電気特性測定装置及び電気特性測定方法
【課題】複数の試料を連続的に測定すること、及び、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減することが可能な電気特性測定装置及び電気特性測定方法を提供する。
【解決手段】電気特性測定装置1は、複数の試料保持部32を有する試料ホルダー31と、任意の一つの被測定試料45aを挟持するための一対の電極33と、試料ホルダー31及び一対の電極33の少なくとも一方を移動させることにより、一対の電極33が複数の被測定試料のうちの一つと対向する状態から、一対の電極33が他の被測定試料と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部37と、任意の一つの被測定試料45aを覆う第1内部静電遮蔽部39と、第1内部静電遮蔽部39を覆う外部静電遮蔽部7とを備える。
【解決手段】電気特性測定装置1は、複数の試料保持部32を有する試料ホルダー31と、任意の一つの被測定試料45aを挟持するための一対の電極33と、試料ホルダー31及び一対の電極33の少なくとも一方を移動させることにより、一対の電極33が複数の被測定試料のうちの一つと対向する状態から、一対の電極33が他の被測定試料と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部37と、任意の一つの被測定試料45aを覆う第1内部静電遮蔽部39と、第1内部静電遮蔽部39を覆う外部静電遮蔽部7とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気特性測定装置及び電気特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の物理特性を分析するために、熱電気特性等の試料の電気特性を測定する装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、3個の電極を備える熱電気測定装置が開示されている。この装置によれば、MOSFETのような3個の端子を備える試料について、3個の端子を活かして熱電気測定を行うことができる。また、下記特許文献2には、恒温槽部と、恒温槽部内に所望の値の水蒸気雰囲気を導入する手段とを備えた熱電気測定装置が開示されている。この装置によれば、所望の湿度(水蒸気)雰囲気下において試料の熱電気測定を行うことができる。
【特許文献1】特開2003−75502号公報
【特許文献2】特開2005−10142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような従来の熱電気測定装置では、支持台等の試料ホルダーによって試料を保持している。この状態で、試料に複数の電極を接続し、複数の電極間に電圧を印加することによって、試料の熱電気特性の測定を行っている。
【0004】
しかしながら、従来の熱電気測定装置では、複数の試料を測定する場合、測定ごとに試料の交換が必要であった。そのため、複数の試料を連続的に測定することができないため、複数の試料を測定する場合、非常に時間と手間がかかるという問題があった。
【0005】
また、熱電気測定においては、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因して、測定値に誤差が生じる場合がある。しかしながら、従来の熱電気測定装置では、このような外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに対する対策が不十分な場合があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、複数の試料を連続的に測定すること、及び、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減することが可能な電気特性測定装置及び電気特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明に係る電気特性測定装置は、複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定装置であって、複数の被測定試料をそれぞれ保持するための複数の試料保持部を有する試料ホルダーと、複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料を挟持するための一対の電極と、試料ホルダー及び一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、一対の電極が複数の被測定試料のうちの一つと対向する状態から、一対の電極が他の被測定試料と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部と、一対の電極が任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、任意の一つの被測定試料を覆うように設けられた第1内部静電遮蔽部と、第1内部静電遮蔽部を覆うように設けられた外部静電遮蔽部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の電気特性測定装置によれば、被測定試料選択部によって試料ホルダーと一対の電極とを相対的に移動させることにより、一対の電極は、試料ホルダーの複数の試料保持部に保持された複数の被測定試料のうち任意の被測定試料を挟持することが可能となっている。これにより、複数の被測定試料を測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料を連続的に測定することが可能となる。
【0009】
さらに、本発明の電気特性測定装置によれば、一対の電極に挟持された被測定試料は、第1内部静電遮蔽部と外部静電遮蔽部とによって二重に覆われている。これにより、外部から測定装置内部に侵入する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となる。
【0010】
また、電気特性測定装置は、一対の電極が被測定試料を挟持するように一対の電極を移動させる電極駆動部をさらに備えることが好ましい。これにより、一対の電極によって容易に被測定試料を挟持することができる。
【0011】
さらに、第1内部静電遮蔽部は、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料の2つの被挟持面を覆うことが好ましい。これにより、外部から被測定試料の2つの被挟持面に侵入する静電ノイズを低減させることができる。その結果、測定の際に外部から装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差をさらに低減させることが可能となる。
【0012】
また、電気特性測定装置は、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料の温度を変化させる温度調整部をさらに備えることが好ましい。これにより、被測定試料の温度を変化させることが必要な電気特性測定を行うことが可能となる。
【0013】
また、電気特性測定装置は、複数の被測定試料のうち、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料以外の被測定試料のいずれかを覆い、かつ、外部静電遮蔽部によって覆われる第2内部静電遮蔽部をさらに備えることが好ましい。これにより、一対の電極が挟持する被測定試料についての電気特性の測定と並行して、第2内部静電遮蔽部に覆われた他の被測定試料について、外部から該被測定試料に静電ノイズが侵入することを防止しながら、測定に先立つ前処理を行うことができる。その結果、複数の被測定試料についてそれぞれ前処理が必要な電気特性の測定を行う場合に、測定に必要な時間を短縮することができる。
【0014】
また、電気特性測定装置は、外部静電遮蔽部によって覆われ、かつ、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料に流れる電流を測定する電流計をさらに備えることが好ましい。これにより、測定の際に外部から装置内に侵入する静電ノイズによって、電流計の測定値に誤差が生じることを低減させることができる。
【0015】
さらに、駆動装置は、一対の電極が任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、試料ホルダー及び一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、任意の一つの被測定試料と試料ホルダーとを離間させる離間駆動部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
これにより、測定前に、離間装置によって被測定試料と試料ホルダーとを離間させることができるため、測定の際に試料ホルダーが被測定試料に対して電気的な影響を与えることを抑制することができる。その結果、試料ホルダーの存在に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0017】
本発明に係る電気特性測定方法は、複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定方法であって、複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料と一対の電極とを対向させる対向工程と、内部静電遮蔽部と、内部静電遮蔽部を覆う外部静電遮蔽部とによって一つの被測定試料を覆う遮蔽工程と、対向工程の後に、一対の電極によって一つの被測定試料を挟持する挟持工程と、遮蔽工程及び前記挟持工程の後に、内部静電遮蔽部と、外部静電遮蔽部とによって覆われた一つの被測定試料の電気特性を測定する測定工程と、測定工程の後に、一つの被測定試料に代えて、他の被測定試料について対向工程、遮蔽工程、挟持工程、及び、測定工程を行う繰り返し工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の電気特性測定方法によれば、一対の電極が複数の被測定試料のうちの一つを挟持する状態から、一対の電極が他の被測定試料を挟持する状態に変化させることができる。これにより、複数の被測定試料を測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料を連続的に測定することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の電気特性測定方法によれば、測定の際、被測定試料は内部静電遮蔽部と外部静電遮蔽部とによって二重に覆われている。これにより、測定中に被測定試料に到達する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から被測定試料に到達する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の試料を連続的に測定すること、及び、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減することが可能な電気特性測定装置及び電気特性測定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施の形態に係る電気特性測定装置及び電気特性測定方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0022】
図1は、本実施形態に係る電気特性測定装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、電気特性測定装置1は、本体部3と、計測制御部5と、外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ7と、演算制御部9と、不活性ガス供給源11と、真空ポンプ13と、冷却装置19と、を備えている。
【0023】
ファラデーケージ7は、例えば、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)等の金属からなる箱状の部材である。ファラデーケージ7の内部には、本体部3及び計測制御部5が設けられている。ファラデーケージ7は蓋部7aを有しており、蓋部7aが閉じられた状態ではファラデーケージ7の内部空間は密閉される。ファラデーケージ7は静電遮蔽部として機能し、ファラデーケージ7の外部から内部に侵入する静電ノイズを低減させる。
【0024】
演算制御部9は、配線10を介して本体部3や計測制御部5内の部材に接続されており、本体部3や計測制御部5で行われる動作の制御機能や、各種測定値から目的の電気特性値を求める機能を有する。
【0025】
不活性ガス供給源11は、ファラデーケージ7の内部空間に連通する配管15、三方弁17、及び、配管11aを介してファラデーケージ7に接続されている。真空ポンプ13は、配管15、三方弁17、及び、配管13aを介してファラデーケージ7に接続されている。不活性ガス供給源11及び真空ポンプ13は、ファラデーケージ7の内部の空気を不活性ガスと置換するために設けられている。このような空気の置換は、ファラデーケージ7の内部空間を密閉した状態において、三方弁17を配管13a側に接続して真空ポンプ13によってファラデーケージ7の内部の空気を排気する工程、三方弁17を配管11a側に接続して不活性ガス供給源11からファラデーケージ7の内部に不活性ガスを供給する工程、及び、必要によりこれらの工程を交互に複数回繰り返す工程を経ることにより達成させる。ファラデーケージ7の内部の空間を不活性ガスに置換することにより、被測定試料を化学的に安定な状態に保ちながら、電気特性測定装置1による被測定試料の測定を行うことができる。
【0026】
不活性ガス供給源11としては、例えば、不活性ガスが充填されたガスボンベを用いることができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)ガス等の希ガスや、窒素(N2)ガスを用いることができる。なお、真空ポンプ13によってファラデーケージ7の内部を真空にした状態で、電気特性測定装置1による被測定試料の測定を行ってもよい。この場合、電気特性測定装置1は不活性ガス供給源11を備えていなくてもよい。また、不活性ガス雰囲気中及び真空中で被測定試料の測定を行う必要がない場合、電気特性測定装置1は、不活性ガス供給源11及び真空ポンプ13を備えていなくてもよく、また、ファラデーケージ7は、その内部の空間を密閉していなくてもよい。
【0027】
冷却装置19は、被測定試料の冷却を行うための装置である。冷却装置19は、詳細は後述するように、例えば、被測定試料に近接する循環配管19a、19b、19c、19dを有し、循環配管19a、19b、19c、19d内に液体窒素を循環させる装置である。
【0028】
次に、本体部3の詳細について説明する。図2は本体部の平面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った本体部の断面図である。図2及び図3には、説明の便宜上、直交座標系20が示されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、本体部3は、試料ホルダー31、一対の電極33、一対の電極駆動部35、被測定試料選択部37、第1内部静電遮蔽部(内部静電遮蔽部)としてのファラデーケージ39、加熱部としてのコイル41、及び、温度測定部としての熱電対43を備えている。
【0030】
試料ホルダー31は、例えば、Z軸方向を厚さ方向とし、XY平面内で広がる円板形状をなしている。試料ホルダー31は、その外縁に沿って設けられた複数の試料保持部32を有している。試料保持部32は、本実施形態では試料ホルダー31を厚さ方向に貫く孔部である。具体的には、試料保持部32は、試料ホルダー31の上面31aに設けられた円柱状の第1孔部32aと、試料ホルダー31の下面31bに設けられた円柱状の第2孔部32bと、からなる。第1孔部32aと第2孔部32bは、それぞれの円柱形状の中心軸が略一致するようにZ軸方向に連続しており、第1孔部32aの内径は、第2孔部32bの内径よりも大きくなっている。これにより、試料ホルダー31には、各試料保持部32に対応して、複数の環状の段差面31sが形成されている。
【0031】
試料ホルダー31は、円板状の複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを保持することができる。被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fとしては、例えば、半導体基板や、表面に高分子材料からなる薄膜が形成された円板状の基板等を挙げることができる。複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fは、それらの下面(被測定試料45aの場合、下面45ad)と段差面31sとが接するように、それぞれ試料保持部32に保持される。被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fの上面(被測定試料45aの場合、上面45au)及び下面(被測定試料45aの場合、下面45ad)は、各被測定試料が試料ホルダー31に保持された状態において、露出する。
【0032】
また、試料ホルダー31には、試料ホルダー31のXY平面における中心を通りZ軸方向に延びる回転軸部31xが設けられている。回転軸部31xには、被測定試料選択部37が接続されている。被測定試料選択部37は、回転軸部31xを回転軸として、試料ホルダー31を回転させることが可能となっている。被測定試料選択部37としては、例えば、モーターを用いることができる。この場合、このモーターの回転運動が回転軸部31xに伝えられ、試料ホルダー31はXY平面内において回転する。
【0033】
試料ホルダー31を構成する材料としては、金属(例えば、アルミニウム(Al))等の導電材料や樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)等の絶縁材料を用いることができる。
【0034】
一対の電極33は、それぞれ当接部33aと支持部33bとからなる。当接部33aは、アルミニウム(Al)等の金属からなり、本実施形態では、XY平面内で広がる円板状である。当接部33aの表面の外径は、第1孔部32aの内径よりも小さくなっている。一対の当接部33aは、被測定試料の測定の際、被測定試料の上面及び下面に接する(詳細は後述する)。
【0035】
支持部33bは、ステンレス鋼等の金属からなり、本実施形態では、Z軸方向に延びる棒状の部材である。支持部33bは、当接部33aのXY平面内の略中心に固定されており、被測定試料の測定の際、被測定試料を支持する機能を有する(詳細は後述する)。
【0036】
電極駆動部35は、一対の電極33をZ軸に沿った方向に移動させることが可能なように、支持部33bに接続されている。電極駆動部35としては、例えば、モーターを用いることができる。この場合、このモーターを回転させることにより、一対の電極33をZ軸の正方向及び負方向にそれぞれ移動させることができる。また、電極駆動部35は、本実施形態の場合、後述のように離間駆動部としても機能する。
【0037】
次に、ファラデーケージ39について説明する。図4は、図2のIV−IV線に沿ったファラデーケージの断面図であり、図5は、図2のV−V線に沿ったファラデーケージの断面図である。
【0038】
図2〜図4に示すように、ファラデーケージ39は、例えば、中空の扇柱状をなしている。具体的には、ファラデーケージ39は、XY平面内で広がりZ軸方向から見て扇型状の上面39u並びに下面39dと、上面39uと下面39dの直線部分にそれぞれ接続された平板状の2つの側面39s1、39s2と、上面39uと下面39dの円弧部分に接続された円弧面39aとからなる。2つの側面39s1、39s2には、Z軸と垂直方向に延びる切り欠き部39gが形成されており、切り欠き部39g内に、試料ホルダー31の一部が設けられる。そのため、ファラデーケージ39は、試料ホルダー31の一部を覆う。そして、図2及び図3に示すように、一対の電極33と被測定試料45aを対向させた状態においては、ファラデーケージ39は、被測定試料45aを覆い、特に、被測定試料45aの上面45auと下面45adを覆うことになる。
【0039】
ファラデーケージ39は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属からなる。そのため、ファラデーケージ39は、内部静電遮蔽部(第1内部静電遮蔽部)として機能し、ファラデーケージ39の外部から内部に侵入する静電ノイズを低減させる。なお、ファラデーケージ39を構成する上面39u、下面39d、側面39s1、39s2、及び、円弧面39aは、それぞれ平板状の部材であってもよいし、金網状の部材であってもよい。これらが平板状の部材である場合、中実の部材であってもよく、中空の部材であってもよい。これらが中空の部材である場合、中空部は真空状態であることが好ましい。ファラデーケージ39の断熱特性が向上し、ファラデーケージ39が覆う被測定試料の温度制御が容易になるためである。
【0040】
次に、循環配管19a、19bについて説明する。図6は、図2におけるファラデーケージを省略して示す本体部の平面図である。図3及び図6に示すように、循環配管19aは、試料ホルダー31に対してZ軸方向の上方に設けられ、循環配管19bは、試料ホルダー31に対してZ軸方向の下方に設けられている。そのため、一対の電極33と被測定試料(例えば、被測定試料45a)を対向させた状態においては、循環配管19aは、その被測定試料に対してZ軸方向の上方に位置し、循環配管19bは、その被測定試料に対してZ軸方向の下方に位置する。循環配管19a、19bは、Z軸方向から見ると、試料ホルダー31の外部から内部に向かって略半径方向に沿って延び、試料ホルダー31の中心付近で曲がり、試料ホルダー31の内部から外部に向かって略半径方向に沿って延びている。循環配管19a、19bは、冷却装置19(図1参照)に接続されており、循環配管19a、19b内において液体窒素がそれぞれ循環している。これにより、循環配管19a、19bによって被測定試料(例えば、被測定試料45a)を冷却することが可能となっている。そのため、冷却装置19は、それぞれ被測定試料の温度調整部(冷却部)となる。
【0041】
図7は、図6に対応して循環配管の変形例を示す本体部の平面図である。図7に示すように、循環配管19a、19bは、一対の電極33と被測定試料(例えば、被測定試料45a)を対向させた状態において、Z軸方向から見て試料ホルダー31の中心付近でその被測定試料に沿って曲がっていてもよい。
【0042】
コイル41は、図3及び図6に示すように、試料ホルダー31に対してZ軸方向の上方に設けられている。そのため、一対の電極33と被測定試料(例えば、被測定試料45a)を対向させた状態においては、コイル41は、その被測定試料に対してZ軸方向の上方に位置する。コイル41は、例えば、XY平面内の仮想的な円の周りに捲回された金属線とすることができる。コイル41は、電流を供給されると加熱し、被測定試料を加熱することができる。コイル41は、被測定試料の温度調整部(加熱部)となる。
【0043】
熱電対43は、被測定試料の温度を測定するための温度測定部であり、一対の端子43a、43bを有する。後述のように、被測定試料の測定時に、熱電対43は、測定対象の被測定試料に接触する。また、本体部3は、さらに被測定試料近傍の雰囲気温度を測定するための雰囲気温度測定部(図示せず)を備えていてもよい。雰囲気温度測定部としては、例えば、被測定試料の近傍に離間して設けられた熱電対を用いることができる。本体部3が雰囲気温度測定部を備える場合、本体部3は、熱電対43を備えていなくてもよい。
【0044】
図8は、図2のVIII−VIII線に沿った本体部の断面図である。図2及び図8に示すように、本体部3は、一対の電極34、一対の電極駆動部36、第2内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ40、加熱部としてのコイル42、及び、温度測定部としての熱電対44をさらに備えている。
【0045】
一対の電極34、一対の電極駆動部36、ファラデーケージ40、循環配管19c、19d、コイル42、熱電対44、及び、一対の端子44a、44bは、それぞれ図2における一対の電極33、一対の電極駆動部35、被測定試料選択部37、ファラデーケージ39、循環配管19a、19b、コイル41、熱電対43、及び、一対の端子44a、44bと同様の構成を有する。また、ファラデーケージ40を構成する上面40u、下面40d、側面40s1、40s2、及び、円弧面40aは、それぞれ上面39u、下面39d、側面39s1、39s2、及び、円弧面39aと同様の構成を有する。図3に示すように被測定試料45aと一対の電極33とが対向している状態においては、図8に示すように被測定試料45bと一対の電極34とが対向している。また、被測定試料45bが試料ホルダー31に保持された状態において、被測定試料45bの上面45au及び下面45adは露出する。
【0046】
次に、計測制御部について説明する。図9は、計測制御部、本体部、及び、演算制御部に関する回路構成を示す図である。計測制御部5は、本体部の部材の制御に必要な制御部と、被測定試料の電気特性の測定に必要な計測器を備えている。具体的には、図9に示すように、計測制御部5は、駆動制御部51、電圧計53、59、電流計55、電源61、及び、加熱制御部57、63を備えている。
【0047】
駆動制御部51は、一対の電極駆動部35、一対の電極駆動部36、及び、被測定試料選択部37(図3参照)とそれぞれ電気的に接続されている。駆動制御部51は、これらの接続された装置の動作を制御する。電圧計53及び電圧計59は、一対の端子43a、43b及び44a、44b(図3、図8参照)にそれぞれ接続されている。電圧計53及び電圧計59によって、熱電対43及び熱電対44において生じる熱起電力がそれぞれ測定される。電流計55及び電源61は、一対の電極33及び一対の電極34(図3、図8参照)にそれぞれ接続されている。電流計55によって、一対の電極33に挟持された被測定試料に流れる電流値が測定され、電源61によって、一対の電極34に挟持された被測定試料に対して電圧が印加される。加熱制御部57及び加熱制御部63は、コイル41及びコイル42(図3参照)にそれぞれ接続されており、コイル41及びコイル42に流れる電流値をそれぞれ制御する。
【0048】
演算制御部9は、駆動制御部51、電圧計53、59、電流計55、電源61、及び、加熱制御部57、63にそれぞれ接続されており、駆動制御部51、加熱制御部57、63、及び、電源61の制御や、電圧計53、59及び電流計55の測定値に基づき、被測定試料の温度や電気特性の演算等を行う。
【0049】
次に、実施の形態に係る電気特性測定方法について説明する。本実施形態の電気特性測定方法として、電気特性測定装置1によって、半導体基板や、表面に高分子材料からなる薄膜が形成された円板状の基板等を被測定試料として用いた場合の熱刺激電流特性の測定方法について説明する。
【0050】
図10は、本実施形態に係る電気特性測定方法を示すフローチャートである。図10のフローチャートに示すように、本実施形態の熱刺激電流特性の測定方法においては、前処理工程S1、測定工程S3、及び、繰り返し工程S5を行うことができる。
【0051】
[前処理工程]
前処理工程S1は、本測定に先立って、被測定試料に対して前処理を行う工程である。図11は、前処理工程の詳細を示すフローチャートであり、図12は、前処理工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【0052】
図11のフローチャートに示すように、前処理工程S1においては、前処理対向工程S1−1、前処理遮蔽工程S1−3、前処理挟持工程S1−5、前処理離間工程S1−7、加熱及び電圧印加工程S1−9、冷却工程S1−11、及び、戻し工程S1−13を行うことができる。
【0053】
前処理対向工程S1−1では、図12(a)に示すように、被測定試料選択部37(図8参照)によって試料ホルダー31を回転させて、任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)と、一対の電極34とを対向させる。
【0054】
前処理遮蔽工程S1−3では、被測定試料45aを第2内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ40と、外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ7とによって覆う。図12(a)に示すように、上述の前処理対向工程S1−1後において、既に被測定試料45aはファラデーケージ40とファラデーケージ7とによって覆われている。従って、本実施形態においては、前処理対向工程S1−1と前処理遮蔽工程S1−3とは、同時に行われる。
【0055】
続いて、前処理挟持工程S1−5では、図12(b)に示すように、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれ被測定試料45aに近づけるように動かし、一対の電極34の当接部34aを被測定試料45aの上面45au及び下面45adにそれぞれ接触させる。これにより、被測定試料45aは一対の電極34の支持部34bによって支えられるため、一対の電極34は被測定試料45aを挟持する。被測定試料45aの上面45au及び下面45adは、それぞれ被挟持面となる。
【0056】
続いて、前処理離間工程S1−7では、図12(c)に示すように、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれZ軸の正方向に動かすことにより、一対の電極34が被測定試料45aを挟持した状態のまま被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる。従って、本実施形態においては、一対の電極駆動部36は、一対の離間駆動部としての機能も有する。本工程後において、被測定試料45aは、コイル42の内部に位置し、熱電対44と接触する。
【0057】
続いて、加熱及び電圧印加工程S1−9では、図12(c)に示す状態において、まず加熱制御部63(図9参照)によってコイル42に電流を流し、加熱されたコイル42によって被測定試料45aを所定温度まで加熱する。被測定試料45aの温度は、熱電対44によって測定される。これにより、被測定試料45a内部及び外部(表面)に生じている配向分極や不純物及び結晶欠陥等に起因する電荷トラップを消去する。続いて、電源61(図9参照)によって、一対の電極34間に電圧を印加することにより、被測定試料45aの上面45au下面45ad間に所定の電圧を印加する。これにより、被測定試料45a内に、配向分極や電荷トラップを生じさせる。
【0058】
続いて、冷却工程S1−11では、図12(c)に示す状態において、冷却装置19(図1参照)によって循環配管19cと循環配管19d内にそれぞれ液体窒素を循環させることにより、被測定試料45を所定の温度まで冷却する。これにより、被測定試料45a内に生じた配向分極や電荷トラップを固定化する。
【0059】
その後、戻し工程S1−13では、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれZ軸の負方向に動かすことにより、図12(b)に示す状態にし、さらに、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれ被測定試料45aから遠ざけるように動かすことにより、図12(a)に示す状態にする。
【0060】
[測定工程]
次に、図10のフローチャートに示す測定工程S3について説明する。測定工程S3は、前処理を行った被測定試料の本測定を行う工程である。図13は、測定工程の詳細を示すフローチャートであり、図14は、測定工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【0061】
図13のフローチャートに示すように、測定工程S3においては、対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、離間工程S3−7、測定工程S3−9、及び、戻し工程S3−11を行うことができる。
【0062】
対向工程S3−1では、図14(a)に示すように、被測定試料選択部37(図3参照)によって試料ホルダー31を回転させて、前処理を行った被測定試料45aと、一対の電極33とを対向させる。
【0063】
続いて、第1遮蔽工程S3−3では、被測定試料45aを第1内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ39と、外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ7とによって覆う。図14(a)に示すように、上述の対向工程S3−1後において、既に被測定試料45aはファラデーケージ39とファラデーケージ7とによって覆われている。従って、本実施形態においては、対向工程S3−3と遮蔽工程S3−5とは、同時に行われる。
【0064】
続く挟持工程S3−5は、上述の前処理挟持工程S1−5と同様の工程である。即ち、挟持工程S3−5では、図14(b)に示すように、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれ被測定試料45aに近づけるように動かし、一対の電極33の当接部33aを被測定試料45aの上面45au及び下面45adにそれぞれ接触させる。これにより、被測定試料45aは一対の電極33の支持部33bによって支えられるため、一対の電極33は被測定試料45aを挟持する。被測定試料45aの上面45au及び下面45adは、それぞれ被挟持面となる。
【0065】
続く離間工程S3−7は、上述の前処理離間工程S1−7と同様の工程である。即ち、離間工程S3−7では、図14(c)に示すように、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれZ軸の正方向に動かすことにより、一対の電極33が被測定試料45aを挟持した状態のまま被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる。本工程後において、被測定試料45aは、コイル41の内部に位置し、熱電対43と接触する。
【0066】
続いて、測定工程S3−9では、被測定試料45aの熱刺激電流の測定を行う。具体的には、上述の前処理工程S1において冷却された被測定試料45aの温度を徐々に上げ、その際に生じる脱分極や脱トラップよる熱刺激電流を測定する。熱刺激電流値は、一対の電極33に接続された電流計55(図9参照)によって測定される。被測定試料45aの温度は、熱電対43で測定される。被測定試料45aの温度は、循環配管19a、19b内をそれぞれ循環する液体窒素の流量を冷却装置19(図1参照)で調節したり、コイル41に流す電流値を加熱制御部57(図9参照)で調節したりすることによって、制御される。そして、演算制御部9(図9参照)は、電流計55と熱電対43の測定値等を基に必要な演算を行い、被測定試料45aの熱刺激電流特性が求められる。
【0067】
続く戻し工程S3−11は、上述の戻し工程S1−13と同様の工程である。即ち、戻し工程S3−11では、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれZ軸の負方向に動かすことにより、図14(b)に示す状態にし、さらに、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれ被測定試料45aから遠ざけるように動かすことにより、図14(a)に示す状態にする。
【0068】
さらに、測定工程S3においては、上述の対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、離間工程S3−7、測定工程S3−9、及び、戻し工程S3−11と並行して、次測定用前処理工程S3−13が必要に応じて行われる
【0069】
次測定用前処理工程S3−13は、一つの被測定試料の本測定を行っている間に、他の被測定試料の前処理を行う工程である。例えば、測定工程S3において被測定試料45aを測定している場合、被測定試料45bは、一対の電極34と対向する位置に移動している(図3、図6、図8参照)。そのため、被測定試料45aの本測定を行っている間に、被測定試料45bの前処理を行うことができる。次測定用前処理工程S3−13の具体的な内容は、上述の前処理工程S1と同様である。なお、次に測定する被測定試料が無い場合には、次測定用前処理工程S3−13は省略される。
【0070】
[繰り返し工程]
繰り返し工程S5は、一つの被測定試料の測定が終わり、他に測定すべき被測定試料がある場合に、次に測定すべき被測定試料について測定工程S3を繰り返す工程である。例えば、被測定試料45aについて測定工程S3が終わった場合、被測定試料45bについて測定工程S3を行うことができる。この場合、例えば測定工程S3中の対向工程S3−1では、被測定試料選択部37(図3参照)によって試料ホルダー31を回転させて、被測定試料45bと、一対の電極33とを対向させる(図14(a)参照)。
【0071】
上述のような本実施形態の電気特性測定装置は、被測定試料(例えば、被測定試料45a)を保持するための試料ホルダー31と、被測定試料45aを挟持するための一対の電極33と、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させるように一対の電極33被測定試料45aを移動させる電極駆動部(離間駆動部)35とを備えている。
【0072】
これにより、被測定試料(例えば、被測定試料45a)の測定の際、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させることができる(図14参照)。その結果、測定の際、試料ホルダー31が被測定試料45aに対して電気的な影響を与えることを抑制することができる。
【0073】
例えば、試料ホルダーが金属で形成されており、かつ、測定の際に試料ホルダーと被測定試料が接触していると、測定対象である被測定試料内を流れる電流(例えば、熱刺激電流)の一部は、試料ホルダー内を流れてしまい、測定誤差の原因となる場合がある。また、例えば、試料ホルダーが絶縁体で形成されており、かつ、測定の際に試料ホルダーと被測定試料が接触していると、絶縁体からなる試料ホルダーに印加電圧がかかり、試料ホルダーから微量なトラップ電流が放出されるため、測定誤差の原因となる場合がある。それに対して、本実施形態の電気特性測定装置では、測定の際、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させているため、このような試料ホルダー31の存在に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の電気特性測定装置1においては、試料ホルダー31は複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fをそれぞれ保持するための複数の試料保持部32を有し、一対の電極33は、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)を挟持することが可能である。さらに、電気特性測定装置1は、試料ホルダー31を移動させることにより、一対の電極33が、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの一つ(例えば、被測定試料45a)と対向する状態から、一対の電極33が、他の被測定試料(例えば、被測定試料45b)と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部37を備えている(図3参照)。
【0075】
これにより、被測定試料選択部37によって試料ホルダー31と一対の電極33とを相対的に移動させることにより、一対の電極33は、試料ホルダー31の複数の試料保持部32に保持された複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうち任意の被測定試料を挟持することが可能となっている。その結果、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを連続的に測定することが可能となっている。
【0076】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、電極駆動部(離間駆動部)35及び被被測定試料選択部37によって、一対の電極33、34と被測定試料(例えば、被測定試料45a)との相対的な位置関係を変更することができる。これらの相対的な位置関係が固定されている場合、被測定試料の大きさが大きい場合、被測定試料の大きさに合わせて電気特性測定装置を再び製造するか、被測定試料を破壊して小さくする必要がある。それに対して、本実施形態の電気特性測定装置1によれば、試料ホルダー31を被測定試料45aの大きさに合わせて製造するだけで、様々な大きさの被測定試料45aを非破壊で測定することができる。
【0077】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、一対の電極33が被測定試料45aを挟持するように一対の電極33を移動させる電極駆動部35をさらに備えている。これにより、一対の電極33によって容易に被測定試料45aを挟持することができる。
【0078】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、被測定試料45aを覆うように設けられた内部静電遮蔽部(第1内部静電遮蔽部(ファラデーケージ39))を備えている(図2、図3、及び、図14参照)。これにより、測定の際に外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減させることが可能となっている。特に、ファラデーケージ39は、被測定試料45aの2つの被挟持面である上面45auと下面45adを覆っている(図3、及び、図14参照)。これにより、電気特性測定装置1の外部から被測定試料の2つの被挟持面に侵入する静電ノイズを低減させることができため、測定の際に外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を特に低減させることが可能となっている。
【0079】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、一対の電極33が任意の一つの被測定試料(被測定試料45a)を挟持した状態において、被測定試料45aを覆うように設けられたファラデーケージ39に加えて、ファラデーケージ39を覆うように設けられた外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)を備えている(図3、図14参照)。これにより、一対の電極33に挟持された被測定試料45aは、ファラデーケージ39とファラデーケージ7とによって二重に覆われる。その結果、外部から電気特性測定装置1内部に侵入する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、被測定試料45aの温度を変化させる温度調整部として、コイル41並びにコイル42(加熱部)、及び、冷却装置19(冷却部)を備えている(図1、図2、図3、図12、及び、図14参照)。これにより、熱刺激電流特性といった被測定試料45aの温度を変化させることが必要な電気特性測定を行うことが可能となっている。
【0081】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、被測定試料45aに流れる電流を測定する電流計55と、電流計55及びファラデーケージ39を覆うように設けられた外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)と備えている(図3、図9、及び、図14参照)。これにより、測定の際に外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズによって、電流計55の測定値に誤差が生じることを低減させることが可能となっているため、熱刺激電流特性といった被測定試料45aに流れる微小電流を測定する必要のある電気特性の測定が可能となっている。
【0082】
また、本実施形態の電気特性測定装置は、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうち、一対の電極33が挟持する任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)以外の被測定試料のいずれか(例えば、被測定試料45b)を覆い、かつ、ファラデーケージ7によって覆われる第2内部静電遮蔽部(ファラデーケージ40)を備えている(図2、図12、及び、図14参照)。これにより、一対の電極33が挟持する被測定試料45aについての電気特性の測定と並行して、ファラデーケージ40に覆われた被測定試料45bについて、外部から被測定資料45bに静電ノイズが侵入することを防止しながら、測定に先立つ前処理を行うことができる(図13参照)。その結果、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fについてそれぞれ前処理が必要な電気特性の測定を行う場合に、測定に必要な時間を短縮することができる。
【0083】
また、上述のような本実施形態の電気特性測定方法は、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)と一対の電極33とを対向させる対向工程S3−1と、内部静電遮蔽部(第1内部静電遮蔽部(ファラデーケージ39))と、内部静電遮蔽部を覆う外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)とによって一つの被測定試料45aを覆う遮蔽工程S3−3と、対向工程S3−1の後に、一対の電極33によって一つの被測定試料45aを挟持する挟持工程S3−5と、遮蔽工程S3−3及び挟持工程S3−5の後に、内部静電遮蔽部と、外部静電遮蔽部とによって覆われた一つの被測定試料45aの電気特性を測定する測定工程S3−9と、測定工程S3−9の後に、一つの被測定試料45aに代えて、他の被測定試料45bについて対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、及び、測定工程S3−9を行う繰り返し工程S5とを備えている(図10、図11、及び、図13参照)。
【0084】
これにより、一対の電極33が複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの一つの被測定試料45aを挟持する状態から、一対の電極33が他の被測定試料45bを挟持する状態に変化させることができる。その結果、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを連続的に測定することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態の電気特性測定方法によれば、測定の際、被測定試料45aはファラデーケージ39とファラデーケージ7とによって二重に覆われている。これにより、測定中に被測定試料45aに到達する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から被測定試料45aに到達する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となっている。
【0086】
また、本実施形態の電気特性測定方法では、測定工程S3−9の前に、離間工程S3−7を行っている(図13参照)。これにより、測定の際、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させることができため、試料ホルダー31が測定試料45aに対して電気的な影響を与えることを抑制することができる。その結果、試料ホルダー31の存在に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0087】
本発明は上述の実施形態に限られず、様々な変形態様が可能である。
【0088】
例えば、上述の実施形態では、試料ホルダー31は円板形状をなしているが、このような形状に限られない。図15は、変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の平面図であり、図16は、変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の断面図である。
【0089】
図15及び図16に示すように、試料ホルダー131は、Z軸方向を厚さ方向とし、X軸方向を延び方向とする平板状をなしていてもよい。試料ホルダー139は、X軸方向に沿って設けられた複数の試料保持部32を有している。このような試料ホルダー139としては、例えば、ベルトコンベアを挙げることができる。試料ホルダー139には、被測定試料選択部137が設けられており、被測定試料選択部137によって試料ホルダー139をX軸に沿った方向に移動させることができる。即ち、被測定試料選択部137によって試料ホルダー139と一対の電極33との相対位置を変化させることができる。これにより、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうち、任意の一つと電極33とを対向させることが可能となっている。被測定試料選択部137として、例えばモーターを用いることができる。
【0090】
また、この場合、本体部3は、第1内部静電遮蔽部(内部静電遮蔽部)としてのファラデーケージ139と、第2内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ140とを備えている。ファラデーケージ139及びファラデーケージ140は、上述のファラデーケージ39及びファラデーケージ40と同様の材質からなり、同様の機能及び目的を有するが、形状が異なる。ファラデーケージ139及びファラデーケージ140は、いずれも中空の直方体形状をなしている。具体的には、ファラデーケージ139及びファラデーケージ140、矩形の平板状の上面139u、140uと、矩形の平板状の下面139d、140dと、上面139u、140u及び平板状の下面139d、140dを接続する4つの側面139a、140aとを有する。また、ファラデーケージ139及びファラデーケージ140は、4つの側面139a、140aのうちX軸と交差する面に切り欠き部139g及び140gをそれぞれ有する。これにより、試料ホルダー139をX軸に沿った方向に移動させる際、試料ホルダーは、切り欠き部139g及び140g内を移動することが可能となっている。
【0091】
また、上述の実施形態では、前処理離間工程S1−7及び離間工程S3−7において、一対の電極33、34と試料ホルダー31とを離間しているが(図11、図13参照)、前処理離間工程S1−7及び/又は離間工程S3−7は省略可能である。前処理離間工程S1−7を省略した場合、加熱及び電圧印加工程S1−9は、図12(b)に示すように、一対の電極34と試料ホルダー31とが接触した状態のまま行われる。同様に、離間工程S3−7を省略した場合、測定工程S3−9は、図14(b)に示すように、一対の電極33と試料ホルダー31とが接触した状態のまま行われる。
【0092】
また、上述の実施形態では、被測定試料45aの熱刺激電流特性を測定する場合について説明したが、他の電気特性、例えば、誘電率、電気抵抗、及び、移動度等を測定することもでき、これによって残留応力、融点、及び、ガラス転移温度等を測定することができる。この場合、計測制御部5は、測定する電気特性の種類に応じて適切な計測器や電源等を有する。
【0093】
また、上述の実施形態では、被測定試料45aに流れる電流を測定する電流計55は、外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)内に設けられているが((図3、図9、及び、図14参照)、電流計55は、外部静電遮蔽部の外側に設けられていてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、測定試料45aの温度を変化させる温度調整部として、コイル41並びにコイル42(加熱部)、及び、冷却装置19(冷却部)を備えているが(図2、図3、図12、及び、図14参照)、被測定試料45aを加熱する必要が無い場合には、電気特性測定装置1はコイル41及びコイル42を備えていなくてもよく、また、被測定試料45aを冷却する必要が無い場合には、電気特性測定装置1は、冷却装置19を備えていなくてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、電気特性測定装置1は、第2内部静電遮蔽部としてファラデーケージ40を備えているが、前処理工程S1を行う際、被測定試料45aを第2内部静電遮蔽部内に設ける必要が無い場合、電気特性測定装置1はファラデーケージ40を備えていなくてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、前処理工程S1を行う際、被測定試料45aをファラデーケージ40内に設けているが(図2、図12、及び、図14参照)、測定工程S3と同様に、前処理工程S1もファラデーケージ39内で行ってもよい。この場合、前処理対向工程S1−1においては、任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)と、一対の電極33とを対向させることになり、戻し工程S1−13、対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、及び、離間工程S3−7は省略可能である。
【0097】
また、上述の実施形態では、前処理対向工程S1−1及び対向工程S3−1において、被測定試料選択部37(図3、図8参照)によって試料ホルダー31を移動(回転)させて、被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させている。しかし、被測定試料選択部は、試料ホルダー31と一対の電極33、34の少なくとも一方を移動させ、これらの相対位置を変化させることによって、被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させる部材であればよい。例えば、一対の電極33、34に対して、これらをXY平面に沿って移動させる部材を設けることができる。この部材のみで被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させる場合、この部材が被測定試料選択部となる。また、この部材と上述の実施形態における被測定試料選択部37の双方によって被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させる場合、この部材と被測定試料選択部37の双方が、新たに被測定試料選択部となる。この部材は、一対の電極駆動部35、36が兼ねることが可能であるが、一対の電極駆動部35、36と別体であってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、前処理離間工程S1−7及び離間工程S3−7において、一対の電極駆動部35、36は、離間駆動部としても機能し、これらによって一対の電極33、34をそれぞれZ軸の正方向に動かすことにより、一対の電極33、34が被測定試料45aを挟持した状態のまま被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させている。しかし、電極駆動部35、36と離間駆動部とを別体とし、電極駆動部35、36と離間駆動部とがそれぞれ一対の電極33、34に接続されていてもよい。
【0099】
また、離間駆動部は、一対の電極33,34に接続されていなくてもよく、料ホルダー31と一対の電極33、34の少なくとも一方を移動させ、これらの相対位置を変化させることによって、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる部材であればよい。例えば、試料ホルダー31に対して、これらをZ軸方向に移動させる部材を設けることができる。この部材のみで被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる場合、この部材が離間駆動部となる。また、この部材と上述の実施形態における一対の電極駆動部35、36の双方によって被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる場合、この部材と一対の電極駆動部35、36の双方が、離間駆動部となる。この部材は、被測定試料選択部37が兼ねることが可能であるが、被測定試料選択部37と別体であってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、前処理対向工程S1−1と前処理遮蔽工程S1−3は同時に行われ、また、対向工程S3−1と第1遮蔽工程S3−3は同時に行われているが、これらを別々に行うこともできる。例えば、ファラデーケージ39が試料ホルダー31に対して移動可能となっている場合、対向工程S3−1の後にファラデーケージ39を移動させることにより遮蔽工程S3−3を行うことができる。同様に、ファラデーケージ40が試料ホルダー31に対して移動可能となっている場合、前処理対向工程S1−1の後にファラデーケージ40を移動させることにより前処理遮蔽工程S1−3を行うことができる。
【0101】
また、上述の実施形態では、前処理挟持工程S1−5の後に前処理離間工程S1−7を行い、また、挟持工程S3−5の後に離間工程S3−7に行っているが、これらの工程は、逆の順序で行ってもよい。この場合、前処理離間工程S1−7及び離間工程S3−7においては、例えば、電極駆動部35、36によって一対の電極33、34のうち被測定試料45aの下方にある電極のみを上方に移動させることにより、被測定試料45aの下面45adを接触させると共に、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させればよい(図12、図14参照)。そして、前処理挟持工程S1−5及び挟持工程S3−5においては、例えば、電極駆動部35、36によってその電極をさらに上方に移動させることにより、被測定試料45aの上面45auと、被測定試料45aの上方にある電極とを接触させ、一対の電極33、34によって被測定試料45aを挟持すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施形態に係る電気特性測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】本体部の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った本体部の断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿ったファラデーケージの断面図である。
【図5】図2のV−V線に沿ったファラデーケージの断面図である。
【図6】図2におけるファラデーケージを省略して示す本体部の平面図である。
【図7】図6に対応して循環配管の変形例を示す本体部の平面図である。
【図8】図2のVII−VII線に沿った本体部の断面図である。
【図9】計測制御部、本体部、及び、演算制御部に関する回路構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る電気特性測定方法を示すフローチャートである。
【図11】前処理工程の詳細を示すフローチャートである。
【図12】前処理工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【図13】測定工程の詳細を示すフローチャートである。
【図14】測定工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【図15】変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の平面図である。
【図16】変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1・・・電気特性測定装置、3・・・本体部、5・・・計測制御部、7・・・外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ、19・・・温度調停部(冷却部)、31・・・試料ホルダー、33・・・一対の電極、34・・・一対の電極、35・・・電極駆動部(離間駆動部)、36・・・電極駆動部(離間駆動部)、37・・・被測定試料選択部、39・・・第1内部静電遮蔽部(内部静電遮蔽部、ファラデーケージ)、40・・・第2内部静電遮蔽部(ファラデーケージ)、45a、45b、45c、45d、45e、45f・・・被測定試料、45аu・・・被測定試料の上面(被挟持面)、45аd・・・被測定試料の下面(被挟持面)、55・・・電流計、S3−1・・・対向工程、S3−3・・・遮蔽工程、S3−5・・・挟持工程、S3−7・・・離間工程、S3−9・・・測定工程、S5・・・繰り返し工程。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気特性測定装置及び電気特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の物理特性を分析するために、熱電気特性等の試料の電気特性を測定する装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、3個の電極を備える熱電気測定装置が開示されている。この装置によれば、MOSFETのような3個の端子を備える試料について、3個の端子を活かして熱電気測定を行うことができる。また、下記特許文献2には、恒温槽部と、恒温槽部内に所望の値の水蒸気雰囲気を導入する手段とを備えた熱電気測定装置が開示されている。この装置によれば、所望の湿度(水蒸気)雰囲気下において試料の熱電気測定を行うことができる。
【特許文献1】特開2003−75502号公報
【特許文献2】特開2005−10142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような従来の熱電気測定装置では、支持台等の試料ホルダーによって試料を保持している。この状態で、試料に複数の電極を接続し、複数の電極間に電圧を印加することによって、試料の熱電気特性の測定を行っている。
【0004】
しかしながら、従来の熱電気測定装置では、複数の試料を測定する場合、測定ごとに試料の交換が必要であった。そのため、複数の試料を連続的に測定することができないため、複数の試料を測定する場合、非常に時間と手間がかかるという問題があった。
【0005】
また、熱電気測定においては、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因して、測定値に誤差が生じる場合がある。しかしながら、従来の熱電気測定装置では、このような外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに対する対策が不十分な場合があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、複数の試料を連続的に測定すること、及び、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減することが可能な電気特性測定装置及び電気特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明に係る電気特性測定装置は、複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定装置であって、複数の被測定試料をそれぞれ保持するための複数の試料保持部を有する試料ホルダーと、複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料を挟持するための一対の電極と、試料ホルダー及び一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、一対の電極が複数の被測定試料のうちの一つと対向する状態から、一対の電極が他の被測定試料と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部と、一対の電極が任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、任意の一つの被測定試料を覆うように設けられた第1内部静電遮蔽部と、第1内部静電遮蔽部を覆うように設けられた外部静電遮蔽部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の電気特性測定装置によれば、被測定試料選択部によって試料ホルダーと一対の電極とを相対的に移動させることにより、一対の電極は、試料ホルダーの複数の試料保持部に保持された複数の被測定試料のうち任意の被測定試料を挟持することが可能となっている。これにより、複数の被測定試料を測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料を連続的に測定することが可能となる。
【0009】
さらに、本発明の電気特性測定装置によれば、一対の電極に挟持された被測定試料は、第1内部静電遮蔽部と外部静電遮蔽部とによって二重に覆われている。これにより、外部から測定装置内部に侵入する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となる。
【0010】
また、電気特性測定装置は、一対の電極が被測定試料を挟持するように一対の電極を移動させる電極駆動部をさらに備えることが好ましい。これにより、一対の電極によって容易に被測定試料を挟持することができる。
【0011】
さらに、第1内部静電遮蔽部は、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料の2つの被挟持面を覆うことが好ましい。これにより、外部から被測定試料の2つの被挟持面に侵入する静電ノイズを低減させることができる。その結果、測定の際に外部から装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差をさらに低減させることが可能となる。
【0012】
また、電気特性測定装置は、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料の温度を変化させる温度調整部をさらに備えることが好ましい。これにより、被測定試料の温度を変化させることが必要な電気特性測定を行うことが可能となる。
【0013】
また、電気特性測定装置は、複数の被測定試料のうち、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料以外の被測定試料のいずれかを覆い、かつ、外部静電遮蔽部によって覆われる第2内部静電遮蔽部をさらに備えることが好ましい。これにより、一対の電極が挟持する被測定試料についての電気特性の測定と並行して、第2内部静電遮蔽部に覆われた他の被測定試料について、外部から該被測定試料に静電ノイズが侵入することを防止しながら、測定に先立つ前処理を行うことができる。その結果、複数の被測定試料についてそれぞれ前処理が必要な電気特性の測定を行う場合に、測定に必要な時間を短縮することができる。
【0014】
また、電気特性測定装置は、外部静電遮蔽部によって覆われ、かつ、一対の電極が挟持する任意の一つの被測定試料に流れる電流を測定する電流計をさらに備えることが好ましい。これにより、測定の際に外部から装置内に侵入する静電ノイズによって、電流計の測定値に誤差が生じることを低減させることができる。
【0015】
さらに、駆動装置は、一対の電極が任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、試料ホルダー及び一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、任意の一つの被測定試料と試料ホルダーとを離間させる離間駆動部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
これにより、測定前に、離間装置によって被測定試料と試料ホルダーとを離間させることができるため、測定の際に試料ホルダーが被測定試料に対して電気的な影響を与えることを抑制することができる。その結果、試料ホルダーの存在に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0017】
本発明に係る電気特性測定方法は、複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定方法であって、複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料と一対の電極とを対向させる対向工程と、内部静電遮蔽部と、内部静電遮蔽部を覆う外部静電遮蔽部とによって一つの被測定試料を覆う遮蔽工程と、対向工程の後に、一対の電極によって一つの被測定試料を挟持する挟持工程と、遮蔽工程及び前記挟持工程の後に、内部静電遮蔽部と、外部静電遮蔽部とによって覆われた一つの被測定試料の電気特性を測定する測定工程と、測定工程の後に、一つの被測定試料に代えて、他の被測定試料について対向工程、遮蔽工程、挟持工程、及び、測定工程を行う繰り返し工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の電気特性測定方法によれば、一対の電極が複数の被測定試料のうちの一つを挟持する状態から、一対の電極が他の被測定試料を挟持する状態に変化させることができる。これにより、複数の被測定試料を測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料を連続的に測定することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の電気特性測定方法によれば、測定の際、被測定試料は内部静電遮蔽部と外部静電遮蔽部とによって二重に覆われている。これにより、測定中に被測定試料に到達する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から被測定試料に到達する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の試料を連続的に測定すること、及び、外部から測定装置内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減することが可能な電気特性測定装置及び電気特性測定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施の形態に係る電気特性測定装置及び電気特性測定方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0022】
図1は、本実施形態に係る電気特性測定装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、電気特性測定装置1は、本体部3と、計測制御部5と、外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ7と、演算制御部9と、不活性ガス供給源11と、真空ポンプ13と、冷却装置19と、を備えている。
【0023】
ファラデーケージ7は、例えば、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)等の金属からなる箱状の部材である。ファラデーケージ7の内部には、本体部3及び計測制御部5が設けられている。ファラデーケージ7は蓋部7aを有しており、蓋部7aが閉じられた状態ではファラデーケージ7の内部空間は密閉される。ファラデーケージ7は静電遮蔽部として機能し、ファラデーケージ7の外部から内部に侵入する静電ノイズを低減させる。
【0024】
演算制御部9は、配線10を介して本体部3や計測制御部5内の部材に接続されており、本体部3や計測制御部5で行われる動作の制御機能や、各種測定値から目的の電気特性値を求める機能を有する。
【0025】
不活性ガス供給源11は、ファラデーケージ7の内部空間に連通する配管15、三方弁17、及び、配管11aを介してファラデーケージ7に接続されている。真空ポンプ13は、配管15、三方弁17、及び、配管13aを介してファラデーケージ7に接続されている。不活性ガス供給源11及び真空ポンプ13は、ファラデーケージ7の内部の空気を不活性ガスと置換するために設けられている。このような空気の置換は、ファラデーケージ7の内部空間を密閉した状態において、三方弁17を配管13a側に接続して真空ポンプ13によってファラデーケージ7の内部の空気を排気する工程、三方弁17を配管11a側に接続して不活性ガス供給源11からファラデーケージ7の内部に不活性ガスを供給する工程、及び、必要によりこれらの工程を交互に複数回繰り返す工程を経ることにより達成させる。ファラデーケージ7の内部の空間を不活性ガスに置換することにより、被測定試料を化学的に安定な状態に保ちながら、電気特性測定装置1による被測定試料の測定を行うことができる。
【0026】
不活性ガス供給源11としては、例えば、不活性ガスが充填されたガスボンベを用いることができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)ガス等の希ガスや、窒素(N2)ガスを用いることができる。なお、真空ポンプ13によってファラデーケージ7の内部を真空にした状態で、電気特性測定装置1による被測定試料の測定を行ってもよい。この場合、電気特性測定装置1は不活性ガス供給源11を備えていなくてもよい。また、不活性ガス雰囲気中及び真空中で被測定試料の測定を行う必要がない場合、電気特性測定装置1は、不活性ガス供給源11及び真空ポンプ13を備えていなくてもよく、また、ファラデーケージ7は、その内部の空間を密閉していなくてもよい。
【0027】
冷却装置19は、被測定試料の冷却を行うための装置である。冷却装置19は、詳細は後述するように、例えば、被測定試料に近接する循環配管19a、19b、19c、19dを有し、循環配管19a、19b、19c、19d内に液体窒素を循環させる装置である。
【0028】
次に、本体部3の詳細について説明する。図2は本体部の平面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った本体部の断面図である。図2及び図3には、説明の便宜上、直交座標系20が示されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、本体部3は、試料ホルダー31、一対の電極33、一対の電極駆動部35、被測定試料選択部37、第1内部静電遮蔽部(内部静電遮蔽部)としてのファラデーケージ39、加熱部としてのコイル41、及び、温度測定部としての熱電対43を備えている。
【0030】
試料ホルダー31は、例えば、Z軸方向を厚さ方向とし、XY平面内で広がる円板形状をなしている。試料ホルダー31は、その外縁に沿って設けられた複数の試料保持部32を有している。試料保持部32は、本実施形態では試料ホルダー31を厚さ方向に貫く孔部である。具体的には、試料保持部32は、試料ホルダー31の上面31aに設けられた円柱状の第1孔部32aと、試料ホルダー31の下面31bに設けられた円柱状の第2孔部32bと、からなる。第1孔部32aと第2孔部32bは、それぞれの円柱形状の中心軸が略一致するようにZ軸方向に連続しており、第1孔部32aの内径は、第2孔部32bの内径よりも大きくなっている。これにより、試料ホルダー31には、各試料保持部32に対応して、複数の環状の段差面31sが形成されている。
【0031】
試料ホルダー31は、円板状の複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを保持することができる。被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fとしては、例えば、半導体基板や、表面に高分子材料からなる薄膜が形成された円板状の基板等を挙げることができる。複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fは、それらの下面(被測定試料45aの場合、下面45ad)と段差面31sとが接するように、それぞれ試料保持部32に保持される。被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fの上面(被測定試料45aの場合、上面45au)及び下面(被測定試料45aの場合、下面45ad)は、各被測定試料が試料ホルダー31に保持された状態において、露出する。
【0032】
また、試料ホルダー31には、試料ホルダー31のXY平面における中心を通りZ軸方向に延びる回転軸部31xが設けられている。回転軸部31xには、被測定試料選択部37が接続されている。被測定試料選択部37は、回転軸部31xを回転軸として、試料ホルダー31を回転させることが可能となっている。被測定試料選択部37としては、例えば、モーターを用いることができる。この場合、このモーターの回転運動が回転軸部31xに伝えられ、試料ホルダー31はXY平面内において回転する。
【0033】
試料ホルダー31を構成する材料としては、金属(例えば、アルミニウム(Al))等の導電材料や樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)等の絶縁材料を用いることができる。
【0034】
一対の電極33は、それぞれ当接部33aと支持部33bとからなる。当接部33aは、アルミニウム(Al)等の金属からなり、本実施形態では、XY平面内で広がる円板状である。当接部33aの表面の外径は、第1孔部32aの内径よりも小さくなっている。一対の当接部33aは、被測定試料の測定の際、被測定試料の上面及び下面に接する(詳細は後述する)。
【0035】
支持部33bは、ステンレス鋼等の金属からなり、本実施形態では、Z軸方向に延びる棒状の部材である。支持部33bは、当接部33aのXY平面内の略中心に固定されており、被測定試料の測定の際、被測定試料を支持する機能を有する(詳細は後述する)。
【0036】
電極駆動部35は、一対の電極33をZ軸に沿った方向に移動させることが可能なように、支持部33bに接続されている。電極駆動部35としては、例えば、モーターを用いることができる。この場合、このモーターを回転させることにより、一対の電極33をZ軸の正方向及び負方向にそれぞれ移動させることができる。また、電極駆動部35は、本実施形態の場合、後述のように離間駆動部としても機能する。
【0037】
次に、ファラデーケージ39について説明する。図4は、図2のIV−IV線に沿ったファラデーケージの断面図であり、図5は、図2のV−V線に沿ったファラデーケージの断面図である。
【0038】
図2〜図4に示すように、ファラデーケージ39は、例えば、中空の扇柱状をなしている。具体的には、ファラデーケージ39は、XY平面内で広がりZ軸方向から見て扇型状の上面39u並びに下面39dと、上面39uと下面39dの直線部分にそれぞれ接続された平板状の2つの側面39s1、39s2と、上面39uと下面39dの円弧部分に接続された円弧面39aとからなる。2つの側面39s1、39s2には、Z軸と垂直方向に延びる切り欠き部39gが形成されており、切り欠き部39g内に、試料ホルダー31の一部が設けられる。そのため、ファラデーケージ39は、試料ホルダー31の一部を覆う。そして、図2及び図3に示すように、一対の電極33と被測定試料45aを対向させた状態においては、ファラデーケージ39は、被測定試料45aを覆い、特に、被測定試料45aの上面45auと下面45adを覆うことになる。
【0039】
ファラデーケージ39は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属からなる。そのため、ファラデーケージ39は、内部静電遮蔽部(第1内部静電遮蔽部)として機能し、ファラデーケージ39の外部から内部に侵入する静電ノイズを低減させる。なお、ファラデーケージ39を構成する上面39u、下面39d、側面39s1、39s2、及び、円弧面39aは、それぞれ平板状の部材であってもよいし、金網状の部材であってもよい。これらが平板状の部材である場合、中実の部材であってもよく、中空の部材であってもよい。これらが中空の部材である場合、中空部は真空状態であることが好ましい。ファラデーケージ39の断熱特性が向上し、ファラデーケージ39が覆う被測定試料の温度制御が容易になるためである。
【0040】
次に、循環配管19a、19bについて説明する。図6は、図2におけるファラデーケージを省略して示す本体部の平面図である。図3及び図6に示すように、循環配管19aは、試料ホルダー31に対してZ軸方向の上方に設けられ、循環配管19bは、試料ホルダー31に対してZ軸方向の下方に設けられている。そのため、一対の電極33と被測定試料(例えば、被測定試料45a)を対向させた状態においては、循環配管19aは、その被測定試料に対してZ軸方向の上方に位置し、循環配管19bは、その被測定試料に対してZ軸方向の下方に位置する。循環配管19a、19bは、Z軸方向から見ると、試料ホルダー31の外部から内部に向かって略半径方向に沿って延び、試料ホルダー31の中心付近で曲がり、試料ホルダー31の内部から外部に向かって略半径方向に沿って延びている。循環配管19a、19bは、冷却装置19(図1参照)に接続されており、循環配管19a、19b内において液体窒素がそれぞれ循環している。これにより、循環配管19a、19bによって被測定試料(例えば、被測定試料45a)を冷却することが可能となっている。そのため、冷却装置19は、それぞれ被測定試料の温度調整部(冷却部)となる。
【0041】
図7は、図6に対応して循環配管の変形例を示す本体部の平面図である。図7に示すように、循環配管19a、19bは、一対の電極33と被測定試料(例えば、被測定試料45a)を対向させた状態において、Z軸方向から見て試料ホルダー31の中心付近でその被測定試料に沿って曲がっていてもよい。
【0042】
コイル41は、図3及び図6に示すように、試料ホルダー31に対してZ軸方向の上方に設けられている。そのため、一対の電極33と被測定試料(例えば、被測定試料45a)を対向させた状態においては、コイル41は、その被測定試料に対してZ軸方向の上方に位置する。コイル41は、例えば、XY平面内の仮想的な円の周りに捲回された金属線とすることができる。コイル41は、電流を供給されると加熱し、被測定試料を加熱することができる。コイル41は、被測定試料の温度調整部(加熱部)となる。
【0043】
熱電対43は、被測定試料の温度を測定するための温度測定部であり、一対の端子43a、43bを有する。後述のように、被測定試料の測定時に、熱電対43は、測定対象の被測定試料に接触する。また、本体部3は、さらに被測定試料近傍の雰囲気温度を測定するための雰囲気温度測定部(図示せず)を備えていてもよい。雰囲気温度測定部としては、例えば、被測定試料の近傍に離間して設けられた熱電対を用いることができる。本体部3が雰囲気温度測定部を備える場合、本体部3は、熱電対43を備えていなくてもよい。
【0044】
図8は、図2のVIII−VIII線に沿った本体部の断面図である。図2及び図8に示すように、本体部3は、一対の電極34、一対の電極駆動部36、第2内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ40、加熱部としてのコイル42、及び、温度測定部としての熱電対44をさらに備えている。
【0045】
一対の電極34、一対の電極駆動部36、ファラデーケージ40、循環配管19c、19d、コイル42、熱電対44、及び、一対の端子44a、44bは、それぞれ図2における一対の電極33、一対の電極駆動部35、被測定試料選択部37、ファラデーケージ39、循環配管19a、19b、コイル41、熱電対43、及び、一対の端子44a、44bと同様の構成を有する。また、ファラデーケージ40を構成する上面40u、下面40d、側面40s1、40s2、及び、円弧面40aは、それぞれ上面39u、下面39d、側面39s1、39s2、及び、円弧面39aと同様の構成を有する。図3に示すように被測定試料45aと一対の電極33とが対向している状態においては、図8に示すように被測定試料45bと一対の電極34とが対向している。また、被測定試料45bが試料ホルダー31に保持された状態において、被測定試料45bの上面45au及び下面45adは露出する。
【0046】
次に、計測制御部について説明する。図9は、計測制御部、本体部、及び、演算制御部に関する回路構成を示す図である。計測制御部5は、本体部の部材の制御に必要な制御部と、被測定試料の電気特性の測定に必要な計測器を備えている。具体的には、図9に示すように、計測制御部5は、駆動制御部51、電圧計53、59、電流計55、電源61、及び、加熱制御部57、63を備えている。
【0047】
駆動制御部51は、一対の電極駆動部35、一対の電極駆動部36、及び、被測定試料選択部37(図3参照)とそれぞれ電気的に接続されている。駆動制御部51は、これらの接続された装置の動作を制御する。電圧計53及び電圧計59は、一対の端子43a、43b及び44a、44b(図3、図8参照)にそれぞれ接続されている。電圧計53及び電圧計59によって、熱電対43及び熱電対44において生じる熱起電力がそれぞれ測定される。電流計55及び電源61は、一対の電極33及び一対の電極34(図3、図8参照)にそれぞれ接続されている。電流計55によって、一対の電極33に挟持された被測定試料に流れる電流値が測定され、電源61によって、一対の電極34に挟持された被測定試料に対して電圧が印加される。加熱制御部57及び加熱制御部63は、コイル41及びコイル42(図3参照)にそれぞれ接続されており、コイル41及びコイル42に流れる電流値をそれぞれ制御する。
【0048】
演算制御部9は、駆動制御部51、電圧計53、59、電流計55、電源61、及び、加熱制御部57、63にそれぞれ接続されており、駆動制御部51、加熱制御部57、63、及び、電源61の制御や、電圧計53、59及び電流計55の測定値に基づき、被測定試料の温度や電気特性の演算等を行う。
【0049】
次に、実施の形態に係る電気特性測定方法について説明する。本実施形態の電気特性測定方法として、電気特性測定装置1によって、半導体基板や、表面に高分子材料からなる薄膜が形成された円板状の基板等を被測定試料として用いた場合の熱刺激電流特性の測定方法について説明する。
【0050】
図10は、本実施形態に係る電気特性測定方法を示すフローチャートである。図10のフローチャートに示すように、本実施形態の熱刺激電流特性の測定方法においては、前処理工程S1、測定工程S3、及び、繰り返し工程S5を行うことができる。
【0051】
[前処理工程]
前処理工程S1は、本測定に先立って、被測定試料に対して前処理を行う工程である。図11は、前処理工程の詳細を示すフローチャートであり、図12は、前処理工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【0052】
図11のフローチャートに示すように、前処理工程S1においては、前処理対向工程S1−1、前処理遮蔽工程S1−3、前処理挟持工程S1−5、前処理離間工程S1−7、加熱及び電圧印加工程S1−9、冷却工程S1−11、及び、戻し工程S1−13を行うことができる。
【0053】
前処理対向工程S1−1では、図12(a)に示すように、被測定試料選択部37(図8参照)によって試料ホルダー31を回転させて、任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)と、一対の電極34とを対向させる。
【0054】
前処理遮蔽工程S1−3では、被測定試料45aを第2内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ40と、外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ7とによって覆う。図12(a)に示すように、上述の前処理対向工程S1−1後において、既に被測定試料45aはファラデーケージ40とファラデーケージ7とによって覆われている。従って、本実施形態においては、前処理対向工程S1−1と前処理遮蔽工程S1−3とは、同時に行われる。
【0055】
続いて、前処理挟持工程S1−5では、図12(b)に示すように、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれ被測定試料45aに近づけるように動かし、一対の電極34の当接部34aを被測定試料45aの上面45au及び下面45adにそれぞれ接触させる。これにより、被測定試料45aは一対の電極34の支持部34bによって支えられるため、一対の電極34は被測定試料45aを挟持する。被測定試料45aの上面45au及び下面45adは、それぞれ被挟持面となる。
【0056】
続いて、前処理離間工程S1−7では、図12(c)に示すように、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれZ軸の正方向に動かすことにより、一対の電極34が被測定試料45aを挟持した状態のまま被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる。従って、本実施形態においては、一対の電極駆動部36は、一対の離間駆動部としての機能も有する。本工程後において、被測定試料45aは、コイル42の内部に位置し、熱電対44と接触する。
【0057】
続いて、加熱及び電圧印加工程S1−9では、図12(c)に示す状態において、まず加熱制御部63(図9参照)によってコイル42に電流を流し、加熱されたコイル42によって被測定試料45aを所定温度まで加熱する。被測定試料45aの温度は、熱電対44によって測定される。これにより、被測定試料45a内部及び外部(表面)に生じている配向分極や不純物及び結晶欠陥等に起因する電荷トラップを消去する。続いて、電源61(図9参照)によって、一対の電極34間に電圧を印加することにより、被測定試料45aの上面45au下面45ad間に所定の電圧を印加する。これにより、被測定試料45a内に、配向分極や電荷トラップを生じさせる。
【0058】
続いて、冷却工程S1−11では、図12(c)に示す状態において、冷却装置19(図1参照)によって循環配管19cと循環配管19d内にそれぞれ液体窒素を循環させることにより、被測定試料45を所定の温度まで冷却する。これにより、被測定試料45a内に生じた配向分極や電荷トラップを固定化する。
【0059】
その後、戻し工程S1−13では、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれZ軸の負方向に動かすことにより、図12(b)に示す状態にし、さらに、一対の電極駆動部36によって一対の電極34をそれぞれ被測定試料45aから遠ざけるように動かすことにより、図12(a)に示す状態にする。
【0060】
[測定工程]
次に、図10のフローチャートに示す測定工程S3について説明する。測定工程S3は、前処理を行った被測定試料の本測定を行う工程である。図13は、測定工程の詳細を示すフローチャートであり、図14は、測定工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【0061】
図13のフローチャートに示すように、測定工程S3においては、対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、離間工程S3−7、測定工程S3−9、及び、戻し工程S3−11を行うことができる。
【0062】
対向工程S3−1では、図14(a)に示すように、被測定試料選択部37(図3参照)によって試料ホルダー31を回転させて、前処理を行った被測定試料45aと、一対の電極33とを対向させる。
【0063】
続いて、第1遮蔽工程S3−3では、被測定試料45aを第1内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ39と、外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ7とによって覆う。図14(a)に示すように、上述の対向工程S3−1後において、既に被測定試料45aはファラデーケージ39とファラデーケージ7とによって覆われている。従って、本実施形態においては、対向工程S3−3と遮蔽工程S3−5とは、同時に行われる。
【0064】
続く挟持工程S3−5は、上述の前処理挟持工程S1−5と同様の工程である。即ち、挟持工程S3−5では、図14(b)に示すように、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれ被測定試料45aに近づけるように動かし、一対の電極33の当接部33aを被測定試料45aの上面45au及び下面45adにそれぞれ接触させる。これにより、被測定試料45aは一対の電極33の支持部33bによって支えられるため、一対の電極33は被測定試料45aを挟持する。被測定試料45aの上面45au及び下面45adは、それぞれ被挟持面となる。
【0065】
続く離間工程S3−7は、上述の前処理離間工程S1−7と同様の工程である。即ち、離間工程S3−7では、図14(c)に示すように、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれZ軸の正方向に動かすことにより、一対の電極33が被測定試料45aを挟持した状態のまま被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる。本工程後において、被測定試料45aは、コイル41の内部に位置し、熱電対43と接触する。
【0066】
続いて、測定工程S3−9では、被測定試料45aの熱刺激電流の測定を行う。具体的には、上述の前処理工程S1において冷却された被測定試料45aの温度を徐々に上げ、その際に生じる脱分極や脱トラップよる熱刺激電流を測定する。熱刺激電流値は、一対の電極33に接続された電流計55(図9参照)によって測定される。被測定試料45aの温度は、熱電対43で測定される。被測定試料45aの温度は、循環配管19a、19b内をそれぞれ循環する液体窒素の流量を冷却装置19(図1参照)で調節したり、コイル41に流す電流値を加熱制御部57(図9参照)で調節したりすることによって、制御される。そして、演算制御部9(図9参照)は、電流計55と熱電対43の測定値等を基に必要な演算を行い、被測定試料45aの熱刺激電流特性が求められる。
【0067】
続く戻し工程S3−11は、上述の戻し工程S1−13と同様の工程である。即ち、戻し工程S3−11では、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれZ軸の負方向に動かすことにより、図14(b)に示す状態にし、さらに、一対の電極駆動部35によって一対の電極33をそれぞれ被測定試料45aから遠ざけるように動かすことにより、図14(a)に示す状態にする。
【0068】
さらに、測定工程S3においては、上述の対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、離間工程S3−7、測定工程S3−9、及び、戻し工程S3−11と並行して、次測定用前処理工程S3−13が必要に応じて行われる
【0069】
次測定用前処理工程S3−13は、一つの被測定試料の本測定を行っている間に、他の被測定試料の前処理を行う工程である。例えば、測定工程S3において被測定試料45aを測定している場合、被測定試料45bは、一対の電極34と対向する位置に移動している(図3、図6、図8参照)。そのため、被測定試料45aの本測定を行っている間に、被測定試料45bの前処理を行うことができる。次測定用前処理工程S3−13の具体的な内容は、上述の前処理工程S1と同様である。なお、次に測定する被測定試料が無い場合には、次測定用前処理工程S3−13は省略される。
【0070】
[繰り返し工程]
繰り返し工程S5は、一つの被測定試料の測定が終わり、他に測定すべき被測定試料がある場合に、次に測定すべき被測定試料について測定工程S3を繰り返す工程である。例えば、被測定試料45aについて測定工程S3が終わった場合、被測定試料45bについて測定工程S3を行うことができる。この場合、例えば測定工程S3中の対向工程S3−1では、被測定試料選択部37(図3参照)によって試料ホルダー31を回転させて、被測定試料45bと、一対の電極33とを対向させる(図14(a)参照)。
【0071】
上述のような本実施形態の電気特性測定装置は、被測定試料(例えば、被測定試料45a)を保持するための試料ホルダー31と、被測定試料45aを挟持するための一対の電極33と、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させるように一対の電極33被測定試料45aを移動させる電極駆動部(離間駆動部)35とを備えている。
【0072】
これにより、被測定試料(例えば、被測定試料45a)の測定の際、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させることができる(図14参照)。その結果、測定の際、試料ホルダー31が被測定試料45aに対して電気的な影響を与えることを抑制することができる。
【0073】
例えば、試料ホルダーが金属で形成されており、かつ、測定の際に試料ホルダーと被測定試料が接触していると、測定対象である被測定試料内を流れる電流(例えば、熱刺激電流)の一部は、試料ホルダー内を流れてしまい、測定誤差の原因となる場合がある。また、例えば、試料ホルダーが絶縁体で形成されており、かつ、測定の際に試料ホルダーと被測定試料が接触していると、絶縁体からなる試料ホルダーに印加電圧がかかり、試料ホルダーから微量なトラップ電流が放出されるため、測定誤差の原因となる場合がある。それに対して、本実施形態の電気特性測定装置では、測定の際、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させているため、このような試料ホルダー31の存在に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の電気特性測定装置1においては、試料ホルダー31は複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fをそれぞれ保持するための複数の試料保持部32を有し、一対の電極33は、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)を挟持することが可能である。さらに、電気特性測定装置1は、試料ホルダー31を移動させることにより、一対の電極33が、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの一つ(例えば、被測定試料45a)と対向する状態から、一対の電極33が、他の被測定試料(例えば、被測定試料45b)と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部37を備えている(図3参照)。
【0075】
これにより、被測定試料選択部37によって試料ホルダー31と一対の電極33とを相対的に移動させることにより、一対の電極33は、試料ホルダー31の複数の試料保持部32に保持された複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうち任意の被測定試料を挟持することが可能となっている。その結果、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを連続的に測定することが可能となっている。
【0076】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、電極駆動部(離間駆動部)35及び被被測定試料選択部37によって、一対の電極33、34と被測定試料(例えば、被測定試料45a)との相対的な位置関係を変更することができる。これらの相対的な位置関係が固定されている場合、被測定試料の大きさが大きい場合、被測定試料の大きさに合わせて電気特性測定装置を再び製造するか、被測定試料を破壊して小さくする必要がある。それに対して、本実施形態の電気特性測定装置1によれば、試料ホルダー31を被測定試料45aの大きさに合わせて製造するだけで、様々な大きさの被測定試料45aを非破壊で測定することができる。
【0077】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、一対の電極33が被測定試料45aを挟持するように一対の電極33を移動させる電極駆動部35をさらに備えている。これにより、一対の電極33によって容易に被測定試料45aを挟持することができる。
【0078】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、被測定試料45aを覆うように設けられた内部静電遮蔽部(第1内部静電遮蔽部(ファラデーケージ39))を備えている(図2、図3、及び、図14参照)。これにより、測定の際に外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を低減させることが可能となっている。特に、ファラデーケージ39は、被測定試料45aの2つの被挟持面である上面45auと下面45adを覆っている(図3、及び、図14参照)。これにより、電気特性測定装置1の外部から被測定試料の2つの被挟持面に侵入する静電ノイズを低減させることができため、測定の際に外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を特に低減させることが可能となっている。
【0079】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、一対の電極33が任意の一つの被測定試料(被測定試料45a)を挟持した状態において、被測定試料45aを覆うように設けられたファラデーケージ39に加えて、ファラデーケージ39を覆うように設けられた外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)を備えている(図3、図14参照)。これにより、一対の電極33に挟持された被測定試料45aは、ファラデーケージ39とファラデーケージ7とによって二重に覆われる。その結果、外部から電気特性測定装置1内部に侵入する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、被測定試料45aの温度を変化させる温度調整部として、コイル41並びにコイル42(加熱部)、及び、冷却装置19(冷却部)を備えている(図1、図2、図3、図12、及び、図14参照)。これにより、熱刺激電流特性といった被測定試料45aの温度を変化させることが必要な電気特性測定を行うことが可能となっている。
【0081】
また、本実施形態の電気特性測定装置1は、被測定試料45aに流れる電流を測定する電流計55と、電流計55及びファラデーケージ39を覆うように設けられた外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)と備えている(図3、図9、及び、図14参照)。これにより、測定の際に外部から電気特性測定装置1内に侵入する静電ノイズによって、電流計55の測定値に誤差が生じることを低減させることが可能となっているため、熱刺激電流特性といった被測定試料45aに流れる微小電流を測定する必要のある電気特性の測定が可能となっている。
【0082】
また、本実施形態の電気特性測定装置は、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうち、一対の電極33が挟持する任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)以外の被測定試料のいずれか(例えば、被測定試料45b)を覆い、かつ、ファラデーケージ7によって覆われる第2内部静電遮蔽部(ファラデーケージ40)を備えている(図2、図12、及び、図14参照)。これにより、一対の電極33が挟持する被測定試料45aについての電気特性の測定と並行して、ファラデーケージ40に覆われた被測定試料45bについて、外部から被測定資料45bに静電ノイズが侵入することを防止しながら、測定に先立つ前処理を行うことができる(図13参照)。その結果、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fについてそれぞれ前処理が必要な電気特性の測定を行う場合に、測定に必要な時間を短縮することができる。
【0083】
また、上述のような本実施形態の電気特性測定方法は、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)と一対の電極33とを対向させる対向工程S3−1と、内部静電遮蔽部(第1内部静電遮蔽部(ファラデーケージ39))と、内部静電遮蔽部を覆う外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)とによって一つの被測定試料45aを覆う遮蔽工程S3−3と、対向工程S3−1の後に、一対の電極33によって一つの被測定試料45aを挟持する挟持工程S3−5と、遮蔽工程S3−3及び挟持工程S3−5の後に、内部静電遮蔽部と、外部静電遮蔽部とによって覆われた一つの被測定試料45aの電気特性を測定する測定工程S3−9と、測定工程S3−9の後に、一つの被測定試料45aに代えて、他の被測定試料45bについて対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、及び、測定工程S3−9を行う繰り返し工程S5とを備えている(図10、図11、及び、図13参照)。
【0084】
これにより、一対の電極33が複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうちの一つの被測定試料45aを挟持する状態から、一対の電極33が他の被測定試料45bを挟持する状態に変化させることができる。その結果、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを測定する場合であっても、1回の測定ごとに被測定試料を交換する作業が不要となるため、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fを連続的に測定することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態の電気特性測定方法によれば、測定の際、被測定試料45aはファラデーケージ39とファラデーケージ7とによって二重に覆われている。これにより、測定中に被測定試料45aに到達する静電ノイズは有効に低減されるため、外部から被測定試料45aに到達する静電ノイズに起因する測定誤差を有効に低減することが可能となっている。
【0086】
また、本実施形態の電気特性測定方法では、測定工程S3−9の前に、離間工程S3−7を行っている(図13参照)。これにより、測定の際、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させることができため、試料ホルダー31が測定試料45aに対して電気的な影響を与えることを抑制することができる。その結果、試料ホルダー31の存在に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0087】
本発明は上述の実施形態に限られず、様々な変形態様が可能である。
【0088】
例えば、上述の実施形態では、試料ホルダー31は円板形状をなしているが、このような形状に限られない。図15は、変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の平面図であり、図16は、変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の断面図である。
【0089】
図15及び図16に示すように、試料ホルダー131は、Z軸方向を厚さ方向とし、X軸方向を延び方向とする平板状をなしていてもよい。試料ホルダー139は、X軸方向に沿って設けられた複数の試料保持部32を有している。このような試料ホルダー139としては、例えば、ベルトコンベアを挙げることができる。試料ホルダー139には、被測定試料選択部137が設けられており、被測定試料選択部137によって試料ホルダー139をX軸に沿った方向に移動させることができる。即ち、被測定試料選択部137によって試料ホルダー139と一対の電極33との相対位置を変化させることができる。これにより、複数の被測定試料45a、45b、45c、45d、45e、45fのうち、任意の一つと電極33とを対向させることが可能となっている。被測定試料選択部137として、例えばモーターを用いることができる。
【0090】
また、この場合、本体部3は、第1内部静電遮蔽部(内部静電遮蔽部)としてのファラデーケージ139と、第2内部静電遮蔽部としてのファラデーケージ140とを備えている。ファラデーケージ139及びファラデーケージ140は、上述のファラデーケージ39及びファラデーケージ40と同様の材質からなり、同様の機能及び目的を有するが、形状が異なる。ファラデーケージ139及びファラデーケージ140は、いずれも中空の直方体形状をなしている。具体的には、ファラデーケージ139及びファラデーケージ140、矩形の平板状の上面139u、140uと、矩形の平板状の下面139d、140dと、上面139u、140u及び平板状の下面139d、140dを接続する4つの側面139a、140aとを有する。また、ファラデーケージ139及びファラデーケージ140は、4つの側面139a、140aのうちX軸と交差する面に切り欠き部139g及び140gをそれぞれ有する。これにより、試料ホルダー139をX軸に沿った方向に移動させる際、試料ホルダーは、切り欠き部139g及び140g内を移動することが可能となっている。
【0091】
また、上述の実施形態では、前処理離間工程S1−7及び離間工程S3−7において、一対の電極33、34と試料ホルダー31とを離間しているが(図11、図13参照)、前処理離間工程S1−7及び/又は離間工程S3−7は省略可能である。前処理離間工程S1−7を省略した場合、加熱及び電圧印加工程S1−9は、図12(b)に示すように、一対の電極34と試料ホルダー31とが接触した状態のまま行われる。同様に、離間工程S3−7を省略した場合、測定工程S3−9は、図14(b)に示すように、一対の電極33と試料ホルダー31とが接触した状態のまま行われる。
【0092】
また、上述の実施形態では、被測定試料45aの熱刺激電流特性を測定する場合について説明したが、他の電気特性、例えば、誘電率、電気抵抗、及び、移動度等を測定することもでき、これによって残留応力、融点、及び、ガラス転移温度等を測定することができる。この場合、計測制御部5は、測定する電気特性の種類に応じて適切な計測器や電源等を有する。
【0093】
また、上述の実施形態では、被測定試料45aに流れる電流を測定する電流計55は、外部静電遮蔽部(ファラデーケージ7)内に設けられているが((図3、図9、及び、図14参照)、電流計55は、外部静電遮蔽部の外側に設けられていてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、測定試料45aの温度を変化させる温度調整部として、コイル41並びにコイル42(加熱部)、及び、冷却装置19(冷却部)を備えているが(図2、図3、図12、及び、図14参照)、被測定試料45aを加熱する必要が無い場合には、電気特性測定装置1はコイル41及びコイル42を備えていなくてもよく、また、被測定試料45aを冷却する必要が無い場合には、電気特性測定装置1は、冷却装置19を備えていなくてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、電気特性測定装置1は、第2内部静電遮蔽部としてファラデーケージ40を備えているが、前処理工程S1を行う際、被測定試料45aを第2内部静電遮蔽部内に設ける必要が無い場合、電気特性測定装置1はファラデーケージ40を備えていなくてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、前処理工程S1を行う際、被測定試料45aをファラデーケージ40内に設けているが(図2、図12、及び、図14参照)、測定工程S3と同様に、前処理工程S1もファラデーケージ39内で行ってもよい。この場合、前処理対向工程S1−1においては、任意の一つの被測定試料(例えば、被測定試料45a)と、一対の電極33とを対向させることになり、戻し工程S1−13、対向工程S3−1、遮蔽工程S3−3、挟持工程S3−5、及び、離間工程S3−7は省略可能である。
【0097】
また、上述の実施形態では、前処理対向工程S1−1及び対向工程S3−1において、被測定試料選択部37(図3、図8参照)によって試料ホルダー31を移動(回転)させて、被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させている。しかし、被測定試料選択部は、試料ホルダー31と一対の電極33、34の少なくとも一方を移動させ、これらの相対位置を変化させることによって、被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させる部材であればよい。例えば、一対の電極33、34に対して、これらをXY平面に沿って移動させる部材を設けることができる。この部材のみで被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させる場合、この部材が被測定試料選択部となる。また、この部材と上述の実施形態における被測定試料選択部37の双方によって被測定試料45aと一対の電極33、34とを対向させる場合、この部材と被測定試料選択部37の双方が、新たに被測定試料選択部となる。この部材は、一対の電極駆動部35、36が兼ねることが可能であるが、一対の電極駆動部35、36と別体であってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、前処理離間工程S1−7及び離間工程S3−7において、一対の電極駆動部35、36は、離間駆動部としても機能し、これらによって一対の電極33、34をそれぞれZ軸の正方向に動かすことにより、一対の電極33、34が被測定試料45aを挟持した状態のまま被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させている。しかし、電極駆動部35、36と離間駆動部とを別体とし、電極駆動部35、36と離間駆動部とがそれぞれ一対の電極33、34に接続されていてもよい。
【0099】
また、離間駆動部は、一対の電極33,34に接続されていなくてもよく、料ホルダー31と一対の電極33、34の少なくとも一方を移動させ、これらの相対位置を変化させることによって、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる部材であればよい。例えば、試料ホルダー31に対して、これらをZ軸方向に移動させる部材を設けることができる。この部材のみで被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる場合、この部材が離間駆動部となる。また、この部材と上述の実施形態における一対の電極駆動部35、36の双方によって被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させる場合、この部材と一対の電極駆動部35、36の双方が、離間駆動部となる。この部材は、被測定試料選択部37が兼ねることが可能であるが、被測定試料選択部37と別体であってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、前処理対向工程S1−1と前処理遮蔽工程S1−3は同時に行われ、また、対向工程S3−1と第1遮蔽工程S3−3は同時に行われているが、これらを別々に行うこともできる。例えば、ファラデーケージ39が試料ホルダー31に対して移動可能となっている場合、対向工程S3−1の後にファラデーケージ39を移動させることにより遮蔽工程S3−3を行うことができる。同様に、ファラデーケージ40が試料ホルダー31に対して移動可能となっている場合、前処理対向工程S1−1の後にファラデーケージ40を移動させることにより前処理遮蔽工程S1−3を行うことができる。
【0101】
また、上述の実施形態では、前処理挟持工程S1−5の後に前処理離間工程S1−7を行い、また、挟持工程S3−5の後に離間工程S3−7に行っているが、これらの工程は、逆の順序で行ってもよい。この場合、前処理離間工程S1−7及び離間工程S3−7においては、例えば、電極駆動部35、36によって一対の電極33、34のうち被測定試料45aの下方にある電極のみを上方に移動させることにより、被測定試料45aの下面45adを接触させると共に、被測定試料45aと試料ホルダー31とを離間させればよい(図12、図14参照)。そして、前処理挟持工程S1−5及び挟持工程S3−5においては、例えば、電極駆動部35、36によってその電極をさらに上方に移動させることにより、被測定試料45aの上面45auと、被測定試料45aの上方にある電極とを接触させ、一対の電極33、34によって被測定試料45aを挟持すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施形態に係る電気特性測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】本体部の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った本体部の断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿ったファラデーケージの断面図である。
【図5】図2のV−V線に沿ったファラデーケージの断面図である。
【図6】図2におけるファラデーケージを省略して示す本体部の平面図である。
【図7】図6に対応して循環配管の変形例を示す本体部の平面図である。
【図8】図2のVII−VII線に沿った本体部の断面図である。
【図9】計測制御部、本体部、及び、演算制御部に関する回路構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る電気特性測定方法を示すフローチャートである。
【図11】前処理工程の詳細を示すフローチャートである。
【図12】前処理工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【図13】測定工程の詳細を示すフローチャートである。
【図14】測定工程で行う一連の工程を説明するための本体部の一部の断面図である。
【図15】変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の平面図である。
【図16】変形例に係る試料ホルダーを備える本体部の断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1・・・電気特性測定装置、3・・・本体部、5・・・計測制御部、7・・・外部静電遮蔽部としてのファラデーケージ、19・・・温度調停部(冷却部)、31・・・試料ホルダー、33・・・一対の電極、34・・・一対の電極、35・・・電極駆動部(離間駆動部)、36・・・電極駆動部(離間駆動部)、37・・・被測定試料選択部、39・・・第1内部静電遮蔽部(内部静電遮蔽部、ファラデーケージ)、40・・・第2内部静電遮蔽部(ファラデーケージ)、45a、45b、45c、45d、45e、45f・・・被測定試料、45аu・・・被測定試料の上面(被挟持面)、45аd・・・被測定試料の下面(被挟持面)、55・・・電流計、S3−1・・・対向工程、S3−3・・・遮蔽工程、S3−5・・・挟持工程、S3−7・・・離間工程、S3−9・・・測定工程、S5・・・繰り返し工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定装置であって、
前記複数の被測定試料をそれぞれ保持するための複数の試料保持部を有する試料ホルダーと、
前記複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料を挟持するための一対の電極と、
前記試料ホルダー及び前記一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、前記一対の電極が前記複数の被測定試料のうちの一つと対向する状態から、前記一対の電極が他の被測定試料と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部と、
前記一対の電極が前記任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、前記任意の一つの被測定試料を覆うように設けられた第1内部静電遮蔽部と、
前記第1内部静電遮蔽部を覆うように設けられた外部静電遮蔽部と、
を備える、電気特性測定装置。
【請求項2】
前記一対の電極が前記被測定試料を挟持するように前記一対の電極を移動させる電極駆動部をさらに備える請求項1に記載の電気特性測定装置。
【請求項3】
前記第1内部静電遮蔽部は、前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料の2つの被挟持面を覆う、請求項1又は2に記載の電気特性測定装置。
【請求項4】
前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料の温度を変化させる温度調整部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項5】
前記複数の被測定試料のうち、前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料以外の被測定試料のいずれかを覆い、かつ、前記外部静電遮蔽部によって覆われる第2内部静電遮蔽部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項6】
前記外部静電遮蔽部によって覆われ、かつ、前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料に流れる電流を測定する電流計をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項7】
前記一対の電極が前記任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、前記試料ホルダー及び前記一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、前記任意の一つの被測定試料と前記試料ホルダーとを離間させる離間駆動部をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項8】
複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定方法であって、
前記複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料と一対の電極とを対向させる対向工程と、
内部静電遮蔽部と、前記内部静電遮蔽部を覆う外部静電遮蔽部とによって前記一つの被測定試料を覆う遮蔽工程と、
前記対向工程の後に、前記一対の電極によって前記一つの被測定試料を挟持する挟持工程と、
前記遮蔽工程及び前記挟持工程の後に、前記内部静電遮蔽部と、前記外部静電遮蔽部とによって覆われた前記一つの被測定試料の電気特性を測定する測定工程と、
前記測定工程の後に、前記一つの被測定試料に代えて、他の被測定試料について前記対向工程、前記遮蔽工程、前記挟持工程、及び、前記測定工程を行う繰り返し工程と、
を備える、電気特性測定方法。
【請求項1】
複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定装置であって、
前記複数の被測定試料をそれぞれ保持するための複数の試料保持部を有する試料ホルダーと、
前記複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料を挟持するための一対の電極と、
前記試料ホルダー及び前記一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、前記一対の電極が前記複数の被測定試料のうちの一つと対向する状態から、前記一対の電極が他の被測定試料と対向する状態に変化させるための被測定試料選択部と、
前記一対の電極が前記任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、前記任意の一つの被測定試料を覆うように設けられた第1内部静電遮蔽部と、
前記第1内部静電遮蔽部を覆うように設けられた外部静電遮蔽部と、
を備える、電気特性測定装置。
【請求項2】
前記一対の電極が前記被測定試料を挟持するように前記一対の電極を移動させる電極駆動部をさらに備える請求項1に記載の電気特性測定装置。
【請求項3】
前記第1内部静電遮蔽部は、前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料の2つの被挟持面を覆う、請求項1又は2に記載の電気特性測定装置。
【請求項4】
前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料の温度を変化させる温度調整部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項5】
前記複数の被測定試料のうち、前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料以外の被測定試料のいずれかを覆い、かつ、前記外部静電遮蔽部によって覆われる第2内部静電遮蔽部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項6】
前記外部静電遮蔽部によって覆われ、かつ、前記一対の電極が挟持する前記任意の一つの被測定試料に流れる電流を測定する電流計をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項7】
前記一対の電極が前記任意の一つの被測定試料を挟持した状態において、前記試料ホルダー及び前記一対の電極の少なくとも一方を移動させることにより、前記任意の一つの被測定試料と前記試料ホルダーとを離間させる離間駆動部をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気特性測定装置。
【請求項8】
複数の被測定試料の電気特性を測定する電気特性測定方法であって、
前記複数の被測定試料のうちの任意の一つの被測定試料と一対の電極とを対向させる対向工程と、
内部静電遮蔽部と、前記内部静電遮蔽部を覆う外部静電遮蔽部とによって前記一つの被測定試料を覆う遮蔽工程と、
前記対向工程の後に、前記一対の電極によって前記一つの被測定試料を挟持する挟持工程と、
前記遮蔽工程及び前記挟持工程の後に、前記内部静電遮蔽部と、前記外部静電遮蔽部とによって覆われた前記一つの被測定試料の電気特性を測定する測定工程と、
前記測定工程の後に、前記一つの被測定試料に代えて、他の被測定試料について前記対向工程、前記遮蔽工程、前記挟持工程、及び、前記測定工程を行う繰り返し工程と、
を備える、電気特性測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−112838(P2010−112838A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285816(P2008−285816)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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