、好ましくは1/0.5以下、より好ましくは1/1以下である。アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比が小さすぎると、未反応のホルムアルデヒドが多くなり、反応効率が低下することがある。逆に、アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比が大きすぎると、未反応のアミノ化合物が多くなり、反応効率が低下することがある。なお、水を溶媒として反応を行う場合、溶媒に対するアミノ化合物およびホルムアルデヒドの添加量、すなわち仕込み時点におけるアミノ化合物およびホルムアルデヒドの濃度は、反応に特に支障がない限り、より高濃度であることが望ましい。
【0083】
初期縮合物を得る反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上であり、また、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。反応終点が認められた時点で、反応液を常温(例えば、25〜30℃)に冷却するなどの操作により、反応を終了させればよい。これにより、初期縮合物を含む反応液が得られる。なお、反応時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
【0084】
<内殻の形成>
次いで、芯物質を分散させた水系媒体中で、初期縮合物を用いて、メルカプト基(−SH)とカルボキシ基(−COOH)またはスルホ基(−SOH)とを有する化合物(以下「チオール化合物」ということがある。)の存在下で縮合反応を行うことにより、該芯物質の表面にメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻を形成する。この操作により、本発明の電気泳動表示装置用分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻に内包されたマイクロカプセルが得られる。
【0085】
初期縮合物の添加量は、特に限定されるものではないが、芯物質1質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。初期縮合物の添加量を調整することにより、内殻の厚さを容易に制御することができる。初期縮合物の添加量が少なすぎると、充分な量の内殻が形成できないことや、内殻の厚さが小さくなるので、内殻の強度および不浸透性が低下することがある。逆に、初期縮合物の添加量が多すぎると、内殻の厚さが大きくなるので、柔軟性および透明性が低下することがある。
【0086】
初期縮合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではなく、一括添加または逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。なお、初期縮合物の添加は、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0087】
縮合反応の際に用いるチオール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、システイン(2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらのチオール化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのチオール化合物のうち、入手が容易であることなど、経済性の観点から、L−システインが好ましい。
【0088】
チオール化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、初期縮合物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。チオール化合物の添加量が少なすぎると、アミノ樹脂に導入されるメルカプト基が少なすぎるので、外殻を構成するエポキシ樹脂と強固な結合を形成できないことがある。逆に、チオール化合物の添加量が多すぎると、内殻の強度や不浸透性が低下することがある。
【0089】
チオール化合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質を分散させた水系媒体に初期縮合物を添加した後、充分に攪拌してから、チオール化合物を水溶液の形態で滴下することが好ましい。なお、縮合反応は、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0090】
本発明の製造方法においては、芯物質を分散させた水系媒体中、チオール化合物の存在下で、初期縮合物を縮合反応させることにより、芯物質の表面に内殻を形成させるようにする。具体的には、初期縮合物のアミノ基とチオール化合物のカルボキシ基またはスルホ基とを反応させながら、初期縮合物の縮合反応を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂を芯物質の表面に沈積させて内殻とする。
【0091】
縮合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。縮合反応を行う際の反応温度が低すぎると、縮合反応が遅く、内殻が充分に形成されないことがある。逆に、縮合反応を行う際の反応温度が高すぎると、内殻の形成が阻害されることがある。反応時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量や縮合反応を行う際の反応温度に応じて、適宜設定することができるが、通常は、数分間から数十時間の範囲内である。一般に、縮合反応を行う際の反応温度が低い場合は、反応時間を長くし、逆に、縮合反応を行う際の反応温度が高い場合は、反応時間を短くすればよい。
【0092】
縮合反応を行った後、熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、縮合反応を行う際の反応温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下である。
【0093】
本発明者らは、縮合反応を行う際の温度および時間、その後の熟成時の温度および熟成時間を適宜調整することにより、マイクロカプセルのカプセル強度が向上することを見出した。マイクロカプセルのカプセル強度を向上させるには、初期縮合物の縮合反応を行う際の反応温度を上記範囲内で高く設定するか、および/または、熟成時の温度を反応温度より高く設定するか、および/または、熟成時間を上記範囲内で長く設定すればよい。
【0094】
内殻を形成した後、得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、従来公知の方法、例えば、吸引濾過や自然濾過などの方法により、水系媒体から分離してもよいが、内殻を構成するアミノ樹脂は、非常に脆く、弱い衝撃や圧力によっても、破壊されたり、損傷を受けたりすることがあるので、水系媒体から分離することなく、次の工程に付すことが好ましい。
【0095】
<マイクロカプセルの分級および洗浄>
内殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品品質を向上させるために、洗浄することが好ましい。
【0096】
マイクロカプセルの分級は、水系媒体中にマイクロカプセルを含む分散液に対して、そのままで、あるいは、任意の水系媒体などで希釈した後、従来公知の方式、例えば、ふるい式、フィルター式、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いて、マイクロカプセルが所望の粒子径や粒度分布を有するように行えばよい。なお、比較的粒子径が大きいマイクロカプセルに対しては、ふるい式が有効である。
【0097】
マイクロカプセルの洗浄は、水系媒体中にマイクロカプセルを含む分散液に対して、そのままで、あるいは、任意の水系媒体などで希釈した後、従来公知の方式、例えば、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いて、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄して沈降物を回収し、任意の水系媒体などに再分散するという操作を繰り返せばよい。なお、比較的粒子径が大きいマイクロカプセルに対しては、マイクロカプセルの破壊や損傷を防止するために、自然沈降式を採用することが好ましい。
【0098】
<外殻の形成>
次いで、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物(以下「エポキシ化合物」ということがある。)を添加することにより、該内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻を形成する。この操作により、本発明の電気泳動表示装置用分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する殻体に内包されたマイクロカプセルが得られる。
【0099】
芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させる水系媒体としては、例えば、内殻を形成する際に芯物質を分散させる水系媒体として列挙した上記のような水系媒体が挙げられる。なお、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルは、水系媒体中における分散液の形態で得られるので、マイクロカプセルを水系媒体から分離し、改めて水系媒体に再分散するのではなく、水系媒体中における分散液を、そのまま、あるいは、濃縮または希釈した後、外殻を形成する工程に付してもよい。
【0100】
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する水溶性のエポキシ化合物が好ましく、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0101】
エポキシ化合物の質量平均分子量は、好ましくは300以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。エポキシ化合物の質量平均分子量が小さすぎると、充分な強度を有する外殻が得られないことがある。逆に、エポキシ化合物の質量平均分子量が大きすぎると、反応系の粘度が高くなり、攪拌が困難となることがある。
【0102】
エポキシ化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセル1質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。エポキシ化合物の添加量を調整することにより、外殻の厚さを容易に制御することができる。エポキシ化合物の添加量が少なすぎると、充分な量の外殻が形成できないことや、外殻の厚さが小さくなるので、外殻の強度が低下することがある。逆に、エポキシ化合物の添加量が多すぎると、外殻の厚さが大きくなるので、柔軟性および透明性が低下することがある。
【0103】
エポキシ化合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではなく、一括添加または逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。例えば、水系媒体に芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた後、攪拌しながら、エポキシ化合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。
【0104】
エポキシ樹脂で構成される外殻を形成する際には、エポキシ化合物に架橋剤を反応させることができる。架橋剤を反応させることにより、外殻の強度、ひいては殻体の強度が向上するので、その後にマイクロカプセルを分離したり洗浄したりする際に殻体が破壊または損傷することを効果的に抑制することができる。
【0105】
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物を含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物を含む)、ジチオシュウ酸およびジチオ炭酸などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0106】
架橋剤の添加量は、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。架橋剤の添加量が少なすぎると、外殻の強度を充分に高めることができないことがある。逆に、架橋剤の添加量が多すぎると、多量の架橋剤がエポキシ化合物のエポキシ基と過剰に反応するので、外殻の柔軟性が低下することがある。
【0107】
架橋剤の水系媒体への添加方法は、エポキシ化合物と共に添加しても、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた水系媒体にエポキシ化合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、攪拌しながら、架橋剤を水溶液の形態で滴下することが好ましい。
【0108】
エポキシ樹脂で構成される外殻を形成する際には、エポキシ化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加することができる。エポキシ・メラミン縮合物を添加することにより、外殻の不浸透性、ひいては殻体の不浸透性が向上するので、マイクロカプセルがより高い性能を有するようになる。
【0109】
エポキシ・メラミン縮合物は、エポキシ化合物とメラミンとホルムアルデヒドとから、従来公知の方法により製造された初期縮合物であればよく、特に限定されるものではないが、さらに、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種を反応させることができる。エポキシ・メラミン縮合物の好ましい具体例としては、例えば、エポキシ化合物と尿素とを反応させて得られた化合物を、さらにメラミン、尿素およびホルムアルデヒドを反応させて得られた初期縮合物と反応させることにより製造された縮合物である。
【0110】
エポキシ・メラミン縮合物の添加量は、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物1質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。エポキシ・メラミン縮合物の添加量が多すぎると、外殻が脆くなり、外殻の強度が低下することがある。
【0111】
エポキシ・メラミン縮合物の水系媒体への添加方法は、エポキシ化合物と共に添加しても、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた水系媒体にエポキシ化合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、エポキシ・メラミン縮合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。架橋剤を反応させる場合、架橋剤は、エポキシ・メラミン架橋剤を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、水溶液の形態で滴下することが好ましい。
【0112】
外殻を形成させる際の温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。外殻を形成させる際の温度が低すぎると、エポキシ化合物の反応が遅く、外殻が充分に形成されないことがある。逆に、外殻を形成させる際の温度が高すぎると、外殻の形成が阻害されることがある。外殻を形成させる際の時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量や外殻を形成させる際の温度に応じて、適宜設定することができるが、通常は、数分間から数十時間の範囲内である。一般に、外殻を形成させる際の温度が低い場合は、外殻を形成させる際の時間を長くし、逆に、外殻を形成させる際の温度が高い場合は、外殻を形成させる際の時間を短くすればよい。
【0113】
外殻を形成した後、熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、外殻を形成させる際の温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下である。
【0114】
本発明者らは、外殻を形成させる際の温度および時間、その後の熟成時の温度および熟成時間を適宜調整することにより、マイクロカプセルのカプセル強度が向上することを見出した。マイクロカプセルのカプセル強度を向上させるには、外殻を形成させる際の温度を上記範囲内で高く設定するか、および/または、熟成時の温度を、外殻を形成させる際の温度より高く設定するか、および/または、熟成時間を上記範囲内で長く設定すればよい。
【0115】
外殻を形成した後、得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、従来公知の方法、例えば、吸引濾過や自然濾過などの方法により、水系媒体から分離してもよいが、マイクロカプセルを乾燥状態にすると、芯物質のうち溶媒が滲出して蒸発することにより、マイクロカプセルが変形することがあるので、水系媒体から分離することなく、次の工程に付すことが好ましい。
【0116】
外殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品品質を向上させるために、洗浄することが好ましい。
【0117】
マイクロカプセルの分級および洗浄は、内殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルの場合と同様に行えばよいので、ここでは説明を省略する。
【0118】
<マイクロカプセルの使用および保存>
本発明の製造方法において、マイクロカプセルは、最終的には、水系媒体中における分散液の形態で得られる。得られたマイクロカプセルは、電気泳動表示装置用マイクロカプセルであるので、電気泳動表示装置の製造に用いられる。電気泳動表示装置を製造するには、まず、電気泳動表示装置用シートを作製する。この場合、マイクロカプセルは、バインダー樹脂と混合して電気泳動表示装置用塗工液組成物の形態に調製される。マイクロカプセルは、水系媒体から分離して用いてもよいが、従来公知の濾過装置を用いて、分散液を濾過し、水系媒体の含有率が好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上であり、また、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である濾過ケーキの形態で用いることが好ましい。電気泳動表示装置用塗工液組成物、電気泳動表示装置用シートおよびその製造方法については、以下で詳しく説明する。
【0119】
なお、得られたマイクロカプセルを保存する場合には、マイクロカプセルとバインダー樹脂との混合物である電気泳動表示装置用塗工液組成物の形態および/または電気泳動表示装置用塗工液組成物を導電性フィルム(例えば、ITO付きPETフィルム)に塗工して得られる電気泳動表示装置用シートの形態で保存することが好ましい。
【0120】
≪電気泳動表示装置用塗工液組成物≫
本発明の電気泳動表示装置用塗工液組成物(以下「本発明の塗工液組成物」または単に「塗工液組成物」ということがある。)は、本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有することを特徴とする。
【0121】
本発明の塗工液組成物には、本発明のマイクロカプセルおよびバインダー樹脂以外に、必要に応じて、その他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などが挙げられる。その他の成分の添加量は、本発明の効果が損なわれない範囲内で適宜設定することができる。
【0122】
本発明の塗工液組成物は、本発明のマイクロカプセルと、必要に応じて、他の成分とをバインダー樹脂と充分に混合し、必要に応じて、脱泡することにより、調製することができる。塗工液組成物の調製に際しては、例えば、自転・公転ミキサー(例えば、株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)AR−100」)を用いて、脱泡しながら攪拌することが好ましい。
【0123】
<電気泳動表示装置用マイクロカプセル>
本発明の塗工液組成物に含有されるマイクロカプセルは、上記で詳しく説明した本発明のマイクロカプセルであるので、ここでは説明を省略する。
【0124】
本発明の塗工液組成物中におけるマイクロカプセルの濃度は、特に限定されるものではないが、塗工液組成物100質量%に対して、好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。マイクロカプセルの濃度が低すぎるか、あるいは、高すぎると、マイクロカプセルが基材上に一層で緻密に配置された表示シートを得ることができず、このような表示シートを電気泳動表示装置に用いた場合に、優れた製品品質(表示品質)が発揮できないことがある。
【0125】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、有機バインダー樹脂が用いられる。有機バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂などの合成樹脂バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどの天然または合成ゴムバインダー;セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラックなどの天然樹脂バインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性高分子バインダー;などを挙げることができる。なお、合成樹脂バインダーは、可塑性(熱可塑性)のバインダーであっても、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系などの硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性など)のバインダーであってもよい。これらの有機バインダー樹脂は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0126】
バインダー樹脂の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型および分散型(水/有機溶剤などの任意の溶剤)などが挙げられる。
【0127】
これらの形態のうち、水溶性型のバインダーとしては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂などを挙げることができる。また、エマルション型のバインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン、酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルションなどを挙げることができる。
【0128】
<電気泳動表示装置用塗工液組成物の物性>
本発明の塗工液組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは800mPa・s以上であり、また、好ましくは5,000mPa・s以下、より好ましくは4,000mPa・s以下、さらに好ましくは3,000mPa・s以下である。塗工液組成物の粘度が高すぎるか、あるいは、低すぎると、マイクロカプセルを基材上に一層で隙間なく配置させることができず、マイクロカプセルが緻密に充填された状態の塗工膜(塗工層)に仕上げられないことがある。
【0129】
≪電気泳動表示装置用シート≫
本発明の電気泳動表示装置用シート(以下「本発明の表示シート」または単に「表示シート」ということがある。)は、本発明の電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層を有することを特徴とする。本発明の表示シートにおいて、マイクロカプセルは、全体として面状になるように配置されており、その配置を維持し得るように、バインダー樹脂で固定されている。
【0130】
<バインダー樹脂>
本発明の表示シートに用いられるバインダー樹脂は、上記で詳しく説明した本発明の電気泳動表示装置用塗工液組成物に含有されるバインダー樹脂であるので、ここでは説明を省略する。
【0131】
<表示シートの基材>
本発明の表示シートは、本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とからなるシートであっても、本発明のマイクロカプセルおよびバインダー樹脂以外に、他の構成部分や構成成分を有していてもよく、特に限定されるものではない。後者の表示シートとしては、例えば、本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層(以下「マイクロカプセル層」ということがある。)がフィルム状やシート状の基材上に形成されているか、あるいは、フィルム状やシート状の基材上にマイクロカプセル層を形成した後、このマイクロカプセル層を挟むように別のフィルム状やシート状の基材がさらに配置されている(例えば、マイクロカプセル層がフィルム状やシート状の基材でラミネートされている)表示シートであって、マイクロカプセル層と別の基材とが一体化している表示シートが挙げられる。製造方法が容易であることや、本発明のマイクロカプセルの特性を容易に保持したまま製造することができるなどの点で、後者の形態が好ましい。
【0132】
本発明の表示シートは、電気泳動表示装置用の表示シートであるので、フィルム状やシート状の基材を有する場合(上記した後者の表示シートの場合)は、一般に、基材として導電性フィルムが用いられる。すなわち、本発明の表示シートは、好ましくは、本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層が導電性フィルム上に形成されている。導電性フィルムとしては、具体的には、電気泳動表示装置の電極として使用可能な電極フィルムが挙げられる。電極フィルムは、例えば、非透明の電極フィルムであっても、透明電極フィルム(例えば、ITO付きPETフィルムなど)であってもよいが、透明電極フィルムが好適である。特に、本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層が2枚の対向する電極フィルムでラミネートされている場合は、少なくとも一方の電極フィルムが透明であることが必要である。
【0133】
<表示シートの製造方法>
本発明の表示シートを製造する方法としては、特に限定されるものではないが、一般には、以下に詳述するように、本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを混合して本発明の塗工液組成物を調製し、この塗工液組成物をフィルム状やシート状の基材の表面に塗工して乾燥させる方法が好ましく採用される。マイクロカプセル層と基材とが一体化している表示シートを得る場合は、乾燥後、そのまま取り扱うようにすればよいが、マイクロカプセル層のみの表示シートとして得る場合は、乾燥後、基材からマクロカプセル層のみを単離する(剥離する)などすればよい。また、マイクロカプセル層が基材でラミネートされている表示シートを得る場合は、乾燥後の塗工面に、さらに基材を重ねて配置し、ラミネートするようにすればよい。
【0134】
本発明の塗工液組成物を基材に塗工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、アプリケーターやブレードコーターなどの塗工装置を用いて、基材1枚1枚に塗工する方法であっても、マルチコーターなどの連続塗工装置を用いて、基材に連続塗工する方法であってもよく、必要に応じて、適宜選択できる。
【0135】
塗工後の乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の乾燥技術や乾燥条件が採用できる。
【0136】
本発明の表示シートの厚さは、使用するマイクロカプセルの粒子径との兼ね合いもあるので、特に限定されるものではない。マイクロカプセル層の厚さとしては、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは250μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。マイクロカプセル層の厚さが小さすぎると、本発明の表示シートを電気泳動表示装置に用いた場合、データ表示部分で充分な表示濃度が得られず、未表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、マイクロカプセル層の厚さが大きすぎると、本発明の表示シートを電気泳動表示装置に用いた場合、マイクロカプセル内に封入した分散液中の電気泳動粒子の電気泳動特性を充分に発揮させるためには、駆動電圧を高くすることが必要となり、経済性に劣ることがある。なお、フィルム状やシート状の基材を用いる場合、基材の厚みは、特に限定されるものではなく、数十μm以上、数mm以下であることが好ましい。
【0137】
本発明の表示シートとして、ラミネートされた表示シートを得る場合、ラミネートの方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知のラミネート技術やラミネート条件が採用できる。
【0138】
本発明の表示シートがラミネートされた表示シートである場合、優れた表示品質を安定して発揮し得る電気泳動表示装置を得るためには、一般には、本発明のマイクロカプセルを両電極フィルムに充分に密着させたもの(接触面積が大きいもの)であることが好ましい。両電極フィルムとの密着性が低いと、電気泳動粒子の応答性の低下や、コントラストの低下などが生じることがある。この密着性を高めるためには、例えば、ラミネート時の温度や圧力を高くするようにすることなどが考えられる。また、使用するマイクロカプセルに関しては、殻体を構成する成分の含有割合を適宜設定し、柔軟性や接着性を高めることなどにより、電極フィルムへの密着のし易さをより一層高めることができ、その場合は、ラミネート時の温度や圧力などの諸条件をある程度緩やかにした状態でも、充分な密着性を得ることができる。
【0139】
本発明の表示シートがラミネートされた表示シートである場合、対向する電極フィルムの間隔は、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは250μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。対向する電極フィルムの間隔が小さすぎると、本発明の表示シートを電気泳動表示装置に用いた場合、データ表示部分において充分な表示濃度が得られず、その他の未表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、対向する電極フィルムの間隔が大きすぎると、本発明の表示シートを電気泳動表示装置に用いた場合、マイクロカプセル内に封入した分散液中の電気泳動性微粒子の電気泳動特性を充分に発揮させるためには、駆動電圧を高くすることが必要となり、経済性に劣ることがある。
【0140】
≪電気泳動表示装置≫
本発明の表示シートは、例えば、データ表示部の構成要素として、電気泳動表示装置に用いられる。本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、該データ表示部が本発明の表示シートで構成されていることを特徴とする。本発明の電気泳動表示装置は、データ表示部が本発明の表示シートで構成されていること以外は、従来公知の電気泳動表示装置と同様である。それゆえ、データ表示部分以外の部分、例えば、駆動回路や電源回路などは、従来公知の電気泳動表示装置と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の電気泳動表示装置は、従来公知の電気泳動表示装置のデータ表示部を本発明の表示シートで構成することにより得られる。なお、本発明においては、駆動回路や電源回路などを外部回路に含めることにより、データ表示部だけを電気泳動表示装置ということがある。
【0141】
本発明の電気泳動表示装置としては、例えば、本発明の表示シートのうち、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層が2枚の対向する電極フィルムでラミネートされている表示シートをデータ表示部の構成要素として含む電気泳動表示装置が好ましく例示できる。なお、このような電気泳動表示装置において、表示シート以外の各種構成部分(例えば、駆動回路や電源回路など)としては、上記したように、従来公知の電気泳動表示装置において使用されている構成部分を採用することができる。
【0142】
本発明の電気泳動表示装置における所要の表示動作は、対向する電極フィルム間に、制御された電圧を印加(例えば、所望の画像を表示したい部分のみに電圧を印加)し、マイクロカプセル中の電気泳動粒子の配向位置を変えることにより、行うことができる。ここで、例えば、一方の電極フィルムに、アモルファスシリコンやポリシリコンを用いた薄膜トランジスタまたは有機分子を用いた有機トランジスタからなるドライバ層を設けておけば、データ表示の制御を行うことができる。あるいは、ドライバ層を設けずに、外部装置によってデータ表示の制御を行ってもよい。表示を制御する手段は、電気泳動表示装置の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0143】
≪電子機器≫
本発明の表示シートを用いて得られた電気泳動表示装置は、例えば、データ表示手段として、電子機器に用いられる。本発明の電子機器は、データ表示手段を備えている電子機器であって、該データ表示手段が本発明の電気泳動表示装置であることを特徴とする。なお、「データ表示手段」とは、文字データや画像データなどを表示するための手段を意味する。本発明の電子機器は、データ表示手段が本発明の電気泳動表示装置であること以外は、従来公知の電子機器と同様である。それゆえ、データ表示手段以外の部分は、従来公知の電子機器と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の電子機器は、従来公知の電子機器におけるデータ表示手段を本発明の電気泳動表示装置で置き換えることにより得られる。
【0144】
本発明の電気泳動表示装置を適用できる電子機器としては、データ表示手段を備えている限り、特に限定されるものではないが、例えば、パーソナルコンピューター、ワークステーション、ワードプロセッサー、ICカード、ICタグ、電子手帳、電子辞書、ICレコーダ、電子ブック、電子ペーパー、電子ノート、電卓、電子新聞、電子ホワイトボード、案内板、広告板、各種ディスプレイ、テレビ、DVDプレーヤー、デジタルスチルカメラ、ビューファインダー型またはモニタ直視型のビデオカメラ、カーナビゲーションシステム、携帯電話、テレビ電話、ページャ、携帯端末、POS用端末、タッチパネルを備えた各種機器などが挙げられる。これらの電子機器は従来公知であるが、そのデータ表示手段を本発明の電気泳動表示装置で置き換えることにより、本発明の電子機器が得られる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記の実施例および比較例において、「質量%」を単に「%」で表すことがある。
【0146】
まず、メタノール疎水化度の測定方法、微粒子の反射率の測定方法、電気泳動粒子および微粒子の粒子径の測定方法、電気泳動粒子の分散安定性の評価方法、分散液の粘度の測定方法、分散液の動粘度の測定方法、マイクロカプセルの粒子径の測定方法、電気泳動表示装置の作製方法、コントラストの測定方法、および、コントラストの保存性の評価方法について説明する。
【0147】
<メタノール疎水化度>
試料0.2gを容量200mLのビーカーに採取し、純水50mLを加えた。電磁攪拌しながら、液面下にメタノールを少しずつ加えた。そして、液面上に試料が認められなくなった点を終点とした。終点までに必要としたメタノール使用量から、次式により、メタノール疎水化度を算出した。
メタノール疎水化度(%)=[x/(50+x)]×100
[式中、xはメタノール使用量(mL)を表す。]
【0148】
なお、下記の実施例および比較例で用いたヒュームドシリカのうち、AEROSIL(登録商標)R972(日本アエロジル株式会社製)については、メタノール使用量が46mL、メタノール疎水化度が47.9%であり、また、AEROSIL(登録商標)R976S(日本アエロジル株式会社製)については、メタノール使用量が42mL、メタノール疎水化度が45.7%であった。
【0149】
<微粒子の反射率>
微粒子の反射率は、微粒子をポリエチレン袋に入れ、微粒子の厚さが1cm以上の箇所を、ポリエチレン袋の外側から、マクベス分光光度濃度計(グレターク・マクベス・アクチエンゲゼルシャフト製、商品名「SpectroEye(登録商標)」)を用いて測定した。なお、下記の実施例および比較例で用いたヒュームドシリカのうち、AEROSIL(登録商標)R972(日本アエロジル株式会社製)については、反射率が57%であり、また、AEROSIL(登録商標)R976S(日本アエロジル株式会社製)については、反射率が53%であった。
【0150】
<電気泳動粒子および微粒子の粒子径>
電気泳動粒子および微粒子の粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名「LB−500」)を用いて、体積平均粒子径を測定した。
【0151】
<電気泳動粒子の分散安定性>
電気泳動表示装置用分散液をプレパラート上に一滴垂らして、電気泳動粒子の分散状態を光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名「VHX(登録商標)−500」;倍率3,000倍)で観察し、下記の基準で電気泳動粒子の分散安定性を評価した。なお、電気泳動粒子が凝集した二次粒子の粒子径は、この光学顕微鏡で観察した場合の外接円相当径を意味する。また、電気泳動粒子が凝集した粒子径1μm以上の二次粒子の数は、この光学顕微鏡のモニター1画面あたりに観察される数である。
○:電気泳動粒子が凝集した粒子径1μm以上の二次粒子が全く認められず、電気泳動粒子が略均一に分散している;
△:電気泳動粒子が凝集した粒子径1μm以上の二次粒子が1または2個認められる;
×:電気泳動粒子が凝集した粒子径1μm以上の二次粒子が3個以上認められる。
【0152】
<分散液の粘度>
分散液の粘度は、超音波分散処理を行った後、直ちに、B型粘度計(株式会社トキメック製、商品名「BM−HM型」を用いて、温度25℃で測定した。
【0153】
<分散液の動粘度>
分散液の動粘度は、自動マイクロ粘度計(アントン・パール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフトゥンク製、商品名「AMVn」)を用いて、温度20℃、傾斜角60°で測定した。なお、測定に用いた試料管は、内径(直径)1.8mmのものを用いた。
【0154】
<マイクロカプセルの粒子径>
マイクロカプセルの粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名「LA−910」)を用いて、体積平均粒子径を測定した。
【0155】
<電気泳動表示装置の作製>
一辺に未塗布部分(導電性部分)を残した状態で、塗布部分が縦×横=5cm×3cmのマイクロカプセル塗布シート(電気泳動表示装置用シート)と、縦×横=6cm×4cmの厚さ75μmのITO付きPETフィルム(対向電極)を貼り合わせ(任意の2個所をセロテープ(登録商標)で止める)、厚さ2mmのガラス板上に置き、2本のロール間を通過させてラミネートすることにより、電気泳動表示装置を作製した。
【0156】
なお、ロールはシリコンゴムロールであり、ロール径は3インチ(7.62cm)、上方ロールは熱媒により加熱されており、ロール表面温度は120℃、ロールは駆動回転しており、0.2mPa・sの空気圧で下方ロールに圧着されており、ロール間の間隙は0mm、下方ロールは加熱されておらず、フリー回転で、ロール位置は固定されていた。6cm/minの送り速度でロールを回転させ、ラミネート面が加熱ロール側になるようにガラス板上に試料を乗せてロール間を通過させた。
【0157】
<コントラスト>
電気泳動表示装置の両電極間に40Vの直流電圧を0.4秒間印加して、白表示または黒表示をさせ、各表示の反射率をマクベス分光光度濃度計(グレターク・マクベス・アクチエンゲゼルシャフト製、商品名「SpectroEye(登録商標)」)を用いて測定し、コントラスト(反射率比)を次式で算出した。
コントラスト=白表示の反射率/黒表示の反射率
なお、白表示および黒表示の反射率は、極性を切り替えて電圧を印加することにより別々に測定し、各反射率は電気泳動表示装置の片面全体について測定した平均値とする。
【0158】
<コントラストの保持性>
上記の方法でコントラストを測定した電気泳動表示装置を室温で1週間放置した後、同じ方法でコントラストを測定し、その値の変化を観察した。下記式で表されるコントラストの変化が初期コントラストに対して80%以上であれば、コントラストの保持性が良く(記号「○」で表す。)、また、コントラストの変化が初期コントラストに対して80%未満であれば、コントラストの保持性が悪い(記号「×」で表す。)と判断した。
コントラストの変化=[1週間後のコントラスト/初期コントラスト]×100
【0159】
<コントラストの高温安定性>
上記の方法でコントラストを測定した電気泳動表示装置を70℃の熱風乾燥器中で24時間放置した後、室温に戻し、同じ方法でコントラストを測定し、その値の変化を観察した。下記式で表されるコントラストの変化が初期コントラストに対して50%以上であれば、コントラストの高温安定性が良く(記号「○」で表す。)、また、コントラストの変化が初期コントラストに対して50%未満であれば、コントラストの高温安定性が悪い(記号「×」で表す。)と判断した。
コントラストの変化=[加熱後のコントラスト/初期コントラスト]×100
【0160】
次に、電気泳動表示装置用マイクロカプセルを調製するための原料の合成例、および、電気泳動表示装置用分散液を調製するための原料の合成例について説明する。
【0161】
≪合成例1≫
容量100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン7.5g、尿素7.5g、37%ホルムアルデヒド水溶液30g、25%アンモニア水3gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温した。同温度で1.5時間保持した後、30℃まで冷却し、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有する固形分54.3%の水溶液(A−1)を得た。
【0162】
≪合成例2≫
容量100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン13g、ベンゾグアナミン2g、37%ホルムアルデヒド水溶液30g、25%アンモニア水3gを仕込み、攪拌しながら、75℃まで昇温した。75℃になった時点で全体が透明になったことを確認した後、直ちに30℃まで冷却し、メラミン・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有する固形分54.4%の水溶液(A−2)を得た。
【0163】
≪合成例3≫
容量100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン15g、37%ホルムアルデヒド水溶液30g、25%アンモニア水3gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温した。同温度で15分間保持した後、30℃まで冷却し、メラミン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有する固形分54.5%の水溶液(A−3)を得た。
【0164】
≪合成例4≫
容量300mLの4つ口セパラブルフラスコに、エポキシ化合物であるポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール(登録商標)EX−521」(質量平均分子量732、水に対する溶解率100%))125g、水125gを仕込み、攪拌して溶解した。これに50%尿素水溶液50gを添加し、40℃で1時間反応させて、エポキシ化合物と尿素とを反応させて得られる化合物を含有する固形分50%の水溶液(B−1)を得た。
【0165】
容量100mLの4つ口セパラブルフラスコに、メラミン2.5g、尿素0.5g、37%ホルムアルデヒド水溶液20g、25%アンモニア水2gを仕込み、70℃で45分間反応させたところに、水溶液(B−1)24gを添加し、さらに同温度で15分間反応を行い、25℃まで冷却して、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物を含有する固形分44.8%の水溶液(B−2)を得た。
【0166】
≪合成例5≫
攪拌羽根、温度計、冷却管を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル(組成モル比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(質量平均分子量3,300)2g、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA−100R」)20g、アイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)78gを仕込み、さらに直径1mmのジルコニアビーズ800gを仕込んだ。
【0167】
回転数300rpmで攪拌しながら、160℃で2時間反応させてポリマーグラフト処理を行った。処理後、さらにアイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)100gを添加し、充分に混合した。その後、ジルコニアビーズを分離して、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラック(ここでは、カーボンブラックの表面に存在するカルボキシ基にアクリル系ポリマーのエポキシ基を反応させた。)を含有する固形分11%の分散液150gを得た。
【0168】
この分散液に含まれる電気泳動粒子の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が0.2μmであった。
【0169】
一方、攪拌羽根を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名「タイペーク(登録商標)CR90」)50g、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(組成モル比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(質量平均分子量6,800)5g、ヘキサン100gを仕込み、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行った。
【0170】
このセパラブルフラスコを90℃の温水槽に移し、溶媒を留去し、粉体状となった酸化チタンをフラスコから取り出し、バットに移した後、乾燥機中、150℃で熱処理を5時間行った。
【0171】
熱処理された酸化チタンをヘキサン100gに分散させ、遠心沈降器で遠心分離し、酸化チタンを洗浄する操作を3回行った後、100℃で乾燥させた。
【0172】
容量300mLのセパラブルフラスコに、洗浄処理された酸化チタン50g、アイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)50gを仕込み、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行って、ポリマーグラフト処理された酸化チタン(ここでは、酸化チタンの表面に存在するシラノール基にアクリル系ポリマーのアルコキシシリル基を反応させた。)を含有する固形分50%の分散液100gを得た。
【0173】
この分散液に含まれる電気泳動粒子の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が0.5μmであった。
【0174】
容量200mLのマヨネーズビンに、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラックの分散液6g、ポリマーグラフト処理された酸化チタンの分散液75g、アイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)19gを仕込み、充分に混合して、電気泳動粒子の濃度がカーボンブラック0.66%および酸化チタン37.5%である分散液(C−1)を得た。
【0175】
≪合成例6≫
攪拌羽根を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名「タイペーク(登録商標)CR90」)50g、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(組成モル比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(質量平均分子量6,800)5g、ヘキサン100gを仕込み、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行った。
【0176】
このセパラブルフラスコを90℃の温水槽に移し、溶媒を留去し、粉体状となった酸化チタンをフラスコから取り出し、バットに移した後、乾燥機中、150℃で熱処理を5時間行った。
【0177】
熱処理された酸化チタンをヘキサン100gに分散させ、遠心沈降器で遠心分離し、酸化チタンを洗浄する操作を3回行った後、100℃で乾燥させた。
【0178】
容量300mLのセパラブルフラスコに、洗浄処理された酸化チタン50g、アイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)50gを仕込み、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行って、ポリマーグラフト処理された酸化チタン(ここでは、酸化チタンの表面に存在するシラノール基にアクリル系ポリマーのアルコキシシリル基を反応させた。)を含有する固形分50%の分散液100gを得た。
【0179】
この分散液に含まれる電気泳動粒子の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が0.5μmであった。
【0180】
一方、アゾ系黒色染料(バスフ・アクチエンゲゼルシャフト製、商品名「スーダンブラックX60」)0.3gをアイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)30g溶解させ、黒色分散媒を得た。
【0181】
容量200mLのマヨネーズビンに、黒色分散媒5g、ポリマーグラフト処理された酸化チタンの分散液75g、アイソパー(登録商標)M(エクソン化学株式会社製)18gを仕込み、充分に混合して、電気泳動粒子の濃度が酸化チタン38.27%である分散液(C−2)を得た。
【0182】
次に、本発明の電気泳動表示装置用分散液、電気泳動表示装置用マイクロカプセル、電気泳動表示装置用シート、および、電気泳動表示装置の製造例について説明する。
【0183】
≪実施例1≫
分散液(C−1)100gの固形分(電気泳動粒子)100質量%に対して、微粒子として、0.1質量%のヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL(登録商標)R972」(粒子径約16nm)を添加し、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)で超音波分散を行い、電気泳動表示装置用分散液(1)を得た。
【0184】
得られた電気泳動表示装置用分散液(1)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(1)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が3.6mPa・sであり、動粘度が3.8mm/secであった。
【0185】
次いで、容量500mLの平底セパラブルフラスコに、アラビアゴム20gを溶解した水溶液120gを仕込み、ディスパー(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ロボミックス(登録商標)」)を用いて、600rpmで攪拌しながら、電気泳動表示装置用分散液(1)を全量添加し、その後、攪拌速度を1,600rpmに変更して2分間攪拌した後、攪拌速度を1,000rpmに変更し、水100gを添加して、懸濁液を得た。
【0186】
この懸濁液を、温度計、冷却管を備えた容量300mLの4つ口セパラブルフラスコに入れ、40℃に保持しながら、パドル翼で攪拌しながら、水溶液(A−1)48gを添加した。15分後に、L−システイン2gを溶解した水溶液100gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま、反応を4時間行った後、50℃に昇温して2時間熟成を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻に電気泳動表示装置用分散液(1)が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
【0187】
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き75μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
【0188】
次いで、このマイクロカプセルに水を添加して200gの分散液とし、これを前記の平底セパラブルフラスコに移し、攪拌しながら、40℃に加温した。
【0189】
このマイクロカプセル分散液に、エポキシ化合物であるポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール(登録商標)EX−521」(質量平均分子量732、水に対する溶解率100%))15gを溶解した水溶液100gを添加した。30分後に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gを溶解した水溶液50gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま3時間反応を行い、次いで、50℃に昇温して1時間熟成を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻が形成された殻体に電気泳動表示装置用分散液(1)が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
【0190】
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き53μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
【0191】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(1)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が41.2μmであった。その結果を表1に示す。
【0192】
電気泳動表示装置用マイクロカプセル(1)を吸引濾過して、固形分65%の電気泳動表示装置用マイクロカプセルペーストを得た。このペースト30gにアルカリ可溶型アクリル樹脂(株式会社日本触媒製、商品名「WR301A」)をアンモニアで溶解した固形分50%の樹脂液6gを添加し、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)AR−100」)を用いて、10分間混合して電気泳動表示装置用塗工液組成物(1)を得た。
【0193】
電気泳動表示装置用塗工液組成物(1)をITO付きPETフィルムにアプリケーターで塗布した後、90℃で10分間乾燥させて、電気泳動表示装置用シート(1)を得た。
【0194】
電気泳動表示装置用シート(1)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(1)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(1)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(1)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0195】
≪実施例2≫
実施例1において、微粒子をヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL(登録商標)R976S」(粒子径約7nm)に変更し、微粒子の添加量を0.2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用分散液(2)を得た。
【0196】
得られた電気泳動表示装置用分散液(2)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(2)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が2.8mPa・sであり、動粘度が3.7mm/secであった。
【0197】
また、実施例1において、ディスパーによる攪拌速度1,600rpmを1,800rpmに変更して懸濁液を得たこと、および、内殻を形成するための水溶液(A−1)に代えて、水溶液(A−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(2)を得た。
【0198】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(2)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が35.0μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(2)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(2)および電気泳動表示装置用シート(2)を得た。
【0199】
電気泳動表示装置用シート(2)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(2)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(2)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(2)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0200】
≪実施例3≫
実施例1において、微粒子の添加量を0.2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用分散液(3)を得た。
【0201】
得られた電気泳動表示装置用分散液(3)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(3)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が4.0mPa・sであり、動粘度が3.6mm/secであった。
【0202】
また、実施例1において、内殻を形成するための水溶液(A−1)に代えて、水溶液(A−3)を用いたこと、および、エポキシ化合物を添加してから15分後に水溶液(B−2)49gを添加し、その30分後にジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム1gを溶解した水溶液50gを滴下ロートで5分間かけて滴下したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(3)を得た。
【0203】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(3)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が40.3μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(3)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(3)および電気泳動表示装置用シート(3)を得た。
【0204】
電気泳動表示装置用シート(3)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(3)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(3)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(3)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0205】
≪実施例4≫
実施例1において、アラビアガムを大豆多糖類(不二製油株式会社製、商品名「ソヤファイブ(登録商標)−S−LNP」)12gを溶解した水溶液120gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(4)を得た。なお、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(4)を作製する際には、電気泳動表示装置用分散液(1)を電気泳動表示装置用分散液(4)として用いた。
【0206】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(4)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が42.1μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(4)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(4)および電気泳動表示装置用シート(4)を得た。
【0207】
電気泳動表示装置用シート(4)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(4)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(4)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(4)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0208】
≪実施例5≫
実施例1において、微粒子の添加量を5.0質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用分散液(5)を得た。
【0209】
得られた電気泳動表示装置用分散液(5)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(5)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が4.3mPa・sであり、動粘度が2.5mm/secであった。
【0210】
また、実施例1において、電気泳動表示装置用分散液(1)を電気泳動表示装置用分散液(5)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(5)を得た。
【0211】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(5)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が42.3μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(5)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(5)および電気泳動表示装置用シート(5)を得た。
【0212】
電気泳動表示装置用シート(5)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(5)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(5)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(5)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0213】
≪実施例6≫
実施例1において、分散液(C−1)を分散液(C−2)に変更し、微粒子をヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL(登録商標)R976S」(粒子径約7nm)に変更し、微粒子の添加量を0.2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(6)を得た。
【0214】
得られた電気泳動表示装置用分散液(6)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(6)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が3.5mPa・sであり、動粘度が3.7mm/secであった。
【0215】
また、実施例1において、電気泳動表示装置用分散液(1)を電気泳動表示装置用分散液(6)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(6)を得た。
【0216】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(6)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が39.5μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(6)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(6)および電気泳動表示装置用シート(6)を得た。
【0217】
電気泳動表示装置用シート(6)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(6)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(6)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(6)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0218】
≪比較例1≫
本比較例では、合成例5で調製した(微粒子を添加してない)分散液(C−1)を電気泳動表示装置用分散液(C1)として用いた。電気泳動表示装置用分散液(C1)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(C1)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が4.5mPa・sであり、動粘度が4.0mm/secであった。
【0219】
また、実施例1において、電気泳動表示装置用分散液(1)に代えて、電気泳動表示装置用分散液(C1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(C1)を得た。
【0220】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(C1)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が40.5μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(C1)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(C1)および電気泳動表示装置用シート(C1)を得た。
【0221】
電気泳動表示装置用シート(C1)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(C1)を作製し、コントラストを測定した。また、電気泳動表示装置(C1)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(C1)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0222】
≪比較例2≫
実施例1において、微粒子の添加量を7.5質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用分散液(C2)を得た。
【0223】
得られた電気泳動表示装置用分散液(C2)中における電気泳動粒子の分散安定性を評価した。その結果を表1に示す。なお、電気泳動表示装置用分散液(C2)の粘度および動粘度を測定したところ、粘度が4.7mPa・sであり、動粘度が2.2mm/secであった。
【0224】
また、実施例1において、電気泳動表示装置用分散液(1)に代えて、電気泳動表示装置用分散液(C2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(C2)を得た。
【0225】
得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(C2)の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が41.3μmであった。その結果を表1に示す。また、得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(C2)を用いて、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用塗工液組成物(C2)および電気泳動表示装置用シート(C2)を得た。
【0226】
電気泳動表示装置用シート(C2)を用いて、上記で説明した方法により、電気泳動表示装置(C2)を作製し、コントラストを測定し。電気泳動表示装置(C2)を室温で1週間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの保持性を評価した。さらに、電気泳動表示装置(C2)を70℃で24時間放置した後、コントラストを測定し、コントラストの高温安定性を評価した。その結果を表1に示す。
【0227】
【表1】

【0228】
表1から明らかなように、実施例1〜6の電気泳動表示装置用分散液は、電気泳動粒子に加えて、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子を所定の添加量で含有するので、電気泳動粒子の分散安定性に優れていた。また、このような電気泳動表示装置用分散液を用いて作製した実施例1〜6の電気泳動表示装置は、初期段階および1週間後に、高いコントラストを示し、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れていた。
【0229】
これに対し、比較例1の電気泳動表示装置用分散液は、微粒子を添加していないので、電気泳動粒子の分散安定性に劣っていた。また、このような電気泳動表示装置用分散液を用いて作製した比較例1の電気泳動表示装置は、コントラストの低下が防止されず、コントラストの保持性および高温安定性に劣っていた。比較例2の電気泳動表示装置用分散液は、電気泳動粒子の分散安定性に優れていたが、微粒子の添加量が多すぎるので、このような電気泳動表示装置用分散液を用いて作製した電気泳動表示装置は、コントラストの低下が防止されず、コントラストの保持性および高温安定性に劣っていた。
【0230】
かくして、溶媒中に電気泳動粒子を含有する電気泳動表示装置用分散液に、電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子を所定の添加量で添加すれば、電気泳動粒子の分散安定性と、電気泳動表示装置におけるデータ表示時の電気泳動粒子の凝集安定性とを両立させることができ、その結果、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能である電気泳動表示装置用分散液が得られることがわかる。
【0231】
次に、本発明の電子機器の代表的な実施態様の実施例について説明する。
【0232】
≪実施例7≫
図1は、本発明の電子機器の一実施態様であるICカードの一実施例を示す平面図である。ICカード10は、複数の操作ボタン11と、表示パネル12とを備えている。ICカード10において、データ表示手段としての表示パネル12が本発明の電気泳動表示装置である。
【0233】
≪実施例8≫
図2は、本発明の電子機器の一実施態様である携帯電話の一実施例を示す斜視図である。携帯電話20は、複数の操作ボタン21と、受話口22と、送話口23と、表示パネル24とを備えている。携帯電話20において、データ表示手段としての表示パネル24が本発明の電気泳動表示装置である。
【0234】
≪実施例9≫
図3は、本発明の電子機器の一実施態様である電子ブックの一実施例を示す斜視図である。電子ブック30は、ブック形状のフレーム31と、フレーム31に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー32とを備えている。フレーム31には、表示面を露出させた状態の表示装置33と操作部34とが設けられている。電子ブック30において、データ表示手段としての表示装置33が本発明の電気泳動表示装置である。
【0235】
≪実施例10≫
図4は、本発明の電子機器の一実施態様である電子ペーパーの一実施例を示す斜視図である。電子ペーパー40は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成されている本体41と、表示ユニット42とを備えている。電子ペーパー40において、データ表示手段としての表示ユニット42が本発明の電気泳動表示装置である。
【0236】
実施例7のICカード、実施例8の携帯電話、実施例9の電子ブック、実施例10の電子ペーパーは、いずれもデータ表示手段が、本発明の電気泳動表示装置のうち、特に、本発明の電気泳動表示装置用分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂から構成される内殻とエポキシ樹脂から構成される外殻とを有する殻体に内包されている電気泳動表示装置用マイクロカプセルを用いて作製された電気泳動表示装置であるので、コントラストなどの表示性能に優れると共に、高温条件下に長時間(例えば、70℃で24時間)放置した場合であっても、低いリーク電流値を示し、優れた表示性能を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明の電気泳動表示装置用分散液は、コントラストの低下が防止され、コントラストの保持性および高温安定性に優れる電気泳動表示装置を作製することが可能である。それゆえ、本発明の電気泳動表示装置用分散液(および、その用途として、電気泳動表示装置用マイクロカプセル、電気泳動表示装置用塗工液組成物、電気泳動表示装置用シート、電気泳動表示装置)は、極めて優れた表示品質を有するデータ表示手段を提供する一連の技術として、データ表示手段を備えている電子機器に関連する分野で多大の貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】本発明の電子機器の一実施態様であるICカードの一実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の電子機器の一実施態様である携帯電話の一実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明の電子機器の一実施態様である電子ブックの一実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器の一実施態様である電子ペーパーの一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0239】
10 ICカード
11 操作ボタン
12 表示パネル
20 携帯電話
21 操作ボタン
22 受話口
23 送話口
24 表示パネル
30 電子ブック
31 フレーム
32 カバー
33 表示装置
34 操作部
40 電子ペーパー
41 本体
42 表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に少なくとも1種類以上の電気泳動粒子と少なくとも1種類以上の該電気泳動粒子よりも粒子径が小さい微粒子とを含有する電気泳動表示装置用分散液であって、該微粒子の添加量が該電気泳動粒子100質量%に対して5質量%以下(0質量%を含まない)であることを特徴とする電気泳動表示装置用分散液。
【請求項2】
前記電気泳動粒子に対する前記微粒子の粒子径比が1/10以下である請求項1記載の電気泳動表示装置用分散液。
【請求項3】
前記微粒子が金属酸化物の微粒子である請求項1または2記載の電気泳動表示装置用分散液。
【請求項4】
前記微粒子の反射率が20%以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の電気泳動表示装置用分散液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の電気泳動表示装置用分散液が殻体に内包されていることを特徴とする電気泳動表示装置用マイクロカプセル。
【請求項6】
請求項5記載の電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含有することを特徴とする電気泳動表示装置用塗工液組成物。
【請求項7】
請求項5記載の電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む層を有することを特徴とする電気泳動表示装置用シート。
【請求項8】
前記電気泳動表示装置用マイクロカプセルと前記バインダー樹脂とを含む層が導電性フィルム上に形成されている請求項7記載の電気泳動表示装置用シート。
【請求項9】
データ表示部を備えている電気泳動表示装置であって、該データ表示部が請求項7または8記載の電気泳動表示装置用シートで構成されていることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項10】
データ表示手段を備えている電子機器であって、該データ表示手段が請求項9記載の電気泳動表示装置であることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−276566(P2009−276566A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127710(P2008−127710)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)