説明

電気的特性用の検査測定治具

【課題】抵抗値を安定させながら被検査測定物の電圧降下を測定することのできる電気的特性用の検査測定治具を提供する。
【解決手段】導体パターン2付きの配線板1と、配線板1と一対の燃料電池10を電気的に接続する一対の電気コネクタ20とを備え、各電気コネクタ20を、配線板1に積層される絶縁性の支持板21と、支持板21に埋設されて配線板1の導体パターン2の電極パッド3に接触する複数の導電キャップ24と、各導電キャップ24にスライド可能に嵌入される導電ピン26と、導電キャップ24と導電ピン26との間に介在されて導電ピン26を燃料電池10の電極部に圧接する導電コイルバネとから構成する。一対の電気コネクタ20に挟持される配線板1の電極パッド3に導電ライン4を接続し、この導電ライン4に測定器のリード線をはんだ付けするので、導電ピン26のスライドに支障を来たしたり、抵抗値が不安定化するおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の電圧降下等を測定する電気的特性用の検査測定治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池間の電圧降下を測定する検査測定治具は、様々なタイプがある(特許文献1、2、3参照)が、その一つとして、図示しない絶縁性の支持板に、燃料電池の電極部に接触する複数の導電素子が間隔をおき並設され、各導電素子のスライド可能な両端部が支持板からそれぞれ突出しており、任意の導電素子の両端部に測定器のリード線がそれぞれ接続されたタイプが知られている。
【特許文献1】特開2001‐176532号公報
【特許文献2】特開2005‐166601号公報
【特許文献3】特開2004‐071708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における電気的特性用の検査測定治具は、以上のように導電素子の両端部にリード線が単に接続されるに止まるので、導電素子の端部のスライドに支障を来たしたり、抵抗値が不安定化するという問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、抵抗値を安定させながら被検査測定物の電圧降下を測定することのできる電気的特性用の検査測定治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、導体パターン付きの配線板と、この配線板と被検査測定物とを電気的に接続する電気コネクタとを備えたものであって、
電気コネクタは、配線板の両面のうち少なくとも片面に重ねられる絶縁性の支持体と、この支持体に埋め設けられて配線板の導体パターンのパターンに接触する導電キャップと、この導電キャップにスライド可能に嵌め入れられる導電ピンと、導電キャップと導電ピンとの間に介在されて導電ピンを被検査測定物の電極部に接触させる導電バネとを含んでなることを特徴としている。
【0006】
なお、電気コネクタの支持体を配線板の大きさよりも小さく形成し、導体パターンのパターンに、配線板の周縁部に伸びる導電ラインを接続することができる。
また、電気コネクタの導電キャップを略有底筒形に形成してその底部を支持体から露出させ、この導電キャップの底部と導電ピンの対向面のいずれかを導電ピンのスライド方向に対して傾斜させることができる。
また、導電キャップの外周面に抜け防止爪を形成することもできる。
【0007】
ここで、特許請求の範囲における配線板は、厚いプリント回路板、薄いフレキシブル配線板、積層配線板等からなり、長方形、正方形、多角形、B5サイズ、A4サイズ、B4サイズ等に形成される。この配線板における導体パターンのパターンは、スルーホールで表裏両面が電気的に導通していても良いし、表裏面が独立していても良い。導体パターンのパターンや導電ラインは、複数であれば、その数や形状を特に問うものではない。
【0008】
電気コネクタは、配線板の両面あるいは片面に単数複数取り付けられる。この電気コネクタの導電キャップと導電ピンとは、導電キャップの底部が導電ピンのスライド方向に対して傾斜していても良いし、導電ピンの底部が導電ピンのスライド方向に対し傾斜していても良い。抜け防止爪は、導電キャップに単数複数形成することができる。さらに、本発明に係る電気的特性用の検査測定治具は、燃料電池間の電圧降下の測定に主に使用されるが、他の電気電子部品やモジュール品の電圧降下の測定に使用しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抵抗値を安定させながら被検査測定物の電圧降下を測定することができるという効果がある。
また、導電キャップの底部と導電ピンの対向面のいずれかを導電ピンのスライド方向に対して傾斜させれば、導電バネにより導電ピンを傾斜方向に押し付け、導電キャップと導電ピンとの接続性を向上させることができる。
さらに、導電キャップの外周面に抜け防止爪を形成すれば、支持体から導電キャップが脱落したり、位置ずれするのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における電気的特性用の検査測定治具は、図1ないし図5に示すように、導体パターン2付きの配線板1と、この配線板1と車載用の一対の燃料電池10とを電気的に導通接続する一対の電気コネクタ20とを備え、相対する一対の燃料電池10に挟持されてその間の電圧降下を測定するようにしている。
【0011】
配線板1は、図1や図2に示すように、所定の材料を使用して平面略正方形の平坦な板に形成され、表裏両面に導体パターン2がそれぞれプリントされる。この配線板1は、例えばガラス布を基材とし、エポキシ樹脂やイミド樹脂が含浸、硬化した積層板からなり、電気コネクタ20よりも大きく形成される。
【0012】
導体パターン2は、図1や図2に示すように、配線板1の表裏両面の中央部に所定の間隔をおいてそれぞれ配列された多数の電極パッド3を備え、この多数の電極パッド3のうち、所定の複数の電極パッド3に、配線板1の周縁部に伸びる導電ライン4がそれぞれ接続されており、この複数の導電ライン4の端部に図示しない測定器のリード線が選択的にはんだ付けされる。各導電ライン4は、例えばAg、Pd、Cu、Cr等からなり、配線板1にメッキ法、厚膜法、薄膜法等により形成されて電気コネクタ20の積層時に外側の端部が露出する。
【0013】
なお、本実施形態では配線板1として一般的で安価なプリント回路板を示すが、検査測定治具の厚みや高さを抑制したい場合には、図3に示す可撓性を有する薄いフレキシブル配線板5を使用しても良い。
【0014】
各電気コネクタ20は、図4や図5に示すように、配線板1の表面あるいは裏面の中央部にはんだを介して積層される絶縁性の支持板21と、この支持板21に埋設されて配線板1における導体パターン2の電極パッド3に接触する複数の導電キャップ24と、各導電キャップ24にスライド可能に嵌入される導電ピン26と、導電キャップ24と導電ピン26との間に介在されて導電ピン26を燃料電池10の電極部に圧接する導電コイルバネ30とを備えて構成される。
【0015】
支持板21は、所定の絶縁材料、具体的には寸法安定性や成形性等に優れるポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリアミド9T、変性ポリアミド6T、ポリプロピレン、ポリカーボネート等を使用して配線板1よりも一回り以上小さい平面略正方形の平坦な板に形成され、多数の電極パッド3に対応する貫通取付孔22が厚さ方向に穿孔されており、各貫通取付孔22の表面周縁部には、案内機能や補強機能を発揮するボス23が一体形成される。
【0016】
導電キャップ24と導電ピン26とは、ニッケルメッキや金メッキ処理された導電性の材料、例えば銅、真鍮、アルミニウム等を使用して製造される。各導電キャップ24は、図5に示すように、断面略U字形の有底円筒形に形成され、外周面の下部に、貫通取付孔22の周面に食い込む小さな抜け防止爪25が周方向に突出形成される。このような導電キャップ24は、支持板21の貫通取付孔22に圧入して内蔵されるとともに、平坦な底部が支持板21の裏面に揃えられた状態で露出し、この露出した底部が配線板1の電極パッド3に導通接続される。
【0017】
各導電ピン26は、各導電キャップ24の内周面にスライド可能に摺接する円板部27と、この円板部27の表面から起立した円柱形のピン部28とを備えた中実の凸字形に形成され、円板部27よりも小径のピン部28がボス23を貫通して支持板21の表面から上方に貫通突出しており、このピン部28の丸まった先端部が電極として燃料電池10の電極部に弾発的に接触する。この導電ピン26は、導電キャップ24の平坦な内底面に対向する円板部27の底面29がスライド方向(図5の上下方向)に対して10°〜30°、好ましくは15°程度の角度で傾斜形成される。
【0018】
導電コイルバネ30は、図5に示すように、例えばリン青銅、ベリリウム銅、バネ鋼、ピアノ線材等の金属線、あるいはこれらの金属線にニッケルメッキや金メッキ処理を施した金属細線を使用して製造され、導電キャップ24に嵌入されて導電ピン26を導電キャップ24の底部から離隔する方向、換言すれば、支持板21の表面方向(図5の上方向)に弾圧付勢するよう機能する。
【0019】
上記構成によれば、導電素子の両端部にリード線を接続するのではなく、上下一対の電気コネクタ20に挟持される配線板1の電極パッド3に、配線板1の周縁部に伸びる導電ライン4をそれぞれ接続し、この引き出した複数の導電ライン4に測定器のリード線をはんだ付けするので、リード線により導電ピン26のスライドに支障を来たしたり、抵抗値が不安定化するおそれが全くない。また、簡易な構成で配線を簡素化することができるし、省スペース化によりエンジニアリングテストから実機テストにかけても何ら邪魔になることがない。
【0020】
また、燃料電池10の測定部位に応じて配線板1や電気コネクタ20を設計したり、配置することができるので、設計や測定の自由度を著しく向上させることができる。また、導電ピン26の先端部を断面円弧形に湾曲形成するとともに、円板部27の底面29をスライド方向に対して10°〜30°の角度で傾斜させ、この底面29に導電コイルバネ30の端部を圧接するので、導電キャップ24と導電ピン26とを確実に接触させ、きわめて良好な導電性や低抵抗化が期待できる。
【0021】
また、導電ピン26の先端部が尖っておらず、丸まって接触面積を拡大させるので、例え燃料電池10の電極部が小さくても、非接触や位置ずれをきわめて有効に防止することが可能になる。また、導電ピン26の底面29が10°未満の角度で傾斜するのではないので、導電キャップ24と導電ピン26とを確実に接触させることが可能になる。また、導電ピン26の底面29が30°を超える角度で傾斜するのではないので、導電ピン26のスライドに支障を来たすこともない。
【0022】
さらに、導電キャップ24の外周面から尖った抜け防止爪25が半径外方向に突出して貫通取付孔22に食い込み、アンカー効果や位置決め効果を発揮するので、導電キャップ24が貫通取付孔22から外れたり、厚さ方向に位置ずれするのを有効に防止することができる。
【0023】
次に、図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、配線板1を一対の電気コネクタ20と同じ大きさにするか、あるいは僅かに大きく形成し、複数の導電ライン4を省略して一対の燃料電池10間の電圧降下を測定するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、配線板1の設計の自由度を大幅に向上させることができるのは明らかである。
【0024】
なお、上記実施形態では配線板1の表面と裏面に単一の支持板21をそれぞれ積層したが、何らこれに限定されるものではなく、配線板1の表面及び又は裏面に複数の支持板21を並べて積層しても良い。また、同様の作用効果が期待できるのであれば、配線板1の表面又は裏面のみに電気コネクタ20を積層しても良い。また、所定の複数の電極パッド3に、配線板1の周縁部に伸びる導電ライン4をそれぞれ接続し、複数の導電ライン4にリード線を選択的にはんだ付けしても良いが、同様の作用効果が期待できるのであれば、ハードコネクタを実装しても良い。
【0025】
また、電気コネクタ20の支持板21の代わりに、絶縁性の支持ブロックやハウジングを使用することもできる。さらに、燃料電池10の構成に応じ、防水機能を必要とする場合には、支持板21に、導電ピン26の先端部に貫通される中空の防滴エラストマーや防滴エラストマーシート等を被せることもできる。さらにまた、同様の機能が期待できるのであれば、導電コイルバネ30の代わりに導電性の板バネ等を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電気的特性用の検査測定治具の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る電気的特性用の検査測定治具の実施形態における配線板を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る電気的特性用の検査測定治具の実施形態におけるフレキシブル配線板を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係る電気的特性用の検査測定治具の実施形態における配線板と電気コネクタとの積層状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る電気的特性用の検査測定治具の実施形態における電気コネクタを模式的に示す要部断面図である。
【図6】本発明に係る電気的特性用の検査測定治具の第2の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 配線板
2 導体パターン
3 電極パッド(パターン)
4 導電ライン
5 フレキシブル配線板(配線板)
10 燃料電池(被検査測定物)
20 電気コネクタ
21 支持板(支持体)
22 貫通取付孔
24 導電キャップ
25 抜け防止爪
26 導電ピン
27 円板部
28 ピン部
29 底面(対向面)
30 導電コイルバネ(導電バネ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターン付きの配線板と、この配線板と被検査測定物とを電気的に接続する電気コネクタとを備えた電気的特性用の検査測定治具であって、
電気コネクタは、配線板の両面のうち少なくとも片面に重ねられる絶縁性の支持体と、この支持体に埋め設けられて配線板の導体パターンのパターンに接触する導電キャップと、この導電キャップにスライド可能に嵌め入れられる導電ピンと、導電キャップと導電ピンとの間に介在されて導電ピンを被検査測定物の電極部に接触させる導電バネとを含んでなることを特徴とする電気的特性用の検査測定治具。
【請求項2】
電気コネクタの支持体を配線板の大きさよりも小さく形成し、導体パターンのパターンに、配線板の周縁部に伸びる導電ラインを接続した請求項1記載の電気的特性用の検査測定治具。
【請求項3】
電気コネクタの導電キャップを略有底筒形に形成してその底部を支持体から露出させ、この導電キャップの底部と導電ピンの対向面のいずれかを導電ピンのスライド方向に対して傾斜させた請求項1又は2記載の電気的特性用の検査測定治具。
【請求項4】
導電キャップの外周面に抜け防止爪を形成した請求項1、2、又は3記載の電気的特性用の検査測定治具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−200753(P2007−200753A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19010(P2006−19010)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】