説明

電気的接続構造

【課題】 人体に有害な煙りが発生することなく組立てられて良好なリペア性を確保した上で、各接触接続部間に均一、かつ適正な接触圧力を与え、しかも信号の高速伝送を確保し、狭ピッチ化を容易とする。
【解決手段】 電極配列板10aの複数の電極12aにそれぞれがその先端側で先細りで短棒状に形成された複数のコンタクト20aを、その根元端を対応接触させて配置する。電極配列板10bの複数の電極12bにそれぞれがその先端側で先細りで短棒状に形成された複数のコンタクト20bを、その根元端を対応接触させて配置する。弾性絶縁性部材で形成されて複数のコンタクト挿入穴31が明けられたコンタクト挿入圧接板30の各コンタクト挿入穴31に、一方の口からコンタクト20aを他方の口からコンタクト20bをその先細り先端から対応挿入する。電極配列板10a,10bに互いに向い合い接近する力Fを与える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気的接続構造に関し、特に第1の回路の複数の第1の電極と、第2の回路の複数の第2の電極とを電気的に接続する電気的接続構造に属する。
【0002】
【従来の技術】基板や電子部品の表面にパッド状に形成、配列された第1の回路の複数の第1の電極と、同様に形成、配列された第2の回路の複数の第2の電極とを接続する最も基本的、一般的な電子的接続構造は、これら電極を直接はんだ付け接続する構造である。この直接はんだ付け接続する電気的接続構造は、その構造が単純で接続抵抗を低く抑えることができるが、はんだ付けの際に、人体に悪影響を及ぼす煙が発生したり、修理の際にははんだ付け部のはんだを溶かして電極間を切離さなければならず、リペア性が悪い。そこで、煙が発生することなく、かつリペア性の良い電気的接続構造として、複数の第1の電極と複数の第2の電極との間を、異方性導電板で接続する構造のものや(第1の例)、ばね構造のコンタクトで接続する構造のもの(第2の例)などが提案されている。
【0003】この電気的接続構造の第1の例は、図5(a),(b)に示すように、第1の絶縁基板11xの表面に、複数の第1の配線100aと対応接続された第1の回路の複数の第1の電極が配列形成された第1の電極配列板10xと、第2の絶縁基板11yの表面に、複数の第2の配線100bと対応接続された第2の回路の複数の第2の電極12yが、第1の電極配列板10xの複数の第1の電極12xそれぞれと向い合うように配列形成された第2の電極配列板10yと、弾性絶縁板41に、複数(多数)の金属細線42が弾性絶縁板41を貫通して両端が表面及び裏面に露出するように密に分布配置され、厚さ方向にのみ導通を有し、第1の電極配列板10xの複数の第1の電極12x、及び第2の電極配列板10yの複数の第2の電極12yの間に挟み込まれた異方性導電板40と、第1の電極配列板10x及び第2の電極配列板10yに対し、これら電極配列板10x,10yで異方性導電板40を挟みつける力を与える加圧手段(図示省略)とを含む構成、構造となっている。
【0004】この第1の例は、対応する第1の電極12xと第2の電極12yとが上下方向に対し重なり合う部分で、異方性導電板40の金属細線42がこれら電極12x,12yに加圧接触し、これら電極12x,12y間を接続する。なお、異方性導電板としては、上記構造のものや、導電性シートと絶縁性シートとを交互に張り合わせた構造のものなどがある。この第1の例では、異方性導電板40を第1の電極配列板10x及び第2の電極配列板10yで挟みつける構造となっているので、複数の第1の電極12xと異方性導電板40との間、異方性導電板40と複数の第2の電極12yとの間に、均一、かつ適正な接触圧力が得難いという問題点がある。
【0005】この問題点を解決した電気的接続構造の例(第2の例)として、図6(a)〜(c)に示すように、異方性導電板の代わりに、ばね状のコンタクト20xを用いた構造のものがある。この第2の例では、コンタクト20xのばね効果により、複数の第1の電極12x及び複数の第2の電極12yと、対応するコンタクト20xとの間に、均一、かつ適正な接触圧力を与え易くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の電気的接続構造は、第1の例では、異方性導電板40を第1の電極配列板10x及び第2の電極配列板10yで挟みつける構造となっているので、煙が発生することなく、リペア性も良いが、前述したように、均一、かつ適正な接触圧力が得難いという問題点があり、またこのほかにも、複数の第1の電極12xと複数の第2の電極12yとの間の対応位置が、隣接する電極までずれると、隣接電極間で短絡事故が発生することになるので、これを防ぐためには隣接電極間に電極の幅より広めの絶縁部分を設ける必要があり、狭ピッチ化が困難であるという問題点があり、第2の例では、異方性導電板40の代わりに、ばね状のコンタクト20xを用いて、対応する第1の電極10x及び第2の電極10yの間を接続する構造となっているので、コンタクト20xのばね効果により、均一、かつ適正な接触圧力が得易くなるものの、所定のばね効果を得るためには、第1の電極及び第2の電極との接点間に、そのばね効果と対応した距離(長さ)が必要となり、そのインダクタンスが大きくなって信号の高速伝送が妨げられるという問題点や、所定のばね効果を得るためにはある程度の大きさが必要であり、かつ、これらコンタクト20xを保持するためにコンタクト保持部50が必要となるので、やはり、狭ピッチ化が困難であるという問題点がある。
【0007】本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、人体に有害な煙が発生することがなくて環境対策が施され、かつ良好なリペア性を確保した上で、各接触接続部間に均一、かつ適正な接触圧力を与えることができ、しかも信号の高速伝送を保ち、狭ピッチ化が容易となる電気的接続構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の電気的接続構造は、第1の回路の複数の第1の電極と、第2の回路の複数の第2の電極とを電気的に接続する電気的接続構造であって、上記の目的を達成するために次の各構造体を含むことを特徴とする。
(イ)第1の絶縁部材の表面に前記第1の回路の複数の第1の電極が配列形成された第1の電極配列部(ロ)第2の絶縁部材の表面に前記第2の回路の複数の第2の電極が、前記第1の電極配列部の複数の第1の電極それぞれと向い合うように配列形成された第2の電極配列部(ハ)それぞれが、短棒状でその先端側が先細りに形成され、その根元端を前記第1の電極配列部の複数の第1の電極に対応接触させて配置された複数の第1のコンタクト(ニ)それぞれが、短棒状でその先端側が先細りに形成され、その根元端を前記第2の電極配列部の複数の第2の電極に対応接触させて配置された複数の第2のコンタクト(ホ)弾性絶縁性部材により予め定められた厚さに形成されて前記複数の第1のコンタクトそれぞれと対応する位置に、これら第1のコンタクトの太さ寸法と同程度の内径を有して厚さ方向に貫通するコンタクト挿入穴が明けられ、これらコンタクト挿入穴に、その一方の口から前記複数の第1のコンタクトがその先細りの先端から対応挿入され、その他方の口から前記複数の第2のコンタクトがその先細りの先端から対応挿入されたコンタクト挿入圧接板(ヘ)前記第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し、互いに向い合い接近する方向の力を与え、前記第1の電極配列部の複数の第1の電極と前記複数の第1のコンタクトの根元端との間、前記第2の電極配列部の複数の第2の電極と前記複数の第2のコンタクトの根元端との間、及び前記コンタクト挿入圧接板の複数のコンタクト挿入穴それぞれに挿入された第1のコンタクトの先細り部分の側面と第2のコンタクトの先細り部分の側面との間を加圧接触させる押圧手段
【0009】また、前記複数の第1のコンタクトそれぞれ、及び前記複数の第2のコンタクトそれぞれの先細りの部分が、短棒状の先端部分をその中心軸に対し斜めに切断して得られる切口状の傾斜面を含む形状である構成を有している。
【0010】また、前記複数の第1のコンタクトそれぞれ、及び前記複数の第2のコンタクトそれぞれが、その根元端に、その短棒状の軸と直交して鍔状に形成された鍔状電極接触部を備えて成るか、その短棒状の根元端に近接した部位に、短棒軸と直交して鍔状に形成された鍔部を備え、前記根元端部分が前記鍔部の一方の面から突出した形状を有して成る構成を有している。
【0011】また、前記押圧手段が、前記コンタクト挿入圧接板の両面に高温状態の熱揮発性液体を塗布してこれら両面に前記第1の電極配列部及び第2の電極配列部を密着させ、前記熱揮発性液体の温度が低下したときの減圧効果により前記第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し互いに向い合い接近する方向の力を与える手段である構成を有している。
【0012】また、前記コンタクト挿入圧接部を形成する弾性絶縁性部材が、架橋されたポリマー格子の中に液体成分が格納された構造を有するジェルである構成を有している。更にまた、電気的接続構造における第2の電極配列部及び複数の第2のコンタクトが、複数の第2のコンタクトを第2の電極配列部に直接保持固定してその複数の電極に直接対応接続した直結型構造である構成を有している。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態は、第1の絶縁部材の表面に、第1の回路の複数の第1の電極が配列形成された第1の電極配列部と、第2の絶縁部材の表面に、第2の回路の複数の第2の電極が、上記第1の電極配列部の複数の第1の電極それぞれと向い合うように配列形成された第2の電極配列部と、それぞれが、短棒状でその先端側が先細りに形成され、その根元端を上記第1の電極配列部の複数の第1の電極に対応接触させて配置された複数の第1のコンタクトと、それぞれが、短棒状でその先端側が先細りに形成され、その根元端を上記第2の電極配列部の複数の第2の電極に対応接触させて配置された複数の第2のコンタクトと、弾性絶縁性部材により予め定められた厚さに形成されて上記複数の第1のコンタクトそれぞれと対応する位置に、これら第1のコンタクトの太さ寸法と同程度の内径を有して厚さ方向に貫通するコンタクト挿入穴が明けられ、これらコンタクト挿入穴に、その一方の口から上記複数の第1のコンタクトがその先細りの先端から対応挿入され、その他方の口から上記複数の第2のコンタクトがその先細りの先端から対応挿入されるコンタクト挿入圧接板と、上記第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し互いに向い合い接近する方向の力を与え、上記第1の電極配列部の複数の第1の電極と上記複数の第1の電極の根元端との間、上記第2の電極配列部の複数の第2の電極と上記複数の第2の電極の根元端との間、及び上記コンタクト挿入圧接板の複数のコンタクト挿入穴それぞれに挿入された第1のコンタクトの先細り部分の側面と第2のコンタクトの先細り部分の側面との間を加圧接触させる押圧手段と、を含む構成、構造となっている。このような構成、構造とすることにより、はんだ付け部分がなく、かつ全体が圧接構造となっているので、人体に有害な煙が発生せず、また分解、組立てが容易で良好なリペア性を確保することができる。
【0014】また、押圧手段により第1の電極配列部及び第2の電極配列部に与えられた力が、第1のコンタクト及び第2のコンタクトに伝達されて、これらコンタクトが、その先細り部分の側面での接触部位全体の太さが次第に太くなるように押し込まれて、コンタクト挿入圧接板のコンタクト挿入穴が拡大変形し、その応力(弾性絶縁性部材の)により、これら第1のコンタクト及び第2のコンタクト間を適正な圧力で接触させるので、複数の第1の電極と複数の第1のコンタクトの根元端との間、複数の第2の電極と複数の第2のコンタクトの根元端との間、及びコンタクト挿入圧接板の複数のコンタクト挿入穴に挿入された第1のコンタクトと第2のコンタクトとの間を均一、かつ適正な接触圧力で接続することができる。
【0015】また、第1の電極と第2の電極との間は、短棒状の第1のコンタクト及び第2のコンタクトで接続されるので、これら電極間のインダクタンスは小さく、信号の高速伝送を保つことができ、更に、隣接する第1の電極間、隣接する第2の電極間は互いに電気的絶縁が得られれば良く、隣接する第1のコンタクト間、第2のコンタクト間は電気的接続が得られ、かつ、コンタクト挿入穴の拡大、変形による第1,第2のコンタクト間の適正な接触圧力が得られれば良いので、これら電極及びコンタクトの配列ピッチを狭くすることができる。更にまた、押圧手段により第1,第2のコンタクトを押し込むことにより、これら第1,第2のコンタクトは横方向に、わずかではあるがスライドし、各接触接続部間をワイピングするので、良好な接続状態を保つことができる。
【0016】本発明の第2の実施の形態は、第1のコンタクト及び複数の第2のコンタクトのうちの一方、例えば複数の第2のコンタクトを、直接第2の電極配列部に保持固定してその複数の第2の電極に直接接続するようにしたものである。この第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を有している。
【0017】本発明の第3の実施の形態は、押圧手段として、コンタクト挿入圧接板の両面に高温状態の熱揮発性液体を塗布してこれら両面に第1の電極配列部及び第2の電極配列部を密着させ、この熱揮発性液体の温度が低下したときの減圧効果により第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し互いに向い合い接近する方向の力を与えるようにした手段を用いたものである。複数の電極が配列形成された電子回路、プリント配線板の検査、試験などのように、短時間の電気的な接続を必要とする場合、2枚の押圧板及びねじ等を使用してこれら2枚の押圧板の間に第1,第2の電極配列部を挟みつける通常の押圧手段を用いるよりは、組立て作業が単純で作業時間が短く、部材費も安くなる。
【0018】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1(a),(b)は本発明の第1の実施例を示す分解斜視図、及び断面側面図、図2(a),(b)はこの第1の実施例のコンタクトの拡大斜視図、及びこの実施例の作用効果を説明するための部分拡大断面側面図である。この第1の実施例は、第1の絶縁基板11aに形成された第1の回路の複数の第1の電極12aと、第2の絶縁基板11bに形成された第2の回路の複数の第2の電極12bとを電気的に接続するもので、第1の電極配列板10a,第2の電極配列板10b,複数の第1のコンタクト20a,複数の第2のコンタクト20b、及びコンタクト挿入圧接板30とを含んで構成され、これら各構造体の詳細は次のとおりである。第1の電極配列板10aは、第1の絶縁基板11aの表面に、複数の第1の配線100aと対応接続された複数の第1の電極12aが配列形成された構造となっている。第2の電極配列板10bは、第2の絶縁基板11bの表面に、複数の第2の配線100bと対応接続された複数の第2の電極12bが、第1の電極配列板10aの複数の第1の電極12aそれぞれと向い合うように配列形成された構造となっている。
【0019】複数の第1のコンタクト20aそれぞれは、短い丸棒状でその先端側が、丸棒をその中心軸に対し斜めに切断した形状の1つの傾斜面を有して先細りに形成されて、この先細りの部分を対コンタクト接触部21aとし、その根元端には丸棒状の部分に対し、その中心軸に直交して鍔状に形成された鍔状電極接触部22aを備えた構造となっており、この鍔状電極接触部22aを第1の電極配列板10aの複数の第1の電極12aに対応接触させて配置されている。複数の第2のコンタクト20bそれぞれは、第1のコンタクト20aそれぞれと同様の構造を有しており、その鍔状電極接触部22bと第2の電極配列板10bの複数の第2の電極12bに対応接触させて配置されている。
【0020】コンタクト挿入圧接板30は、弾性絶縁性部材により予め定められた厚さ(例えば第1,第2のコンタクト20a,20bの対コンタクト接触部21a,21bより長めの寸法)に形成されて複数の第1のコンタクト20aそれぞれと対応する位置に、これら第1のコンタクト20aの太さ寸法と同程度の内径を有して厚さ方向に貫通するコンタクト挿入穴31が明けられ、これらコンタクト挿入穴31に、その一方の口から複数の第1のコンタクト20aがその先細りの先端から対応挿入され、その他方の口から複数の第2のコンタクト20bがその先細りの先端から傾斜面を第1のコンタクトのそれと向い合わせて対応挿入される。
【0021】そして押圧手段は、図1、図2には矢印のみでその具体的形状は省略されているが、第1の電極配列板10a及び第2の電極配列板10bに対し互いに向い合い接近する方向の力(F)を与え、第1の電極配列板10aの複数の第1の電極12aと複数の第1のコンタクト20aの鍔状電極接触部22aとの間、第2の電極配列板10bの複数の第2の電極12bと複数の第2のコンタクト20bの鍔状電極接触部22bとの間、及びコンタクト挿入圧接板30の複数のコンタクト挿入穴31それぞれに挿入された第1のコンタクト20aの対コンタクト接触部21aの傾斜面と第2のコンタクト20bの対コンタクト接触部21bの傾斜面との間を加圧接触させる。
【0022】この押圧手段により第1の電極配列板10a及び第2の電極配列板10bに互いに向い合い接近する方向の力が与えられると、図2(b)に示すように、コンタクト挿入圧接板30のコンタクト挿入穴31内の第1のコンタクト20a及び第2のコンタクト20bの先細り部分の傾斜面で互いにスライド化し、これらコンタクト20a,20bは押し込まれ、これらコンタクト20a,20bの中心軸が互いにずれてその全体の太さが太くなり、コンタクト挿入穴31は外側に拡大変形する。この拡大変形で弾性絶縁性部材のひずみ32が生じ、このひずみ32による応力で第1,第2のコンタクト20a,20bの傾斜面間に接触圧力が得られ、従って、電極(12a,12b)・コンタクト(20a,20b)間にも接触圧力が得られる。これら接触圧力は、コンタクト挿入圧接板30を形成する弾性絶縁性部材の特性、第1,第2のコンタクト20a,20bの押し込み量等により任意に決定することができ、これら各接触部間に適正、かつ均一な接触圧力を得ることができる。
【0023】また、第1,第2のコンタクト20a,20bがその傾斜面間でスライドすることにより、この傾斜面間はもちろん、第1の電極12aと第1のコンタクト20aの鍔状電極接触部22aとの間、第2の電極12bと第2のコンタクト20bの鍔状電極接触部22bとの間も互いにスライドし、これら接触部間がワイピングされるので、その接続状態も良好に保つことができる
【0024】更に、第1の電極12aと第2の電極12bとの間は短棒状の第1のコンタクト20a及び第2のコンタクト20bで接続されるので、その間のインダクタンスは小さく、信号の高速伝送を確保することができる。更にまた、隣接する第1の電極12a間、及び隣接する第2の電極12b間は互いに電気的絶縁が確保されれば良く、また隣接する第1のコンタクト20a間、第2のコンタクト20b間は互いに電気的絶縁が確保され、かつ所定の接触圧力が得られるコンタクト挿入穴31の拡大変形量が確保できれば良いので、これら電極及びコンタクトの配列ピッチを狭くすることができる。また当然ではあるが、この電気的接続構造は、はんだ付け接続部分がないので、人体に悪影響を及ぼす煙が発生せず、環境対策が施されており、かつリペア性にも優れている。
【0025】なお、この第1の実施例では、短い丸棒状のコンタクト20a,20bが、根元端に鍔状電極接触部22a,22bを設けているが、鍔状電極接触部22a,22bを設けることくなく、丸棒状の根元端をそのまま電極接触部とすることができる。ただし、この場合、何らかの原因でコンタクトを押込み過ぎた場合に、その後の根元端と電極との間の接触が均一でなくなる可能性も無きにしもあらず、であるので、コンタクトの押込み過ぎを防止するため、鍔状部分を設けるのが望ましい。
【0026】また、この第1の実施例では、コンタクト20a,20bの先細りの先端部分が、丸棒をその中心軸に対し斜めに切断した形状として、1つの傾斜面を備えているが、その他の先細り形状、例えば円錐型等であってもよい。上述した第1の実施例の形状にすると、コンタクト間の接触面積が大きくなるという利点がある。
【0027】図3(a),(b)は本発明の第2の実施例のコンタクトの拡大斜視図、及び接続状態を示す部分拡大断面側面図である。この第2の実施例では、複数の第1のコンタクト20c及び第2のコンタクト20dそれぞれが、その短い丸棒状の根元端に近接した部位に、その丸棒状の中心軸と直交して鍔状に形成された鍔部23c,23dを備え、丸棒状の根元端部分が鍔部23c,23dの一方の面から突出した形状(突出した根元端部分は突起状電極接触部24c,24dを形成する)を有している。この鍔部23c,23dがコンタクト20c,20dの押込み過ぎを防止し、突起状電極接触部24c,24dが電極12a,12bと加圧接触する。この突起状電極接触部24c,24dの方が、第1の実施例の鍔状電極接触部22a,22bに比べ、コンタクト・電極間のワイピング効果が得やすいという利点がある。なお、その他の作用効果等は第1の実施例と同様である。
【0028】図4(a),(b)は本発明の第3の実施例の分解斜視図、及び断面側面図である。この第3の実施例は、第1の実施例における第2の電極配列板(10b)と複数の第2のコンタクト(20b)とを直結型構造としたものであり、これらを直結型構造とするために、その形状、構造等は第1の実施例と異なっている。また、第2の電極配列板10cは、複数の配線100cが、第1の実施例とは異なる面に形成されているが、第1の実施例と同じ面に形成されていてもよい。この第3の実施例では、電極配列板10cの絶縁基板11cに、複数のコンタクト20eを挿入し、保持固定する穴が形成されており、複数のコンタクト20eそれぞれは、根元端部分の鍔部23eの一方の面から突出する長さが長く形成されていて、この部分が絶縁基板11cの穴に挿入されて貫通し、この貫通した根元端をかしめる構造となっている。このかしめ部分(25e)で電極12cと接続される。この第3の実施例では、第2の電極配列板10cの複数の電極12cと複数のコンタクト20eとの間の接続は、直結型であるので、第1,第2の実施例の接触接続型より安定性が高くなるという利点があり、その他は、第1,第2の実施例と同様の作用効果等を有する。
【0029】上述した第1〜第3の実施例において、第1の電極配列板(10a)及び第2の電極配列板(10b,10c)に対し互いに向い合い接近する方向の力を与える押圧手段として、通常は2枚の押圧板とねじとを使い、これら押圧板の間に第1,第2の電極配列板を挟みつける手段が用いられるが、電子回路やプリント配線板の検査、試験などのように短時間の電気的接続が必要な場合には、コンタクト挿入圧接板30の両面に高温状態の熱揮発性液体(例えばエタノール)を塗布してこれら両面に第1,第2の電極配列板の表面を密着させ、熱揮発性液体の温度が低下したときの減圧効果により、第1,第2の電極配列板に対し、互いに向い合い接近する方向の力を与える手段を用いることができる。この押圧手段によると、組立て、分解作業が単純で作業時間が短く、部材費も安くすることができる。
【0030】また、コンタクト挿入圧接板30を形成する弾性絶縁性部材として、架橋されたポリマー格子の中に液体成分が格納された構造を有するジェルを使用することができる。このジェルは密着性もよいので、押圧手段として、前述の熱揮発性液体を用いる場合には特に適している。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、第1の電極配列部の複数の第1の電極に、それぞれが、その先端側が先細りで短棒状に形成された複数の第1のコンタクトを、その根元端を対応接触させて配置し、第2の電極配列部の、上記第1の電極配列部の複数の第1の電極と向い合って配列された複数の第2の電極に、それぞれが、その先端側が先細りで短棒状に形成された複数の第2のコンタクトを、その根元端を対応接触、又は直結させて配置し、弾性絶縁性部材により予め定められた厚さに形成されて複数の第1のコンタクトそれぞれと対応する位置にその太さ寸法と同程度の内径の穴が明けられたコンタクト挿入圧接板の各穴に、その一方の口から複数の第1のコンタクトをその先細り先端から対応挿入し、その他方の口から複数の第2のコンタクトをその先細り先端から対応挿入して、押圧手段により、第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し互いに向い合い接近する方向の力を与える構成、構造とすることにより、はんだ付け部分がなく、かつ組立が圧接構造となっているので、人体に有害な煙が発生せず、環境対策が施され、また高いリペア性を確保した上で、押圧手段、及びコンタクト挿入圧接板を形成する弾性絶縁性部材の穴の拡大、変形に基づく応力により、各接触接続部間に均一かつ適正な接触圧力を与えて接続することができ、しかも、第1,第2の電極間は短棒状の第1,第2のコンタクトで接続されているので、信号の高速伝送を確保することができ、更に、隣接する電極間は電気的絶縁が保たれればよく、隣接するコンタクト間も電気的絶縁が保たれて第1,第2のコンタクト間の接触圧力が確保できればよいので、これら複数の電極およびコンタクトの配列ピッチを狭くすることができて狭ピッチ化が容易になる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す分解斜視図、及び断面側面図である。
【図2】図1に示された実施例のコンタクトの拡大斜視図、及び接続状態を示す部分拡大断面側面図である。
【図3】本発明の第2の実施例のコンタクトの拡大斜視図、及び接続状態を示す部分拡大断面側面図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示す分解斜視図、及び断面側面図である。
【図5】従来の電気的接続構造の第1の例の分解斜視図及び側面図である。
【図6】従来の電気的接続構造の第2の例の要部正面図及び側面図、並びにその要部分解斜視図である。
【符号の説明】
10a〜10c,10x,10y 電極配列板
11a〜11c,11x,11y 絶縁基板
12a〜12c,12x,12y 電極
20a〜20e,20x コンタクト
21a〜21e 対コンタクト接触部
22a,22b 鍔状電極接触部
23c〜23e 鍔部
24c,24d 突起状電極接触部
25e 電極接続かしめ部
30 コンタクト挿入圧接板
31 コンタクト挿入穴
40 異方性導電板
50 コンタクト保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の回路の複数の第1の電極と、第2の回路の複数の第2の電極とを電気的に接続する電気的接続構造であって、次の各構造体を含むことを特徴とする電気的接続構造。
(イ)第1の絶縁部材の表面に前記第1の回路の複数の第1の電極が配列形成された第1の電極配列部(ロ)第2の絶縁部材の表面に前記第2の回路の複数の第2の電極が、前記第1の電極配列部の複数の第1の電極それぞれと向い合うように配列形成された第2の電極配列部(ハ)それぞれが、短棒状でその先端側が先細りに形成され、その根元端を前記第1の電極配列部の複数の第1の電極に対応接触させて配置された複数の第1のコンタクト(ニ)それぞれが、短棒状でその先端側が先細りに形成され、その根元端を前記第2の電極配列部の複数の第2の電極に対応接触させて配置された複数の第2のコンタクト(ホ)弾性絶縁性部材により予め定められた厚さに形成されて前記複数の第1のコンタクトそれぞれと対応する位置に、これら第1のコンタクトの太さ寸法と同程度の内径を有して厚さ方向に貫通するコンタクト挿入穴が明けられ、これらコンタクト挿入穴に、その一方の口から前記複数の第1のコンタクトがその先細りの先端から対応挿入され、その他方の口から前記複数の第2のコンタクトがその先細りの先端から対応挿入されたコンタクト挿入圧接板(ヘ)前記第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し、互いに向い合い接近する方向の力を与え、前記第1の電極配列部の複数の第1の電極と前記複数の第1のコンタクトの根元端との間、前記第2の電極配列部の複数の第2の電極と前記複数の第2のコンタクトの根元端との間、及び前記コンタクト挿入圧接板の複数のコンタクト挿入穴それぞれに挿入された第1のコンタクトの先細り部分の側面と第2のコンタクトの先細り部分の側面との間を加圧接触させる押圧手段
【請求項2】 前記複数の第1のコンタクトそれぞれ、及び前記複数の第2のコンタクトそれぞれの先細りの部分が、短棒状の先端部分をその中心軸に対し斜めに切断して得られる切口状の傾斜面を含む形状である請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項3】 前記複数の第1のコンタクトそれぞれ、及び前記複数の第2のコンタクトそれぞれが、その根元端に、その短棒状の軸と直交して鍔状に形成された鍔状電極接触部を備えて成る請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項4】 前記複数の第1のコンタクトそれぞれ、及び前記複数の第2のコンタクトそれぞれが、その短棒状の根元端に近接した部位に、短棒軸と直交して鍔状に形成された鍔部を備え、前記根元端部分が前記鍔部の一方の面から突出した形状を有して成る請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項5】 前記押圧手段が、前記コンタクト挿入圧接板の両面に高温状態の熱揮発性液体を塗布してこれら両面に前記第1の電極配列部及び第2の電極配列部を密着させ、前記熱揮発性液体の温度が低下したときの減圧効果により前記第1の電極配列部及び第2の電極配列部に対し互いに向い合い接近する方向の力を与える手段である請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項6】 前記コンタクト挿入圧接部を形成する弾性絶縁性部材が、架橋されたポリマー格子の中に液体成分が格納された構造を有するジェルである請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項7】 請求項1記載の電気的接続構造における第2の電極配列部及び複数の第2のコンタクトが、複数の第2のコンタクトを第2の電極配列部に直接保持固定してその複数の電極に直接対応接続した直結型構造である電気的接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−340279(P2000−340279A)
【公開日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−144655
【出願日】平成11年5月25日(1999.5.25)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】