説明

電気炊飯ジャー

【課題】上記の点に鑑み、知られた冷却技術を従来にない活かし方にてご飯をより美味しく炊き上げ、また、取り扱える電気炊飯ジャーを提供する。
【解決手段】内鍋2を加熱する加熱手段3と、内鍋2を冷却する冷却手段4とを備え、これら加熱手段3および冷却手段4は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで動作制御し、冷却手段4は、送風による空冷方式、冷却水路との直接または間接の熱交換による水冷方式、電気冷熱源21との直接または間接の熱交換による電気冷却方式、の少なくとも1つであることよって、上記の課題を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気炊飯ジャーで、加熱手段に併せ冷却手段としてペルチェ素子を備え、炊飯後の保温温度を15℃以下の低い温度の保温に適用する技術が従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、米の浸漬温度、浸漬時間の調節によるおにぎりやテイクアウト食品等の加工米の食味および食味保存の向上に関する研究成果として、炊飯時の米の吸水についての近時の研究で、米の浸漬温度が低く(5℃)浸漬時間を長くする(120分)と炊き上がった米飯の物性は軟らかくなり、かつ粘りは増加し品質が向上すること、および、米飯の保存中の水分蒸発も少なくなく、食味が長時間保存されること、が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
この報告は、また、25℃では吸水速度は早く一定に達する一方、浸漬温度5℃での吸水は吸水速度は遅いが、浸漬時間が長くなると25℃よりもその吸水量は多くなる。このことは、低温浸漬により、粘り良質の加工米を得るには浸漬時間を長くする(120分)必要があること、浸漬温度が低い方が米飯の粘りが強くなり、低温親浸漬どうしの比較で浸漬時間の増加に伴って米飯の粘りが増加し硬さが減少し、120分以上の浸漬時間の場合には食味が粘りと硬さが適正となり、良好な食味になること、5℃と25℃で2時間浸漬して製造した白飯を25℃で12時間保温後、75℃で15分間白米を再加熱したときの蒸発量は、浸漬温度25℃よりも5℃の方が水の蒸発量が少なくなり保存性が向上することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−108096号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】URL[http://www.affrc.go.jp/ja/research/seika/data_nfri/h06/hfri94007]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示の技術は、非特許文献1に開示の技術を活かしていないし、これを活かした炊飯技術はまだ提案されていない。また、ユーザーの炊飯後のご飯の取り扱いも多岐に渡り、炊飯して即時に冷凍庫にて冷凍する要望もあるが、これに応える提案もなされていない。炊飯直後の高温のままのご飯を即冷凍するのはご飯の外部まわりと内部とに極端な温度差を生み外部まわりでの多量の結露原因となるのでご飯の食味低下につながるし、冷凍庫の使用上にも問題が生じる。
【0008】
これらから、ユーザの多様な要望に応えるのに伴い、非特許文献1に開示の冷却技術を別個に活かしてご飯をより美味しく炊き上げ、また、取り扱える電気炊飯ジャーの提供が望まれる。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、知られた冷却技術を従来にない活かし方にてご飯をより美味しく炊き上げ、また、取り扱える電気炊飯ジャーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するために、本発明の電気炊飯ジャーは、器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御することを1つの特徴としている。
【0011】
このような構成では、加熱手段と冷却手段とを備えて、それらを、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御することにより、加熱手段の動作制御による各種モードでの炊飯や保温の進行に併せ、加熱手段の動作に制限されない冷却手段の動作制御にて、予約炊飯時の予約待機工程時、炊飯後の保温温度、冷凍適正温度その他の用途に応じた温度への保温工程を含む降温時、炊飯中のその他の必要降温時を含んで、冷却手段を動作させ、予約待機工程中の浸漬水の低温化、常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水行程途中の合数判定開始時の所定温度への即時降温による温度のばらつき防止、冷凍適正温度への即時降温などが図れる。
【0012】
それには、冷却手段は、送風による空冷方式、冷却水路との直接または間接の熱交換による水冷方式、電気冷熱源との直接または間接の熱交換による電気冷却方式、の少なくとも1つであればよい。
【0013】
また、冷却手段は、単体または複数組み合わせたペルチェ素子であり、中空の器体の内壁を構成する内装ケースの外周側に配して電磁誘導加熱手段に付帯した発熱部品を冷却する送風ファンからの送風に曝して放熱を図るヒートシンクと、内装ケースの金属製胴部との間に、放熱側をヒートシンクに吸熱側を内装ケースの金属製胴部にそれぞれ向けて挟み込んだものとすることができる。
【0014】
また、冷却手段は、加熱手段と独立した動作制御を活かして、炊飯モードでの炊飯を開始する予約時刻までの米の浸漬を伴う予約待機工程での、浸漬温度を、吸水工程での常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水温度未満の所定温度を保つ動作、常温水からの炊飯開始時に常温を超えα化温度未満の所定の温度で吸水速度を高めながら、途中の昇温特性から収容している米の合数を判定する合数判定工程を含む吸水工程への、移行時点での、吸水開始時の常温水の温度を吸水温度と所定の温度差にして吸水工程に移行させる動作、食味、腐敗防止を重視した保温温度を保つ保温工程での、保温温度未満の冷凍対応温度域までの降温速度を高める動作、の少なくとも1つを行うことができる。
【0015】
また、予約待機工程は、吸水温度未満の浸漬温度を保つように冷却手段を働かせ、予約待機時間が所定時間を超える場合、吸水工程は、合数判定工程のみ実行するものとすることができる。
【0016】
また、予約待機工程は、吸水温度未満の浸漬温度を保つように冷却手段を働かせ、予約待機時間が所定時間を超える場合、吸水工程は、合数判定工程のみ実行し、予約待機時間が所定時間未満である場合、腐敗防止条件満足を条件に予約待機実行時間に応じ予約待機中の浸漬温度を上げ、またはおよび、予約待機実行時間に応じ予約待機中の浸漬温度を上げることで吸水を満足し、なお吸水が不足する場合だけ、吸水工程は吸水の不足度や予約待機工程実行時間に応じ短縮して実行することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気炊飯ジャーによれば、加熱手段の動作制御による各種モードでの炊飯や保温の進行に併せ、加熱手段の動作に制限されない冷却手段の独立した動作制御により、予約待機工程中の時間を有効利用した浸漬水の低温化によるご飯の美味しさに有利な吸水を実行することができ、夏場などの高温環境での長時間待機によっても腐敗を防止できるし、常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水行程途中の合数判定開始時の所定温度への即時降温による温度のばらつきの合数判定精度への影響をなくせるので精度良い合数判定ができる。また、冷凍適正温度への即時降温による待ち時間の短縮が図れて直ぐに冷凍庫に入れられるなど便利である。
【0018】
これを達成する冷却手段としては、送風による空冷方式、冷却水路との直接または間接の熱交換による水冷方式、電気冷熱源との直接または間接の熱交換による電気冷却方式、の少なくとも1つであればよいし、単体または複数組み合わせたペルチェ素子を用いて省スペースでの強制冷却が実現する。
【0019】
ペルチェ素子を用いる場合、電磁誘導加熱方式での、電磁誘導加熱手段に必要な送風ファンおよびヒートシンクと、内装ケースの金属部分とを有効利用し、ペルチェ素子の放熱側のヒートシンクとの熱結合による放熱促進を伴う、吸熱側の高い吸熱効率にて冷却した内装ケースの金属部から有効に強制冷却することができる。
【0020】
また、予約待機工程は、吸水温度未満の浸漬温度を保つように冷却手段を働かせ、予約待機時間が所定時間、例えば2時間を超える場合、予約待機時間を有効利用して良質のご飯が炊飯できる低温吸水条件を既に満足しておくことができ、吸水行程は不要なことからこれを省略して合数判定工程のみ実行して、ご飯の食味を低下させないで実炊飯時間を短縮することができる。
【0021】
また、予約待機時間が所定時間未満である場合、浸漬水温度を上げ、またはおよび、吸水工程は吸水の不足度や予約待機工程実行時間に応じ短縮して実行することにより、美味しいご飯を炊き上げるための吸水を必要最小限の吸水工程時間で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気炊飯ジャーの断面図である。
【図2】同電気炊飯ジャーの器体内装ケースとその周りの冷却手段を示す斜視図である。
【図3】同電気炊飯ジャーの炊飯から保温ないしはご飯の取り扱いに対応した幾つかの温度制御例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る電気炊飯ジャーの実施の形態について、図1〜図3を参照しながら詳細に説明し本発明の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
【0024】
図1に示す本実施の形態の電気炊飯ジャー100は、図1に示すように、器体1に収容された内鍋2を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができ、内鍋2を加熱する加熱手段3と、内鍋2を冷却する冷却手段4とを備え、これら加熱手段3および冷却手段4は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御するようにしている。
【0025】
このように、加熱手段3と冷却手段4とを備えて、それらを、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御することにより、加熱手段3の動作制御による図3にグラフで示す各種モードでの炊飯行程や保温行程の進行に併せ、加熱手段3の動作に制限されない冷却手段4の動作制御にて、図3にグラフで示す予約炊飯時の予約待機工程時、炊飯後の図3に一点鎖線グラフで示す食味や腐敗防止を重視した例えば70℃〜75℃程度の保温温度、破線グラフで示す冷凍適正温度、その他の用途に応じた温度への保温工程を含む降温時、炊飯中のその他の必要降温時を含んで、冷却手段4を動作させ、予約待機工程中の浸漬水の例えば図3に実線グラフに示す5℃程度の低温化、現時点の常温を超えα化温度未満の例えば図3に二点鎖線グラフで示す25℃で吸水速度を高める吸水行程途中の合数判定開始時の所定温度への即時降温による温度のばらつき防止、例えば図3に破線グラフで示す例えば結露防止を重視した60℃を上限とする冷凍適正温度への即時降温などが図れる。もっとも、降温時の冷却に加熱手段3を併用すれば、結露防止などのための温度バランスを取りやすいなどの利点はあるが必須とはならない。
【0026】
以上の結果、加熱手段3の動作制御による各種モードでの炊飯や保温の進行に併せ、加熱手段3の動作に制限されない冷却手段4の独立した動作制御により、予約待機工程中の時間を有効利用した浸漬水の低温化によるご飯の美味しさに有利な吸水を実行することができ、夏場などの高温環境での長時間待機によっても腐敗を防止できるし、常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水行程途中の合数判定開始時の所定温度への即時降温による温度のばらつきの合数判定精度への影響をなくせるので精度良い合数判定ができる。また、冷凍適正温度への即時降温による待ち時間の短縮が図れて直ぐに冷凍庫に入れられるなど便利である。以上のような冷却手段4の動作による冷却制御は、少なくとも1つを実行するだけでも有効である。
【0027】
このような制御のために、図1に示す器体1は前部に、例えば上向きまたは斜め上向きとした、操作パネル11を備え、図示しないが各種炊き分けの炊飯モード、予約炊飯の予約時刻設定部、保温選択操作部、冷凍適正温度への急速冷却選択操作部、炊飯スタート操作部などが、選択状態の表示部、動作状態の表示部、現時刻、炊飯の残時刻などの時刻表示部が設けられている。操作パネル11はその内側に操作基板11aがマイクロコンピュータを搭載して位置し、ハード系の制御を行う制御装置12が有している制御基板12aと接続され、操作基板11aはマイクロコンピュータの制御機能により、制御基板12aと協働して、初期設定、操作パネル11からの入力情報に応じ、加熱手段3や冷却手段4を個別に動作制御して炊飯や保温、冷凍適正温度への即時降温などを実行する。
【0028】
これには、冷却手段4は、送風による空冷方式、冷却水路との直接または間接の熱交換による水冷方式、電気冷熱源との直接または間接の熱交換による電気冷却方式、の少なくとも1つであればよい。図1に示す例では、加熱手段3は主として、炊飯に関与し、保温にも用いられる加熱コイル13と、この加熱コイル13からの交番磁界を受けて発熱する内鍋2自体または内鍋に設けられた発熱体14との組合わせよりなる電磁誘導加熱手段とし、保温時に生じる温度差を緩和ないしはなくすために器体1の肩部1cや蓋25に設けられる電気ヒータ31などを併用する。もっとも、電気ヒータ31なども電磁誘導加熱手段とすることもできる。加熱コイル13は中空の器体1内に設けられ、器体1の内壁を構成する内装ケース15の外まわり直近に位置して内鍋2側の発熱体14との距離を小さくして電磁誘導効率を高めている。また、内装ケース15の少なくとも加熱コイル13と対向する例えば底部範囲を透磁性のよい樹脂製底部15aとし、加熱コイル13から発熱体14への電磁誘導作用を低下させないようにしている。
【0029】
加熱コイル13はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor: 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)16を介したスイッチング制御に基づき高周波電力を印加されて動作し、動作中は発熱するので、これを器体1内で空冷するための送風ファン17を器体1に内蔵し、送風ファン17に吸引した外気を制御基板12aなどの仕切り効果によって加熱コイル13側と、制御基板12aのIGBT16の搭載側とに振り分けて送風し、加熱コイル13と、制御基板12a上の発熱要素であるIGBT16などとに送風して空冷するようにしている。IGBT16の発熱が高温であるために、送風ファン17からの送風に対するフィンなどの熱交換作用部を持った熱伝導性に優れたアルミニウムなどよりなるヒートシンク18に接触させて冷却効果を高めている。IGBT16はヒートシンク18に対しては絶縁シートを介して接触させるのが漏電による問題回避に好適となる。
【0030】
冷却手段4は、単体または複数組み合わせたペルチェ素子21を用いて省スペースでの強制冷却ができる。この場合、ペルチェ素子21は、図1に示す例のように、中空の器体1を構成する外装ケース19および内装ケース15の内の内装ケース15外周に配して器体1に内蔵し、電磁誘導加熱手段に付帯した発熱部品であるIGBT16などを冷却する送風ファン17からの送風に曝して放熱を図るヒートシンク18と、内装ケース15の金属部分、具体的には前記樹脂製底部15aと樹脂製肩部15cとの間に設けた鋼板やアルミニウムなど金属製胴部15bとの間に、放熱側をヒートシンク18に吸熱側を内装ケース15の金属製胴部15bにそれぞれ向けて挟み込んだものとしている。これにより、電磁誘導加熱方式での、電磁誘導加熱手段に必要な送風ファン17およびヒートシンク18と、内装ケース15の金属胴部分15bとを有効利用し、ペルチェ素子21の放熱側のヒートシンク17との熱結合による放熱促進を伴う、吸熱側の高い吸熱効率にて冷却した内装ケース15の金属部、内鍋2の胴部を囲う金属製胴部15bから有効に強制冷却することができる。しかも、ペルチェ素子21の放熱側および吸熱側のいずれも平面であるので、ヒートシンク17とは平面どうし直接に面接触させて熱伝導するようにしているが、内装ケース15の円筒状である金属製胴部15bとはアルミニウムなどよりなる熱伝導スぺーサ20を介して面接触できるようにして、いずれの側でも高い熱伝導が行われるようにしている。これによって、金属製胴部19aに平面部を形成して直接の面接触させるような場合にできる内鍋2との間の隙間が周方向に極端に不均一になるのを回避することができる。
【0031】
なお、ペルチェ素子21の採用は、通電電極の反転によって発熱側と吸熱側とを反転させられるので、必要に応じ内鍋2を加熱する保温などのための補助加熱手段とすることができる。
【0032】
また、予約待機工程は、例えば25℃程度とされる吸水温度未満の例えば5℃程度の浸漬温度を保つように冷却手段4を働かせ、予約待機時間が所定時間例えば米への吸水が飽和する2時間を超える場合、吸水工程は、図3に実線グラフで示すように合数判定工程のみ実行するものとすることができる。これにより、予約待機時間を有効利用して良質のご飯が炊飯できる低温吸水条件を既に満足しておくことができ、吸水行程は不要なことからこれを省略して合数判定工程のみ実行して、ご飯の食味を低下させないで実炊飯時間を短縮することができる。
【0033】
さらに、予約待機時間が所定時間未満、例えば2時間未満である場合、図3に仮想線で示すように腐敗防止の温度条件、例えば30℃程度以下であることを条件に予約待機実行時間に応じ予約待機中の浸漬温度を上げ、またはおよび、吸水工程は予約待機工程実行時間に応じ最大限短縮して実行する吸水工程は予約待機工程実行時間に応じ短縮して実行することもできる。
【0034】
ここで、外装ケース19は、金属製胴部19aを合成樹脂製の底部材19cと合成樹脂製の肩部材19bとの間に挟んで一体化し、内装ケース15とは双方の肩部材15c、19bにて連結している。しかし、これに限られることはなく、内装ケース15の構成も同様である。
【0035】
底部材19cのヒートシンク18の下方位置に吸気口26を設けてその上にケーシング17aを有した軸流の送風ファン17を設置し、底部材19cの下から吸い込んだ外気を上方に吹き上げるようにしている。吹きあげた送風空気は、既述した制御基板12aが縦向きで送風ファン17の吹き出し口17bのほぼ中央部に位置することで、ヒートシンク18側と加熱コイル13側とに振り分け、双方を冷却するようにしている。加熱コイル13の外周りには、巻き線を横断するよう放射状に配置されたフェライト27が設けられ、加熱コイル13が高周波駆動されるときに発生し発熱体14である銀層に働く交番磁界を安定させるようにしてある。内鍋2は本例では土鍋などの非金属製であり、高台2aにて内装ケース15底部の外周部複数個所、具体的には3か所以上に設けたゴムなどの弾性支持部28に受載されるようにし、内装ケース15底部の中央に器体1内から内装ケース15の内側に突出するようにばね付勢した温度センサ29が設けられ、弾性支持部28に載置された内鍋2の底部外面に圧接することで、発熱体14が加熱コイル13によって発熱されるときの温度の変化を検出するようにしてあり、検出した温度情報の基に操作基板11a上のマイクロコンピュータによって炊飯時および保温時の温度制御を行う。蓋25は、樹脂製の上板32と下板33とで中空に形成されて、器体1の肩部材19bの後部にヒンジピン34により開閉できるように支持し、下板33の内鍋2の開口に対応する範囲にアルミニウムなど金属製の放熱板35を設けて、前記電気ヒータ31を上面に装備し、内鍋2の開口を閉じるアルミニウムなど金属製の内蓋36を介し炊飯後のご飯を上方から加熱して温度むらのない、従って、結露が生じない保温に役立てるようにしている。内蓋36には内鍋2の開口との間をシールするシール部材41が装着され、蓋25の下板33と放熱板35との嵌め合わせ部には内蓋36の外周部との間をシールするシール部材42を挟持して設けてある。また、蓋25の前部には、蓋25が閉じられたとき、器体1の肩部材19bの前部に軸43で枢支されロック位置を保つようにばね付勢されたロック部材44と係合して蓋25を閉じ位置にロックする係合部45が設けられ、蓋25を閉じると自動的に閉じ状態にロックされ、ロック部材44をばねに抗してロック解除操作することで蓋25の閉じ位置へのロックを解き、蓋25がばねの付勢力によって適度な制動のもとに開かれるようにしている。閉じ状態での蓋25はそのシール部材42を圧接させて双方間のシール部材42によるシールを確保するのに併せ、内蓋36を押圧することでシール部材43をも内鍋2の開口に圧接させて双方間のシール部材43によるシール状態を確保し、炊飯や保温がプログラム通り、設定通りに遂行されるようにしている。内蓋36と蓋25とは分離して独立に取扱い、双方間の洗浄や清掃が行えるようにするが、蓋25の開閉に同伴できるよう、蓋25の周方向適数か所に内蓋36の外周部を弾性係合させるようにばね付勢した係合部材46を設けてある。また、内蓋36には放熱板35との間で、内鍋2内のおねばや蒸気をシールリップ47の放熱板35への圧接力による制限の基に、内蓋36および放熱板35間に吹き出させる吹き出し口48を設けてあり、蓋25にはおねば分離室49aにておねばを分離した後の蒸気を外部に逃がす蒸気口49が設けられている。
【0036】
ここで、冷却手段4としての、内鍋2の空冷には、送風ファン17からの送風を適宜な経路で器体1の内装ケース15と内鍋2との間の隙間に導くことで簡単に達成することができる。また、冷却水路との直接または間接の熱交換による水冷方式は冷熱源をペルチェ素子21として水がポンプで循環する冷却水路に働かせ、この冷却水路を内鍋2と直接または間接に熱交換する位置に配管すればよい。さらに、ペルチェ素子21などの電気冷熱源との間接の熱交換による電気冷却方式は図示した具体例のように実現するし、内装ケース15を貫通するなどして内鍋2に直接または間接に熱結合することで実現する。なお、空冷時に冷熱源と循環接触させる冷却空気を用いる場合は、吸記口26および排気口51は閉じておくのが好適である。
【0037】
また、冷却手段4は、夏場での保温などで腐敗が発生するような場合に、腐敗なしに長時間保温できるように働かせられる。また、炊飯直後の保温時に、ご飯を素早く冷却して冷凍庫での冷凍保存に適した温度とするのとは、別に、黄変を低減し、保温ご飯の状態を高めるだけにも用いられる。また、前記温度センサ29、室温センサ、器体1内、具体的には操作基板11aや制御基板12a上の室温センサの少なくとも1つによる温度情報に基づいた制御にて既述の各種冷却のために働かせるのが有効で、温度情報が多い程より好適であり、器体1や加熱コイル13などの冷却により故障の防止を図ることもできる。同様な目的で、先の炊飯終了から次の炊飯までの経過時間の計時によって、先の炊飯時の温度の影響がある時間内での再炊飯により過剰な温度になるのを冷却により防止できるようにもなる。また、吸気口26や排気口51を塞がれたり、載置位置によって塞いでしまったりしたときの異常昇温時の冷却対応もできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電気炊飯ジャーの炊飯や保温、保温後の取り扱い時の各種温度条件を、冷却によって好適に制御できる。
【符号の説明】
【0039】
1 器体
2 内鍋
3 加熱手段
4 冷却
11 操作パネル
11a 操作基板
12 制御装置
12a 制御基板
13 加熱コイル
14 発熱体
15 内装ケース
15b 金属製胴部
16 IGBT
17 送風ファン
18 ヒートシンク
20 熱伝導スぺーサ
21 ペルチェ素子
29 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、
内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御することを特徴とする電気炊飯ジャー。
【請求項2】
器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、
内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御し、冷却手段は、送風による空冷方式、冷却水路との直接または間接の熱交換による水冷方式、電気冷熱源との直接または間接の熱交換による電気冷却方式、の少なくとも1つであることを特徴とする電気炊飯ジャー。
【請求項3】
器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、
内鍋を加熱する電磁誘導加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御し、冷却手段は、単体または複数組み合わせたペルチェ素子であり、中空の器体を構成する内装ケースの外周側に配して電磁誘導加熱手段に付帯した発熱部品を冷却する送風ファンからの送風に曝して放熱を図るヒートシンクと、内装ケースの金属製胴部との間に、放熱側をヒートシンクに吸熱側を内装ケースの金属製胴部にそれぞれ向けて挟み込んだことを特徴とする電気炊飯ジャー。
【請求項4】
器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、
内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御し、冷却手段は、炊飯モードでの炊飯を開始する予約時刻までの米の浸漬を伴う予約待機工程での、浸漬温度を、吸水工程での常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水温度未満の所定温度を保つ動作、常温水からの炊飯開始時に常温を超えα化温度未満の所定の温度で吸水速度を高めながら、途中の昇温特性から収容している米の合数を判定する合数判定工程を含む吸水工程への、移行時点での、吸水開始時の常温水の温度を吸水温度と所定の温度差にして吸水工程に移行させる動作、沸騰温度未満の温度での高温保温、高温保温温度よりも低い温度での通常保温、通常保温温度未満での省エネ保温、の少なくとも1つを行う保温工程での、保温温度未満の冷凍対応温度域までの降温速度を高める動作、の少なくとも1つを行うことを特徴とする電気炊飯ジャー。
【請求項5】
器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、
内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御し、冷却手段は、炊飯モードでの炊飯を開始する予約時刻までの米の浸漬を伴う予約待機工程、必要に応じて行い常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水温度未満の所定温度で米への吸水速度を高めながら、途中の昇温特性によって米の合数を判定する合数判定工程を含む吸水行工程、沸騰温度未満の温度での高温保温、高温保温温度よりも低い温度での通常保温、通常保温温度未満での省エネ保温、の少なくとも1つを行う保温工程、の予約待機工程は、吸水温度未満の浸漬温度を保つように冷却手段を働かせ、予約待機時間が所定時間を超える場合、吸水工程は、合数判定工程のみ実行することを特徴とする電気炊飯ジャー。
【請求項6】
器体に収容された内鍋を炊飯モードで加熱して炊飯を行い、炊飯後保温モードで加熱して保温するか、保温モードを省略することができる電気炊飯ジャーにおいて、
内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋を冷却する冷却手段とを備え、これら加熱手段および冷却手段は、少なくとも単独動作時間を持つ異なった動作モードで個別に動作制御し、冷却手段は、炊飯モードでの炊飯を開始する予約時刻までの米の浸漬を伴う予約待機工程、必要に応じて行い常温を超えα化温度未満で吸水速度を高める吸水温度未満の所定温度で米への吸水速度を高めながら、途中の昇温特性によって米の合数を判定する合数判定工程を含む吸水行工程、沸騰温度未満の温度での高温保温、高温保温温度よりも低い温度での通常保温、通常保温温度未満での省エネ保温、の少なくとも1つを行う保温工程、の予約待機工程は、吸水温度未満の浸漬温度を保つように冷却手段を働かせ、予約待機時間が所定時間を超える場合、吸水工程は、合数判定工程のみ実行し、予約待機時間が所定時間未満である場合、腐敗防止条件満足を条件に予約待機実行時間に応じ予約待機中の浸漬温度を上げ、またはおよび、吸水工程は予約待機工程実行時間に応じ最大限短縮して実行することを特徴とする電気炊飯ジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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