説明

電気自動車

【課題】蓄電装置への充電中はボンネットを開けてメンテナンスを行えないようにする。
【解決手段】車両のフロントスペース2に外部からの充電時に動作する高電圧デバイスが搭載され、フロントスペース2を開閉するボンネット3を開いて前記高電圧デバイスのメンテナンスが可能であり、ボンネット3とは別に充電リッド5を備える電気自動車であって、充電リッド5は、ボンネット3よりも下方の車両の正面であって、ボンネット3の内部に設けられるボンネット開操作レバー4と車幅方向における相対位置が同一位置に設けられており、充電リッド5は上方に開き、開いた状態の充電リッド5とボンネット3の先端とが接近することで、ボンネット開操作レバー4にアクセスすることができなくなり、ボンネット3の開操作が不能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、充電リッドを備えた電気自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や燃料電池自動車では、駆動用モータに電力を供給する高電圧バッテリと補機に電力を供給する低電圧バッテリとを備えており、低電圧バッテリの充電量が低下したときに高電圧バッテリから低電圧バッテリに充電を行っている。この充電中にボンネットを開けてメンテナンスを行った場合の安全確保として、特許文献1には、充電中にボンネットの開放を示す信号が検出されたときに、AC/DCコンバータを停止し充電を停止するように制御することが開示されている。
【0003】
ところで、電気自動車においても、交流電力と直流電力とを変換するAC/DCコンバータや直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータ等の高電圧デバイスが、従来の内燃機関自動車におけるエンジンルームに対応する部分(以下、フロントスペースという)に搭載されている。また、電気自動車の場合には、車両に搭載された蓄電装置に外部から充電を行う際の充電口を備えている。この充電口は、通常は充電リッドにより閉蓋されており、充電するときに充電リッドを開くことで露出するようになっている。また、充電時には前記高電圧デバイスが作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−189760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように制御すると、例えば、ボンネット開閉機構の故障や振動等でボンネットの開動作を誤検知してしまう虞があるため、信頼性確保のためには精密なセッティングが必要となる。
また、充電リッドとボンネットを備える電気自動車では、充電中にボンネットを開けてメンテナンスを行うと、高電圧デバイスが緊急停止されてしまい、予定していた充電完了前に充電が停止され、蓄電装置が予定していない充電量のまま放置される可能性がある。そして、そのような充電量であることに使用者が気付かず、前記メンテナンスの終了後に再度充電を行わない場合には、蓄電装置の劣化を引き起こしたり、いざ電気自動車を運転する際に蓄電量が足りないという事態を招く虞がある。
【0006】
そこで、この発明は、蓄電装置への充電中にボンネットを開けてメンテナンスを行えないようにする電気自動車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電気自動車では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両のフロントスペース(例えば、後述する実施例におけるフロントスペース2)に外部からの充電時に動作する高電圧デバイスが搭載され、前記フロントスペースを開閉するボンネット(例えば、後述する実施例におけるボンネット3)を開いて前記高電圧デバイスのメンテナンスが可能であり、前記ボンネットとは別に充電リッド(例えば、後述する実施例における充電リッド5)を備える電気自動車(例えば、後述する実施例における電気自動車1)であって、前記充電リッドが開いているときには前記ボンネットの開操作が不能となり、前記充電リッドが閉じているときに前記ボンネットの開操作が可能となるように構成されていることを特徴とする電気自動車である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記充電リッドは、前記ボンネットよりも下方の車両の正面であって、前記ボンネットの内部に設けられるボンネット開操作レバー(例えば、後述する実施例におけるボンネット開操作レバー4)と車幅方向における相対位置が同一位置に設けられており、前記充電リッドは上方に開き、開いた状態の前記充電リッドと前記ボンネットの先端とが接近することで、ボンネットの開操作が不能となることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記充電リッドは全開状態で前記ボンネットの開閉軌道と干渉しないことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記ボンネットが開いているときには前記充電リッドの開操作が不能となり、前記ボンネットが閉じているときに前記充電リッドの開操作が可能となることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1または請求項4に記載の発明において、前記充電リッドのロック用アクチュエータ(例えば、後述する実施例における充電リッドロック用アクチュエータ42)と前記ボンネットのロック用アクチュエータ(例えば、後述する実施例におけるボンネットロック用アクチュエータ41)とを電気的に連動することにより、前記充電リッドが開いているときには前記ボンネットの開操作が不能となり、前記充電リッドが閉じているときに前記ボンネットの開操作が可能となることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1または請求項4に記載の発明において、前記充電リッドの開閉機構(例えば、後述する実施例における充電リッドロック装置12、ヒンジ装置30)と前記ボンネットのロック機構(例えば、後述する実施例におけるボンネットロック装置11、ロックピン35、ロックプレート36、ロック孔37)を機械的に連動することにより、前記充電リッドが開いているときには前記ボンネットの開操作が不能となり、前記充電リッドが閉じているときに前記ボンネットの開操作が可能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、電気自動車の蓄電装置の充電中に、ボンネットを開いてメンテナンス作業を行うことを防止することができる。また、ボンネットが開かれたときに充電を停止するように制御が組まれていても、充電中はボンネットを開けることができないので充電中断を抑制することができ、その結果、蓄電装置を予定していない蓄電量のまま放置することを抑制することができる。
請求項2に係る発明によれば、簡単な構成で、充電リッドが開いているときにボンネットの開操作を不能とすることができる。
請求項3に係る発明によれば、ボンネットを開いてから充電リッドを開いた場合に、その後、ボンネットを閉じる際に充電リッドを挟み込むことがないので、充電リッドの破損等を防止することができる。
【0014】
請求4項に係る発明によれば、ボンネットを開いてメンテナンスを行っているときに充電リッドを開けて充電プラグを充電口に接続するのを防止することができる。これにより、実際には充電が行われていないのに、充電を行っていると勘違いしてしまうのを防止することができる。
請求項5に係る発明によれば、充電リッドとボンネットとの位置関係に関わらず、充電リッドの開閉とボンネットの開閉を連動させることができる。
請求項6に係る発明によれば、充電リッドの開閉とボンネットの開閉を機械的に連動させるので、電気的な故障が排除されて、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係る電気自動車の実施例1における前部の外観斜視図である。
【図2】前記実施例1の電気自動車の前部の断面図である。
【図3】この発明に係る電気自動車の実施例2における前部の外観斜視図である。
【図4】前記実施例2の電気自動車におけるボンネットのロック機構と充電リッドのロック機構とを機械的に連動させた連動機構の概略構成図である。
【図5】前記実施例2におけるロック機構の作動説明図である。
【図6】この発明に係る電気自動車の実施例3における前部の外観斜視図である。
【図7】前記実施例3の電気自動車におけるボンネットのロック機構と充電リッドの開閉機構を機械的に連動させた連動機構の概略構成図である。
【図8】前記実施例3におけるボンネットのロック機構の斜視図である。
【図9】この発明に係る電気自動車の実施例4における概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明に係る電気自動車の実施例を図1から図9の図面を参照して説明する。
<実施例1>
初めに、この発明に係る電気自動車の実施例1を図1および図2の図面を参照して説明する。
図1は、実施例1の電気自動車1の前部の外観斜視図であり、電気自動車1の前部には、従来の内燃機関自動車におけるエンジンルームに相当する部分(以下、フロントスペースという)2がボンネット3によって塞がれており、このフロントスペース2に図示しない高電圧デバイスや走行駆動用モータ等の機器が搭載されている。高電圧デバイスには、交流電力と直流電力とを変換するAC/DCコンバータや、直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータ等が含まれる。
【0017】
ボンネット3は、フロントガラス10側を回転中心として前方側が上下方向に開閉可能となっており、フロントスペース2内に搭載された機器のメンテナンスを行う際にはボンネット3を開いて行う。
ボンネット3は、車内に設けられたボンネット開ノブ(図示略)を操作するとロックが解除されてボンネット3の前端が若干浮き上がり、その隙間から指を差し入れて図2に示されるボンネット開操作レバー4を操作することにより、ボンネット3を上方に開くことができるように構成されている。ボンネット開操作レバー4は車幅方向の中央に配置されている。
【0018】
また、電気自動車1の前部には、ボンネット3の前端よりも下方の車両の正面であって車幅方向の中央に、充電リッド5が設けられている。すなわち、充電リッド5とボンネット開操作レバー4は車幅方向における相対位置が同一位置に設けられている。
充電リッド5は、図2に示すように、充電ポート6を格納した充電ポート格納庫7を塞ぐ蓋であり、充電リッド5の上端側を回転中心として上下方向に開閉可能となっている。充電リッド5は通常は閉ざしておくものであり、電気自動車1に搭載された図示しないバッテリ(蓄電装置)を充電するときに開いて充電ポート6を露出させる。
【0019】
充電ポート6は、前述した高電圧デバイスの一部をなすAC/DCコンバータやDC/DCコンバータを介して、前記バッテリに接続されており、充電ポート6に充電コネクタ8を接続して外部電源から前記バッテリに充電をすることができるように構成されている。
【0020】
また、図2に示すように、充電リッド5を全開にさせたときには、充電リッド5とボンネット3の前端との間が狭まって、人の指がボンネット開操作レバー4に届かないように(すなわち、ボンネット開操作レバー4にアクセスすることができないように)、且つ、全開状態の充電リッド5が、図2において二点鎖線で示すボンネット3の開閉軌道Sと干渉しないように、全開状態の充電リッド5とボンネット3との相対位置関係や、充電リッド5の寸法や、全開時の充電リッド5の姿勢等が設定されている。
【0021】
なお、充電リッド5の裏側には全開保持爪9が設けられており、充電リッド5を全開にしないと全開保持爪9が邪魔をして充電コネクタ8を充電ポート6に接続できないようになっており、充電リッド5を全開にして充電コネクタ8を充電ポート6に接続すると、全開保持爪9が充電コネクタ8に突き当たることで充電リッド5をほぼ全開状態に保持することができるようになっている。
【0022】
このように構成された実施例1における電気自動車1では、前記バッテリを充電する場合には、ボンネット3が閉ざされているときに充電リッド5を開き、充電ポート6に充電コネクタ8を接続し、充電を行う。この充電中は充電リッド5は全開状態に保持されるので、人はボンネット開操作レバー4にアクセスすることができない。すなわち、充電リッド5が開いているときにボンネット3の開操作を不能とすることができる。よって、バッテリの充電中に、ボンネット3を開いてメンテナンス作業を行うことを防止することができる。また、ボンネット3が開かれたときに充電を停止するように制御が組まれていても、充電中はボンネット3を開けることができないので、充電の中断を抑制することができる。その結果、バッテリを予定していない蓄電量のまま放置することを抑制することができる。
【0023】
また、全開状態の充電リッド5が、ボンネット3の開閉軌道Sと干渉しないようになっているので、仮に、ボンネット3を開いてから充電リッド5を開いた場合に、その後、ボンネット3を閉じる際に充電リッド5を挟み込むことがないので、充電リッド5の破損等を防止することができる。
【0024】
<実施例2>
次に、この発明に係る電気自動車の実施例2を図3から図5の図面を参照して説明する。
図3は、実施例2の電気自動車1の前部の外観斜視図である。実施例2の電気自動車におけるボンネット3と充電リッド5の相対位置関係は実施例1とほぼ同じであるが、実施例2の充電リッド5は開閉の方向が図3に示すように前後左右方向に回動するように構成されている。
【0025】
そして、ボンネット3と充電リッド5は、図4に示すように、それぞれロック装置11,12を備えており、ボンネットロック装置11と充電リッドロック装置12が機械的に連動するように構成されていて、充電リッド5が開いているときにはボンネット3の開操作が不能となり、充電リッド5が閉じているときにはボンネット3の開操作が可能となり、また、ボンネット3が開いているときには充電リッド5の開操作が不能となり、ボンネット3が閉じているときには充電リッド5の開操作が可能となるように構成されている。
【0026】
以下、ボンネットロック装置11と充電リッドロック装置12の連動機構について詳述する。
ボンネットロック装置11と充電リッドロック装置12はどちらも基本構成は同じであるので、ここではボンネットロック装置11について説明し、充電リッドロック装置12については同一態様部分に同一符号を付して説明を省略する。
なお、図4は、ボンネットロック装置11がアンロック状態であり、充電リッドロック装置12がロック状態である場合を示している。
【0027】
ボンネットロック装置11は、車両のフロントスペース2側の構造体に固定されたベース13と、ベース13に取り付けられたロック爪14およびラッチ15と、ボンネット3の裏面側に支持されたストライカ16を主要構成としている。
ロック爪14とラッチ15は互いに隣接して配置されており、ロック爪14の図中右側にラッチ15が配置され、それぞれ別々の支軸14a,15aによってベース13に回動可能に支持されている。ロック爪14は図示しないスプリングによって図中反時計回り方向に付勢されている。
ラッチ15には、ストライカ16のロックピン17と係合離脱可能な凹部18と、ロック爪14の係止部19と係合離脱可能な係止壁部20と、係止部19が摺動可能なカム面21とが設けられている。なお、凹部18と係止壁部20は連続して形成されている。
【0028】
図5(a)に示すように、ボンネットロック装置11のロック状態では、ストライカ16のロックピン17がラッチ15の凹部18に係合するとともに、ロック爪14の係止部19がラッチ15の係止壁部20に係合する。このとき、ロック爪14はスプリングによって反時計回り方向に付勢されているので、ロック爪14をスプリングの弾性に抗して図中時計回り方向に回転させない限り、ロック爪14の係止部19とラッチ15の係止壁部20との係合が解除されることはない。その結果、ラッチ15は図中時計回り方向に回転不能とされるので、ストライカ16のロックピン17とラッチ15の凹部18との係合が保持され、ロック状態が保持される。したがって、ボンネット3は閉状態に保持される。
【0029】
ボンネットロック装置11のロック状態を解除しボンネット3を開くときには、図5(b)に示すように、ロック爪14をスプリングの弾性に抗して図中時計回り方向に回転することにより、ロック爪14の係止部19とラッチ15の係止壁部20との係合を解除し、その状態を保持しつつ、ボンネット3を上方回転させることによりストライカ16を上方に引き上げ、ストライカ16と係合しているラッチ15を図中時計回り方向に回転させる。すると、ラッチ15の回転に伴ってストライカ16のロックピン17がラッチ15の凹部18から離脱し、ボンネットロック装置11のロック状態が解除されて、ボンネット3をさらに上方回転させて開くことが可能となる。
その後、図5(c)に示すように、ロック爪14をスプリングの弾性復元力により反時計回り方向に回転させると、ロック爪14の係止部19はラッチ15のカム面21に当接して、ラッチ15の反時計回り方向の回転が抑制され、ボンネットロック装置11はアンロック状態に保持される。
【0030】
また、ボンネット3を閉じるときには、ボンネット3の閉動作の最後にボンネット3を下方に押し込むことにより、図5(c)に示す状態からストライカ16を下方に押し込むと、ストライカ16のロックピン17がラッチ15の係止壁部20に当接し、ラッチ15が反時計回り方向に回転する。すると、ロック爪14の係止部19がラッチ15のカム面21に押されることにより、ロック爪14がスプリングに抗して時計回り方向に回転し、その後、ラッチ15の反時計回り方向への回転が進行して、係止部19がラッチ15の係止壁部20の始端を乗り越えたときにロック爪14がスプリングの弾性復元力により反時計回り方向に回転し、図5(a)に示すように係止部19が係止壁部20に係合するとともに、ストライカ16のロックピン17がラッチ15の凹部18に係合して、ボンネットロック装置11はロック状態となる。
充電リッドロック装置12のロック動作およびアンロック動作も同じである。
【0031】
そして、図4に示すように、ボンネットロック装置11のラッチ15と充電リッドロック装置12のロック爪14とがワイヤ22により連結されるとともに、ボンネットロック装置11のロック爪14と充電リッドロック装置12のラッチ15とがワイヤ23によって連結されている。ワイヤ22は、ボンネットロック装置11のアンロック状態のラッチ15において支軸15aよりもボンネットロック装置11のロック爪14に近い部分(換言すると、図5(b)に示すアンロック操作時にロック爪14に接近する方向に移動する部分)と、充電リッドロック装置12のロック状態のロック爪14において支軸14aよりも上側の部分(換言すると、図5(b)に示すアンロック操作時にラッチ15に接近する方向に移動する部分)とを連結している。ワイヤ23は、ボンネットロック装置11のアンロック状態のロック爪14において支軸14aよりも上側の部分(換言すると、図5(b)に示すアンロック操作時にラッチ15に接近する方向に移動する部分)と、充電リッドロック装置12のロック状態のラッチ15において支軸15aよりも下側の部分(換言すると、図5(b)に示すアンロック操作時にロック爪14に接近する方向に移動する部分)とを連結している。
【0032】
ワイヤ22,23はそれぞれガイド24,25に挿通されており、ワイヤ22,23の長さは、ボンネットロック装置11と充電リッドロック装置12のいずれか一方がアンロック状態であり且つ他方がロック状態であるときに、ワイヤ22,23に弛み無く張設されるように設定されている。
【0033】
このようにワイヤ22,23によって連係されたボンネットロック装置11と充電リッドロック装置12では、図4に示すように、ボンネット3を開いてボンネットロック装置11をアンロック状態としているときに、ロック状態の充電リッドロック装置12のロック爪14を図中時計回り方向に回転させると、充電リッドロック装置12のロック爪14は緩み無く張設されたワイヤ22によってボンネットロック装置11のラッチ15に連結されているので、ワイヤ22に引っ張られてボンネットロック装置11のラッチ15が反時計回り方向に回転せしめられ、その結果、ボンネットロック装置11のロック爪14が時計回り方向に回転せしめられる。ボンネットロック装置11のロック爪14が時計回り方向に回転すると、ボンネットロック装置11のロック爪14が緩み無く張設されたワイヤ23によってに充電リッドロック装置12のラッチ15に連結されているので、ワイヤ23に引っ張られて充電リッドロック装置12のラッチ15が反時計回り方向に回転せしめられる。
したがって、充電リッドロック装置12のロック爪14を図中時計回り方向に回転させることはできても、充電リッドロック装置12のラッチ15を図中時計回り方向に回転させることができないので、充電リッドロック装置12はロック状態に保持される。つまり、ボンネット3が開いているときには充電リッド5の開操作が不能となる。
【0034】
図示を省略するが、充電リッド5を開いて充電リッドロック装置12をアンロック状態としているときに、ロック状態のボンネットロック装置11のロック爪14を時計回り方向に回転させた場合も同様であり、ボンネットロック装置11のラッチ15を時計回り方向に回転させることができないので、ボンネットロック装置11はロック状態に保持される。したがって、充電リッド5が開いているときにはボンネット3の開操作が不能となる。
【0035】
一方、ボンネット3と充電リッド5が両方とも閉じられていてボンネットロック装置11および充電リッドロック装置12が両方ともロック状態となっているときには、ワイヤ22が弛緩し、ワイヤ22においてガイド24から露出している部分が撓んだ状態となるため、ボンネットロック装置11のロック爪14と充電リッドロック装置12のロック爪14のいずれか一方のみは図中時計回り方向に回転可能である。したがって、充電リッド5を閉じているときにはボンネット3の開操作が可能となり、また、ボンネット3を閉じているときには充電リッド5の開操作が可能となる。
すなわち、実施例2の電気自動車では、充電リッド5が開いているときにはボンネット3の開操作が不能となり、充電リッド5が閉じているときにはボンネット3の開操作が可能となり、また、ボンネット3が開いているときには充電リッド5の開操作が不能となり、ボンネット3が閉じているときには充電リッド5の開操作が可能となる。
【0036】
このように構成された実施例2における電気自動車1では、車載のバッテリを充電する場合には、ボンネット3が閉ざされているときに充電リッド5を開き、充電コネクタを充電ポート(いずれも図示略)に接続して充電を行う。この充電中は充電リッド5は開状態であり、人はボンネット3を開操作することができない。よって、バッテリの充電中に、ボンネット3を開いてメンテナンス作業を行うことを防止することができる。また、ボンネット3が開かれたときに充電を停止するように制御が組まれていても、充電中はボンネット3を開けることができないので、充電の中断を抑制することができる。その結果、バッテリを予定していない蓄電量のまま放置することを抑制することができる。
【0037】
また、ボンネット3を開いてメンテナンスを行っているときに充電リッド5を開けて充電コネクタを充電ポートに接続するのを防止することができる。これにより、実際には充電が行われていないのに、充電を行っていると勘違いしてしまうのを防止することができる。
【0038】
この実施例2においては、ボンネットロック装置11はボンネット3のロック機構を構成し、充電リッドロック装置12は充電リッド5の開閉機構の一部を構成する。したがって、実施例2では、充電リッド5の開閉機構とボンネット3のロック機構が機械的に連動されており、電気的な構成が不要であるので、電気的な故障が排除されて、信頼性が向上する。
【0039】
<実施例3>
次に、この発明に係る電気自動車の実施例3を図6から図8の図面を参照して説明する。
図6は、実施例3の電気自動車1の前部の外観斜視図である。実施例3の電気自動車1における充電ポート格納庫7は、車体の側部であってボンネット3の側方且つ下方に設けられている。そして、充電リッド5は、充電ポート格納庫7の前方側を回転中心として車両の前後方向に開閉可能に設置されている。
図7は充電ポート格納庫7周辺を上から見た断面図であり、充電ポート格納庫7の内部であってその前側に、充電リッド5を車両の前後方向に回動可能に支持するヒンジ装置30が設置されており、ヒンジ装置30のアーム部31の先端に充電リッド5が固定されている。
【0040】
ヒンジ装置30のアーム部31には第1リンク32が水平面内を回動可能に取り付けられている。第1リンク32の先部は充電ポート格納庫7に形成された図示しない開口を貫通し、充電ポート格納庫7よりも車両内側に突き出ている。
また、充電ポート格納庫7よりも車両内側の所定位置には、第2リンク33がその中間部33aを中心にして水平面内にて回動可能に設置されている。この第2リンク33の一端には第1リンク32の先端が回動可能に連結されており、第2リンク33の他端には第3リンク34の一端部が回動可能に連結されている。
【0041】
また、第3リンク34の他端にはロックピン35が回動可能に取り付けられている。ロックピン35は、図示しないガイド機構により車幅方向にのみ移動可能に設置されている。
このように第1リンク32,第2リンク33,第3リンク34を介して充電リッド5に連結されたロックピン35は、充電リッド5の開閉に連動して車幅方向に進退動せしめられる。
ボンネット3が閉じられているときに図7に示すように平面視においてロックピン35の可動域と重なって位置するボンネット3の裏面には、図8に示すようにロックプレート36が鉛直姿勢に固定されており、ロックプレート36にはロックピン36が挿脱可能なロック孔37が設けられている。
【0042】
そして、ロックピン35は、ボンネット3と充電リッド5を両方とも閉じているときには、図7において二点鎖線で示すように、ロックプレート36のロック孔37から離脱し離間して位置するように設定されており、ボンネット3を閉じ、充電リッド5を開いたときに、図7において実線で示すように、ロックピン35の先部がロックプレート36のロック孔37に貫通し係合するように設定されている。
【0043】
このように構成された実施例3における電気自動車1では、車載のバッテリを充電する場合には、ボンネット3が閉ざされているときに充電リッド5を開き、充電コネクタを充電ポート(いずれも図示略)に接続して充電を行う。そうすると、図7において実線で示すように、充電リッド5が開動作することにより、第2リンク33が図7において時計回り方向に回転し、ロックピン35が車幅方向内側に移動して、ロックピン35の先部がロックプレート36のロック孔37に貫入し係合する。これにより、充電リッド5を開いているときにはボンネット3の開操作が不能となる。
一方、充電リッド5を閉じているときには、図7において二点鎖線で示すように、ロックピン35がロックプレート36のロック孔37から離脱し離間して位置するので、ボンネット3の開閉が可能となる。
【0044】
すなわち、実施例3の電気自動車1では、充電リッド5が開いているときにはボンネット3の開操作が不能となり、充電リッド5が閉じているときにはボンネット3の開操作が可能となる。
これにより、充電リッド5を開いて充電しているときには、人はボンネット3を開操作することができない。よって、バッテリの充電中に、ボンネット3を開いてメンテナンス作業を行うことを防止することができる。また、ボンネット3が開かれたときに充電を停止するように制御が組まれていても、充電中はボンネット3を開けることができないので、充電の中断を抑制することができる。その結果、バッテリを予定していない蓄電量のまま放置することを抑制することができる。
【0045】
この実施例3では、ヒンジ装置30は充電リッド5の開閉機構を構成し、ロックピン35とロックプレート36およびロック孔37はボンネット3のロック機構を構成する。したがって、実施例3では、充電リッド5の開閉機構とボンネット3のロック機構が機械的に連動されており、電気的な構成が不要であるので、電気的な故障が排除されて、信頼性が向上する。
【0046】
<実施例4>
次に、この発明に係る電気自動車の実施例4を図9の図面を参照して説明する。
図9は、実施例4の電気自動車における概略ブロック図である。
電気自動車は、ボンネットのロック装置をロック動作およびアンロック動作させることが可能なボンネットロック用アクチュエータ41と、充電リッドのロック装置をロック動作およびアンロック動作させることが可能な充電リッドロック用アクチュエータ42と、ボンネットのロック装置のロック状態を検知するボンネットロックセンサ43と、充電リッドのロック装置のロック状態を検知する充電リッドロックセンサ44と、電子制御装置(以下、ECUと略す)45と、を備えている。なお、ボンネットのロック装置および充電リッドのロック装置の機械的構成に特に限定はなく、電気的に制御可能なアクチュエータによってロック動作およびアンロック動作が可能であれば、どのような構成でも構わない。
【0047】
ボンネットロックセンサ43および充電リッドロックセンサ44の出力信号はECU45に入力され、これら出力信号等に基づいてECU45はボンネットロック用アクチュエータ41および充電リッドロック用アクチュエータ42のロック動作やアンロック動作を制御する。
詳述すると、ECU45は、ボンネットロックセンサ43がボンネットのロック装置のロック状態を検知しない場合(すなわち、アンロック状態である場合)には、充電リッドロック用アクチュエータ42のアンロック動作を禁止し、ボンネットロックセンサ43がボンネットのロック装置のロック状態を検知した場合には、充電リッドロック用アクチュエータ42のアンロック動作を許可するように制御する。
また、ECU45は、充電リッドロックセンサ44が充電リッド5のロック装置のロック状態を検知しない場合(すなわち、アンロック状態である場合)には、ボンネットロック用アクチュエータ41のアンロック動作を禁止し、充電リッドロックセンサ44が充電リッド5のロック装置のロック状態を検知した場合には、ボンネットロック用アクチュエータ41のアンロック動作を許可するように制御する。
【0048】
このように構成された実施例4の電気自動車では、充電リッドが開いているときにはボンネットの開操作が不能となり、充電リッドが閉じているときにはボンネットの開操作が可能となり、また、ボンネットが開いているときには充電リッドの開操作が不能となり、ボンネットが閉じているときには充電リッドの開操作が可能となる。
したがって、充電リッドを開いてバッテリを充電をしているときには、ボンネットを開操作することができないので、バッテリの充電中に、ボンネットを開いてメンテナンス作業を行うことを防止することができる。また、ボンネット3が開かれたときに充電を停止するように制御が組まれていても、充電中はボンネット3を開けることができないので、充電の中断を抑制することができる。その結果、バッテリを予定していない蓄電量のまま放置することを抑制することができる。
【0049】
また、ボンネットを開いてメンテナンスを行っているときに充電リッドを開けて充電コネクタを充電ポートに接続するのを防止することができる。これにより、実際には充電が行われていないのに、充電を行っていると勘違いしてしまうのを防止することができる。
【0050】
この実施例4では、ボンネットロック用アクチュエータ41と充電リッドロック用アクチュエータ42とを電気的に連動して、ボンネットと充電リッドを同時に開操作することができないように制御しているので、充電リッドとボンネットとの位置関係に関わらず、充電リッドの開閉とボンネットの開閉を連動させることができる。したがって、充電リッドとボンネットとの位置関係の自由度が大きくなる。
【0051】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、充電リッドの開閉機構とボンネットのロック機構とを機械的に連動させる手段として、前述した実施例2ではワイヤを、実施例3ではリンク機構を用いたが、これに限るものではなく、例えばギヤ等の他の手段を用いて連動させることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 電気自動車
2 フロントスペース
3 ボンネット
4 ボンネット開操作レバー
5 充電リッド
11 ボンネットロック装置(ボンネットのロック機構)
12 充電リッドロック装置(充電リッドの開閉機構)
30 ヒンジ装置(充電リッドの開閉機構)
35 ロックピン(ボンネットのロック機構)
36 ロックプレート(ボンネットのロック機構)
37 ロック孔(ボンネットのロック機構)
41 ボンネットロック用アクチュエータ
42 充電リッドロック用アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントスペースに外部からの充電時に動作する高電圧デバイスが搭載され、前記フロントスペースを開閉するボンネットを開いて前記高電圧デバイスのメンテナンスが可能であり、前記ボンネットとは別に充電リッドを備える電気自動車であって、
前記充電リッドが開いているときには前記ボンネットの開操作が不能となり、前記充電リッドが閉じているときに前記ボンネットの開操作が可能となるように構成されていることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記充電リッドは、前記ボンネットよりも下方の車両の正面であって、前記ボンネットの内部に設けられるボンネット開操作レバーと車幅方向における相対位置が同一位置に設けられており、前記充電リッドは上方に開き、開いた状態の前記充電リッドと前記ボンネットの先端とが接近することで、ボンネットの開操作が不能となることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記充電リッドは全開状態で前記ボンネットの開閉軌道と干渉しないことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記ボンネットが開いているときには前記充電リッドの開操作が不能となり、前記ボンネットが閉じているときに前記充電リッドの開操作が可能となることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記充電リッドのロック用アクチュエータと前記ボンネットのロック用アクチュエータとを電気的に連動することにより、前記充電リッドが開いているときには前記ボンネットの開操作が不能となり、前記充電リッドが閉じているときに前記ボンネットの開操作が可能となることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記充電リッドの開閉機構と前記ボンネットのロック機構を機械的に連動することにより、前記充電リッドが開いているときには前記ボンネットの開操作が不能となり、前記充電リッドが閉じているときに前記ボンネットの開操作が可能となることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−148598(P2012−148598A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6979(P2011−6979)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】