説明

電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造

【課題】構造が複雑なブラケット等でパワーコントロールユニット(PCU)から引き出される電力線を保護することなく、簡易に当該電力線を保護する。
【解決手段】PCUの後面に設けられた連通孔から引き出されたヒータ用高圧ケーブル32をPCUの後面に沿って配索し、PCUに、連通孔の周辺において車両前後方向の後方に向かって突出する突起部50を設け、連通孔を、車幅方向において突起部50と、ユニット支持フレームの後側右脚部20と、の間に設ける。そして突起部50の車両前後方向の長さを、ヒータ用高圧ケーブル32の直径よりも大きく設定するとともに、上記後側右脚部20の後端部とPCUの後面との間の車両前後方向の距離を、ヒータ用高圧ケーブル32の直径よりも大きくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンと、駆動用のモータを主に制御するパワーコントロールユニット(以下、PCU(Power Control Unit))と、が並んで配置されるハイブリッド車両が開示されている。この車両では、PCUにエンジン側に突出するブラケットが設けられ、このブラケットがそのエンジン側に位置する端部よりもPCU側で、ケーブルを保持する。この構造では、PCUがエンジン側に移動した際に、ブラケットが、ケーブルよりも先にエンジンに当接することで、ケーブルが保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に係る構造では、ブラケットの形状が比較的複雑であり、ブラケットの剛性を十分なものとするには、高強度な材料を用いる必要がある。また、ケーブルをブラケットに保持させる際の作業にも手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、構造が複雑なブラケット等で電力線を保護することなく、簡易に電力線を保護できる電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に記載の発明は、電気自動車(例えば実施形態における電気自動車1)のモータルーム(例えば実施形態におけるモータルーム6)内に配置されるパワーコントロールユニット(例えば実施形態におけるパワーコントロールユニット10)から引き出される電力線(例えば実施形態におけるヒータ用高圧ケーブル32)を保護するための電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造であって、前記パワーコントロールユニットの後方に、前記モータルームと車室とを区画するダッシュパネル(例えば実施形態におけるダッシュパネル5)が配置され、前記電力線は、前記パワーコントロールユニットの後面に設けられた連通孔(例えば実施形態における連通孔48)から外部に引き出され、前記パワーコントロールユニットの外部の電気デバイスと、前記パワーコントロールユニットの内部と、を電気的に導通させ、前記電力線は、前記連通孔から前記パワーコントロールユニットの後面に沿って配索され、前記パワーコントロールユニットには、前記連通孔の周辺において車両前後方向の後方に向かって突出する突起部(例えば実施形態における突起部50)が設けられ、前記連通孔は、車幅方向において前記突起部と、前記パワーコントロールユニットを支持するフレーム部材(例えば実施形態におけるユニット支持フレーム12)の一部(例えば実施形態における後側右脚部20)と、の間に設けられ、前記突起部の車両前後方向の長さは、前記電力線の直径よりも大きく設定され、前記フレーム部材は、前記貫通孔に車幅方向で隣接する前記フレーム部材の一部の後端部と前記パワーコントロールユニットの後面との間の車両前後方向の距離が、前記電力線の直径よりも大きくなるように配置されている、ことを特徴とする電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造を提供する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造において、前記フレーム部材には、前記パワーコントロールユニットの後面より車両前後方向で後方に位置して、上下方向に延在する上下延在部(例えば実施形態における後側右脚部20)が含まれ、該上下延在部が、前記貫通孔に車幅方向で隣接することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造において、前記パワーコントロールユニットは、電気デバイスと、該電気デバイスを収納する筐体(例えば実施形態における筐体21)と、を備え、前記筐体には、その外周部の少なくとも一部を該筐体の外部に露出させるヒートシンク筐体(例えば実施形態におけるヒートシンク筐体22)が取り付けられ、該ヒートシンク筐体は、前記筐体の内部側に前記電気デバイスを冷却するためのヒートシンク部(例えば実施形態における凹部36)を有し、前記筐体の外部に露出する前記ヒートシンク筐体の外周部に、前記突起部が一体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造において、前記突起部にボルト挿通孔(例えば実施形態におけるボルト挿通孔38)が形成され、前記ヒートシンク筐体は、前記ボルト挿通孔に通したボルトによって前記筐体に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、前方からの衝撃によってパワーコントロールユニットが後方に移動した場合に、突起部とフレーム部材の一部とがダッシュパネルに接することで、パワーコントロールユニットの後面とダッシュパネルとにより電力線が挟まれる状態が生じにくくなり、電力線に対する衝撃が抑制される。これにより、構造が複雑なブラケット等で電力線を保護することなく、簡易に電力線を保護できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、電力線を側方から広範囲に覆って、電力線に対する側方からの外力の影響を抑制できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ヒートシンク部と突起部とを成型で一体に作製することができるため、製造コストを抑制できる。また、突起部の剛性を高くできる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ボルト挿通孔に必要となる肉厚部分に突起部を利用することで、効率的にボルト挿通孔を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電気自動車の前部上面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電気自動車が備えるパワーコントロールユニットの斜視図である。
【図3】上記パワーコントロールユニットの後面図である。
【図4】上記パワーコントロールユニットの筐体の一部であるヒートシンク筐体の上面図である。
【図5】上記パワーコントロールユニットの筐体の一部であるヒートシンク筐体の下面図である。
【図6】上記パワーコントロールユニット後部及びその後方のダッシュパネルの上面概略図である。
【図7】図6の拡大図である。
【図8】上記パワーコントロールユニット後部及びその後方のダッシュパネルの側面概略図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電気自動車の前部上面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】充電用ケーブルと接続するための第2の実施形態に係るパワーコントロールユニットが備える接続コネクタを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下で用いる図面において、矢印FRは車両の前方を示し、矢印UPは車両の上方を示し、矢印LHは車両の左方を示している。
【0016】
<第1の実施形態>
図1に本発明の第1の実施形態に係る構造が適用された電気自動車1の車両前部が示されている。この電気自動車1の車体前部には、左右の前輪2,2を覆う左フロントフェンダ3、右フロントフェンダ4が設けられている。左フロントフェンダ3及び右フロントフェンダ4はそれぞれの後部で車幅方向に延在するダッシュパネル5に連なり、左フロントフェンダ3、右フロントフェンダ4及びダッシュパネル5により、車両前部に、図示省略する駆動用のモータ等を収容するモータルーム6が形成されている。
【0017】
モータルーム6は、ダッシュパネル5によって後方の車室と区画されている。なお、図中符合7は、左フロントフェンダ3と右フロントフェンダ4の前端部に連なるヘッドライトを示している。ヘッドライト7,7の間には図示省略するバンパが設けられる。
【0018】
モータルーム6内の下部には、左右一対のサイドフレーム8,8が車両前後方向に沿って延在し、サイドフレーム8,8の前部間には、フロントビーム9が架設されている。また、モータルーム6内の車幅方向略中央であって、上面視でサイドフレーム8,8の間には、主にモータを制御するパワーコントロールユニット(以下、PCU(Power Control Unit))10が配置されている。なお、電気自動車1は左ハンドル仕様であり、図中Hは車室に設けられたハンドルを示している。
【0019】
PCU10は、上面視で概略矩形状を呈しており、PCU10の前方には、ラジエータ11が配置されている。ラジエータ11は、モータとPCU10を含むドライブトレインの冷却液と、図示しない蓄電装置の冷却液を、走行風である外気と熱交換することにより冷却する。
【0020】
PCU10は、上面視で矩形枠状を呈するユニット支持フレーム12に支持され、ユニット支持フレーム12は、PCU10の四辺を囲むように配置されている。ユニット支持フレーム12は複数の鋼管材を接合して構成されており、PCU10の前壁の前方に位置する前方延在部13と、PCU10の後壁の後方に位置する後方延在部14と、前方延在部13の左側端部及び後方延在部14の左側端部を結合する左方延在部15と、前方延在部13の右側端部及び後方延在部14の右側端部を結合する右方延在部16と、を有している。
【0021】
前方延在部13、後方延在部14、左方延在部15、及び右方延在部16が夫々結合する各角部には、前側左脚部17、前側右脚部18、後側左脚部19、及び後側右脚部20が下方に向けて延びるように形成され、ユニット支持フレーム12は、これら各脚部17〜20の下端部がサイドフレーム8,8に締結されることで姿勢が保持されている。そしてPCU10は、前方延在部13、後方延在部14、左方延在部15、及び右方延在部16の適所に締結されて、ユニット支持フレーム12によって支持されている。
【0022】
図2はPCU10の斜視図を示し、図3はPCU10の後面図を示している。PCU10は複数の電気デバイスを収容する筐体21を備え、この筐体21内には、例えば蓄電装置からの電力を直流から交流に変換するインバータ(後述のスイッチングモジュール25)、該インバータを制御する制御装置等が収納されている。
【0023】
筐体21は、上側に配置されるアッパケース23と、下側に配置されるロアケース24と、を備え、アッパケース23とロアケース24との間に板状のヒートシンク筐体22を取り付けて構成されている。ヒートシンク筐体22は、筐体21の上下方向中間位置に位置して、その外周部を外部に露出させて筐体21の外壁一部を構成している。上記筐体21内の電気デバイスは、アッパケース23及びロアケース24によってそれぞれ覆われている。
【0024】
図4は、上記ヒートシンク筐体22の上面図を示し、図5は上記ヒートシンク筐体22の下面図を示している。ヒートシンク筐体22は、アルミ合金等の熱伝導率の高い材料からなり、例えばダイキャスト等の成型によって形成されている。図4に示すように、ヒートシンク筐体22の上面には複数の電気デバイスが固定されている。
また、図4、図5に示すように、ヒートシンク筐体22の外周部には上下方向に貫通するボルト挿通孔38・・・が複数形成されている。図3を参照し、これらボルト挿通孔38・・・に通されたボルトにより、ヒートシンク筐体22と、アッパケース23と、ロアケース24と、が一体化される。
【0025】
図4に示すように、ヒートシンク筐体22の上面略中央領域には、図示省略する蓄電装置から供給される直流電流を3層交流に変換してモータに供給するスイッチングモジュール25が設置され、スイッチングモジュール25の右側には、マイナス側コンタクタ26及びプラス側コンタクタ27が車幅方向に並んで設置されている。マイナス側コンタクタ26及びプラス側コンタクタ27は、その後方側に設置されたダイオード28と電気的に接続し、比較的高電圧の急速充電用電源からの充電の際に、蓄電装置に急激に電流が流れないようにスイッチングする。
【0026】
ダイオード28の後方には、基板31が設置され、基板31には、図示省略するヒータ用高圧ケーブル32及びコンプレッサ用高圧ケーブル33が接続されている。なお、基板31上には、ヒータ用ヒューズ34及びコンプレッサ用ヒューズ35がそれぞれ設けられ、ヒータ用高圧ケーブル32及びコンプレッサ用高圧ケーブル33はこれらに電気的に接続されている。
【0027】
一方で図5に示すように、スイッチングモジュール25が設置された領域に対向するヒートシンク筐体22の下面には、比較的広範囲の領域において上方に向けて凹んだ凹部36が形成され、この凹部36はロアケース24の上面との間で冷却水が流れるウォータジャケットを構成する。このウォータジャケットにより、ヒートシンク筐体22の上面に設置された電気デバイスが冷却されるようになっている。
【0028】
次に、アッパケース23及びロアケース24内の電気デバイスについて説明すると、アッパケース23内には、図示しないコンデンサーが収容されている。またロアケース24内には、図示しないダウンバータ及びチャージャーが収納されている。コンデンサーは、スイッチングモジュール25の上方に配置されて、これと電気的に接続されており、スイッチングモジュール25に供給される電流を平滑化する。このコンデンサーは、ヒートシンク筐体22とアッパケース23とで形成される空間内に収納されている。
【0029】
また、ダウンバータ及びチャージャーは、ヒートシンク筐体とロアケース24とで形成される空間内に収納されている。ダウンバータは、蓄電装置からの電力を降圧するデバイスである。また、チャージャーは、家庭用電源からの充電を可能とするデバイスであり、AC/DCコンバータ等を含んで構成されている。
【0030】
次に図3を参照し、アッパケース23の上方に位置するユニット支持フレーム12の後方延在部14には、家庭用電源との接続のための接続コネクタ42が設けられ、接続コネクタ42は、図示省略するが、家庭用電源との接続ために車体適所に設けられた充電口まで延びるケーブルが接続される。接続コネクタ42は、左方に上記ケーブルの取付口を向け、右端部にPCU10内に延出するチャージケーブル43を一体に有している。チャージケーブル43は、ロアケース24の後面右側に形成された挿通孔44から車幅方向内側に向けて該後面に沿って上方へ延び、その上端で接続コネクタ42と一体化されており、ロアケース24の内側においては、上記チャージャーに接続されている。
【0031】
また、アッパケース23では、その右側上部の前側に、横断面矩形でやや上方に突出し、上記マイナス側コンタクタ26及びプラス側コンタクタ27の収納スペースを形成する突出壁部45が形成され、この突出壁部45の上面直下に、上記マイナス側コンタクタ26及びプラス側コンタクタ27が位置している。この突出壁部45の後面には、マイナス側コンタクタ26及びプラス側コンタクタ27に接続するマイナスコネクタ46及びプラスコネクタ47が、後方に取付口を向けるようにして設けられている。図示省略するが、マイナスコネクタ46及びプラスコネクタ47には、急速充電用電源との接続のために車体適所に設けられた充電口まで延びるケーブルが接続される。
【0032】
上記突出壁部45の後部よりも後方に位置するアッパケース23の後面右側には、上記ヒータ用高圧ケーブル32及びコンプレッサ用高圧ケーブル33を筐体外部に引き出すための連通孔48が形成され、ヒータ用高圧ケーブル32及びコンプレッサ用高圧ケーブル33は、連通孔48を通って外部に引き出されている。
ヒータ用高圧ケーブル32は、ヒートシンク筐体22及びロアケース24の後面に沿って下方に延ばされた後、ロアケース24の下面に沿って前方に延ばされるように配索されている。一方、コンプレッサ用高圧ケーブル33は、アッパケース23の後面に沿って右方に延ばされた後、前方に延ばされるように配索されている。
【0033】
ここで、ヒートシンク筐体22の後面において連通孔48の左下方に位置する部位には、車両前後方向の後方に向かって突出する突起部50が一体に形成され、突起部50は、連通孔48から引き出されたヒータ用高圧ケーブル32に車幅方向で隣接するように位置し、図6〜図8も参照し、ダッシュパネル5に向けて突出して形成されている。ここで、図6、図7に示すように、突起部50には、上記ボルト挿通孔38の一つが形成されている。また、突起部50は、チャージケーブル43にも車幅方向で隣接するように位置している。
【0034】
図7、図8を参照し、突起部50の基部から先端部までの車両前後方向における長さAは、ヒータ用高圧ケーブル32の直径Rよりも大きくなるように設定されており、なお、長さAは、ヒータ用高圧ケーブル32が、突起部50が形成された高さ方向の位置において車両前後方向で対向するヒートシンク筐体22の後面から突起部50の先端部までの長さとする。すなわち、長さAは、図7、8中、突起部50が形成された位置でヒータ用高圧ケーブル32が車両前後方向で対向するヒートシンク筐体22の後面に沿う基準線L1を基準とし、この基準線L1に直交する方向における基準線L1から突起部50の先端部までの長さである。また、同様に、突起部50の基部から先端部までの車両前後方向における長さAは、チャージケーブル43の直径よりも大きくなっている。
【0035】
一方で、図3に示すように、ユニット支持フレーム12の後側右脚部20は後面視で連通孔48の右方に位置し、そして、図6、図7に示すように、ヒータ用高圧ケーブル32の右方に後側右脚部20が近接して位置している。ここで、後側右脚部20は、車両前後方向で上記基準線L1よりも後方に位置し、上下方向に延在しており、後側右脚部20の後端部と上記基準線L1との間の車両前後方向の距離Bは、ヒータ用高圧ケーブル32の直径Rよりも大きくなっている。
【0036】
また、この電気自動車1では、PCU10の後面と対向するダッシュパネル5に、PCU10側に突出するスタッドボルト51が設けられ、このスタッドボルト51は、ハーネスを上方に載置してハーネスを保持したり、ハーネスを保持するためのブラケットを固定したりする際に用いられる。ここで、図7、図8を参照し、スタッドボルト51は、ダッシュパネル5において突起部50に概略対向した位置に設けられ、図中Cは、スタッドボルト51のダッシュパネル5からの突出方向の長さを示している。
【0037】
上記長さCは、ダッシュパネル5のスタッドボルト51を固定した部位における前面を基準とし、この前面に直交する方向における当該前面からスタッドボルト51の先端部までの長さである。ここで、図7、図8に示すように、突起部50の基準線L1からその先端部までの長さAは、スタッドボルト51の突出方向の長さCよりも大きく設定されている。
【0038】
以上に記載したように、上記電気自動車1では、PCU10の後面に設けられた連通孔48から引き出されたヒータ用高圧ケーブル32が、PCU10の後面に沿って配索され、PCU10には、連通孔48の周辺において車両前後方向の後方に向かって突出する突起部50が設けられ、連通孔48は、車幅方向において突起部50と、ユニット支持フレーム12の後側右脚部20と、の間に設けられ、突起部50の車両前後方向の長さAが、ヒータ用高圧ケーブル32の直径Rよりも大きく設定され、上記後側右脚部20の後端部とPCU18の後面との間の車両前後方向の距離Bが、ヒータ用高圧ケーブル32の直径Rよりも大きくなるようにユニット支持フレーム12が配置されている。
【0039】
このような構造では、前方からの衝撃によってPCU10が後方に移動した場合に、突起部50とユニット支持フレーム12の後側右脚部20とがダッシュパネル5に接することで、PCU10の後面とダッシュパネル5とによりヒータ用高圧ケーブル32が挟まれる状態が生じにくくなり、ヒータ用高圧ケーブル32に対する衝撃が抑制される。
これにより、構造が複雑なブラケット等でヒータ用高圧ケーブル32を保護することなく、簡易にヒータ用高圧ケーブル32を保護できる。また、チャージケーブル43も突起部50によって保護されることになる。
【0040】
また、後側右脚部20は連通孔48に車幅方向で隣接しているため、ヒータ用高圧ケーブル32を側方から広範囲に覆って、ヒータ用高圧ケーブル32に対する側方からの外力の影響を抑制できる。
【0041】
さらに、この電気自動車1では、PCU10のアッパケース23及びロアケース24には、その外周部をアッパケース23及びロアケース24の外部に露出させるとともに、アッパケース23及びロアケース24の内部側に電気デバイス(スイッチングモジュール)を冷却するための凹部36(ヒートシンク部)を有するヒートシンク筐体22が取り付けられ、筐体21の外部に露出するヒートシンク筐体22の外周部に、突起部50が一体に設けられている。この場合、凹部36と突起部50とを成型で一体に作製することができるため、製造コストを抑制できる。また、突起部50の剛性を高くできる。
【0042】
また、突起部50にボルト挿通孔38が形成され、ヒートシンク筐体22は、ボルト挿通孔38に通したボルトによってアッパケース23及びロアケース24に取り付けられている。この場合、ボルト挿通孔38に必要となる肉厚部分に突起部50を利用することで、効率的にボルト挿通孔38を形成できる。
【0043】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について図9〜図11を用いて説明する。この実施形態では、接続コネクタ42の配置が第1の実施形態と異なっている。以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符合で示し説明を省略する。
【0044】
図9〜図11に示すように、本実施形態では、アッパケース23の突出壁部45の後部に板状のブラケット42Bが後方に延びるように取り付けられ、このブラケット42Bの後部に接続コネクタ42が取り付けられている。接続コネクタ42は右方に取付口を向けており、左端部にチャージケーブル43が接続されている。チャージケーブル43は、アッパケース23の後壁に沿って上方へ延び、その後、右方に向けて延ばされ接続コネクタ42に結合されている。
【0045】
以上に説明した第2の実施形態においても、PCU10の後面に設けられた連通孔48から引き出されたヒータ用高圧ケーブル32が、PCU10の後面に沿って配索され、PCU10には、連通孔48の周辺において車両前後方向の後方に向かって突出する突起部50が設けられ、連通孔48は、車幅方向において突起部50と、ユニット支持フレーム12の後側右脚部20と、の間に設けられ、突起部50の車両前後方向の長さが、ヒータ用高圧ケーブル32の直径よりも大きく設定され、上記後側右脚部20の後端部とPCU18の後面との間の車両前後方向の距離が、ヒータ用高圧ケーブル32の直径よりも大きくなるようにユニット支持フレーム12が配置されるようになっている。
【0046】
したがって、構造が複雑なブラケット等でヒータ用高圧ケーブル32を保護することなく、簡易にヒータ用高圧ケーブル32を保護できる。また、チャージケーブル43の配索は第1の実施形態と異なるが、チャージケーブル43も突起部50によって保護されることになる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、ヒートシンク筐体22に設けられた凹部36に冷却水を流すことで、電気デバイスを冷却するヒートシンク部を構成する構造を説明したが、例えばフィン等を設け表面積を確保して熱交換するようなヒートシンクをヒートシンク筐体22の内部側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電気自動車
5 ダッシュパネル
6 モータルーム
10 パワーコントロールユニット(PCU)
12 ユニット支持フレーム(フレーム部材)
20 後側右脚部(上下延在部)
21 筐体
22 ヒートシンク筐体
23 アッパケース(筐体)
24 ロアケース(筐体)
32 ヒータ用高圧ケーブル
36 凹部(ヒートシンク部)
38 ボルト挿通孔
48 連通孔
50 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のモータルーム内に配置されるパワーコントロールユニットから引き出される電力線を保護するための電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造であって、
前記パワーコントロールユニットの後方に、前記モータルームと車室とを区画するダッシュパネルが配置され、
前記電力線は、前記パワーコントロールユニットの後面に設けられた連通孔から外部に引き出され、前記パワーコントロールユニットの外部の電気デバイスと、前記パワーコントロールユニットの内部と、を電気的に導通させ、
前記電力線は、前記連通孔から前記パワーコントロールユニットの後面に沿って配索され、
前記パワーコントロールユニットには、前記連通孔の周辺において車両前後方向の後方に向かって突出する突起部が設けられ、
前記連通孔は、車幅方向において前記突起部と、前記パワーコントロールユニットを支持するフレーム部材の一部と、の間に設けられ、
前記突起部の車両前後方向の長さは、前記電力線の直径よりも大きく設定され、
前記フレーム部材は、前記貫通孔に車幅方向で隣接する前記フレーム部材の一部の後端部と前記パワーコントロールユニットの後面との間の車両前後方向の距離が、前記電力線の直径よりも大きくなるように配置されている、
ことを特徴とする電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造。
【請求項2】
前記フレーム部材には、前記パワーコントロールユニットの後面より車両前後方向で後方に位置して、上下方向に延在する上下延在部が含まれ、
該上下延在部が、前記貫通孔に車幅方向で隣接することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造。
【請求項3】
前記パワーコントロールユニットは、電気デバイスと、該電気デバイスを収納する筐体と、を備え、
前記筐体には、その外周部の少なくとも一部を該筐体の外部に露出させるヒートシンク筐体が取り付けられ、該ヒートシンク筐体は、前記筐体の内部側に前記電気デバイスを冷却するためのヒートシンク部を有し、
前記筐体の外部に露出する前記ヒートシンク筐体の外周部に、前記突起部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造。
【請求項4】
前記突起部にボルト挿通孔が形成され、
前記ヒートシンク筐体は、前記ボルト挿通孔に通したボルトによって前記筐体に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の電気自動車用パワーコントロールユニットの電力線保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−106423(P2013−106423A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248165(P2011−248165)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】