説明

電気自動車

【課題】低コスト化及び軽量化を図った上で、パワーコントロールユニットやPCU搭載フレームと、モータルーム内に配置される別の部品と、の干渉を抑制し、パワーコントロールユニットを保護できる電気自動車を提供する。
【解決手段】PCU搭載フレーム22は、PCU5を四方から囲んでおり、さらにPCU搭載フレーム22は、フロント支持フレーム25と左サイド支持フレーム24とを接続する前部支持脚部32と、左サイド支持フレーム24とリア支持フレームとを接続する後部支持脚部34と、を備え、後部支持脚部34は、ストロークシュミレータ6を左右方向に避けるように前部支持脚部32に対して左右方向に沿う内側にオフセット配置されているとともに、ストロークシュミレータ6の前端部よりも後方に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車等において、車体前部に配置されたモータルーム内には、例えばモータと、モータの上方に配設されてモータの駆動を制御するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)と、が収納されている。
【0003】
このようなPCUとして、例えば特許文献1には、DC−DCコンバータやインバータ等の複数の電気デバイスを一つのケース内に集約して収納する構成が知られている。この構成によれば、各電気デバイス間を接続するケーブル数を低減できるため、低コスト化及びスペース効率の向上を図ることができると考えられている。
一方で、上述した特許文献1に記載のPCUは、多くの電気デバイスをケース内に収納する関係で、比較的大型になる。したがって、PCUを搭載するためには、モータルーム内に大きなスペースを確保することが必要となる。
【0004】
また、近年ではブレーキ操作を電動アクチュエータで行うブレーキバイワイヤを搭載した車両が登場している。ブレーキバイワイヤを搭載した車両では、ブレーキペダルの踏み込みに対する反力を得るためのストロークシミュレータが設けられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−181979号公報
【特許文献2】特開2007−91055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気自動車等において、上述したストロークシュミレータを搭載する場合に、PCUとストロークシュミレータとをモータルーム内に一体に収納することが検討されている。このような場合、車室内とモータルーム内とを画成するダッシュボードパネルの前面にストロークシュミレータを固定する構成が考えられる。
【0007】
しかしながら、上述したようにPCUは比較的大型のデバイスであるため、PCUとストロークシュミレータとをモータルーム内に一体に収納することで、モータルーム内のレイアウト性が低下するという問題がある。また、この構成を採用した場合、例えば前面衝突(以下、前突という)等した場合に、車体前部から入力される衝撃荷重により、ストロークシュミレータと、PCU及びPCUを支持するフレームと、が相対的に変位して干渉することで、PCUが損傷する虞がある。
これに対して、PCUのケース自体やケースを支持するフレームの剛性や強度を高めることが考えられるが、製造コストが高くなるとともに、重量が増加するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、低コスト化及び軽量化を図った上で、パワーコントロールユニットやPCU搭載フレームと、モータルーム内に配置される別の部品と、の干渉を抑制し、パワーコントロールユニットを保護できる電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、複数の電気デバイスがケース(例えば、実施形態におけるケース21)内に収納されてなるパワーコントロールユニット(例えば、実施形態におけるPCU5)と、前記パワーコントロールユニットを搭載するPCU搭載フレーム(例えば、実施形態におけるPCU搭載フレーム22)と、が車両前方のモータルーム(例えば、実施形態におけるモータルーム3)内に配置された電気自動車(例えば、実施形態における電気自動車1)において、前記PCU搭載フレームは、前記ケースのうち、車両左右方向の2つの側面(例えば、実施形態における側面36,37)に対応して位置する一対のサイド支持フレーム(例えば、実施形態におけるサイド支持フレーム23,24)と、前記ケースに対して前側に位置するフロント支持フレーム(例えば、実施形態におけるフロント支持フレーム25)と、前記ケースに対して後側に位置するリア支持フレーム(例えば、実施形態におけるリア支持フレーム26)と、により前記パワーコントロールユニットを四方から囲んでおり、さらに前記PCU搭載フレームは、上下方向に沿って延在して前記フロント支持フレームと前記サイド支持フレームとを接続する第1垂直部(例えば、実施形態における前部支持脚部32)と、上下方向に沿って延在して前記サイド支持フレームと前記リア支持フレームとを接続する第2垂直部(例えば、実施形態における後部支持脚部34)と、を備え、車室内と前記モータルーム内とを区画するダッシュボードパネルのうち前記モータルーム側には、前記パワーコントロールユニットとは別の部品(例えば、実施形態におけるストロークシュミレータ6)が前方に向けて突出するように固定されており、前記第2垂直部は、前記別の部品を車両左右方向に避けるように前記第1垂直部に対して車両左右方向に沿う内側にオフセット配置されているとともに、前記別の部品の前端部よりも後方に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明では、前記モータルーム内における車両左右方向に沿う両側には、前記PCU搭載フレームを支持する一対のサイドフレーム(例えば、実施形態におけるサイドフレーム11)が設けられ、前記一対のサイドフレームは、前記車室の前部下方から上方に上がった後、前方に向けてそれぞれ延在し、前記サイドフレームのうち前記車室に近接する付根部側には、前記一対のサイドフレーム間を車両左右方向に沿って架け渡す後側横梁部材(例えば、実施形態におけるサブフレーム13)が設けられ、前記サイドフレームのうち前記上方に上がった部分よりも前方には、前記一対のサイドフレーム間を車両左右方向に沿って架け渡す前側横梁部材(例えば、実施形態におけるフロントビーム14)が設けられ、前記パワーコントロールユニットの下方には、後側が前記後側横梁部材に支持され、前側が前記前側横梁部材に支持されたモータ(例えば、実施形態におけるモータ4)が配設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明では、前記別の部品は、ブレーキ操作に応じた反力を発生させるブレーキストロークシュミレータ(例えば、実施形態におけるストロークシュミレータ6)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、前突時等においてPCU搭載フレームが変位する際に、別の部品と第2垂直部とが干渉するのを抑制でき、PCU搭載フレームの変位量を確保できる。
また、第2垂直部を別の部品の前端部よりも後方に配置することで、オフセット衝突のようにPCU搭載フレームが真後ろに変位しない衝突モードにおいて、PCU搭載フレームが斜め方向に変位した場合であっても、別の部品と第2垂直部とが干渉するのを抑制できる。
したがって、別の部品と第2垂直部との干渉を抑制することで、パワーコントロールユニット自体の剛性を高くすることがないので、低コスト化及び軽量化を図った上で、パワーコントロールユニットを保護できる。また、PCU搭載フレームを避けるように別の部品を配置することで、モータルーム内のレイアウト性も向上できる。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、前方からの衝撃荷重が入力され、サイドフレームの上方に上がった部分よりも前側が後側に向けて潰れ変形しつつ上方に持ち上がると、前側横梁部材と後側横梁部材に支持されたモータがサイドフレームの変形挙動に倣って後斜め上方に向けて変位するとともに、PCU搭載フレームに支持されたパワーコントロールユニットも同様にサイドフレームの変形挙動に倣って後斜め上方に向かって変位する。これにより、PCU搭載フレームが別の部品を避けるように変位することになるので、PCU搭載フレームと別の部品との干渉を確実に抑制し、パワーコントロールユニットを保護できる。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、PCU搭載フレームとブレーキストロークシュミレータとの干渉を確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における電気自動車の図2のA−A線に相当する概略構成図である。
【図2】電気自動車の前部の平面図である。
【図3】モータルーム内を示す正面図である。
【図4】モータの設置部分を示す模式的な側面図である。
【図5】本実施形態の電気自動車において、図2のA−A線に相当する概略構成図であって、衝撃荷重の入力時を示す説明図である。
【図6】従来の電気自動車において、モータルーム内を示す正面図である。
【図7】従来の電気自動車において、モータルーム内の側面図であって、衝撃荷重の入力時を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態における電気自動車の前部を側方から見た概略構成図であり、図2は電気自動車の前部の平面図である。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。
図1,2に示すように、本実施形態の電気自動車1において、車体2の前部にはモータルーム3が画成されている。モータルーム3内には、駆動源としてのモータ4と、モータ4の上方に配置されてモータ4の駆動を制御するPCU5と、運転者によるブレーキペダル(不図示)の操作に応じた反力を発生させるブレーキストロークシュミレータ6(以下、ストロークシュミレータ6という)と、が主に収納されている。なお、図1に示すように、モータルーム3の後部には、車室12内とモータルーム3内とを前後方向で区画するダッシュボードパネル8が設けられている。このダッシュボードパネル8は、PCU5の後方において上下方向に沿って延在するダッシュボードロア9と、ダッシュボードロア9の上端部から前方に向かって連設されたダッシュボードアッパ10と、を備えている。
【0017】
図1,2に示すように、モータルーム3の左右方向両側には、一対のサイドフレーム11が前後方向に沿って延在している。これらサイドフレーム11は、車室12の前部下方から上方に湾曲した後、前方に向けて延在しており、これらサイドフレーム11間にモータ4が配置されている。両サイドフレーム11の後端部は、図示しないフロアフレームやサイドシル等の車体2の前後方向中央に設けられたフレーム部材に結合されている。
両サイドフレーム11のうち、車室12に近接する付根部側には、サブフレーム(後側横梁部材)13が左右方向に沿って架設され、両サイドフレーム11の湾曲部分(上方に上がった部分)11aよりも前方には、フロントビーム(前側横梁部材)14が左右方向に沿って架設されている。すなわち、フロントビーム14は、サブフレーム13よりも前方、かつ上方に配置されている。
【0018】
サブフレーム13は、左右両側の前端部と後端部とが対応するサイドフレーム11の下面の前後に離間した2位置に結合され、その左右両側の前後の結合部間に図示しない前輪のロアアームが揺動可能に支持される。また、フロントビーム14は、矩形断面の中空フレームによって構成され、両端部が対応するサイドフレーム11の下縁部にそれぞれ結合されている。
【0019】
上述したモータ4は、円筒状に形成され、その回転軸を左右方向に向けた状態で、前後方向に沿うフロントビーム14とサブフレーム13との間に配置されている。モータ4の前端部は防振ゴムを内蔵するマウント部材15を介してフロントビーム14の下面に連結されるとともに、後端部は同様のマウント部材16を介してサブフレーム13の上面に連結されている。
【0020】
PCU5は、例えば車室12内の下方に配設された高電圧バッテリ(不図示)から供給される直流電力を三相(U相、V相、W相)の交流電力に変換し、変換した交流電力をモータ4に供給することでモータ4を駆動制御している。PCU5は、左右方向を長手方向とした直方体形状に形成されたケース21を備え、このケース21内に各種電気デバイスが収納されている。また、PCU5は、モータルーム3内におけるモータ4の上方にPCU搭載フレーム22を介してサイドフレーム11に固定されている。
【0021】
図3はモータルーム内を示す正面図である。
図1〜3に示すように、PCU搭載フレーム22は、パイプ状の部材であり、上下方向から見てモータルーム3内の左右方向中央部において、PCU5の全周を取り囲むように配設されている。具体的に、PCU搭載フレーム22は、PCU5に対して右側に配設された右サイド支持フレーム23と、左側に配設された左サイド支持フレーム24と、前側に配設されたフロント支持フレーム25と、後側に配設されたリア支持フレーム26と、を有している。
【0022】
右サイド支持フレーム23は、ケース21の右側において、ケース21の上下方向中間部分を前後方向に沿って水平に延在している。
左サイド支持フレーム24は、ケース21の左側において、ケース21の上部を前後方向に沿って水平に延在している。
【0023】
フロント支持フレーム25は、ケース21の前方において、ケース21の下部を左右方向に沿って水平に延在しているとともに、その延在方向に沿う両端部は後方に向けて屈曲されている。
各サイド支持フレーム23,24の前端部には、下方に屈曲して上下方向に沿ってそれぞれ平行に延在する前部支持脚部31,32が形成されている。これら前部支持脚部31,32は、その下端部が対応するサイドフレーム11における前側領域、図示の例では前後方向においてフロントビーム14と重なるに位置で結合されている。また、各前部支持脚部31,32のうち、右側の前部支持脚部31において、上下方向の中間部にフロント支持フレーム25の右端部が結合される一方、左側の前部支持脚部(第1垂直部)32において、上下方向の中間部にフロント支持フレーム25の左端部が結合されている。
【0024】
リア支持フレーム26は、ケース21の後方において、ケース21の上部を左右方向に沿って水平に延在している。
リア支持フレーム26の両端部には、下方に屈曲して上下方向に沿ってそれぞれ平行に延在する後部支持脚部33,34が形成されている。これら後部支持脚部33,34は、その下端部が対応するサイドフレーム11において湾曲部分11aよりも前側で、かつ湾曲部分11aの近傍領域、図示の例では前後方向においてサブフレーム13と重なる位置に結合されている。また、各後部支持脚部33,34のうち、右側の後部支持脚部33において、上下方向の中間部に右サイド支持フレーム23の後端部が結合される一方、左側の後部支持脚部(第2垂直部)34において、上下方向の中間部に左サイド支持フレーム24の後端部が結合されている。
【0025】
ここで、上述した左側の後部支持脚部34は、左側の前部支持脚部32よりも左右方向の内側、すなわち前部支持脚部32よりも右側にオフセットした位置に配設されている。この場合、後部支持脚部34は、前方から見てPCU5の左側端部に重なるように配置されている。
【0026】
上述したPCU5のケース21のうち、側面36,37及び前面38には、それぞれ外側に向けて突出する取付片41〜43がそれぞれ複数ずつ形成され、これら取付片41〜43を介してPCU5がPCU搭載フレーム22の内側で締結固定されている。具体的に、ケース21における右側の側面36のうち上下方向の中間部には、前後方向に並んで複数の取付片41が形成され、これら取付片41と右サイド支持フレーム23とが締結固定されている。また、ケース21における左側の側面37のうち上部には、前後方向に並んで複数の取付片42が形成され、これら取付片42と左サイド支持フレーム24とが締結固定されている。ケース21における前面38のうち下部には、左右方向に並んで複数の取付片43が形成され、これら取付片43とフロント支持フレーム25とが締結固定されている。
【0027】
ここで、上述したストロークシュミレータ6は、運転者による図示しないブレーキペダルの踏み込みに対する反力を得るためのものであって、ペダル踏み込み量(ストローク、操作量)と踏力との間に、所定の特性(ストローク−踏力特性)を付与している。ストロークシュミレータ6は、直方体形状に形成され、その後端部がダッシュボードロア9のモータルーム3側、すなわちダッシュボードロア9の前面に固定されている。
この場合、ストロークシュミレータ6は、PCU5に対して左後方において、PCU5と上下方向にラップした状態で配置されている。具体的に、前面視において、ストロークシュミレータ6は、左側の後部支持脚部34を左側に回避した位置であって、右端部が左側の前部支持脚部32に左右方向でラップした位置に配置されている。また、上面視において、ストロークシュミレータ6の前端部は、リア支持フレーム26と前後方向にラップしている。
【0028】
次に、電気自動車の前突時において、前方から衝撃荷重が入力されたときにおけるモータルーム内の変形挙動について説明する。図4はモータの設置部分を示す模式的な側面図であり、図5は図1に相当する概略構成図であって、衝撃荷重の入力時を示す説明図である。
本実施形態の電気自動車1において、前方から衝撃荷重が入力されると、サイドフレーム11が前方から後方に向けて押圧され、これによって、サイドフレーム11の前側領域が後方に向けて潰れ変形することになる。このとき、フロントビーム14を介してモータ4の上側領域に入力される衝撃荷重は、図4に示すように、モータ4の下側領域に当接するサブフレーム13からの反力とともに、モータ4全体を上方に回転させようとするモーメントとして作用する。
モータ4に作用するモーメントは、サイドフレーム11の湾曲部分11aよりも前側領域を、サイドフレーム11の付根部側を中心にして上方に回動変位させようとする。その結果、サイドフレーム11の湾曲部分11aよりも前側領域は、図5に示すように、後方に潰れ変形しつつ上方に持ち上がる。
【0029】
このとき、PCU搭載フレーム22を介してサイドフレーム11に固定されたPCU5は、サイドフレーム11の変形に伴って上方に持ち上がりつつ後方に向けて変位する。こうして、PCU5及びPCU搭載フレーム22が後斜め上方に向けて変位すると、PCU5の後端部がダッシュボードパネル8に当接し、それによってPCU5のそれ以上後方への変位が規制される。すなわち、ダッシュボードパネル8とPCU5との相対位置が固定される。
【0030】
図6は従来におけるモータルーム内を示す正面図である。また、図7は従来のモータルーム内を示す側面図であって、衝撃荷重の入力時を示す説明図である。なお、以下の説明では、本実施形態の構成に相当する構成については、同一の符号を付している。
ところで、図6に示すような従来のPCU搭載フレーム22では、左側の後部支持脚部34が前部支持脚部32に対して左右方向の外側(左側)にオフセット配置されており、前面視においてストロークシュミレータ6と左右方向にラップしている。
【0031】
この場合、図7に示すように、上述した前突時においてPCU搭載フレーム22が後斜め上方に向けて変位すると、後部支持脚部34の上下方向に沿う中間部がストロークシュミレータ6に干渉する。すると、PCU搭載フレーム22のうち、左側の後部支持脚部34はストロークシュミレータ6により、それ以上の後斜め上方への変位が規制される一方、その他の部分は後斜め上方に向けて変位することになる。そのため、PCU5とPCU搭載フレーム22との固定点、例えば左サイド支持フレーム24と、PCU5の取付片41〜43のうち左後側の取付片42aと、の間に両者を引き離す方向にせん断荷重が作用することになる(図7中矢印参照)。その結果、左サイド支持フレーム24と、PCU5の取付片42aと、の間を起点にしてPCU5(ケース21)が裂けるように損傷する虞がある。
【0032】
これに対して、本実施形態では、PCU搭載フレーム22のうち、左側の後部支持脚部34がストロークシュミレータ6を避けるように、前部支持脚部32に対して右側にオフセット配置されている構成とした。
この構成によれば、図5に示すように、上述した前突時においてPCU搭載フレーム22(後部支持脚部34)が後斜め上方に向けて移動する際に、ストロークシュミレータ6と後部支持脚部34とが干渉するのを抑制でき、PCU搭載フレーム22の変位量を確保できる。
また、本実施形態では、上面視において、ストロークシュミレータ6の前端部を、リア支持フレーム26と前後方向で重なる位置に配置することで、オフセット衝突のようにPCU搭載フレーム22が真後ろに変位しない衝突モードにおいて、PCU搭載フレーム22が斜め方向に変位した場合であっても、ストロークシュミレータ6と後部支持脚部34とが干渉するのを抑制できる。
したがって、ストロークシュミレータ6と後部支持脚部34との干渉を抑制することで、PCU5自体の剛性を高くすることがないので、低コスト化及び軽量化を図った上で、PCU5を保護できる。また、PCU搭載フレーム22を避けるようにストロークシュミレータ6を配置することで、モータルーム3内のレイアウト性も向上できる。
【0033】
また、本実施形態では、前方からの衝撃荷重の入力時に、サイドフレーム11の前側領域の変形挙動に倣ってPCU搭載フレーム22が後斜め上方に向けて変位することで、PCU搭載フレーム22がストロークシュミレータ6を避けるように変位することになる。そのため、PCU搭載フレーム22とストロークシュミレータ6との干渉を確実に抑制できる。
【0034】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、モータルーム3内でのレイアウトや、PCU5の構成等については適宜変更可能である。
また、上述した実施形態では、サイドフレーム11が、車室12の前部下方から上方に湾曲する湾曲部分11aを有する構成について説明したが、車室12の前部下方から上方に上がった部分を有していれば、屈曲していても、湾曲していても構わない。
また、本実施形態では、モータルーム内の別の部品として、ストロークシュミレータ6を例にして説明したが、これに限らず、その他の種々の部品についても本発明を適用することが可能である。
さらに、ストロークシュミレータ6が後部支持脚部33よりも外側にオフセット配置されていれば、ストロークシュミレータ6の配置位置は適宜設計変更が可能である。
【0035】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…電気自動車 3…モータルーム 4…モータ 5…PCU(パワーコントロールユニット) 6…ストロークシュミレータ(別の部品) 8…ダッシュボードパネル 11…サイドフレーム 11a…湾曲部分(上方に上がった部分) 12…車室 13…サブフレーム(後側横梁部材) 14…フロントビーム(前側横梁部材) 21…ケース 22…PCU搭載フレーム 23…右サイド支持フレーム(サイドフレーム) 24…左サイド支持フレーム(サイド支持フレーム) 25…フロント支持フレーム(フロント支持フレーム) 26…リア支持フレーム(リア支持フレーム) 32…前部支持脚部(第1垂直部) 33…後部支持脚部(第2垂直部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気デバイスがケース内に収納されてなるパワーコントロールユニットと、
前記パワーコントロールユニットを搭載するPCU搭載フレームと、が車両前方のモータルーム内に配置された電気自動車において、
前記PCU搭載フレームは、
前記ケースのうち、車両左右方向の2つの側面に対応して位置する一対のサイド支持フレームと、
前記ケースに対して前側に位置するフロント支持フレームと、
前記ケースに対して後側に位置するリア支持フレームと、により前記パワーコントロールユニットを四方から囲んでおり、
さらに前記PCU搭載フレームは、上下方向に沿って延在して前記フロント支持フレームと前記サイド支持フレームとを接続する第1垂直部と、
上下方向に沿って延在して前記サイド支持フレームと前記リア支持フレームとを接続する第2垂直部と、を備え、
車室内と前記モータルーム内とを区画するダッシュボードパネルのうち前記モータルーム側には、前記パワーコントロールユニットとは別の部品が前方に向けて突出するように固定されており、
前記第2垂直部は、前記別の部品を車両左右方向に避けるように前記第1垂直部に対して車両左右方向に沿う内側にオフセット配置されているとともに、前記別の部品の前端部よりも後方に配置されていることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記モータルーム内における車両左右方向に沿う両側には、前記PCU搭載フレームを支持する一対のサイドフレームが設けられ、
前記一対のサイドフレームは、前記車室の前部下方から上方に上がった後、前方に向けてそれぞれ延在し、
前記サイドフレームのうち前記車室に近接する付根部側には、前記一対のサイドフレーム間を車両左右方向に沿って架け渡す後側横梁部材が設けられ、前記サイドフレームのうち前記上方に上がった部分よりも前方には、前記一対のサイドフレーム間を車両左右方向に沿って架け渡す前側横梁部材が設けられ、
前記パワーコントロールユニットの下方には、後側が前記後側横梁部材に支持され、前側が前記前側横梁部材に支持されたモータが配設されていることを特徴とする請求項1記載の電気自動車。
【請求項3】
前記別の部品は、ブレーキ操作に応じた反力を発生させるブレーキストロークシュミレータであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103589(P2013−103589A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248170(P2011−248170)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】