説明

電気自動車用チャージコネクタ

【目的】 仮嵌合状態で一方のコネクタを保持できるようにする。
【構成】 充電器側コネクタ2には係止溝22を形成し、車両側コネクタ1にはこの係止溝22に嵌まり合う保持爪7を設け、これらを充電器側コネクタ2を所定深さ位置にまで嵌合させたときに、係合できるようにしておく。これによって、充電器側コネクタ2が仮嵌合位置に保持される。また、両コネクタ1、2の嵌合助勢を行うための引き込みプレート15を設けたものにおいて、仮嵌合位置で引き込みプレート15が車両側コネクタ1に同時に係合するようにしたものでは、仮嵌合位置がそのまま引き込みプレート15の動作開始位置となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電気自動車用チャージコネクタに関するものである。そして、特に充電器側コネクタを仮係止状態で保持できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】近い将来において、電気自動車の実用化が期待されている。この場合、バッテリーへの充電の問題は不可欠であって、中でも、チャージ用コネクタは重要な検討課題の一つとなる。例えば、充電作業では車両側に固定された車両側コネクタに対して充電器側コネクタでは充電器から延びている給電用ケーブルの先端に接続されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したような電気自動車のチャージに使用されるものでは、チャージ電流も高く、これに伴うターミナルの大型化等によってコネクタ自体も比較的大型なものとなる。また、充電器側コネクタでは上記したような長いケーブルの先端に取り付けられる関係で、手にしたときにはコネクタ自体の重量に加えてケーブル重量も作用するため、全体としてかなりの重量になることが予想される。したがって、コネクタ同士の嵌合作業を考えると、特に充電器側コネクタではその良好な操作性を図っておかねばならないことになる。
【0004】すなわち、コネクタ同士は嵌合操作後にロックして抜け止めをしておかねばならないが、このロック操作を行うまでの間も継続して嵌合力を作用させ続けねばならず、疲労感を招く。この場合、嵌め込みが不完全な状態で手を離してしまうと、コネクタが外れて落下破損に至ることもありうる。特に、充電側コネクタの重量を考えると、このようなことは充分に予想される。
【0005】本発明の目的は仮嵌合状態で保持することができる電気自動車用コネクタを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための請求項1に係る発明の構成は、車両のボディに固定された車両側コネクタと、この車両側コネクタに対して嵌め込み操作可能な充電器側コネクタとからなるものにおいて、充電器側コネクタを車両側コネクタに対する所定の嵌め込み位置において保持するために、車両側コネクタおよび充電器側コネクタのいずれか一方には、相手側コネクタに対して解離可能に係止する仮係止機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】また、請求項2に係る発明の構成は上記したチャージコネクタにおいて、前記充電器側コネクタには、前記車両側コネクタに対して引掛けられた状態で引き込み動作することで両コネクタの嵌合動作を助勢する引き込み機構が設けられるとともに、前記仮係止機構が相手側コネクタに係止したときの嵌め込み深さ位置は、前記引き込み機構が車両側コネクタに対する引掛け可能な位置にほぼ位置合わせしてあることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】請求項1に係る発明は充電器側コネクタを車両側コネクタに対して一定深さまで嵌め込むと、仮係止機構によって双方のコネクタ同士が係合し合い、これによって充電器側コネクタの保持が可能となる。
【0009】また、請求項2に係る発明では仮係止機構によって両コネクタの保持がなされた時点で、充電器側コネクタに設けられた引き込み機構が車両側コネクタに対する係止位置に位置決めされる。したがって、仮係止位置において直ちに引き込み機構による引き込み操作が可能となり、コネクタ同士の嵌合操作が正しく行われる。
【0010】
【発明の効果】本発明の効果は次のようである。仮係止機構を設定したため、両コネクタの仮の嵌合状態において充電器側コネクタの保持が可能となる。したがって、嵌合作業の間、作業者は嵌合力を継続させる必要がなく、また充電器側コネクタの脱落による損傷が未然に回避できる。
【0011】また、充電器側コネクタに引き込み機構を設けたものでは、仮嵌合位置と、引き込み機構が車両側コネクタに対して係合する係止位置とを一致させることができるため、引き込み機構の係止操作をやり直すことなく、引き込み動作を確実に行うことができる利点が得られる。
【0012】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例を図面にしたがって詳細に説明する。図1は車両側コネクタ1と充電器側コネクタ2の全体を示すものであり、まず車両側コネクタ1について説明すると、このコネクタのハウジング3の内部には図示はしないが、バッテリーに接続された充電用あるいは嵌合状況を検知する等、各種信号線用のターミナルが配されている。このハウジング3はほぼ円筒状に形成されており、外周面の一部には一対の突起4が設けられている(図1では片側のみが示されている。)。
【0013】一方、車両側コネクタ1におけるハウジング3の内周面であって、開口面から所定深さ位置には充電器側コネクタ2を仮嵌合状態において保持するための金属製の保持リング5が設けられている(図5参照)。そして、その取付けは車両側コネクタ1のハウジング3の内周面において周方向に沿って凹設された装着溝6へ嵌着することによって行われている。そして、保持リング5にはこの例においては等間隔毎に計4カ所、保持爪7が設けられている。各保持爪7は充電器側コネクタ2の嵌合操作方向に沿って切り込まれた両スリット間において一方を自由端として形成され、それぞれ内方へ向けてほぼ山形状に屈曲して突出し、かつこの形状が潰れる方向へ撓むことができるような変形が許容されている。
【0014】次に、充電器側コネクタ2を説明すると、この側のコネクタ2は嵌合操作を容易にするためにガンタイプの本体8を有し、その先端側には円筒状のコネクタハウジング9が設けられている。そして、ここには車両側コネクタ1に対応する各種ターミナルが組み込まれており、それらは両コネクタ1、2を嵌合させたときに両コネクタ1、2の対応する各ターミナル同士の電気的接続が可能となっている。そして、両コネクタ1、2の完全な嵌合状況を得るために、しかもこれを軽い操作力で実現するために、本例では両コネクタ1、2の嵌合動作を助勢するための引き込み機構が設定されている。
【0015】本体8の後部にはグリップ10が設けられており、このグリップ10部分の上部には握り操作可能なレバー11の上端側が支持されている。そして、レバー11は支持ピン12を中心として回動可能に装着され、また図には示されないが支持ピン12にはトーションばねが取り付けられてレバー11を戻し方向に付勢している。さらに、レバー11の下端には引掛けリング13が取り付けられ、グリップ10側への引掛けによってレバー11を握った状態(グリップ10側に接近させた状態)に保持することができる。
【0016】一方、前記したコネクタハウジング9の外周部分はフロントカバー14によって覆われているが、このカバー14の左右両側部は長さ方向に沿って膨出されている。そして、ここには車両側コネクタ1の両突起4に係合して引き込み動作(嵌合助勢動作)を行わせるための一対の引き込みプレート15が配されている。すなわち、両引き込みプレート15の先端側には両突起4へ係合させるための窓部16がそれぞれ貫通し、また後部側はフロントカバー14からはみ出した後、本体8の壁面に沿うように屈曲してさらに後方へ延出している。さらに、両引き込みプレート15はそれぞれ本体8の長さ方向に沿って前後進できるよう、ガイド片17によって案内可能となっている。
【0017】また、両引き込みプレート15を前後進させるための機構として、本例では両引き込みプレート15と前記レバー11とは以下のような歯車機構を介して連係するようになっている。
【0018】すなわち、レバー11の支持ピン12には左右一対のセクターギヤ18が取り付けられ、レバー11の握り操作と連動して揺動可能となっている。また、両セクターギヤ18は本体8に対して遊転自在に取り付けられた第1ギヤ19と噛み合い、また第1ギヤ19はこれに隣接する第2ギヤ20と噛み合っている。さらに、この第2ギヤ20には両引き込みプレート15の後端部に刻設されたラック歯21と噛み合っている。なお、第1、第2のギヤ19、20の歯数は本例では同数としてあるが、より引き込み操作を軽度にするためにギヤ比を変更してもよい。また、本体8には上記した歯車機構部分を覆うリヤカバー25が設けられている。
【0019】ところで、充電器側コネクタ2のハウジング9の内周面には車両側コネクタ1の各保持爪7と解離可能に係合する係止溝22が、全周に沿って形成されている。そして、各保持爪7が係止溝22に係合した場合には、充電器側コネクタ2を車両側コネクタ1に保持させその脱落が確実に回避できる程度の係着力が得られるように設定されている。また、図6に示すように、各保持爪7が係止溝22に係合した時には同時に車両側コネクタ1の両突起4に対して両引き込みプレート15の窓部16が適合するような位置関係としてあり、この意味において保持爪7と係止溝22との係合が、引き込みプレート15の差し込み深さを規定する位置決め手段となるわけである。
【0020】なお、図5に示すように、両引き込みプレート15は通常時は先端側がやや拡開気味となっており、充電器側コネクタ2を仮嵌合位置へ押し込んだときに突起4と干渉しないようにしてある。しかし、仮嵌合位置においてレバー11の握り操作が行われることで、両引き込みプレート15が僅かに後退した場合に、これに伴って次のようにして閉じ動作が行われるようにしてある。すなわち、図8に示すように両引き込みプレート15にはそれぞれ凸部23が形成されており、通常時にはこれと対向するハウジング9の壁面に乗り上げているが、僅かに後退動作が行われると、ハウジング9の壁面に所定長さ範囲に刻設された溝部24に落ち込んで閉じ動作が行われるようになっている。
【0021】次に、上記のように構成された本例の作用と効果を具体的に説明する。両コネクタ1、2を嵌合させる場合には、グリップ10を把持して充電器側コネクタ2を車両側コネクタ1に適合させ、そのまま押し込む。そして、充電器側コネクタ2のハウジング9の先端は各保持爪7を撓み変形させながら保持リング5を通過してゆき、所定深さ位置(仮嵌合位置)まで押し込まれると、各保持爪7が弾性復帰して係止溝22に係合する。但し、ここに至るまでの間、両引き込みプレート15は拡開状態にあり、突起4との干渉は回避されている。
【0022】上記した各保持爪7と係止溝22の係合によって、充電器側コネクタ2は仮嵌合位置に保持される。したがって、この状態で手を離しても不用意に充電器側コネクタ2を脱落させてしまう事態は未然に回避されている。また、仮嵌合時においてレバー11を軽く握り操作すると、両引き込みプレート15はセクターギヤ18および第1、第2のギヤ19、20の噛み合いを通じて僅かに後退する。これによって、両引き込みプレート15の凸部23が溝部24に落ち込んで本体8側へ接近する閉じ動作が行われるが、前述したように、仮嵌合位置において両コネクタ2の窓部16が突起4と嵌まり合うように自動的に位置決めがされる。したがって、さらにレバー11を握り操作すれば、そのまま引き込みプレート15の引き込みが可能となり、充電器側コネクタ2は各保持爪7と係止溝22との係合を解除して車両側コネクタ1に対する完全嵌合位置(図8状態)へ前進する。かくして、コネクタ1、2同士の嵌合が完了する。そして、引掛けリング13をグリップ10に対して引掛けておけば、レバー11は握られているときの状態がそのまま保持される。
【0023】充電が完了して充電器側コネクタ2を外す場合には、まず引掛けリング13を外してレバー11を解放する。これによって、レバー11が図示しないトーションばねによって戻し方向に復帰すると、歯車機構はそれぞれ上記とは逆の方向に回転し、両引き込みプレート15がその前進端近くに至ると、凸部が溝部から乗り上げることによって、それぞれ強制的に拡開変形する。したがって、両引き込みプレートと車両側コネクタとの係合が解除され、両コネクタ1、2が抜き出される。
【0024】以上のように、本例では仮嵌合位置において充電器側コネクタ2を保持するようにしたため、これ以降、完全嵌合位置へ充電器側コネクタ2を変位させるまでの間はレバー11の握り操作だけで全体に押しつけ力(嵌合力)を継続して付与する必要がなくなるため、嵌合操作がしやすくなる。また、仮嵌合状態において充電器側コネクタ2の落下破損の事態も回避できる。さらに、本例では仮嵌合時がレバー11の握りタイミングを規定することになるため、ミスのないレバー操作を可能にして作業性の向上が図れる。
【0025】なお、本発明は上記した実施例のものに限定されるべきものではなく、種々の変更が可能である。例えば、保持リング5の保持爪7による形式に代えて、ばねにて付勢されたボールを相手側のノッチに係合させるような方式も考えられる。また、引き込みプレート15の前後進させるための機構は特に歯車機構である必要はなく、要はレバー11の操作と連動して両引き込みプレート15の前後進が可能であるものであれば、その形式は問わない。さらに言えば、特にコネクタ1、2同士の嵌合力を低減させる必要がないような場合には、引き込みのための機構すら省略してもよい。また、完全嵌合のための機構としては引き込み機構とは逆に、押し込み式のものも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両側・充電器側コネクタの斜視図
【図2】嵌合前の状態を示す側面図
【図3】仮嵌合状態を示す側面図
【図4】完全嵌合状態を示す側面図
【図5】仮嵌合状態を示す平断面図
【図6】仮嵌合時における保持状況を示す拡大断面図
【図7】完全嵌合状態を示す拡大断面図
【図8】凸部と溝部との関係を示す拡大断面図
【符号の説明】
1…車両側コネクタ
2…充電器側コネクタ
7…保持爪(仮係止機構)
15…引き込みプレート(引き込み機構)
22…係止溝(仮係止機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両のボディに固定された車両側コネクタと、この車両側コネクタに対して嵌め込み操作可能な充電器側コネクタとからなるものにおいて、充電器側コネクタを車両側コネクタに対して所定の嵌め込み位置において保持するために、車両側コネクタおよび充電器側コネクタのいずれか一方には、相手側コネクタに対して解離可能に係止する仮係止機構が設けられていることを特徴とする電気自動車用チャージコネクタ。
【請求項2】 請求項1記載の電気自動車用チャージコネクタにおいて、前記充電器側コネクタには、前記車両側コネクタに対して引掛けられた状態で引き込み動作することで両コネクタの嵌合動作を助勢する引き込み機構が設けられるとともに、前記仮係止機構が相手側コネクタに係止したときの嵌め込み深さ位置は、前記引き込み機構が車両側コネクタに対する引掛け可能な位置にほぼ位置合わせしてあることを特徴とする電気自動車用チャージコネクタ。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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