説明

電気的に制御されたディスプレイエレメントを有するセキュリティドキュメント

本発明は、可撓性キャリア(10)とこの可撓性キャリアに設けられ一つ又はそれ以上の光学セキュリティ特性を形成する多層可撓性フィルム体(2)とを備えるセキュリティドキュメント(1)に関する。この多層可撓性フィルム体(2)は、光学的に活性な回析構造と結合してディスプレイエレメントを作動する電流源と組み合わされて光学セキュリティ特性を発生する電気的に制御されたディスプレイエレメントを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアとこのキャリアに設けられた一つ又はそれ以上の光学的セキュリティ特性を形成する多層可撓性フィルム体とを備えるセキュリティドキュメント、特に、紙幣又は身分カードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のカラーコピーおよび他の再生システムによって設けられる可能なオプションについて、セキュリティ特性がセキュリティドキュメント(防犯文書)に設けられ、このセキュリティ特性が、一方では、この種の装置を用いて偽造を行うのを困難にさせ、他方では、このセキュリティ特性を一般の人に容易に且つ明瞭に認識できるようにすることが必要である。
【0003】
この目的のために、セキュリティスレッド(繊維)の形態のセキュリティエレメントが、価値のあるドキュメントに導入されることが知られており、このような構造では、スレッドの一部が表面に露出され、このスレッドに導入される光学セキュリティエレメント、例えば、ホログラム又は部分的な非金属化部分がそれを見る人によってチェックされるようになっている。
【0004】
電子回路をシート又はペーパーのストリップに印刷させる技術が知られている(特許文献1参照)。この電子回路は、有機半導体材料から成り、導電パスによって紙幣における金属ストリップに接続されている。この場合に、電子回路は、通常の半導体材料から形成された電子部品に基づくものでないが、ポリマー半導体技術を用いる有機フィールド効果のトランジスタに基づいている。この場合、金属ストリップがアンテナとして機能し、このアンテナによって半導体回路と、対応する評価回路との間で通信が可能である。このように、電子回路が偽造を検出するために機能するが、更に、ドキュメントの位置を検出することも可能である。
【特許文献1】EP1134694A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、本発明の目的は、改良されたセキュリティドキュメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、キャリアと、このキャリアに設けられた多層フィルム体とを備え、この多層フィルム体が、光学的に活性な回析構造と結合してディスプレイエレメントを作動するための電流源と組み合わされて光学セキュリティ特性を発生する電気的に制御されたディスプレイエレメントを有するセキュリティドキュメントによって達成される。
【0007】
上記目的は、更に、一つまたはそれ以上の光学セキュリティ特性を形成する多層可撓性フィルム体をセキュリティドキュメントのキャリアに形成し、キャリアフィルムと多層フィルム体を形成する転写層配列とを有し、その多層フィルム体が、光学的に活性な回析構造と結合してディスプレイエレメントを作動するための電流源と組み合わされて光学セキュリティ特性を発生するようにした電気的に制御されたディスプレイエレメントを有する転写フィルムによって達成される。
【0008】
光学可変エレメントと、電気的に制御されたディスプレイエレメントと、電流源とは、好ましくは可撓性の多層フィルム体に一体化され、次いで、好ましくはペーパー材料から成るキャリアに設けられる。この場合に、光学可変エレメントは、多層フィルム体の電気機能構造に一体化され、この結果、これらのエレメントは、それら自体の互いのセキュリティを形成し、従って、フィルム体によって形成された光学セキュリティ特性の偽造又はイミテーションが容易に防止される。この点について、電気的に制御されたエレメントによって発生した光学効果および光学可変エレメントによって生じた光学効果が相俟って、偽造等のための操作が、これに応じてかなりの程度で防止されることになる。
【0009】
本発明の好ましい実施例によれば、電気的に制御されたディスプレイエレメントと回析構造とは、少なくとも一部で重なり、この結果、回析構造によって生じた光学効果の光学的外観は、少なくとも一部が電気的に制御されたディスプレイエレメントによって影響される。従って、例えば、回析構造、例えば、ホログラムによって形成された光学効果の光学的外観が電気的に制御されたディスプレイエレメントによって影響され得る。この点について、電気的に制御されたディスプレイエレメントを発光ディスプレイエレメントに形成し、回析構造について、ディスプレイエレメントの発光特性を変えることができる。このように、通常の技術を用いて偽造が困難な新規な著しく簡易な光学可変効果を達成することができる。
【0010】
更に、電気的に制御されたディスプレイエレメントを他の光学的に活性なマイクロ構造、例えば、マット構造又は屈折マイクロ構造、例えば、マイクロレンズ構造によって更に重ね合わせることができる。この点において、マイクロ構造は、特に、横方向の寸法が100μm以下に設定されている。
【0011】
本発明の更なる好ましい実施例によれば、回析構造が電流源と少なくとも一部がオーバーラップして(重なって)配置されている。光学的に活性な回析構造の電流源へのオーバーラップおよび/又は一体化のために、それらは互いに一体のユニットを形成し、従って、互いに分離することができなく、特に、偽造等の操作に対して高度の安全性を保持することができる。
【0012】
電流源は、この場合には、好ましくは、太陽電池から成っている。このように太陽電池を用いると、更なる活性電子部品を配置することなく、電気的に制御されたディスプレイエレメントによって有益な光学セキュリティ特性をもたせることを可能にする。これは、本発明に係るセキュリティドキュメントが特に安価に製造できることを意味する。
【0013】
しかし、太陽電池の代わりに、例えば、電流源としての高周波数電磁放射体に接続するようにした印刷されたバッテリー又はアンテナ構造を用いることができる。従って、例えば、情報の項目を携帯ラジオ装置によってチェックすることができる。
【0014】
好ましくは、(回析)マイクロ構造は、光を、太陽電池を囲む表面領域から太陽電池へ供給するか、又は太陽電池の局部的効率を増大する。このように、一方では、太陽電池に供給されたエネルギが増大されて太陽電池と太陽電池を囲む領域の外観は、光学可変装飾効果をもって重ね合わされる。この場合に、(回析)マイクロ構造を、太陽電池の活性媒体の上側および/または下側に配置させることができ、太陽電池の効率を向上することができる。反射防止構造、例えば、モスアイ(motheye)の構造が太陽電池上に配置されている場合、4%のフレネル反射を削減することができ、従って、太陽電池の効率を向上することができる。光学的に活性な交差格子、例えば、860線/mmを有する正弦曲線の交差格子が太陽電池の下側に配置され、かくして、太陽電池の活性媒体を介してこの太陽電池の活性媒体に伝達された光の一部を結合することにより、太陽電池の効率を更に向上させることができる。このように、一つ又はそれ以上の供給領域をカバーすることによって、電気的に制御されたディスプレイエレメントによって発生された光学効果を使用者が変更することができる。また、太陽電池を広範囲に亘って光学的にカバーすることができ、従って、観察者から遮蔽することができるにもかかわらず、それでもなお十分な量の放射エネルギを太陽電池に供給することができる。この点について、好ましくは、回析構造は、放射エネルギを太陽電池に集中させる機能と共に、太陽電池の領域に光学可変セキュリティドキュメントを観察者に提供させるという機能とを有する。
【0015】
特に、通常の技術/機能形態、例えば、矩形であるが、セキュリティエレメントの設計に挿入されるパターン又は像の形態では設計されない太陽電池によって幾つかの利点を達成することができる。従って、放射エネルギを電気エネルギに変換する純粋な電気機能の他に、太陽電池は、例えば、観察者に特定のイメージ情報を示す光学セキュリティエレメントの機能を更に含むことになる。また、太陽電池をパターン形態で部分的に刷り重ねすることができ、従って、セキュリティドキュメントの特性を光学セキュリティ特性の背景領域として機能することができる。
【0016】
本発明の更なる好ましい実施例によれば、回析構造は、電気的に制御されたディスプレイエレメントに隣接して配置され、この結果、電気ディスプレイエレメントによって発生した光学効果および回析構造によって発生した光学効果は、互いに情報を補足する項目を形成する。このように、一方のエレメント又は他方のエレメントの任意の変更又は操作を、観察者が直ちに見ることができ、これによって偽造に対する安全性のレベルが更に向上される。
【0017】
ディスプレイエレメントは、例えば、有機発光ダイオードを有し、この発光ダイオードは、パターン又は数の形態に形成されている。こうして、このディスプレイエレメントは、パターン又は数の形態で所定の波長の光を発する構造を形成する。更に、パターン又は数の形態に形成されたエレクトロクロミックエレメントをディスプレイエレメントに持たせることができる。かくして、ディスプレイエレメントは、印加された電圧に応じてパターン又は数を異なる色で示すようにした構造を形成する。二つの電極層間に移動可能に配置された複数の異なる色、異なる充電を有する粒子をディスプレイエレメントに設けることができる。電圧を電極層間に印加することによって、一方又は他方の粒子の濃度を、一方又は他方の電極の近傍で変更することができ、この結果、ディスプレイエレメントの光学的印象が、印加された電圧又は電圧の極の逆転に従って変更する。
【0018】
特に、セキュリティドキュメントが透明な窓を有し、ディスプレイエレメントがその透明な窓に配置されている場合、幾つかの利点が達成され得る。しかし、ディスプレイエレメントと重ね合わされる関係にあるディスプレイエレメントおよび回析構造は、セキュリティドキュメントの前側および後側から視認可能であり、その他、透光モードで観察されたとき、認識だけをすることができるセキュリティ特性を有することができる。ここでは、前側および後側において観察印象が異なるようにした電気的に制御されたディスプレイエレメントを用いることができることが特に利点である。
【0019】
本発明の更なる好ましい実施例によれば、可撓性の多層フィルム体は、有機半導体部品から形成され且つディスプレイエレメントを制御する電子回路を有している。この電子回路は、例えば、ディスプレイエレメントのフラッシュ又は例えば、‘連続発光’効果の如き、更なる効果を制御するオシレータ回路を有する。この場合に、好ましくは、電子回路は、光学セキュリティ特性を形成するようにした光学的に活性な回析構造によって少なくとも一部が重ね合わされる。
【発明の効果】
【0020】
これは上述した利点を有することになる。この点について、適切な材料を用いて観察者が電子回路を視認することができる。更に、例えば、金属電極層を光学的に活性な金属反射層と同じ工程で発生させることができる。
【0021】
可撓性の多層フィルム体の層構造は、光学回析効果を有するセキュリティ特性を発生するように形成された光学回析活性リリーフ構造を有する複製ラッカー層と、電気的に制御されたディスプレイエレメントの二つ以上の電気機能層とによって識別される。この場合に、好ましくは、多層フィルム体は、有機半導体材料から成る少なくとも一つの電気機能層を有する。この多層フィルム体は、好ましくは、転写フィルム、例えば、ホットスタンピングフィルムの転写層配列を備え、この転写フィルムは、セキュリティドキュメントのキャリアに設けられ、このキャリアは、好ましくは、ペーパー材料から成っている。
【0022】
偽造に対する安全性のレベルを更に高めることは、電気的に制御されたディスプレイエレメントを含む可撓性の多層フィルム体とセキュリティドキュメントの隣接領域とが共通の実質的に不透明な刷り重ねをパターン形態で適用した後に設けられ、従って、適用された多層フィルム体の境界が観察者の観点から光学的に解像されることによって達成される。
【0023】
更に、光学回析効果を有する光学可変エレメントの他に、可撓性の多層フィルム体は、また、異なった種類の光学効果を発生する更なる光学可変エレメントを有する。例えば、フィルム体は、見る角度によって色変化を発生する薄いフィルム層システムと、偏光効果を発生するようにした配向され架橋された液晶層又は見る角度によって色をシフトするコレステリック液晶層とを有する。この種の光学変更エレメントは、好ましくは、多層フィルム体の電気部品に重ね合わされまたは一体化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施する最良の形態を、これを具体化する実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0025】
図1および図2は、紙幣の形態にあるセキュリティドキュメント1を示す。このセキュリティドキュメント1は、略100μmの厚さを有するペーパー材料のキャリア(支持体)を備えている。このキャリア10は、その両側に着色プリント11、12が例えばオフセット印刷を用いて印刷されている。このような印刷をしないで、即ちキャリア10がフィルム体2の適用後に印刷11、12のみを印刷することもできる。この印刷は、数字“1”、“2”がここでは緑色である図1の例によって示される。更に、可撓性のフィルム体2が転写工程によって印刷されたキャリア10に設けられる。更に、このフィルム体2を設ける前に、ラッカー層あるいはプライマー層を、フィルム体2が施されるキャリア10の領域に設けることができる。例示として、フィルム体2は、ホットスタンピング工程によって図1に示されたセキュリティドキュメント12の領域に設けられている。次いで、このフィルム体2には、印刷25が例えば、インタリオ印刷(凹版)によって一部の領域に重ねて設けられている。
【0026】
更に、セキュリティドキュメント1を、身分ドキュメントまたは通帳であるように形成することもできる。この場合に、キャリア10は、例えば、機械的に安定したプラスチックフィルムまたはプラスチックラミネート、例えば、ポリカーボネートから作ることができる。更に、このような用途の場合に、例えば、防護層として作用する一つまたは複数のプラスチック層を、フィルム体2および必要なら印刷25上に設けることができる。従って、このような用途の場合に、フィルム体2は、その両側を防護層として機能して長寿命を図るようにした更なるフィルム層によって包むことができる。一つの使用例として、フィルム体2を、二つのポリカーボネートキャリア層の間にラミネート(積層)することができる。
【0027】
可撓性のフィルム体2は、ディスプレイエレメント21と、このディスプレイエレメントに電気的に接続された電子回路22と、太陽電池23および光学可変エレメント24とを有する。
【0028】
この光学可変エレメント24は、回折セキュリティエレメント、例えば、ホログラムまたはキネグラム(登録商標:Kinegram)から成っている。しかし、フィルム体2、又は架橋され配向された層に一体化された薄いフィルム層システムの光学可変エレメント24にその(コレステリック)液晶材料を設けることもできる。また、更なる光学可変エレメントをフィルム体2に一体化させることもでき、このようなエレメントは、太陽電池23、電子回路22およびディスプレイエレメント21の領域でフィルム体2に一体化されるのが好ましい。
【0029】
その上、セキュリティドキュメント1に、更なる光学的セキュリティ特性を持たせることもできる。従って、セキュリティ糸状体または透かし模様をキャリアに導入させるか、印刷11、12またはフィルム体2に、有効な顔料、例えば、液晶顔料、または干渉層顔料を含む印刷を設けることもできる。
【0030】
以下、フィルム体の詳細な構造を図3乃至図5cを参照してより詳細に説明する。
【0031】
図3は、数字5、電子回路22、太陽電池23、光学可変エレメント24の形態に形成されたディスプレイエレメント21を有する可撓性多層フィルム体2の平面図である。図3に示すように、このフィルム体2は、ディスプレイエレメント21、電子回路22、太陽電池23、電子回路22からディスプレイエレメント21および太陽電池23に導く電気接続部の領域および光学可変エレメント24の領域において不透明であり、残りの領域においては透明であり、この結果、この残りの領域おいては、観察者が印刷11のグラフィック構造を、視認することができる状態に構成されている。印刷25は、太陽電池23の領域でフィルム体2に印刷され、この結果、太陽電池23の光学的外観を、図1に示すように、印刷25によって変化させることができる。尚、このような印刷を省略することもできる。
【0032】
フィルム体2は、転写フィルム3の転写層配置を形成し、この転写フィルム3は、その一部が図4に示されていて、キャリアフィルム31、剥離層32およびフィルム体2を備えている。
【0033】
キャリアフィルム31は、10μm乃至100μmの厚さを有するPETフィルムを備え、更なる製造工程の過程でキャリアフィルムの歪みを最小化するためにこのフィルムを単軸又は二軸方向に引き伸ばすことができるようにすることが好ましい。従って、剥離層32は、キャリアフィルム31に設けられ、且つワックスのような材料から成っているのが好ましい。次いで、0.5μm乃至5μm、好ましくは、1μm乃至2μmの厚さを有するラッカー層33が印刷工程によって設けられる。この場合に、このラッカー層33は、透明な防護ラッカー層である。次いで、複製ラッカー層34がラッカー層33に設けられる。この複製ラッカー層34は、熱可塑性の又は架橋結合されたポリマーから成り、このポリマーには、回折構造が領域26および光学可変エレメント24の領域に熱および圧力下で複製工具によって複製される。この目的のために、例えば、熱可塑性の複製ラッカーが、インタリオ印刷スクリーンローラによって防護ラッカー層33に含まれる全表面領域に亘って設けられ且つ乾燥され、次いで、回折構造42がスタンピングダイによって上述の領域に埋め込まれる。
【0034】
複製ラッカーを構成するために、照射-架橋結合可能なラッカーを防護ラッカー層33に設けることもでき、次いで、回折構造42をUV複製によって複製ラッカー層に形成させることができる。
【0035】
次いで、光学分離層35が、電気的に制御されたディスプレイエレメント21の領域において、複製ラッカー層34に設けられる。この場合に、光学分離層35を、複製ラッカー層34とは著しく異なる屈折率を有するラッカー層に形成することができる。しかし、好ましくは、光学分離層35は、適当な誘電体、例えば、IiO2又はZnS(HRIのため)又はMgF2(LRIのため)のHRI又はLRI層(HRIは、高屈折率を示し、LRIは、低屈折率を示す)であることが好ましい。
【0036】
次いで、電極層36がフィルム体に設けられて構成されている。この場合に電極層36は、図3に示された数字‘5’の形態でディスプレイエレメント21の領域に形成され、透明な導電性材料、例えば、インジウムスズ酸化物又は導電性ポリマー、好ましくは、ポリアニリン又はポリピロールを備えている。しかし、電極層36を、きわめて薄く且つ少なくとも部分的に透明な層、例えば、金又は銀から形成させることもできる。
【0037】
この場合に、電極層36は、すでに形成されているときに、例えば、この電極層が導電ポリマーを備えている場合、印刷工程によって光学分離層35に設けられる。更に、電極層36が、その下方に配置されたフィルム体にその全表面領域に亘って設けられ、次いで、ポジ/ネガのエッチング又はレーザー吸収によってその一部の領域が除去され、この結果、この電極層36は、ディスプレイエレメント21の領域で図3に示された形態を有する。好ましくは、この場合に形成された電極層36は、ディスプレイエレメント21のための電極の機能を果たすばかりでなく、同時に、電子回路22および太陽電池23の電極層を形成し、且つディスプレイエレメント21、電子回路22および太陽電池23の対応する電極層間に導電通路(パス)を形成するために必要な構造を有する。
【0038】
この点について、もし、電極材料と複製ラッカーとの間の屈折率が全体的に高く又は薄い部分的に透明な材料層が電極層として用いられた場合には、ディスプレイエレメント21の領域における光学分離層35を省略することもできる。
【0039】
次いで、層37、38が、ディスプレイエレメント21の領域で電極層36に設けられる。次いで、電極層39が設けられ、この電極層は、電極層36を参照して述べられるように、表示されるべき情報の項目の形態、即ち、図3に示された数字‘5’の形態でディスプレイエレメント21の領域に形成される。この場合に、電極層39は、例えば、銅、銀、アルミニュウム又は金等の薄い反射金属層から成っている。二つの電極層36、39と二つの半導体層37,38とは、有機発光ダイオード(OLED)を形成し、電極層36は発光ダイオードのアノードを形成し、電極層39はそのカソードを形成している。この場合に、半導体層38,39は、印刷工程によって設けられるのが好ましい。更に、エレクトロルミネセントポリマー、例えば、PPV又はPOLY(9、9'フルオレンジオクチル)の一つの層のみがアノードとカソードとの間に約150nmの厚さで設けることができる。有機発光ダイオードおよびそれに用いられる材料に関するより詳細な情報については、例えば、WO90/13148を参照されたい。特に、層38乃至40をディスプレイエレメント21の領域に設けることによって、更なる電気的機能層を電子回路22および太陽電池回路23に設けることが有効となり、これらの更なる層は、太陽電池23および電子回路22の対応する機能を達成することができる。
【0040】
この場合に、太陽電池23は、有機太陽電池層の形態で実施されるのが好ましい。このような最も簡易な太陽電池は、例えば、透明電極層、例えば、電極層36と金属電極層、例えば、電極層39との間に配置されたPPV-ポリ(パラ-フェニレン-ビニレン)の共役ポリマーの層から成っている。この点についての有機半導体層の厚さは、通常、約10乃至100nmの範囲である。更に、一つまたは複数層を、電極間で太陽電池23の領域に配置することができ、これらの層は、ドナー分子およびアクセプター分子から成る。これらドナーおよびアクセプターは、太陽の光スペクトルに適合し、これによって、太陽電池の有効性を向上させることができる。ポリマー、顔料およびインクがドナーおよびアクセプターとして用いられ、これらは、この場合には、半導体ポリマーの上記単一層配置について太陽電池のエネルギー吸収スペクトルを改善する。このような太陽電池は、例えば、単一の顔料層、ドナーの層およびアクセプターの層(顔料/顔料;ポリマー/ポリマー)又はドナーとアクセプターとの混合(顔料/顔料;ポリマー/ポリマー又はポリマー/インク)から成る。更に、用いられる材料のためにフィルム体2に特に良好に一体化された上記有機太陽電池の代わりに、薄いフィルムシリコン太陽電池又はDSSC(染料増感太陽電池)を用いることができる。
【0041】
電子回路22の領域において、有機絶縁材料、例えば、ポリビニールフェノール、有機半導体、例えば、好ましくは、0.5μm乃至1μmの厚さを有するポリアニリン、ポリピロール、又はドープポリエチレンの如き、ポリシオフェンおよび/又は金属又は有機電極材料から成る複数の更なる構造層が形成された電極層36に設けられる。この場合に、これら材料は、液体、溶解又は懸濁の形態で適用され、次いで乾燥または他の態様で固化される。これらの層を設けると、一つ又は複数の電気部品、例えば、所望の作動、例えば、オッシレータの作動モードを行う有機トランジスタ、抵抗、コンデンサの電子回路22の領域での形成を行うことができる。
【0042】
光学可変エレメント24の領域において、反射層が回析リリーフ構造に設けられ、この回析リリーフ構造は、その領域で層34に複製される。この反射層は、薄い金属層、例えば、電極層39であるのが好ましい。しかし、光学分離層35を光学可変エレメント24の領域に設け、従って、半透明な光学可変エレメント24を形成することができる。
【0043】
次に、防護ラッカー層40および接着層41が上述のように製造され且つ複数の異なる構造層から作られたフィルム体に設けられる。接着層41は、熱活性又は放射-架橋可能な接着剤から成る層であるのが好ましい。
【0044】
更に、回析構造を有する複製ラッカー層34を、ディスプレイエレメント21の電気機能層の上方でなく、下方に配置させることもできる。
【0045】
図4bは、キャリアフィルム31、剥離層32、防護ラッカー層33、透明な電極層36、エレクトロルミネセント38および電極層39を有する転写フィルム4を示す。この場合に、エレクトロルミネセントポリマー層は、二つ以上の層又は複数の材料の混合物を有する層システムを含むことができる。ここでの電極層39は、構成される反射金属層ではないが、透明な導電材料、例えば、インジウムスズ酸化物から成る層又は透明に見える格子状の材料層である。次いで、複製ラッカー層34は、透明電極層39に設けられ、回析構造42は、複製ラッカー層34に形成される。次いで、反射層43、好ましくは、反射金属層又は反射増大層、例えば、図4の層35が層34に設けられる。このような方法で、ディスプレイエレメント21は、キャリア10に形成された透明な窓に配置される限り、セキュリティドキュメントの前側の方向および後側の方向の両方に光を放出することができる
次いで、図4aに示された接着層41が設けられる。
【0046】
図4bの実施例では、ディスプレイエレメント21の領域に設けられた回析構造と光学可変エレメントの領域に設けられた回析構造との両方が複製ラッカー層34に形成されており、この結果、複製ラッカー層34が、ディスプレイエレメント21、電子回路22および太陽電池23の電気機能層を含んだ全表面領域に亘って被覆してそれらを操作から保護するのが好ましい。
【0047】
ディスプレイエレメントの領域26に形成された回析構造は、回析パターン、例えば、ホログラム又はキネグラムを発生する構造であるのが好ましい。エネルギがディスプレイエレメント21を形成する有機発光ダイオードに供給されると、ホログラム/キネグラムが、層38又は層38、39のそれぞれのエレクトロルミネセントポリマーの合成によって定められるカラーで発光する。この点について、図4aに示された実施例では、層34、35間の屈折率のわずかな相違を調節することによって、ディスプレイエレメント21を形成する有機発光ダイオードにエネルギが供給されたときのみ、ホログラム/キネグラムが視認できるように設定させることができる。
【0048】
更に、ディスプレイエレメント21の領域に、光学回析効果を有し且つ有機発光ダイオードによって発光された光の発光特性に厳密に且つ本質的に影響を与える構造を形成することができる。従って、その領域26に有機発光ダイオードによって発光された光を所望方向に偏向する発光格子を形成することができる。このようにして、通常の観察方向からみたとき、ディスプレイエレメントをきわめて強く発光させることができ、セキュリティドキュメントが180度回転されるとき、ディスプレイエレメントを弱く発光させることができる。この点において、所望の発光特性を達成するために、屈折および回析エレメントをディスプレイエレメントの領域で共に結合させることができる。
【0049】
更に、図4aおよび図4bの実施例では、電気機能層上に形成された回析構造を有する複製ラッカー層および電気機能層下に形成された回析構造を有する複製ラッカー層の両方を共に結合してフィルム体2に設けることができる。この構造は、操作から保護するレベルを高める。更に、この構造は、特に、透光モードで観察するとき、有益な効果を生じさせる可能性を提供する。従って、観察者が見る回析構造の異なる形態によって、セキュリティドキュメント1の前側およびその後側の方向でキャリア10の透明な窓の領域に配置されたとき、ディスプレイエレメントの光学的外観が異なることを示すことができる。
【0050】
更に、二つの互いに重ね合わされた有機発光ダイオードを、キャリア10の透明な窓の領域でフィルム体2に設けることができ、それらダイオードの一つは、セキュリティドキュメントの前側の方向に発光し、他のダイオードは、セキュリティドキュメントの後側の方向に発光する。このように、電気制御の下で、セキュリティドキュメントの前側および後側の方向で異なる観察印象を達成することができる。
【0051】
更に光学的効果を発揮させるために、二以上の互いに並列に配置され別個に起動可能な有機発光ダイオードをディスプレイエレメント26の領域に配置させることができる。従って、個別に起動可能な有機発光ダイオードを、例えば、フラグまたは数字‘100’の形態に配置させることができ、この結果、フラグおよび数字‘100’は、三つの異なる色で発光する。
【0052】
ディスプレイエレメント21として有機発光ダイオードを用いる他に、ディスプレイエレメント21としてエレクトロクロミックエレメントを設けることができる。このようなエレクトロクロミックエレメントは、電圧が印加されると直ちにその色を変化させる。ディスプレイエレメント21の構造とエレクトロクロミックエレメントの用途とは、図4cを参照して例示が後述される。
【0053】
図4cは、キャリアフィルム31、剥離層32および転写層配置50を備える転写フィルム5を示す。転写層構造50は、図4aに示されるように、防護ラッカー層33と、回析構造42が形成された複製ラッカー層34と、光学分離層34と、防護層40(必要なら)と、接着層41とを有する。ディスプレイエレメント21の領域で光学分離層35と防護ラッカー層40との間には層51乃至55が図3に示された形態で構成された互いに重ねられた関係に設けられてエレクトロクロミックエレメントを形成する。これら層51乃至55は、透明な導電性電極層であり、例えば、図4aに示された電極層36に関して述べられた材料が用いられる。中央層53は、ポリマー電解質または含水金属酸化物から成っている。中央層に接続する層52、54は、電気化学層またはイオン包含層から成る。用いられたエレクトロクロミックポリマーは、例えば、ポリ(3、4-エチレン二酸化チオフェン)、ポリ(スチレンスルホン酸)PSSを有するPEDOTから形成することができ、これによって、透明な状態からダークブルーの状態に色を変化させることができる。イオン包含層として、例えば、ナノ結晶チタン酸化層を用いることができる。更に、着色が異なり且つ充電が異なる粒子が二つの電極層間に移動可能に配置される層構造の態様になるように二つのディスプレイエレメント21を選択することができ、これによって一方の粒子または他方の粒子の集中を、対の電極への電圧の印加によって一方の電極の方向に又は他方の電極の方向に変えることができる。この種のディスプレイエレメントをディスプレイエレメントに使用することを示す実施例が、図4dに示されている。
【0054】
図4dは、キャリアフィルム31、剥離層32、および転写層配列60を有する転写フィルム6を示す。転写層配列60は、図4aに示されるように、防護ラッカー層33と、回析構造42が形成された複製ラッカー層34と、光学分離層35と、防護ラッカー層40と、接着層41とを有する。ディスプレイエレメント21の領域で層35と層40との間には図3に示された形態で電極層61、66が設けられ、更には、マイクロカプセル63を有する重ねられた層62が設けられ、このマイクロカプセルは、それぞれ黒で着色され正に充電された粒子64と白で着色され負に充電された粒子65とを含む。電極層61、66は、透明な導電材料、例えば、図4aの電極層36に関して述べられた材料の一つから成っている。マイクロカプセル63は、100μmより小さい直径を有するのが好ましい。それらは、それぞれが正、負に充電された粒子64、65が自由に移動できるように透明流体と共に充填される。従って、電極61、66のそれぞれの充電に基づいて、マイクロカプセルの頂部は、白に見え、下側は黒に見える。これらの逆もまた同様である。
【0055】
更に、層61と層66との互いの間隔を複製ラッカー層34によって形成するようにした支持構造を設けることが有益であり、この支持構造の領域において複製ラッカー層34は、マイクロカプセルの直径の領域における厚さ(例えば、80μm)を有する。好ましくは、この種のリリーフ形状はUV複製によって複製ラッカー層34に導入される。
【0056】
マイクロカプセルの用途の代わりに、ここでは、層62のマイクロ構造によって人間の眼の解像度以下のマイクロスフェア(マイクロ単位の微粒子)を形成することもできる。既に上述された正負に充電された粒子64、65は、それぞれマイクロスフェアに形成される。この点について、これら粒子が白、黒、例えば二色のコントラスト色に着色される必要はなく、この結果、印加される電圧に応じて着色印象を変化させることもできる。
【0057】
また、ディスプレイエレメント21のために、液晶をベースとしたディスプレイエレメントを用いることもできる。好ましくは、ここでは、黒の背景を用いるとき、黒の状態と着色状態との間の色変化を示す双安定のコレステリックLC材料が用いられる。この種のディスプレイがポラライザー(偏光子)を必要としないので、好ましく構成されたITO層が電極層として用いられる。この層の厚さ、例えば、15μmを制御するために、構成された間隔層が二つの電極層の間に設けられ、次いで、この間隔層にコレステリックLC材料が導入される。この場合に、コレステリック材料は、例えば、メルク社からのE7を重量比で60%、CE2を10%、CB15を20%含み、次いで、UV架橋モノマー、例えば、ノーランド社からのNOA65を用いて85:15の比で混合される。
【0058】
更に、図4bを参照して述べられた設計変更を、図4cおよび図4dの実施例、更には、フィルム体2における液晶系のディスプレイエレメントの配列に施すこともできる。
【0059】
更に、図4aまたは図4bに示された回析構造42を、太陽電池23の領域に配置させることもできる。一方、そのような方法でフィルム体の光学的外観が、例えば、ホログラムの重ね合わせによって太陽電池の領域において影響され得る。また、その方法で、太陽電池23への光の供給および太陽電池23の効率に影響を与えることができる。従って、例えば、マット構造を、太陽電池23の領域で図4bに示された複製ラッカー層34に形成させ、これによって、その領域における太陽電池の効率を改善することができる。この場合に、機能構造は光学可変エレメントの設計の一部とすることができ、マット構造は、例えば、フィリグリー(金銀線細工)組ひも飾りパターンを呈する光学可変エレメントの背景領域を形成することができる。ここで、組ひも飾りパターンのフィリグリー線は、太陽電池23の表面領域の僅かな部分のみを占め、従って、太陽電池23のエネルギ効率にほとんど影響を与えることはない。この場合に、組ひも飾りパターンは、フィルム体2に刷り重ねることによって実施化されることが好ましい。
【0060】
更に、リリーフ構造42についての適切な構造は、図5a乃至図5cを参照して後述される如き、太陽電池の方向に太陽電池を囲む表面領域からの光を供給する可能性を提供する。
【0061】
図5aは、電気的に制御されたディスプレイエレメント71と、電子回路72と、太陽電池を有する導光領域73とを含むフィルム体70を示している。
【0062】
このフィルム体70は、図4aおよび図4bに示された如く作られた転写フィルム7の転写層配列を形成し、この転写層は、キャリアフィルム74と、剥離層75と、フィルム体70を形成する転写層配列とを備えている。太陽電池を有する導光領域73において、フィルム体70は、防護ラッカー層76と、リリーフ構造84が形成された複製ラッカー層71と、光学分離層78と、リリーフ構造85が形成された第二の複製ラッカー層82と、第二の光学分離層83とを有する。導光領域における二つのリリーフ構造84、85間には間隔層86が設けられ、中央領域には有機太陽電池エレメント87が設けられ、この有機太陽電池エレメントは、図4aについて既に述べられ、且つ二つの電極層79、81とこれらの間に配置された光活性層80とを備えている。この点について、光活性層80を単一層または多層システムに形成することができる。
【0063】
もし、光学間隔層86が複製ラッカー層71の材料の屈折率と著しく異なる屈折率を有する材料から成る場合、光学分離層78を省略することができる。この光学分離層83は、反射層、例えば、全領域不透明金属層から成っているのが好ましい。
【0064】
図5aおよび図5bに示すように、太陽電池エレメント87を囲む領域に入射する光は、リリーフ構造の84、85の図5bに示された特定の構造のために、有機太陽電池エレメント87の方向に、リリーフ構造84、85によって案内され、この結果、そのエレメントに供給された放射エネルギが増大する。供給領域の適当な寸法によって、ここでは、太陽電池エレメント87を、反射光学可変エレメント、例えば、キネグラムによってパターンを有する全表面領域又は全表面領域に亘って印刷させることができる。更に、光供給リリーフ構造84および/又は85を、回析像を発生するリリーフ構造で重ね合わせることができる。従って、結果として生ずる構造は、光を太陽電池エレメント87に供給する機能と観察者に更なるセキュリティ特性として作用させる光学可変効果の発生とを提供する。
【0065】
リリーフ構造84又は85の一つを省略して一つのリリーフ構造によって光供給を実施させるか又は太陽電池の効果を向上させることもできる。例えば、リリーフ構造85のみを設けることができ、そのため、マット構造、光沢、交差格子の形態になるように構成することができる。
【0066】
また、図3乃至図5cを参照して述べられた光学活性回析構造および電気機能層の結合を、このような層の重ね合わせでなく、このような層がモザイクの態様で且つ互いに密に織り合わされた態様で互いに並列関係で配列されることによって、実施させることもできる。
【0067】
低い発光レベルを有するセキュリティドキュメント1の観察者に与える印象を、図6aを参照しておよび輝く発光を有するセキュリティドキュメントのそれを、図6bを参照して述べることにする。
【0068】
図6aは、ディスプレイエレメント21と、電子回路22と、一部に印刷された太陽電池23と、光学可変エレメント24とを有するセキュリティドキュメント1を示す。数字‘1’および‘2’は、緑色で印刷されている。数字‘5’の形態で形成され且つ有機発光ダイオードの形態で実施されたディスプレイエレメント21は、起動されないとき、青色で発光する。領域26において、上述されたディスプレイエレメント21の領域に配列された光学可変エレメントは、有機発光ダイオードの非起動状態でも視認することができる。
【0069】
太陽電池23が照明されたとき、有機発光ダイオードが起動され、この有機発光ダイオードは、図6bに示す如く、数字‘5’が赤で発光するように赤い光を発する。ここで、数字‘5’がフラッシュするように電子回路22が有機発光ダイオードを起動させることもできる。しかし、上述したように、電子回路22を省略して太陽電池23を有機発光ダイオードに直接接続することもできる。
【0070】
図7aおよび図7bは、図3乃至図5cに示された通り設計されたセキュリティドキュメント9の光学的外観を示している。
【0071】
図7aは、三つの別個に起動されるエレクトロクロミックエレメント91、92、93と、電子回路95と、太陽電池96と、光学可変エレメント98とから形成されたディスプレイエレメントを有するセキュリティドキュメント9を示している。これらのエレメントは、可撓性のフィルム体90に一体化され、このフィルム体は、上述の如く、転写フィルムによってセキュリティドキュメント9の印刷されたキャリアに設けられている。
【0072】
ここで、太陽電池は、フランスの国の形状に形成され且つセキュリティドキュメント9の設計エレメントを形成する。太陽電池96は、更に光学可変エレメント97、キネグラムによって重ね合わされる。また、このようなキネグラムは、ディスプレイエレメント91の領域に配置されてディスプレイエレメント91と太陽電池96との両方を覆う。
【0073】
低レベルの照明では、エレクトロクロミック91、92、93は、起動されず全て同じ青色に見える。
【0074】
輝く照明では、エレクトロクロミック91、92、93は、起動されて図7bに示すように異なった色に見える。
【0075】
この点について、一つまたはそれ以上のエレメント91乃至93を、エレクトロクロミックエレメントの形態でなく、有機発光ダイオードの形態にさせ、この結果、例えば、数字‘5’が輝く照明では、赤にフラッシュすることができるようにする。
【0076】
図8aおよび8bは、セキュリティドキュメント100の光学的外観を示し、ここで、図8aは、セキュリティドキュメント100の前側の一部を示し、図8bは、その後側の一部を示す。
【0077】
図8aに示すように、セキュリティドキュメント100のキャリアには多層可撓性フィルム体101が設けられ、この多層可撓性フィルム体は、太陽電池104と、電子回路105と、透明な窓101の領域に配置されたディスプレイエレメントとを有し、この透明な窓は、セキュリティドキュメント100のキャリアの外側で楕円形状にスタンプされている。この場合に、ディスプレイエレメントは、図4bに示された構造を有し、ここで、電極層61、66は、それぞれ二対の電極を備えている。一対の電極は、文字‘$’の形態であって、一つの領域103に設けられ、他の対の電極は、包囲領域102の形態に形成されている。
【0078】
この場合に、太陽電池104は、光学可変エレメント106、好ましくは、キネグラムで重ね合わされる。今、セキュリティドキュメント100が照明されたとき、ディスプレイエレメントの対の電極は、逆に分極された電圧を含み、この結果、図8aに示された視覚印象は、セキュリティドキュメントの前側に付与され、図8bに示された視覚印象は、その後側に付与される。
【0079】
電子回路105は、通常の場合には二対の電極の極性を変化し、この結果、文字‘$’は、ダーク背景に対して白に又は白の背景に対してダークに交互に見える。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るセキュリティエレメントの線図。
【図2】図1のセキュリティドキュメントを実際の寸法でない状態で示す概略断面図。
【図3】図1のセキュリティドキュメントのための多層可撓性フィルム体の図。
【図4a】図3のフィルム体の断面図。
【図4b】図3のフィルム体の変形例を実際の寸法でない状態で示す線図。
【図4c】図3のフィルム体の変形例を実際の寸法でない状態で示す線図。
【図4d】図3のフィルム体の変形例を実際の寸法でない状態で示す線図。
【図5a】図3のフィルム体の変形例を実際の寸法でない状態で示す線図。
【図5b】図3のフィルム体の変形例を実際の寸法でない状態で示す線図。
【図5c】図3のフィルム体の変形例を実際の寸法でない状態で示す線図。
【図6a】図1のセキュリティドキュメントを種々の発光状態で示す図。
【図6b】図1のセキュリティドキュメントを種々の発光状態で示す図。
【図7a】本発明に係る更なるセキュリティドキュメントを種々の発光状態で示す図。
【図7b】本発明に係る更なるセキュリティドキュメントを種々の発光状態で示す図。
【図8a】本発明の更なる実施例に従って、本発明に係る更なるセキュリティドキュメントの前側の一部を示す図。
【図8b】図8aに示された本発明に係るセキュリティドキュメントの後側の一部を示す図。
【符号の説明】
【0081】
1 セキュリティドキュメント
2 フィルム体
10 キャリア
21 ディスプレイエレメント
24 回析構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア(10)と、該キャリアに設けられて一つまたはそれ以上の光学セキュリティ特性を形成する多層可撓性フィルム体(2、70、90、101)とを備える、特に、紙幣又は身分カードのセキュリティドキュメントであって、前記多層フィルム体(2、70、90、101)は、光学的に活性な回析構造(24、42,84,85,96,98,106)と結合してディスプレイエレメントを作動するための電流源(23、73、96、104)と組み合わされて光学セキュリティ特性を発生させる電気的に制御されたディスプレイエレメント(21、71、91、92、93、102、103)を有することを特徴とするセキュリティドキュメント。
【請求項2】
前記回析構造(42)および/又はマイクロ構造が電気的に制御されたエレメント(21、91)と重ねられた関係で少なくとも一部に配置され、前記回析構造(42)および/又はマイクロ構造によって形成された光学効果の光学的外観は、電気的に制御されたディスプレイエレメントによって制御されることを特徴とする請求項1記載のセキュリティドキュメント。
【請求項3】
前記電気的に制御されたディスプレイエレメントは、発光ディスプレイエレメントであり、前記回析構造は、ディスプレイエレメントの発光特性を変更することを特徴とする請求項1又は2記載のセキュリティドキュメント。
【請求項4】
前記回析構造(84、97、106)は、前記電流源(73、96、104)と重なる関係で少なくとも一部に配置されていることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項5】
前記電流源(23、73、96、104)が太陽電池であることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項6】
前記回析構造(84、85)および/又はマイクロ構造は、太陽電池(87)を囲む表面領域から太陽電池へ光を供給するかまたは太陽電池の効率を増大することを特徴とする請求項5に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項7】
光を太陽電池へ供給する回析構造は、光学的に認識可能なセキュリティ特性を形成することを特徴とする請求項6記載のセキュリティドキュメント。
【請求項8】
前記太陽電池(96)は、パターンまたは像の形態に形成され且つキャリアの包囲印刷設計と正確に整合する関係で配置されていることを特徴とする請求項5乃至7の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項9】
前記太陽電池(23)は、部分的にパターン形態で刷り重ねられていることを特徴とする請求項5乃至8の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項10】
前記回析構造は、ディスプレイエレメントに隣接して配置されていることを特徴とする請求項1記載のセキュリティドキュメント。
【請求項11】
前記可撓性多層フィルム体およびセキュリティドキュメントの隣接領域には共通の実質的に不透明な刷り重ねがパターン形態で設けられていることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項12】
前記パターン形態の刷り重ねは、特性を有する情報を含んでいることを特徴とする請求項11に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項13】
前記ディスプレイエレメントは、パターン形態で部分的に刷り重ねられ、該刷り重ねは、好ましくは、特性を有する情報を含んでいることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項14】
前記ディスプレイエレメントには、レーザー除去によって特性を有する情報が設けられることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項15】
前記ディスプレイエレメント(21、71)は、パターン又は数の形態に形成された有機発光ダイオードを有することを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項16】
前記ディスプレイエレメントは、パターン又は数の形態に形成されたエレクトロクロミックエレメント(91、92、93)を有することを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項17】
前記ディスプレイエレメントは、二つの電極層(61、66)間に配置された色が異なり且つ充電が異なる複数の粒子(64、65)を有することを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項18】
前記セキュリティドキュメントは、透明な窓(101)を有し、ディスプレイエレメント(102、103)は、前記透明な窓に配置されていることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項19】
前記回析構造は、少なくとも一部が電子回路上に配置され、前記電子回路は、有機半導体エレメントから成り且つディスプレイエレメントを制御することを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項20】
前記多層フィルム体は、バッテリー又はエネルギ蓄積のためのキャパシタを有することを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項21】
前記可撓性多層フィルム体(2,4,5,6,7)は、光学回析セキュリティ特性を生ずるように形成された光学回析リリーフ構造(42)を有する複製ラッカー層と、電気的に制御されたディスプレイエレメントの二つ以上の電気的機能層とを有することを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項22】
前記多層フィルム体は、有機半導体材料から成る少なくとも一つの電気機能層を有することを特徴とする請求項18に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項23】
前記キャリア(10)は、ペーパー材料から成ることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項24】
前記多層フィルム体(2、30、60、70)は、転写フィルム(3、4、5、6、7)の転写層配置としてキャリアに設けられることを特徴とする前記請求項の一つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項25】
一つまたはそれ以上の光学セキュリティ特性を形成する多層可撓性フィルム体(2、30、60、70)をセキュリティドキュメント、特に紙幣または身分カードのキャリア(10)に形成し且つキャリアフィルム(31、74)と前記多層フィルム体(2、30、60、70)を形成する転写層配列とを有する転写フィルム(3、4、5、8、7)であって、前記多層フィルム体(2、30、60、70)は、光学的に活性な回析構造(24、42,84,85,96,98,106)と結合してディスプレイエレメントを作動するための電流源(23、73、96、104)と組み合わされて光学セキュリティ特性を発生する電気的に制御されたディスプレイエレメント(21、71、91、92、93、102、103)を有することを特徴とする転写フィルム(3,4,5,6,7)。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2008−513861(P2008−513861A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531673(P2007−531673)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009920
【国際公開番号】WO2006/029857
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】