説明

電気絶縁複合体の物理的特性及び性能のナノ及びメソシェル−コア制御

ホスト樹脂マトリクス(42)とホスト樹脂中に混合されて樹脂混合物を形成している高熱伝導性フィラー(30)とから成る高熱伝導性樹脂。フィラーは、少なくとも樹脂混合物の3〜5重量%を構成し、フィラーは、少なくとも1つの寸法において平均1〜100nmであり、粒子は、粒子の最も長い寸法において平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラー(30)の周囲に秩序化樹脂シェル(40)を形成して、それにより、樹脂分子は、高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルの連続経路が樹脂混合物中に創生されるように、高熱伝導性フィラー間に秩序化樹脂シェル(44)の重複が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれているスミス(Smith)らにより2005年6月14日に出願された米国特許出願第11/152,983号「樹脂に配合された高熱伝導性材料(High Thermal Conductivity Materials Incorporated into Resins)」の一部継続出願である。
【0002】
本発明の分野は、ホスト樹脂マトリクス中のフィラー及び該フィラーのホスト樹脂マトリクスとの相互作用に関する。
【背景技術】
【0003】
いずれの形式の電気器具を用いても、導体を電気的に絶縁する必要がある。あらゆる電気及び電子システムのサイズを絶え間なく縮小させて合理化する取り組みについて、対応して、より優れ、より小規模な絶縁体及び絶縁システムを見出すことが要求されている。
【0004】
各種のエポキシ樹脂材料は、表面に容易に付着し得る強靭で可撓性のある電気絶縁材料であるというその実用的な利点の故に、電気絶縁システムで広範に使用されてきた。マイカフレーク及びガラス繊維のごとき在来の電気絶縁材料が、これらのエポキシ樹脂で表面塗布され及び接合されて、機械強度特性、耐化学薬品特性及び電気絶縁特性が向上した複合材料が作製される。在来のワニスは一部の高圧電気装置で引き続き使用されているが、多くの場合、エポキシ樹脂はこれに取って代わっている。
【0005】
良好な電気絶縁体は、将にその性質により、良好な断熱材でもあるが、このことは望ましくない。断熱作用、特に空冷式電気装置及び部品のための断熱作用は、部品ばかりでなく装置全体としての効率及び耐久性を低下させる。最大の電気絶縁特性及び最小の断熱特性を有する電気絶縁システムを作製することが望ましい。
【0006】
電気絶縁体は、しばしば、絶縁テープの形で出現するが、絶縁テープ自体は各種の層を有する。これらの種類のテープには、紙層が共通して存在するが、紙層は界面で繊維層に結合されていて、どちらの層も樹脂で含浸される傾向がある。好ましい種類の絶縁材料はマイカテープである。マイカテープの改良は、米国特許第6,103,882号に教示されているような触媒マイカテープを含む。マイカテープは導体に巻き付けられて、極めて良好な電気絶縁を与える。この例を図1に示す。ここには、複数回巻かれた導体14からなるコイル13が示され、このコイルは、ここに示した実施例では、ベークライト化処理をしたコイルとして組み立てられている。ターン絶縁体15は、繊維状材料、例えば、熱処理されたガラス又はガラス及びダクロン、から作製される。コイルの接地絶縁は、ベークライト化処理をしたコイル14の周囲に、1層以上の複合体マイカテープ16を巻き付けることによって与えられる。このような複合体テープは、例えばガラス繊維布又はポリエチレングリコールテレフタレートマットの柔軟性裏打シート18と組み合わされた、細かいマイカフレークの紙又はフェルトであり、マイカ層20は液体樹脂状結合剤によって結合されている。一般に電圧要件に応じて、複合体テープ16の複数の層がコイルの周囲に巻き付けられる。強靭な繊維状材料、例えばガラス繊維、の外側テープ21をコイルに巻き付けてもよい。
【0007】
一般に、マイカテープ16の多重層がコイルの周囲に巻き付けられるが、高圧コイルについては16以上の層が一般に使用される。次いで、樹脂がテープ層に含浸される。樹脂は、絶縁テープから独立して、絶縁体として使用することさえできる。都合の悪いことに、この量の絶縁体は、熱放散の複雑さを更に増大させるだけである。必要なのは、在来の方法よりも熱をよりよく伝導することができるが、電気絶縁並びに機械的及び熱的能力を始めとする他の性能要素を損なうことのない電気絶縁体である。
【0008】
従来技術による他の問題も存在し、その一部は更に読み進めることで明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記を考慮して、本発明と一致する方法及び装置は、とりわけ、高熱伝導性(HTC)含浸媒体を通じての光子の輸送を、促進して、HTC材料間の平均距離を光子平均自由行路長未満に短縮させる。これにより、光子散乱が低減して、熱源から遠ざかる光子のより大きな正味の流れ又は流束が生成する。更に、HTC材料は、周囲の樹脂構造にある程度の秩序化を与える。これはHTC材料の周囲に秩序化樹脂シェル(ORS)を与える。この方法で生成されるORSは、HTC濃度及びクラスタ形成により操作して、ORSを通過する光子の散乱を低減するORSの重複区域を生成することができる。該樹脂は、多重層絶縁テープ等のホストマトリクス媒体の一部であり得る。
【0010】
高熱伝導性(HTC)有機−無機ハイブリッド材料は、分離2相有機−無機複合体から、分子アロイをベースとする有機−無機連続相材料から、そして、デンドリマーコア−シェル構造内で有機−無機界面が分離でない、分離有機デンドリマー複合体から形成され得る。光子輸送を向上させ光子散乱を低減させる連続相材料構造は、構造要素の長さスケールを熱輸送に関与する光子分布よりも短くするか若しくは光子分布に釣り合せることを保証するか、並びに/又は、例えば、マトリクスの全体構造秩序を向上させることにより及び/若しくは複合体内での界面光子散乱を効果的に消滅又は低減させることによって光子散乱中心の数を減少させることを保証することによって、形成され得る。連続的有機−無機ハイブリッドは、ナノ粒子寸法がポリマー又はネットワークのセグメント長(典型的には、1〜50nm又はそれ以上)の水準又はそれ未満である無機、有機又は有機−無機ハイブリッドナノ粒子を直鎖又は架橋ポリマー(熱可塑性物質を含む)及び熱硬化性樹脂に導入することによって形成され得る。これらの多様な種類のナノ粒子は、密接に共有結合したハイブリッド有機−無機均質材料を形成するための反応性表面を含有する。相互に又はマトリクスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して連続材料を形成し得る無機−有機デンドリマーにも、同様な要件が存在する。分離及び非分離有機−無機ハイブリッドの両方の場合に、ゾル−ゲル化学作用を使用して連続分子アロイを形成できる。その結果得られる材料は、在来の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、未反応真空圧含浸樹脂として、そして回転及び静電発電装置並びに高圧(約5kV超)及び低圧(約5kV未満)の両方の電気装置、部品及び製品における電気絶縁用途を満たす独立型材料として、利用される場合に、在来のマイカガラステープ構造物における接合樹脂として、使用され得る。
【0011】
所定の物理的特性及び性能特性を有し、有機ホスト材料の存在下でのナノ〜マイクロサイズの無機フィラーの使用に基づいた、設計された電機絶縁材料の形成は、有機ホストとの密接な界面を形成し得る粒子表面の製造を必要とする。このことは、フィラー表面へ化学基をグラフトさせて表面をホストマトリクスと化学的又は物理的に適合させることによって達成され得るが、或いは表面は、有機ホストと反応して粒子とホストとの間に共有結合を形成する化学反応性官能基を含有していてもよい。有機ホスト材料の存在下でのナノ〜マイクロサイズの無機フィラーの使用は、バルク誘電及び電気特性並びに熱伝導性に加えて定義された表面化学作用を備えた粒子の製造を必要とする。大半の無機材料は、形状及びサイズ等の構造的特徴と、各種の電気絶縁用途に適合し又は特性及び性能の適正なバランスを有する複合体たり得るための特性とを、独立して選択することを許さない。このことは、適切なバルク特性並びに形状及びサイズ特徴を備えた粒子を選択し、次いで、電気絶縁用途に必要な複合体特性及び性能を更に制御するために、表面及び界面特性並びにその他の特性を変性することによって達成され得る。これは、金属及び非金属無機酸化物、窒化物、炭化物及び混合系の製造と、電気絶縁システムにおいてホスト材料として作用する適切な有機マトリクスと反応することができる反応性表面基を含む有機被覆とを、包含する、粒子の適切な表面被覆によって達成され得る。得られるハイブリッド材料は、未反応の又は部分的に反応した複合体として有機樹脂と組み合わされたときに、マイカ−ガラステープ構造物中の樹脂として、他のガラス繊維、炭素繊維並びに重層型及び織物複合体において在来のマイカテープ構造物用の未反応真空圧含浸樹脂として、回転及び静電発電装置並びに高圧及び低圧の両方の電気装置、部品及び製品での電気絶縁用途を満足させる独立型材料として使用され得る。
【0012】
本発明によるこれら及び他の目的、特徴及び利点は、ホスト樹脂マトリクス及び高熱伝導性フィラーを含有してなる高熱伝導性樹脂による特別な実施態様によって提供される。フィラーは、樹脂混合物の少なくとも3〜5重量%を構成し、フィラーは、少なくとも1つの寸法において、平均1〜100nmであり、ここで、粒子は、粒子の最長の寸法において、平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成し、これにより、樹脂分子は、高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルの連続経路が樹脂混合物中に創生されるように、秩序化樹脂シェルの重複が高熱伝導性フィラーの間に形成される。
【0013】
特別の実施態様において、フィラーは、樹脂マトリクスとの反応性を向上させるために表面処理されている。表面処理は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルから成る群より選択される。フィラーは樹枝状星形にも形成できる。
【0014】
他の特別な実施態様において、秩序化樹脂シェルは、HTCフィラーの体積にほぼ等しいか、それ以上の体積を有し、秩序化樹脂シェルは、個々の粒子の周囲に形成される。フィラーは、より大きい粒子及びより小さい粒子より成り、より大きい粒子は、100nmを超える少なくとも1つのサイズ寸法を有し、より小さい粒子は、100nmよりも小さい少なくとも1つのサイズ寸法を有する。特に、より小さい粒子に対するより大きい粒子の比は、より高く、重量で、3:1〜10:1である。
【0015】
更に他の実施態様において、樹脂は、少なくとも50%の液晶エポキシ樹脂より成る。フィラーは、液晶エポキシ樹脂の結晶化のための播種部位を与え得る。粒子は、電荷輸送の向上をもたらすためにも、表面処理することができ、OH、COOH、NH2及びSO3Hを含む基より選択される官能基が付加されていてもよい。
【0016】
各種の他の実施態様において、樹脂混合物は、多孔性媒体に含浸される。高熱伝導性フィラーは、10〜50のアスペクト比を有する。そして、高熱伝導性フィラーは、2相有機−無機複合体から形成される。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、ホスト樹脂ネットワークと、ホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散されホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応した無機高熱伝導性フィラーとを含有してなる、連続的有機−無機樹脂を提供する。高熱伝導性フィラーは、酸化物、窒化物及び炭化物の内の少なくとも1つより選択され、表面処理されて、ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されている。連続的有機−無機樹脂は、最低3重量%及び最高50重量%の高熱伝導性フィラーを含有してなる。高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、ここで、粒子は、粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、これにより、樹脂分子は高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルの連続経路が樹脂混合物中に創生されるように、秩序化樹脂シェルの重複が高熱伝導性フィラー間に形成される。
【0018】
特別な実施態様において、酸化物、窒化物及び炭化物は、混合された化学量論的及び非化学量論的組合せで、Al23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC及びSiO2を含む。連続的有機−無機樹脂は、多孔性媒体中に含浸され、多孔性媒体は、紙マトリクスである。
【0019】
更に別の実施態様において、本発明は、多孔性媒体と高熱伝導性材料充填樹脂とを含んでなる、高熱伝導性樹脂を含浸させた多孔性媒体を提供する。高熱伝導性材料は、3〜50重量%の樹脂を含み、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛並びにダイヤモンド及びデンドリマーの内の1つである。高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、粒子は、粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、これにより、樹脂分子は、高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルの連続経路が樹脂混合物中に生成されるように、秩序化樹脂シェルの重複が高熱伝導性フィラーの間に形成される。紙マトリクスの例は、マイカ−ガラス絶縁紙又はテープである。
【0020】
本発明の他の実施態様も存在するが、これらは、詳細な説明を更に読み進めるときに明らかとなる。
【0021】
本発明は、次の図面を参照する実施例によって、更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】固定子コイルの周囲に巻き付けられている絶縁テープの使用を示す。
【図2】本発明の充填樹脂中を移動する光子を示す。
【図3】異なる形状の粒子の周囲の、樹脂秩序化の例を示す。
【図4】樹脂媒体中でのフィラー材料の周囲で重複している秩序化樹脂シェルの例を示す。
【図5】混合して多重の重複秩序化樹脂シェルを形成している、より大きい粒子及びより小さい粒子を示す。
【図6】固定子コイル中の熱の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、高熱伝導性(HTC)複合体を提供する。HTC複合体は、2相有機−無機ハイブリッド材料であるナノ、メソ及びマイクロフィラーと組み合わされた樹脂ホストネットワークを含有してなる。有機−無機ハイブリッド材料は、2相有機−無機複合体から、分子アロイをベースとする有機−無機連続相材料から、そして有機−無機界面がデンドリマーコアシェル構造から非分離である分離有機デンドリマー複合体から、形成される。HTCフィラーの分布によってだけでなく、HTCフィラーの周囲に創生された秩序化樹脂シェル(ORS)によっても、光子輸送は向上され、光子散乱は低減される。特に、各種の実施態様を使用して、重複秩序化樹脂シェルを形成できる。
【0024】
所定の物理的特性及び性能特性を有する、巧みに設計された電気伝導性及び絶縁性の複合体は、各種の有機ホスト樹脂中で、マイクロ及びマクロサイズフィラー系の両方を用いて、配合され得る。粒子と樹脂との間の界面は、それが無機であろうと金属であろうと、物理的特性及び性能を向上させるために使用される。
【0025】
このことは微粒子充填絶縁材料において認識され、表面の化学的性質がホスト樹脂と適合性であるフィラーを選択するか又はシラン及び関連化合物のようなカップリング剤を使用することによって、表面濡れ及びホストマトリクスによるマイクロフィラーの接着の改善を達成できる。反応性マトリクス樹脂が存在する場合、反応性カップリング剤の使用は、良好な電気的特徴及び耐電圧性能に加えて、良好な熱伝導性及び機械的特性の達成を促進する等の恩恵も付与し得る。反応性マトリクス樹脂の一部の例としては、シラン、シラノール、メチルシラン、ビニルシラン、アミノシラン、アルコキシシラン及びエポキシシランが挙げられる。
【0026】
粒子周囲の樹脂の構造化界面によって占有された体積は、フィラー粒子によって占有された体積の水準又はそれ以上である。このことは、直径が、又は高アスペクト比の粒子の場合には幅が、約1〜100nmのサイズ範囲のフィラー粒子に当てはまる。より大きい粒子は、その周囲の樹脂をも秩序化するが、秩序化樹脂の総体積は粒子の体積よりも小さくなる傾向がある。従って、ナノ及びメソスケールを扱う場合、これらのORSは、粒子寸法より大きく、相互に又は塊状ORSを創生するフィラーのクラスタと重複する。このことは、絶縁複合体のバルク特性を制御するために使用され得る、長く伸びるORS結合及び制御された浸透構造を達成する、可能性を与える。
【0027】
図2は、樹脂マトリクス32にORSを充填していないHTC材料30を示す。マトリクス中を移動する光子34は、平均行路長nを有する;これは、光子の平均自由行路である。この行路長は、樹脂マトリクスの正確な組成に応じて変化し得るが、エポキシ樹脂等の樹脂では、一般に2〜100nm、より典型的には5〜50nm、である。従って、充填HTC材料間の平均距離は、平均して、この距離未満であるべきである。HTC材料間の距離はテープの厚さ方向対横方向で変化し得るが、間隔を最適化する必要があるのは、一般に、厚さ方向であることに注目されたい。
【0028】
光子は、樹脂32中を移動するときに、埋め込まれたHTC材料30に沿って通過する傾向がある。これにより、局所的な光子流量が増加することになる。というのは、HTC原材料が10〜1,000W/mKの熱伝導性を有するに対して、樹脂が約0.1〜0.5W/mKであるからである。光子は、充填されたHTC材料に沿って通過するので、材料間の距離がn未満であるとすると、光子36は次のHTC材料まで通過する;従って、HTC材料は、相互連結ネットワークを形成する。図2は、理想化された行路を示す。実際に、光子が樹脂とHTC材料との間を通過するときに光子散乱があるだろうが、材料間の距離が短くなればなるほど、そしてHTC材料と樹脂との間の光子伝播特徴の一致がより良好であればあるほど、散乱はより少なくなる。
【0029】
樹脂に充填されたHTC材料の量は、実際には、かなり少なく、図2に示すように、例えば約10%であり得る。従って、充填HTC材料間の平均距離、即ち長さスケール、は、nよりも僅かに大きいことがある;しかしながら、かなりの部分は、なおnよりも小さく、従って本発明の実施態様に含まれる。特別の実施態様において、次のHTC材料からの距離がn未満である材料の割合は、50%超であり、特別な実施態様では75%超である。特別な実施態様では、HTC材料の平均長はnより大きく、このことは光子輸送を更に促進する。
【0030】
nが短くなればなるほど、充填HTC材料の濃度は高くなり、反対に粒径が大きくなればなるほど、必要なHTC材料は少なくなる。特別な実施態様では、樹脂及びフィラーの総体積に基づいて5〜60%の充填HTC材料を使用し、更に特別な実施態様では25〜40%である。樹脂がテープに含浸されるとき、樹脂は、テープ繊維と基材との間の間隔を埋める。しかしながら、この時点でのテープ内でのHTC分布は最適化されていないことが多く、nよりも大きいHTC材料間の平均距離を有することもあり得る。本発明の実施に当っては、次に、樹脂含浸テープを圧縮して、充填HTC材料間の距離を短縮する。
【0031】
図3には、ORSの例が示されている。フィラー粒子30は、樹脂分子32に包囲されている。フィラー表面からの所与の距離以内に、樹脂分子は、高度の秩序40を有し、それによりORSを形成する。樹脂分子の平均長並びに樹脂分子によるメソゲン構造の量は、秩序化に影響を及ぼす。一般に、メソゲンサブ構造は秩序化にプラスの影響を有するのに対して、より長い非結晶性樹脂分子は、それらの秩序化及び構造化の程度が低いので、マイナスの影響を有する。一般に、樹脂分子がフィラーから遠ざかれば遠ざかるほど、秩序化の量が減少し、最終的に秩序化の量が無視できる程度になる(42)。このことの例外は、液晶ポリマーマトリクス又はブレンドであり、そこでは、フィラーからいくらかの距離における秩序化の程度は、常に有限である。このような系では、フィラー表面は核生成部位を供給し得る。
【0032】
図4を参照すると、粒子30が十分に近接した間隔で配置されると、秩序化領域40は相互に重複することができ(44)、それにより連続重複区域を形成する。連結されたシェルは、光子流量が増大した経路を与えるが、これは、秩序化領域中の光子の散乱が、非秩序化樹脂42中の散乱に比較して、減少するためである。秩序化領域を併合することは、相互に対してプラスの影響を有することができ、ORSは隣接するORSと混ぜ合わせられるので、ORSを僅かに拡張させる。
【0033】
樹脂中に経路を形成するために必要なフィラーの濃度は、フィラーのサイズ、表面の化学的性質及び樹脂の組成等の、多重の因子に依存する。ビスフェノールA又はF樹脂における100%の粒子の濡れ及び100nmの平均粒径/幅を仮定すると、物理的浸透が発生するためのフィラー/樹脂複合体中のフィラーの総割合は、粒子形態に応じて、典型的には、35〜50重量%である。しかしながら、ORS重複を至るところで確保するためには、100nm範囲のサイズを扱う場合には、フィラー粒子の濃度は少なくとも3〜5重量%であるべきである。濃度を上昇させると重複量は増加するが、この効果による光子輸送の改善は、重複が広がるにつれて漸減する。
【0034】
より小さいHTCフィラー材料を使用して、より大きい粒子と、多重のより小さい粒子から形成された均質に凝集した2次構造との、間に熱経路を連結することもできる。より大きい粒子は、高い熱伝導特性を有するが、それらが大きい故に、それらが占有する体積に関して影響を及ぼす樹脂の量は、より小さい粒子が影響を及ぼす樹脂の量よりも少ない。より大きい粒子は、nより長い距離を隔てて配置されることも多い。より小さいフィラーを点在させることにより、それらはより大きい粒子間でマトリクスを架橋するように作用し得る。
【0035】
図5はこの例を示す。ORSを形成する樹脂の量は、粒子の表面積に大きく依存し、より小さい粒子30は、それ自体の体積と少なくとも同じ大きさのORS領域を生成する傾向がある。大きい粒子31は、同じ表面積の影響されたORS40を生成する傾向があるが、より大きい粒子は、そのORSを重複させるのに十分なほど相互に近接する傾向がなく、秩序化の低い又はない大きな領域42を残す。より小さい粒子をより大きい粒子と混合することにより、より大きい粒子間の樹脂マトリクスは秩序化され得るが、秩序化内の一部の間隙43がなお存在し得る。
【0036】
本発明の目的のためには、より小さい粒子は、最大100nmである直径又は幅等のサイズ寸法を有し、より大きい粒子は、100nmを超える少なくとも1つのサイズ寸法を有する。より小さい粒子は、50nm未満の長さの更に特別な範囲を有するが、より大きい粒子は500nm超である。より小さい粒子に対するより大きい粒子の比は、より高く、重量で、3:1〜10:1である。概して言えば、より小さい粒子が小さくなればなるほど、より小さい粒子の重量が、より少ないことが必要とされる。
【0037】
ORSは中心コア周囲の一連の界面として化学的及び物理的に制御することができ、コアはフィラー粒子のバルク材料である。いずれのシェルの第1の部分も、空間的に分布されていてよいフィラー粒子自体の表面から始まり、フィラーのバルク中には存在しない欠陥部位及び化学官能基を含有していてもよい。
【0038】
周囲有機マトリクスの秩序化層は、イオン性又は若しくは非イオン性界面活性剤又はシランカップリング剤若しくは関連化合物によるフィラー粒子の表面処理によって、フィラーと界面を形成していてもよい。表面処理は、その分子量、立体配座及び充填挙動によって制御され、樹脂分子とフィラー粒子表面との相互作用を促進する。脂肪族シラン等の直鎖可撓性鎖、又はビスフェノールA若しくはF分子中のそれのような直鎖剛性ロッド分子構造、又は液晶性エポキシ等の液晶性特性を有する直鎖分子、を含有するマトリクス樹脂は、粒子形状に応じて半径方向又は垂直方向のどちらかでより高い秩序を有する。秩序化シェルを形成する傾向がある樹脂の他の例としては、マトリクス樹脂、例えば、ポリブタジエン、IPN、ラダーポリマー並びにORMOSIL(有機変性ケイ酸塩)及びシルセスキオキサン型モノマー等の有機−無機構造、等が挙げられる。このような直鎖の場合では、樹脂によって形成されたORSは、ガウス統計鎖長によって定義された距離まで伸長し(自己集合が起こらない場合)、又は直鎖可撓性及び剛性ロッド分子では自己集合秩序化距離まで伸長し、又はそれが形成する液晶相では液晶ドメインサイズまで伸長する。第1層が周囲マトリクスを配向できる表面化学又は被覆を含有する場合、ORS及びその空間範囲は、表面特性によって与えられた長距離秩序化の程度によって支配される。
【0039】
ORSは、半径方向分枝層より成る球形シェルを形成する第2、第3又は第n世代層を与えるデンドリマー又はスターポリマー構造をも含有し得る。これらは、粒子表面がホスト有機マトリクスとの反応のための非反応性又は反応性官能基を含有する可能性を持つ、半径方向に構造化された樹脂分子を形成する。
【0040】
ORSの構造は、元のナノ及びメソ粒子に密接に連結され、周囲の樹脂マトリクス内へかなりの距離まで伸長し得る。このような秩序化領域は、同等の無定形界面よりも低い光子散乱を有し、複合体の熱伝導性の向上を生じる。この向上は、ナノ又はメソ微粒子フィラーの選択及び粒子の熱伝導性によって制御される。同様に、これによって複合体における光子散乱が更に低減されるので、向上は、また、同様の光子輸送特性を有するORSについて粒子のそれよりも大きくなる。このことは、フィラー添加によって達成され得る。理想的には、粒子の光子伝播係数は、樹脂の選択によって、又はフィラーの選択による樹脂の構造的補強(重複シェルを創生すること)及び粒子の表面処理によって、秩序化樹脂の光子伝播係数と一致する。
【0041】
平均すると、より低い密度は、通常、無秩序と対になっている。構造的配向及び秩序の段階的変化対密度の段階的変化は、選択された樹脂によって、例外であり得る。
【0042】
ORSは、粒子周囲の電気伝導性を制御するために使用され得るイオン又は電子の電荷輸送の向上又は低減を与えるためにも生成され得る。これは、粒子の表面反応物質と粒子表面に誘引される樹脂分子との両方において、特別の官能基を使用することによって達成され得る。例えばOH、COOH、NH2、SO3H等の官能基は、電荷を向上させることができ、ビニル、カルボキシル、カルボニル各官能基は電荷を低下させる。
【0043】
ORSは、界面分極条件を制御する粒子の誘電率との特定の相対的な誘電率差を有するようにも生成することができ、該誘電率差によって電荷挙動は、ORS構造化ポリマー鎖がより剛性でより高度に圧密化されているので、誘電応答及び緩和挙動(誘電率及び損失)の制御を可能にする。ORSは、これに特定の電荷捕捉特性及び機械的障壁特性を与えるようにも操作することができ、これにより、複合体材料に電気トリー開始及び伝播への抵抗性を与え、複合体の電気強度及び耐電圧性能を改善することができる。
【0044】
得られる樹脂複合体は、マイカ−ガラステープ構造物における接合樹脂として、在来のマイカテープ構造物のための未反応真空圧含浸樹脂として、そして、回転及び静電発電装置並びに高圧及び低圧の両方の電気装置及び電子装置、部品及び製品での電気絶縁用途を満足させる独立型材料として、使用され得る。
【0045】
一実施態様において、本発明は、ホスト樹脂マトリクスとホスト樹脂内で混合されて樹脂混合物を形成する高熱伝導性フィラーとを含有してなる高熱伝導性樹脂を、提供する。フィラーは、樹脂混合物の少なくとも3〜5重量%を構成し、フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、ここで、粒子は、粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、それにより樹脂分子は、高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルのための連続経路が樹脂混合物中に生成されるように、秩序化樹脂シェルの重複が高熱伝導性フィラーの間に形成される。
【0046】
特別な実施態様において、フィラーは、樹脂マトリクスとの反応性を向上させるために表面処理されている。表面処理は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルから成る群より選択される。フィラーは樹枝状星形にも形成できる。
【0047】
他の特別な実施態様において、秩序化樹脂シェルは、HTCフィラーの体積にほぼ等しいか、それ以上の体積を含み、秩序化樹脂シェルは個々の粒子の周囲に形成される。フィラーは、より大きい粒子及びより小さい粒子より成り、より大きい粒子は、100nmを超える少なくとも1つのサイズ寸法を有し、より小さい粒子は、100nmよりも小さい少なくとも1つのサイズ寸法を有する。特に、より小さい粒子に対するより大きい粒子の比は、より高く、重量で、3:1〜10:1である。
【0048】
更に他の実施態様において、樹脂は、少なくとも50%の液晶エポキシ樹脂より成る。フィラーは、液晶エポキシ樹脂の結晶化のための播種部位を与え得る。粒子は、電荷輸送の向上をもたらすためにも表面処理することができ、OH、COOH、NH2及びSO3Hを含む群より選択される官能基の添加を含み得る。
【0049】
各種の他の実施態様において、樹脂混合物は多孔性媒体に含浸される。高熱伝導性フィラーは、10〜50のアスペクト比を有する。そして高熱伝導性フィラーは、2相有機−無機複合体から形成される。
【0050】
別の実施態様において、本発明は、ホスト樹脂ネットワークと、ホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散され、ホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応した無機高熱伝導性フィラーとを含有してなる、連続的有機−無機樹脂を提供する。高熱伝導性フィラーは、酸化物、窒化物及び炭化物の内の少なくとも1つより選択され、表面処理されて、ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されている。連続的有機−無機樹脂は、高熱伝導性フィラーの最低3重量%及び最高50重量%を構成し得る。高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、粒子は、粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、それにより樹脂分子は高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルの連続経路が樹脂混合物中に生成されるように、秩序化樹脂シェルの重複が高熱伝導性フィラー間に形成される。
【0051】
特別な実施態様において、酸化物、窒化物及び炭化物は、混合された化学量論的及び非化学量論的組合せによって、Al23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC及びSiO2を含有してなる。連続的有機−無機樹脂は、多孔性媒体中に含浸され、多孔性媒体は紙マトリクスである。
【0052】
更に別の実施態様において、本発明は、多孔性媒体と高熱伝導性材料充填樹脂とを含んでなる、高熱伝導性樹脂で含浸した多孔性媒体を、提供する。高熱伝導性材料は3〜50重量%の樹脂を含み、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛並びにダイヤモンド及びデンドリマーの内の1つである。高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、ここで、粒子は粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さい。ホスト樹脂マトリクスは、高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、それにより樹脂分子は、高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列される。秩序化樹脂シェルの連続経路が樹脂混合物中に生成されるように、秩序化樹脂シェルの重複が高熱伝導性フィラー間に形成される。紙マトリクスの例は、マイカ−ガラス絶縁紙又はテープである。
【0053】
再度フィラーに言及すると、2相有機−無機ハイブリッドは、無機マイクロ、メソ又はナノ粒子を、直鎖又は架橋ポリマー(熱可塑性物質)及び熱硬化性樹脂に導入することによって形成され得る。ホストネットワークは、ポリマー及び他の種類の樹脂を含む。その定義を下に示す。一般に、ホストネットワークとして作用する樹脂は、粒子と適合性があり、フィラー表面に導入された基と必要に応じて反応することができる樹脂であれば、いずれの樹脂でもよい。ナノ粒子寸法は、典型的には、ポリマーネットワークセグメント長の水準又はそれ未満である。例えば、1〜30nmである。無機粒子は、共有結合したハイブリッド有機−無機均質材料を形成するための反応性表面を含有する。粒子は、酸化物、窒化物、炭化物並びに酸化物、窒化物及び炭化物のハイブリッド化学量論的及び非化学量論的混合物であり、その更なる例を下に示す。
【0054】
無機粒子は、ホストネットワークとの反応に関与できる各種の表面官能基を導入するために表面処理される。表面官能基としては、これに限定されるわけではないが、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基が挙げられる。基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学蒸着及び物理蒸着、スパッタイオンプレーティング並びに電子及びイオンビーム蒸着法を使用して付加され得る。
【0055】
分離有機デンドリマー複合体は、単一材料を形成するために、相互に又は樹脂マトリクスと、反応させてもよい。デンドリマーの表面は、デンドリマー−デンドリマー反応又はデンドリマー−有機マトリクス反応のどちらかを発生させる、上で言及したものに類似した反応基を含有し得る。デンドリマーは、無機コアと関連する反応基を含有する有機シェルとを有する。一般的なゾル−ゲル化学作用に関与するものに類似した無機反応に関係し得る、ヒドロキシル又はシラン基等の反応基をも含有する無機シェルを備えた有機コアを有することも可能である。
【0056】
非分離有機−無機ハイブリッドの使用に関して、ゾル−ゲル化学作用を使用して連続分子アロイを形成することが可能である。水性及び非水性反応が関与するゲル−ゾル化学作用を使用することができる。有機−無機ハイブリッドの形成のための他の化合物としては、多面体型オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及びオルトチタン酸テトラブチル(TBOT)並びに有機官能化無機化合物である関連モノマー及びオリゴマーハイブリッド化合物が挙げられる。POSSの例において、分子は、R−SiO1.5の構成単位の周囲に構築され、R基は他の有機化合物及びホストネットワークと相溶し及び/又は反応するように選択される。ベース化合物は、結合して、ポリマーセグメント及びコイル構造のサイズに釣り合った、より大きい分子を生じてもよい。POSSは、有機−無機ハイブリッドを創生するために使用でき、既存のポリマー及びネットワーク中にグラフトして、熱伝導性を始めとする特性を制御することができる。この材料は、Aldrich(商標)Chemical Co.、Hybrid Plastics(商標)Inc.及びGelest(商標)Inc.等の供給者から入手することができる。
【0057】
上述したように、光子散乱を低減するためには材料の構造形態を制御することが重要である。このことは、ナノ粒子を使用することによって更に促進され得る。ナノ粒子のマトリクスは、高い熱伝導性を示し、粒径及び樹脂との界面特性を上記効果を維持するのに十分であるようにし、光子散乱を低減するための長さスケール要件をも満たすことが知られている。短期又はより長期の両方の周期性を有する反応デンドリマー格子並びに、液晶エポキシ及びポリブタジエン等のホスト樹脂から形成され得る、はしご形又は秩序化ネットワーク構造を始めとする、より高度に秩序化された構造の選択も、このことに恩恵をもたらす。
【0058】
充填樹脂は、回路基板及び絶縁テープ等の各種の産業における接合樹脂として使用され得る。特定の種類の絶縁テープは、発電機分野で使用されるマイカ−ガラステープである。これらの種類のテープについて、樹脂は、接合樹脂として又は当分野で公知の含浸樹脂として使用され得る。充填樹脂は、回転及び静電発電装置部品における電気絶縁用途を満足させるために、テープを用いない発電機分野でも使用され得る。
【0059】
テープは、電気用品に適用する前又は後に樹脂に含浸され得る。樹脂含浸技術としては、以下において更に議論するVPI及びGVPIが挙げられる。VPIでは、テープは、巻き付けられて含浸されると、圧縮される。位置決めされると、圧縮されたテープ中の樹脂は硬化されて、これにより、HTC材料の位置が効果的に固定される。一部の実施態様において、樹脂は、2段階プロセスで硬化されるが、これは、当業者には明らかである。しかしながら、充填されたHTC材料の最適な圧縮には、圧縮段階の間に、完全に硬化されない樹脂が好都合である。
【0060】
充填された樹脂がテープに含浸されているとき、テープの繊維又は粒子は、特に樹脂が30%以上のフィラーである場合に、HTC材料の一部を遮断するように作用する。しかしながら、テープを圧縮することによって逆のことが起こり、HTC材料が全体構造の不動部分に付着するときに、より多くのフィラーがテープ内に捕捉される。HTCフィラーは、相互に固定されることさえある。所与の実施態様において、フィラーが樹脂マトリクスと反応しないことが示唆されてきたが、しかしながら、一部の実施態様において、フィラーは、樹脂と共有結合を形成して、より均質なマトリクスを形成する。均質なマトリクスにおいて、フィラーに結合された樹脂分子は、圧縮の間、未結合樹脂分子よりも良好に保持される。
【0061】
樹脂は複数の産業で使用され、多くの用途を有する。樹脂の各種の特性は、その用途だけではなく、それらと共に使用される製品の品質及び効率にも影響を及ぼす。例えば、樹脂が電気絶縁用途に使用されるとき、その誘電強度及び耐電圧特性は、熱安定性及び耐熱性がそうであるように、高い必要がある。しかしながら、しばしば、これらの目的とは反対に、樹脂は、通常、低い熱伝導性をも有する。本発明は、樹脂及びそれらが導入される絶縁系の各種の物理的特性の均衡を保って、十分な、そしてなお向上する、誘電強度、耐電圧性、熱安定性及び耐熱性、機械的強度及び粘弾性応答等の主要な物理的特性を維持しながら、在来の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を有する系を製造する。熱的及び機械的サイクル効果によって引き起こされたストレスから生じる層間剥離及び微小空洞形成は、減少又は排除される。本明細書で使用するとき、樹脂という用語は、変性エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、シアン酸エステル、炭化水素等並びにこれらの樹脂の均質ブレンドを始めとする全ての樹脂及びエポキシ樹脂を指す。樹脂のこの定義は、架橋剤、促進剤並びに他の触媒及び加工助剤等の添加剤を含む。或る樹脂、例えば液晶熱硬化性物質(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエン、は、低分子量特性と良好な架橋特性とを兼ね備えている。樹脂は、ヘテロ原子を含み又は含まない炭化水素等の有機マトリクスから成り立っていてもよく、ケイ酸塩及び/又はアルミノケイ酸塩成分を含有する無機マトリクスから成り立っていてもよく、有機及び無機マトリクスの混合物から成り立っていてもよい。有機マトリクスの例としては、必要に応じて無機粒子表面に導入された反応基と反応し得る、ポリマー又は反応性熱硬化性樹脂が挙げられる。架橋剤を樹脂に添加して最終架橋ネットワークの構造及びセグメント長分布を操作することも可能であり、このことは熱伝導性にプラスの効果を与え得る。この熱伝導性の向上は、他の樹脂添加剤、例えば触媒、促進剤及び他の加工助剤による変性によっても得られる。或る樹脂、例えば液晶熱硬化性物質(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエン、は、低分子量特性と良好な架橋特性とを兼ね備えている。このような種類の樹脂は、そのサブ構造のミクロ及びマクロ秩序が向上していて、これが、改善された光子輸送の結果として熱伝導の向上をもたらし得るので、熱をより良好に伝導する傾向がある。光子輸送が良好であればあるほど、熱伝達もより良好である。
【0062】
本発明の高熱伝導性フィラーが樹脂と混合されるとき、それらは樹脂とフィラーとの間に界面がないという点で連続的な生成物を形成する。ある場合には、フィラーと樹脂との間に共有結合が形成される。しかしながら、連続というのは、やや主観的であり、観察者が使用するスケールによって変わる。マクロスケールでは、生成物は連続的であるが、ナノスケールではフィラーと樹脂ネットワークとの間になお別個の相があり得る。従って、樹脂と混合する高熱伝導性フィラーに言及するとき、それらはマクロスケールでは連続的な有機−無機複合体を形成するが、マイクロスケールでは同じ混合物をハイブリッドと呼ぶことができる。
【0063】
上述のように、充填された樹脂は、回転及び静電発電装置部品における電気絶縁用途を満足させるために、テープを用いない発電機分野で使用され得る。発電機における高熱伝導性材料の使用は、多様である。固定子コイル内には、設計を最適化するために高い熱伝導性を有しなければならない接地壁以外の構成要素材料がある。同様に、コイルと連結された他の構成要素は、熱除去を最大限にする。固定子設計の改良は、発電機の効率を最大化できるようにロータ設計の改良を行なうことを要求している。
【0064】
固定子において本明細書に記載した高熱伝導性技術が利用され得る、これらの構成要素及び材料の例としては、素線間絶縁体、内部コロナ保護(ICP)システム、外部コロナ保護(OCP)システム、パッキング及びプレストレスト・ドライビング・ストリップ(PSDS−上部リップルバネ)を始めとする底部、中央及び上部フィラー;側部フィラー、積層体、及び側部PSDS、コイル中央セパレータ又はソード、コイル転位フィラー、固定子ウェッジ、コア絶縁体、ダイヤモンドスペーサ、ブレース又はブラケット、エンドワインディング接合樹脂及び圧縮式ギャップフィラー、コネクタ絶縁体、平行リング絶縁体及び平行リング支持構造が挙げられる。ロータにおいて、例としては、セル又はスロットライナー、ターン間絶縁体、ターン及び接地絶縁体が挙げられ、一体型エンドキャップ絶縁体はラジアルピン及びリード並びにスロット上部パッカー即ち「U」を遮断する。
【0065】
明確にするために、固定子コイル中の主熱流12及び半径方向の追加の熱流11の断面図を示す、図6を参照する。本図によって描かれた固定子コイルは、他の部品の中でも銅素線5、転位された素線6、下部、中央、及び上部フィラー4、接地壁絶縁体7、及び中央セパレータ8を含む。
【0066】
上記の構成要素又は材料は、当業者が精通している積層、押出、成形及びその他のプロセスを始めとする各種の手段によって生産することができる。固定子コイルで使用される構成材料は、銅及び絶縁体である。銅は、一般に絶縁され、組み立てられ、ベークライト化処理をしたコイル又は積重体に変換されている素線の形をとっている。ベークライト化処理をしたコイルは、接地壁絶縁体によって絶縁されるが、それに結合された電気ストレス制御層がある。固定子コイルの熱伝導性に影響を及ぼす主要な構成要素は、接地壁絶縁体であるが、他の構成要素も同様に改良されることによって利益を与える。例えば、固定子コイルの構築で利用されるストレス制御及び他の系は、典型的には、銅から固定子コアまでの絶縁体厚さの10〜20%であり得る。一部の例では、材料に構造的変化を導入することによって熱及び電気伝導性を所望の値に調整することが提案される。
【0067】
更なる例として、内部ストレス制御層は、直接又は抵抗を介して銅に連結されていてもよく銅から絶縁されていてもよい低伝導性層より、成っていてもよい。このような例では、低伝導性層が施される前に、ベークライト化処理をしたコイル表面に絶縁層が施されてもよい。接合又は空隙区域を充填するための表面平滑化の目的で、絶縁テープ又はシートを、ベークライト化処理をしたコイルに、施してもよい。次に、低伝導性層の後に、要求された特性を有する材料の単一の又は複数の層を追加してもよい。これはストレス制御又は絶縁等の電気的目的のためであってよい。
【0068】
接地壁が施された後に、コアまでの良好な接続を確保するために一又は複数の低伝導性層がコイル表面に施され、コア積層体の短絡を回避しながら、部分放電及びバーバウンス効果を防止する。この低伝導性層がその上に施された絶縁層を有する用途は、特許文献にも記載されている。従って、外部コロナ保護系は、低伝導性、絶縁及び部分絶縁層を含み得る。
【0069】
固定子端部領域において電気ストレスを制御するために、コイル直線部の端部に、そしてエンドワインディング又はらせん状領域内に、ストレス制御層が施される。これは、通常、1層又は数層に、場合によっては階段状層に施された炭化ケイ素充填テープ又は塗料より成る。それは、絶縁層又は比較的高い抵抗率の一又は複数の層と組み合わされることもある。本用途では、高熱伝導性材料は、系の熱伝導性を著しく向上させる。高熱伝導性材料を使用する時点の選択は、機械設計並びに通常の絶縁材料及び接地壁の熱伝導特性によって変わる。
【0070】
端部領域では、ガラステープ及び収縮材料が、強化等の各種の機能のために、そして機械的ブレーシングを向上させるために、ある種の設計で使用される。更に、エンドワインディング領域の機械的ブレーシングは、樹脂、ダイヤモンドスペーサ、フェルトや布等の適合する含浸材料、並びにバッグ、袋又はホース等の樹脂を充填できる材料の使用を含む。これらの構成要素及び材料では、高熱伝導性材料の使用は、系の熱伝導性を著しく向上させる。高熱伝導性材料を使用する場所及び時点の選択は、機械の設計及び通常の絶縁材料の熱伝導特性に依存する。
【0071】
直接冷却ロータでは、冷却ガス又は媒体が、銅と直接接触している。直接冷却には、2つの主要な設計−半径方向冷却及び軸方向冷却がある。エンドワインディング領域は、異なる冷却方法を有し得る。半径方向冷却設計において、ガスは、各スロット下部のサブスロット又は中空ターンに沿って、通過する。ガスは、次いで、固体銅ターンの冷却スロットを半径方向に通過して、スロット上部から流出する。軸方向冷却設計では、ターンは中空であり、通常、断面は正方形又は長方形である。ガスは、各端部にて中空導体の側壁の孔から入り、銅管の内側を通過して、ロータ中心の銅の孔から半径方向に流出する。
【0072】
ロータのこれらの両設計で、高熱伝導性材料の使用の設計に対する効果は重要である。実際に、間接冷却装置において更に重要になり得る。ロータコイルは、典型的には、スロットセル又は角のどちらかの形の成形エポキシガラス積層体によって、接地絶縁される。ターン間絶縁体は積層体又は角であり得る。本明細書で記載した方法の使用によってこのような構成要素を高熱伝導性にすることができることが認識できる。
【0073】
本発明の一実施態様は、高熱伝導性(HTC)材料を樹脂に加えて樹脂の熱伝導性を改善する。いくつかの実施態様において、樹脂の残りの物理的特性は高熱伝導性と引き換えに低下するが、他の実施態様では、残りの物理的特性のいくつかはそれほど影響を受けず、一部の特別の実施態様では、このような他の特性が改善される。特別の実施態様において、HTC材料は、LCTエポキシ等の、秩序化サブ構造を有する樹脂に添加される。このような種類の樹脂に添加するとき、使用するHTC材料の量は、秩序化サブ構造を持たない樹脂における使用と比べて減少させることができる。
【0074】
樹脂に充填されたHTC材料は、樹脂と物理的及び/又は化学的に相互作用し又は反応して熱伝導性を改善するために充填できる各種の物質からなる。HTC材料は、一実施態様においてはデンドリマーであり、別の実施態様においては、3〜100又はそれ以上、更に特別には10〜50の範囲、のアスペクト比(平均縦寸法に対する平均横寸法の比)の粒子を始めとする、定義されたサイズ及び形状を有するナノ又はマイクロ無機フィラーである。
【0075】
上述したように、フィラーはそれ自体、表面官能化されていてもよい。ナノ、メソ及びマイクロ無機フィラーへの表面処理は、無機表面を有機マトリクスに対して相溶化させることができ又はホスト有機マトリクスと化学反応をさせる、各種の表面官能基を導入する。これらの表面官能基には、ホスト有機マトリクスとの化学反応に利用できる、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が含まれる。これらの官能基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学蒸着及び物理蒸着、レーザビーム、スパッタイオンプレーティング並びに電子及びイオンビーム蒸着法を使用して付加され得る。
【0076】
マイカ紙への含浸のための例示的な種類の樹脂の例は、参照として本明細書に組み込まれている、Smithらによる米国特許出願第11/152,984号、「高熱伝導性フィラーを有する構造化樹脂系(Structured Resin Systems with High Thermal Conductivity Fillers)」に見出すことができる。
【0077】
エポキシ樹脂の改良は、近年、液晶ポリマーを使用することにより行われてきた。エポキシ樹脂を液晶モノマーと混合することによって又は液晶性メソゲンをDGEBA等のエポキシ樹脂分子に導入することによって、架橋により著しく改善された機械的特性を有する秩序化ネットワークを形成できるポリマー又はモノマーを含有する液晶熱硬化(LCT)エポキシ樹脂が製造される。参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第5,904,984号を参照。LCTの更なる利点は、それらが標準エポキシ樹脂よりも改善された熱伝導性と、より低い熱膨張係数(CTE)値とを同様に有することである。
【0078】
LCTエポキシ樹脂を更に魅力的にしているのは、それらが標準エポキシ樹脂よりも良好に熱を伝導することができることである。参照として本明細書に組み込まれている米国特許第6,261,481号は、在来のエポキシ樹脂の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するLCTエポキシ樹脂が製造され得ることを教示している。例えば、標準ビスフェノールAエポキシは、横(面)方向及び厚さ方向の両方で、0.18〜0.24ワット/メートル度ケルビン(W/mK)の熱伝導値を有することが示されている。これに対して、LCTエポキシ樹脂は、実際の用途で使用されるときに、横方向では0.4W/mK以下、厚さ方向では0.9W/mKまでの熱伝導値を有することが示されている。
【0079】
電気絶縁に典型的に使用される標準マイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母並びに、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト及びクロライト等の、複数の他のマイカ様アルミノケイ酸材料もある。モンモリロナイトは、ポリマー樹脂、金属カチオン及びナノ粒子を容易に挿入して高い誘電強度複合体を与える格子を、その構造内に有する。
【0080】
絶縁紙は、本発明の処理済みマイカを使用し得る媒体のほんの1種類である。多くの産業において、他の多くの材料及びそれから作製される構成要素が異なる種類のマイカを使用できる。本発明の特定の実施態様を詳細に説明してきたが、当業者は、本開示の教示全体に照らして、これらの詳細事項に対する様々な改良及び変更を開発できることを認識するであろう。従って、開示された詳細な機構は、本発明の範囲についての単に例示的なものであって制限的なものではなく、本発明の範囲は、添付された請求項及びそのありとあらゆる等価物の全ての広さを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト樹脂マトリクス;及び
高熱伝導性フィラーであって、前記ホスト樹脂マトリクス内で混合されて樹脂混合物を形成する高熱伝導性フィラー;を含有してなる
高熱伝導性樹脂であって:
前記フィラーは、前記樹脂混合物の少なくとも3〜5重量%を構成し;
前記高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、前記粒子は、前記粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さく;
前記ホスト樹脂マトリクスは、前記高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、これにより、樹脂分子は、前記高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列され;
前記秩序化樹脂シェルの連続経路が前記樹脂混合物中に創生されるように、前記秩序化樹脂シェルの重複が前記高熱伝導性フィラーの間に形成される;
高熱伝導性樹脂。
【請求項2】
前記フィラーが前記樹脂マトリクスとの反応性を向上させるために表面処理されている、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項3】
前記表面処理がヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルから成る群より選択される、請求項2に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項4】
前記フィラーが樹枝状星形を形成する、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項5】
前記秩序化樹脂シェルが前記HTCフィラーの体積にほぼ等しいか、それ以上の体積を含み、前記秩序化樹脂シェルが個々の粒子の周囲に形成される、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項6】
前記フィラーがより大きい粒子及びより小さい粒子より成り、前記のより大きい粒子は、100nmを超える少なくとも1つのサイズ寸法を有し、前記のより小さい粒子は100nmよりも小さい少なくとも1つのサイズ寸法を有する、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項7】
より小さい粒子に対するより大きい粒子の比がより高く、重量で、3:1〜10:1である、請求項6に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項8】
前記樹脂が少なくとも50%の液晶エポキシ樹脂より成る、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項9】
前記フィラーが前記液晶エポキシ樹脂の結晶化のための播種部位を与える、請求項8に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項10】
前記粒子が電荷輸送の向上をもたらすために表面処理されている、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項11】
前記表面処理がOH、COOH、NH2及びSO3Hを含む基より選択される官能基の付加である、請求項10に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項12】
前記樹脂混合物が多孔性媒体中に含浸される、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項13】
前記高熱伝導性フィラーが10〜50のアスペクト比を有する、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項14】
前記高熱伝導性フィラーが2相有機−無機複合体から形成される、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項15】
ホスト樹脂ネットワーク;及び
前記ホスト樹脂ネットワークに均一に分散されて、前記ホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応した無機高熱伝導性フィラー;
を含有してなる
連続的有機−無機樹脂であって:
前記高熱伝導性フィラーが酸化物、窒化物及び炭化物の内の少なくとも1つより選択され;
前記高熱伝導性フィラーが、前記ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基を導入するために表面処理されており;
前記連続的有機−無機樹脂が、最低3重量%及び最高50重量%の前記高熱伝導性フィラーを含有してなり;
前記高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、前記粒子は、前記粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さく;
前記ホスト樹脂マトリクスが、前記高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、これにより、樹脂分子は前記高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列され;
前記秩序化樹脂シェルの連続経路が前記樹脂混合物によって創生されるように、前記秩序化樹脂シェルの重複が前記高熱伝導性フィラー間に形成される;
連続的有機−無機樹脂。
【請求項16】
前記酸化物、窒化物及び炭化物の内の少なくとも1つが、混合された化学量論的及び非化学量論的組合せによってAl23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC及びSiO2を含む、請求項15に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項17】
前記連続的有機−無機樹脂が多孔性媒体中に含浸される、請求項15に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項18】
前記多孔性媒体が紙マトリクスである、請求項17に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項19】
多孔性媒体;及び
高熱伝導性材料充填樹脂であって、前記高熱伝導性材料が前記樹脂の3〜50重量%を構成する高熱伝導性材料充填樹脂;
を含有してなる
高熱伝導性樹脂に含浸された多孔性媒体であって:
前記高熱伝導性材料が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛並びにダイヤモンド及びデンドリマーの内の少なくとも1つを含み;
前記高熱伝導性フィラーは、少なくとも1つの寸法が平均1〜100nmであり、前記粒子は、前記粒子の最も長い寸法が平均1,000nmよりも小さく;
前記ホスト樹脂マトリクスは、前記高熱伝導性フィラーの周囲に秩序化樹脂シェルを形成して、これにより、樹脂分子は前記高熱伝導性フィラーの表面に対して垂直に整列され;
前記秩序化樹脂シェルの連続経路が前記樹脂混合物によって生成されるように、前記秩序化樹脂シェルの重複が前記高熱伝導性フィラーの間に形成される;
多孔性媒体。
【請求項20】
前記紙マトリクスがマイカ−ガラス絶縁紙である、請求項19に記載の前記高熱伝導性樹脂に含浸された多孔性媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−503241(P2011−503241A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530355(P2009−530355)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/019502
【国際公開番号】WO2008/042076
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】