電気炊飯器
【課題】鍋内の米を常温水に浸漬し、量判定を容易且つ正確にして美味しいご飯を炊き上げることができる電気炊飯器を提供する。
【解決手段】電気炊飯器は、炊飯物を入れる鍋と、炊飯物の加熱手段と、鍋内の温度検出手段と、温度検出手段からの出力を入力して炊飯工程を実行する制御装置とを備えている。制御装置は、鍋内の炊飯物に吸水させる吸水工程I、吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程II、立上加熱工程後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIを含む炊飯工程を炊飯量を判定して実行する。立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIにおいて、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線IIN、IIINを設定しておき、吸水工程で鍋内の炊飯物に常温水を吸水させた後に、次の立上加熱工程の前半で炊飯量の判定結果に基づいて、立上加熱工程の後半から基準温度上昇曲線IIN、IIINへシフトさせる加熱制御を実行する。
【解決手段】電気炊飯器は、炊飯物を入れる鍋と、炊飯物の加熱手段と、鍋内の温度検出手段と、温度検出手段からの出力を入力して炊飯工程を実行する制御装置とを備えている。制御装置は、鍋内の炊飯物に吸水させる吸水工程I、吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程II、立上加熱工程後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIを含む炊飯工程を炊飯量を判定して実行する。立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIにおいて、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線IIN、IIINを設定しておき、吸水工程で鍋内の炊飯物に常温水を吸水させた後に、次の立上加熱工程の前半で炊飯量の判定結果に基づいて、立上加熱工程の後半から基準温度上昇曲線IIN、IIINへシフトさせる加熱制御を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炊飯器に係り、さらに詳しくは炊飯時に米を常温水に所定時間浸漬するとともに炊飯量の判定を容易且つ正確にして、この正確な量判定結果に基づいて炊飯制御することによって、美味しいご飯を炊き上げることができる電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は一般家庭などにおいて既に必需品となっており、様々なタイプのものが製品化されている。この種の炊飯器は炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものとに大別されている。近年、これらの炊飯器にはマイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及びすし飯を炊飯するすし飯炊飯コースなどが1台でできるようになっている。これらの炊飯コースは、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の工程によって行われている。また、この一連の炊飯工程では鍋内の炊飯量を判定し、その量判定結果に基づいて立上加熱工程及び沸騰維持工程などにおける加熱量の制御を行っている。通常、この量判定は、立上加熱工程、吸水工程或いはこれらの両工程で行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された炊飯器は、立上加熱工程で量判定を行っているものである。立上加熱工程で量判定を行うと、吸水工程を省いた炊飯コース、例えば早炊きコースのときにも量判定が可能となり、また、この立上加熱工程では鍋内の温度上昇が急峻でその温度勾配が大きくなるので、この急峻な温度勾配を利用して、量判定を容易に行うことができるなどのメリットがある。しかしながら、この立上加熱工程での量判定では立上加熱工程内での時間のコントロールができなくなるために、炊飯量に対応した立上加熱工程における加熱量の制御が難しくなる。そのために、硬め・柔らかめなどのお好みの炊飯が難しくなるなどのデメリット(課題)がある。この課題を解決するために、立上加熱工程前の吸水工程において量判定を行うことができるようにした炊飯器が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献2に記載された炊飯器は、吸水時間の間に所定の吸水温度(59〜60℃)を維持するのに必要なIHヒータへの通電時間を基準にして、炊飯量の判定を行っている。この炊飯器によると、吸水工程終了後、立上加熱工程へ移行した直後からこの炊飯量に対応した加熱量の制御が可能になる。特に、立上加熱工程で温度上昇特性を所定のものに設定した時間のコントロールができるので、硬め・柔らかめなどのお好みの炊飯が可能になる。また、この吸水工程での量判定であっても課題があるというので、吸水工程及び立上加熱工程の両工程で量判定を行うようにした炊飯器も提案されている(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−51829号公報(第3−4頁、第9図)
【特許文献2】特開2009−100887号公報(段落〔0034〕〜〔0039〕、図6)
【特許文献3】特開2005−65928号公報(段落〔0014〕、〔0015〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の炊飯器のように、立上加熱工程で量判定を行うと、温度上昇の勾配が急峻になるので、この急峻な上昇勾配を利用して量判定が容易になるなどのメリットがあるが、一方で、硬め・柔らかめなどのお好みの炊飯が難しくなるなどのデメリットが内在している。しかしながら、この量判定も、吸水工程との関連で新たな課題があることが判明した。その課題は、吸水温度は、通常、常温より高い温度に設定されていることにある。例えば、上記特許文献2の炊飯器では吸水温度が60℃程度であるが、このような吸水温度で吸水させると、吸水後の立上加熱工程における鍋内の温度上昇は、図11に示すように、炊飯量の大小に拘わらず殆ど同じ温度上昇特性となってしまうことが判明した。すなわち、図11を参照して、TS’、TN’、TL’は炊飯量に対応した温度上昇曲線であって、TS’が0.5カップ、TN’が3.0カップ及びTL’が5.5カップに対応している。立上加熱工程では、これらの温度上昇曲線が殆ど重なったもの、すなわち炊飯量の大小に拘わらず殆ど同じものとなり、それらを峻別するのが極めて難しい。そのために、この立上加熱工程における温度上昇を利用して量判定をすると正確性に欠けたものとなる。
【0007】
上記特許文献1の炊飯器が抱える上記デメリットは、上記特許文献2に開示された量判定技術を採用することによって解消可能となる。また、上記特許文献3の量判定技術は、吸水工程及び立上加熱工程の両工程で量判定を行うので、さらに改善されたものとなる。しかしながら、これらの特許文献2、3の吸水工程における量判定にもいくつかの課題が内在している。一つの課題は、吸水温度の温度幅が狭く(例えば、上記特許文献2の温度幅は59〜60℃となっている)、しかもこの温度幅での温度上昇の勾配が極めて小さいので正確な判定が難しくなることである。また、他の課題は、初期水温の影響を受け易いことである。例えば、初期水温が設定した吸水温度を超えると判定ができなくなる。なお、上記特許文献2の炊飯器は設定吸水温度を59〜60℃に設定しているので、初期水温の影響を受ける恐れがないが、この設定温度を常温近傍に設定すると影響を受け易くなる。
【0008】
さらに他の課題には、米への十分な吸水ができないことがある。上記特許文献2の炊飯器は、吸水工程で略60℃に昇温して吸水時間を短縮している。しかしながら、鍋内を略60℃まで昇温して吸水を行うと、吸水に要する時間は短縮されるが米の外側と内側とで吸水率のばらつきが生じる恐れがある。また、米の内部の芯まで十分な吸水をさせようとすると、米の外側は略飽和状態まで含水されたままで長時間温水に浸されるために、その表面に割れなどが発生することがある。そのために、この割れ部分に水が浸入すると米の一部、すなわち固形分が剥離して溶出し、米の表面の組織が崩れたものとなり、このような組織が崩れた米を炊飯すると、炊き上がったご飯は水っぽくなり、食味が劣ったものとなる。
【0009】
ところで、昔の竈炊き炊飯では、炊飯前に米を常温水に長い時間浸漬して、含水率が略飽和値になるまで吸水させた後に炊飯されていた。この炊き方によると、米の内側と外側とで含水率の差が殆どなくなり、米の表面の組織を壊さずに吸水させることができる。しかしながら、この常温水での吸水は、常温水の温度が季節によって変化することや、また米の種類及び炊飯量によって吸水率も変化することにより、時間の調節が難しいものとなっている。この時間を現在の電気炊飯器でコントロールしようとすると、ユーザーの勘によらざるを得ず、このために、長時間の常温水への浸漬を余儀なくされることがあって、炊飯にかかる時間の計算ができず、またお好みの炊飯も難しくなる。
【0010】
本発明者らは、立上加熱工程での量判定に固有の課題があり、固有の課題は吸水工程での量判定へ変更することで解決できるが、この吸水工程での判定にも課題が内在していることから、如何にすれば鍋内の炊飯物に十分な吸水を行い、しかも量判定を容易に且つ正確に行って、適確な炊飯制御を実現できるかを検討した。その結果、昔ながらの炊き方の常温水に所定時間浸漬させる理想的な吸水が実行でき、しかも、この常温水による吸水工程が終了した後、立上加熱工程へ移行し、この立上加熱工程での温度上昇を測定したところ、その温度変化特性、すなわち、立上加熱工程における温度上昇曲線が図11の曲線TS’、TN’、TL’から図5の曲線TS、TN、TLのように、炊飯量の異なる曲線が殆ど重なることがなく、炊飯量の大小差が顕著に現れることを突き止めた。このように常温水での吸水工程後の立上加熱工程で量判定を行うことにより、量判定を容易且つ正確に行うことができ、しかも、量判定を立上加熱工程の初期に実施すれば、この正確な量判定結果に基づいて以降の加熱制御、すなわち立上加熱工程の後半を含めた立上加熱工程及び(又は)それ移行の沸騰維持工程の加熱制御が適確にできることに想到して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
本発明は従来技術が抱える課題を解決すると共に、上記の知見に基づいてなされたものであって、本発明の目的は、鍋内の米を常温水に十分に浸漬すると共に量判定を容易且つ正確にして、この量判定に基づいて加熱制御することによって美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することにある。より具体的には、米を常温水に比較的長い所定時間かけて浸漬して十分に吸水させた後に、立上加熱工程の早い段階で炊飯量を判定し、この量判定に基づいて、以降の加熱温度制御を最適基準値の温度上昇に合わせて実行して、最適な吸水及び加熱温度制御により美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、上記の目的に加え、長い時間かけて常温水を吸水させると全体の炊飯時間が長くなるので、この常温水による吸水時間を調節して炊飯できるようにした炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定量の炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記鍋内の温度を検出するする温度検出手段と、前記温度検出手段からの出力を入力して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程、この吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この立上加熱工程後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を前記鍋内の炊飯量を判定して実行する電気炊飯器において、前記立上加熱工程において、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線が設定されて、前記制御装置には、前記吸水工程で前記鍋内の炊飯物に常温水を所定時間かけて吸水させた後に、次の立上加熱工程の前半で炊飯量を判定して、この量判定に基づいて、前記立上加熱工程の後半から前記鍋内の温度を前記基準温度上昇曲線へシフトさせる加熱制御を実行する制御手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1の記載の電気炊飯器において、前記立上加熱工程に加え前記沸騰維持工程においても、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線が設定されて、前記制御装置は、前記立上加熱工程終了後前記鍋内の温度を前記基準温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1の記載の電気炊飯器において、前記制御装置には、前記吸水工程終了後前記立上加熱工程へ移行した時点から所定の基準温度へ到達するまでの時間を計測して炊飯量を判定する量判定手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3の記載の電気炊飯器において、前記基準温度は、前記常温水の温度を超える温度に設定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は4に記載の電気炊飯器において、前記基準炊飯量は、最大炊飯量と最小炊飯量の略中間炊飯量に設定されて、前記制御装置は、前記立上加熱工程において、炊飯量が前記中間炊飯量より小さいときに加熱量を低減し、多いときに加熱量を増大させて、前記鍋内の温度を前記温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記吸水工程において、予め常温水の温度に対応した炊飯物の吸水時間を設定して、前記制御装置は、前記温度検出手段により吸水開始時の前記鍋内の温度を検出して、前記吸水時間を決定して前記吸水工程を実行することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電気炊飯器において、前記吸水時間は、前記常温水の温度が高いときは短く、低いときは長く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。すなわち、請求項1、2の発明によれば、吸水工程において所定時間かけて炊飯物に常温水を吸水させるので、炊飯物に十分な常温水を吸水させることができる。また、次の立上加熱工程では、この立上加熱工程での鍋内の温度上昇を測定すると、その温度上昇が炊飯物の炊飯量に応じて、例えば60℃前後の温水で吸水させたときと比べて、顕著に峻別できるものとなり、この温度上昇を利用して炊飯量の判定が容易且つ正確にできる。そして、この量判定を立上加熱工程の前半、すなわち吸水工程終了の早い段階で判定し、この量判定に基づいて、立上加熱工程の後半から基準温度上昇曲線へシフトさせる加熱制御を実行するので、立上加熱工程において理想的な加熱制御ができて最適な炊飯が可能になる。
【0021】
また、立上加熱工程後、基準温度上昇曲線へシフトされるので、立上加熱工程後も理想的な加熱制御ができて最適な炊飯が可能になる。
【0022】
また、請求項3、4の発明によれば、量判定手段により、吸水工程終了後立上加熱工程へ移行した時点から所定の基準温度へ到達するまでの時間を計測することによって、炊飯量の判定が簡単にできる。
【0023】
請求項5の発明によれば、基準炊飯量を最大炊飯量と最小炊飯量の略中間炊飯量に設定し、この略中間炊飯量に対応した温度上昇曲線を基準にして炊飯制御をするので、大小の炊飯量への対応が容易になり、炊飯量に応じた最適な炊飯が可能になる。
【0024】
請求項6の発明によれば、炊飯時の水温によって被炊飯物に吸水される吸水速度が異なるが、この発明では予め水温に対応した吸水時間が設定されて、炊飯ごとにその水温に対応した吸水時間が選定されて、この水温に対応した吸水時間をかけて被炊飯物が浸漬されるので、最適な時間で被炊飯物に十分な水が吸水される。その結果、被炊飯物の熱の伝導が良好となり、芯の無いおいしいご飯を炊き上げることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、炊飯物に炊飯時に使用する常温水の温度の高低に拘わらず炊飯物に常温水を略飽和含水率になるまで含水させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】制御装置を構成するブロック図である。
【図5】炊飯工程における鍋内の温度の変化を示した温度上昇曲線である。
【図6】図5の一部を拡大した温度上昇曲線である。
【図7】図7は炊飯量ごとの立上加熱工程及び沸騰維持工程の時間を示し、図7(a)は、図5における立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表、図7(b)は従来技術(図11)の立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表である。
【図8】図8(a)は浸漬時間と固形分の溶出量との関係を示した表、図8(b)は水温の違いによる設定すべき吸水時間を示した表である。
【図9】本発明の炊飯工程のフローチャート図である。
【図10】図9に続く炊飯工程のフローチャート図である。
【図11】従来技術の炊飯器の炊飯工程における温度上昇曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。すなわち、以下に説明する炊飯器は、圧力式の炊飯器となっているが、これに限定されるものでなく非圧力式の炊飯器にも適用できるものである。
【0028】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造及び制御装置を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の炊飯器の縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【0029】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、図1、図2に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態にする蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開放制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯コースを表示して選択する表示操作部25と、選択された炊飯コースに従って加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の炊飯物を所定温度に加熱して一連の炊飯工程を実行する制御装置24とを有している。
【0030】
一連の炊飯工程は、図5に示すように、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程I、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程II(IIS〜IIL)、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程III(IIIS〜IIIL)、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む工程となっている。
【0031】
本体2は、図2に示すように、有底箱状の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成されて、この隙間に制御装置24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5b及び側部ヒータ5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部ヒータ5bには環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。
【0032】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯選択コース及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦3a〜3f、9とを備えている。これらのスイッチ操作釦3a〜3f、9は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯予約をする炊飯予約釦3b、炊飯等の設定を取消す取消/保温釦3c、炊飯する米を選択するお米選択釦3d、炊飯メニューを選択するメニュー選択釦3e、コースを選択するコース釦3f、及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9となっている。これらの釦及びキーは、押し釦式のスイッチを構成する操作釦等であって、これらの釦或いはキーを押圧することにより、各種操作がなされるようになっている。
【0033】
蓋体10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を覆う外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構Hにより本体2に枢支され、他側がロック機構21により本体2の係止部にロックされる。
【0034】
図2及び図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けられている。圧力弁13は圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー14cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ19a内から電磁コイルの励磁により入出し、ボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャ19bの先端に装着された作動棹20と、シリンダ19aの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0035】
圧力弁開放機構18は、制御装置24により制御される。すなわち、制御装置24からの指令に基づき、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダ19aから飛出してボール15に衝突し、ボール15が所定方向に押し出される。この押し出しにより、ボール15は弁孔14b上で移動して弁孔14bを強制的に開放させる。また、開放状態において、電磁コイルが励磁されると、プランジャ19bがシリンダ19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14bを閉塞する。
【0036】
内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23(図3参照)が取り付けられている。
【0037】
内蓋11と外蓋12とは、その間に所定広さの隙間空間Sをあけて結合されている。外蓋12には、鍋7から排出される水分を含むおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、その内部に圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒22aと、おねばを一時貯留する空間22bと、蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンク22の空間22bは、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばとは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋7外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク22を設けて、この貯留タンク22におねばを一時貯留しておき、鍋7内の加熱が終了して鍋7内が負圧になったときにおねばを鍋7内に戻すことで美味しく炊きあげることができる。
【0038】
次に、図4を参照して所定の炊飯工程を実行するための制御装置24の構成を説明する。制御装置24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、メニュー選択釦3e、炊飯予約釦3b及び取消/保温釦3c、鍋底温度センサ6、蒸気温度センサ23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAMが接続されている。また、出力部(ドライバー)には、側部ヒータ5a、底部ヒータ(IHコイル)5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構18、および表示器(表示パネル)8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯コース及びこの炊飯コースを実行するプログラムが収納されている。IHコイルは、インバータ回路に接続されて、この回路によってIHコイルが制御される。
【0039】
次に、図5〜図7を参照して炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程における鍋内の温度の変化を示した温度上昇曲線、図6は図5の一部を拡大した温度上昇曲線、図7は立上加熱工程及び沸騰維持工程の時間を示し、図7(a)は図5における立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表、図7(b)は従来技術(図11)の立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表、図8(a)は浸漬時間と固形分の溶出量との関係を示した表、図8(b)は、水温の違いによる設定すべき吸水時間を示した表である。
【0040】
炊飯工程は、図5に示すように、所定量の水分を炊飯物に吸水させる吸水工程Iと、鍋内を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程IIと、鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIと、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程(図示省略)となっている。
【0041】
これらの炊飯工程のうち、吸水工程Iは、鍋内の炊飯量の大小に関係なく米に所定量の水を吸水させる第1、第2の吸水工程I1、I2に区分されている。また、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIは、鍋内の炊飯量の小中大、例えば0.5カップ、3.0カップ及び5.5カップの米に対応した工程IIS〜IIL及びIIIS〜IIILとなっている。これらの立上加熱工程IIS〜IIL及び沸騰維持工程IIIS〜IIILでは、炊飯量に応じて鍋内の温度は曲線TS、TN、TLのように変化する。これらの温度上昇曲線TS、TN、TLは、変更される前のものであって、これらの温度上昇曲線のうち、温度上昇曲線TS、TLは基準温度θSを過ぎると温度上昇曲線TNに沿うように変更される。この変更については後述する。
【0042】
これらの炊飯工程において、吸水工程Iは、加熱手段を作動させずに、洗米などに使用した常温の水を用いて、所定時間をかけて所定量吸水させる第1の吸水工程I1と、この第1の吸水工程I1後に加熱手段を作動させて所定温度θ1へ昇温して吸水させる第2吸水工程I2とに区分されている。第1の吸水工程I1の水は、洗米などに使用する常温の水を用いるので、その水温は四季によって異なり、通常、冬季は低く、夏季は高い。なお、この水を以下常温水という。また、所定温度θ1は、例えば59〜60℃である。
【0043】
第1の吸水工程I1の吸水時間は、炊飯時の鍋7内の温度によって異なっている。すなわち、この吸水時間は、所定の温度の水に米を所定時間浸漬したときに、米の固形物、例えば澱粉質の溶出量が所定値以下に収まる時間に設定される。図8(a)は、水温を変更して1時間浸漬したときに米から固形分が溶出される溶出量を示している。この水温と溶出量との関係は実験により求めたものである。図8(a)に示すように、水温21.6℃の水に100gの米を1時間浸漬すると、固形分が0.53g溶出される。同様にして、38.6℃では0.73g、また49.5℃では0.84g、更に58.6℃では1.07gが溶出される。固形分の溶出量が多く、例えば1.0g以上になると米の表面の組織が崩れるため、炊き上がったご飯は水っぽくなり、食味が劣ったものとなる。そこで、水温と吸水時間との関係は、米からの固形分の単位時間あたりの溶出量が1%以上にならないように設定される。
【0044】
第1の吸水工程I1の吸水時間は、水温が低いときは長く、高いときは短い時間に設定される。すなわち、図8(b)に示すように、鍋7内の水温が低いとき、例えば水温が7℃以下のときは吸水時間が最も長い44分、水温が8〜12℃のときは吸水時間を40分、以下同様にして、水温が13〜17℃のときは36分、水温が18〜22℃のときは32分、23〜27℃のときは28分、28〜32℃のときは24分、さらに、33℃以上のときは20分に設定される。
【0045】
この水温と吸水時間との関係は、予め、制御装置24の記憶手段に記憶されている。鍋7内の温度は鍋底温度センサ6で検出されるが、この検出のタイミングは図5を参照して、本体2に鍋7を収容した時点a1から所定時間経過した時点a2、例えば180秒(3分)経過した時点a2で検出するのが好ましい。これは、本体2に鍋7を収容した直後に検出を行うと、鍋底とセンサとの接触などが不安定な状態になっていることがあり、正確な温度の検出ができないことがあるためである。よって、所定時間経過させた時点で温度の検出を行うことにより、より正確な温度が検出可能になる。
【0046】
この第1の吸水工程I1で常温水の温度に対応した吸水時間をかけて浸漬させることにより、鍋7内の米には十分な水が吸水されてその含水率は略飽和状態に達する。次に、第2の吸水工程I2(時点a3)では、次の立上加熱工程IIへの移行の前工程として、IHコイルへの通電を所定時間オンして、鍋7内の温度を所定温度θ1(60℃前後)にして所定の時間(a3からa4)吸水させる。この時間は立上加熱工程IIへの移行期間となっており、第1の吸水工程I1で米に十分な水が吸水されているので、この時間は短く、この時間に更に吸水されることは少ない。したがって、吸水工程I、特に第1の吸水工程I1において、鍋7内の米には十分な水が吸水されるので、米への熱の伝導が良好となり、炊飯されたご飯は芯の無い、美味しいものとなる。
【0047】
次の立上加熱工程IIでは、加熱手段への通電をオンすると共に圧力弁13を閉成して、吸水後の炊飯物が沸騰温度まで昇温加熱される。この立上加熱工程IIでは、鍋7内の圧力が大気圧から例えば1.2気圧まで昇圧される。また、この立上加熱工程IIでは鍋内の炊飯量の判定が行われる。
【0048】
図5〜図7を参照して、立上加熱工程IIにおける炊飯量の判定及び立上加熱工程以降の炊飯制御を説明する。
【0049】
吸水工程Iで鍋7内の所定量の炊飯物に所定時間かけて常温水を吸水させた後に、立上加熱工程IIへ移行すると、前述のように、炊飯量に対応して異なる温度変化特性、すなわち、炊飯量が3カップのときに温度上昇曲線TN、この炊飯量より少ない0.5カップのときに温度上昇曲線TS、最も多い炊飯量5.5カップのときに温度上昇曲線TLを呈する(図5参照)。一方、従来技術において同様に計測すると、図11に示す温度上昇曲線TS’、TN’、TL’を呈している。図7の表(a)、(b)は、これらの温度上昇曲線TS、TN、TL及びTS’、TN’、TL’における立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIにかかる時間、並びに立上加熱工程IIにおいて基準温度θs、例えば90℃に到達するまでの時間を示している。この時間は、実験値の一例となっている。この基準温度θsは、吸水温度θ1以上、沸騰維持工程の温度θ2以下の範囲で設定される。これらのデータから、従来技術のそれぞれの温度上昇曲線TS’、TN’、TL’は近似したものとなり、一方、実施形態の温度上昇曲線TS、TN、TLは分散されたものとなっている。これらの温度上昇曲線TS’、TN’、TL’及びTS、TN、TLにおいて、所定の基準温度θs(90℃)に到達する時間をみると、従来技術では、炊飯量0.5カップ及び3.0カップではtS’(119秒、以下、同じ)及びtN’(125秒)でその差がΔta’(6秒)、また、炊飯量3.0カップ及び5.5カップではtN’(125秒)秒及びtL’(144秒)でその差がΔtb'(19秒)、さらに、最小の炊飯量
0.5カップ及び最大の5.5カップではtS’(119秒)及びtL’(144秒)でその差がΔtc’(25秒)となり、炊飯量の大中小によってもそれらの差が僅差(最大でも25秒以下)となっている。一方、この実施形態では、炊飯量0.5カップ及び3.0カップでは、tS(95秒)及びtN(171秒)でその差がΔta(26秒)、また、炊飯量3.0カップ及び5.5カップではtN(171秒)及びtL(287秒)でその差がΔtb(116秒)、さらに、最小の炊飯量0.5カップ及び最大の5.5カップではtS(95秒)及びtL(287秒)でその差がΔtc(192秒)となり、炊飯量の大中小によって、それらの差が大きく(最大で192秒以下)となっている。そこで、従来技術及び実施形態の温度上昇曲線TS’、TN’、TL’及びTS、TN、TLは、炊飯量によって、近似したものから分散されたものとなり、その結果、基準温度θs(90℃)に到達する時間差も大きくなって現れて、この基準温度θsへ到達する時間が炊飯量と対応したものとなっている。そこで、この到達時間を計測することによって炊飯量を判定することが可能になる。すなわち、実施形態では、基準温度θs(90℃)に到達する時間、tS(95秒)を計測したときに炊飯量0.5カップ、同様にしてtN(171秒)のときに3.0カップ、tL(287秒)のときに5.5カップと判定できる。基準温度に到達する時間と炊飯量は、予め、実験により求めて置き、これのデータは制御装置内のメモリーに記憶されて、炊飯工程中に炊飯量判定手段により算出される。この立上加熱工程IIでの量判定は、この立上加熱工程の前半で行い、この判定結果に基づいて以後、立上加熱工程IIの後半の加熱制御をも含めて沸騰維持工程IIIの加熱制御が実行される。この実施形態では、基準温度θsを90℃に設定したが、この値に限定されるものでなく他の設定値でもよい。しかしながら、この設定値は、沸騰温度以下にする必要がある。また、炊飯量の判定は、基準温度に到達する時間で判定したが、他の方法、例えば、各温度上昇曲線が分散されたものとなっているので、曲線の勾配を利用して判定してもよい。
【0050】
この炊飯器1においては、立上加熱工程IIに要する時間の長短がご飯の食味を左右する重要な要因となっている。この時間が短すぎるとご飯が硬くなり、一方、長すぎると粘りがなくなり、そのために食感も違ったものとなり、ユーザーの好みの炊飯ができないことが知られている(例えば、特許第2670720号公報参照)。好みの炊飯を行うには、立上加熱工程IIにかかる時間を一定にするのが好ましい。炊飯器メーカーでは、概ね、最小・最大炊飯量の中間の炊飯量で最適、すなわち好みの炊き上がりになるように設計している。この実施形態では最小炊飯量0.5カップと最大炊飯量5.5カップとの略中間の炊飯量3.0カップでの炊飯条件が最適なものとして説明する。なお、この炊飯量は、中間量以外の量であってもよい。
【0051】
前述のように、立上加熱工程IIで量判定を行うと正確な判定が可能となり、この正確な判定結果に基づいて、以後の立上加熱工程後半の加熱制御をも含めた沸騰維持工程の加熱制御が行われる。この以降の加熱制御は、中間炊飯量3.0カップに対応した立上加熱工程IIN及び沸騰維持工程IIINへシフトさせるような制御で行われる。この制御は、炊飯料0.5カップ及び5.5カップに対しては、それらの温度上昇曲線TS、TLを基準温度θSを過ぎた時点から温度上昇曲線TNに沿うように変更した制御となる。すなわち、この温度上昇曲線TNは、基準温度上昇曲線となる。
【0052】
図6に示したように、温度上昇曲線TSは、基準温度θSを過ぎた時点から、その温度上昇曲線TS1が温度上昇曲線TNにシフトさせるためにTS2へ変更される。同様にして、温度上昇曲線TLは、基準温度θSを過ぎた時点から、その温度上昇曲線TL1が温度上昇曲線TNにシフトさせるためにTL2へ変更される。これらのシフトを時間でみると、中間炊飯量(3.0カップ)における立上加熱工程IIN及び沸騰維持工程IIINの時間は、図7(a)から、IItN(352秒)及びIIItN(332秒)であるので、この中間炊飯量における各工程の時間を基準にして、この基準炊飯量より小さい或いは大きい炊飯量における立上加熱工程及び沸騰維持工程の時間をこれらの時間と同じ或いは近づけた時間に変更する。すなわち、最小炊飯量(0.5カップ)における立上加熱工程IIS及び沸騰維持工程IIISにかかる時間は、それぞれIItS(152秒)及びIIItS(321秒)であるので、基準温度θs(90℃)以後の時間を中間炊飯量における各工程の時間IItN(352秒)、IIItN(332秒)へ変更する、すなわちそれぞれの時間を長くする。
【0053】
したがって、最小炊飯量(0.5カップ)では、立上加熱工程IISの時間が中間炊飯量における時間IItNへ変更されて、この立上加熱工程IISは一定時間となり、また、以後も沸騰維持工程IIINに合わせた時間加熱制御されるので、最適な条件で炊飯される。
【0054】
同様にして、最大炊飯量(5.5カップ)における立上加熱工程IIL及び沸騰維持工程IIILの時間はIItL(600秒)及びIIItL(234秒)であるが、基準温度θs(90℃)以後の時間を中間炊飯量の時間に合わせ短縮させる。したがって、最大炊飯量(5.5カップ)では、立上加熱工程IILの時間が、中間炊飯量における、基準温度θs(90℃)以後の立上加熱工程の所要時間IItNへ変更される。この立上加熱工程IILではこの時間を若干オーバーすることがあるが、略この時間に近接した時間となり、また、以後も沸騰維持工程IIINの時間で加熱制御されるので、最適な条件で炊飯される。なお、この実施形態では、沸騰維持工程III以降も中間炊飯量に対応した基準温度上昇曲線にシフトさせたが、これと異なり、個別の炊飯量に対応した炊飯制御をしてもよい。
【0055】
図5、図8〜図10を参照して、炊飯工程を詳述する。なお、図9、図10は炊飯工程のフローチャートである。なお、表示パネル8には各種の炊飯メニューが表示されるが、以下、白米コースを選択した場合の炊飯を説明する。
【0056】
まず、所定量の水と白米とを鍋7に入れ、この鍋を本体2の内部ケース4内に収容する。そこで、鍋底温度センサ6で鍋底温度(鍋内温度)θを検出し、図8(b)の表に基づいて第1の吸水工程I1における吸水時間TAを決定する(S01)。なお、この吸水時間は、常温水の温度に対応したものになっている。このとき、制御装置24により圧力弁開放機構18を作動させてボール15を移動せしめ、圧力弁13を開状態にする。
【0057】
第1の吸水工程I1における吸水時間TAが決定されると、第1の吸水工程I1を開始し(S02)、タイマーにより吸水時間T1の計時が開始され(S03)。この吸水時間T1がTAに達すると(S04)、第1の吸水工程I1を完了して第2の吸水工程I2へ移行し、第2の吸水工程I2の吸水時間T2の計時が開始される(S05)。第2の吸水工程I2が開始されるとインバータ回路を起動して、IHコイルへの通電を開始する。この通電により、底部ヒータ5bには高周波電流が流れて、鍋7に渦電流が発生して鍋7が発熱して鍋内の炊飯物の加熱が開始される(S06)。鍋底温度センサ6により鍋底温度が計測され、この計測値が所定温度60℃(実際は59.9℃)に達するまでIHコイルへの通電を行う(S07)。鍋底温度θが60℃に達した段階で通電を停止し、計測値が所定温度(θ2=59℃)に至るとIHコイルへの通電を再開する(S08)。そして、吸水時間T2が予め設定された第2吸水工程I2に要する時間TBに達したか否かを検出し(S09)、時間TBに達したことが検出されると、立上加熱工程IIへ移行する(S10)。
【0058】
次の立上加熱工程IIでは、短時間で沸騰状態になるようにIHコイルに通電する電力を大きくし、大電力加熱を行うと共に圧力弁13を閉成する(S11)。大電力加熱の制御及び圧力弁13の閉成は、制御装置24により行われる。制御装置24にからの指令に基づき、圧力弁開放機構18がプランジャ19bを引き戻すことによってボール15が自重により弁孔14b上に転がって弁孔14bを塞ぎ、圧力弁13が閉成される。大電力加熱が開始されると、鍋7内の炊飯量の判定が開始される(S12)。炊飯量の判定が開始されると、鍋底温度θが90℃に達したかの判定を行い(S13)、大電力加熱の開始から鍋底温度θが90℃に到達するまでの到達時間を計測し、この到達時間によって、炊飯量の判定が行われる(S14)。すなわち、到達時間が長ければ炊飯量が多く、時間が短ければ炊飯量は少ないと判定される。
【0059】
炊飯量の判定が終了すると、判定された炊飯量に基づいて加熱量の調整が行われる(S15〜S18)。まず、炊飯量が基準炊飯量よりも多いか否かの判定が行われる(S15)。炊飯量が基準炊飯量より多かった場合、IHコイルに通電する電力を更に大きくして加熱量を増加させ(S16)、立上加熱工程IILにかかる時間を短くし、最適な時間である立上加熱工程IINにかかる時間と同じ長さとする。
【0060】
炊飯量が基準炊飯量以下であると判定された場合(S15)、次に、炊飯量が基準炊飯量よりも少ないか否かの判定が行われる(S17)。炊飯量が基準炊飯量より少なかった場合、IHコイルに通電する電力を小さくして加熱量を減少させ(S18)、立上加熱工程IISにかかる時間を長くし、最適な時間である立上加熱工程IINにかかる時間と同じ長さとする。
【0061】
炊飯量が基準炊飯量以上であると判定された場合(S17)、炊飯量は基準量と同じであるので、加熱量の調整は行われずそのまま立上加熱工程IINが続行される。なお、炊飯量の判定が行われると、その量判定結果に応じて後の第1蒸らし工程におけるおねば戻し時間や第3蒸らし工程における蒸らし時間の設定も行われる。
【0062】
鍋底温度θが105℃に達すると沸騰維持工程IIIへ移行する。沸騰維持工程IIIが開始されると(S19)、鍋7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、鍋7内は沸騰状態となる。この沸騰維持工程IIIへ移行した初期段階から、制御装置24により圧力弁開放機構18を作動させて圧力弁13を強制的に複数回開閉させる。圧力弁13が強制的に開動作されると、鍋7内の圧力が所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下するため、鍋7内が激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋7内に泡が発生し、この泡によって米粒が攪拌される。この結果、米粒が均一に加熱されて炊き上げられることになる。同時に大量のおねばが発生して、このおねばは、蒸気とともに圧力弁13の弁孔14b及び隙間空間Sを通って、貯留タンク22に入り込み、蒸気は蒸気口22cから外部へ放出され、蒸気以外のおねばは貯留タンク22内の空間22bに貯留される。なお、このおねばは、隙間空間S内にも貯留される。鍋7内の圧力が大気圧近傍まで低下すると、再び圧力弁13を閉成させ、鍋7内の圧力を上昇させ、この圧力弁13の開閉を複数回繰り返し行う。なお、この沸騰維持工程IIIにおいて時間が経過すると、鍋7内の残水量が減少して圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁13の強制的な開放は沸騰維持工程IIIの初期段階に集中させると効果的である。圧力弁13を複数回開放する操作を終えると、圧力弁開放機構18による圧力弁13の強制的開放が停止され、圧力弁13を閉状態とする。そして、ヒータによる沸騰状態を継続し、鍋底温度K3が計測される。そして、鍋底温度K3が所定温度、例えばθ3=130℃になると、鍋7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、IHコイルへの通電を停止して沸騰維持工程IIIを終了し、第1蒸らし工程へ移行する(S20)。
【0063】
第1蒸らし工程へ移行すると、タイマーは時間T3の計時を開始する。そして、炊飯量の大小において設定されたおねば戻し時間が読み出されるとともに、タイマーにより時間T4の計時が開始される。なお、おねば戻し時間に対応する第1の蒸らし工程では、IHコイルへの通電が停止されているので鍋7内の圧力が低下する。なお、このとき圧力弁13は閉成されている。この時間T4が計時されている間に鍋7内の内圧が低下して負圧になり、タンク弁221及び負圧弁17が開成されて、これらの弁からおねばが鍋7内へ落下する。鍋7内に落下したおねばは、殆どが負圧弁17の真下部分に落下し、この部分のおねばに含まれる水分により、この部分は水分が多くなっている。
【0064】
時間T4が所定の時間に達したことが検出されると、第1蒸らし工程を完了して第2の蒸らし工程に移行する(S21)。第2蒸らし工程に移行すると、IHコイルへの通電を開始し、タイマーにより時間T5の計時が開始される。このとき、圧力弁13が閉成されているので鍋7内の圧力が略1.2気圧に上昇する。そして、時間T5が予め設定された時間(例えば48秒)に達したことが検出されると、圧力弁13を開成し、第2蒸らし工程を完了して第3蒸らし工程に移行する(S22)。この圧力弁13の開成により、鍋7内の圧力Pは、略1.2気圧から大気圧近傍まで一気に低下する。この圧力変化により、おねばが鍋7内で激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象を起こし、おねばが鍋7内に広く拡散される。この拡散されたおねばはご飯に付着して米粒をコーティングする。
【0065】
その後、蒸らし時間(例えば16秒)を読み出して、IHコイルへの通電を所定の時間間隔でオン・オフし、この蒸らし時間をかけて蒸らす。この蒸らし時間は、炊飯量によって異なっている。この蒸らし時間の経過後、所定時間の間IHコイルへの通電を停止して残りの蒸らしを行い、時間T3が15分に達した段階で全蒸らし工程を終了し、保温工程へ移行する(S23)。
【0066】
本発明の実施形態は、圧力式の炊飯器で説明したが、この圧力式の炊飯器に限定されず、常圧式の炊飯器でもよい。また、加熱手段は、誘導コイルによる渦電流によって加熱するIH加熱方式に限らず、ヒータを内装した熱板を鍋底に装着したものやその他の加熱方法であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…炊飯器
2…炊飯器本体
3…外部ケース
3a〜3f、9…スイッチ操作釦
4…内部ケース
5…加熱手段
5a…側部ヒータ
5b…底部ヒータ(IHコイル)
6…鍋底温度センサ
7…鍋
8…表示パネル
10…蓋体
11…内蓋
12…外蓋
13…圧力弁
16…安全弁
17…負圧弁
18…圧力弁開放機構
21…ロック機構
22…貯留タンク
23…蒸気温度センサ
24…制御装置
25…表示操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炊飯器に係り、さらに詳しくは炊飯時に米を常温水に所定時間浸漬するとともに炊飯量の判定を容易且つ正確にして、この正確な量判定結果に基づいて炊飯制御することによって、美味しいご飯を炊き上げることができる電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は一般家庭などにおいて既に必需品となっており、様々なタイプのものが製品化されている。この種の炊飯器は炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものとに大別されている。近年、これらの炊飯器にはマイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及びすし飯を炊飯するすし飯炊飯コースなどが1台でできるようになっている。これらの炊飯コースは、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む一連の工程によって行われている。また、この一連の炊飯工程では鍋内の炊飯量を判定し、その量判定結果に基づいて立上加熱工程及び沸騰維持工程などにおける加熱量の制御を行っている。通常、この量判定は、立上加熱工程、吸水工程或いはこれらの両工程で行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された炊飯器は、立上加熱工程で量判定を行っているものである。立上加熱工程で量判定を行うと、吸水工程を省いた炊飯コース、例えば早炊きコースのときにも量判定が可能となり、また、この立上加熱工程では鍋内の温度上昇が急峻でその温度勾配が大きくなるので、この急峻な温度勾配を利用して、量判定を容易に行うことができるなどのメリットがある。しかしながら、この立上加熱工程での量判定では立上加熱工程内での時間のコントロールができなくなるために、炊飯量に対応した立上加熱工程における加熱量の制御が難しくなる。そのために、硬め・柔らかめなどのお好みの炊飯が難しくなるなどのデメリット(課題)がある。この課題を解決するために、立上加熱工程前の吸水工程において量判定を行うことができるようにした炊飯器が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献2に記載された炊飯器は、吸水時間の間に所定の吸水温度(59〜60℃)を維持するのに必要なIHヒータへの通電時間を基準にして、炊飯量の判定を行っている。この炊飯器によると、吸水工程終了後、立上加熱工程へ移行した直後からこの炊飯量に対応した加熱量の制御が可能になる。特に、立上加熱工程で温度上昇特性を所定のものに設定した時間のコントロールができるので、硬め・柔らかめなどのお好みの炊飯が可能になる。また、この吸水工程での量判定であっても課題があるというので、吸水工程及び立上加熱工程の両工程で量判定を行うようにした炊飯器も提案されている(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−51829号公報(第3−4頁、第9図)
【特許文献2】特開2009−100887号公報(段落〔0034〕〜〔0039〕、図6)
【特許文献3】特開2005−65928号公報(段落〔0014〕、〔0015〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の炊飯器のように、立上加熱工程で量判定を行うと、温度上昇の勾配が急峻になるので、この急峻な上昇勾配を利用して量判定が容易になるなどのメリットがあるが、一方で、硬め・柔らかめなどのお好みの炊飯が難しくなるなどのデメリットが内在している。しかしながら、この量判定も、吸水工程との関連で新たな課題があることが判明した。その課題は、吸水温度は、通常、常温より高い温度に設定されていることにある。例えば、上記特許文献2の炊飯器では吸水温度が60℃程度であるが、このような吸水温度で吸水させると、吸水後の立上加熱工程における鍋内の温度上昇は、図11に示すように、炊飯量の大小に拘わらず殆ど同じ温度上昇特性となってしまうことが判明した。すなわち、図11を参照して、TS’、TN’、TL’は炊飯量に対応した温度上昇曲線であって、TS’が0.5カップ、TN’が3.0カップ及びTL’が5.5カップに対応している。立上加熱工程では、これらの温度上昇曲線が殆ど重なったもの、すなわち炊飯量の大小に拘わらず殆ど同じものとなり、それらを峻別するのが極めて難しい。そのために、この立上加熱工程における温度上昇を利用して量判定をすると正確性に欠けたものとなる。
【0007】
上記特許文献1の炊飯器が抱える上記デメリットは、上記特許文献2に開示された量判定技術を採用することによって解消可能となる。また、上記特許文献3の量判定技術は、吸水工程及び立上加熱工程の両工程で量判定を行うので、さらに改善されたものとなる。しかしながら、これらの特許文献2、3の吸水工程における量判定にもいくつかの課題が内在している。一つの課題は、吸水温度の温度幅が狭く(例えば、上記特許文献2の温度幅は59〜60℃となっている)、しかもこの温度幅での温度上昇の勾配が極めて小さいので正確な判定が難しくなることである。また、他の課題は、初期水温の影響を受け易いことである。例えば、初期水温が設定した吸水温度を超えると判定ができなくなる。なお、上記特許文献2の炊飯器は設定吸水温度を59〜60℃に設定しているので、初期水温の影響を受ける恐れがないが、この設定温度を常温近傍に設定すると影響を受け易くなる。
【0008】
さらに他の課題には、米への十分な吸水ができないことがある。上記特許文献2の炊飯器は、吸水工程で略60℃に昇温して吸水時間を短縮している。しかしながら、鍋内を略60℃まで昇温して吸水を行うと、吸水に要する時間は短縮されるが米の外側と内側とで吸水率のばらつきが生じる恐れがある。また、米の内部の芯まで十分な吸水をさせようとすると、米の外側は略飽和状態まで含水されたままで長時間温水に浸されるために、その表面に割れなどが発生することがある。そのために、この割れ部分に水が浸入すると米の一部、すなわち固形分が剥離して溶出し、米の表面の組織が崩れたものとなり、このような組織が崩れた米を炊飯すると、炊き上がったご飯は水っぽくなり、食味が劣ったものとなる。
【0009】
ところで、昔の竈炊き炊飯では、炊飯前に米を常温水に長い時間浸漬して、含水率が略飽和値になるまで吸水させた後に炊飯されていた。この炊き方によると、米の内側と外側とで含水率の差が殆どなくなり、米の表面の組織を壊さずに吸水させることができる。しかしながら、この常温水での吸水は、常温水の温度が季節によって変化することや、また米の種類及び炊飯量によって吸水率も変化することにより、時間の調節が難しいものとなっている。この時間を現在の電気炊飯器でコントロールしようとすると、ユーザーの勘によらざるを得ず、このために、長時間の常温水への浸漬を余儀なくされることがあって、炊飯にかかる時間の計算ができず、またお好みの炊飯も難しくなる。
【0010】
本発明者らは、立上加熱工程での量判定に固有の課題があり、固有の課題は吸水工程での量判定へ変更することで解決できるが、この吸水工程での判定にも課題が内在していることから、如何にすれば鍋内の炊飯物に十分な吸水を行い、しかも量判定を容易に且つ正確に行って、適確な炊飯制御を実現できるかを検討した。その結果、昔ながらの炊き方の常温水に所定時間浸漬させる理想的な吸水が実行でき、しかも、この常温水による吸水工程が終了した後、立上加熱工程へ移行し、この立上加熱工程での温度上昇を測定したところ、その温度変化特性、すなわち、立上加熱工程における温度上昇曲線が図11の曲線TS’、TN’、TL’から図5の曲線TS、TN、TLのように、炊飯量の異なる曲線が殆ど重なることがなく、炊飯量の大小差が顕著に現れることを突き止めた。このように常温水での吸水工程後の立上加熱工程で量判定を行うことにより、量判定を容易且つ正確に行うことができ、しかも、量判定を立上加熱工程の初期に実施すれば、この正確な量判定結果に基づいて以降の加熱制御、すなわち立上加熱工程の後半を含めた立上加熱工程及び(又は)それ移行の沸騰維持工程の加熱制御が適確にできることに想到して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
本発明は従来技術が抱える課題を解決すると共に、上記の知見に基づいてなされたものであって、本発明の目的は、鍋内の米を常温水に十分に浸漬すると共に量判定を容易且つ正確にして、この量判定に基づいて加熱制御することによって美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することにある。より具体的には、米を常温水に比較的長い所定時間かけて浸漬して十分に吸水させた後に、立上加熱工程の早い段階で炊飯量を判定し、この量判定に基づいて、以降の加熱温度制御を最適基準値の温度上昇に合わせて実行して、最適な吸水及び加熱温度制御により美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、上記の目的に加え、長い時間かけて常温水を吸水させると全体の炊飯時間が長くなるので、この常温水による吸水時間を調節して炊飯できるようにした炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定量の炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記鍋内の温度を検出するする温度検出手段と、前記温度検出手段からの出力を入力して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程、この吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この立上加熱工程後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を前記鍋内の炊飯量を判定して実行する電気炊飯器において、前記立上加熱工程において、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線が設定されて、前記制御装置には、前記吸水工程で前記鍋内の炊飯物に常温水を所定時間かけて吸水させた後に、次の立上加熱工程の前半で炊飯量を判定して、この量判定に基づいて、前記立上加熱工程の後半から前記鍋内の温度を前記基準温度上昇曲線へシフトさせる加熱制御を実行する制御手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1の記載の電気炊飯器において、前記立上加熱工程に加え前記沸騰維持工程においても、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線が設定されて、前記制御装置は、前記立上加熱工程終了後前記鍋内の温度を前記基準温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1の記載の電気炊飯器において、前記制御装置には、前記吸水工程終了後前記立上加熱工程へ移行した時点から所定の基準温度へ到達するまでの時間を計測して炊飯量を判定する量判定手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3の記載の電気炊飯器において、前記基準温度は、前記常温水の温度を超える温度に設定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は4に記載の電気炊飯器において、前記基準炊飯量は、最大炊飯量と最小炊飯量の略中間炊飯量に設定されて、前記制御装置は、前記立上加熱工程において、炊飯量が前記中間炊飯量より小さいときに加熱量を低減し、多いときに加熱量を増大させて、前記鍋内の温度を前記温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記吸水工程において、予め常温水の温度に対応した炊飯物の吸水時間を設定して、前記制御装置は、前記温度検出手段により吸水開始時の前記鍋内の温度を検出して、前記吸水時間を決定して前記吸水工程を実行することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電気炊飯器において、前記吸水時間は、前記常温水の温度が高いときは短く、低いときは長く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。すなわち、請求項1、2の発明によれば、吸水工程において所定時間かけて炊飯物に常温水を吸水させるので、炊飯物に十分な常温水を吸水させることができる。また、次の立上加熱工程では、この立上加熱工程での鍋内の温度上昇を測定すると、その温度上昇が炊飯物の炊飯量に応じて、例えば60℃前後の温水で吸水させたときと比べて、顕著に峻別できるものとなり、この温度上昇を利用して炊飯量の判定が容易且つ正確にできる。そして、この量判定を立上加熱工程の前半、すなわち吸水工程終了の早い段階で判定し、この量判定に基づいて、立上加熱工程の後半から基準温度上昇曲線へシフトさせる加熱制御を実行するので、立上加熱工程において理想的な加熱制御ができて最適な炊飯が可能になる。
【0021】
また、立上加熱工程後、基準温度上昇曲線へシフトされるので、立上加熱工程後も理想的な加熱制御ができて最適な炊飯が可能になる。
【0022】
また、請求項3、4の発明によれば、量判定手段により、吸水工程終了後立上加熱工程へ移行した時点から所定の基準温度へ到達するまでの時間を計測することによって、炊飯量の判定が簡単にできる。
【0023】
請求項5の発明によれば、基準炊飯量を最大炊飯量と最小炊飯量の略中間炊飯量に設定し、この略中間炊飯量に対応した温度上昇曲線を基準にして炊飯制御をするので、大小の炊飯量への対応が容易になり、炊飯量に応じた最適な炊飯が可能になる。
【0024】
請求項6の発明によれば、炊飯時の水温によって被炊飯物に吸水される吸水速度が異なるが、この発明では予め水温に対応した吸水時間が設定されて、炊飯ごとにその水温に対応した吸水時間が選定されて、この水温に対応した吸水時間をかけて被炊飯物が浸漬されるので、最適な時間で被炊飯物に十分な水が吸水される。その結果、被炊飯物の熱の伝導が良好となり、芯の無いおいしいご飯を炊き上げることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、炊飯物に炊飯時に使用する常温水の温度の高低に拘わらず炊飯物に常温水を略飽和含水率になるまで含水させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】制御装置を構成するブロック図である。
【図5】炊飯工程における鍋内の温度の変化を示した温度上昇曲線である。
【図6】図5の一部を拡大した温度上昇曲線である。
【図7】図7は炊飯量ごとの立上加熱工程及び沸騰維持工程の時間を示し、図7(a)は、図5における立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表、図7(b)は従来技術(図11)の立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表である。
【図8】図8(a)は浸漬時間と固形分の溶出量との関係を示した表、図8(b)は水温の違いによる設定すべき吸水時間を示した表である。
【図9】本発明の炊飯工程のフローチャート図である。
【図10】図9に続く炊飯工程のフローチャート図である。
【図11】従来技術の炊飯器の炊飯工程における温度上昇曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。すなわち、以下に説明する炊飯器は、圧力式の炊飯器となっているが、これに限定されるものでなく非圧力式の炊飯器にも適用できるものである。
【0028】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造及び制御装置を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の炊飯器の縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【0029】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、図1、図2に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態にする蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開放制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯コースを表示して選択する表示操作部25と、選択された炊飯コースに従って加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の炊飯物を所定温度に加熱して一連の炊飯工程を実行する制御装置24とを有している。
【0030】
一連の炊飯工程は、図5に示すように、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程I、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程II(IIS〜IIL)、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程III(IIIS〜IIIL)、炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含む工程となっている。
【0031】
本体2は、図2に示すように、有底箱状の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成されて、この隙間に制御装置24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5b及び側部ヒータ5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部ヒータ5bには環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。
【0032】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯選択コース及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦3a〜3f、9とを備えている。これらのスイッチ操作釦3a〜3f、9は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯予約をする炊飯予約釦3b、炊飯等の設定を取消す取消/保温釦3c、炊飯する米を選択するお米選択釦3d、炊飯メニューを選択するメニュー選択釦3e、コースを選択するコース釦3f、及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9となっている。これらの釦及びキーは、押し釦式のスイッチを構成する操作釦等であって、これらの釦或いはキーを押圧することにより、各種操作がなされるようになっている。
【0033】
蓋体10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を覆う外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構Hにより本体2に枢支され、他側がロック機構21により本体2の係止部にロックされる。
【0034】
図2及び図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けられている。圧力弁13は圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー14cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ19a内から電磁コイルの励磁により入出し、ボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャ19bの先端に装着された作動棹20と、シリンダ19aの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0035】
圧力弁開放機構18は、制御装置24により制御される。すなわち、制御装置24からの指令に基づき、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダ19aから飛出してボール15に衝突し、ボール15が所定方向に押し出される。この押し出しにより、ボール15は弁孔14b上で移動して弁孔14bを強制的に開放させる。また、開放状態において、電磁コイルが励磁されると、プランジャ19bがシリンダ19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14bを閉塞する。
【0036】
内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23(図3参照)が取り付けられている。
【0037】
内蓋11と外蓋12とは、その間に所定広さの隙間空間Sをあけて結合されている。外蓋12には、鍋7から排出される水分を含むおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、その内部に圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒22aと、おねばを一時貯留する空間22bと、蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンク22の空間22bは、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばとは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋7外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク22を設けて、この貯留タンク22におねばを一時貯留しておき、鍋7内の加熱が終了して鍋7内が負圧になったときにおねばを鍋7内に戻すことで美味しく炊きあげることができる。
【0038】
次に、図4を参照して所定の炊飯工程を実行するための制御装置24の構成を説明する。制御装置24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、メニュー選択釦3e、炊飯予約釦3b及び取消/保温釦3c、鍋底温度センサ6、蒸気温度センサ23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAMが接続されている。また、出力部(ドライバー)には、側部ヒータ5a、底部ヒータ(IHコイル)5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構18、および表示器(表示パネル)8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯コース及びこの炊飯コースを実行するプログラムが収納されている。IHコイルは、インバータ回路に接続されて、この回路によってIHコイルが制御される。
【0039】
次に、図5〜図7を参照して炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程における鍋内の温度の変化を示した温度上昇曲線、図6は図5の一部を拡大した温度上昇曲線、図7は立上加熱工程及び沸騰維持工程の時間を示し、図7(a)は図5における立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表、図7(b)は従来技術(図11)の立上加熱工程及び沸騰維持工程にかかる時間を示した時間表、図8(a)は浸漬時間と固形分の溶出量との関係を示した表、図8(b)は、水温の違いによる設定すべき吸水時間を示した表である。
【0040】
炊飯工程は、図5に示すように、所定量の水分を炊飯物に吸水させる吸水工程Iと、鍋内を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程IIと、鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIと、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程(図示省略)となっている。
【0041】
これらの炊飯工程のうち、吸水工程Iは、鍋内の炊飯量の大小に関係なく米に所定量の水を吸水させる第1、第2の吸水工程I1、I2に区分されている。また、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIは、鍋内の炊飯量の小中大、例えば0.5カップ、3.0カップ及び5.5カップの米に対応した工程IIS〜IIL及びIIIS〜IIILとなっている。これらの立上加熱工程IIS〜IIL及び沸騰維持工程IIIS〜IIILでは、炊飯量に応じて鍋内の温度は曲線TS、TN、TLのように変化する。これらの温度上昇曲線TS、TN、TLは、変更される前のものであって、これらの温度上昇曲線のうち、温度上昇曲線TS、TLは基準温度θSを過ぎると温度上昇曲線TNに沿うように変更される。この変更については後述する。
【0042】
これらの炊飯工程において、吸水工程Iは、加熱手段を作動させずに、洗米などに使用した常温の水を用いて、所定時間をかけて所定量吸水させる第1の吸水工程I1と、この第1の吸水工程I1後に加熱手段を作動させて所定温度θ1へ昇温して吸水させる第2吸水工程I2とに区分されている。第1の吸水工程I1の水は、洗米などに使用する常温の水を用いるので、その水温は四季によって異なり、通常、冬季は低く、夏季は高い。なお、この水を以下常温水という。また、所定温度θ1は、例えば59〜60℃である。
【0043】
第1の吸水工程I1の吸水時間は、炊飯時の鍋7内の温度によって異なっている。すなわち、この吸水時間は、所定の温度の水に米を所定時間浸漬したときに、米の固形物、例えば澱粉質の溶出量が所定値以下に収まる時間に設定される。図8(a)は、水温を変更して1時間浸漬したときに米から固形分が溶出される溶出量を示している。この水温と溶出量との関係は実験により求めたものである。図8(a)に示すように、水温21.6℃の水に100gの米を1時間浸漬すると、固形分が0.53g溶出される。同様にして、38.6℃では0.73g、また49.5℃では0.84g、更に58.6℃では1.07gが溶出される。固形分の溶出量が多く、例えば1.0g以上になると米の表面の組織が崩れるため、炊き上がったご飯は水っぽくなり、食味が劣ったものとなる。そこで、水温と吸水時間との関係は、米からの固形分の単位時間あたりの溶出量が1%以上にならないように設定される。
【0044】
第1の吸水工程I1の吸水時間は、水温が低いときは長く、高いときは短い時間に設定される。すなわち、図8(b)に示すように、鍋7内の水温が低いとき、例えば水温が7℃以下のときは吸水時間が最も長い44分、水温が8〜12℃のときは吸水時間を40分、以下同様にして、水温が13〜17℃のときは36分、水温が18〜22℃のときは32分、23〜27℃のときは28分、28〜32℃のときは24分、さらに、33℃以上のときは20分に設定される。
【0045】
この水温と吸水時間との関係は、予め、制御装置24の記憶手段に記憶されている。鍋7内の温度は鍋底温度センサ6で検出されるが、この検出のタイミングは図5を参照して、本体2に鍋7を収容した時点a1から所定時間経過した時点a2、例えば180秒(3分)経過した時点a2で検出するのが好ましい。これは、本体2に鍋7を収容した直後に検出を行うと、鍋底とセンサとの接触などが不安定な状態になっていることがあり、正確な温度の検出ができないことがあるためである。よって、所定時間経過させた時点で温度の検出を行うことにより、より正確な温度が検出可能になる。
【0046】
この第1の吸水工程I1で常温水の温度に対応した吸水時間をかけて浸漬させることにより、鍋7内の米には十分な水が吸水されてその含水率は略飽和状態に達する。次に、第2の吸水工程I2(時点a3)では、次の立上加熱工程IIへの移行の前工程として、IHコイルへの通電を所定時間オンして、鍋7内の温度を所定温度θ1(60℃前後)にして所定の時間(a3からa4)吸水させる。この時間は立上加熱工程IIへの移行期間となっており、第1の吸水工程I1で米に十分な水が吸水されているので、この時間は短く、この時間に更に吸水されることは少ない。したがって、吸水工程I、特に第1の吸水工程I1において、鍋7内の米には十分な水が吸水されるので、米への熱の伝導が良好となり、炊飯されたご飯は芯の無い、美味しいものとなる。
【0047】
次の立上加熱工程IIでは、加熱手段への通電をオンすると共に圧力弁13を閉成して、吸水後の炊飯物が沸騰温度まで昇温加熱される。この立上加熱工程IIでは、鍋7内の圧力が大気圧から例えば1.2気圧まで昇圧される。また、この立上加熱工程IIでは鍋内の炊飯量の判定が行われる。
【0048】
図5〜図7を参照して、立上加熱工程IIにおける炊飯量の判定及び立上加熱工程以降の炊飯制御を説明する。
【0049】
吸水工程Iで鍋7内の所定量の炊飯物に所定時間かけて常温水を吸水させた後に、立上加熱工程IIへ移行すると、前述のように、炊飯量に対応して異なる温度変化特性、すなわち、炊飯量が3カップのときに温度上昇曲線TN、この炊飯量より少ない0.5カップのときに温度上昇曲線TS、最も多い炊飯量5.5カップのときに温度上昇曲線TLを呈する(図5参照)。一方、従来技術において同様に計測すると、図11に示す温度上昇曲線TS’、TN’、TL’を呈している。図7の表(a)、(b)は、これらの温度上昇曲線TS、TN、TL及びTS’、TN’、TL’における立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIにかかる時間、並びに立上加熱工程IIにおいて基準温度θs、例えば90℃に到達するまでの時間を示している。この時間は、実験値の一例となっている。この基準温度θsは、吸水温度θ1以上、沸騰維持工程の温度θ2以下の範囲で設定される。これらのデータから、従来技術のそれぞれの温度上昇曲線TS’、TN’、TL’は近似したものとなり、一方、実施形態の温度上昇曲線TS、TN、TLは分散されたものとなっている。これらの温度上昇曲線TS’、TN’、TL’及びTS、TN、TLにおいて、所定の基準温度θs(90℃)に到達する時間をみると、従来技術では、炊飯量0.5カップ及び3.0カップではtS’(119秒、以下、同じ)及びtN’(125秒)でその差がΔta’(6秒)、また、炊飯量3.0カップ及び5.5カップではtN’(125秒)秒及びtL’(144秒)でその差がΔtb'(19秒)、さらに、最小の炊飯量
0.5カップ及び最大の5.5カップではtS’(119秒)及びtL’(144秒)でその差がΔtc’(25秒)となり、炊飯量の大中小によってもそれらの差が僅差(最大でも25秒以下)となっている。一方、この実施形態では、炊飯量0.5カップ及び3.0カップでは、tS(95秒)及びtN(171秒)でその差がΔta(26秒)、また、炊飯量3.0カップ及び5.5カップではtN(171秒)及びtL(287秒)でその差がΔtb(116秒)、さらに、最小の炊飯量0.5カップ及び最大の5.5カップではtS(95秒)及びtL(287秒)でその差がΔtc(192秒)となり、炊飯量の大中小によって、それらの差が大きく(最大で192秒以下)となっている。そこで、従来技術及び実施形態の温度上昇曲線TS’、TN’、TL’及びTS、TN、TLは、炊飯量によって、近似したものから分散されたものとなり、その結果、基準温度θs(90℃)に到達する時間差も大きくなって現れて、この基準温度θsへ到達する時間が炊飯量と対応したものとなっている。そこで、この到達時間を計測することによって炊飯量を判定することが可能になる。すなわち、実施形態では、基準温度θs(90℃)に到達する時間、tS(95秒)を計測したときに炊飯量0.5カップ、同様にしてtN(171秒)のときに3.0カップ、tL(287秒)のときに5.5カップと判定できる。基準温度に到達する時間と炊飯量は、予め、実験により求めて置き、これのデータは制御装置内のメモリーに記憶されて、炊飯工程中に炊飯量判定手段により算出される。この立上加熱工程IIでの量判定は、この立上加熱工程の前半で行い、この判定結果に基づいて以後、立上加熱工程IIの後半の加熱制御をも含めて沸騰維持工程IIIの加熱制御が実行される。この実施形態では、基準温度θsを90℃に設定したが、この値に限定されるものでなく他の設定値でもよい。しかしながら、この設定値は、沸騰温度以下にする必要がある。また、炊飯量の判定は、基準温度に到達する時間で判定したが、他の方法、例えば、各温度上昇曲線が分散されたものとなっているので、曲線の勾配を利用して判定してもよい。
【0050】
この炊飯器1においては、立上加熱工程IIに要する時間の長短がご飯の食味を左右する重要な要因となっている。この時間が短すぎるとご飯が硬くなり、一方、長すぎると粘りがなくなり、そのために食感も違ったものとなり、ユーザーの好みの炊飯ができないことが知られている(例えば、特許第2670720号公報参照)。好みの炊飯を行うには、立上加熱工程IIにかかる時間を一定にするのが好ましい。炊飯器メーカーでは、概ね、最小・最大炊飯量の中間の炊飯量で最適、すなわち好みの炊き上がりになるように設計している。この実施形態では最小炊飯量0.5カップと最大炊飯量5.5カップとの略中間の炊飯量3.0カップでの炊飯条件が最適なものとして説明する。なお、この炊飯量は、中間量以外の量であってもよい。
【0051】
前述のように、立上加熱工程IIで量判定を行うと正確な判定が可能となり、この正確な判定結果に基づいて、以後の立上加熱工程後半の加熱制御をも含めた沸騰維持工程の加熱制御が行われる。この以降の加熱制御は、中間炊飯量3.0カップに対応した立上加熱工程IIN及び沸騰維持工程IIINへシフトさせるような制御で行われる。この制御は、炊飯料0.5カップ及び5.5カップに対しては、それらの温度上昇曲線TS、TLを基準温度θSを過ぎた時点から温度上昇曲線TNに沿うように変更した制御となる。すなわち、この温度上昇曲線TNは、基準温度上昇曲線となる。
【0052】
図6に示したように、温度上昇曲線TSは、基準温度θSを過ぎた時点から、その温度上昇曲線TS1が温度上昇曲線TNにシフトさせるためにTS2へ変更される。同様にして、温度上昇曲線TLは、基準温度θSを過ぎた時点から、その温度上昇曲線TL1が温度上昇曲線TNにシフトさせるためにTL2へ変更される。これらのシフトを時間でみると、中間炊飯量(3.0カップ)における立上加熱工程IIN及び沸騰維持工程IIINの時間は、図7(a)から、IItN(352秒)及びIIItN(332秒)であるので、この中間炊飯量における各工程の時間を基準にして、この基準炊飯量より小さい或いは大きい炊飯量における立上加熱工程及び沸騰維持工程の時間をこれらの時間と同じ或いは近づけた時間に変更する。すなわち、最小炊飯量(0.5カップ)における立上加熱工程IIS及び沸騰維持工程IIISにかかる時間は、それぞれIItS(152秒)及びIIItS(321秒)であるので、基準温度θs(90℃)以後の時間を中間炊飯量における各工程の時間IItN(352秒)、IIItN(332秒)へ変更する、すなわちそれぞれの時間を長くする。
【0053】
したがって、最小炊飯量(0.5カップ)では、立上加熱工程IISの時間が中間炊飯量における時間IItNへ変更されて、この立上加熱工程IISは一定時間となり、また、以後も沸騰維持工程IIINに合わせた時間加熱制御されるので、最適な条件で炊飯される。
【0054】
同様にして、最大炊飯量(5.5カップ)における立上加熱工程IIL及び沸騰維持工程IIILの時間はIItL(600秒)及びIIItL(234秒)であるが、基準温度θs(90℃)以後の時間を中間炊飯量の時間に合わせ短縮させる。したがって、最大炊飯量(5.5カップ)では、立上加熱工程IILの時間が、中間炊飯量における、基準温度θs(90℃)以後の立上加熱工程の所要時間IItNへ変更される。この立上加熱工程IILではこの時間を若干オーバーすることがあるが、略この時間に近接した時間となり、また、以後も沸騰維持工程IIINの時間で加熱制御されるので、最適な条件で炊飯される。なお、この実施形態では、沸騰維持工程III以降も中間炊飯量に対応した基準温度上昇曲線にシフトさせたが、これと異なり、個別の炊飯量に対応した炊飯制御をしてもよい。
【0055】
図5、図8〜図10を参照して、炊飯工程を詳述する。なお、図9、図10は炊飯工程のフローチャートである。なお、表示パネル8には各種の炊飯メニューが表示されるが、以下、白米コースを選択した場合の炊飯を説明する。
【0056】
まず、所定量の水と白米とを鍋7に入れ、この鍋を本体2の内部ケース4内に収容する。そこで、鍋底温度センサ6で鍋底温度(鍋内温度)θを検出し、図8(b)の表に基づいて第1の吸水工程I1における吸水時間TAを決定する(S01)。なお、この吸水時間は、常温水の温度に対応したものになっている。このとき、制御装置24により圧力弁開放機構18を作動させてボール15を移動せしめ、圧力弁13を開状態にする。
【0057】
第1の吸水工程I1における吸水時間TAが決定されると、第1の吸水工程I1を開始し(S02)、タイマーにより吸水時間T1の計時が開始され(S03)。この吸水時間T1がTAに達すると(S04)、第1の吸水工程I1を完了して第2の吸水工程I2へ移行し、第2の吸水工程I2の吸水時間T2の計時が開始される(S05)。第2の吸水工程I2が開始されるとインバータ回路を起動して、IHコイルへの通電を開始する。この通電により、底部ヒータ5bには高周波電流が流れて、鍋7に渦電流が発生して鍋7が発熱して鍋内の炊飯物の加熱が開始される(S06)。鍋底温度センサ6により鍋底温度が計測され、この計測値が所定温度60℃(実際は59.9℃)に達するまでIHコイルへの通電を行う(S07)。鍋底温度θが60℃に達した段階で通電を停止し、計測値が所定温度(θ2=59℃)に至るとIHコイルへの通電を再開する(S08)。そして、吸水時間T2が予め設定された第2吸水工程I2に要する時間TBに達したか否かを検出し(S09)、時間TBに達したことが検出されると、立上加熱工程IIへ移行する(S10)。
【0058】
次の立上加熱工程IIでは、短時間で沸騰状態になるようにIHコイルに通電する電力を大きくし、大電力加熱を行うと共に圧力弁13を閉成する(S11)。大電力加熱の制御及び圧力弁13の閉成は、制御装置24により行われる。制御装置24にからの指令に基づき、圧力弁開放機構18がプランジャ19bを引き戻すことによってボール15が自重により弁孔14b上に転がって弁孔14bを塞ぎ、圧力弁13が閉成される。大電力加熱が開始されると、鍋7内の炊飯量の判定が開始される(S12)。炊飯量の判定が開始されると、鍋底温度θが90℃に達したかの判定を行い(S13)、大電力加熱の開始から鍋底温度θが90℃に到達するまでの到達時間を計測し、この到達時間によって、炊飯量の判定が行われる(S14)。すなわち、到達時間が長ければ炊飯量が多く、時間が短ければ炊飯量は少ないと判定される。
【0059】
炊飯量の判定が終了すると、判定された炊飯量に基づいて加熱量の調整が行われる(S15〜S18)。まず、炊飯量が基準炊飯量よりも多いか否かの判定が行われる(S15)。炊飯量が基準炊飯量より多かった場合、IHコイルに通電する電力を更に大きくして加熱量を増加させ(S16)、立上加熱工程IILにかかる時間を短くし、最適な時間である立上加熱工程IINにかかる時間と同じ長さとする。
【0060】
炊飯量が基準炊飯量以下であると判定された場合(S15)、次に、炊飯量が基準炊飯量よりも少ないか否かの判定が行われる(S17)。炊飯量が基準炊飯量より少なかった場合、IHコイルに通電する電力を小さくして加熱量を減少させ(S18)、立上加熱工程IISにかかる時間を長くし、最適な時間である立上加熱工程IINにかかる時間と同じ長さとする。
【0061】
炊飯量が基準炊飯量以上であると判定された場合(S17)、炊飯量は基準量と同じであるので、加熱量の調整は行われずそのまま立上加熱工程IINが続行される。なお、炊飯量の判定が行われると、その量判定結果に応じて後の第1蒸らし工程におけるおねば戻し時間や第3蒸らし工程における蒸らし時間の設定も行われる。
【0062】
鍋底温度θが105℃に達すると沸騰維持工程IIIへ移行する。沸騰維持工程IIIが開始されると(S19)、鍋7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、鍋7内は沸騰状態となる。この沸騰維持工程IIIへ移行した初期段階から、制御装置24により圧力弁開放機構18を作動させて圧力弁13を強制的に複数回開閉させる。圧力弁13が強制的に開動作されると、鍋7内の圧力が所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下するため、鍋7内が激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋7内に泡が発生し、この泡によって米粒が攪拌される。この結果、米粒が均一に加熱されて炊き上げられることになる。同時に大量のおねばが発生して、このおねばは、蒸気とともに圧力弁13の弁孔14b及び隙間空間Sを通って、貯留タンク22に入り込み、蒸気は蒸気口22cから外部へ放出され、蒸気以外のおねばは貯留タンク22内の空間22bに貯留される。なお、このおねばは、隙間空間S内にも貯留される。鍋7内の圧力が大気圧近傍まで低下すると、再び圧力弁13を閉成させ、鍋7内の圧力を上昇させ、この圧力弁13の開閉を複数回繰り返し行う。なお、この沸騰維持工程IIIにおいて時間が経過すると、鍋7内の残水量が減少して圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁13の強制的な開放は沸騰維持工程IIIの初期段階に集中させると効果的である。圧力弁13を複数回開放する操作を終えると、圧力弁開放機構18による圧力弁13の強制的開放が停止され、圧力弁13を閉状態とする。そして、ヒータによる沸騰状態を継続し、鍋底温度K3が計測される。そして、鍋底温度K3が所定温度、例えばθ3=130℃になると、鍋7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、IHコイルへの通電を停止して沸騰維持工程IIIを終了し、第1蒸らし工程へ移行する(S20)。
【0063】
第1蒸らし工程へ移行すると、タイマーは時間T3の計時を開始する。そして、炊飯量の大小において設定されたおねば戻し時間が読み出されるとともに、タイマーにより時間T4の計時が開始される。なお、おねば戻し時間に対応する第1の蒸らし工程では、IHコイルへの通電が停止されているので鍋7内の圧力が低下する。なお、このとき圧力弁13は閉成されている。この時間T4が計時されている間に鍋7内の内圧が低下して負圧になり、タンク弁221及び負圧弁17が開成されて、これらの弁からおねばが鍋7内へ落下する。鍋7内に落下したおねばは、殆どが負圧弁17の真下部分に落下し、この部分のおねばに含まれる水分により、この部分は水分が多くなっている。
【0064】
時間T4が所定の時間に達したことが検出されると、第1蒸らし工程を完了して第2の蒸らし工程に移行する(S21)。第2蒸らし工程に移行すると、IHコイルへの通電を開始し、タイマーにより時間T5の計時が開始される。このとき、圧力弁13が閉成されているので鍋7内の圧力が略1.2気圧に上昇する。そして、時間T5が予め設定された時間(例えば48秒)に達したことが検出されると、圧力弁13を開成し、第2蒸らし工程を完了して第3蒸らし工程に移行する(S22)。この圧力弁13の開成により、鍋7内の圧力Pは、略1.2気圧から大気圧近傍まで一気に低下する。この圧力変化により、おねばが鍋7内で激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象を起こし、おねばが鍋7内に広く拡散される。この拡散されたおねばはご飯に付着して米粒をコーティングする。
【0065】
その後、蒸らし時間(例えば16秒)を読み出して、IHコイルへの通電を所定の時間間隔でオン・オフし、この蒸らし時間をかけて蒸らす。この蒸らし時間は、炊飯量によって異なっている。この蒸らし時間の経過後、所定時間の間IHコイルへの通電を停止して残りの蒸らしを行い、時間T3が15分に達した段階で全蒸らし工程を終了し、保温工程へ移行する(S23)。
【0066】
本発明の実施形態は、圧力式の炊飯器で説明したが、この圧力式の炊飯器に限定されず、常圧式の炊飯器でもよい。また、加熱手段は、誘導コイルによる渦電流によって加熱するIH加熱方式に限らず、ヒータを内装した熱板を鍋底に装着したものやその他の加熱方法であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…炊飯器
2…炊飯器本体
3…外部ケース
3a〜3f、9…スイッチ操作釦
4…内部ケース
5…加熱手段
5a…側部ヒータ
5b…底部ヒータ(IHコイル)
6…鍋底温度センサ
7…鍋
8…表示パネル
10…蓋体
11…内蓋
12…外蓋
13…圧力弁
16…安全弁
17…負圧弁
18…圧力弁開放機構
21…ロック機構
22…貯留タンク
23…蒸気温度センサ
24…制御装置
25…表示操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記鍋内の温度を検出するする温度検出手段と、前記温度検出手段からの出力を入力して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程、この吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この立上加熱工程後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を前記鍋内の炊飯量を判定して実行する電気炊飯器において、
前記立上加熱工程において、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線が設定されて、
前記制御装置には、前記吸水工程で前記鍋内の炊飯物に常温水を所定時間かけて吸水させた後に、次の立上加熱工程の前半で炊飯量を判定して、この量判定に基づいて、前記立上加熱工程の後半から炊飯量に応じた温度上昇曲線を前記基準温度上昇曲線へシフトさせる加熱制御を実行する制御手段を設けたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記立上加熱工程に加え前記沸騰維持工程においても、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線を設定されて、
前記制御装置は、前記立上加熱工程終了後炊飯量に応じた温度上昇曲線を前記基準温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記制御装置には、前記吸水工程終了後前記立上加熱工程へ移行した時点から所定の基準温度へ到達するまでの時間を計測して炊飯量を判定する量判定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記基準温度は、前記常温水の温度を超える温度に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電気炊飯器。
【請求項5】
前記基準炊飯量は、最大炊飯量と最小炊飯量の略中間炊飯量に設定されて、前記制御装置は、前記立上加熱工程において、炊飯量が前記中間炊飯量より小さいときに加熱量を低減し、多いときに加熱量を増大させて、炊飯量に応じた温度上昇曲線を前記基準温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする請求項1又は4に記載の電気炊飯器。
【請求項6】
前記吸水工程において、予め常温水の温度に対応した炊飯物の吸水時間を設定して、
前記制御装置は、前記温度検出手段により吸水開始時の前記鍋内の温度を検出して、前記吸水時間を決定して前記吸水工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項7】
前記吸水時間は、前記常温水の温度が高いときは短く、低いときは長く設定されていることを特徴とする請求項6に記載の電気炊飯器。
【請求項1】
所定量の炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記鍋内の温度を検出するする温度検出手段と、前記温度検出手段からの出力を入力して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程、この吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この立上加熱工程後に鍋内を沸騰状態に維持する沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を前記鍋内の炊飯量を判定して実行する電気炊飯器において、
前記立上加熱工程において、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線が設定されて、
前記制御装置には、前記吸水工程で前記鍋内の炊飯物に常温水を所定時間かけて吸水させた後に、次の立上加熱工程の前半で炊飯量を判定して、この量判定に基づいて、前記立上加熱工程の後半から炊飯量に応じた温度上昇曲線を前記基準温度上昇曲線へシフトさせる加熱制御を実行する制御手段を設けたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記立上加熱工程に加え前記沸騰維持工程においても、予め基準炊飯量に対応した基準温度上昇曲線を設定されて、
前記制御装置は、前記立上加熱工程終了後炊飯量に応じた温度上昇曲線を前記基準温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記制御装置には、前記吸水工程終了後前記立上加熱工程へ移行した時点から所定の基準温度へ到達するまでの時間を計測して炊飯量を判定する量判定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記基準温度は、前記常温水の温度を超える温度に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電気炊飯器。
【請求項5】
前記基準炊飯量は、最大炊飯量と最小炊飯量の略中間炊飯量に設定されて、前記制御装置は、前記立上加熱工程において、炊飯量が前記中間炊飯量より小さいときに加熱量を低減し、多いときに加熱量を増大させて、炊飯量に応じた温度上昇曲線を前記基準温度上昇曲線へシフトさせることを特徴とする請求項1又は4に記載の電気炊飯器。
【請求項6】
前記吸水工程において、予め常温水の温度に対応した炊飯物の吸水時間を設定して、
前記制御装置は、前記温度検出手段により吸水開始時の前記鍋内の温度を検出して、前記吸水時間を決定して前記吸水工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項7】
前記吸水時間は、前記常温水の温度が高いときは短く、低いときは長く設定されていることを特徴とする請求項6に記載の電気炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224167(P2011−224167A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97141(P2010−97141)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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