説明

電気的エネルギーを生成するための蒸気発電設備

【課題】高温に適しており、かつ、比較的有利に建設することができる蒸気発電設備を開示すること。
【解決手段】本発明は、バイパス導管(12)を有する蒸気発電設備(1)に関する。前記バイパス導管は、生蒸気導管(5)を排気導管(6)と流体的に連結し、前記バイパス導管(12)内には、バイパス蒸気冷却器(20)が配置されており、前記バイパス蒸気冷却器は、緊急停止、運転開始、または運転終了に際して、前記バイパス導管(12)内を流れる蒸気を冷却し、それによって、前記バイパス導管(12)のために、より安価な材料を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的エネルギーを生成するための蒸気発電設備に関する。当該蒸気発電設備は、蒸気タービン、蒸気発生器、復水器、蒸気タービンと蒸気発生器とを流体的に連結する生蒸気導管、蒸気タービンと復水器とを流体的に連結する排気導管、および生蒸気導管と排気導管とを流体的に連結するバイパス導管を有する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発電設備においては、熱エネルギーが力学的エネルギーに変換され、最終的に電気的エネルギーに変換される。水蒸気は蒸気発生器から蒸気タービンなどの膨張機に流入し、蒸気は蒸気タービンにおいて運動出力下で膨張する。蒸気タービンから流出する蒸気は、下流の復水器において、熱吸収を通じて再び液化される。復水器内で生じた水は、給水ポンプによって再び蒸気発生器に搬送され、それによって密閉サイクルが成立する。
【0003】
稼動状態において、蒸気発生器から流出した蒸気は蒸気タービンに流入する。このとき、当該蒸気は冷却される。蒸気圧は減少する。蒸気タービンから流出した蒸気は、復水器に供給される。運転開始、運転終了、または蒸気タービンの緊急停止に際して、蒸気タービンの上流に配置された生蒸気弁は閉止し、当該生蒸気はバイパス導管を通過する。当該バイパス導管は、蒸気タービンの排気導管に合流する。一般的に、排気導管は、再熱器に合流している場合には、低温再熱器導管と称される。当該再熱器内では、蒸気がより高い温度に加熱される。蒸気の温度が高くなればなるほど、導管、バイパス装置、および復水器へのバイパス蒸気注入に関する費用は高くなる。蒸気温度が約720℃に達するように試みられる。このような高い温度を得るためには、ニッケルベースの材料など、特別な材料を用いる必要がある。ニッケルベースの材料とは、ニッケル含有量が約40重量%〜50重量%の材料である。しかしながら、このようなニッケルベースの材料は、比較的高価である。他方で、ニッケルベースの材料には、特に高い熱的負荷を与えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニッケルベースの材料よりも有利な材料を用いることが望ましい。この点から出発して、本発明は、高温に適しており、かつ、比較的有利に建設することができる蒸気発電設備を開示することを課題として設定している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、電気的エネルギーを生成するための蒸気発電設備によって解決される。当該蒸気発電設備は、蒸気タービン、蒸気発生器、復水器、蒸気タービンと蒸気発生器とを流体的に連結する生蒸気導管、蒸気タービンと復水器とを流体的に連結する排気導管、および生蒸気導管と排気導管とを流体的に連結するバイパス導管を有する。バイパス導管には、バイパス蒸気冷却器が設けられており、当該バイパス蒸気冷却器は、バイパス導管内を流れる蒸気またはバイパス導管内に停滞する蒸気を冷却するために形成されている。
【0006】
バイパス蒸気冷却器で蒸気を冷却することによって、冷却器の下流の部材を、ニッケルベースの材料を用いずに形成することができる。バイパス蒸気冷却器の下流に配置された導管は冷却されるので、バイパス導管にかかる熱的負荷はより小さくなる。熱的負荷がより小さくなることによって、高価なニッケルベースの材料を用いる必要はなくなる。
【0007】
排気導管は、再熱器に合流している限りにおいて、低温再熱器導管とも称される。当該再熱器内では、蒸気がより高い温度に加熱される。
【0008】
有利なさらなる構成は、従属請求項に記載されている。
【0009】
バイパス蒸気冷却器内の蒸気を、凝縮液、蒸気、または水と蒸気との混合物などの冷却媒体を吹き付けることによって冷却すると有利である。蒸気発電設備において、凝縮液、または水と蒸気との混合物を用いることは比較的容易である。これらの冷却媒体は、蒸気発電設備内において利用可能だからである。それによって、追加的に用いる導管は最小限に抑えられる。
【0010】
バイパス蒸気冷却器は、生蒸気導管からバイパス導管への第1の分岐点のすぐ下流に配置されていると有利である。バイパス蒸気冷却器は、第1の分岐点の下流で、可能な限り当該分岐点の近くに配置されると理想的である。それによって、蒸気発電設備の建設費用がさらに削減されるという利点がある。高価なニッケルベースの材料を用いることが回避されるからである。バイパス蒸気冷却器が、生蒸気導管からバイパス導管への第1の分岐点の近くに配置されていればいるほど、当該第1の分岐点とバイパス蒸気冷却器との間で必要とされるニッケルベースの材料は少なくなる。
【0011】
さらなる有利な構成において、バイパス蒸気冷却器と高圧バイパス弁との間の距離は、冷却媒体が蒸気と完全に混合されるように選択される。
【0012】
冷却媒体を蒸気と完全に混合することによって、バイパス導管が効果的に冷却され、したがって、蒸気発電設備建設時の費用をさらに削減できる。バイパス導管に用いるニッケルベースの材料がより少なくてすむからである。以下に、本発明を図を基に詳細に説明する。図は一部概略的であり、縮尺に従ってはいない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術に係る蒸気発電設備の図である。
【図2】本発明に係る蒸気発電設備の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
異なる図中の同一の参照符号は、同一の意味を有している。
【0015】
図1には、従来技術に係る蒸気発電設備1が示されている。蒸気発電設備1は、蒸気発生器2と蒸気タービン3とを有している。蒸気タービン3は、高圧部分タービン3a、中圧部分タービン3b、および低圧部分タービン3cと、復水器4とを有する。さらに、生蒸気導管5が設けられている。生蒸気導管5は、蒸気タービン3を蒸気発生器2と流体的に連結する。蒸気タービン3の下流には、排気導管6が配置されている。排気導管6は、蒸気タービン3を復水器4と流体的に連結する。高圧部分タービン3aと復水器4との間には、再熱器7が設けられている。再熱器7に流入する蒸気は、より高い温度に加熱され、高温再熱器導管8を通じて、中圧部分タービン3bに搬送される。排気導管6は、低温再熱器導管9とも称される。蒸気タービン3の上流には、急速閉止および制御弁10が配置されている。中圧部分タービン3bの上流にも、急速閉止および制御弁11が配置されている。生蒸気導管5は、バイパス導管12を介して、排気導管6もしくは低温再熱器導管9と流体的に連結されている。バイパス導管12には、高圧バイパス弁13が配置されている。
【0016】
高温再熱器導管8は、中圧バイパス導管14を介して、復水器4と流体的に連結されている。中圧バイパス導管14には、中圧バイパス弁17が配置されている。運転開始、運転終了、または蒸気タービン3の緊急停止に際して、蒸気は、生蒸気導管5からバイパス導管12を経由して、低温再熱器導管9に搬送される。そのために、急速閉止および制御弁10が閉止され、高圧バイパス弁13が開放される。バイパス導管12に流入する生蒸気の温度は比較的高いので、当該蒸気には、低温再熱器導管9に流入する前に、冷却ユニット16において冷却媒体15が吹き付けられる。続いて、当該蒸気は、再熱器7、高温再熱器導管8を経由して中圧バイパス導管14の方へ案内され、復水器4内に搬送される。そのために、急速閉止および制御弁11が閉止され、中圧バイパス弁17が開放される。中圧バイパス弁17の下流で、蒸気には再び冷却ユニット19において冷却媒体18が吹き付けられ、それによって、復水器はエネルギー量を受容することができる。蒸気の温度と圧力とは比較的高いので、生蒸気導管5、バイパス導管12、高温再熱器導管9、および中圧バイパス導管14は、再熱器7の圧力および温度に耐え得るように設計されなければならない。蒸気の温度が高くなればなるほど、導管5、12、9、8、1、弁17、13、および冷却ユニット16、19にかかる費用は高くなる。
【実施例1】
【0017】
図2には、本発明に係る蒸気発電設備1が示されている。図1に示された蒸気発電設備1との違いは、バイパス導管12および中圧バイパス導管14に、バイパス蒸気冷却器20もしくは中圧バイパス蒸気冷却器21が配置されているという点にある。バイパス蒸気冷却器20および中圧バイパス蒸気冷却器21は、バイパス導管12および中圧バイパス導管14内を流れる蒸気または停滞する蒸気を冷却するために形成されている。バイパス蒸気冷却器20および中圧バイパス蒸気冷却器21を用いて、凝縮液、蒸気、または水と蒸気との混合物が、流れる蒸気または停滞する蒸気の中に吹き込まれる。したがって、流れる蒸気または停滞する蒸気の温度は低下する。蒸気内に供給された冷却媒体22は、当該蒸気を冷却する。バイパス導管12および中圧バイパス導管14への冷却媒体22の吹き付け装置は、可能な限り第1の分岐点23の近く、もしくは第2の分岐点24の下流に配置した方が良い。バイパス蒸気冷却器20と高圧バイパス弁13との間の距離は、蒸気が冷却媒体22と完全に混合されるように選択される。また、中圧バイパス蒸気冷却器21と中圧バイパス弁17との間の距離は、蒸気が冷却媒体22と完全に混合されるように選択される。
【0018】
生蒸気のパラメータが適切な値を有している場合、冷却ユニット16もしくは19を省略しても良い。そのためには、生蒸気の質量流量、圧力、および温度と、水の注入量と、温度とが許容値でなければならない。バイパス蒸気冷却器20および中圧バイパス蒸気冷却器21は、バイパス弁13および中圧バイパス弁17が開放されるとすぐに、オンにされる。それによって、冷却されたバイパス導管25もしくは26における、許容できない温度超過が効果的に回避される。
【0019】
バイパス弁13が閉止するとすぐに、バイパス蒸気冷却器20の上流の温度が、導管25における許容温度を下回るまで、バイパス蒸気冷却器20が稼動する。排水溝または予熱導管が、冷却されたバイパス導管25および26に配置される限りにおいて、当該バイパス導管は、バイパス蒸気冷却器20および中圧バイパス蒸気冷却器21の上流の温度が、冷却された導管25もしくは26における許容温度を下回るまで、閉止されたままでいなければならない。
【符号の説明】
【0020】
1 蒸気発電設備
2 蒸気発生器
3 蒸気タービン
3a 高圧部分タービン
3b 中圧部分タービン
3c 低圧部分タービン
4 復水器
5 生蒸気導管
6 排気導管
7 再熱器
8 高温再熱器導管
9 低温再熱器導管
10 急速閉止および制御弁
11 急速閉止および制御弁
12 バイパス導管
13 高圧バイパス弁
14 中圧バイパス導管
15 冷却媒体
16 冷却ユニット
17 中圧バイパス弁
18 冷却媒体
19 冷却ユニット
20 バイパス蒸気冷却器
21 中圧バイパス蒸気冷却器
22 冷却媒体
23 第1の分岐点
24 第2の分岐点
25 バイパス導管
26 バイパス導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的エネルギーを生成するための蒸気発電設備(1)であって、
蒸気タービン(3)、蒸気発生器(2)、復水器(4)、前記蒸気タービン(3)と前記蒸気発生器(2)とを流体的に連結する生蒸気導管(5)、前記蒸気タービン(3)と前記復水器(4)とを流体的に連結する排気導管(6)、および前記生蒸気導管(5)と前記排気導管(6)とを流体的に連結するバイパス導管(12)を有する蒸気発電設備(1)において、
バイパス蒸気冷却器(20)が前記バイパス導管(12)内に設けられており、前記バイパス蒸気冷却器は、前記バイパス導管(12)内を流れる蒸気を冷却するために形成され、
前記バイパス蒸気冷却器(20)は、前記生蒸気導管(5)から前記バイパス導管(12)への第1の分岐点(23)のすぐ下流、かつ前記バイパス導管(12)内に設けられた高圧バイパス弁(13)の上流に配置されていることを特徴とする蒸気発電設備(1)。
【請求項2】
前記蒸気タービン(3)は、高圧部分タービン(3a)、中圧部分タービン(3b)、および低圧部分タービン(3c)を有することを特徴とする請求項1に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項3】
再熱器(7)を有し、
低温再熱器導管(9)が設けられており、前記低温再熱器導管は、前記高圧部分タービン(3a)の蒸気排出口を前記再熱器(7)と流体的に連結しており、
前記バイパス導管(12)は、前記生蒸気導管(5)を前記低温再熱器導管(9)と流体的に連結していることを特徴とする請求項2に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項4】
高温再熱器導管(8)を有し、
前記高温再熱器導管は、前記再熱器(7)を前記中圧部分タービン(3b)と流体的に連結しており、
中圧バイパス導管(14)が設けられており、前記中圧バイパス導管は、前記高温再熱器導管(8)を前記復水器(4)と流体的に連結しており、
中圧バイパス蒸気冷却器(21)が前記中圧バイパス導管(14)に設けられており、前記中圧バイパス蒸気冷却器は、前記中圧バイパス導管(14)を流れる蒸気を冷却するために形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項5】
高圧バイパス弁(13)が前記バイパス導管(12)内に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項6】
中圧バイパス弁(17)が前記中圧バイパス導管(14)内に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項7】
前記バイパス蒸気冷却器(20)内の蒸気を、凝縮液、蒸気、または水と蒸気との混合物などの冷却媒体(22)を吹き付けることによって冷却することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項8】
前記中圧バイパス蒸気冷却器(21)内の蒸気を、凝縮液、蒸気、または水と蒸気との混合物などの冷却媒体(22)を吹き付けることによって冷却することを特徴とする請求項4に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項9】
前記中圧バイパス蒸気冷却器(21)は、前記高温再熱器導管(8)から前記中圧バイパス導管(14)への第2の分岐点(24)のすぐ下流に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項10】
前記バイパス蒸気冷却器(20)と前記高圧バイパス弁(13)との間の距離は、前記冷却媒体(15)が蒸気と完全に混合されるように選択されることを特徴とする請求項5または6に記載の蒸気発電設備(1)。
【請求項11】
前記中圧バイパス蒸気冷却器(21)と前記中圧バイパス弁(17)との間の距離は、前記冷却媒体(22)が蒸気と完全に混合されるように選択されることを特徴とする請求項5または6に記載の蒸気発電設備(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−211595(P2012−211595A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173690(P2012−173690)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2011−528292(P2011−528292)の分割
【原出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(508008865)シーメンス アクティエンゲゼルシャフト (99)
【Fターム(参考)】