説明

電気自動車の制御装置

【課題】補助バッテリの電力が低下した場合に、走行中の他車両と補助バッテリを交換することが可能な電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】モータに電力を供給するメインバッテリと、着脱自在の補助バッテリと、駆動系回路から供給される電力を降圧して補助バッテリに供給すると共に、補助バッテリから供給される電力を昇圧して駆動系回路に供給する昇降圧器と、メインバッテリ及び補助バッテリの残容量を監視すると共にそれぞれの充放電を制御するバッテリ制御部と、統括センターとの通信が可能な通信装置と、を備える。バッテリ制御部は、ユーザの指令に基き、補助バッテリの残容量の目標値を第1の値と、第1の値よりも大きい第2の値との間で切替える。補助バッテリの状態を記憶するバッテリ記憶部を備える。通信装置は、バッテリ記憶部に記憶された補助バッテリの残容量が第2の値以上である場合に、補助バッテリの情報を統括センターへ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたバッテリから供給される電気エネルギにより走行する電気自動車が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1における電気自動車は、車両に固定のメインバッテリの他に、着脱可能なカートリッジバッテリを備えており、メインバッテリの電力を使いきった場合には、カートリッジバッテリの電力を電動機に供給することにより走行可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電気自動車において、走行中にメインバッテリとカートリッジバッテリの両方の電力を使いきってしまった場合には、最寄の販売店において、充電を行うことや、自車搭載のカートリッジバッテリに替えて他の充電されたカートリッジバッテリを装着することにより、再び走行することが可能となる。しかしながら、販売店まで走行するために更に電力が必要であり、販売店までの距離によっては時間がかかることもある。
【0005】
ここで、近隣を走行している他の電気自動車に搭載されているカートリッジバッテリと自車搭載のカートリッジバッテリを交換することができれば、少ない残容量のバッテリにより販売店まで走行を継続する必要がなく、また、他車両側から自車両へも接近可能であるため、迅速な交換が可能である。走行中の他の電気自動車とバッテリを交換するためのシステムについては、引用文献1には記載されていない。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車両の補助バッテリの電力が低下した場合に、走行中の他車両と補助バッテリを交換することが可能な電気自動車の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、駆動系回路を介してモータ(例えば、後述の実施形態におけるモータ2)に電力を供給するメインバッテリ(例えば、後述の実施形態における高圧メインバッテリ4)と、車両内部の電気機器に電力を供給する、着脱自在の補助バッテリ(例えば、後述の実施形態における低圧1サブバッテリ6)と、前記駆動系回路から供給される電力を降圧して前記補助バッテリに供給すると共に、前記補助バッテリから供給される電力を昇圧して前記駆動系回路に供給する昇降圧器(例えば、後述の実施形態における第1DC/DCコンバータ5)と、前記メインバッテリおよび前記補助バッテリの残容量を監視すると共にそれぞれの充放電を制御するバッテリ制御部(例えば、後述の実施形態における車両システム制御装置ECU20)と、統括センターとの通信が可能な通信装置(例えば、後述の実施形態における通信装置32)と、を備える電気自動車の制御装置であって、前記バッテリ制御部は、ユーザの指令に基づき、前記補助バッテリの残容量の目標値を第1閾値と、前記第1閾値よりも大きい第2閾値との間で切り替え、前記補助バッテリの状態を記憶するバッテリ記憶部(例えば、後述の実施形態におけるバッテリ記憶部42)を備え、前記通信装置は、前記バッテリ記憶部で記憶された前記補助バッテリの残容量が前記第2閾値以上である場合に、前記補助バッテリの情報を前記統括センターへ送信することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電気自動車の制御装置において、前記通信装置が、前記補助バッテリの情報を前記統括センターへ送信した後に、補助バッテリを要請する救援要請情報を前記統括センターから取得した場合、前記通信装置は、前記ユーザの指令に応じて前記ユーザの救援意思の有無を前記統括センターへ送信することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電気自動車の制御装置において、ナビゲーションシステム(例えば、後述の実施形態におけるナビゲーションシステム34)を備え、前記救援要請情報は、前記補助バッテリを要請する救援地点に関する救援地点情報を含み、前記通信装置が前記救援要請情報を前記統括センターから取得した場合、前記ナビゲーションシステムは、前記車両が前記メインバッテリの残容量のみにより前記救援地点を経由して目的地へ到着することが可能か否かを判断することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の電気自動車の制御装置において、前記通信装置は、前記ユーザが救援意思を有することを前記統括センターに送信した場合に、補助バッテリを要請する救援要請者に対して前記ユーザの現在の位置情報を開示するか否かを前記ユーザの指令に応じて前記統括センターへ送信することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載の電気自動車の制御装置において、前記バッテリ記憶部は、前記補助バッテリの放電により前記補助バッテリの残容量が前記第2閾値から前記第1閾値へと変化する際に前記補助バッテリの劣化情報を記憶することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項3または4に記載の電気自動車の制御装置において、前記メインバッテリの残容量が第3閾値以下であると共に前記補助バッテリの残容量が前記第1の値以下である場合、または前記メインバッテリと前記補助バッテリとの両方を用いて目的地点に到着することができないと判断された場合、前記通信装置は、前記ユーザの指令に応じて前記救援要請情報を前記統括センターへと送信することを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の電気自動車の制御装置において、前記通信装置が前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記通信装置は前記救援意思を有するユーザの車両の情報を前記統括センターより受信することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項6または7に記載の電気自動車の制御装置において、前記通信装置が前記救援要請情報を前記統括センターへ送信した後、前記バッテリ制御部は、前記補助バッテリの残容量が前記第1閾値を超える場合に前記昇降圧器を駆動して前記補助バッテリの残容量が前記第1閾値となるまで前記補助バッテリから前記メインバッテリへ充電することを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項6から8のいずれかに記載の電気自動車の制御装置において、前記状態記憶部は前記補助バッテリと一体に構成されると共に、前記補助バッテリの残容量と劣化情報と認証情報とを記憶しており、前記通信装置が前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記救援意思を有するユーザの車両の補助バッテリが装着された後、前記通信装置は、前記救援意思を有するユーザの車両の補助バッテリの識別情報の認証が完了したことを、前記統括センターへ送信することを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項6または7に記載に記載の電気自動車の制御装置において、前記通信装置が前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記救援意思を有するユーザの車両の補助バッテリが装着された後、前記バッテリ制御部は、前記昇降圧器を駆動して救援されたユーザの車両の補助バッテリの残容量が前記第1の値となるまで、救援されたユーザの車両の補助バッテリから前記メインバッテリへ充電し、前記通信装置は、救援されたユーザの車両の前記補助バッテリの放電量積算値を前記統括センターへ送信することを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項7から10のいずれかに記載に記載の電気自動車の制御装置において、前記通信装置から受信した情報を表示する表示装置(例えば、後述の実施形態における表示装置33)を備え、前記通信装置は、前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記表示装置に表示させる情報と同期させた情報を携帯装置にも表示させることを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る発明は、請求項1から11のいずれかに記載の電気自動車の制御装置を備えることを特徴とする電気自動車である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1および12の発明によれば、他車両を救援可能な車両の情報を自動的に統括センターへ収集されるので、他車両との補助バッテリの交換を促進することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、他車両を救援可能な車両が救援要請情報を受信した場合、ユーザの救援意思の有無が確認されるので、救援者側の負担が過大なものとならず、他車両との補助バッテリの交換を促進することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、他の車両を救援した場合であっても目的地に到達可能であることが保証されるので、救援者側の負担が過大なものとならず、他車両との補助バッテリの交換を促進することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、救援意思を有するユーザの位置情報が救援要請者側に通知可能であることにより、救援要請者に安心感を与えて安全性を向上できる。
【0023】
請求項5の発明によれば、補助バッテリの劣化情報を適正に記憶することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、救援を要請している車両の情報が統括センターへと収集されるので、他車両との補助バッテリの交換を促進することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、救援意思を有する車両の情報を救援要請車両に提供できるので、救援要請者に安心感を与えて安全性を向上できる。
【0026】
請求項8の発明によれば、救援意思を有する車両の補助バッテリが提供される前に可能な限りメインバッテリを充電するので、航続距離を長くすることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、交換により装着された補助バッテリが、救援意思を有するユーザの補助バッテリであることを認証できるので、救援要請者に安心感を与えることができると共に、救援意思を有するユーザを適正に評価することができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、救援意思を有するユーザから提供された補助バッテリの放電量積算値を統括センターへ送信することができるので、救援意思を有するユーザから提供された補助バッテリを適正に評価することができる。
【0029】
請求項11の発明によれば、救援を要請している車両のメインバッテリ及び補助バッテリにより電力が供給不能になって表示装置が情報を表示できなくなった場合、または電力消費を進行させないように表示装置を作動させない場合であっても、通信装置により受信される情報を、車両の内外を問わずに携帯装置により表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車の制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る低圧1サブバッテリの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気自動車の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】救援可能車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】救援可能車両の表示装置の表示例を示す図である。
【図6】救援可能車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】救援要請車両の動作を示すフローチャートである。
【図8】救援要請車両の表示装置の表示例を示す図である。
【図9】充電制御の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0032】
図1は、本実施形態の制御装置が搭載される電気自動車の内部構成を示す模式図である。図1に示す電気自動車1(以下、単に「車両」という)は、モータジェネレータ(以下、単に「モータ」という)2と、パワードライブユニット(PDU)3と、高圧メインバッテリ4と、第1DC/DCコンバータ(DC/DC1)5と、低圧1サブバッテリ6と、第2DC/DCコンバータ(DC/DC2)7と、低圧2サブバッテリ8と、コンタクタ9と、非接触充電装置15と、チャージャー16と、車両システム制御装置ECU20と、を備える。
【0033】
モータ2は、パワードライブユニット3を介して高圧電源系(駆動系回路)から三相交流電力を供給されることによって、動力(トルク)を発生する。モータ2で発生したトルクは、不図示の駆動輪の駆動軸へと伝達され、車両が走行する。また、減速走行時における駆動輪の回転により、モータ2は三相交流電力を発電する。
【0034】
パワードライブユニット3は、高圧電源系から供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータ2を駆動するとともに、モータ2で発電された三相交流電力を直流電力に変換する。また、高圧電源系には、空調装置11が接続されている。
【0035】
高圧メインバッテリ4は、ボックス内に収容される直列に接続された複数の電池モジュールにより構成され、例えば300Vの高電圧を供給する。各電池モジュールは、例えばリチウムイオン電池などの蓄電池を複数個直列に接続されることにより構成されている。高圧メインバッテリ4は、その残容量が所定の下限値と上限値の間となるように制御される。高圧メインバッテリ4は、モータ2の発電により充電可能であるとともに、チャージャー16を介して外部エネルギにより得られる電力によって充電可能である。
【0036】
低圧1サブバッテリ6は、リチウムイオン電池などの蓄電池により構成された着脱可能なバッテリであり、高圧メインバッテリ4よりも低電圧、例えば24Vの電圧を供給する。低圧1サブバッテリ6は、第1DC/DCコンバータ5を介して高圧電源系と接続されており、高圧電源系の高圧電流を第1DC/DCコンバータ5により降圧して供給することにより充電可能である。また、低圧1サブバッテリ6は、後述の非接触充電装置15を介して、外部エネルギにより得られる電力によって充電可能である。低圧1サブバッテリ6の電圧および電流は、電圧電流監視部31によって監視されている。
【0037】
また、図2に示すように、低圧1サブバッテリ6は、バッテリ本体41と、バッテリ記憶部42と、を備え、バッテリ記憶部42はバッテリ状態記憶部43およびバッテリ識別情報記憶部44と、を備える。バッテリ状態記憶部42は、後述の低圧1サブバッテリ残容量監視部22の検出結果に基づき低圧1サブバッテリ6の残容量を記憶しており、また、電圧電流監視部31の検出結果に基づく低圧1サブバッテリ6の放電積算量、劣化情報等を記憶している。バッテリ識別情報記憶部44は、低圧1サブバッテリ6の製造番号等を記憶している。
【0038】
低圧2サブバッテリ8は、車両システムが非作動状態でも動作可能な補機類、例えばヘッドライト12、室内灯13、ウインカー14に電力を供給する12Vバッテリであり、第2DC/DCコンバータ7を介して低圧1サブバッテリ6と並列に配置されている。低圧2サブバッテリ8は、低圧1サブバッテリ6の電力を第2DC/DCコンバータ7により降圧して供給することにより充電される。
【0039】
コンタクタ9は、パワードライブユニット3側及び第1DC/DCコンバータ5側と、高圧メインバッテリ4側とを電気的に遮断又は接続する。
【0040】
非接触充電装置15は、例えば車両の外部に設けられた不図示の非接触給電装置に対置された際に磁場共鳴して受電することにより、低圧1サブバッテリ6を充電する。非接触充電装置15は、例えばコイルや整流器から構成されるが、どのような構成であってもよい。
また、非接触充電装置15に代えて太陽光パネルを配置することによって、太陽光エネルギにより得られる電力によって充電を行う構成であっても良い。
【0041】
チャージャー16は、車両の外部に設けられた外部エネルギ(コンセント)から、不図示のプラグを介して受電することにより、高圧メインバッテリ4を充電する。チャージャー16から高圧電源系に供給された外部エネルギからの電力は、第1DC/DCコンバータ5により降圧され、低圧1サブバッテリ6に供給されることにより、低圧1サブバッテリ6を充電可能である。
【0042】
車両システム制御装置ECU20には、不図示のイグニッションスイッチや空調装置11の作動情報、車両の速度を検出する車速センサ(図示せず)からの情報、アクセル開度やブレーキペダル踏量等の情報が入力される。これらの情報に基づき、車両システム制御装置ECU20は、車両の要求出力を導出して、パワードライブユニット3およびモータ2を制御する。また、車両システム制御装置ECU20は、第1DC/DCコンバータ5および第2DC/DCコンバータ7を制御すると共に、プラグの検出等を行うことによりチャージャー16を制御し、高圧メインバッテリ4の充放電を制御する。
【0043】
高圧メインバッテリ残容量監視部21は高圧メインバッテリ4の残容量を検出し、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は低圧1サブバッテリ6の残容量を検出する。低圧2サブバッテリ監視部23は、低圧2サブバッテリ8に接続された負荷状況を監視する。これらの情報に基づいて、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は低圧1サブバッテリ6の充放電を制御する。また、非接触充電装置制御部25は不図示の非接触給電装置の検出、受電認証を行うことにより、非接触充電装置15を制御する。
【0044】
また、車両システム制御装置ECU20には、不図示の統括センターと通信可能な通信装置32、通信装置32やナビゲーションシステム34から得られた情報を表示する表示装置33、およびナビゲーションシステム34が接続されている。
【0045】
このように、本実施形態の電気自動車1には、高圧メインバッテリ4、低圧1サブバッテリ6、低圧2サブバッテリ8の、3つのバッテリが搭載される。
【0046】
低圧1サブバッテリ6は第1DC/DCコンバータ5を介して高圧電源系と接続されているため、高圧メインバッテリ4の高圧電力を第1DC/DCコンバータ5により降圧して供給することによって充電可能である。また、前述したように、低圧1サブバッテリ6は、非接触充電装置15を介して外部エネルギにより得られる電力によって充電可能であるほか、非接触充電装置15が作動不能である場合には、チャージャー16から供給された外部エネルギからの高圧電力を第1DC/DCコンバータ5により降圧して供給することによって充電可能である。また、低圧1サブバッテリ6の電力を第1DC/DCコンバータ5により昇圧して供給することによって、高圧メインバッテリ4が充電可能である。
【0047】
前述したように、本実施形態では、車両1に搭載された電気機器のうち、車両システムの非作動時にも動作可能である補機類、すなわちヘッドライト12、室内灯13、ウインカー14等には、低圧2サブバッテリ8から電力が供給される。一方、車両システムを起動すると共に非接触充電装置15およびチャージャー16を起動するための電気機器、すなわち車両システム制御装置ECU20、低圧1サブバッテリ残容量監視部22、低圧2サブバッテリ監視部23、低圧1サブバッテリ充放電制御部24、および非接触充電装置制御部25等には、低圧1サブバッテリ6から電力が供給される。そのため、低圧1サブバッテリ6の電力が減少しすぎると、車両システムを起動できないばかりか、高圧メインバッテリ4や低圧1サブバッテリ6の充電を行うこともできなくなってしまう。
【0048】
このため、本実施形態においては、低圧1サブバッテリ6が車両システム制御装置ECU20や非接触充電装置制御部25を作動する電力を確実に有するように、低圧1サブバッテリ6の残容量が第1閾値を下回らないように制御される。低圧1サブバッテリ6の残容量が第1閾値に低下するまでは低圧1サブバッテリ6の電力を優先的にモータ2に供給するように制御する(通常モード)場合には、高圧メインバッテリ4の放電が抑制されるので、高圧メインバッテリ4の劣化を防ぐことが可能である。
【0049】
また、本実施形態においては、低圧1サブバッテリ6の残容量の目標値を、第1閾値よりも高い第2閾値として制御する(リザーブモード)ことも可能である。これらのモードは、ユーザの指示により切り替え可能である。この第2閾値は低圧1サブバッテリ6に充電可能な最大量に近い値であり、高圧メインバッテリ4の残容量が下限値未満に低下して高圧メインバッテリ4による走行ができない場合にも、ある程度の走行を継続できるだけの電力を供給可能である。
【0050】
ここで、前述したように低圧1サブバッテリ6は着脱可能であるため、他の低圧サブバッテリと容易に交換することができる。したがって、車両1に搭載された低圧1サブバッテリ6の残容量が低下した場合にも、充電された他の低圧1サブバッテリと交換することによって、車両1は走行を継続することが可能である。
【0051】
充電された低圧1サブバッテリは、販売店やバッテリステーションにおいて入手可能であるが、本実施形態においては、通信装置32やナビゲーションシステム34を利用することにより、周辺を走行中の他の車両からも、所定値以上の残容量を有する低圧1サブバッテリを得ることが可能である。具体的には、車両1に搭載された通信装置32は、走行中の車両の種々の情報を不図示の統括センターへと送信すると共に、他の車両やバッテリステーションに関する情報を統括センターから受信する。例えば、高圧メインバッテリ4および低圧1サブバッテリ6の残容量がいずれも所定値以下に低下するか、高圧メインバッテリ4および低圧1サブバッテリ6の残容量に基づいても目的地まで到達することができない車両1は、通信装置32を介して、低圧1サブバッテリの交換による救援を要請する救援要請情報を送信する。以後、低圧1サブバッテリの交換による救援を要請する救援要請情報を送信した車両1を、救援要請車両と呼ぶ。
【0052】
反対に、低圧1サブバッテリ6の残容量が所定値以上である車両1に対しては、周辺を走行中の救援要請車両の情報や、低圧1サブバッテリの在庫数が一定以上に減少したバッテリステーション(救援要請バッテリステーション。以後、救援要請車両と救援要請バッテリステーションとをあわせて救援要請者とも呼ぶ)の情報が、通信装置32を介して統括センターにより提供される。車両1のユーザが救援要請者を救援することを決めると、車両1のナビゲーションシステム34は救援地点までの案内を開始する一方、救援要請者には車両1の情報が提供される。車両1のユーザが救援地点に到着して、救援要請車両との間で低圧1サブバッテリ6を交換すると、救援要請車両は、残容量が所定値以上である低圧1サブバッテリ6から供給される電力によって走行可能となる。
【0053】
以下、本実施形態に係る電気自動車1の制御装置の動作を、図3〜9を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る電気自動車1の制御装置の動作を示すフローチャートである。まず、高圧メインバッテリ残容量監視部21は、高圧メインバッテリ4の残容量を検出し(ステップS1)、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は、低圧1サブバッテリ6の残容量を検出する(ステップS2)。そして、車両システム制御装置ECU20は、車両システムが作動しているかどうか、すなわち、イグニッションスイッチがONとなっているかどうかを判断する(ステップS3)。ステップS1でイグニッションスイッチがONになっていると判断された場合、すなわち車両システムが作動している場合には、車両システム制御装置ECU20は、リザーブモードがONになっているどうかを判断する(ステップS4)。
【0054】
ステップS4でリザーブモードがONになっていると判断された場合には、ユーザの指示により、低圧1サブバッテリ6の残容量の目標値が高く設定されているため、低圧1サブバッテリ6の残容量が高い状態を維持するように制御されている。このような場合には、車両1を救援可能車両とし、当該車両1に搭載されている低圧1バッテリ6を用いて低圧1バッテリを要請している救援要請者を救援できるかどうかを判断するため、図4に示す処理Aへと進む。
【0055】
図4に示すように、処理Aにおいて、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は、低圧1サブバッテリ6の残容量<第2閾値であるかどうかを判断する(ステップS21)。低圧1サブバッテリ6の残容量<第2閾値であると判断された場合には、低圧1サブバッテリ6の残容量が救援要請者を救援できる程には高くないため、車両システム制御装置ECU20は、低圧1サブバッテリ6を救援準備が未完了であるもの(READY OFF)として設定する(ステップS22)。その後、通信装置32は統括センターと通信を行い、車両1に搭載された低圧1サブバッテリ6の救援準備が未完了であることを、車両情報、バッテリ情報、位置情報と共に統括センターへと送信する(ステップS23)。
【0056】
次に、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は第1DC/DCコンバータ5をONにして降圧可能な状態に切り替え(ステップS24)、高圧メインバッテリ4による低圧1サブバッテリ6の充電を開始する(ステップS25)。高圧メインバッテリ4による低圧1サブバッテリ6の充電中、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は低圧1サブバッテリ6の残容量を検出し(ステップS26)、低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であるかどうかを判断する(ステップS27)。低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であると判断されない間、すなわち低圧1サブバッテリ6の残容量<第2閾値である場合には、充電を継続する。ステップS27で、低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であると判断されると、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、低圧1サブバッテリ6の充電を終了し(ステップS28)、第1DC/DCコンバータ5をOFFにする(ステップS29)。
【0057】
低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であると判断されると、低圧1サブバッテリ6の残容量が高いため、車両システム制御装置ECU20は、低圧1サブバッテリ6を救援準備が完了したもの(READY ON)として設定する(ステップS30)。その後、通信装置32は統括センターと通信を行い、車両1に搭載された低圧1サブバッテリ6の救援準備が完了したことを、車両情報、バッテリ情報、位置情報と共に統括センターへと送信し、統括センターから情報を受信する(ステップS31)。通信装置32により受信された情報は、表示装置33により表示される(ステップS32)。
【0058】
図5は、ステップS32における表示装置33の表示例を示す。ステップS31において、周囲の救援要請車両や救援要請バッテリステーションの情報を統括センターから受信した場合、表示装置33は、複数の救援要請者の位置情報を地図上に表示する。尚、救援要請車両の現在位置において低圧1サブバッテリを交換することが困難であるような場合等には、統括センターが他の安全な場所を指定し、その場所で低圧1バッテリを交換するよう指示される。以後、低圧1サブバッテリを交換する場所を救援地点と呼ぶ。
【0059】
次に、車両システム制御装置ECU20は、統括センターから受信した情報の中に、救援要請情報の有無を判断する(ステップS33)。救援要請情報があると判断されない場合、車両システム制御装置ECU20は通信装置32を受信待機状態に切替え(ステップS34)、所定時間の間は受信待機状態を継続するようにタイマーをスタートする(ステップS35)。所定時間が経過したと判断されたら(ステップS36)、処理を終了する。
【0060】
ステップS33で救援要請情報があると判断された場合には、図7に示される処理A´へと進む。まず、ナビゲーションシステム34は、ユーザにより目的地が設定されているかどうかを判断する(ステップS37)。目的地設定があると判断されなかった場合、すなわちユーザにより目的地が設定されていない場合には、ナビゲーションシステム34は、表示装置33に目的地入力画面を表示し(ステップS38)し、ユーザに目的地の入力を促す。ユーザが目的地を入力すると(ステップS39)、ナビゲーションシステム34は次に、救援要請者の救援が可能であるか否かについて判断する(ステップS40)。
【0061】
救援が可能であるか否かは、車両1の現在の位置情報および高圧メインバッテリ4および低圧1サブバッテリ6の残容量、ユーザにより設定された目的地の位置情報、救援地点の位置情報に基づき判断され、車両1が救援地点を経由したとしても目的地に到達できると判断された場合には救援が可能であると判断される。ステップS41で救援可能であると判断された場合、ナビゲーションシステム34は、救援する場合の所要時間、すなわち救援地点へ行くための所要時間を算出すると共に、表示装置33に表示する(ステップS42)。この表示に基づき、ユーザは救援するか否かを判断する。車両システム制御装置ECU20は、ユーザの操作に基づき、ユーザが救援意思を有するか否かを判断する(ステップS43)。
【0062】
ステップS40で救援が不可能であると判断された場合、またはステップS43でユーザに救援意思がないと判断された場合には、救援しないことを統括センターに送信し(ステップS46)、処理が終了する。
【0063】
ステップS43でユーザが救援意思を有すると判断された場合、車両システム制御装置ECU20は、ユーザの操作に基づき、ユーザが救援要請者に対して車両1の現在の位置情報を開示する意思があるかどうかを判断する(ステップS45)。開示する意思があると判断された場合、ナビゲーションシステム34は救援要請者に対して自車の位置情報を開示する処理を行う(ステップS46)。
【0064】
開示する意思の有無に関わらず、ナビゲーションシステム34は、次に救援地点へのルート案内を開始する(ステップS47)。車両1の位置情報は所定時間間隔で統括センターへ送信される(ステップS48)。ナビゲーションシステム34は救援地点に到達したかどうかを判断し(ステップS49)、救援地点に到達したと判断されると、処理が終了する。
【0065】
図3に戻って、ステップS4でリザーブモードがONであると判断されなかった場合には、低圧1サブバッテリ6の残容量の目標値が低く設定されているので、通信装置32は、車両1は救援要請者を救援可能な車両ではないことを統括センターに送信する(ステップS5)。次に、高圧メインバッテリ残容量監視部21は、高圧メインバッテリ4の残容量≦第3閾値であるかどうかを判断する(ステップS6)。高圧メインバッテリ4の残容量≦第3閾値であると判断された場合には、低圧1サブバッテリ残容量監視部22が、低圧1サブバッテリの残容量≦第1閾値であるかどうかを判断する(ステップS7)。ステップS7で低圧1サブバッテリの残容量≦第1閾値であると判断された場合、すなわち、高圧メインバッテリ4の残容量≦第3閾値であると共に低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値である場合には、高圧メインバッテリ4と低圧1サブバッテリ6の残容量がいずれも低い状態といえるので、他の充電された低圧1サブバッテリを要請するか否かを判断するため、図7に示される処理Bへと進む。
【0066】
ステップS6で高圧メインバッテリ4の残容量≦第3閾値であると判断されなかった場合、すなわち高圧メインバッテリ4の残容量>第3閾値である場合や、ステップS7で低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断されなかった場合、すなわち低圧1サブバッテリ6の残容量>第1閾値である場合、ナビゲーションシステム34は、ユーザにより目的地が設定されているかどうかを判断する(ステップS8)。目的地が設定されていると判断された場合、ナビゲーションシステム34は、ユーザにより設定された目的地の位置情報と、現在の高圧メインバッテリ4および低圧1サブバッテリ6の残容量と、に基づき、車両1が目的地に到達可能かどうかを判断する(ステップS9)。目的地に到達可能であると判断された場合には、処理が終了する。
【0067】
ステップS8で目的地が設定されていると判断されなかった場合、すなわち目的地が設定されていない場合や、ステップS9で目的地に到達可能であると判断されなかった場合、すなわち当該目的地に到達不可能である場合には、他の充電された低圧1サブバッテリを要請するか否かを判断するため、図7に示される処理Bへと進む。
【0068】
図7に示すように、処理Bにおいて、まず、表示装置33は、ユーザに救援要請の入力を促す画面を表示する(ステップS61)。次に、車両システム制御装置ECU20は、救援要請が入力されたかどうかを判断する(ステップS62)。救援要請が入力されたと判断されない場合には、処理が終了する。
【0069】
ステップS62で救援要請が入力されたと判断された場合には、通信装置32が統括センターと通信を行い(ステップS63)、車両1の現在の位置情報、車両情報、バッテリ情報を含む救援要請情報を統括センターへと送信する。そして、通信装置32は、周囲を走行中のリザーブモードがONである車両の位置情報や、救援意思を有するユーザの車両情報およびバッテリ識別情報、救援意思を有するユーザにより開示されている場合には救援意思を有するユーザの車両の位置情報、および救援地点の位置情報を受信する。次いで、携帯電話等の任意の端末である携帯装置の表示情報を、表示装置33の表示情報に同期させ(ステップS64)、表示装置33および携帯装置は、統括センターから受信した上記情報を表示する(ステップS65)。これにより、後に低圧1サブバッテリ6および高圧メインバッテリ4の残容量が低下して表示装置33による表示が困難となった場合、または電力消費を進行させないように表示装置33をOFFにした場合であっても、通信装置32により受信される情報やナビゲーションシステム34の情報を、車両の内外を問わずに携帯装置によって表示することが可能となる。
【0070】
図8は、ステップS65における表示装置33の表示例を示す。ステップS63において、周囲を走行中のリザーブモードがONである車両の位置情報を統括センターから受信した場合、表示装置33は、これらの車両の位置情報を地図上に表示する。尚、ここで表示された、リザーブモードがONである車両は、低圧1サブバッテリ6の残容量が高い状態を維持するように制御されているため、救援要請者を救援可能な車両(救援可能車両)である。
【0071】
次いで、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は、低圧1サブバッテリ6の残容量>第1閾値であるかどうかを判断する(ステップS66)。低圧1サブバッテリ6の残容量>第1閾値であると判断された場合には、低圧1サブバッテリ6によりまだ若干の電力を供給することが可能であるので、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は第1DC/DCコンバータ5をONにして昇圧可能な状態に切り替え(ステップS67)、低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を開始する(ステップS68)。低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電中、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は低圧1サブバッテリ6の残容量を検出し(ステップS69)、低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であるかどうかを判断する(ステップS70)。低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断されない間、すなわち低圧1サブバッテリ6の残容量>第1閾値である場合には、充電を継続する。ステップS70で、低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断されると、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を終了し(ステップS71)、第1DC/DCコンバータ5をOFFにする(ステップS72)。
【0072】
以上の処理により、低圧1サブバッテリ6の残容量は第1閾値にまで低下しているため、車両1が救援地点に到達しているのであれば車両システムを停止することが好ましい。車両システムが停止され、IG−OFFであると判断された(ステップS73)後には、低圧1サブバッテリ6の交換に備えるため、低圧1サブバッテリ充放電制御部24が低圧1サブバッテリ6のロックをOFFにして(ステップS74)、低圧1サブバッテリ6を着脱可能な状態に維持する。
【0073】
救援意思を有するユーザの車両が救援地点に到達した後には、救援意思を有するユーザの車両に搭載されていた低圧1サブバッテリと、車両1に搭載されていた低圧1サブバッテリ6の交換を行い(ステップS75)、救援意思を有するユーザの車両に搭載されていた低圧1サブバッテリを車両1に新たに装着する。車両システム制御装置ECU20は、新たに装着された低圧1サブバッテリ6のバッテリ識別情報記憶部44に記憶されているバッテリ識別情報を、ステップS63で統括センターから受信した情報と照合し(ステップS76)、認証を行う(ステップS77)。認証されない場合には、交換できないバッテリであるか、救援意思を有するユーザの車両のバッテリでないことを表示し(ステップS78)、その旨を統括センターに送信して(ステップS79)、処理が終了する。
【0074】
ステップS77で認証が完了した場合、表示装置33は交換が完了したことを表示する(ステップS80)。交換完了後、走行を再開できる状態にするためには、車両1の車両システムを作動させる必要があるので、車両システム制御装置ECU20は車両1がIG−ONであるかどうかを判断し(ステップS81)、IG−ONであると判断された場合には、低圧1サブバッテリの交換および認証が完了したことを統括センターへ送信する(ステップS82)。これにより救援作業が終了し、救援意思を有するユーザの車両は救援地点から去ってもよい。
【0075】
次いで、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は低圧1サブバッテリ6のロックをONにし(ステップS83)、低圧1サブバッテリ6を脱着不能にする。次いで、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、第1DC/DCコンバータ5をONにして昇圧可能な状態に切り替え(ステップS84)、低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を開始する(ステップS85)。この充電に際しては、電圧電流監視部31により低圧1サブバッテリ6の電圧および電流を測定する(ステップS86)。低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電中、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は低圧1サブバッテリ6の残容量を検出し(ステップS87)、低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であるかどうかを判断する(ステップS88)。低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断されない間、すなわち低圧1サブバッテリ6の残容量>第1閾値である場合には、充電を継続する。ステップS88で、低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断されると、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を終了し(ステップS89)、第1DC/DCコンバータ5をOFFにする(ステップS90)。
【0076】
その後、低圧1サブバッテリ6の放電量の積算を終了し、結果をバッテリ状態記憶部43に記憶する(ステップS91)。この低圧1サブバッテリ6の放電量の積算結果は統括センターに送信される(ステップS92)。これにより、統括センターは、救援意思を有するユーザの低圧1サブバッテリにより実際に得られた電力情報および救援意思を有するユーザの低圧1サブバッテリの性能情報等を、適正に評価することができる。これらの情報に基づき、救援を行ったユーザに特典を与えること等も可能である。
【0077】
このようにして、他車両から充電された低圧1サブバッテリを提供された車両は、再び走行を行うことが可能となる。このとき、空調装置11を使用不可とすると共に、最高車速や最高加速度を規制して、回生ブレーキの配分を多くすることにより、可能な限り長く走行が可能となるように制御することが望ましい(エマージェンシ走行モード)。
【0078】
図3に戻って、ステップS3でイグニッションスイッチがOFFであると判断された場合、すなわち車両システムが作動していない場合には、低圧1サブバッテリ6の非接触充電を行うため、図9に示される処理Cへと進む。図9に示すように、処理Cにおいて、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は、低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であるかどうかを判断する(ステップS101)。低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であると判断されなかった場合、すなわち、低圧1サブバッテリ6の残容量<第2閾値である場合、非接触充電装置制御部25は、非接触充電装置15が受電可能な状態であるかどうかを判断する(ステップS102)。非接触受電可能であると判断された場合には、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は低圧1サブバッテリ6をロックし(ステップS103)、低圧1サブバッテリ6を脱着不能にする。次いで、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、非接触充電装置15による低圧1サブバッテリ6の充電を開始する(ステップS104)。非接触充電装置15による低圧1サブバッテリ6の充電中、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は低圧1サブバッテリ6の残容量を検出し(ステップS105)、低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であるかどうかを判断する(ステップS106)。低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であると判断されなかった場合、すなわち低圧1サブバッテリ6の残容量<第2閾値である場合には、充電を継続する。ステップS106で低圧1サブバッテリ6の残容量≧第2閾値であると判断された場合には、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、非接触充電装置15による低圧1サブバッテリ6の充電を終了する(ステップS107)。
【0079】
ステップS102で非接触受電可能でないと判断された場合、例えば非接触充電装置15が非接触給電装置に十分に接近していない場合や、ステップS107で非接触充電装置15による低圧1サブバッテリ6の充電を終了した後、車両システム制御装置ECU20は、高圧メインバッテリ残容量+低圧1サブバッテリ残容量<第4閾値であるかどうかを判断する(ステップS108)。高圧メインバッテリ4の残容量+低圧1サブバッテリ6の残容量<第4閾値であると判断された場合、車両システム制御装置ECU20は、コンタクタ9をONにする(ステップS109)。そして、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、第1DC/DCコンバータ5をONにして、第1DC/DCコンバータ5を昇圧可能な状態に切り替え(ステップS111)。低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を開始する(ステップS111)。また、電圧電流監視部31は、低圧1サブバッテリの放電量の算出を開始する(ステップS112)。低圧1サブバッテリ6から高圧メインバッテリ4の充電中、低圧1サブバッテリ残容量監視部22は低圧1サブバッテリ6の残容量を検出し(ステップS113)、低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1所定値であるかどうかを判断する(ステップS114)。低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断されない場合、すなわち低圧1サブバッテリ6の残容量>第1閾値である場合には、低圧1サブバッテリ6から高圧メインバッテリ4の充電を継続する。
【0080】
ステップS114で低圧1サブバッテリ6の残容量≦第1閾値であると判断された場合には、電圧電流監視部31による低圧1サブバッテリ6の放電量の算出を終了し(ステップS115)、低圧1サブバッテリ6のバッテリ状態記憶部43に記憶する(ステップS116)。このように、低圧1サブバッテリ6の残容量が第2閾値から第1閾値へと変化するような放電の機会毎に低圧1サブバッテリ6の放電量を記憶することにより、低圧1サブバッテリ6の劣化状態を適正に記録することが可能となる。
【0081】
そして、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を終了し(ステップS117)、第1DC/DCコンバータ5の昇圧をOFFにする(ステップ118)。そして、車両システム制御装置ECU20は、コンタクタ9をOFFにして(ステップS119)、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は、低圧1サブバッテリ6のロックをOFFにし(ステップS120)、処理が終了する。また、ステップS108で、高圧メインバッテリ残容量+低圧1サブバッテリ残容量<第4閾値であると判断されなかった場合、すなわち、高圧メインバッテリ4の残容量+低圧1サブバッテリ6の残容量≧第4閾値である場合には、低圧1サブバッテリ6による高圧メインバッテリ4の充電を行うと、高圧メインバッテリ4が過充電になる虞があるので、低圧1サブバッテリ充放電制御部24は低圧1サブバッテリのロックをOFFにして脱着可能な状態にし、処理が終了する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る電気自動車の制御装置によれば、他車両を救援可能な車両の情報を自動的に統括センターへ収集されると共に、救援を要請している車両の情報が統括センターへと収集されるので、他車両との低圧1サブバッテリの交換を促進することができる。他車両を救援可能な車両が救援要請情報を受信した場合にはユーザの救援意思の有無が確認され、他の車両を救援した場合であっても目的地に到達可能であることが保証されるので、救援者側の負担が過大なものとならず、他車両との低圧1サブバッテリの交換を促進することができる。救援を要請している車両の情報が統括センターへと収集されるので、他車両との低圧1サブバッテリの交換を促進することができる。救援意思を有する車両の情報を救援要請車両に提供できるので、救援要請者に安心感を与えて安全性を向上できる。救援意思を有する車両の低圧1サブバッテリを提供される前に可能な限り高圧メインバッテリ4を充電するので、航続距離を長くすることができる。また、交換により装着された低圧1サブバッテリ6が、救援意思を有するユーザの低圧1サブバッテリであることを認証できるので、救援要請者に安心感を与えることができると共に、救援意思を有するユーザを適正に評価することができる。また、低圧1サブバッテリ6の劣化情報を適正に記憶することができると共に、救援意思を有するユーザから提供された低圧1サブバッテリの放電量積算値を統括センターへ送信することができるので、救援意思を有するユーザから提供された低圧1サブバッテリを適正に評価することができる。
【0083】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。例えば低圧1サブバッテリ6は、屋内で単体でも充電可能であってもよく、また前述の通り、太陽光パネルにより充電可能な電池であってもよい。また、救援要請者を救援するユーザは、一般のユーザのほか、救援を目的としたサービススタッフ等も含む。
【符号の説明】
【0084】
1 電気自動車(車両)
2 モータ(MG)
4 高圧メインバッテリ
5 第1DC/DCコンバータ(DC/DC1)
6 低圧1サブバッテリ
7 第2DC/DCコンバータ(DC/DC2)
8 低圧2サブバッテリ
15 非接触充電装置
16 チャージャー
20 車両システム制御装置ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動系回路を介してモータに電力を供給するメインバッテリと、
車両内部の電気機器に電力を供給する、着脱自在の補助バッテリと、
前記駆動系回路から供給される電力を降圧して前記補助バッテリに供給すると共に、前記補助バッテリから供給される電力を昇圧して前記駆動系回路に供給する昇降圧器と、
前記メインバッテリおよび前記補助バッテリの残容量を監視すると共にそれぞれの充放電を制御するバッテリ制御部と、
統括センターとの通信が可能な通信装置と、を備える電気自動車の制御装置であって、
前記バッテリ制御部は、ユーザの指令に基づき、前記補助バッテリの残容量の目標値を第1の値と、前記第1の値よりも大きい第2の値との間で切り替え、
前記補助バッテリの状態を記憶するバッテリ記憶部を備え、
前記通信装置は、前記バッテリ記憶部に記憶された前記補助バッテリの残容量が前記第2の値以上である場合に、前記補助バッテリの情報を前記統括センターへ送信することを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項2】
前記通信装置が、前記補助バッテリの情報を前記統括センターへ送信した後に、補助バッテリを要請する救援要請情報を前記統括センターから取得した場合、前記通信装置は、前記ユーザの指令に応じて前記ユーザの救援意思の有無を前記統括センターへ送信することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項3】
ナビゲーションシステムを備え、
前記救援要請情報は、前記補助バッテリを要請する救援地点に関する救援地点情報を含み、
前記通信装置が前記救援要請情報を前記統括センターから取得した場合、前記ナビゲーションシステムは、前記車両が前記メインバッテリの残容量のみにより前記救援地点を経由して目的地へ到着することが可能か否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項4】
前記通信装置は、前記ユーザが救援意思を有することを前記統括センターに送信した場合に、補助バッテリを要請する救援要請者に対して前記ユーザの現在の位置情報を開示するか否かを前記ユーザの指令に応じて前記統括センターへ送信することを特徴とする請求項3に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項5】
前記バッテリ記憶部は、前記補助バッテリの放電により前記補助バッテリの残容量が前記第2の値から前記第1の値と変化する際に前記補助バッテリの劣化情報を記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項6】
前記メインバッテリの残容量が第3の値以下であると共に前記補助バッテリの残容量が前記第1の値以下である場合、または前記メインバッテリの残容量および前記補助バッテリの残容量を用いて目的地点に到着することができないと判断された場合、前記通信装置は、前記ユーザの指令に応じて前記救援要請情報を前記統括センターへと送信することを特徴とする請求項3または4に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項7】
前記通信装置が前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記通信装置は前記救援意思を有するユーザの車両の情報を前記統括センターより受信することを特徴とする請求項6に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項8】
前記通信装置が前記救援要請情報を前記統括センターへ送信した後、前記バッテリ制御部は、前記補助バッテリの残容量が前記第1の値を超える場合に前記昇降圧器を駆動して前記補助バッテリの残容量が前記第1の値となるまで前記補助バッテリから前記メインバッテリへ充電することを特徴とする請求項6または7に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項9】
前記バッテリ記憶部は前記補助バッテリと一体に構成されると共に、前記補助バッテリの残容量と劣化情報と識別情報とを記憶しており、
前記通信装置が前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記救援意思を有するユーザの車両の補助バッテリが装着された後、前記通信装置は、前記救援意思を有するユーザの車両の補助バッテリの識別情報の認証が完了したことを、前記統括センターへ送信することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項10】
前記通信装置が前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記救援意思を有するユーザの車両の補助バッテリが装着された後、前記バッテリ制御部は、前記昇降圧器を駆動して救援されたユーザの車両の補助バッテリの残容量が前記第1の値となるまで、救援されたユーザの車両の補助バッテリから前記メインバッテリへ充電し、
前記通信装置は、救援されたユーザの車両の前記補助バッテリの放電量積算値を前記統括センターへ送信することを特徴とする請求項6または7に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項11】
前記通信装置から受信した情報を表示する表示装置を備え、
前記通信装置は、前記救援要請情報を統括センターへ送信した後に、前記表示装置に表示させる情報と同期させた情報を携帯装置にも表示させることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の電気自動車の制御装置を備えることを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120416(P2012−120416A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270942(P2010−270942)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】