説明

電気自動車用足回りユニット

【課題】 本発明は、電気自動車を製造する際の車両組立て容易性および低原価性を高めるとともに、新たな車両形態を可能とする足回りユニットを提供する。
【解決手段】 電気自動車が走行するための動力装置、動力伝達装置、転舵装置、懸架装置、制動装置、制動制御装置、加減速制御装置などの機能装置を、目的に応じて選択して、サブフレームを介してひとつの集合体を構成し、懸架装置におけるダンパー・スプリングの両端支持点を、ユニット構成部品に設け、動力伝達装置において上下に反転して、右車輪、左車輪に同一装置を使用したことを特徴とする電気自動車用足回りユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の動力装置、動力伝達装置、転舵装置、懸架装置、制動装置、制動制御装置、加減速制御装置などの機能装置を、目的に応じて選択して、サブフレームを介してひとつの集合体を構成したことを特徴とする電気自動車用足回りユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気自動車の構造において動力装置、動力伝達装置、転舵装置、懸架装置、制動装置、制動制御装置、加減速制御装置などは、一部を除いてボディに個々に取付けられるのが一般的であり、各々の機能装置を目的に応じて選択して、サブフレームを介してひとつの集合体を構成し、該集合体をボディに取り付けるという手段は用いられていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのために、次のような問題があった。
(イ)電気自動車の動力装置およびその制御装置、バッテリー以外の車両構造および製造手段は、化石燃料自動車と同一であるため、電気自動車を製造するための工場施設は、従来の化石燃料自動車を製造するのと同規模のものを必要とし、生産性も同等であった。
(ロ)電気自動車の動力装置およびその制御装置、バッテリー以外の車両構造および製造手段は、化石燃料自動車と同一であるため車両のコストを低減することが困難であった。
(ハ)電気自動車の車両構造は従来の化石燃料自動車と殆ど変わらず、動力に電気を使う自動車であるが故の独創的な車両の出現を阻害していた。
本発明はこれらの問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電気自動車が走行するための動力装置、動力伝達装置、転舵装置、懸架装置、制動装置、制動制御装置、加減速制御装置などの機能装置を、目的に応じて選択して、サブフレームを介してひとつの集合体を構成し、懸架装置においてダンパー・スプリングの両端支持点を、ユニット構成部品に設け、動力伝達装置において車軸水平中心線を対称軸として上下反転して、右車輪、左車輪に同一装置を使用したことを特徴とする電気自動車用足回りユニットである。
【発明の効果】
【0005】
本発明による電気自動車用足回りユニットは、転舵装置、懸架装置、制動装置、制動制御装置、加速制御装置をサブフレームに取り付けて構成した前輪用ユニット、該前輪用ユニットに動力装置、動力伝達装置を付加した前輪用ユニット、動力装置、動力伝達装置、懸架装置、制動装置をサブフレームに取り付けて構成した後輪用ユニット、該後輪用ユニットから動力装置、動力伝達装置を取り除いた後輪用ユニット、それぞれの後輪用ユニットに転舵装置を付加した後輪用ユニットの6種類を想定する。
【0006】
本発明による電気自動車用足回りユニットを用いるならば、電気自動車は大別して、車体、前輪用ユニット、後輪用ユニット、タイヤおよびホイール、バッテリー、配線・配管で構成される。前輪用ユニットおよび後輪用ユニットは電気自動車組立工場外で組み立てることが可能であり、これにより電気自動車組立工場での組み付け部品数は大幅に減少され大変生産性が向上する。また、該前輪用ユニットおよび後輪用ユニットを複数の形態の違う車両で共用する展開を図れば、同一部品の製造数が増え、個々の車両の製造原価や開発費用を低減することが可能になる他、開発日程短縮も可能となる。
【0007】
さらに、前述の前輪用ユニット2種類、後輪用ユニット4種類の組合せを選択すれば、後輪駆動、前輪駆動、4輪駆動、2輪駆動4輪操舵、4輪駆動4輪操舵など、あらゆる駆動操舵方式の展開が容易に可能となる。また、3つ以上の足回りユニットを用いた多輪車両を展開することも考えられ、従来の化石燃料自動車では成し得なかった、電気自動車ならではの新しい概念の車両の創造を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実勢形態の一例を図1、図2、図3にて説明する。
【0009】
後輪駆動電気自動車の後輪用ユニットを考える場合、必要な機能装置は、動力装置3、動力伝達装置4、懸架装置2、制動装置5などがある。図1によれば動力装置3は動力伝達装置4に直接取り付けられ、動力伝達装置4は、上端はアッパーブラケット2eを介してアッパーアーム2aおよびラジアスロッド2cの外端に、下端はロアブラケット2fを介してロアアーム2bの外端に、それぞれ球転自在に結合され、アッパーアーム2a、ラジアスロッド2c、ロアアーム2bの内端はサブフレーム1の側面に回転自在に結合され、下端をロアアーム2b、上端をサブフレーム1と回転自在に結合されたダンパー・スプリング2dとともに懸架装置2を構成する。制動装置5はブレーキキャリパー5aとディスクローター5bにより構成するが、ブレーキキャリパー5aは動力伝達装置4に、ディスクローター5bは車輪を取り付けるハブ6に取付けられる。
【0010】
図2は後輪駆動電気自動車の前輪用ユニットを示す。必要な機能装置は懸架装置2、転舵装置7、制動装置5、制動制御装置8、加減速制御装置9などがある。懸架装置2はハウジング2gの上端に取付けられたアッパーブラケット2e、下端に取付けられたロアブラケット2fと各々アッパーアーム2aの外端、ロアアーム2bの外端を球転自在に結合され、アッパーアーム2a、ロアアーム2bの内端はサブフレーム1の側面に回転自在に結合され、下端をロアアーム2b、上端をサブフレーム1と回転自在に結合されたダンパー・スプリング2dにより構成する。転舵装置7はサブフレーム1の内部に取付けられたステアリングギアボックス7aと、両端に球転自在なボールジョイントを持つタイロッド7bにより構成する。制動装置5はブレーキキャリパー5aとディスクローター5bにより構成するが、ブレーキキャリパー5aはハウジング2gに、ディスクローター5bは車輪を取り付けるハブ6に取付けられる。制動制御装置8はブレーキペダル8aと該ブレーキペダル8aにより押されて油圧を発生するマスターシリンダー8bにより構成し、サブフレーム1の後面に取付けられる。加減速制御装置9はアクセルペダル9aおよび該アクセルペダル9aの回動に連動して電気抵抗値が変化する可変抵抗器9bにより構成され、サブフレーム1の後面に取付けられる。
【0011】
タイヤからの路面入力はロアアーム2bを介してダンパー・スプリング2dにて吸収するが、ダンパー・スプリング2dの上端はサブフレーム1に結合されているので、反力はサブフレーム1に作用する。したがって、ユニット内部で走行時の路面入力等の局部荷重を処理できるので、当該ユニットを用いた車体には路面入力による局部荷重入力が発生しない。このことは車体材料に金属に比べて強度は低いが重量が軽いプラスチック材料を用いることを可能とし、車両の軽量化をもたらすことを意味する。
【0012】
動力伝達装置4は、図3に示すごとく車軸の水平中心線を対称軸として、すべての部品構成および形状を上下対称に構成する。これは左右輪で上下反転した同一の動力伝達装置を使うことを意味し、生産性能向上、原価低減に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】後輪用ユニットを示す図
【図2】前輪用ユニットを示す図
【図3】動力伝達装置の構造を示す図
【符号の説明】
【0014】
1 サブフレーム
2 懸架装置
2a アッパーアーム
2b ロアアーム
2c ラジアスロッド
2d ダンパー・スプリング
2e アッパーブラケット
2f ロアブラケット
2g ハウジング
3 動力装置
4 動力伝達装置
5 制動装置
5a ブレーキキャリパー
5b ディスクローター
6 ハブ
7 操舵装置
7a ステアリングギアボックス
7b タイロッド
8 制動制御装置
8a ブレーキペダル
8b マスターシリンダー
9 加減速制御装置
9a アクセルペダル
9b 可変抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車が走行するための動力装置、動力伝達装置、転舵装置、懸架装置、制動装置、制動制御装置、加減速制御装置などの機能装置を、目的に応じて選択して、サブフレームを介してひとつの集合体に構成したことを特徴とする電気自動車用足回りユニット。
【請求項2】
懸架装置においてダンパー・スプリングの両端支持点を、ユニット構成部品に設けたことを特徴とする請求項1の電気自動車用足回りユニット。
【請求項3】
動力伝達装置において車軸水平中心線を対称軸として上下反転し、右車輪、左車輪に同一装置を使用したことを特徴とする請求項1の電気自動車用足回りユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1196(P2012−1196A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148262(P2010−148262)
【出願日】平成22年6月12日(2010.6.12)
【出願人】(508126147)株式会社シンクトゥギャザー (2)
【Fターム(参考)】