電気炊飯器
【課題】 炊きムラを無くして、さらに旨みがあり、酢入りがよいすし飯を炊き上げることができるすし飯炊飯コースを備えた炊飯器を提供する。
【解決手段】 鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、吸水された炊飯物を加熱して沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程終了後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程とを含む一連の炊飯工程を実行する電気炊飯器であって、制御装置は、すし飯コースが選択されると、吸水工程後に圧力弁を閉成し、鍋内を昇温・加圧して立上加熱工程を実行し、立上加熱工程終了後に沸騰維持工程へ移行し、沸騰維持工程において、沸騰維持電力を標準コースの沸騰維持電力より大きくすると共に圧力弁を強制的に所定回数開放させて、その後は該開放状態を維持して以降の炊飯工程を実行する。
【解決手段】 鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、吸水された炊飯物を加熱して沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程終了後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程とを含む一連の炊飯工程を実行する電気炊飯器であって、制御装置は、すし飯コースが選択されると、吸水工程後に圧力弁を閉成し、鍋内を昇温・加圧して立上加熱工程を実行し、立上加熱工程終了後に沸騰維持工程へ移行し、沸騰維持工程において、沸騰維持電力を標準コースの沸騰維持電力より大きくすると共に圧力弁を強制的に所定回数開放させて、その後は該開放状態を維持して以降の炊飯工程を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器に係り、さらに詳しくは白米・標準(ふつう)炊飯コースの他にすし飯炊飯コースを備えた電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、一般家庭などにおいて、既に必需品となっており、様々なタイプのものが製品化されている。この種の炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものに大別されている。近年、これらの炊飯器には、マイクロコンピュータが搭載され、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及びすし飯を炊飯するすし飯炊飯コースなどが1台でできるようになっている。これらの炊飯コースは、いずれも鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程によって炊飯するようになっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ふつう、すし飯などの炊飯コースを備えた常圧式の炊飯器が記載されている。
【0004】
この炊飯器は、炊飯中に発生する水蒸気を外へ逃がす蒸気口と、この蒸気口を開閉する蒸気口開閉装置と、炊き分けメニューをユーザーが選択できる炊飯シーケンス選択手段と、蒸気口開閉装置を制御するとともに一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えている。炊き分けメニューは、かため、ふつう、やわらかめ及びすし飯メニューなどとなっている。また、一連の炊飯工程は、吸水工程、昇温工程、炊き上げ工程、沸騰維持工程及び追炊き工程となっている。この炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力が若干上昇するが、その上限圧力は1.01atmとなっている。
【0005】
この炊飯器は、炊飯シーケンス選択手段でふつうメニューが選択されると、吸水工程では蒸気口が閉成されて、この閉成状態が炊き上げ工程まで継続される。以降の沸騰維持工程及び追炊き工程では、この蒸気口が所定時間毎に間歇的に3回〜7回開閉されて、このふつう炊飯メニューが実行される。
【0006】
また、炊飯シーケンス選択手段ですし飯メニューが選択されると、吸水工程では蒸気口が閉成されて、次の昇温工程では加熱手段への通電開始とともに蒸気口が開成される。以降、この開成状態は炊き上げ工程、沸騰維持工程及び追炊き工程まで継続されて、このすしめしコースが実行されるようになっている。
【0007】
また、下記特許文献2には、同様のふつう、すし飯などの炊飯コースを備えた圧力式の炊飯器が記載されている。
【0008】
この炊飯器は、水と米とを含む炊飯物を入れる鍋と、この鍋を収容し鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、この圧力弁に付設されて圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁を炊飯中に強制的に所定単位時間間歇的に開放させて一連の炊飯工程を実行する制御装置と、白米・標準(ふつう)炊飯コース(以下、標準コースという)、白米・応用(すしめし)炊飯コース(以下、すし飯コースという)などを含む炊飯コース群からユーザーが任意の炊飯コースが選択できる選択手段とを備えている。
【0009】
以下、図12、図13を参照して、この炊飯器の炊飯工程を説明する。なお、図12、図13は、下記特許文献2に記載された炊飯器の炊飯工程を示し、図12は標準コースの炊飯工程図、図13はすし飯コースの炊飯工程図である。これらの炊飯工程図は、鍋内の温度及び圧力変化を示している。
(■)標準コース
選択手段で標準コースが選択されると、制御装置は、以下の炊飯工程を実行する。図12を参照して、まず、吸水工程では、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行い、鍋内の温度を所定の吸水温度(55℃)で所定時間をかけてこの吸水工程が実行される。この吸水工程が終了すると立上加熱工程へ移行し、この立上加熱工程では、圧力弁を閉成させると同時に加熱手段へフルパワー通電を行い、鍋内を加圧状態にして鍋内を沸騰状態にする。蓋体などに設置した蒸気温度センサで鍋内の蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達したときに次の沸騰維持工程へ移行させる。この沸騰維持工程では、圧力弁開放機構を作動させて、圧力弁を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁の開放時には鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する。同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ移動し、或いは逆方向の移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。また、この攪拌により、旨み成分を含む、粘り気のある糊状の汁(以下、おねばという)も効率よく混ざり込み、米粒の周囲がこのおねばによってコーティングされる。おねばには、ご飯の旨み成分が多く含まれているので、炊き上がったご飯はこのおねばでコーティングされることにより美味しくなる。この沸騰維持工程において、圧力弁が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放作動をさせずに残りの沸騰維持工程が継続される。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁はその弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返される。沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程1へ移行させる。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。この蒸らし工程が終了すると、追炊き工程へ移行させると共に、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱を実行する。この再加熱が終了すると、蒸らし工程2へ移行させて、この標準コースの一連の炊飯工程を終了する。
(■)すし飯コース
選択手段ですし飯コースが選択されると、制御装置は以下の炊飯工程を実行する。このすし飯コースの炊飯は、標準コースと略同じようにして行われる。以下、この標準コースと異なる内容を説明する。
【0010】
図13を参照して、吸水工程では、圧力弁を開成させて、その吸水時間を標準コースの時間(15分)より短い時間(10分)で行う。この吸水時間の短縮により、米の含水量が少なくなる。この吸水工程終了後、圧力弁を開成させたままの状態で鍋を全加熱量(フルパワー)で加熱して立上加熱工程を実行する。蒸気温度センサが所定の蒸気温度(75℃)を検出すると、沸騰維持工程へ移行させて、この維持工程を継続させ、鍋底温度センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると加熱を停止させて蒸らし工程1に移行させる。この沸騰維持工程でも圧力弁は開成状態に維持され、鍋内圧力が常に大気圧に近い圧力になっている。蒸らし工程1以降、追炊き工程及び蒸らし工程2へ移行させて、すし飯コースの一連の炊飯工程を終了する。このすし飯コースでは、必要以上の吸水を抑えたご飯(すしとして握りやすい、あるいはピラフとしての食感のあるパラパラとしたご飯)を炊飯できる。
【0011】
以上のようにして、(■)標準コース及び(■)すし飯コースが実行されるが、これら
の炊飯コースにおける圧力弁の開閉状態を纏めると、標準コースでは、立上加熱工程で閉成・加圧状態、沸騰維持工程中は閉成・加圧状態と開放・減圧状態の繰り返し、蒸らし工程中では開放(略大気圧)状態となり、一方、すし飯コースでは、全工程中が開放(略大気圧)状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3536495号公報(段落〔0016〕、〔0022〕、図34)
【特許文献2】特許第4094020号公報(段落〔0064〕、〔0074〕、図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1の炊飯器によれば、すし飯コースでの炊飯により得られるご飯は標準コースで炊飯したご飯と比べて硬めとなって、一方で粘りが少なめな炊き上がりとなり、酢合わせに適したすし飯が炊飯される。しかしながら、この炊飯器は常圧式であり、その構造及び一連の炊飯工程などによると、炊飯中の炊飯物の攪拌が不足することがある。その結果、米粒全体に十分な熱が加わり難くなる、すなわち鍋内の中央部の米粒と内壁側の米粒に加熱ムラ、すなわち温度差が発生して、炊きムラが発生することがあり、また、炊飯物の攪拌不足により旨み成分のおねばが全体の米粒に万遍なく行き亘らずに美味しさが欠けたものとなることがある。
【0014】
また、上記特許文献2の炊飯器においては、標準コース(上記(■))の炊飯では炊飯
中に圧力弁が開放され、この圧力弁の開放により鍋内に激しい沸騰現象が発生し、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌されるので、加熱ムラすなわち炊きムラが無くなる。しかも、炊き上がったご飯は周囲が旨み成分のおねばでコーティングされるので、美味しいご飯が炊き上がる。しかしながら、この炊飯器は標準コースにおいては圧力弁の開放制御が行われるが、すし飯コース(上記(■))の炊飯では、この開放制御が行われずに、全炊飯工程が
開放状態となっている。そのために、上記特許文献1の炊飯器が抱える課題がそのまま残り解決されない。また、この標準コースで炊飯したご飯をすし飯にしようとすると、旨み成分のおねばが、米粒の周りにコーティングされているので、酢合わせの際に酢入りを妨げ、すし飯として不向きなものとなる。特に、江戸前すしを業とするすし店などでは使用できない。
【0015】
なお、現在、一度に大量の炊飯を行う場合にはこの種の電気炊飯器に代わってガス炊飯器が多く使用されているが、このガス炊飯器では上記のような美味しいご飯を炊き上げることができない。この状況から、例えばすし店などからは、美味しいすし飯を一度に大量に炊飯できる大型の電気炊飯器の製品化が要望されている。
【0016】
そこで、本発明者らは、上記特許文献2の炊飯器は旨みのあるご飯を炊き上げることができるが、前記の課題が内在することから、この課題の解決方法を検討した。その結果、すし飯コースの沸騰維持工程で圧力弁の開放回数を最小回数に制限するとともに、沸騰維持電力を標準コースのときの沸騰維持電力よりもアップすることで、炊きムラが無くなるとともに、旨み成分のおねばが適度に混ぜ合わされて、しかも、酢入りも良好にできることを突き止めて、本発明を完成させるに至ったものである。
【0017】
本発明は、従来技術が抱える課題を解決するとともに、上記の知見に基づいてなされたもので、炊きムラを無くし、さらに旨みがあって酢入りがよいすし飯を炊き上げることができる、すし飯炊飯コースを備えた炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、米と水とからなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容されて鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に設けられて鍋内の圧力を調節する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置と、白米・標準(ふつう)炊飯コース、白米・応用(すしめし)炊飯コースを含む炊飯コース群から使用者が任意の炊飯コースを選択できる選択手段とを備え、前記制御装置は、選択された炊飯コースにしたがって、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、吸水された炊飯物を加熱して沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程終了後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程とを含む一連の炊飯工程を実行する電気炊飯器において、前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・応用(すしめし)炊飯コースが選択されると、前記吸水工程後に、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を昇温・加圧して前記立上加熱工程を実行し、該立上加熱工程終了後に前記沸騰維持工程へ移行し、該沸騰維持工程において、沸騰維持電力を白米・標準(ふつう)炊飯コースの沸騰維持電力より大きくする共に、前記圧力弁を強制的に所定回数開放させて、その後は該開放状態を維持して以降の炊飯工程を実行する制御手段を有していることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記白米・応用(すしめし)炊飯コースにおいて、前記沸騰維持工程の沸騰維持電力は、白米・標準(ふつう)炊飯コースにおける沸騰維持電力より10〜30%の範囲で増大され、前記圧力弁の開放回数は1回又は2回であることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記制御装置は、前記圧力弁を開放したときに、前記鍋内を加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下させて、該鍋内に突沸現象を発生させて炊飯物を攪拌させる制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、2の発明によれば、白米・応用(すしめし)炊飯コースでは、沸騰維持工程において沸騰維持電力が白米・標準(ふつう)炊飯コースの沸騰維持電力より大きくされるので、沸騰維持工程に掛かる時間が短縮される。その結果、炊飯物の含水率が低くなり、余分な水分を抑制して、硬めでかつ粘りを抑えた炊飯ができる。さらに、圧力弁の開放回数が最小限に制限されるので、米粒に過度なおねばが付着しまうことがなく、酢合わせを妨げることがない。
【0022】
請求項3の発明によれば、沸騰維持工程において圧力弁が強制的に開放され、鍋内の炊飯物が攪拌されることにより、加熱ムラ、すなわち炊飯ムラがなく、しかも旨み成分のおねばも米粒に適度に付着するので旨みのあるご飯が炊き上がる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図2の圧力弁及びこの圧力弁の開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【図4】炊飯器を制御する制御装置のブロック図である。
【図5】標準コース、すし飯コース及び玄米コースの各炊飯工程の概要ブロック図である。
【図6】標準コースの炊飯工程図である。
【図7】すし飯コースの炊飯工程図である。
【図8】図5の標準コースの炊飯工程のフローチャート図である。
【図9】図8の炊飯工程に続くフローチャート図である。
【図10】図5のすし飯コースの炊飯工程のフローチャート図である。
【図11】図10の炊飯工程に続くフローチャート図である。
【図12】従来技術の炊飯器における標準コースの炊飯工程図である。
【図13】従来技術の炊飯器におけるすし飯コースの炊飯工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0025】
本発明の炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する圧力式の炊飯器であって、特に、すし飯コースの炊飯制御に特徴があるものとなっている。この炊飯器は、一度に大量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯できる大型の鍋を用いて、一度に大量にすし飯などを炊飯できる業務用炊飯器として好適なものである。
【0026】
この炊飯器は、米と水からなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容されて鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、蓋体に設けられて鍋内の圧力を調節する圧力弁と、炊飯中に圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置と、ユーザーが炊飯コースを選択できる炊飯コース選択手段とを備えている。炊飯コースは、白米・標準(ふつう)炊飯コース(以下、標準コースという)、白米・応用(すし飯)炊飯コース(以下、すし飯コースという)及び玄米・標準(ふつう)炊飯コース(以下、玄米コースという)などとなっている。これらの炊飯コースは、いずれも鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程によって炊飯するものとなっている。
【0027】
図6、図7を参照して、標準コース及びすし飯コースの炊飯工程の概要を説明する。なお、図6は標準コースの炊飯工程図、図7はすし飯コースの炊飯工程図である。これらの炊飯工程図は、鍋内の温度変化を示しており、実線は鍋底温度曲線、一点鎖線は蒸気温度をそれぞれ示している。
(イ)標準コース
炊飯コース選択手段で標準コースが選択されると、制御装置は、以下の炊飯工程を実行する。なお、この標準コースの炊飯制御は、従来技術の(■)標準コースの制御と略同じ
となっている。
【0028】
図6の実線は標準コースの炊飯工程における鍋内の温度変化を示している。吸水工程Iでは、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行って鍋内の温度を所定の吸水温度(40℃)で所定時間(20分)をかけて、米への吸水を実行する。
【0029】
この吸水工程が終了すると、40秒間加熱手段への通電を停止し、鍋内の温度を安定化した後立上加熱工程IIへ移行する。立上加熱工程IIでは、圧力弁を閉成すると同時に加熱手段へフルパワー通電を行って、鍋内を加圧状態にすると共に沸騰状態にする。蓋体などに設置した蒸気温度センサで鍋内の蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達すると、次の沸騰維持工程IIIへ移行する。
【0030】
沸騰維持工程IIIでは、所定の沸騰維持電力P1で鍋内を沸騰状態に維持する。この沸騰維持工程IIIでは、また、圧力弁開放機構を作動させて、圧力弁を強制的に所定の単位時間で複数(4回以上)回間歇的に開放させる。なお、圧力弁の開放回数は炊飯量によって変更されることが好ましい。例えば、炊飯量が少ないときには圧力弁の開放回数を少なくし、炊飯量が多いときに圧力弁の開放回数を多くすることが好ましい。この圧力弁の間歇的な開放により、鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生すると、同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ移動し、或いは逆方向への移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。また、この攪拌により、おねばも効率よく混ざり込み、米粒の周囲がこのおねばによってコーティングされる。おねばにはご飯の旨み成分が多く含まれているので、炊き上がったご飯はこのおねばでコーティングされることにより美味しいものになる。沸騰維持工程IIIにおいて圧力弁が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放動作をさせずに残りの沸騰維持工程を継続する。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁はその弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返される。
【0031】
沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍などに設置した鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程1へ移行する。なお、鍋底温度130度は、沸騰中の鍋内の水がなくなり、強制ドライアップが行われ、やがて、ドライアップが終了したと判断される温度(以下、切り温度ともいう)である。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。この蒸らし工程1が終了すると、追炊き工程へ移行すると共に、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱する。この再加熱が終了すると、蒸らし工程2へ移行して、この標準コースの一連の炊飯工程を終了する。なお、この標準コースの炊飯工程は従来技術の(■)標準コースの炊飯工程と略同じで
あるが、吸水時間及び使用される加熱ヒータの大きさ(4600W)が異なっている。
(ロ)すし飯コース
炊飯コース選択手段ですし飯コースが選択されると、制御装置は、以下の炊飯工程を実行する。
【0032】
図7の実線はすし飯コースの炊飯工程における鍋内の温度変化を示している。なお、図7の破線はすし飯コースとの比較のため、標準コースの炊飯工程における鍋内の温度変化を示したものであり、図6の実線と同じものを示している。まず、吸水工程I’では、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行い、鍋内の温度を所定の吸水温度(40℃)として、所定の吸水時間(4分)をかけてこの吸水工程を実行する。この吸水時間(4分)は、標準コースの吸水時間(10分)より短縮されているため、米の含水量が少なくなり、硬めの炊飯を行うことができる。
【0033】
この吸水工程が終了すると、40秒間加熱手段への通電を停止した後、最初は圧力弁を開成したままの状態で鍋を全加熱量(フルパワー)で加熱すると共に、その途中で圧力弁を閉成して立上加熱工程II’を実行する。蒸気温度センサで鍋内の蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達したときに次の沸騰維持工程III’へ移行させる。
【0034】
この沸騰維持工程III’では、沸騰維持電力P2を標準コースの沸騰維持電力P1より10〜30%増加して鍋内を沸騰状態に維持する。沸騰維持電力の増加量は、炊飯量に応じて、炊飯量が少ないときは低く、炊飯量が多いときは高くする。なお、炊飯量の判定は、立上加熱工程II’などで行われ、判定方法は公知の方法を使用する。沸騰維持電力P2をP1より増加することにより、沸騰維持工程III’にかかる時間が短縮される。図7において、すし飯コースの温度曲線は破線で示す標準コースの温度曲線よりも早く最高温度に達しており、沸騰維持工程III’が短縮されていることを示している。この沸騰維持工程III’の短縮により、米の吸水が抑えられ、ご飯の粘りが少なくなると共に硬めの炊飯を得ることができる。
【0035】
また、この沸騰維持工程III’では、圧力弁を1回又は2回、所定の単位時間だけ強制的に間歇的に開放させる。この開放回数は、1回又は2回に限定されるものでないが最少回数にするのが好ましい。この回数は、炊飯量及びすし飯条件によって決められる。すなわち、炊飯量が多いときは回数を多くし、炊飯量が少ないときは回数を少なくする。開放回数を多くすると、鍋内の炊飯物の攪拌が激しくなり、その結果、米粒におねばが付着し過ぎて酢合わせが難しくなる。
【0036】
この圧力弁は、沸騰維持工程III’の初期、すなわち、立上加熱工程II’が終了し沸騰維持工程III’へ移行した直後付近で開放させるのが好ましい。この時点で開放させると、鍋内には未だ多くの水分が残っており、この水分を利用して鍋内の炊飯物を効率よく攪拌できる。
【0037】
この圧力弁の間歇的な強制開放後は、圧力弁の開放状態を保持して、残りの沸騰維持工程III’を実行する。この沸騰維持工程III’を継続させて鍋底センサが所定の鍋底温度(125℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程1へ移行する。この鍋底温度(切り温度)は、標準コースの切り温度(130℃)よりも低く設定されており、炊きあがったご飯におこげができにくくなっている。蒸らし工程1が終了すると、追炊き工程へ移行すると共に、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱を実行する。この再加熱が終了すると、蒸らし工程2へ移行して、その後は、保温工程へ移行して、すし飯コースの一連の炊飯工程を終了する。
【0038】
このすし飯コースでは、沸騰維持工程III’において、沸騰維持電力P2を標準コースの沸騰維持電力P1と対比して、10〜30%増加させるので、沸騰維持工程III’にかかる時間を短縮できる。その結果、標準コースの炊飯に比べて炊飯物の含水率が低く、すなわち余分な水分を抑制できて、硬めかつ粘りを抑えた炊飯ができる。また、沸騰維持工程III’において、圧力弁が強制的に開放されるので、鍋内の炊飯物が攪拌されて加熱ムラ、すなわち炊飯ムラがなく、しかも旨み成分のおねばも米粒に適度に付着するので旨みのあるご飯に炊き上がる。さらに、圧力弁の開放回数が最小限に制限されるので、米粒に過度におねばが付着してしまうことがなく、酢合わせを妨げることがない。
【0039】
さらにまた、すし飯コースの切り温度(125℃)は、標準コースの切り温度(130℃)より低くしてあるので、すし飯コースではおこげができにくくなる。炊きあがったご飯におこげがあると、おこげ及びその周辺部分をすし飯として利用することができなくなるが、すし飯コースではおこげができ難いため、炊きあがったご飯を全てすし飯として無駄なく使用することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の炊飯器は、圧力式の炊飯器であって、特に、すし飯コースの炊飯制御に特徴があるものとなっている。以下、この炊飯器の具体的構成、制御装置及びこの制御装置による炊飯制御を詳述する。
【0041】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の縦断面図、図3は図2の圧力弁及び該圧力弁の開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【0042】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、一度に大量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯ができる大型の鍋を用い、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する業務用に好適な圧力式炊飯器となっている。以下、このような大型業務用の炊飯器を説明するが、本発明はこのような大型のものに限定されるものではなく、10カップ以下、或いはそれ以上のものでもよい。大型業務用の炊飯器として、大出力のヒータを使用しているが、このヒータも炊飯器の大きさに応じて適宜変更されるものである。
【0043】
この炊飯器1は、図2に示すように、米と水とを含む炊飯物が入れられる大型の鍋10と、上方にこの鍋10が収容される開口及び内部にこの鍋10を加熱し炊飯物を加熱する鍋底ヒータH1及び側面ヒータH2を有する大型の炊飯器本体(以下、単に「本体」という)2と、この本体2の一側に枢支されて本体2及び鍋10の開口を覆い閉塞状態にロックするロック機構16及び蓋ヒータH3を有する大判の蓋体11とを備えている。
【0044】
本体2は、図2に示すように、外装ケース3と、この外装ケース3に収容されてその中に鍋10が収容される大きさの内ケース4とからなり、外装ケース3と内ケース4との間に所定の隙間が形成されて、この隙間に制御装置30(図4参照)を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。また、この隙間には、図示を省略したが本体内部を強制冷却する冷却ファン及びこの冷却ファンを駆動するモータなどが収容されている。
【0045】
鍋10は、図2に示すように、上方に開口10a及びこの開口周縁に鍔状のフランジ部10bを有し、所定量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯できる大型容器で形成されている。この鍋10は、熱伝導性の高い材料、例えば銅或いはアルミニウム等からなる内層と、磁性材料、例えばステンレス鋼からなる外層とを有し、内層の表面がフッ素樹脂等で被覆された構成となっている。
【0046】
本体2には、炊飯のスタート、タイマー予約及び保温などの操作を行う表示操作部5(図1参照)と、この表示操作部5からの炊飯の開始信号に従って鍋底ヒータH1、側面ヒータH2及び蓋ヒータH3からなる加熱手段及び圧力弁開放機構19を制御する制御回路基板等(図示省略)とが設けられている。
【0047】
外装ケース3は、内ケース4より大きな外形を有する化粧ボックスで形成されている。この外装ケース3は、その上方に開口31が設けられている。この外装ケース3は、内部に内ケース4を収容し、両ケース3、4間に制御回路基板等を配設する隙間が設けられているので、外装ケースの開口31は、内ケース4の開口41より大きく、その形状は略楕円形状になっている。なお、内ケースの開口41は、鍋10の開口と同じように略円形状になっている。また、この外装ケース3の正面には、図1に示すように、表示操作部5が設けられている。この表示操作部5は、各種の操作キー類を配設した操作パネル5aと、この操作スイッチ類によって設定される設定状態を表示する表示パネル5bとで構成されている。この操作パネル5aには、スタートキー、コース選択キー(炊飯コース選択手段)、予約キー、保温キーなどが設けられている。表示パネル5bには、炊飯する米種や炊飯コース、例えば標準コース、すし飯コース、玄米コースなどが表示され、コース選択キーによって選定できるようになっている。
【0048】
内ケース4は、所定の直径を有する略椀状の底部4aと、この椀状の底部4aの周囲から所定長さ立設された筒状の側壁部4bとを有し、筒状の側壁部4bの上方が開口して、この開口41から鍋10が収容される大きさの容器からなり、耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。椀状の底部4aには、ドーナツ状に巻装された電磁誘導コイルからなる鍋底ヒータH1が支持具(図示省略)で固定されている。鍋底ヒータH1は、例えば4, 600Wとなっている。この電磁誘導コイルにより、鍋10にうず電流が発生して鍋10が自己発熱する。また、この底部4aには、鍋底温度を検出するサーミスタ等からなる鍋底センサS1が設けられており、この鍋底センサS1によって鍋10の底部の温度を検知することで鍋10内の炊飯量等が検出される。また、筒状の側壁部4bは、その内周壁面、すなわち鍋10が収容される側の内周壁面に、側面ヒータH2が装着される取付け部42が形成されている。この取付け部42は、上方の開口41と底部4aとの間にあって、鍋10が収容される側の内周壁面から外周壁面に向かって所定の深さに窪んだ凹み穴となっており、この凹み穴に側面ヒータH2が装着されている。
【0049】
外装ケース3及び内ケース4の開口31、41は、図2に示すように、フレームカバー補強部材7を介在してフレームカバー6で覆われる。このフレームカバー6は、内部に鍋10の開口10aより若干大きい開口と、この開口から外方へ延びて内ケース4の開口41及び外装ケース3の及び開口31を覆う大きさの鍔状の周縁部とを有する所定の肉厚の略楕円形状の板状体からなり、樹脂成形体で形成されている。このフレームカバー6の表面の開口周辺は、鍋10のフランジ部分10bが載置される載置部となっている。この載置部は、一端に蓋体11のロック機構16が係止される係止部材8が設けられている。この係止部材8は、ロック機構16の係止爪17aが係止される金属板からなる係止片8bと、この係止片8bの上方に位置してこの係止片8bを固定する台座8aとからなり、これらの台座8a、係止片8b及びフレームカバー6並びにフレームカバー補強部材7にはネジ孔が形成されており、これらが積層されてネジ止めされる。台座8aの上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。なお、台座8aは、耐熱性の樹脂材で形成されている。また、載置部は、他端に台座8aと同じ水平度で鍋のフランジ部10bが載置される台座8a’及び蓋体11を枢支するヒンジ部材9が設けられている。このヒンジ部材9は、フレームカバー6に固定する短片の第1の取付け部9aと、蓋体11の一端が枢支される比較的長片の第2の取付け部9bとを有し、側面視で略L字型をなし堅固な部材で形成されている。この部材は、肉厚を厚くした金属材、例えば2〜5mm程度の肉厚を有するステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金の何れかからなるダイキャスト成型体などで形成され、大判で重量が重い蓋体及び鍋内の圧力上昇に耐えるように補強されている。これらの台座8a’、フレームカバー6、フレームカバー補強部材7及びヒンジ部材9の第1の取付け部9aにネジ孔が形成されて、これらが積層されてネジ止めされる。台座8a’の上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。
【0050】
蓋体11は、図2に示すように、鍋10の開口10aを閉蓋する内蓋12と、この内蓋12の上方に位置して本体2の開口部を閉蓋する外蓋15とを有し、外蓋15にはおねば貯留タンク24を装着する窪み部24’が形成されて周囲が化粧カバー18で覆われている。また、外蓋15は、堅固な蓋体フレームで構成されている。
【0051】
内蓋12は、図2、図3に示すように、大型の鍋開口10aを塞ぐ大きさを有する円盤状の大判の蓋体からなり、その上部に圧力弁13、鍋10内の圧力が異常上昇したときに鍋10内の蒸気を外部に逃がすための安全弁V1などが設けられている。この内蓋12の外周囲には、鍋10の開口10aに当接されるシール部材が装着されている。また、この内蓋12の外周囲には外方へ突出して外蓋15の固定手段に着脱自在に係止される係止部材(図示省略)が設けられている。圧力弁13は、図3に示すように、所定径の弁孔131が形成された弁座13aと、この弁孔131を塞ぐように弁座13a上に載置される金属製ボール14と、この金属製ボール14の移動を規制し弁座13a上に保持するカバー13bとで構成されている。この金属製ボール14は、所定の重さを有し、その自重により、弁孔131を閉塞するようになっている。圧力弁13は、外蓋15に設けた圧力弁開放機構19によって作動される。外蓋15は、一端に蓋体11のロック機構16と、このロック機構16に隣接した箇所に圧力弁開放機構19が設けられ、他端にこの外蓋15がヒンジ部材9に支軸されてしかも開成作動を支援すると共に開成状態に保持するバネ枢支機構(図示省略)が設けられている。また、この外蓋15には、蓋ヒータH3が設けられている。さらに、圧力弁開放機構19とバネ枢支機構との間には、おねば貯留タンク24が装着される窪み部24’が設けられている。ロック機構16は、図2に示すように、外蓋15のフレームに揺動自在に固定された揺動棹17を有し、この揺動棹17の一端に本体2の係止部材8に係止される係止爪17aと、他端に係止爪17aの係止を解除する解除釦17bとが設けられている。
【0052】
圧力弁開放機構19は、図3に示すように、電磁コイルが巻回されたシリンダ20と、電磁コイルの励磁により金属製ボール14を移動させるプランジャ21と、このプランジャ21の先端に装着されたバネ体及び作動棹22とで構成されている。バネ体は伸張コイルバネとなっている。作動棹22は、弾力性を有するシール部材23で支持されている。圧力弁開放機構19により、圧力弁13が以下のように作動される。圧力弁は、通常、図2に示すように、バネ体の伸張により、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動しているため弁孔131が開放されている。制御装置30(図4参照)からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、プランジャ21がバネ体の伸張力に抗してシリンダ20内へ引き込まれて、これまで作動棹22で金属製ボール14を押動していた押動力がなくなり、金属製ボール14が弁座13aの傾斜によって横へ移動して、ボール自身の自重により弁孔131が閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、再びばね体の伸張力によって、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動することにより弁孔131が開放される。また、圧力弁13の上部には、蒸気温度を検知する蒸気センサS2が取付けられている。
【0053】
おねば貯留タンク24は、図2に示すように、圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒24aと、うまみ成分のおねばを一時貯留する空室24bと、蒸気を外部へ放出する蒸気放出口24cとを有し、空室24bの底部には、貯留されたおねばを鍋10内に戻すおねば戻し弁V2が設けられている。なお、このうまみ成分であるおねばは、圧力弁13から蒸気が噴出する際に、この蒸気と一緒に鍋10内から圧力弁13を通して導出されて、このおねば貯留タンク24の空室24bに一時貯留される。この空室24bに貯留されたおねばは、所定量になるとおねば戻し弁V2が開いて鍋10内へ戻される。このおねば貯留タンク24は、このおねば貯留タンク24の吐出筒24aが外蓋15の窪み部24’に設けた装着孔15aへ圧入固定される。
【0054】
図4を参照して、制御装置及びこの制御装置による炊飯工程を説明する。なお、図4は制御装置のブロック図である。
【0055】
制御装置30は、図4に示すように、種々の演算処理を行うCPU、各種データの記憶を行うROM及びRAMからなる記憶手段、選択された炊飯コースを検出する炊飯コース検出回路、圧力弁13の開閉時間が設定する弁開閉タイマー、圧力弁13の開閉回数をカウントするカウンタと、鍋10内の加熱温度及び加熱時間を制御する加熱制御回路、表示パネル5bに表示される表示画面を制御するための表示パネル制御回路、圧力弁開放機構19を駆動させて圧力弁13の開閉タイミングを制御する圧力弁開放機構19の駆動回路などを備えている。記憶手段には、各種の炊飯メニューに対応した炊飯プログラムが記憶されている。この炊飯プログラムは、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、蒸らし工程、追炊き工程及びこれらの炊飯工程終了後の保温工程を実行するものとなっている。また、加熱制御回路は、鍋底ヒータH1、側面ヒータH2及び蓋ヒータH3にそれぞれ接続されている。
【0056】
図5〜図11を参照して、この制御装置による各炊飯コースの炊飯工程の制御を説明する。
【0057】
図5は、3つの炊飯コース、すなわち、標準コース、すし飯コース及び玄米コースの炊飯工程を示している。これらの炊飯コースは、いずれも鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程によって炊飯するものとなっている。これらの一連の炊飯工程中に圧力弁13の開放制御が行われる。また、ユーザーは、コース選択キーで炊飯コースを選択して炊飯する。
(a)標準コース
図5、図6、図8、図9を参照して、標準コースの炊飯工程を説明する。なお、図5は
標準コース、すし飯コース及び玄米コースにおける炊飯工程の概要ブロック図、図6は標準コースの炊飯工程図、図8は図5の標準コースのフローチャート図、図9は図8の炊飯工程に続くフローチャート図である。
【0058】
まず、炊飯器1をスタートする前に、鍋10内に所定量の米と水とからなる炊飯物を入れる。鍋10内の米は、白米となっている。次いで、炊飯物を入れた鍋10を本体2にセットして蓋体11を閉塞する。
【0059】
表示操作部5を操作して、白米・標準(ふつう)炊飯コースを選択する(S1)。
【0060】
炊飯コースを選択し(S2)、白米・標準コースが選択されると(S29)、鍋底ヒータH1及び側面ヒータH2に高周波電流が印加され、鍋との間に渦電流が流れて鍋が発熱し水と米が加熱される(S30)。同時に圧力弁開放機構19により圧力弁13を強制的に開作動させて(S31)、吸水工程Iを実行する(S32)。
【0061】
吸水工程Iでは、吸水タイマーが所定の吸水時間(T1=10分)の計時を開始し(S33)、同時に鍋底センサにより鍋底温度(K1)を測温する(S34)。吸水時間は10分に設定されている。
【0062】
鍋底温度(K1)が40度に達すると(S35)、加熱量を制御して予め設定された吸水時間(T1)の計時を継続する(S36)。吸水時間(T1)が10分に達すると(S37)、40秒間加熱手段への通電を停止して鍋内の温度を安定化した後、全加熱量(フルパワー)で加熱し(S38)(立上加熱工程II)、同時に圧力弁開放機構19を操作して作動棹22をシリンダ20内に引き込み、金属製ボール14を自重により弁孔131に載置させて弁孔131を塞ぎ、鍋内圧力を高める(S39)。
【0063】
蒸気温度(K2)を蒸気センサS2により測温し、(S40)。やがて、蒸気温度(K2)が75度になったことを検出すると(S41)、沸騰維持工程IIIに移行する(S42)。沸騰維持工程において、圧力弁開放機構19による圧力弁13の開作動によって間欠的に圧力を変更する操作を複数回行う(S43)。すなわち、圧力弁13を強制的に複数回開作動し、加圧された鍋内と大気とを連通・遮断させて鍋内の圧力を一気に低下させることを繰り返す(この場合、開閉回数を複数にして攪拌効果を増大する方が好ましい)。鍋内圧力が大きく低下するごとに、突沸現象が生じて鍋内に泡が発生し、水と米とが攪拌され、中央側にあった米粒が鍋内の側方にも移動し、結果として米粒全体に十分な熱が加わることになる。
【0064】
沸騰維持工程IIIに移行するとすぐに最初の圧力変更操作を実行する。これは、沸騰維持工程IIIに入った直後は鍋内の残水量が多く、残水量が多いほど米粒が鍋内で攪拌されやすく移動しやすいからである。時間が経過するにつれて残水量が減少するので、残水量が多い沸騰維持工程III初期に、圧力弁開放機構19により圧力弁13を強制的に開作動させることにより、米粒をより激しく攪拌させることができる。なお、沸騰維持工程IIIの後半は鍋内の残水量が減少しているので、米が移動し難くなっていることから、突沸現象を発生させても大きな攪拌効果を得ることが困難である。
【0065】
このように、圧力弁13を数回開閉させて加熱不足の領域にある米粒を攪拌することにより、加熱状態を平均化することができるので、最終的には炊き上がったご飯上面を平坦にすることができる。
【0066】
このプロセスは HYPERLINK "http://www6.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=231&N0500=4E#M/??;?6;?=?///&N0001=29&N0552=9&N0553=000008" \t "tjitemdrw" 図6に示されている。圧力弁の開閉回数の設定は、予めプログラムにより設定されており(S44)、炊飯量が多い場合には開閉回数を多くし、少ない場合には開閉回数を少なく設定する(S45)〜(S47)。本実施の形態では、炊飯量が多い場合には圧力弁13の開閉回数を炊飯量が少ない場合よりも多くして、米粒の攪拌による平均化、炊きムラ防止を図るようにしている。
【0067】
圧力弁13の強制的な開作動と、金属製ボール14の自重による圧力弁13の閉作動を所定回数繰り返すと(S48)、その後は圧力弁13の強制的な開作動を行わないようにし(S49)、圧力弁13は金属製ボール14の自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作を繰り返す。そして、さらに沸騰維持工程IIIでの加熱量制御を継続し(S50)、鍋底温度(K3)が130度を検出するまでは沸騰維持工程を継続する(S51)。鍋底温度(K3)が130度を検出すると(S52)加熱を停止し(S53)、蒸らし工程1に移行する。
【0068】
蒸らし工程1では蒸らし時間(T2=4分)の計時を開始し(S54)、この4分を計時するまでは圧力弁開放機構19による圧力弁13の開作動は行わないようにする。
【0069】
蒸らし時間が4分経過すると(S55)、追炊き工程に移行すると共に、圧力弁開放機構19による圧力弁13の強制的な開作動を実行し(S56)、再加熱時間(T3=3分)の計時を開始する(S57)。再加熱中は、弁孔131を開放して鍋内の蒸気を弁孔131から蒸気放出口24cを介して大気に逃がす。これにより、米粒表面についた不要な水分などを除去しながら蒸らすことで、米をおいしく炊き上げることができ、さらには蓋体の開放時には鍋内が大気圧と同じになり、蓋体の開閉が容易になる。再加熱時間(T3)の3分の計時を終了すると(S58)、蒸らし工程2に移行して蒸らし時間(T4=3分)の計時を開始し(S59)、6分の計時が終了すると(S60)、炊飯を終了し(S61)、保温工程に移行する(S62)。
(b)すし飯コース
図5、図7、図10、図11を参照して、すし飯の炊飯制御を説明する。なお、図7はすし飯コースの炊飯工程図、図10は図5のすし飯コースの炊飯工程のフローチャート、図11は図10の炊飯工程に続くフローチャートである。
【0070】
以下のフローにおいて、計測される時間や温度の設定は、特に説明しないものについては標準コースの場合と同様である。
【0071】
白米・応用(すしめし)炊飯コースが選択されると(S63)、水と米が加熱され(S64)同時に圧力弁開放機構19により圧力弁13を強制的に開作動させて(S65)、吸水工程I’を実行する(S66)。吸水タイマーが吸水時間(T1=4分)の計時を開始し(S67)、同時に鍋底温度(K1)を測温する(S68)。このすし飯コースは、すしめし、ピラフに使用する米を炊飯するものであり、この場合は米粒内の含水量を抑えた方が好ましい。したがって、吸水時間は標準炊飯コースより短く、例えば4分に設定されている。鍋底温度(K1)が40度に達すると(S69)、加熱量を制御して予め設定された吸水時間(T1)の計時を継続する(S70)。吸水時間(T1)が4分に達すると(S71)、40秒間加熱手段への通電を停止して鍋内温度を安定化した後、全加熱量(フルパワー)で加熱し、立上加熱工程II’に移行する(S72)。
【0072】
蒸気温度(K2)を計測し(S73)、蒸気温度(K2)が75度となったことを検出すると(S74)、沸騰維持工程III’に移行し加熱量制御を継続する(S75)。このすし飯での沸騰維持電力は、標準コースでの沸騰維持電力よりも10〜30%大きく設定される。この設定値は炊飯量に応じて、炊飯量が少ないときは増加量を低く、炊飯量が多いときは増加量を高くする。
【0073】
また、沸騰維持工程では圧力弁を1回又は2回、所定の単位時間だけ強制的に間歇的に開放させる(S76)。この開放回数は、1回又は2回に限定されるものでないが最少回数にするのが好ましい。この回数は、炊飯量及びすし飯条件によって決められる。すなわち、炊飯量が多いときは回数を多くし、少ないときは少なくする。開放回数を多くすると、鍋内の炊飯物の攪拌が激しくなり、その結果、米粒におねばが付着し過ぎて酢合わせが難しくなる。
【0074】
この圧力弁の開放は、沸騰維持工程の初期、すなわち、立上加熱工程が終了し沸騰維持工程へ移行した直後付近で行うことが好ましい。この時点で開放させると、鍋内には未だ多くの水分が残っており、この水分を利用して鍋内の炊飯物を効率よく攪拌できる。
【0075】
この圧力弁の間歇的な強制開放後は、圧力弁の開放状態を保持して、加熱量制御を継続する(S77)。
【0076】
鍋底温度(K3)が130度を検出すると(S78、S79)、加熱を停止し(S80)、蒸らし工程1に移行すると共に、蒸らし時間(T2=4分)の計時を開始する(S81)が、この間も圧力弁13は開作動状態のままになっている。 蒸らし時間が4分を経過すると(S82)、圧力弁13が開作動状態のまま(S83)、追炊き工程に移行し再加熱時間(T3=3分)の計時を開始する(S84)。再加熱時間の3分を計時すると(S85)、蒸らし工程2に移行し、蒸らし時間(T4=3分)の計時を行う(S86)。3分の蒸らし時間を計時すると(S87)、炊飯を終了し(S88)、保温工程に移行する(S89)。
【0077】
このようにすし飯コースの炊飯工程では、必要以上の米の吸水を抑えることにより、炊飯物の含水率が低く、硬めかつ粘りを抑えた炊飯ができ、すしとして握りやすく、あるいはピラフとしての食感のあるパラパラしたご飯を得ることができる。
(c)玄米コース
図5を参照して、玄米コースの炊飯を説明する。玄米・標準(ふつう)炊飯コースが選択されると(S3)、吸水工程を実行する(S6)。この吸水時間は、玄米が水を吸水し難いので白米の炊飯より長い吸水時間、例えば30分となっている。
【0078】
この吸水時間が経過すると、立上加熱工程へ移行し(S12)、全加熱量で加熱する(フルパワー加熱)と同時に、圧力弁を閉成して鍋内圧力を高める(S13)。鍋内が沸騰し、蒸気センサが所定温度(75℃)を検出すると、沸騰維持工程へ移行する(S16)。
【0079】
この沸騰維持工程では、圧力弁13は略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作を繰り返す。この間に十分圧力をかけて玄米内に水分を吸収させることができる。
【0080】
鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、加熱を停止し、蒸らし工程1に移行すると共に、所定の蒸らし時間の計時を開始し、圧力弁開放機構19による圧力弁13の開作動は行わないようにして、圧力弁13を「閉」状態にする(S20)。
【0081】
所定時間経過後、圧力弁13の開作動を行い(S22)、再度加熱手段による加熱を行って追炊き工程に移行すると共に、再加熱時間の計時を開始する(S23)。再加熱時間の計時を終了すると蒸らし工程2に移行すると共に、蒸らし時間の計時を開始し(S25)、計時が終了すると炊飯を終了して、保温工程に移行する(S28)。
【0082】
以上のように、本実施形態の炊飯器によると、すし飯コースにおいて、沸騰維持工程III’における沸騰維持電力P2を標準コースの沸騰維持電力P1と対比して10〜30%増加させるので、沸騰維持工程III’にかかる時間を短縮できる。その結果、標準コースの炊飯に比べて炊飯物の含水率が低く、すなわち余分な水分を抑制できて、硬めかつ粘りを抑えた炊飯ができ、酢合わせに適したご飯を得ることができる。
【0083】
また、沸騰維持工程III’において、圧力弁が強制的に開放されるので、鍋内の炊飯物が攪拌されて加熱ムラ、すなわち炊飯ムラがなく、しかも旨み成分ののおねばも米粒に適度に付着するので旨みのあるご飯に炊き上がる。さらに、圧力弁の開放回数が最小限に制限されるので、米粒に過度なおねばが付着してしまうことがなく、酢合わせを妨げることがない。
【0084】
さらにまた、すし飯コースの切り温度(125℃)は、標準コースの切り温度(130℃)より低くされているため、すし飯コースではおこげができ難くなり、炊きあがったご飯を全てすし飯として無駄なく使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…炊飯器
2…炊飯器本体
3…外装ケース
4…内ケース
5…表示操作部
6…フレームカバー
7…フレームカバー補強部材
8…係止部材
9…ヒンジ部材
10…鍋
11…蓋体
12…内蓋
13…圧力弁
14…金属製ボール
15…外蓋
16…ロック機構
17…揺動棹
18…化粧カバー
19…圧力弁開放機構
20…シリンダ
21…プランジャ
22…作動棹
23…シール部材
24…おねば貯留タンク
30…制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器に係り、さらに詳しくは白米・標準(ふつう)炊飯コースの他にすし飯炊飯コースを備えた電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、一般家庭などにおいて、既に必需品となっており、様々なタイプのものが製品化されている。この種の炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものに大別されている。近年、これらの炊飯器には、マイクロコンピュータが搭載され、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及びすし飯を炊飯するすし飯炊飯コースなどが1台でできるようになっている。これらの炊飯コースは、いずれも鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程によって炊飯するようになっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ふつう、すし飯などの炊飯コースを備えた常圧式の炊飯器が記載されている。
【0004】
この炊飯器は、炊飯中に発生する水蒸気を外へ逃がす蒸気口と、この蒸気口を開閉する蒸気口開閉装置と、炊き分けメニューをユーザーが選択できる炊飯シーケンス選択手段と、蒸気口開閉装置を制御するとともに一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えている。炊き分けメニューは、かため、ふつう、やわらかめ及びすし飯メニューなどとなっている。また、一連の炊飯工程は、吸水工程、昇温工程、炊き上げ工程、沸騰維持工程及び追炊き工程となっている。この炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力が若干上昇するが、その上限圧力は1.01atmとなっている。
【0005】
この炊飯器は、炊飯シーケンス選択手段でふつうメニューが選択されると、吸水工程では蒸気口が閉成されて、この閉成状態が炊き上げ工程まで継続される。以降の沸騰維持工程及び追炊き工程では、この蒸気口が所定時間毎に間歇的に3回〜7回開閉されて、このふつう炊飯メニューが実行される。
【0006】
また、炊飯シーケンス選択手段ですし飯メニューが選択されると、吸水工程では蒸気口が閉成されて、次の昇温工程では加熱手段への通電開始とともに蒸気口が開成される。以降、この開成状態は炊き上げ工程、沸騰維持工程及び追炊き工程まで継続されて、このすしめしコースが実行されるようになっている。
【0007】
また、下記特許文献2には、同様のふつう、すし飯などの炊飯コースを備えた圧力式の炊飯器が記載されている。
【0008】
この炊飯器は、水と米とを含む炊飯物を入れる鍋と、この鍋を収容し鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、この圧力弁に付設されて圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁を炊飯中に強制的に所定単位時間間歇的に開放させて一連の炊飯工程を実行する制御装置と、白米・標準(ふつう)炊飯コース(以下、標準コースという)、白米・応用(すしめし)炊飯コース(以下、すし飯コースという)などを含む炊飯コース群からユーザーが任意の炊飯コースが選択できる選択手段とを備えている。
【0009】
以下、図12、図13を参照して、この炊飯器の炊飯工程を説明する。なお、図12、図13は、下記特許文献2に記載された炊飯器の炊飯工程を示し、図12は標準コースの炊飯工程図、図13はすし飯コースの炊飯工程図である。これらの炊飯工程図は、鍋内の温度及び圧力変化を示している。
(■)標準コース
選択手段で標準コースが選択されると、制御装置は、以下の炊飯工程を実行する。図12を参照して、まず、吸水工程では、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行い、鍋内の温度を所定の吸水温度(55℃)で所定時間をかけてこの吸水工程が実行される。この吸水工程が終了すると立上加熱工程へ移行し、この立上加熱工程では、圧力弁を閉成させると同時に加熱手段へフルパワー通電を行い、鍋内を加圧状態にして鍋内を沸騰状態にする。蓋体などに設置した蒸気温度センサで鍋内の蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達したときに次の沸騰維持工程へ移行させる。この沸騰維持工程では、圧力弁開放機構を作動させて、圧力弁を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁の開放時には鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する。同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ移動し、或いは逆方向の移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。また、この攪拌により、旨み成分を含む、粘り気のある糊状の汁(以下、おねばという)も効率よく混ざり込み、米粒の周囲がこのおねばによってコーティングされる。おねばには、ご飯の旨み成分が多く含まれているので、炊き上がったご飯はこのおねばでコーティングされることにより美味しくなる。この沸騰維持工程において、圧力弁が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放作動をさせずに残りの沸騰維持工程が継続される。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁はその弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返される。沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程1へ移行させる。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。この蒸らし工程が終了すると、追炊き工程へ移行させると共に、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱を実行する。この再加熱が終了すると、蒸らし工程2へ移行させて、この標準コースの一連の炊飯工程を終了する。
(■)すし飯コース
選択手段ですし飯コースが選択されると、制御装置は以下の炊飯工程を実行する。このすし飯コースの炊飯は、標準コースと略同じようにして行われる。以下、この標準コースと異なる内容を説明する。
【0010】
図13を参照して、吸水工程では、圧力弁を開成させて、その吸水時間を標準コースの時間(15分)より短い時間(10分)で行う。この吸水時間の短縮により、米の含水量が少なくなる。この吸水工程終了後、圧力弁を開成させたままの状態で鍋を全加熱量(フルパワー)で加熱して立上加熱工程を実行する。蒸気温度センサが所定の蒸気温度(75℃)を検出すると、沸騰維持工程へ移行させて、この維持工程を継続させ、鍋底温度センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると加熱を停止させて蒸らし工程1に移行させる。この沸騰維持工程でも圧力弁は開成状態に維持され、鍋内圧力が常に大気圧に近い圧力になっている。蒸らし工程1以降、追炊き工程及び蒸らし工程2へ移行させて、すし飯コースの一連の炊飯工程を終了する。このすし飯コースでは、必要以上の吸水を抑えたご飯(すしとして握りやすい、あるいはピラフとしての食感のあるパラパラとしたご飯)を炊飯できる。
【0011】
以上のようにして、(■)標準コース及び(■)すし飯コースが実行されるが、これら
の炊飯コースにおける圧力弁の開閉状態を纏めると、標準コースでは、立上加熱工程で閉成・加圧状態、沸騰維持工程中は閉成・加圧状態と開放・減圧状態の繰り返し、蒸らし工程中では開放(略大気圧)状態となり、一方、すし飯コースでは、全工程中が開放(略大気圧)状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3536495号公報(段落〔0016〕、〔0022〕、図34)
【特許文献2】特許第4094020号公報(段落〔0064〕、〔0074〕、図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1の炊飯器によれば、すし飯コースでの炊飯により得られるご飯は標準コースで炊飯したご飯と比べて硬めとなって、一方で粘りが少なめな炊き上がりとなり、酢合わせに適したすし飯が炊飯される。しかしながら、この炊飯器は常圧式であり、その構造及び一連の炊飯工程などによると、炊飯中の炊飯物の攪拌が不足することがある。その結果、米粒全体に十分な熱が加わり難くなる、すなわち鍋内の中央部の米粒と内壁側の米粒に加熱ムラ、すなわち温度差が発生して、炊きムラが発生することがあり、また、炊飯物の攪拌不足により旨み成分のおねばが全体の米粒に万遍なく行き亘らずに美味しさが欠けたものとなることがある。
【0014】
また、上記特許文献2の炊飯器においては、標準コース(上記(■))の炊飯では炊飯
中に圧力弁が開放され、この圧力弁の開放により鍋内に激しい沸騰現象が発生し、鍋内の炊飯物が効率よく攪拌されるので、加熱ムラすなわち炊きムラが無くなる。しかも、炊き上がったご飯は周囲が旨み成分のおねばでコーティングされるので、美味しいご飯が炊き上がる。しかしながら、この炊飯器は標準コースにおいては圧力弁の開放制御が行われるが、すし飯コース(上記(■))の炊飯では、この開放制御が行われずに、全炊飯工程が
開放状態となっている。そのために、上記特許文献1の炊飯器が抱える課題がそのまま残り解決されない。また、この標準コースで炊飯したご飯をすし飯にしようとすると、旨み成分のおねばが、米粒の周りにコーティングされているので、酢合わせの際に酢入りを妨げ、すし飯として不向きなものとなる。特に、江戸前すしを業とするすし店などでは使用できない。
【0015】
なお、現在、一度に大量の炊飯を行う場合にはこの種の電気炊飯器に代わってガス炊飯器が多く使用されているが、このガス炊飯器では上記のような美味しいご飯を炊き上げることができない。この状況から、例えばすし店などからは、美味しいすし飯を一度に大量に炊飯できる大型の電気炊飯器の製品化が要望されている。
【0016】
そこで、本発明者らは、上記特許文献2の炊飯器は旨みのあるご飯を炊き上げることができるが、前記の課題が内在することから、この課題の解決方法を検討した。その結果、すし飯コースの沸騰維持工程で圧力弁の開放回数を最小回数に制限するとともに、沸騰維持電力を標準コースのときの沸騰維持電力よりもアップすることで、炊きムラが無くなるとともに、旨み成分のおねばが適度に混ぜ合わされて、しかも、酢入りも良好にできることを突き止めて、本発明を完成させるに至ったものである。
【0017】
本発明は、従来技術が抱える課題を解決するとともに、上記の知見に基づいてなされたもので、炊きムラを無くし、さらに旨みがあって酢入りがよいすし飯を炊き上げることができる、すし飯炊飯コースを備えた炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、米と水とからなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容されて鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に設けられて鍋内の圧力を調節する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置と、白米・標準(ふつう)炊飯コース、白米・応用(すしめし)炊飯コースを含む炊飯コース群から使用者が任意の炊飯コースを選択できる選択手段とを備え、前記制御装置は、選択された炊飯コースにしたがって、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、吸水された炊飯物を加熱して沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程終了後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程とを含む一連の炊飯工程を実行する電気炊飯器において、前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・応用(すしめし)炊飯コースが選択されると、前記吸水工程後に、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を昇温・加圧して前記立上加熱工程を実行し、該立上加熱工程終了後に前記沸騰維持工程へ移行し、該沸騰維持工程において、沸騰維持電力を白米・標準(ふつう)炊飯コースの沸騰維持電力より大きくする共に、前記圧力弁を強制的に所定回数開放させて、その後は該開放状態を維持して以降の炊飯工程を実行する制御手段を有していることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記白米・応用(すしめし)炊飯コースにおいて、前記沸騰維持工程の沸騰維持電力は、白米・標準(ふつう)炊飯コースにおける沸騰維持電力より10〜30%の範囲で増大され、前記圧力弁の開放回数は1回又は2回であることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記制御装置は、前記圧力弁を開放したときに、前記鍋内を加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下させて、該鍋内に突沸現象を発生させて炊飯物を攪拌させる制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、2の発明によれば、白米・応用(すしめし)炊飯コースでは、沸騰維持工程において沸騰維持電力が白米・標準(ふつう)炊飯コースの沸騰維持電力より大きくされるので、沸騰維持工程に掛かる時間が短縮される。その結果、炊飯物の含水率が低くなり、余分な水分を抑制して、硬めでかつ粘りを抑えた炊飯ができる。さらに、圧力弁の開放回数が最小限に制限されるので、米粒に過度なおねばが付着しまうことがなく、酢合わせを妨げることがない。
【0022】
請求項3の発明によれば、沸騰維持工程において圧力弁が強制的に開放され、鍋内の炊飯物が攪拌されることにより、加熱ムラ、すなわち炊飯ムラがなく、しかも旨み成分のおねばも米粒に適度に付着するので旨みのあるご飯が炊き上がる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図2の圧力弁及びこの圧力弁の開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【図4】炊飯器を制御する制御装置のブロック図である。
【図5】標準コース、すし飯コース及び玄米コースの各炊飯工程の概要ブロック図である。
【図6】標準コースの炊飯工程図である。
【図7】すし飯コースの炊飯工程図である。
【図8】図5の標準コースの炊飯工程のフローチャート図である。
【図9】図8の炊飯工程に続くフローチャート図である。
【図10】図5のすし飯コースの炊飯工程のフローチャート図である。
【図11】図10の炊飯工程に続くフローチャート図である。
【図12】従来技術の炊飯器における標準コースの炊飯工程図である。
【図13】従来技術の炊飯器におけるすし飯コースの炊飯工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0025】
本発明の炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する圧力式の炊飯器であって、特に、すし飯コースの炊飯制御に特徴があるものとなっている。この炊飯器は、一度に大量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯できる大型の鍋を用いて、一度に大量にすし飯などを炊飯できる業務用炊飯器として好適なものである。
【0026】
この炊飯器は、米と水からなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容されて鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、蓋体に設けられて鍋内の圧力を調節する圧力弁と、炊飯中に圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置と、ユーザーが炊飯コースを選択できる炊飯コース選択手段とを備えている。炊飯コースは、白米・標準(ふつう)炊飯コース(以下、標準コースという)、白米・応用(すし飯)炊飯コース(以下、すし飯コースという)及び玄米・標準(ふつう)炊飯コース(以下、玄米コースという)などとなっている。これらの炊飯コースは、いずれも鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程によって炊飯するものとなっている。
【0027】
図6、図7を参照して、標準コース及びすし飯コースの炊飯工程の概要を説明する。なお、図6は標準コースの炊飯工程図、図7はすし飯コースの炊飯工程図である。これらの炊飯工程図は、鍋内の温度変化を示しており、実線は鍋底温度曲線、一点鎖線は蒸気温度をそれぞれ示している。
(イ)標準コース
炊飯コース選択手段で標準コースが選択されると、制御装置は、以下の炊飯工程を実行する。なお、この標準コースの炊飯制御は、従来技術の(■)標準コースの制御と略同じ
となっている。
【0028】
図6の実線は標準コースの炊飯工程における鍋内の温度変化を示している。吸水工程Iでは、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行って鍋内の温度を所定の吸水温度(40℃)で所定時間(20分)をかけて、米への吸水を実行する。
【0029】
この吸水工程が終了すると、40秒間加熱手段への通電を停止し、鍋内の温度を安定化した後立上加熱工程IIへ移行する。立上加熱工程IIでは、圧力弁を閉成すると同時に加熱手段へフルパワー通電を行って、鍋内を加圧状態にすると共に沸騰状態にする。蓋体などに設置した蒸気温度センサで鍋内の蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達すると、次の沸騰維持工程IIIへ移行する。
【0030】
沸騰維持工程IIIでは、所定の沸騰維持電力P1で鍋内を沸騰状態に維持する。この沸騰維持工程IIIでは、また、圧力弁開放機構を作動させて、圧力弁を強制的に所定の単位時間で複数(4回以上)回間歇的に開放させる。なお、圧力弁の開放回数は炊飯量によって変更されることが好ましい。例えば、炊飯量が少ないときには圧力弁の開放回数を少なくし、炊飯量が多いときに圧力弁の開放回数を多くすることが好ましい。この圧力弁の間歇的な開放により、鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生すると、同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ移動し、或いは逆方向への移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。また、この攪拌により、おねばも効率よく混ざり込み、米粒の周囲がこのおねばによってコーティングされる。おねばにはご飯の旨み成分が多く含まれているので、炊き上がったご飯はこのおねばでコーティングされることにより美味しいものになる。沸騰維持工程IIIにおいて圧力弁が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放動作をさせずに残りの沸騰維持工程を継続する。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁はその弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返される。
【0031】
沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍などに設置した鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程1へ移行する。なお、鍋底温度130度は、沸騰中の鍋内の水がなくなり、強制ドライアップが行われ、やがて、ドライアップが終了したと判断される温度(以下、切り温度ともいう)である。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。この蒸らし工程1が終了すると、追炊き工程へ移行すると共に、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱する。この再加熱が終了すると、蒸らし工程2へ移行して、この標準コースの一連の炊飯工程を終了する。なお、この標準コースの炊飯工程は従来技術の(■)標準コースの炊飯工程と略同じで
あるが、吸水時間及び使用される加熱ヒータの大きさ(4600W)が異なっている。
(ロ)すし飯コース
炊飯コース選択手段ですし飯コースが選択されると、制御装置は、以下の炊飯工程を実行する。
【0032】
図7の実線はすし飯コースの炊飯工程における鍋内の温度変化を示している。なお、図7の破線はすし飯コースとの比較のため、標準コースの炊飯工程における鍋内の温度変化を示したものであり、図6の実線と同じものを示している。まず、吸水工程I’では、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行い、鍋内の温度を所定の吸水温度(40℃)として、所定の吸水時間(4分)をかけてこの吸水工程を実行する。この吸水時間(4分)は、標準コースの吸水時間(10分)より短縮されているため、米の含水量が少なくなり、硬めの炊飯を行うことができる。
【0033】
この吸水工程が終了すると、40秒間加熱手段への通電を停止した後、最初は圧力弁を開成したままの状態で鍋を全加熱量(フルパワー)で加熱すると共に、その途中で圧力弁を閉成して立上加熱工程II’を実行する。蒸気温度センサで鍋内の蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達したときに次の沸騰維持工程III’へ移行させる。
【0034】
この沸騰維持工程III’では、沸騰維持電力P2を標準コースの沸騰維持電力P1より10〜30%増加して鍋内を沸騰状態に維持する。沸騰維持電力の増加量は、炊飯量に応じて、炊飯量が少ないときは低く、炊飯量が多いときは高くする。なお、炊飯量の判定は、立上加熱工程II’などで行われ、判定方法は公知の方法を使用する。沸騰維持電力P2をP1より増加することにより、沸騰維持工程III’にかかる時間が短縮される。図7において、すし飯コースの温度曲線は破線で示す標準コースの温度曲線よりも早く最高温度に達しており、沸騰維持工程III’が短縮されていることを示している。この沸騰維持工程III’の短縮により、米の吸水が抑えられ、ご飯の粘りが少なくなると共に硬めの炊飯を得ることができる。
【0035】
また、この沸騰維持工程III’では、圧力弁を1回又は2回、所定の単位時間だけ強制的に間歇的に開放させる。この開放回数は、1回又は2回に限定されるものでないが最少回数にするのが好ましい。この回数は、炊飯量及びすし飯条件によって決められる。すなわち、炊飯量が多いときは回数を多くし、炊飯量が少ないときは回数を少なくする。開放回数を多くすると、鍋内の炊飯物の攪拌が激しくなり、その結果、米粒におねばが付着し過ぎて酢合わせが難しくなる。
【0036】
この圧力弁は、沸騰維持工程III’の初期、すなわち、立上加熱工程II’が終了し沸騰維持工程III’へ移行した直後付近で開放させるのが好ましい。この時点で開放させると、鍋内には未だ多くの水分が残っており、この水分を利用して鍋内の炊飯物を効率よく攪拌できる。
【0037】
この圧力弁の間歇的な強制開放後は、圧力弁の開放状態を保持して、残りの沸騰維持工程III’を実行する。この沸騰維持工程III’を継続させて鍋底センサが所定の鍋底温度(125℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程1へ移行する。この鍋底温度(切り温度)は、標準コースの切り温度(130℃)よりも低く設定されており、炊きあがったご飯におこげができにくくなっている。蒸らし工程1が終了すると、追炊き工程へ移行すると共に、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱を実行する。この再加熱が終了すると、蒸らし工程2へ移行して、その後は、保温工程へ移行して、すし飯コースの一連の炊飯工程を終了する。
【0038】
このすし飯コースでは、沸騰維持工程III’において、沸騰維持電力P2を標準コースの沸騰維持電力P1と対比して、10〜30%増加させるので、沸騰維持工程III’にかかる時間を短縮できる。その結果、標準コースの炊飯に比べて炊飯物の含水率が低く、すなわち余分な水分を抑制できて、硬めかつ粘りを抑えた炊飯ができる。また、沸騰維持工程III’において、圧力弁が強制的に開放されるので、鍋内の炊飯物が攪拌されて加熱ムラ、すなわち炊飯ムラがなく、しかも旨み成分のおねばも米粒に適度に付着するので旨みのあるご飯に炊き上がる。さらに、圧力弁の開放回数が最小限に制限されるので、米粒に過度におねばが付着してしまうことがなく、酢合わせを妨げることがない。
【0039】
さらにまた、すし飯コースの切り温度(125℃)は、標準コースの切り温度(130℃)より低くしてあるので、すし飯コースではおこげができにくくなる。炊きあがったご飯におこげがあると、おこげ及びその周辺部分をすし飯として利用することができなくなるが、すし飯コースではおこげができ難いため、炊きあがったご飯を全てすし飯として無駄なく使用することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の炊飯器は、圧力式の炊飯器であって、特に、すし飯コースの炊飯制御に特徴があるものとなっている。以下、この炊飯器の具体的構成、制御装置及びこの制御装置による炊飯制御を詳述する。
【0041】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の縦断面図、図3は図2の圧力弁及び該圧力弁の開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【0042】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、一度に大量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯ができる大型の鍋を用い、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する業務用に好適な圧力式炊飯器となっている。以下、このような大型業務用の炊飯器を説明するが、本発明はこのような大型のものに限定されるものではなく、10カップ以下、或いはそれ以上のものでもよい。大型業務用の炊飯器として、大出力のヒータを使用しているが、このヒータも炊飯器の大きさに応じて適宜変更されるものである。
【0043】
この炊飯器1は、図2に示すように、米と水とを含む炊飯物が入れられる大型の鍋10と、上方にこの鍋10が収容される開口及び内部にこの鍋10を加熱し炊飯物を加熱する鍋底ヒータH1及び側面ヒータH2を有する大型の炊飯器本体(以下、単に「本体」という)2と、この本体2の一側に枢支されて本体2及び鍋10の開口を覆い閉塞状態にロックするロック機構16及び蓋ヒータH3を有する大判の蓋体11とを備えている。
【0044】
本体2は、図2に示すように、外装ケース3と、この外装ケース3に収容されてその中に鍋10が収容される大きさの内ケース4とからなり、外装ケース3と内ケース4との間に所定の隙間が形成されて、この隙間に制御装置30(図4参照)を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。また、この隙間には、図示を省略したが本体内部を強制冷却する冷却ファン及びこの冷却ファンを駆動するモータなどが収容されている。
【0045】
鍋10は、図2に示すように、上方に開口10a及びこの開口周縁に鍔状のフランジ部10bを有し、所定量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯できる大型容器で形成されている。この鍋10は、熱伝導性の高い材料、例えば銅或いはアルミニウム等からなる内層と、磁性材料、例えばステンレス鋼からなる外層とを有し、内層の表面がフッ素樹脂等で被覆された構成となっている。
【0046】
本体2には、炊飯のスタート、タイマー予約及び保温などの操作を行う表示操作部5(図1参照)と、この表示操作部5からの炊飯の開始信号に従って鍋底ヒータH1、側面ヒータH2及び蓋ヒータH3からなる加熱手段及び圧力弁開放機構19を制御する制御回路基板等(図示省略)とが設けられている。
【0047】
外装ケース3は、内ケース4より大きな外形を有する化粧ボックスで形成されている。この外装ケース3は、その上方に開口31が設けられている。この外装ケース3は、内部に内ケース4を収容し、両ケース3、4間に制御回路基板等を配設する隙間が設けられているので、外装ケースの開口31は、内ケース4の開口41より大きく、その形状は略楕円形状になっている。なお、内ケースの開口41は、鍋10の開口と同じように略円形状になっている。また、この外装ケース3の正面には、図1に示すように、表示操作部5が設けられている。この表示操作部5は、各種の操作キー類を配設した操作パネル5aと、この操作スイッチ類によって設定される設定状態を表示する表示パネル5bとで構成されている。この操作パネル5aには、スタートキー、コース選択キー(炊飯コース選択手段)、予約キー、保温キーなどが設けられている。表示パネル5bには、炊飯する米種や炊飯コース、例えば標準コース、すし飯コース、玄米コースなどが表示され、コース選択キーによって選定できるようになっている。
【0048】
内ケース4は、所定の直径を有する略椀状の底部4aと、この椀状の底部4aの周囲から所定長さ立設された筒状の側壁部4bとを有し、筒状の側壁部4bの上方が開口して、この開口41から鍋10が収容される大きさの容器からなり、耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。椀状の底部4aには、ドーナツ状に巻装された電磁誘導コイルからなる鍋底ヒータH1が支持具(図示省略)で固定されている。鍋底ヒータH1は、例えば4, 600Wとなっている。この電磁誘導コイルにより、鍋10にうず電流が発生して鍋10が自己発熱する。また、この底部4aには、鍋底温度を検出するサーミスタ等からなる鍋底センサS1が設けられており、この鍋底センサS1によって鍋10の底部の温度を検知することで鍋10内の炊飯量等が検出される。また、筒状の側壁部4bは、その内周壁面、すなわち鍋10が収容される側の内周壁面に、側面ヒータH2が装着される取付け部42が形成されている。この取付け部42は、上方の開口41と底部4aとの間にあって、鍋10が収容される側の内周壁面から外周壁面に向かって所定の深さに窪んだ凹み穴となっており、この凹み穴に側面ヒータH2が装着されている。
【0049】
外装ケース3及び内ケース4の開口31、41は、図2に示すように、フレームカバー補強部材7を介在してフレームカバー6で覆われる。このフレームカバー6は、内部に鍋10の開口10aより若干大きい開口と、この開口から外方へ延びて内ケース4の開口41及び外装ケース3の及び開口31を覆う大きさの鍔状の周縁部とを有する所定の肉厚の略楕円形状の板状体からなり、樹脂成形体で形成されている。このフレームカバー6の表面の開口周辺は、鍋10のフランジ部分10bが載置される載置部となっている。この載置部は、一端に蓋体11のロック機構16が係止される係止部材8が設けられている。この係止部材8は、ロック機構16の係止爪17aが係止される金属板からなる係止片8bと、この係止片8bの上方に位置してこの係止片8bを固定する台座8aとからなり、これらの台座8a、係止片8b及びフレームカバー6並びにフレームカバー補強部材7にはネジ孔が形成されており、これらが積層されてネジ止めされる。台座8aの上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。なお、台座8aは、耐熱性の樹脂材で形成されている。また、載置部は、他端に台座8aと同じ水平度で鍋のフランジ部10bが載置される台座8a’及び蓋体11を枢支するヒンジ部材9が設けられている。このヒンジ部材9は、フレームカバー6に固定する短片の第1の取付け部9aと、蓋体11の一端が枢支される比較的長片の第2の取付け部9bとを有し、側面視で略L字型をなし堅固な部材で形成されている。この部材は、肉厚を厚くした金属材、例えば2〜5mm程度の肉厚を有するステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金の何れかからなるダイキャスト成型体などで形成され、大判で重量が重い蓋体及び鍋内の圧力上昇に耐えるように補強されている。これらの台座8a’、フレームカバー6、フレームカバー補強部材7及びヒンジ部材9の第1の取付け部9aにネジ孔が形成されて、これらが積層されてネジ止めされる。台座8a’の上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。
【0050】
蓋体11は、図2に示すように、鍋10の開口10aを閉蓋する内蓋12と、この内蓋12の上方に位置して本体2の開口部を閉蓋する外蓋15とを有し、外蓋15にはおねば貯留タンク24を装着する窪み部24’が形成されて周囲が化粧カバー18で覆われている。また、外蓋15は、堅固な蓋体フレームで構成されている。
【0051】
内蓋12は、図2、図3に示すように、大型の鍋開口10aを塞ぐ大きさを有する円盤状の大判の蓋体からなり、その上部に圧力弁13、鍋10内の圧力が異常上昇したときに鍋10内の蒸気を外部に逃がすための安全弁V1などが設けられている。この内蓋12の外周囲には、鍋10の開口10aに当接されるシール部材が装着されている。また、この内蓋12の外周囲には外方へ突出して外蓋15の固定手段に着脱自在に係止される係止部材(図示省略)が設けられている。圧力弁13は、図3に示すように、所定径の弁孔131が形成された弁座13aと、この弁孔131を塞ぐように弁座13a上に載置される金属製ボール14と、この金属製ボール14の移動を規制し弁座13a上に保持するカバー13bとで構成されている。この金属製ボール14は、所定の重さを有し、その自重により、弁孔131を閉塞するようになっている。圧力弁13は、外蓋15に設けた圧力弁開放機構19によって作動される。外蓋15は、一端に蓋体11のロック機構16と、このロック機構16に隣接した箇所に圧力弁開放機構19が設けられ、他端にこの外蓋15がヒンジ部材9に支軸されてしかも開成作動を支援すると共に開成状態に保持するバネ枢支機構(図示省略)が設けられている。また、この外蓋15には、蓋ヒータH3が設けられている。さらに、圧力弁開放機構19とバネ枢支機構との間には、おねば貯留タンク24が装着される窪み部24’が設けられている。ロック機構16は、図2に示すように、外蓋15のフレームに揺動自在に固定された揺動棹17を有し、この揺動棹17の一端に本体2の係止部材8に係止される係止爪17aと、他端に係止爪17aの係止を解除する解除釦17bとが設けられている。
【0052】
圧力弁開放機構19は、図3に示すように、電磁コイルが巻回されたシリンダ20と、電磁コイルの励磁により金属製ボール14を移動させるプランジャ21と、このプランジャ21の先端に装着されたバネ体及び作動棹22とで構成されている。バネ体は伸張コイルバネとなっている。作動棹22は、弾力性を有するシール部材23で支持されている。圧力弁開放機構19により、圧力弁13が以下のように作動される。圧力弁は、通常、図2に示すように、バネ体の伸張により、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動しているため弁孔131が開放されている。制御装置30(図4参照)からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、プランジャ21がバネ体の伸張力に抗してシリンダ20内へ引き込まれて、これまで作動棹22で金属製ボール14を押動していた押動力がなくなり、金属製ボール14が弁座13aの傾斜によって横へ移動して、ボール自身の自重により弁孔131が閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、再びばね体の伸張力によって、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動することにより弁孔131が開放される。また、圧力弁13の上部には、蒸気温度を検知する蒸気センサS2が取付けられている。
【0053】
おねば貯留タンク24は、図2に示すように、圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒24aと、うまみ成分のおねばを一時貯留する空室24bと、蒸気を外部へ放出する蒸気放出口24cとを有し、空室24bの底部には、貯留されたおねばを鍋10内に戻すおねば戻し弁V2が設けられている。なお、このうまみ成分であるおねばは、圧力弁13から蒸気が噴出する際に、この蒸気と一緒に鍋10内から圧力弁13を通して導出されて、このおねば貯留タンク24の空室24bに一時貯留される。この空室24bに貯留されたおねばは、所定量になるとおねば戻し弁V2が開いて鍋10内へ戻される。このおねば貯留タンク24は、このおねば貯留タンク24の吐出筒24aが外蓋15の窪み部24’に設けた装着孔15aへ圧入固定される。
【0054】
図4を参照して、制御装置及びこの制御装置による炊飯工程を説明する。なお、図4は制御装置のブロック図である。
【0055】
制御装置30は、図4に示すように、種々の演算処理を行うCPU、各種データの記憶を行うROM及びRAMからなる記憶手段、選択された炊飯コースを検出する炊飯コース検出回路、圧力弁13の開閉時間が設定する弁開閉タイマー、圧力弁13の開閉回数をカウントするカウンタと、鍋10内の加熱温度及び加熱時間を制御する加熱制御回路、表示パネル5bに表示される表示画面を制御するための表示パネル制御回路、圧力弁開放機構19を駆動させて圧力弁13の開閉タイミングを制御する圧力弁開放機構19の駆動回路などを備えている。記憶手段には、各種の炊飯メニューに対応した炊飯プログラムが記憶されている。この炊飯プログラムは、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、蒸らし工程、追炊き工程及びこれらの炊飯工程終了後の保温工程を実行するものとなっている。また、加熱制御回路は、鍋底ヒータH1、側面ヒータH2及び蓋ヒータH3にそれぞれ接続されている。
【0056】
図5〜図11を参照して、この制御装置による各炊飯コースの炊飯工程の制御を説明する。
【0057】
図5は、3つの炊飯コース、すなわち、標準コース、すし飯コース及び玄米コースの炊飯工程を示している。これらの炊飯コースは、いずれも鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程によって炊飯するものとなっている。これらの一連の炊飯工程中に圧力弁13の開放制御が行われる。また、ユーザーは、コース選択キーで炊飯コースを選択して炊飯する。
(a)標準コース
図5、図6、図8、図9を参照して、標準コースの炊飯工程を説明する。なお、図5は
標準コース、すし飯コース及び玄米コースにおける炊飯工程の概要ブロック図、図6は標準コースの炊飯工程図、図8は図5の標準コースのフローチャート図、図9は図8の炊飯工程に続くフローチャート図である。
【0058】
まず、炊飯器1をスタートする前に、鍋10内に所定量の米と水とからなる炊飯物を入れる。鍋10内の米は、白米となっている。次いで、炊飯物を入れた鍋10を本体2にセットして蓋体11を閉塞する。
【0059】
表示操作部5を操作して、白米・標準(ふつう)炊飯コースを選択する(S1)。
【0060】
炊飯コースを選択し(S2)、白米・標準コースが選択されると(S29)、鍋底ヒータH1及び側面ヒータH2に高周波電流が印加され、鍋との間に渦電流が流れて鍋が発熱し水と米が加熱される(S30)。同時に圧力弁開放機構19により圧力弁13を強制的に開作動させて(S31)、吸水工程Iを実行する(S32)。
【0061】
吸水工程Iでは、吸水タイマーが所定の吸水時間(T1=10分)の計時を開始し(S33)、同時に鍋底センサにより鍋底温度(K1)を測温する(S34)。吸水時間は10分に設定されている。
【0062】
鍋底温度(K1)が40度に達すると(S35)、加熱量を制御して予め設定された吸水時間(T1)の計時を継続する(S36)。吸水時間(T1)が10分に達すると(S37)、40秒間加熱手段への通電を停止して鍋内の温度を安定化した後、全加熱量(フルパワー)で加熱し(S38)(立上加熱工程II)、同時に圧力弁開放機構19を操作して作動棹22をシリンダ20内に引き込み、金属製ボール14を自重により弁孔131に載置させて弁孔131を塞ぎ、鍋内圧力を高める(S39)。
【0063】
蒸気温度(K2)を蒸気センサS2により測温し、(S40)。やがて、蒸気温度(K2)が75度になったことを検出すると(S41)、沸騰維持工程IIIに移行する(S42)。沸騰維持工程において、圧力弁開放機構19による圧力弁13の開作動によって間欠的に圧力を変更する操作を複数回行う(S43)。すなわち、圧力弁13を強制的に複数回開作動し、加圧された鍋内と大気とを連通・遮断させて鍋内の圧力を一気に低下させることを繰り返す(この場合、開閉回数を複数にして攪拌効果を増大する方が好ましい)。鍋内圧力が大きく低下するごとに、突沸現象が生じて鍋内に泡が発生し、水と米とが攪拌され、中央側にあった米粒が鍋内の側方にも移動し、結果として米粒全体に十分な熱が加わることになる。
【0064】
沸騰維持工程IIIに移行するとすぐに最初の圧力変更操作を実行する。これは、沸騰維持工程IIIに入った直後は鍋内の残水量が多く、残水量が多いほど米粒が鍋内で攪拌されやすく移動しやすいからである。時間が経過するにつれて残水量が減少するので、残水量が多い沸騰維持工程III初期に、圧力弁開放機構19により圧力弁13を強制的に開作動させることにより、米粒をより激しく攪拌させることができる。なお、沸騰維持工程IIIの後半は鍋内の残水量が減少しているので、米が移動し難くなっていることから、突沸現象を発生させても大きな攪拌効果を得ることが困難である。
【0065】
このように、圧力弁13を数回開閉させて加熱不足の領域にある米粒を攪拌することにより、加熱状態を平均化することができるので、最終的には炊き上がったご飯上面を平坦にすることができる。
【0066】
このプロセスは HYPERLINK "http://www6.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=231&N0500=4E#M/??;?6;?=?///&N0001=29&N0552=9&N0553=000008" \t "tjitemdrw" 図6に示されている。圧力弁の開閉回数の設定は、予めプログラムにより設定されており(S44)、炊飯量が多い場合には開閉回数を多くし、少ない場合には開閉回数を少なく設定する(S45)〜(S47)。本実施の形態では、炊飯量が多い場合には圧力弁13の開閉回数を炊飯量が少ない場合よりも多くして、米粒の攪拌による平均化、炊きムラ防止を図るようにしている。
【0067】
圧力弁13の強制的な開作動と、金属製ボール14の自重による圧力弁13の閉作動を所定回数繰り返すと(S48)、その後は圧力弁13の強制的な開作動を行わないようにし(S49)、圧力弁13は金属製ボール14の自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作を繰り返す。そして、さらに沸騰維持工程IIIでの加熱量制御を継続し(S50)、鍋底温度(K3)が130度を検出するまでは沸騰維持工程を継続する(S51)。鍋底温度(K3)が130度を検出すると(S52)加熱を停止し(S53)、蒸らし工程1に移行する。
【0068】
蒸らし工程1では蒸らし時間(T2=4分)の計時を開始し(S54)、この4分を計時するまでは圧力弁開放機構19による圧力弁13の開作動は行わないようにする。
【0069】
蒸らし時間が4分経過すると(S55)、追炊き工程に移行すると共に、圧力弁開放機構19による圧力弁13の強制的な開作動を実行し(S56)、再加熱時間(T3=3分)の計時を開始する(S57)。再加熱中は、弁孔131を開放して鍋内の蒸気を弁孔131から蒸気放出口24cを介して大気に逃がす。これにより、米粒表面についた不要な水分などを除去しながら蒸らすことで、米をおいしく炊き上げることができ、さらには蓋体の開放時には鍋内が大気圧と同じになり、蓋体の開閉が容易になる。再加熱時間(T3)の3分の計時を終了すると(S58)、蒸らし工程2に移行して蒸らし時間(T4=3分)の計時を開始し(S59)、6分の計時が終了すると(S60)、炊飯を終了し(S61)、保温工程に移行する(S62)。
(b)すし飯コース
図5、図7、図10、図11を参照して、すし飯の炊飯制御を説明する。なお、図7はすし飯コースの炊飯工程図、図10は図5のすし飯コースの炊飯工程のフローチャート、図11は図10の炊飯工程に続くフローチャートである。
【0070】
以下のフローにおいて、計測される時間や温度の設定は、特に説明しないものについては標準コースの場合と同様である。
【0071】
白米・応用(すしめし)炊飯コースが選択されると(S63)、水と米が加熱され(S64)同時に圧力弁開放機構19により圧力弁13を強制的に開作動させて(S65)、吸水工程I’を実行する(S66)。吸水タイマーが吸水時間(T1=4分)の計時を開始し(S67)、同時に鍋底温度(K1)を測温する(S68)。このすし飯コースは、すしめし、ピラフに使用する米を炊飯するものであり、この場合は米粒内の含水量を抑えた方が好ましい。したがって、吸水時間は標準炊飯コースより短く、例えば4分に設定されている。鍋底温度(K1)が40度に達すると(S69)、加熱量を制御して予め設定された吸水時間(T1)の計時を継続する(S70)。吸水時間(T1)が4分に達すると(S71)、40秒間加熱手段への通電を停止して鍋内温度を安定化した後、全加熱量(フルパワー)で加熱し、立上加熱工程II’に移行する(S72)。
【0072】
蒸気温度(K2)を計測し(S73)、蒸気温度(K2)が75度となったことを検出すると(S74)、沸騰維持工程III’に移行し加熱量制御を継続する(S75)。このすし飯での沸騰維持電力は、標準コースでの沸騰維持電力よりも10〜30%大きく設定される。この設定値は炊飯量に応じて、炊飯量が少ないときは増加量を低く、炊飯量が多いときは増加量を高くする。
【0073】
また、沸騰維持工程では圧力弁を1回又は2回、所定の単位時間だけ強制的に間歇的に開放させる(S76)。この開放回数は、1回又は2回に限定されるものでないが最少回数にするのが好ましい。この回数は、炊飯量及びすし飯条件によって決められる。すなわち、炊飯量が多いときは回数を多くし、少ないときは少なくする。開放回数を多くすると、鍋内の炊飯物の攪拌が激しくなり、その結果、米粒におねばが付着し過ぎて酢合わせが難しくなる。
【0074】
この圧力弁の開放は、沸騰維持工程の初期、すなわち、立上加熱工程が終了し沸騰維持工程へ移行した直後付近で行うことが好ましい。この時点で開放させると、鍋内には未だ多くの水分が残っており、この水分を利用して鍋内の炊飯物を効率よく攪拌できる。
【0075】
この圧力弁の間歇的な強制開放後は、圧力弁の開放状態を保持して、加熱量制御を継続する(S77)。
【0076】
鍋底温度(K3)が130度を検出すると(S78、S79)、加熱を停止し(S80)、蒸らし工程1に移行すると共に、蒸らし時間(T2=4分)の計時を開始する(S81)が、この間も圧力弁13は開作動状態のままになっている。 蒸らし時間が4分を経過すると(S82)、圧力弁13が開作動状態のまま(S83)、追炊き工程に移行し再加熱時間(T3=3分)の計時を開始する(S84)。再加熱時間の3分を計時すると(S85)、蒸らし工程2に移行し、蒸らし時間(T4=3分)の計時を行う(S86)。3分の蒸らし時間を計時すると(S87)、炊飯を終了し(S88)、保温工程に移行する(S89)。
【0077】
このようにすし飯コースの炊飯工程では、必要以上の米の吸水を抑えることにより、炊飯物の含水率が低く、硬めかつ粘りを抑えた炊飯ができ、すしとして握りやすく、あるいはピラフとしての食感のあるパラパラしたご飯を得ることができる。
(c)玄米コース
図5を参照して、玄米コースの炊飯を説明する。玄米・標準(ふつう)炊飯コースが選択されると(S3)、吸水工程を実行する(S6)。この吸水時間は、玄米が水を吸水し難いので白米の炊飯より長い吸水時間、例えば30分となっている。
【0078】
この吸水時間が経過すると、立上加熱工程へ移行し(S12)、全加熱量で加熱する(フルパワー加熱)と同時に、圧力弁を閉成して鍋内圧力を高める(S13)。鍋内が沸騰し、蒸気センサが所定温度(75℃)を検出すると、沸騰維持工程へ移行する(S16)。
【0079】
この沸騰維持工程では、圧力弁13は略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作を繰り返す。この間に十分圧力をかけて玄米内に水分を吸収させることができる。
【0080】
鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、加熱を停止し、蒸らし工程1に移行すると共に、所定の蒸らし時間の計時を開始し、圧力弁開放機構19による圧力弁13の開作動は行わないようにして、圧力弁13を「閉」状態にする(S20)。
【0081】
所定時間経過後、圧力弁13の開作動を行い(S22)、再度加熱手段による加熱を行って追炊き工程に移行すると共に、再加熱時間の計時を開始する(S23)。再加熱時間の計時を終了すると蒸らし工程2に移行すると共に、蒸らし時間の計時を開始し(S25)、計時が終了すると炊飯を終了して、保温工程に移行する(S28)。
【0082】
以上のように、本実施形態の炊飯器によると、すし飯コースにおいて、沸騰維持工程III’における沸騰維持電力P2を標準コースの沸騰維持電力P1と対比して10〜30%増加させるので、沸騰維持工程III’にかかる時間を短縮できる。その結果、標準コースの炊飯に比べて炊飯物の含水率が低く、すなわち余分な水分を抑制できて、硬めかつ粘りを抑えた炊飯ができ、酢合わせに適したご飯を得ることができる。
【0083】
また、沸騰維持工程III’において、圧力弁が強制的に開放されるので、鍋内の炊飯物が攪拌されて加熱ムラ、すなわち炊飯ムラがなく、しかも旨み成分ののおねばも米粒に適度に付着するので旨みのあるご飯に炊き上がる。さらに、圧力弁の開放回数が最小限に制限されるので、米粒に過度なおねばが付着してしまうことがなく、酢合わせを妨げることがない。
【0084】
さらにまた、すし飯コースの切り温度(125℃)は、標準コースの切り温度(130℃)より低くされているため、すし飯コースではおこげができ難くなり、炊きあがったご飯を全てすし飯として無駄なく使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…炊飯器
2…炊飯器本体
3…外装ケース
4…内ケース
5…表示操作部
6…フレームカバー
7…フレームカバー補強部材
8…係止部材
9…ヒンジ部材
10…鍋
11…蓋体
12…内蓋
13…圧力弁
14…金属製ボール
15…外蓋
16…ロック機構
17…揺動棹
18…化粧カバー
19…圧力弁開放機構
20…シリンダ
21…プランジャ
22…作動棹
23…シール部材
24…おねば貯留タンク
30…制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水とからなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容されて鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に設けられて鍋内の圧力を調節する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置と、白米・標準(ふつう)炊飯コース、白米・応用(すしめし)炊飯コースを含む炊飯コース群から使用者が任意の炊飯コースを選択できる選択手段とを備え、
前記制御装置は、選択された炊飯コースにしたがって、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、吸水された炊飯物を加熱して沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程終了後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程とを含む一連の炊飯工程を実行する電気炊飯器において、
前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・応用(すしめし)炊飯コースが選択されると、前記吸水工程後に、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を昇温・加圧して前記立上加熱工程を実行し、該立上加熱工程終了後に前記沸騰維持工程へ移行し、該沸騰維持工程において、沸騰維持電力を白米・標準(ふつう)炊飯コースの沸騰維持電力より大きくする共に、前記圧力弁を強制的に所定回数開放させて、その後は該開放状態を維持して以降の炊飯工程を実行する制御手段を有していることを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記白米・応用(すしめし)炊飯コースにおいて、前記沸騰維持工程の沸騰維持電力は、白米・標準(ふつう)炊飯コースにおける沸騰維持電力より10〜30%の範囲で増大され、前記圧力弁の開放回数は1回又は2回であることを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧力弁を開放したときに、前記鍋内を加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下させて、該鍋内に突沸現象を発生させて炊飯物を攪拌させる制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炊飯器。
【請求項1】
米と水とからなる炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容されて鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記蓋体に設けられて鍋内の圧力を調節する圧力弁と、前記圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び圧力弁開放機構を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置と、白米・標準(ふつう)炊飯コース、白米・応用(すしめし)炊飯コースを含む炊飯コース群から使用者が任意の炊飯コースを選択できる選択手段とを備え、
前記制御装置は、選択された炊飯コースにしたがって、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、吸水された炊飯物を加熱して沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程終了後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程とを含む一連の炊飯工程を実行する電気炊飯器において、
前記制御装置は、前記コース選択手段で白米・応用(すしめし)炊飯コースが選択されると、前記吸水工程後に、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を昇温・加圧して前記立上加熱工程を実行し、該立上加熱工程終了後に前記沸騰維持工程へ移行し、該沸騰維持工程において、沸騰維持電力を白米・標準(ふつう)炊飯コースの沸騰維持電力より大きくする共に、前記圧力弁を強制的に所定回数開放させて、その後は該開放状態を維持して以降の炊飯工程を実行する制御手段を有していることを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記白米・応用(すしめし)炊飯コースにおいて、前記沸騰維持工程の沸騰維持電力は、白米・標準(ふつう)炊飯コースにおける沸騰維持電力より10〜30%の範囲で増大され、前記圧力弁の開放回数は1回又は2回であることを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧力弁を開放したときに、前記鍋内を加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下させて、該鍋内に突沸現象を発生させて炊飯物を攪拌させる制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−217783(P2011−217783A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86735(P2010−86735)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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