説明

電気穿孔を最適化するための方法

本発明の態様は、導電性の高い緩衝液における振幅の大きい長い電気パルスの送達を許容して、電気穿孔を受ける細胞に対する損傷を最小限にする電気穿孔のための技術に向けられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2008年7月18日に提出された米国特許仮出願第61/081,924号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
I.発明の分野
本発明は概して、化学物質または生物学的物質を、生細胞、細胞粒子、または脂質小胞に導入するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
II.関連技術の説明
生細胞、細胞粒子、または脂質小胞に細胞外材料を負荷するために電場を用いる電気穿孔プロセスの帰結は、2つの主要なパラメータによって主に制御される:印加電場(EF)パルスの大きさ(magnitude)およびパルスの持続期間。パルスの大きさが一定の閾値レベルより上である限り、パルスの大きさまたは持続期間のいずれかが増加すると、一般的に細胞内に細胞外分子がより多く蓄積する。
【0004】
印加電場の閾値は、細胞のサイズに反比例し、典型的に有核細胞に関して1〜3 kV/cmの範囲、赤血球細胞に関して2〜4 kV/cm、血小板に関して5〜7 kV/cm、ならびに細菌および酵母に関して7〜10 kV/cmの範囲である(Crawford and Chronos 1996)。
【0005】
細胞懸濁液に印加された各電気パルスは、一定量のエネルギーを特徴としえて、これは電極にかかる電圧、緩衝液の中の電流、および高圧パルスの持続期間の積に等しい。しかし、脂質膜を改変して細胞外材料を細胞に移動させるという有用な作業に費やされるのは、印加された電気エネルギーのごく小さい割合に過ぎない。このエネルギーは直接測定することができない。電気エネルギーの残りは、細胞周辺の培地に産生される熱の形で消散する。細胞懸濁液をわずかに加熱する電力の消散は、たとえ加熱そのものが細胞の透過性化を引き起こさないとしてもEF印加の不可避の結果である。緩衝液がより導電性であれば、より多くのエネルギーが熱産生に浪費される。生理的培地は全て、比較的大量の塩素、ナトリウム、および/またはカリウムを有する。これらのイオンの存在が培地の導電率を決定し、これは通常、15〜20 mS/cmの範囲である。
【0006】
米国特許第5,676,646号は、流路を規定する非導電性のスペーサーによって隔てられた2つの電極を含むフローセルを有するフロー電気穿孔装置を開示する。このフローセルのみならず他の先行技術のフローセルに関する主な問題は、細胞が電気穿孔される際に、電極の表面積が熱を消散させるために十分でないという点である。このように、細胞が電気穿孔される際の先行技術のフローセルにおける熱の蓄積は非常に大きい。この熱の蓄積は、細胞および細胞成分に対する損傷を引き起こして、電気穿孔プロセスの効率を減少させうる。
【0007】
緩衝液の加熱は、対応する温度上昇が周囲より20〜24度上を超えてはならず、そうでなければ細胞および/または生物材料が永続的な損傷を被る可能性があることから、細胞懸濁液の電気穿孔が成功するために用いられるエネルギー量に対して制限を与える。
【0008】
同様に、EP試料における温度増加のもう1つの効果がある。これは、試料の導電率の増加に関連して、導電率は単純な塩溶液において1℃あたり約2%増加する。印加された電場が、細胞または粒子の懸濁液の中に電流を流れさせ、この電流が温度上昇を引き起こし、温度上昇が導電率の増加および電源からのより多くの電流誘引等に変換される。このような正のフィードバックプロセスが中断されなければ(たとえば、パルスのスイッチを切ることによって)、電流の増加はなだれのように進行して、その結果アーキング(arcing)および試料の損失が起こる。この効果は主に、比較的高い電場強度(>2 kV/cm)で観察される。
【0009】
生物活性物質を電気穿孔によって血小板に挿入することができ、かつその物質が標的部位で効果を発揮するであろうという考え方が示されており、厳密に審査された文献において報告されている。これらの引用研究において、最大で細胞懸濁液0.5 mlが入る静止系によって血小板が処置された。米国特許第7,186,559号は、血小板が含まれる細胞懸濁液の数十または数百ミリリットルを迅速な(分)スループット時間で処理することができる方法および装置を開示する。
【0010】
血小板の電気穿孔は、さらにより強い電場を必要とし、ゆえに緩衝液の導電率またはパルス幅のいずれかを制限しなければならない。他方、血小板はその環境における生化学的変化に対して極めて感受性が高く、可能であれば常に生理的条件下で維持されるべきであることは文献から周知である(Authi et al, 1989;Hughes and Crawford 1989;Crawford and Chronos 1996)。加えて、血小板懸濁液に対する電場印加に関連する環境の物理化学的変化は、血小板の生理的状態、活性化特性、および生物学的機能をモジュレートして、臨床効果を与える能力に影響を及ぼす可能性がある。血小板の取り扱いのために開発された緩衝液、ならびに比較的高い導電率および非常に短い電気パルスを有する電気穿孔が用いられる(Pfliegler et al., 1994)。
【0011】
初代培養または培養細胞への電気穿孔による核酸の負荷などの一定の場合において、細胞膜を超えて大きいRNAまたはDNA分子を輸送するためには長いパルス(>100 us)が必要である(Wolf et al., 1994;Rols and Teissie 1998)。電気穿孔による有核細胞へのRNA負荷の観察を血小板に移しかえることができると仮定すると、血小板にRNAおよび他の任意の大きい荷電分子を負荷するためには長い電気パルスを用いなければならない。そのようなプロセスの最善の帰結を達成するために、ユーザーは、高度に導電性の培地に比較的長い期間にわたって印加される非常に高い電圧を用いなければならないであろう。実際に、これらの3つの条件は相互に排他的であり、主にアーキングのリスクのため、全てを一度に容易に最適化することができない。ゆえに、臨床効果を生じる能力以外に、細胞、リポソーム、または小胞に損傷を与えることなく、化学物質または生物学的物質を電気穿孔するための単純かつ効率的な方法が必要である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、化学物質または生物学的物質を封入するための方法および装置に関する。本発明は、血液ならびに他の体組織および体液において見いだされる細胞にとって特に適している。本発明はまた、非細胞由来脂質小胞、リポソーム、および他の脂質に基づく薬物送達系を包含する。
【0013】
本発明の態様には、(a)電気パルスの際に、パルスの際の電気穿孔培地における導電率の増加を表す第一の時定数(t1)が、キャパシタの放電を表す第二の時定数(t2)以上であるように、電気穿孔パラメータを決定する段階であって、パルスの持続期間がt1またはt2のいずれかより短い、段階;および(b)電気穿孔される試料に該電気穿孔パラメータ下で1つまたは複数の電気パルスを印加する段階を含む、電気穿孔法が含まれる。一定の局面において、電気穿孔パラメータは、緩衝液の導電率、電源キャパシタンス、電気穿孔チャンバーの幾何学、および電場強度を含む。さらなる局面において、電気穿孔パラメータには、以下の1つまたは複数が含まれうる:緩衝液の導電率は、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5から1、1.5、2、2.5、3 Ω/mのあいだでありえて;電源キャパシタンスは、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる1、10、20、30、40、50、100、200、500から200、300、400、500、800、1000、5000、10,000、50,000、104、105、106 μFのあいだでありえて;電気穿孔チャンバーは、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる0.1、1、10、50から20、40、80、100 cmのあいだの長さ、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる0.1、0.5、1、5から1、5、10 cmのあいだの幅、ならびにそのあいだの全ての値および範囲が含まれる0.001、0.01、0.1、1、5から0.1、1、5、10 cmのあいだの間隙の寸法を有しえて;電場は、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる0.1、1、2.5、5から2.5、5、10 kV/cmのあいだでありうる。なおさらなる局面において、電気的パルスは、少なくとも0.5、1、5、10、15、20、25、50、100、200、500μ秒またはそれより長く、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる。電気パルスは、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15 kV/cmの大きさのパルスでありうる。なおもう1つの局面において、電気パルスは、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000から10、100、1000、10000ボルトの大きさのパルスでありうる。1つの局面において、電気パルスは5 kV/cmの大きさのパルスである。
【0014】
一定の局面において、試料は、生細胞、細胞粒子、または脂質小胞を含む。さらなる局面において、細胞は、血球、血小板、またはその断片もしくは誘導体である。生細胞、細胞粒子、または脂質小胞に、化学物質または生物学的物質を負荷することができる。生物活性物質は、核酸または低分子等でありうる。
【0015】
本発明の一定の態様は、電気穿孔された細胞、細胞粒子、脂質小胞、または記述の方法のいずれかを用いて産生された他の産物に向けられる。一定の局面において、電気穿孔された細胞、細胞粒子、または脂質小胞は、血小板である。電気穿孔された細胞、細胞粒子、または脂質小胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない送達媒体の集団は、少なくとも、多くて、または約 50、60、70、80、90、95、99%の負荷効率を有しえ、これらのあいだのいずれの値および範囲も含む。
【0016】
他の態様は、本明細書において記述される方法を行うために構成された電気穿孔装置に向けられる。
【0017】
さらなる態様は、(a)電気パルスの減衰の際に、電気穿孔培地における導電率の増加速度が電圧減衰速度より小さくなるように、電気穿孔パラメータを決定する段階;および(b)電気穿孔される試料に該電気穿孔パラメータ下で1つまたは複数の電気パルスを印加する段階を含む、電気穿孔法に向けられる。一定の局面において、電圧減衰速度は、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から4、5、6、7、8、9、10、11、12μs、ns、ms、または秒である。
【0018】
本発明の態様には、記述の任意の方法を行うために構成された電気穿孔装置が含まれる。
【0019】
本発明のさらなる態様には、記述の任意の方法の産物を疾患または病態を緩和する量で投与する段階を含む、疾患もしくは病態を有するまたは有することが疑われる対象を処置する方法が含まれる。一定の局面において、疾患または病態は、異常な血小板機能またはレベルに関連する。一定の局面において、方法の産物は薬物送達媒体であり、広く多様な公知の薬物が記述の方法によって産生される負荷粒子によって送達されうると企図される。疾患または病態には、電気穿孔法を用いて調製される(たとえば、負荷される)リポソーム粒子、細胞粒子、または類似の送達媒体による薬物または物質の送達に対して感受性がある任意の疾患または病態が含まれうる。そのような疾患または病態の例には、血小板減少症、ゴーシェ病、再生不良性貧血、同種免疫障害、溶血性尿毒症症候群、ベルナール・スーリエ症候群、グランツマン血小板無力症、スコット症候群、フォン・ヴィレブランド病、ヘルマンスキー・パドラック症候群、または血友病が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0020】
本発明のなおさらなる態様には、記述の方法によって産生される粒子に含まれる薬物、生物製剤、または他の生物活性分子の有効量を投与することによって、疾患もしくは病態を有するまたは有することが疑われる対象を処置する方法が含まれる。一定の局面において、疾患は、細菌、真菌、寄生虫、またはウイルス感染症が含まれるがこれらに限定されるわけではない感染疾患である。さらなる局面において、細菌感染症はマイコバクテリア感染症である。なおさらなる局面において、ウイルス感染症は、HIV感染症が含まれるがこれらに限定されるわけではないレトロウイルス感染症である。もう1つの局面において、疾患は炎症疾患、癌、または血管閉塞疾患である。
【0021】
本出願を通して、電気穿孔の標的または薬物もしくは治療物質を送達するための媒体を指す場合の「細胞」または「送達媒体」という用語は、生物学的な意味でヒトまたは動物細胞が含まれることを意味する。血小板は「細胞由来粒子」として記述されうる。
【0022】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と共に用いられる場合の「1つの」または「1つの(an)」という言葉の使用は、「1つ」を意味してもよいが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つより多い」という意味とも一貫する。
【0023】
本明細書において考察される任意の態様が、本発明の任意の方法または組成物に関して実施されうる、およびその逆でありうると企図される。さらに、本発明の組成物およびキットは、本発明の方法を達成するために用いられうる。
【0024】
本明細書を通して、「約」という用語は、値を決定するために使用されるデバイスまたは方法に関する標準誤差が値に含まれることを示すために用いられる。
【0025】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代用物のみを指す場合を明白に示している場合、または代用物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために用いられるが、本開示は、代用物のみと「および/または」を指す定義を支持する。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲において用いられるように、「含む(comprising)」という用語(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むのその任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有するの任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有するのその任意の形)という言葉は、包括的であるかまたは制限なしであり、追加の引用されない要素または方法の段階を除外しない。
【0027】
本発明の他の目的、特色、および長所は以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、本発明の趣旨および範囲内の様々な変化および改変が、本発明の詳細な記述から当業者に明らかとなるであろうことから、詳細な記述および具体的な実施例は、本発明の具体的な態様を示しているが、例証されているに過ぎないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の一定の局面をさらに明らかにするために含まれる。本発明は、本明細書において提示された具体的態様の詳細な記述と共に、これらの図面の1つまたは複数を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図1】異なる電場強度および短(左欄)および長(右欄)時間尺度での同じチャンバーにおける電流増加のシミュレーション結果。
【図2】キャパシタンスを100μFに低減させると、4 kV/cmでの長いパルスの印加を許容する。
【図3】10μFに低減すると、8 kV/cmでより短いパルスを用いることができる。
【図4】0.5 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒離して2回連続パルスで導電性培地に印加した。各パルスの開始時に軽度の短時間の導電率の増加が認められる。
【図5】1 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒離して4回連続パルスで導電性培地に印加した。各パルス期間のみならず、各々のその後のパルスによって顕著な導電率の増加が認められる。
【図6】1.5 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒離して4回連続パルスで導電性培地に印加した。各パルス期間のみならず、各々のその後のパルスによって顕著な導電率の増加が認められる。パルス2〜4の開始時の導電率の値は、それらの前のパルスの終了時の値とほぼ同じである。このことは、パルス間の間隔での緩衝液の冷却速度が遅いことを示している。
【図7】2 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒離して4回連続パルスで導電性培地に印加した。この電場強度では、試料の導電率は各パルス期間で急激に増加して、その初期値の200%を超えた。パルス3と4のあいだでアーキングが起こった。
【図8】血小板にAllStars Negative Control siRNA(Qiagen, Inc.)を負荷した。siRNAの保存溶液を、血小板懸濁液に最終濃度1μMで添加して、試料を「同時インキュベーション」および「電気穿孔」試料に分けて、後者をMaxCyte Systemにおいて電気パルスを印加することによって処理した。電源キャパシタンスを20μFに設定して、電場強度は5 kV/cmであった。
【図9】血小板を図8に関して記述されるように調製して、電気穿孔によってAlexa-488(Invitrogen, Inc.)を負荷した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明の一定の態様は、導電性の高い緩衝液において振幅の大きい長い電気パルスの送達を許容して、電気アークまたは熱ショックによる損傷を最小限にする電気穿孔のための技術に向けられる。
【0030】
I.電気穿孔
電気穿孔プロセスは一般的に、細胞または小胞を含有する液体の細胞懸濁液の中に電場パルスを印加することによる、細胞膜または小胞における孔の形成を伴う。穿孔プロセスの際に、細胞はしばしば、液体培地に懸濁された後、電場パルスに供される。培地は電解質、非電解質、または電解質と非電解質の混合物であってもよい。懸濁液に印加される電場の強度およびパルスの長さ(電場が細胞懸濁液に印加される時間)は、細胞タイプに応じて多様である。細胞の外膜に孔を作製するために、電場は、孔を作製するために十分に長い期間細胞膜を超えて定められた電位を作製するために、そのような長さの時間およびそのような電圧で印加されなければならない。
【0031】
形質膜に一定の閾値レベルを超える電圧を印加すると、膜に孔を形成する。印加された電場の強度および/またはそれに対する曝露の持続期間を適切に選ぶと、電気パルスによって形成された孔は、短期間の後に再度閉じて、そのあいだに細胞外化合物が細胞内に入る機会を有する。しかし、生細胞に電場を過剰に曝露すると、それによって細胞死が起こるプロセスであるアポトーシスおよび/または壊死を引き起こしうる。
【0032】
一般的に、電気穿孔のプロセスはしばしば、分子プローブ、細胞機能を変化させることができる物質、DNAの断片、またはmRNA、siRNA、もしくはマイクロRNAなどのいくつかの型のRNAを細胞または小胞に負荷することなどの、何らかの物質を細胞または小胞に導入する方策として、細菌、酵母、植物プロトプラスト、培養細胞および他の細胞または媒体を形質転換するために用いられる。この技法はまた、組織培養細胞または初代培養細胞、特に哺乳動物細胞における分子経路に特異的に介入する化学物質または生物学的物質を導入するために非常に効率的である。たとえば、電気穿孔は、ノックアウトマウスを産生するプロセスのみならず、腫瘍の処置、遺伝子治療、および細胞に基づく治療において用いられる。
【0033】
電気穿孔プロセスの際に、導電性の培地の中を流れる電流は、培地の加熱を引き起こして、その後培地の導電率を増加させる。適切に制御されなければ、そのような導電率の増加によって、電源からさらに多くの電流を誘引して、アーキングおよび試料の損失が起こる可能性がある。この効果は典型的に、比較的高い電場強度(>2 kV/cm)で観察される。しかし、たとえば血小板の電気穿孔は、比較的強い電場を必要として、ゆえに緩衝液の導電率またはパルス幅のいずれかが制限されうる。多くの電気穿孔機器は、望ましい電圧に予め充電されたキャパシタから試料に電圧パルスを送達する。パルスの際に、キャパシタにかかる電圧は減少して、この減少は、試料の導電率の増加に対する補償として見なすことができる。
【0034】
多くの電気穿孔機器が、望ましい電圧へと予め充填されたキャパシタから試料に電圧パルスを送達する。キャパシタは、1対の導体(「極板」と呼ばれる)のあいだの電場にエネルギーを貯蔵することができる電気/電子デバイスである。キャパシタにエネルギーを貯蔵するプロセスは「充電」として知られ、各極板上に等しい大きさの、しかし反対の極性の電荷の蓄積を伴う。キャパシタは、誘電体によって隔てられた2つの導体電極または極板からなる。キャパシタは、電気回路および電子回路においてエネルギー貯蔵デバイスとして用いられる。
【0035】
キャパシタのキャパシタンス(C)は、極板のあいだに現れる所定の電位差または電圧(V)に関して各極板に貯蔵された電荷量(Q)の尺度である:C=Q/V。SI単位において、キャパシタは、極板間の印加電位差1ボルトにより電荷1クーロンが貯蔵される場合に1ファラデーのキャパシタンスを有する。ファラデーは、非常に大きい単位であることから、キャパシタの値は通常、マイクロファラデー(μF)、ナノファラデー(nF)、またはピコファラデー(pF)で表記される。
【0036】
試料の導電率に対してキャパシタの電圧減少を補償するための条件は、以下のように分析される。
【0037】
緩衝液の中の電流は以下によって表される:
等式1:

式中、I(t)は電流[A]、U(t)は電圧[V]、R(t)は抵抗[Ω]、およびΣ(t)はコンダクタンス[S]である。
【0038】
コンダクタンスの変化は以下によって表される:
等式2:

式中、Aは電極表面積(cm2)、λは電極間の距離[cm]、およびσ(t)は、導電率[mS/cm]である。
【0039】
導電率の変化は以下によって表される:
等式3:σ(t)=σ0(1+0.02(T(t)−T0))
式中、σ0はゼロ時間(T0)での導電率[S]、およびT(t)は緩衝液の温度[K]である。
【0040】
温度の増加は以下によって表されうる:
等式4:

式中、vは緩衝液の容積(cm3)、κは緩衝液の熱容量[J/(cm3K)]、およびQ(t)は熱エネルギー[J]である。
【0041】
熱の生成は以下によって表されうる:
等式5:

【0042】
等式1から等式3を組み合わせると、以下の式になる:
等式6:

【0043】
等式5を等式4に代入すると、以下の式になる:
等式7:

【0044】
等式6および等式9の系は分析的に解く必要はなく、数値的解のみを計算することができる(図1)。等式はまた以下のように分析されうる。
【0045】
ケース1:一定電圧。電源が非常に大きいキャパシタンスまたはDCバッテリーを有する場合、試料に印加される電圧はパルスの期間ほぼ一定である。
【0046】
次に、等式6を時間に対して微分すると、以下の式になる:
等式8:

【0047】
等式7を8に代入すると、以下の式になる:
等式9

【0048】
一定電圧条件下dU(t)/dt=0である場合、U(t)=U0である。これらの式を等式9に代入すると、以下のようになる:
等式10:

【0049】
式を解くと、以下のようになる:
等式11:

等式12:

等式13:

【0050】
導電率の増加による指数的な電流の増加が認められ、これは印加された電場強度に主として依存する。
【0051】
ケース2:補償。導電率増加の時定数τ1が、キャパシタ放電の時定数τ2と一致する場合、双方のプロセスは、短いパルス(パルスの持続がいずれかの時定数未満)の際に互いに補償する可能性が高い。キャパシタの放電は以下によって記述されうる:
等式14:

式中Cは電気キャパシタンス[F]である。
【0052】
この指数的プロセスの時定数は、初回導電率およびキャパシタンスに関して表記されうる。
等式15:

【0053】
補償条件τ1=τ2は、以下の式になる:
等式16:

【0054】
等式16における5つの変数は、上記のプロセスの機序およびアーキングを回避する方策を変化させることなく、他のパラメータ(たとえば、チャンバー容積対電極間隙の比率V/λを電極の表面積Aの代わりに用いることができる)を通して表記されうる。
【0055】
例として、血小板の取り扱いのために開発された緩衝液、ならびに比較的高い導電率および非常に短い電気パルスを有する電気穿孔を用いる;おそらく血小板にRNAおよび任意の他の大きい荷電分子を負荷するためには長い電気パルスを用いなければならない。そのようなプロセスの最善の帰結を達成するために、ユーザーは比較的長い時間間隔について非常に導電性の媒体に印加される非常に高い電圧を用いなければならないであろう。これらの3つの条件は、同時には容易に満たされない。この問題に対する解決策は、非常に導電性の高い緩衝液における振幅の大きい長い電気パルスの送達を許容して、電気アークまたは熱ショックによって細胞または小胞が損傷する機会を最小限にする、開示される電気穿孔法である。本発明において、電気穿孔におけるパルスの際に、キャパシタにかかる電圧が減少し、この減少は、試料の導電率の増加に対する補償として見なされうる。
【0056】
典型的に、5つの変数は、処理チャンバーにおいて一定のまたは減少する電流を達成するように整列させることができる。これらの変数は共に、緩衝液の中の電流が、キャパシタの放電によりどれほど速く減少するか、および/または緩衝液の導電率の変化によりどれほど速く増加するかを定義する。典型的に、処理チャンバーの寸法(Aおよびλ)は、予め定義されて、電場強度(E)は電気穿孔プロトコルによって指示される。これによって、導電率およびキャパシタンスは最も簡便な変数として扱われ、キャパシタンスはハードウェア上での最大電流定格の結果としての導電率に対する上限の存在により、最も柔軟な変数である。典型的に、変数は、処理チャンバーにおいて一定の電流を達成するように最適化される。本発明において、いずれの変数も、所望の補償効果を達成するように調節されうる。
【0057】
図1のデータは、2つの異なる等式の系の数値の解としてMathematica(商標)ソフトウェア(Wolfram Research, CA)を用いて生成された。
【0058】
コード例。水の熱容量k[J/(K mL)]、キュベット幅w[cm]、キュベット高h[cm]、キュベット間隙g[cm]、キャパシタンスc[F]、パルス電圧u0[V]、初回緩衝液導電率S0[S/cm]、パルス幅tmax[s]を明記して、yは温度[K]である:

【0059】
図1は、異なる電場強度で、短い(左の欄)および長い(右の欄)時間尺度で同じチャンバーにおける電流の増加のシミュレーション結果を示す。キャパシタンスを100μFに低減すると、4 kV/cmで長いパルスの印加が許容され(図2)、10μFに低減することによって、8 kV/cmでより短いパルスを用いることが可能となる(図3)。
【0060】
II.電気穿孔標的
電気穿孔の標的には、多くの生物および起源に由来する多くの細胞タイプまたは粒子が含まれる。いくつかの態様において、標的は有核または無核の細胞または粒子でありうる。本発明の細胞または粒子は、初代培養細胞もしくは細胞株、またはそれらに由来する粒子でありうる。たとえば、標的は原核細胞、酵母、昆虫、哺乳動物、齧歯類、ハムスター、霊長類、ヒト、鳥類、植物の細胞、またはその一部/断片であってもよい。一定の局面において、本発明は、化学物質または生物学的物質を様々なタイプの生細胞もしくは細胞粒子、または合成小胞もしくはリポソームに導入するための組成物、方法、および装置に関する。より詳しくは、本発明は、細胞または細胞粒子に化学物質または生物学的物質を導入するための方法および装置に関する。これらの電気穿孔標的は、感染部位、転移、または他の病的病変を標的とするための薬物送達系(「インテリジェントリポソーム」)として、特に、薬物を送達媒体に入れなければ薬物が毒性である場合に利用されうる。
【0061】
患者集団がウイルスに感染してウイルス血症を示す可能性がある場合、電気穿孔標的は、患者の病態を悪化させないために、自己または合成であるよりむしろ同種異系でありうる。同種異系細胞または材料は、標準的な起源(病院の提供)から得ることができる。感染疾患の既往および血液検査を用いて、ドナーをスクリーニングすることができる。
【0062】
A.電気穿孔標的の製造/収集
本明細書において記述される組成物を治療応用において用いることができる。それらは、治療用量を作製するために収集された試料から単離される。本明細書において記述される組成物の治療的使用の1つの例は、必要な濃度で適切な緩衝液において治療物質を処方すること、およびMaxCyte系などの系を用いて処方を処理することである。処方された薬物および電気穿孔標的が、適当な口を有する容器に無菌的に充填されると、これをルーチンの実験環境(充填室型の制御された環境は必要ない)において閉鎖された滅菌系の中に通すことができる。プロセスは約2〜3時間以内に完了しうる。系の性能変数はリアルタイムで生成され、QC操作を補助するであろう。
【0063】
典型的に、薬物負荷標的の製造は、中央施設でまたはポイントオブケア(point of care)で行われうる。中央施設(またはいくつかの局所施設)が存在する場合、薬物負荷標的の安定性は重要な要因である。カスタムオーダーの操作を支持するには少なくとも数日間の安定性が必要であろう。ポイントオブケアシステムでは、処方された薬物は、治療が必要である場所で供給されるであろう。標的または送達媒体を、それらの場所で得ることができ、最終的な製造段階は、詳細な標準操作技法(SOP)を用いて技術者によって処理施設で行われる。これは、その場所での輸血製品の最終的な調製と類似であろう。この場合、最終製品の安定性は重要ではない。
【0064】
B.治療応用
本発明はさらに、電気穿孔された実体または標的(たとえば、細胞、リポソーム、血小板、またはその誘導体)を送達媒体として用いて治療物質を送達するための方法を包含する。本明細書において記述される方法を用いて産生された活性成分処方物は、典型的に持続的な効果およびより低い毒性を有し、より頻繁でない投与および増強された治療指数を可能にする。治療物質は、本明細書において記述される方法に従って得られるように、少なくとも1つの治療物質を負荷した血小板、細胞、リポソーム、またはそのセグメントを最初に調製することによって送達される。
【0065】
本発明の一定の態様において、物質または薬物は送達媒体(すなわち、電気穿孔標的)に導入されうる。送達媒体はまた、生物活性化合物を負荷されうる。適した生物活性化合物の例には、安定化剤、トレーサー、蛍光タグ、ならびに放射標識、凍結保護剤、核酸、および生物活性材料などの他の撮像物質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。血小板に組み入れられるために特に適した生物活性材料には、止血エフェクター、創傷治癒因子、抗癌剤、サイトカインおよび薬物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。適した生物活性材料にはまた、治療物質および予防物質が含まれる。生物活性材料の例には、タンパク質およびペプチド(合成、天然、および模倣体)、オリゴヌクレオチド(アンチセンス、リボザイム等)、核酸(たとえば、阻害性RNA、siRNA、miRNA、発現ベクター等)、ウイルスベクター、血液治療物質、抗癌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、血栓調節剤、免疫調節剤等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0066】
血栓溶解物質を送達媒体によって導入することができ、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼまたはストレプトキナーゼ等を、送達媒体の集団に導入することができる。組織プラスミノーゲン活性化因子は、Genentech Corporation, South San Francisco, Calif.によって商標ACTIVASE(登録商標)として販売されている。次に、血栓溶解物質を負荷したこれらの送達媒体を、血管を詰まらせる血栓を有する患者に導入することができる。送達媒体は、活性な血栓溶解酵素を含有することから、血栓が溶解される。血栓溶解物質は、多様な方法によって送達媒体に導入されうるが、本発明に従う方法が最も好ましい。
【0067】
損傷した組織に送達するために他の薬物を送達媒体または他の細胞に導入することができると理解される。これらの薬物には、平滑筋阻害剤、抗感染症剤(たとえば、抗生物質、抗真菌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤)、化学療法剤/抗新生物剤等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0068】
1つの態様において、薬物は抗感染症剤である。抗感染症剤は、細菌、マイコバクテリア、真菌、ウイルス、または原虫感染症などの感染症に対して作用する物質である。本発明の範囲に含まれる抗感染症剤には、アミノグリコシド(たとえば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシン等)、テトラサイクリン(たとえば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン等)、スルホンアミド(たとえば、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメタオキサゾール(sulfamethaoxazole)、スルフイソキサゾール、スルファセタミド等)、パラアミノ安息香酸、ジアミノピリミジン(たとえば、しばしばスルファメトキサゾールと併用して用いられるトリメトプリム、ピラジナミド等)、キノロン(たとえば、ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシン、およびノルフロキサシン等)、ペニシリン(たとえば、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン等)、ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン(たとえば、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン等)、第一世代セファロスポリン(たとえば、セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、セファロチン、セファピリン、セファゾリン等)、第二世代セファロスポリン(たとえば、セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル;セフメタゾール、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォラニド等)、第三世代セファロスポリン(たとえば、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン等)、他のβ-ラクタム(たとえば、イミペネム、メロペネム、アズトレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム等)、βラクタマーゼ阻害剤(たとえば、クラブラン酸)、クロラムフェリイコール(chlorampheriicol)、マクロライド(たとえば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン等)、リンコマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、ポリミキシン(たとえば、ポリミキシンA、B、C、D、E1(コリスチンA)、またはE2、コリスチンBまたはC等)、コリスチン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エサンブトール、エチオナミド、アミノサリチル酸、シクロセリン、カプレオマイシン、スルホン(たとえば、ダプソン、スルホキソンナトリウム等)、クロファジミン、サリドマイド、または脂質封入されうる他の任意の抗菌剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0069】
一定の局面において、抗菌剤には、イソニアジド、リファンピン、ストレプトマイシン、リファブチン、エサンブトール、ピラジナミド、エチオナミド、アミノサリチル酸およびシクロセリンが含まれるがこれらに限定されるわけではない抗マイコバクテリア剤が含まれる。
【0070】
抗感染症剤には、ポリエン抗真菌剤(たとえば、アンフォテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン等)、フルシトシン、イミダゾール(たとえば、n-チコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール等)、トリアゾール(たとえば、イトラコナゾール、フルコナゾール等)、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、シクロピラクス、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフタート、ナフチフィン、テルビナフィンまたは脂質封入されうるもしくは錯体形成されうる他の任意の抗真菌剤が含まれる抗真菌剤が含まれうる。考察および実施例は、主にアミカシンに対して向けられるが、本出願の範囲は、この抗感染症剤に限定されないと意図される。薬物の併用を用いることができる。
【0071】
一定の局面において、抗感染症剤には、アシクロビル、ファムシクロビル、ホスカメット(foscamet)、ガンシクロビル、アシクロビル、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、およびビダラビンなどの抗ヘルペス剤;リトナビル、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、テノボビル、およびジドブジンなどの抗レトロウイルス剤;ならびにアマンタジン、インターフェロン-α、リバビリン、およびリマンタジンなどの、しかしこれらに限定されない他の抗ウイルス剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない抗ウイルス剤が含まれる。
【0072】
本発明の薬物処方において用いられる適した抗感染症剤にはまた、薬物の薬学的に許容される付加塩および錯体が含まれる。化合物が1つまたは複数のキラル中心を有する可能性がある場合、特に明記されなければ、本発明は各々の独自のラセミ化合物のみならず、各々の独自の非ラセミ化合物を含む。
【0073】
局面において、活性物質は抗新生物剤である。現在、およそ20のクラスの承認された抗新生物剤が認められている。分類は、特定の薬物によって共有される一般的な構造に基づく一般化であるか、または薬物による一般的な作用機序に基づく。一般的に公知の市販の承認された(または積極的開発中の)抗新生物剤のいくつかの分類による部分的一覧は以下のとおりである。
【0074】
構造に基づくクラスには、フルオロピリミジン−5-FU、フルオロデオキシウリジン、フトラフール、5'-デオキシフルオロウリジン、UFT、S-1カペシタビン;ピリミジンヌクレオシド−デオキシシチジン、シトシンアラビノシド、5-アザシトシン、ゲムシタビン、5-アザシトシン-アラビノシド;プリン−6-メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、アロプリノール、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン、2-クロロアデノシン;白金類似体−シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、テトラプラチン、白金-DACH、オルマプラチン、CI-973、JM-216;アントラサイクリン/アントラセンジオン−ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン;エピポドフィロトキシン−エトポシド、テニポシド;カンプトテシン−イリノテカン、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、TAS 103、7-(4-メチル-ピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(S)-カンプトテシン、7-(2-N-イソプロピルアミノ)エチル-20(S)-カンプトテシン;ホルモンおよびホルモン類似体−ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、トレメフィン(Toremefine)、トルムデックス、チミタク、フルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、エストラジオール、トリオキシフェン、ドロロキシフェン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロール、アミノグルテチミド、テストラクトンおよびその他;酵素、タンパク質、および抗体−アスパラギナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、リュープロリド、ペグアスパルガーゼおよびその他;ビンカアルカロイド−ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン;タキサン−パクリタキセル、ドセタキセルが含まれる。
【0075】
機序に基づくクラスには、抗ホルモン剤−アナストロゾール;抗葉酸剤−メトトレキサート、アミノプテリン、トリメトレキサート、トリメトプリム、ピリトレキシム、ピリメタミン、エダトレキサート、MDAM;抗微小管剤−タキサンおよびビンカアルカロイド;アルキル化剤(古典的および非古典的)−ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、ウラシルマスタード)、オキサザホスホリン(イフォスファミド、シクロホスファミド、ペルホスファミド、トロホスファミド)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、チオテパ、ダカルバジンおよびその他;抗代謝剤−先に記載したプリン、ピリミジン、およびヌクレオシド;抗生物質−アントラサイクリン/アントラセンジオン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、ペントスタチン、ストレプトゾシン;トポイソメラーゼ阻害剤−カンプトテシン(Topo I)、エピポドフィロトキシン、m-AMSA、エリプチシン(Topo II);抗ウイルス剤−AZT、ザルシタビン、ゲムシタビン、ジダノシンおよびその他;種々の細胞傷害剤−siRNA、miRNA、ヒドロキシウレア、ミトタン、融合毒素、PZA、ブリオスタチン、レチノイド、酪酸および誘導体、ペントサン、フマジリン、およびその他が含まれる。
【0076】
抗血管新生剤は血小板に取り込まれうる。抗血管新生剤には、AGM-1470(TNP-470)またはその受容体の1つに対するアンタゴニスト、MetAP-2;増殖因子アンタゴニストまたは増殖因子(VEGFまたはbFGFが含まれる)に対する抗体;増殖因子受容体アンタゴニストまたは増殖因子受容体に対する抗体;TIMP、バチマスタット(BB-94)、およびマリマスタットが含まれるメタロプロテナーゼの阻害剤;ゲニステインおよびSU5416が含まれるチロシンキナーゼ阻害剤;アンタゴニストαVβ3/5またはインテグリンに対する抗体が含まれるインテグリンアンタゴニスト;レチノイン酸または合成レチノイドであるフェンレチニドが含まれるレチノイド;ステロイド11α-エピヒドロコルチゾル、コルテロキソン、テトラヒドロコルチゾンおよび17α-ヒドロキシプロゲステロン;スタウロスポリンおよびMDL 27032が含まれるタンパク質キナーゼ阻害剤;22-オキサ-1-αおよび25-ジヒドロキシビタミンD3が含まれるビタミンD誘導体;インドメタシンおよびスリンダクが含まれるアラキドン酸阻害剤;ミノサイクリンが含まれるテトラサイクリン誘導体;サリドマイドならびにサリドマイド類似体および誘導体;2-メトキシエストラジオール;腫瘍壊死因子-α;インターフェロン-γ誘導タンパク質10(IP-10);インターロイキン1およびインターロイキン12;インターフェロンα、β、またはγ;アンジオスタチンタンパク質またはプラスミノーゲン断片;エンドスタチンタンパク質またはコラーゲン18断片;プロリフェリン関連タンパク質;B群連鎖球菌毒素;CM101;CAI;トロポニンI;スクアラミン;L-NAMEが含まれる酸化窒素シンターゼ阻害剤;トロンボスポンジン;ワートマニン;アミロリド;スピロノラクトン;ウルソデオキシコール酸;ブファリン;スラミン;テコガランナトリウム;リノール酸;カプトプリル;イルソグラジン;FR-118487;トリテルペン酸;カスタノスペルミン;白血病阻害因子;ラベンダスチンA;血小板因子-4;ハービマイシンA;ジアミノアントラキノン;タキソール;アウリントリカルボン酸;DS-4152;ペントサンポリサルファイト;ラジシコール;ヒトプロラクチンの断片;エルブスタチン;エポネマイシン;サメ軟骨;プロタミン;ルイシアニンA、C、およびD;PAFアンタゴニストWEB 2086;オーラノフィン;アスコルビンエーテル;および硫酸化多糖類D4152が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0077】
本発明の方法および処方を用いて核酸物質を用いて標的化される遺伝子には、その発現が望ましくない表現型形質に相関している遺伝子が含まれるがこれらに限定されるわけではない。このように、癌、リウマチ性関節炎およびウイルスに関連する遺伝子が標的化されうる。癌関連遺伝子には、腫瘍遺伝子(たとえば、K-ras、c-myc、bcr/abl、c-myb、c-fms、c-fos、およびcerb-B)、増殖因子遺伝子(たとえば、上皮細胞増殖因子およびその受容体、線維芽細胞増殖因子結合タンパク質をコードする遺伝子)、マトリクスメタロプロテイナーゼ遺伝子(たとえば、MMP-9をコードする遺伝子)、接着分子遺伝子(たとえば、VLA-6インテグリンをコードする遺伝子)、腫瘍サプレッサー遺伝子(たとえば、bcl-2およびbcl-X1)、血管新生遺伝子、および転移遺伝子が含まれる。リウマチ性関節炎関連遺伝子には、たとえばストロメリシンおよび腫瘍壊死因子をコードする遺伝子が含まれる。ウイルス遺伝子には、ヒト乳頭腫ウイルス遺伝子(たとえば、頚癌に関連する)、B型およびC型肝炎ウイルス遺伝子、およびサイトメガロウイルス(CMV)遺伝子(たとえば、網膜炎に関連する)が含まれる。これらの疾患または他の疾患に関連する多数の他の遺伝子も同様に標的化されうる。一定の態様において、核酸は、c-myc、VEGF、CD4、CCR5、gag、MDM2、Apex、Ku70、またはErbB2をコードするmRNAを標的としうる。
【0078】
遺伝子調節法には、siRNA、miRNA、および他の阻害性核酸の投与;治療核酸、タンパク質、またはペプチドをコードする核酸の投与が含まれる。もう1つの局面において、本発明は、治療的阻害性オリゴヌクレオチドまたは核酸(アンチセンス、リボザイム、siRNA、dsRNA)分子の用量を調製するおよび/または対象に投与する方法を提供し、投与された核酸は、転写または翻訳などの生物学的プロセスを阻害する。本発明は、対象に対して治療的恩典をもたらすために、記述の方法を用いて調製された核酸送達媒体を用いて、対象に1つまたは複数の治療核酸分子を投与する方法を提供する。本明細書において用いられるように、「治療核酸分子」または「治療核酸」は、核酸として、または発現された核酸もしくはポリペプチドとして対象に治療恩典を付与する任意の核酸(たとえば、DNA、RNA、ペプチド核酸などの天然に存在しない核酸およびその類似体、ならびにそれらの化学的コンジュゲート)である。対象は好ましくは、マウスなどの哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0079】
血栓溶解物質が含まれる物質を、多様な方法によって送達媒体に導入することができるが、本発明の装置および/または方法に従う方法が最も好ましい。
【0080】
本発明の任意の組成物の用量は、患者の症状、年齢および体重、処置または予防される障害の性質および重症度、投与経路、ならびに本発明の組成物の剤形に応じて多様であろう。本発明の任意の製剤を1回用量または分割用量で投与してもよい。本発明の組成物の用量は、当業者に公知のまたは本明細書において教示される技術によって容易に決定されるであろう。
【0081】
一定の態様において、本発明の化合物の用量は一般的に、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる、体重1 kgあたり約0.001、0.01、1、5、10 pg/ng/mgから約0.1、1、5、10 pg/ng/mg/gの範囲であろう。
【0082】
本発明にはまた、治療物質を含有する血小板の有効量を患者に投与する段階を含む、治療物質を必要とする患者を処置する方法が含まれる。
【0083】
数々の疾患状態または病態が、異常な血小板機能またはレベルに関連している。これらの疾患または病態には、血小板減少症(たとえば、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、薬物誘発性血小板減少症、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT))、ゴーシェ病、再生不良性貧血、胎児母体同種免疫性血小板減少症、HELLP症候群、溶血性尿毒症症候群、化学療法、デング、α-δ血小板貯蔵プール欠乏症(αδSPD)、血小板増加症(たとえば、良性本態性血小板増加症)、ベルナール-スーリエ症候群、グランツマン血小板無力症、スコット症候群、フォン・ヴィレブランド病、ヘルマンスキー・パドラック症候群、シクロオキシゲナーゼ活性の減少(誘発性または先天性)、貯蔵プール欠損(後天性または先天性)、血友病、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳血管疾患、卒中、CVA(脳血管偶発事象)、末梢動脈閉塞疾患(PAOD)、血管新生障害、または癌(たとえば、抗血管新生物質の送達)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0084】
III.代表的な電気穿孔デバイスの説明
電気穿孔は、電気穿孔器、すなわち電流を生じさせてこれを細胞溶液の中に送る器具によって行われる。溶液を、通常その側面に2つのアルミニウム電極を有するガラスまたはプラスチックキュベットにピペットで入れる。例として、細菌の電気穿孔の場合、懸濁液約50μLを通常用いる。電気穿孔の前に、これを形質転換されるべきプラスミドと混合する。混合物をピペットによってキュベットに入れ、電圧(数百ボルトがしばしば用いられる)を電気穿孔器において設定し、キュベットを電気穿孔器に挿入する。電気穿孔の直後、液体培地1 mLを細菌に添加して(キュベットにおいてまたはエッペンドルフチューブにおいて)、チューブを細菌の最適な温度で1時間またはそれより長くインキュベートした後、寒天プレート上に広げる。
【0085】
本発明と共に用いることができるフロー電気穿孔デバイスは、1つの態様において、以下を含む:機器(エレクトロニクスモジュール(電源ボックスおよびタワー));コンピューター(エレクトロニクスモジュールに接続して、プロセス関連データを実際にリアルタイムで処理、管理する);モニター(グラフィックユーザーインターフェース[GUI]を表示してユーザーとの対話を可能にする);および使い捨てセットまたは処理チャンバー(その中で細胞懸濁液のフロー電気穿孔が起こる成分)。
【0086】
一定の態様において、本発明は、電気穿孔されうる細胞の数、それらが電気穿孔されうる時間、および静的またはバッチ電気穿孔法に伴うそれらが懸濁される溶液の容積に関する実際的な制限を克服するためにフロー電気穿孔を用いる。この方法によって、細胞懸濁液を、好ましくは使い捨てであるフローセル内の平行な棒状電極を横切るように通過させる。異なる構成のフローセルが本発明において用いられうることを理解すべきである。この通過の際に、細胞は、既定の特徴を有する電気パルスに供される。次に関心対象分子が、濃度および/または電気勾配に従って細胞の中に拡散する。本発明は任意で、一定範囲の電場強度に細胞を供することができる。一般的に言って、本発明において有用な電場強度はおよそ5 kV/cmより大きい;好ましくは、およそ5 kV/cmから7 kV/cmである。
【0087】
プロセスは、必要な流体および試料を有する容器中の溶液および細胞懸濁液を含むフローセルを取り付けることによって開始される。フローセルを定位置に嵌めて、ヒンジパネルを閉じることによって固定する。ポンプおよびピンチバルブの操作を制御する電気穿孔系に、必要なコマンドを提供することによって、プライミング溶液(生理食塩液)および細胞懸濁液を導入する。細胞が電極間の流路を横切ると、選んだ電圧、持続期間、および周波数の電気パルスが印加される。産物および排液は指定された容器に収集される。
【0088】
ユーザーは、本発明のフロー電気穿孔系に、望ましい電圧および他のパラメータを入力する。先に書いたように、広範囲の設定が任意で利用可能である。キャパシタバンクを望ましい電圧まで充電するために、コンピューターがタワーにおけるエレクトロニクスに連絡する。次に、これが流路に送達されて電場を作製する前に、適当なスイッチによって電圧を操作する(スイッチは、交互のパルスまたはバーストを提供して、電場に対する持続的な曝露によってもたらされる電極消耗を最小限にする)。電圧は、オペレーターによって、または本発明の方法に従って決定されるように、持続期間および周波数パラメータの組に従って本発明のフロー電気穿孔系に送達される。フロー電気穿孔系の例の詳細は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,186,559号において記述される。
【0089】
電気穿孔パラメータは、本明細書において記述される技法および方法を用いて決定されるであろう。本発明の局面は、静的およびフロー電気穿孔系の状況において用いられうる。電気穿孔チャンバーの寸法は、最適な電気穿孔に関するパラメータを決定する際に検討されるであろう。
【0090】
電気穿孔の技術分野は、生物学的細胞および小胞をトランスフェクトするエクスビボ手段によって充実している。たとえば、Meserolに対する米国特許第5,720,921号は、小胞がチャンバーに移されて電気穿孔され、電気穿孔パルスの印加後に洗い流される、連続的フローチャンバーとして設計される電気穿孔チャンバーを開示している。他のフローチャンバーには、その各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,612,207号および第6,623,964号、ならびに米国特許出願公開第2001/0001064号が含まれる。
【0091】
小胞を運ぶ媒体の連続的な流れを用いないが電気穿孔チャンバーデバイスに様々な要素が含まれる他の電気穿孔チャンバーも同様に開示されている。たとえば米国特許第4,906,576号は、他の要素の中で磁性コアを有するチャンバーを開示している。米国特許第6,897,069号は、取り外し可能な電極を有する電気穿孔試料チャンバーを開示している。他のチャンバーは、少量の試料を取り扱うためのキュベットスタイルである。WO04/083,379において開示されるチャンバーなどのなお他のチャンバーは、より大きい容積を提供する。
【0092】
電気穿孔チャンバーの電極は2つまたはそれより多い「極板」電極を含みうる。電極極板は、チタンおよび金が含まれる任意の有用な生物学的適合性で導電性の材料を含みうる。極板は、一般的に向かい合う電極間の距離または間隙より大きい、さらにより好ましくは間隙の距離の2倍より大きい幅の寸法を含みうる。電極極板は、本発明によって決定されるように電気パルスによってアドレス可能でありうる。電極極板は、陰極1〜100個と陽極1〜100個のアレイを含みうるが、正の電極と負の電極の対を形成するために常に陰極と陽極との偶数である。
【0093】
陰極と陽極電極は、0.4〜1 cmの距離離れてリザーバーの向かい合う内面に距離を置いて存在しうる。
【0094】
陽極と陰極の各々の対は、チャンバーのサイズに応じた負荷抵抗(Ω)で電圧を加えられうる。
【実施例】
【0095】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の様々な局面をさらに例証するために含められる。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実践において良好に機能すると本発明者らによって発見された技術および/または組成物を表し、このように、その実践の好ましい様式を構成すると見なされうることは当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示の具体的態様に多くの変更を行ってもよく、それでも本発明の趣旨および範囲に含まれる同様または類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0096】
実施例1
高電圧パルスに関連する導電率の変化
0.5 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒間離して2回連続パルスで導電性培地に印加した(図4)。各パルスの開始時に軽度の短期間の導電率の増加を認める。
【0097】
1 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒間離して4回連続パルスで導電性培地に印加した(図5)。各パルス期間のみならず、各々のその後のパルスについて顕著な導電率の増加を認める。
【0098】
1.5 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒間離して4回連続パルスで導電性培地に印加した(図6)。各パルス期間のみならず、各々のその後のパルスについて顕著な導電率の増加を認める。
【0099】
パルス2〜4の開始時の導電率の値は、それらの前のパルスの終了時の値とほぼ同じである。このことは、パルス間の間隔での緩衝液の冷却速度が遅いことを示している。
【0100】
2 kV/cmの電場を、1 msの持続期間で1秒間離して4回連続パルスで導電性培地に印加した(図7)。この電場強度では、試料の導電率は、各パルス期間で急速に増加して、その初期値の200%を超えた。パルス3と4のあいだに、アーキングが起こった。
【0101】
実施例2
血小板の調製および処理
血小板の単離:血小板を、最初に0.3 Mクエン酸−PRP 40 mL+クエン酸400μLを用いることによって、pHを6.5に調節した後、500 gで15分間遠心することによってPRPから単離する。
【0102】
血小板の洗浄:洗浄緩衝液における2回の洗浄サイクル:36 mMクエン酸、90 mM NaCl、10 mM EDTA、および5 mMグルコース、pH 6.5。PGE(最終で1μM)またはPGI(最終で0.05μg/mL)を各洗浄の前に加える。
【0103】
EPのための血小板の調製:洗浄後、血小板をMaxCyte EP緩衝液(+2 mM EGTA)1容量+300 mMタウリン(+2 mM EGTA)1容量に再懸濁させる。血小板数を600 K/μLに調節する。
【0104】
血小板の再閉鎖:EPおよび非EP血小板懸濁液を37℃の水浴中に30分間のあいだ移す。
【0105】
負荷した化合物を除去するための血小板の洗浄:タイロード緩衝液(135 mM NaCl、4 mM KCl、6 mM NaHCO3、0.5 mM NaH2PO4、1 mMグルコース、10 mM HEPES、pH 6.5)1 mLを、血小板懸濁液150μLを含有する各試料チューブに加えた後、500 gで10分間遠心する。pH 6.5のタイロード緩衝液(Ca++およびMg++を含有しない)1 mLによる2回の洗浄サイクルを行う。
【0106】
EP後分析:洗浄後、血小板の各アリコートをPBS 300μLに懸濁させて、FACSによって分析する。
【0107】
血小板への核酸の負荷
血小板:血小板をLifeblood Biological Services(Memphis, TN)から得た。血小板を先に記述したように電気穿孔のために単離、洗浄および調製した。
【0108】
血小板の負荷:血小板にAllStars Negative Control siRNA(Qiagen, Inc.)を負荷した。siRNAの保存液を血小板懸濁液に最終濃度1μMで加えて、試料を「同時インキュベーション」および「電気穿孔」試料に分けて、後者をMaxCyteシステム上で電気パルスを印加することによって処理した。電源キャパシタンスを20μFに設定して、電場強度は5 kV/cmであった。
【0109】
電気穿孔後、血小板懸濁液を、先に記述したように再度閉鎖させて洗浄した。結果を図8に示す。
【0110】
実施例3
血小板への低分子の負荷
血小板を既に記述されたように調製して、前述のように電気穿孔によってAlexa-488(Invitrogen Inc.)を負荷した。結果を図9に示す。
【0111】
本明細書において開示および特許請求される組成物および/または方法は全て、本開示に照らして過度な実験を行うことなく作製および行われうる。本発明の組成物および方法を、特定の態様に関して記述したが、本明細書に記述の方法の段階における組成物および/もしくは方法に、または方法の段階の順序に変更を適用してもよく、それらも本発明の概念、趣旨、および範囲に含まれることは当業者に明らかであろう。より具体的に、化学的および生理的に関連する一定の物質を本明細書において記述される物質の代わりに置換してもよく、それでも同じまたは類似の結果が達成されるであろうことは明らかであろう。当業者に明らかであるそのような類似の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、および概念に含まれると認められる。
【0112】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書における記載を補う例示的な技法または他の詳細を、それらが提供する程度に、具体的に参照により本明細書に組み入れられる:


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、電気穿孔法:
(a)電気パルスの際、パルスの際の電気穿孔培地における導電率の増加を表す第一の時定数(t1)が、キャパシタの放電を表す第二の時定数(t2)以上となるように、電気穿孔パラメータを決定する段階であって、パルスの持続期間がt1またはt2のいずれかより短い、段階;および
(b)電気穿孔される試料に該電気穿孔パラメータ下で1つまたは複数の電気パルスを印加する段階。
【請求項2】
電気穿孔パラメータが、緩衝液の導電率、電源キャパシタンス、電気穿孔チャンバーの幾何学、および電場強度を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
緩衝液の導電率が0〜3Ω/mのあいだである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
電源キャパシタンスが1〜106μFのあいだである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
電気穿孔チャンバーが、長さ0.1〜100 cm、幅0.1〜10 cm、および間隙0.001〜10 cmの寸法を有する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
電場が0.01〜10 kV/cmのあいだである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
電気パルスが少なくとも1μ秒である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
電気パルスが大きさ0.001〜10,000ボルトの電気パルスである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
試料が、生細胞、細胞粒子、または脂質小胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
細胞が血液細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
化学または生物学的物質を細胞に負荷する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
生物活性物質が、核酸または低分子である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法を用いて産生された、電気穿孔された細胞、細胞粒子、または脂質小胞。
【請求項14】
細胞粒子が血小板である、請求項13記載の電気穿孔された細胞、細胞粒子、または脂質小胞。
【請求項15】
少なくとも50、60、70、80、または90%の負荷効率を有する、電気穿孔された細胞、細胞粒子、または脂質小胞の集団。
【請求項16】
請求項1記載の方法を実行するように構成された電気穿孔装置。
【請求項17】
以下の段階を含む、電気穿孔法:
(a)減衰する電気パルスの際に、電気穿孔培地における導電率の増加速度が電圧減衰速度より低くなるように、電気穿孔パラメータを決定する段階;および
(b)電気穿孔される試料に該電気穿孔パラメータ下で1つまたは複数の電気パルスを印加する段階。
【請求項18】
電気穿孔パラメータが、緩衝液の導電率、電源キャパシタンス、電気穿孔チャンバーの幾何学、および電場強度を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
電圧減衰速度が10μs〜10 sである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
試料が、生細胞、細胞粒子、または脂質小胞を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
細胞が血液細胞である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
化学物質または生物学的物質を細胞に負荷する段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
生物活性物質が、核酸または低分子である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項17記載の方法を用いて産生された、電気穿孔された細胞。
【請求項25】
電気穿孔後、少なくとも50、60、70、80、または90%の負荷効率を有する、電気穿孔された細胞、細胞粒子、または脂質小胞の集団。
【請求項26】
請求項17記載の方法を実行するように構成された電気穿孔装置。
【請求項27】
請求項13、請求項15、請求項24、または請求項25記載の粒子に含まれる薬物、生物製剤、または他の生物活性分子の有効量を投与することによって、疾患または病態を有するまたは有することが疑われる対象を処置する方法。
【請求項28】
疾患が感染疾患である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
感染疾患が、細菌、真菌、寄生虫、またはウイルス感染症である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
細菌感染症が、マイコバクテリア感染症である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ウイルス感染症がレトロウイルス感染症である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
レトロウイルス感染症がHIV感染症である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
疾患が炎症疾患である、請求項27記載の方法。
【請求項34】
疾患が癌である、請求項27記載の方法。
【請求項35】
疾患が血管閉塞疾患である、請求項27記載の方法。
【請求項36】
薬物送達妨害のために処置効力が制限される、および/または処置の毒性が用量制限的である、請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−528550(P2011−528550A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518885(P2011−518885)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/050726
【国際公開番号】WO2010/009252
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(505311928)マックスサイト インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】