説明

電気自動車のバッテリ搭載構造

【課題】本発明は、車両側突時でもバッテリパックの損傷を軽減することのできる電気自動車のバッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】フロントバッテリクロスメンバロア(5)及びリヤバッテリクロスメンバロア(6)上にバッテリトレー(7)を固定され、バッテリトレー(7)上にバッテリパック(2)が載置される。また、フロントバッテリクロスメンバロア(5)及びリヤバッテリクロスメンバロア(6)は、それぞれの取付部(5a)及び取付部(6a)にバッテリトレー(7)の変形部(7a)とバッテリクロスメンバアッパ(4)の端面とが当接し、バッテリパック(2)とバッテリクロスメンバアッパ(4)との間に空間が設けられ、剛性が比較的低い変形部(7b)が形成されるようにバッテリクロスメンバアッパ(4)が溶接され、バッテリクロスメンバアッパ(4)を介して一対のサイドメンバ(3)に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリ搭載構造に係り、詳しくは、車両側突時のバッテリの損傷を防ぐ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車のバッテリ搭載構造として、車両衝突時にバッテリパックの損傷を防止するために、バッテリセルを内蔵するバッテリケースと閉断面のバッテリクロスメンバとをボルトで固定し、更にバッテリクロスメンバとサイドメンバとをボルトで固定するようにしてバッテリパックを車両の側方で車両の前後方向に延在する一対のサイドメンバの間に配設するようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−162497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の電気自動車のバッテリ搭載構造では、バッテリケースと閉断面のバッテリクロスメンバとをボルトで固定しており、例えば、車両の側方へ他車両等が高速で衝突すると衝突時の荷重を吸収することができず、バッテリクロスメンバが車両の中央方向に移動し、バッテリクロスメンバによってバッテリパック、ひいてはバッテリケース内のバッテリセルを損傷し、電気安全性を低下させることとなり好ましいことではない。
【0005】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両側突時でもバッテリパックの損傷を軽減することのできる電気自動車のバッテリ搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の電気自動車のバッテリ搭載構造では、車体の両側部に前後方向に延在する一対のサイドメンバの間にバッテリパックが配設され、前記バッテリパックは、車体横方向に延在する複数のバッテリクロスメンバを介して前記サイドメンバに固定される電気自動車のバッテリ搭載構造において、前記バッテリクロスメンバは、前記バッテリパックと前記サイドメンバとの間に変形部を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の電気自動車のバッテリ搭載構造では、請求項1において、前記バッテリクロスメンバは、下方向に開口する断面コの字状のバッテリクロスメンバアッパと前記バッテリクロスメンバアッパの下面に固定された平板状のバッテリクロスメンバロアとからなり、前記バッテリパックは、前記バッテリクロスメンバロアに載置され、前記バッテリクロスメンバロアは、前記バッテリクロスメンバアッパと前記バッテリパックとの間に空間が形成されるように、前記クロスメンバアッパを介して前記サイドメンバに接続されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の電気自動車のバッテリ搭載構造では、請求項1或いは2において、前記バッテリクロスメンバは、前記バッテリパックと前記サイドメンバとの間の部位の強度を前記バッテリクロスメンバの前記サイドメンバに固定する部位よりも低下させて前記変形部が形成されることを特徴とする。
また、請求項4の電気自動車のバッテリ搭載構造では、請求項1において、前記バッテリクロスメンバは、前記バッテリパックと前記サイドメンバとの間の部位の断面積を減少させて前記変形部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、バッテリクロスメンバは、バッテリパックとサイドメンバとの間に変形部を有しており、車体の側方からの衝突時にバッテリクロスメンバに荷重が入力されると変形部でバッテリクロスメンバを変形させることができるので、バッテリクロスメンバの移動によるバッテリパックとバッテリクロスメンバとの接触を抑制し、バッテリクロスメンバでバッテリパックが損傷することを軽減することができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、バッテリクロスメンバロアは、バッテリクロスメンバアッパとバッテリパックとの間に空間を有して変形部が形成されており、車体の側方からの衝突時にバッテリクロスメンバアッパ及びロアに荷重が入力されると変形部でバッテリクロスロアを変形させることができるので、バッテリクロスメンバの移動によるバッテリパックとバッテリクロスメンバアッパとの接触を少なくすることができ、バッテリクロスメンバアッパでバッテリパックが損傷することを軽減することができる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、バッテリパックとサイドメンバとの間の部位の強度を低下させて変形部が形成されているので、簡単な構成でバッテリパックの損傷を軽減することができる。
また、請求項4の発明によれば、バッテリパックとサイドメンバとの間の部位の断面積を減少させ変形部が形成されているので、簡単な構成でバッテリパックの損傷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例に係る電気自動車のバッテリ搭載構造が適用された車両の車体中央の下面視図である。
【図2】図1の矢視A−A線での断面図である。
【図3】図2のB部の拡大図である。
【図4】図3のC−C線での断面図である。
【図5】車両側突時の図2のB部の拡大図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る電気自動車のバッテリ搭載構造が適用された車両の車体中央の下面視図である。
【図7】図6の矢視A’−A’線での断面図である。
【図8】図7のB’部の拡大図である。
【図9】車両側突時の図7のB’部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の車両は、当該車両の走行装置として、バッテリパックより電力が供給されインバータにより制御される走行用モータを備える電気自動車である。
まずは、本発明の第1実施例における電気自動車のバッテリ搭載構造を説明する。
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例に係る電気自動車のバッテリ搭載構造が適用された車両の車体中央の下面視図を示している。また、図2は、図1の矢視A−A線での断面図を示している。そして、図3は、図2のB部の拡大図を示しており、図4は、図3のC−C線での断面図を示している。なお、図中矢印「上」は車体上方向、矢印「前」は車体前方向、矢印「横」は車体幅方向をそれぞれ示している。
【0014】
図1から図4に示すように、第1実施例の車体1は、当該車体1の左右両側を前後方向に延伸する一対のサイドメンバ3と、バッテリクロスメンバアッパ4を介して一対のサイドメンバ3に接続されるフロントバッテリクロスメンバロア5及びリヤバッテリクロスメンバロア6とで構成されている。そして、バッテリパック2は、車体中央のフロア11の下部に位置する一対のサイドメンバ3の間にバッテリパック2の位置決めを行うバッテリトレー7を介してフロントバッテリクロスメンバロア5及びリヤバッテリクロスメンバロア6上に配設されている。
【0015】
バッテリパック2は、ケース2aとカバー2bとの中に複数のバッテリセル2cを収めて構成されている。
一対のサイドメンバ3は、上方が開口した断面ハット型の棒状に形成されている。
バッテリクロスメンバアッパ4は、下方が開口した断面コの字型の棒状に形成されている。
【0016】
フロントバッテリクロスメンバロア5は、金属の薄板によって略井の字状に形成されている。フロントバッテリクロスメンバロア5の車体幅方向へのそれぞれの突出部には、サイドメンバ3と接続される取付部5aが形成されている。この取付部5aには、ボルトが挿入される挿入穴5bが形成されている。更にフロントバッテリクロスメンバロア5には、バッテリパック2をボルトで固定するための複数のボルトの挿入穴5cが形成されている。
【0017】
リヤバッテリクロスメンバロア6は、金属の薄板により略井の字状に形成されており、車体後方側の一対の突出部が切り落とされた形状となっている。そして、フロントバッテリクロスメンバロア5の車体後方側の突出部とリヤバッテリクロスメンバロア6の車体前方側の突出部とが接続されており、フロントバッテリクロスメンバロア5とリヤバッテリクロスメンバロア6とが一体となってバッテリパック2の下面を支持する構成となっている。リヤバッテリクロスメンバロア6の車体幅方向へのそれぞれ突出部には、サイドメンバ3と接続される取付部6aが形成されている。この取付部6aには、ボルトが挿入される挿入穴6bが形成されている。更にリヤバッテリクロスメンバロア6には、バッテリパック2をボルトで固定するための複数のボルトの挿入穴6cが形成されている。
【0018】
バッテリトレー7は、図3に示すように断面方向視で略Z字状に形成され、下面視でバッテリパック2のケース2aの形状に沿った金属の薄板で形成されている。また、バッテリトレー7には、バッテリクロスメンバアッパ4の端部が当接する剛性が比較的低い変形部7aが形成されている。
更に、バッテリクロスメンバアッパ4が、対応するフロントバッテリクロスメンバロア5の取付部5及びリヤバッテリクロスメンバロア6の取付部6aの上面に溶接されるとともに、バッテリクロスメンバアッパ4の端面とバッテリトレー7の変形部7aとが溶接されて固定されている。
【0019】
そして、フロントバッテリクロスメンバロア5及びリヤバッテリクロスメンバロア6は、バッテリクロスメンバアッパ4を介して一対のサイドメンバ3に図示しないボルトで固定される。
また、バッテリトレー7上にバッテリパック2が載置され、図示しないボルトで固定される。
【0020】
特に、本実施形態では、上記のようにバッテリトレー7が変形部7aにおいて車体外方向へ膨らむように形成されているので、ケース2aの側壁とバッテリトレー7の変形部7aとの間に空間が設けられる。そして、バッテリトレー7には、バッテリパック2とバッテリクロスメンバアッパ4との間に、剛性が比較的低い変形部7bが形成されている。
以下、このように構成された本発明の第1実施例に係る電気自動車のバッテリ搭載構造の作用及び効果について説明する。
【0021】
図5は、車両の側方からの衝突後の図2のB部の拡大図を示しており、図中太矢印は、車両衝突時の荷重入力方向を示している。なお、図中矢印「上」は車体上方向を、矢印「横」は車体幅方向をそれぞれ示す。
図5に示すように、車体1の側方からの衝突時にサイドメンバ3或いはバッテリクロスメンバアッパ4に荷重が加わると、バッテリクロスメンバアッパ4からフロントバッテリクロスメンバロア5或いはリヤバッテリクロスメンバロア6及びバッテリトレー7に荷重が伝達される。本実施形態では、バッテリクロスメンバアッパ4がケース2aの側壁に直接固定されておらず、バッテリパック2とバッテリクロスメンバアッパ4との間に空間を有しており、バッテリトレー7の変形部7aの剛性が比較的低いので、側方からの衝突時にはバッテリトレー7の変形部7aが車体1の内側方向の空間7bへ変形して、衝突時の荷重を吸収する。
【0022】
このように、車体1の側方からの衝突時には、変形部7aが変形するようにしており、バッテリクロスメンバアッパ4とバッテリパック2との間に空間7bが設けられているので、バッテリトレー7の変形部7aが変形することで、バッテリクロスメンバアッパ4が変形して荷重を直接バッテリパック2に入力させないため、例えば、バッテリクロスメンバアッパ4が車体1の内側方向に移動しても、バッテリパック2との接触を少なくすることができ、バッテリパック2の損傷を軽減することができる。
[第2実施例]
以下、本発明の第2実施例における電気自動車のバッテリ搭載構造を説明する。
【0023】
第2実施例では、第1実施例に対して、バッテリクロスメンバアッパ4’とバッテリトレー7’の形状が異なる。以下に第1実施例からの変更点について説明する。
図6は、本発明の第2実施例に係る電気自動車のバッテリ搭載構造が適用された車体の車体中央の下面視図を示している。また、図7は、図6の矢視A’−A’線での断面図を示している。そして、図8は、図7のB’部の拡大図を示している。なお、図中矢印「上」は車体上方向、矢印「前」は車体前方向、矢印「横」は車体幅方向をそれぞれ示している。
【0024】
図6から図8に示すように、バッテリクロスメンバアッパ4’は、下方が開口した断面コの字型の棒状に形成されている。また、バッテリクロスメンバアッパ4’のサイドメンバ2への取付時の車体外側方向上側に取付部4a’が形成されている。更にサイドメンバ2への取付時の車体内側方向に取付部4a’より高さが低く断面積の小さい変形部4b’が形成されている。そして、取付部4a’と変形部4b’は、バッテリクロスメンバアッパ4’の中央でスロープ4c’にて接続されている。
【0025】
バッテリトレー7’は、断面方向視で略Z字状に形成され、下面視でバッテリパック2のケース2aの形状に沿った金属の薄板で形成されている。また、バッテリトレー7’には、バッテリクロスメンバアッパ4’の端部が当接する接続部7a’が形成されている。
更に、バッテリクロスメンバアッパ4が、対応するフロントバッテリクロスメンバロア5の取付部5及びリヤバッテリクロスメンバロア6の取付部6aの上面に溶接されるとともに、バッテリクロスメンバアッパ4’の端面とバッテリトレー7’の接続部7a’とが溶接されて固定されている。
【0026】
そして、フロントバッテリクロスメンバロア5及びリヤバッテリクロスメンバロア6は、バッテリクロスメンバアッパ4’を介して一対のサイドメンバ3に図示しないボルトで固定される。
また、フロントバッテリクロスメンバロア5及びリヤバッテリクロスメンバロア6上にバッテリトレー7’が載置されるとともに、バッテリトレー7’上にバッテリパック2が載置され、図示しないボルトで固定される。
【0027】
以下、このように構成された本発明の第2実施例に係る電気自動車のバッテリ搭載構造の作用及び効果について説明する。
図9は、車両の側方からの衝突後の図7のB’部の拡大図を示しており、図中太矢印は、車両衝突時の荷重入力方向を示している。なお、図中矢印「上」は車体上方向を、矢印「横」は車体幅方向をそれぞれ示す。
【0028】
図9に示すように、車体1’の側方からの衝突時にサイドメンバ3或いはバッテリクロスメンバアッパ4’に荷重が加わると、バッテリクロスメンバアッパ4’は、バッテリクロスメンバアッパ4’の変形部4b’の断面積が取付部4a’の断面積よりも小さいために、断面積の小さい変形部4b’で車体1’の内側方向に変形し、衝突時の荷重を吸収する。
【0029】
従って、車体1’の側方からの衝突時に変形部4b’で変形をするようにしているので、バッテリクロスメンバアッパ4’を変形させて荷重を直接バッテリパック2へ入力させないため、例えば、バッテリクロスメンバアッパ4’が車体の内側方向に変形しても、バッテリパック2との接触を少なくすることができ、バッテリパックの損傷を軽減することができる。
【0030】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の実施形態は上記実施形態に限定されるものではない。
上記第1実施例では、バッテリクロスメンバアッパ4とバッテリパック2との間に空間を形成して変形部とし、また第2実施例では、バッテリクロスメンバアッパ4’の断面積を減少させて変形部として、それぞれ変形部にて変形をするようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、他部位に対して変形部の断面形状を断面強度が低下するような形状とし、変形部で変形するようにしても問題なく、本実施形態と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1,1’ 車体
2 バッテリパック
3 サイドメンバ
4,4’ バッテリクロスメンバアッパ
5 フロントバッテリクロスメンバロア
6 リヤバッテリクロスメンバロア
7,7’ バッテリトレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の両側部に前後方向に延在する一対のサイドメンバの間にバッテリパックが配設され、前記バッテリパックは、車体横方向に延在する複数のバッテリクロスメンバを介して前記サイドメンバに固定される電気自動車のバッテリ搭載構造において、
前記バッテリクロスメンバは、前記バッテリパックと前記サイドメンバとの間に変形部を有することを特徴とする電気自動車のバッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記バッテリクロスメンバは、下方向に開口する断面コの字状のバッテリクロスメンバアッパと前記バッテリクロスメンバアッパの下面に固定された平板状のバッテリクロスメンバロアとからなり、
前記バッテリパックは、前記バッテリクロスメンバロアに載置され、
前記バッテリクロスメンバロアは、前記バッテリクロスメンバアッパと前記バッテリパックとの間に空間が形成されるように、前記クロスメンバアッパを介して前記サイドメンバに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車のバッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記バッテリクロスメンバは、前記バッテリパックと前記サイドメンバとの間の部位の強度を前記バッテリクロスメンバの前記サイドメンバに固定する部位よりも低下させて前記変形部が形成されることを特徴とする、請求項1或いは2に記載の電気自動車のバッテリ搭載構造。
【請求項4】
前記バッテリクロスメンバは、前記バッテリパックと前記サイドメンバとの間の部位の断面積を減少させて前記変形部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車のバッテリ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214065(P2012−214065A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79048(P2011−79048)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】