説明

電気湯沸し装置の蓋

【課題】低廉化を図りながら、耐久性を向上し得る電気湯沸し装置の蓋を提供する。
【解決手段】下蓋部材3が、開口部31aを備えた外側部材31とその外側部材31の開口部31aを塞ぐように配置される内側部材32とを備えて構成され、内側部材32が、下方に開口する凹状部32aを備え且つその凹状部32a内外を連通する通気口32bを備える状態に、耐熱材にて形成され、内側部材32が、凹状部32aの縁部32gが全周にわたって内蓋板4の上面に当接又は近接する状態で設けられて、内側部材32の凹状部32aと内蓋板4の上面との間に通気室8が仕切り形成され、内蓋板4に、通気室8に連通する蒸気送出口41が設けられ、蒸気通路6が、装置本体から発生した蒸気を内蓋板4の蒸気送出口41、通気室8、通気口32b、上蓋部材2の蒸気排出口2aを通して通流させて、蒸気排出口2aから外部に排出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上蓋部材とその下方の下蓋部材とその下方の内蓋板とが一体的に組み付けられ、前記内蓋板の下方の装置本体から発生した蒸気を外部に排出するための蒸気通路が、前記内蓋板、前記下蓋部材、前記上蓋部材を通じて設けられた電気湯沸し装置の蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電気湯沸し装置の蓋は、装置本体に備えられた湯水貯留部の開口を覆うものであり、内蓋板、下蓋部材、上蓋部材を通じて設けられた蒸気通路を通して、装置本体から発生した蒸気を外部に排出する構成となっている。ちなみに、電気湯沸し装置の具体例としては、電気ポット、電気ケトル、沸騰式の加湿機等がある。
【0003】
このような電気湯沸し装置の蓋において、従来は、内蓋板及び下蓋部材夫々が、湯水貯留部の開口の略全域を覆う形状に構成され、それら内蓋板の上面と下蓋部材の下面との間にそれらの略全面にわたって空間が形成されて、蒸気通路が、内蓋板と下蓋部材との間の空間を通して蒸気を通流させるように構成されていた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2004−81329号公報
【特許文献2】2006−75292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内蓋板は装置本体の湯水貯留部内に曝されることから、金属等の耐熱性に優れた材料で形成される。一方、下蓋部材は、電気湯沸し装置の蓋の低廉化を図るために、耐熱性を抑えた低耐熱材により形成されるのが一般である。
【0006】
しかしながら、従来の電気湯沸し装置の蓋では、下蓋部材の下面が略全面にわたって装置本体から発生した蒸気に曝されるので、下蓋部材が低耐熱材により形成されていると、下蓋部材が蒸気の影響を受け易かった。それによって、電気湯沸し装置の蓋の耐久性が低下する虞があった。
一方、電気湯沸し装置の蓋の耐久性の低下を防止するために、下蓋部材の全体を耐熱材により形成すると、コストアップとなって電気湯沸し装置の蓋の価格が上昇することになる。
【0007】
又、耐熱材としての耐熱性の樹脂は、一般には、表面が粗いために光沢がなく、又、本来クリーム色等の色がついているために所望の色に着色し難いものであるので、蓋部材の全体を耐熱性の樹脂により形成すると、外観を損なう問題もあった。
更に、下蓋部材と上蓋部材との間には空間が存在するが、下蓋部材の略全面にわたって蒸気通路を構成するための空間を形成することから、下蓋部材と上蓋部材との間に存在する空間が狭くなり、下蓋部材と上蓋部材との間の空間を有効利用できないという問題もあった。尚、本空間は、省エネルギー効果を向上させるための断熱材等を収納する空間として利用される。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低廉化を図りながら、耐久性を向上し得る電気湯沸し装置の蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る電気湯沸し装置の蓋は、上蓋部材とその下方の下蓋部材とその下方の内蓋板とが一体的に組み付けられ、前記内蓋板の下方の装置本体から発生した蒸気を外部に排出するための蒸気通路が、前記内蓋板、前記下蓋部材、前記上蓋部材を通じて設けられた電気湯沸し装置の蓋であって、
その特徴構成は、前記下蓋部材が、開口部を備えた外側部材とその外側部材の開口部を塞ぐように配置される内側部材とを備えて構成され、
前記内側部材が、下方に開口する凹状部を備え且つその凹状部内外を連通する通気口を備える状態に、耐熱材にて形成され、
前記内側部材が、前記凹状部の縁部が全周にわたって前記内蓋板の上面に当接又は近接する状態で設けられて、前記内側部材の凹状部と前記内蓋板の上面との間に通気室が仕切り形成され、
前記内蓋板に、前記通気室に連通する蒸気送出口が設けられ、
前記蒸気通路が、前記装置本体から発生した蒸気を前記内蓋板の蒸気送出口、前記通気室、前記通気口、前記上蓋部材の蒸気排出口を通して通流させて、前記蒸気排出口から外部に排出するように構成されている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、装置本体から発生した蒸気は、内蓋板の蒸気送出口、内側部材の凹状部と内蓋板の上面との間に仕切り形成された通気室、内側部材の凹状部に備えられた通気口、上蓋部材の蒸気排出口を通って通流して、蒸気排出口から外部に排出される。
【0011】
つまり、装置本体から発生した蒸気は、内蓋板と下蓋部材との間では、下蓋部材の一部を構成する内側部材の凹状部と内蓋板の上面との間に仕切り形成された通気室のみを通って通流して、通気口から通気室外に流出し、その後は、上蓋部材の蒸気排出口にまで導かれるので、下蓋部材の外側部材が蒸気に曝されるのを極力抑制することができる。
又、蒸気に曝される内側部材は耐熱材にて形成することにより、蒸気の影響を低減することができる。一方、蒸気に曝されるのを極力抑制することができる外側部材は、低耐熱材にて形成しても劣化を防止することができるので、外側部材を低耐熱材にて形成することにより、コストダウンを図ることができる。
従って、低廉化を図りながら、耐久性を向上し得る電気湯沸し装置の蓋を提供することができるようになった。
又、下蓋部材の外側部材を蓋の側周面を形成するように構成し、その外側部材を低耐熱性の樹脂にて形成することにより、低耐熱性の樹脂は光沢がありしかも所望の色に着色し易いので、下蓋部材の全体を耐熱性の樹脂にて形成する場合に比べて、外観を向上することができる。
更に、下蓋部材の外側部材と上蓋部材との間には、広い空間を確保することができるので、下蓋部材と上蓋部材との間の空間を、例えば断熱材の充填等に有効利用することができ、省エネルギー効果を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る電気湯沸し装置の蓋の更なる特徴構成は、前記内側部材の凹状部の縁部の外周側に、外側に向けて斜め下向きに開口する嵌め込み部が前記凹状部の周方向に沿って環状に設けられ、
環状の封止部材が、前記内蓋板の上面に当接する状態で前記嵌め込み部内に嵌め込んで設けられている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、環状の封止部材が、内側部材の凹状部の縁部の外周側に外側に向けて斜め下向きに開口するように設けられた環状の嵌め込み部内に嵌め込んで設けられるので、封止部材が凹状部の縁部の外周側に配設されることになる。
つまり、蒸気が内側部材の凹状部の縁部と内蓋板の上面との間から通気室外に漏出するのを防止するために、それらの間を気密状に封止する封止部材を設けるにしても、その封止部材を凹状部の縁部の外周側に配設することができるので、封止部材が蒸気に曝されるのを極力抑制することができる。
従って、封止部材の劣化をも極力抑制することができるようになった。
【0014】
本発明に係る電気湯沸し装置の蓋の更なる特徴構成は、前記内蓋板の上面に、前記封止部材及び前記凹状部の縁部を嵌め込み可能な溝部が環状に設けられ、
前記封止部材が前記嵌め込み部の内面と前記溝部の内面との間に挟持される状態で、前記封止部材及び前記凹状部の縁部が前記溝部に嵌め込まれている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、内側部材の凹状部の縁部及び封止部材が内蓋板の上面の溝部に嵌め込まれた状態で、封止部材が嵌め込み部の内面と溝部の内面との間に挟持されるので、封止部材を内側部材の嵌め込み部と内蓋板の溝部との間に押圧状態で的確に保持することができる。
従って、通気室外への蒸気の漏出を的確に防止することができるので、下蓋部材の外側部材等、通気室の外部に設けられる部材の劣化を的確に防止することができるようになった。
【0016】
本発明に係る電気湯沸し装置の蓋の更なる特徴構成は、前記内側部材と前記外側部材とを連結する複数の連結部が、前記内側部材における前記凹状部の縁部の外周側に周方向に分散して設けられている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、内側部材と外側部材とを連結する複数の連結部が、内側部材における凹状部の縁部の外周側に周方向に分散して設けられる構成であるので、連結部が蒸気に曝されるのを抑制することが可能となる。従って、複数の連結部の劣化をも抑制することができる。
【0018】
本発明に係る電気湯沸し装置の蓋の更なる特徴構成は、前記蒸気通路の途中に、その蒸気通路を通して湯水が外部に漏出するのを防止する安全弁部が設けられ、その安全弁部が、蒸気入口を有する弁収納部とその弁収納部内に設けられた弁体とを備えて構成され、
前記内側部材の凹状部が、前記内蓋板の上面に当接又は近接する壁部を備え、
前記弁収納部が、樹脂成形により前記内側部材の凹状部の壁部と一体的に形成されていると共に、当該壁部には、前記蒸気入口が前記通気室に連通するように形成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、蒸気通路の途中に、その蒸気通路を通して湯水が外部に漏出するのを防止する安全弁部が設けられているので、万が一、電気湯沸し装置が傾いたり倒れたりしても、装置本体内から湯水が外部に漏出するのを防止することができる。
そして、その安全弁部を構成する弁収納部が、樹脂成形により内側部材の凹状部の壁部と一体的に形成されていると共に、当該壁部には、蒸気入口が通気室に連通するように形成されているので、通気室内に流入した蒸気の全てを的確に安全弁部に導くようにしながら、製造コストの低減を図ることができる。
従って、蒸気通路を通して湯水が外部に漏出するのを防止する安全弁部を備えた電気湯沸し装置の蓋において、より一層低廉化を図りながら、耐久性を向上することができるようになった。
【0020】
本発明に係る電気湯沸し装置の蓋の更なる特徴構成は、耐熱材にて形成されて、前記蒸気排出口に嵌め込まれる排出口キャップ、及び、耐熱材にて形成されて、前記内側部材の前記通気口と前記排出口キャップとを連通する連通部材が設けられ、
前記蒸気通路が、蒸気を前記蒸気送出口、前記通気室、前記通気口、前記連通部材、前記排出口キャップを通して通流させて、前記排出口キャップから外部に排出するように構成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、蒸気通路がその経路の全長にわたって耐熱材にて構成されるので、蒸気の影響を低減して耐久性を向上することができる。
又、上蓋部材が蒸気に曝されるのを極力抑制することができるので、その上蓋部材を低耐熱性の樹脂にて形成することが可能となり、低廉化及び外観の向上を図ることができる。
従って、低廉化及び外観の向上をより一層図りながら、耐久性を向上することができるようなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電気ポットの斜視図
【図2】電気ポットの蓋の分解斜視図
【図3】電気ポットの蓋の縦断側面図
【図4】電気ポットの蓋の縦断側面斜視図
【図5】電気ポットの蓋の縦断後面図
【図6】電気ポットの蓋の要部を示す縦断側面図
【図7】別実施形態に係る電気ポットの蓋の要部を示す縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明を電気湯沸し装置としての電気ポットの蓋に適用した場合の実施の形態を説明する。
図1に示すように、電気ポットは、上側開放の概略容器状に構成された装置本体200と、その開口(図示せず)を覆う蓋100を主な部材として構成されている。
装置本体200は、詳細な説明及び図示を省略して簡単に説明すると、内部の貯留部(図示せず)に貯留される湯水を加熱する電気ヒータ(図示せず)、貯留部内の湯水を吐出口201から吐出するポンプ(図示せず)、操作部202等が設けられている。
蓋100は、その後部に設けられた横方向の揺動軸1(図2〜4参照)により揺動自在に装置本体200に取り付けられ、その蓋100の揺動軸1での揺動により装置本体200の開口を開閉するように構成されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、蓋100は、上蓋部材2とその下方の下蓋部材3とその下方の内蓋板4とが、上蓋部材2と下蓋部材3との間に断熱材5を充填した状態で一体的に組み付けられて構成されている。
そして、図3〜図5において破線で示すように、内蓋板4の下方の装置本体200から発生した蒸気を外部に排出するための蒸気通路6が、内蓋板4、下蓋部材3、断熱材5、上蓋部材2を通じて設けられている。
又、蒸気通路6の途中に、その蒸気通路6を通して湯水が外部に漏出するのを防止する安全弁部7が設けられ、その安全弁部7が、蒸気入口71を有する弁収納部72とその弁収納部72内に設けられた弁体73とを備えて構成されている。
【0025】
図2〜図4に示すように、本発明では、下蓋部材3が、開口部31aを備えた外側部材31とその外側部材31の開口部31aを塞ぐように配置される内側部材32とを備えて構成されている。
その内側部材32が、下方に開口する凹状部32aを備え且つその凹状部32a内外を連通する通気口32bを備える状態に、耐熱材にて形成されている。
内側部材32が、凹状部32aの縁部32gが全周にわたって内蓋板4の上面に近接する状態で設けられて、内側部材32の凹状部32aと内蓋板4の上面との間に通気室8が仕切り形成され、内蓋板4に、通気室8に連通する蒸気送出口41が設けられている。
そして、図3〜図5に示すように、蒸気通路6が、装置本体200から発生した蒸気を内蓋板4の蒸気送出口41、通気室8、蒸気入口71、安全弁部7、通気口32b、上蓋部材2の蒸気排出口2aを通して通流させて、その蒸気排出口2aから外部に排出するように構成されている。
【0026】
図2〜図5に示すように、この実施形態では、内側部材32の凹状部32aが、内蓋板4の上面に近接する壁部32cを備え、弁収納部72が、樹脂成形により内側部材32の凹状部32aの壁部32cと一体的に形成されていると共に、当該壁部32cには、蒸気入口71が通気室8に連通するように形成されている。
【0027】
蓋100の各部について、説明を加える。
図2〜図4に示すように、上蓋部材2には、その前部に位置させて、蓋100を開き操作をするための開き操作レバー9が設けられ、前記蒸気排出口2aには、複数の蒸気排出用スリット10aを有する排出口キャップ10が嵌め込まれている。尚、詳細は後述するが、排出口キャップ10は、下蓋部材3の内側部材32に2本のネジ15により取り付けられている。又、蓋100において、揺動軸1及び開き操作レバー9が並ぶ方向を前後方向とする。
排出口キャップ10は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、SPS(ジンジオタクチックポリスチレン)等の耐熱樹脂による成形加工により形成され、上蓋部材2は、PPS、SPS等の耐熱樹脂よりも耐熱性が低いPP(ポリプロピレン)樹脂等の低耐熱樹脂による成形加工により形成される。ちなみに、PP樹脂等の低耐熱樹脂は、光沢がありしかも所望の色に着色し易いので、蓋100の上面を形成する上蓋部材2を低耐熱樹脂にて形成することにより、蓋100の外観を向上することができる。
【0028】
図2〜図4に示すように、下蓋部材3の外側部材31は、蓋100の側周面を形成するものであり、軸心方向の中間部に隔壁部31bを備えた概ね円筒状に構成されて、その隔壁部31bに、内側部材32により塞がれる前記開口部31aが長手方向を前後方向に沿わせた長孔状に設けられている。
又、図2及び図4に示すように、外側部材31の隔壁部31bにおける開口部31aの外周部には、下向きに開口する複数(この実施形態では4個)のネジ孔部31cが周方向に分散して形成され、図3〜図5に示すように、外側部材31の下端開口縁部には、環状のパッキン嵌め込み部31dが突設されている。
更に、図3及び図4に示すように、外側部材31の上部開口部の後部の外周部には、前記揺動軸1が設けられている。
【0029】
この下蓋部材3の外側部材31は、PP樹脂等の低耐熱樹脂による成形加工により形成される。
蓋100の側周面を形成する下蓋部材3の外側部材31を、光沢がありしかも所望の色に着色し易い低耐熱樹脂により形成することにより、蓋100の外観を向上することができる。
【0030】
図2〜図4に示すように、下蓋部材3の内側部材32は、外側部材31の開口部31aに嵌め込み可能な横断面形状が概ね長円状の環状の壁部32cと、環状の壁部32cの上部を覆う天井部32dと、環状の壁部32cの下端のやや上方の鍔状部32eとを備えて構成され、環状の壁部32cとその上部を覆う天井部32dにより、前記凹状部32aが構成されている。そして、環状の壁部32cにおける鍔状部32eよりも下方側の部分が、凹状部32aの縁部32gに相当する。
凹状部32aの天井部32dは、凹状部長手方向一端側の高さが低い低天井部分と、凹状部長手方向他端側で低天井部分よりも高さが高い高天井部分とからなる2段状に構成され、天井部32dの高天井部分に、前記通気口32bが設けられている。
【0031】
図3及び図4に示すように、内側部材32が、その凹状部32aが外側部材31の開口部31aに嵌め込まれた状態で配置されると、内側部材32の鍔状部32eの上面が外側部材31の隔壁部31bの下面に当接する状態となり、図2及び図4に示すように、内側部材32の鍔状部32eには、外側部材31の複数のネジ孔部31cにそれぞれ連通する複数(この実施形態では4個)のネジ挿通孔32fが形成されている。
【0032】
図3、図4及び図6に示すように、内側部材32の鍔状部32eの下方側に、その鍔状部32eと環状の壁部32cとにより環状に形成される角部により、環状の下側封止部材11を嵌め込むための嵌め込み部12が構成される。
つまり、内側部材32の凹状部32aの縁部32gの外周側に、外側に向けて斜め下向きに開口する嵌め込み部12が凹状部32aの周方向に沿って環状に設けられ、環状の下側封止部材11が、内蓋板4の上面に当接する状態で嵌め込み部12内に嵌め込んで設けられている。
又、図2〜図4、及び、図6に示すように、内側部材32の鍔状部32eの上面には、凹状部32aの外周側を囲む状態で、外側部材31の隔壁部31bの下面と内側部材32の鍔状部32eの上面とを封止する環状の上側封止部材13が配設される。
これら下側封止部材11及び上側封止部材13は、耐熱性に優れたシリコンゴム等により形成される。
【0033】
図2、図4及び図5に示すように、下蓋部材3の内側部材32には、夫々、逆円錐台形状の有底筒状の2個の前記弁収納部72が一体的に備えられている。
具体的には、2個の弁収納部72は、凹状部32aの周方向に沿って並ぶ状態で、凹状部32aの壁部32cにおいて天井部32dの高天井部分に連なる部分に一体的に形成されている。
図2に示すように、各弁収納部72の内周面には、軸心方向に沿う複数のリブ72aが、周方向に間隔を隔てて設けられている。
図5に示すように、弁体73は、軸心方向の長さが弁収納部72の軸心方向の長さよりも短い逆円錐台形状に構成され、この弁体73が、複数のリブ72aの案内で上下方向に移動自在に弁収納部72内に収納されている。
図2及び図5に示すように、2個の弁収納部72夫々の上部開口が、凹状部32aの天井部32dのうちの高天井部分に開口され、これら弁収納部72の上部開口が、前記通気口32bとして用いられている。
図4及び図5に示すように、2個の弁収納部72夫々の周壁部のうちの凹状部32a内に臨む部分に、前記蒸気入口71が設けられている。
【0034】
図3〜図5に示すように、凹状部32aの天井部32dのうちの高天井部分の上部には、通気口32bとして用いられる弁収納部72の上部開口と前記排出口キャップ10とを連通する連通部材としての弁孔部材14が設けられている。この弁孔部材14には、2個の弁収納部72に各別に連通する主弁孔14aとその主弁孔14aよりも小径の補助弁孔14bとが備えられている。そして、この弁孔部材14が、前記排出口キャップ10と共に2本のネジ15にて内側部材32の凹状部32aの天井部32dに取り付けられている。
つまり、この実施形態では、蒸気通路6が、装置本体200から発生した蒸気を内蓋板4の蒸気送出口41、通気室8、蒸気入口71、安全弁部7、通気口32b、弁孔部材14、排出口キャップ10を通して通流させて、その排出口キャップ10から外部に排出するように構成されている。
【0035】
上述のように2個の弁収納部72を一体的に備える下蓋部材3の内側部材32、及び、弁孔部材14は、PPS、SPS等の耐熱樹脂による成形加工により形成される。
そして、下蓋部材3の内側部材32は、下蓋部材3の外側部材31、上蓋部材2及び内蓋板4により全体が覆われるので、下蓋部材3の内側部材32を光沢がなくしかも着色し難い耐熱樹脂により形成しても、蓋100の外観を損なうことがない。
【0036】
図2〜図5に示すように、断熱材5は、上蓋部材2と下蓋部材3との間に形成される空間に充填可能な形状に、断熱性に優れた樹脂による成形加工により形成される。
そして、上述のように下蓋部材3を外側部材31と内側部材32とにより構成し、その内側部材32の凹状部32aにより蒸気通路6を構成する通気室8を形成することにより、下蓋部材3の外側部材31と上蓋部材2との間に、広い空間を確保することができるので、下蓋部材3と上蓋部材4との間の空間を、耐熱材5の充填に有効利用することができ、それによって、省エネルギー効果を向上することができる。
【0037】
図2〜図4に示すように、内蓋板4は、横断面形状が概ね円状のドーム状に形成され、その天井部の上面には、前記下側封止部材11及び前記凹状部32aの縁部32gを嵌め込み可能な溝部42が環状に設けられ、更に、その内蓋板4の開口縁部には、下蓋部材3の外側部材31のパッキン嵌め込み部31dに当接可能な鍔部43が設けられている。
内蓋板4の天井部における環状の溝部42よりも内側の部分において、その長手方向の一端側には、前記蒸気送出口41として、複数(この実施形態では5個)の大径蒸気送出口41bが形成され、長手方向の他端側には、前記蒸気送出口41として、大径蒸気送出口41bよりも小径の複数(この実施形態では4個)の小径蒸気送出口41sが形成されている。
【0038】
図2及び図4に示すように、内蓋板4の天井部における環状の溝部42の外周側には、内側部材32の鍔状部32eの複数のネジ挿通孔32fにそれぞれ連通する複数(この実施形態では4個)のネジ挿通孔44が設けられている。
この内蓋板4は、金属板による成形加工により形成される。
【0039】
図2〜図4に示すように、内蓋板4の天井部の上面における環状の溝部42よりも内側の部分には、底部に蒸気孔16aを有する皿状の蒸気弁16が、その底部が上側になる姿勢で、複数の大径蒸気送出口41bを覆うように設けられている。
又、円環状の本体側封止部材17が、互いに当接された外側部材31のパッキン嵌め込み部31dと内蓋板4の鍔部43とに外嵌された状態で設けられて、蓋100が装置本体200の開口を閉じる姿勢に揺動されたときに、本体側封止部材17が装置本体200の開口縁内面に当接して蒸気の漏出を防止するように構成されている。
【0040】
次に、上述の如き複数種の構成部材を組み付けて、蓋100を構成する手順について説明を加える。
先ず、内蓋板4、下蓋部材3の外側部材31及び2個の弁収納部72を一体的に備えた下蓋部材3の内側部材32を、以下のように配置する。
即ち、図2〜図4に示すように、下蓋部材3の内側部材32における環状の壁部32cの下端部(凹状部32aの縁部32g)及び環状の下側封止部材11を内蓋板4の上面の環状の溝部42に嵌め込んだ姿勢で、下蓋部材3の内側部材32を内蓋板4の上面側に配置する。
並びに、上側封止部材13を下蓋部材3の内側部材32における鍔状部32eの上面に配置し、下蓋部材3の外側部材31を、その開口部31aに下蓋部材3の内側部材32における凹状部32aを嵌め込んだ状態で配置する。
そして、図2及び図4に示すように、複数のネジ18夫々を、内蓋板4のネジ挿通孔44、及び、下蓋部材3の内側部材32のネジ挿通孔32fに挿通して、下蓋部材3の外側部材31のネジ孔部31cに螺着することにより、内蓋板4、2個の弁収納部72を一体的に備えた下蓋部材3の内側部材32及び下蓋部材3の外側部材31を一挙に一体的に組み付ける。
【0041】
つまり、内蓋板4のネジ挿通孔44、内側部材32のネジ挿通孔32f、外側部材31のネジ孔部31c及びネジ18により、下蓋部材3の内側部材32と外側部材31とを連結する連結部Cが構成され、複数の連結部Cが、内側部材32における凹状部32aの縁部32gの外周側に周方向に分散して設けられていることになる。この実施形態では、連結部Cがネジ式に構成されている。
【0042】
このように内蓋板4、下蓋部材3の内側部材32及び下蓋部材3の外側部材31を一体的に組み付けると、図6にも示すように、下側封止部材11が内側部材32の鍔状部32eの下面と溝部42の底面との間に挟持される状態で、下側封止部材11及び凹状部32aの縁部32g(壁部32cの下端部)が溝部42に嵌め込まれることになる。つまり、内側部材32の鍔状部32eの下面は、嵌め込み部12の内面の一部に相当するので、下側封止部材11が嵌め込み部12の内面と溝部42の内面との間に挟持される状態で、下側封止部材11及び凹状部32の縁部32gが溝部42に嵌め込まれていることになる。
又、上側封止部材13が外側部材31の隔壁部31bの下面と内側部材32の鍔状部32eの上面との間に挟持されて、それらの間が気密状に封止されることになる。
【0043】
次に、図3〜図5に示すように、下蓋部材3の内側部材32における凹状部32aの天井部32dに、弁孔部材14及び排出口キャップ10を2本のネジ15により取り付ける。
尚、凹状部32aの天井部32dへの弁孔部材14及び排出口キャップ10の取り付けは、下蓋部材3の内側部材32を内蓋板4及び下蓋部材3の外側部材31と一体的に組み付ける前でも良い。
【0044】
次に、断熱材5を、内側部材32と外側部材31とからなる下蓋部材3内に充填した状態で、外側部材31の上部に複数のネジ(図示せず)を用いて、取り付ける。
このようにして、蓋100が構成される。
【0045】
上述のように構成した電気ポットの蓋100では、図3〜図5に示すように、装置本体200から発生した蒸気は、内蓋板4の複数の蒸気送出口41を通って通気室8に流入し、更に、2個の蒸気入口71を通って2個の弁収納部72に流入し、更に、主弁孔14a及び補助弁孔14bを通って2個の弁収納部72から流出したのち、排出口キャップ10から外部に排出される。
そして、外側部材31と内側部材32とからなる下蓋部材3のうち、蒸気に曝されるのは、内側部材32だけであり、その内側部材32を耐熱樹脂にて形成することにより、蒸気の影響を極力低減して耐久性を向上することができる。一方、外側部材31は蒸気に曝されることがないので、低耐熱樹脂で形成しても、劣化を防止することができる。
つまり、蒸気通路6を構成する部材(内蓋板4、下蓋部材3の内側部材32、弁孔部材14及び排出口キャップ10)は、全て耐熱材で構成されているため、蒸気による影響を極力低減して耐久性を向上することができるのである。
しかも、蓋100の側周面を形成する下蓋部材3の外側部材31、及び、蓋100の上面を形成する上蓋部材2は、光沢があり所望の色に着色し易い低耐熱樹脂にて形成されているので、蓋100の外観を向上することができる。
【0046】
又、安全弁部7が設けられているので、万が一、電気ポットが転倒しても、2個の弁収納部72に収納されている弁体73が移動して、主弁孔14a及び補助弁孔14bを閉じるので、湯水の漏出を防止することができる。
ところで、沸騰中あるいは沸騰直後に、蓋100が急激に閉じられた場合、各弁体73が上昇して主弁孔14a及び補助弁孔14bが閉じられる場合がある。
そのような場合でも、主弁孔14a及び補助弁孔14bの径を異ならせてあるので、小径の補助弁孔14bを先に開放させることができ、装置本体200の貯留部内の内圧が急激に上昇するのを防止することができる。
【0047】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(1) 内側部材32の凹状部32aの形状は、上記の実施形態において例示した形状、即ち、環状の壁部32cとその壁部32cの上部を覆う天井部32dとにより構成される形状に限定されるものでなく、種々の形状にすることができる。
例えば、上記の実施形態では、天井部32dを高さが2段状になるように構成したが、高さが均等になるように構成しても良い。
又、凹状部32aの形状は、球の一部のような形状でも良い。
【0048】
(2) 下側封止部材11の配設構成は、上記の実施形態において説明した構成に限定されるものではない。
例えば、図7に示すように、内蓋板4の上面に、下側封止部材11を内周側に嵌め込み可能な凸部45を環状に設ける。そして、下側封止部材11を、凸部45の内周側に形成される内蓋板4の上面の角部と嵌め込み部12(鍔状部32eと壁部32cとの角部にて構成される)とにより挟持する構成でも良い。
【0049】
(3) 内側部材32と外側部材31とを連結する複数の連結部Cは、内側部材32における凹状部32aの縁部32gの内周側に周方向に分散して設けても良い。
【0050】
(4) 上記の実施形態では、下蓋部材3の内側部材32と外側部材31とを連結する連結部Cにより、内蓋板4、下蓋部材3の内側部材32及び下蓋部材3の外側部材31を一挙に連結したが、連結部Cにより、下蓋部材3の内側部材32と外側部材31とを連結して、別の連結部により、内蓋板4と下蓋部材3の外側部材31とを連結するように構成しても良い。
又、上記の実施形態では、内蓋板4のネジ挿通孔44、内側部材32のネジ挿通孔32f、外側部材31のネジ孔部31cをネジ18により挿通或いは螺着して一挙に連結する連結部Cを用いたが、内側部材32のネジ挿通孔32fを挿通させずに内蓋板4のネジ挿通孔44、外側部材31のネジ孔部31cをネジ18により挿通或いは螺着して、内蓋板4と外側部材31との間に内側部材32(鍔状部32e)を挟持して連結するように連結部Cを構成しても良い。
さらに、下蓋部材3の内側部材32と外側部材31とを連結する連結部Cは、上記の実施形態において例示したネジ式に限定されるものではなく、例えば、鉤部とその鉤部を嵌め込み可能な嵌め込み部とから成る嵌め込み式でも良い。
【0051】
(5) 上記の実施形態では、安全弁部7の弁収納部72と下蓋部材3の内側部材32とを一体的に成形加工したが、安全弁部7の弁収納部72と下蓋部材3の内側部材32とを別体に構成して、それらを、弁収納部72の蒸気入口71が凹状部32aに連通する形態に組み付けるようにしても良い。
【0052】
(6) 上記の実施形態では、内側部材32をその凹状部32aの縁部32gが全周にわたって内蓋板4の上面に近接する状態で設けたが、内側部材32をその凹状部32aの縁部32gが全周にわたって内蓋板4の上面に当接する状態で設けても良い。
【0053】
(7) 上記の実施形態では、上蓋部材2の蒸気排出口2aに排出口キャップ10を嵌め込んで、蒸気通路6を、排出口キャップ10を通して蒸気を通流させて、外部に直接排出させるように構成したが、排出口キャップ10を省略して、蒸気を直接上蓋部材2の蒸気排出口2aを通して通流させるように構成しても良い。
【0054】
(8) 上記の実施形態では、本発明を電気ポットの蓋100に適用する場合について説明したが、本発明は、電気ポット以外に、電気ケトル、沸騰式加湿機等の種々の電気式湯沸し装置の蓋に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、低廉化を図りながら、耐久性を向上し得る電気湯沸し装置の蓋を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
2 上蓋部材
2a 蒸気排出口
3 下蓋部材
4 内蓋板
6 蒸気通路
7 安全弁部
8 通気室
10 排出口キャップ
11 下側封止部材(封止部材)
12 嵌め込み部
14 弁孔部材(連通部材)
31 外側部材
31a 開口部
32 内側部材
32a 凹状部
32b 通気口
32c 壁部
32g 縁部
41 蒸気送出口
42 溝部
71 蒸気入口
72 弁収納部
73 弁体
100 蓋
200 装置本体
C 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋部材とその下方の下蓋部材とその下方の内蓋板とが一体的に組み付けられ、
前記内蓋板の下方の装置本体から発生した蒸気を外部に排出するための蒸気通路が、前記内蓋板、前記下蓋部材、前記上蓋部材を通じて設けられた電気湯沸し装置の蓋であって、
前記下蓋部材が、開口部を備えた外側部材とその外側部材の開口部を塞ぐように配置される内側部材とを備えて構成され、
前記内側部材が、下方に開口する凹状部を備え且つその凹状部内外を連通する通気口を備える状態に、耐熱材にて形成され、
前記内側部材が、前記凹状部の縁部が全周にわたって前記内蓋板の上面に当接又は近接する状態で設けられて、前記内側部材の凹状部と前記内蓋板の上面との間に通気室が仕切り形成され、
前記内蓋板に、前記通気室に連通する蒸気送出口が設けられ、
前記蒸気通路が、前記装置本体から発生した蒸気を前記内蓋板の蒸気送出口、前記通気室、前記通気口、前記上蓋部材の蒸気排出口を通して通流させて、前記蒸気排出口から外部に排出するように構成されている電気湯沸し装置の蓋。
【請求項2】
前記内側部材の凹状部の縁部の外周側に、外側に向けて斜め下向きに開口する嵌め込み部が前記凹状部の周方向に沿って環状に設けられ、
環状の封止部材が、前記内蓋板の上面に当接する状態で前記嵌め込み部内に嵌め込んで設けられている請求項1に記載の電気湯沸し装置の蓋。
【請求項3】
前記内蓋板の上面に、前記封止部材及び前記凹状部の縁部を嵌め込み可能な溝部が環状に設けられ、
前記封止部材が前記嵌め込み部の内面と前記溝部の内面との間に挟持される状態で、前記封止部材及び前記凹状部の縁部が前記溝部に嵌め込まれている請求項2に記載の電気湯沸し装置の蓋。
【請求項4】
前記内側部材と前記外側部材とを連結する複数の連結部が、前記内側部材における前記凹状部の縁部の外周側に周方向に分散して設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気湯沸し装置の蓋。
【請求項5】
前記蒸気通路の途中に、その蒸気通路を通して湯水が外部に漏出するのを防止する安全弁部が設けられ、その安全弁部が、蒸気入口を有する弁収納部とその弁収納部内に設けられた弁体とを備えて構成され、
前記内側部材の凹状部が、前記内蓋板の上面に当接又は近接する壁部を備え、
前記弁収納部が、樹脂成形により前記内側部材の凹状部の壁部と一体的に形成されていると共に、当該壁部には、前記蒸気入口が前記通気室に連通するように形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気湯沸し装置の蓋。
【請求項6】
耐熱材にて形成されて、前記蒸気排出口に嵌め込まれる排出口キャップ、及び、耐熱材にて形成されて、前記内側部材の前記通気口と前記排出口キャップとを連通する連通部材が設けられ、
前記蒸気通路が、蒸気を前記蒸気送出口、前記通気室、前記通気口、前記連通部材、前記排出口キャップを通して通流させて、前記排出口キャップから外部に排出するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気湯沸し装置の蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104167(P2011−104167A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263159(P2009−263159)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】