説明

電気装置

【課題】2つの部材の組み付け強度の向上が可能な電気装置を提供する。
【解決手段】支持アーム20には取付穴Hが形成されている。支持アーム20は取付穴Hの縁を構成する第1側壁部21と第2側壁部22とを有する。被係合凸部22aは第2側壁部22側に形成される。第1側壁部21は、フロントパネル30のフック31が被係合凸部22aに引っ掛かっている状態で第2側壁部22から離れる方向X1へのフック31の動きを規制する。また、第1側壁部21は方向X1に膨らむように弾性変形可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気装置の構成する部材の組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来種々の電気装置において、その外観を構成する2つの外観部材(例えばハウジング)を組み合わせるために、一方の外観部材に形成されたフックが利用されている(例えば、下記特許文献1)。すなわち、一方の外観部材にアーム状のフックが形成され、このフックが他方の外観部材に形成された凸部や凹部に引っかかる。この引っかかりにより、2つの外観部材の分離が規制される。
【0003】
フックは弾性変形可能となっており、2つの外観部材の組み付ける際にはフックを一旦弾性変形させる必要が有る。例えば他方の外観部材に凸部が形成されている構造では、組み付け過程で、フックの爪部はフックの弾性変形を利用して凸部を乗り越える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−335330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構造では、組み付け時に弾性変形が必要となることから、フックの剛性(強度)を増すには限界がある。そのため、2つの外観部材の組み付け強度、すなわち2つの外観部材の分離方向の力に対する耐性を増すのが難しい場合がある。特に、外観部材の形状やサイズによりフックの数が限られる場合には、組み付け強度の向上は難しくなる。
【0006】
本発明の目的は2つの部材の組み付け強度の向上が可能な電気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気装置は、取付穴が形成された第1の部材と、前記取付穴に嵌めるためのフックを有する第2の部材と、を有する。前記第1の部材は、前記取付穴の縁を構成する、互いに対向する第1の部分と第2の部分と、前記第2の部分側に形成される、前記フックが引っ掛かるための被係合部と、を有する。前記第1の部分は、前記フックが前記被係合部に引っ掛かっている状態で前記第2の部分から離れる方向である第1の方向への前記フックの動きを規制し、且つ、前記フックの前記取付穴への進入を許容するように、前記第1の方向に膨らむよう弾性変形可能である。
【0008】
本発明によれば、フックの弾性変形を要しないので、フックの剛性を高める設計が可能となり、2つの部材の組み付け強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気装置であるクレードルの斜視図である。
【図2】上記クレードルの分解斜視図である。同図ではクレードルの後側が示されている。
【図3】上記クレードルを構成するハウジングの斜視図である。
【図4】上記ハウジングに取り付けられるフロントパネルの要部を示す図である。同図(a)は側面図であり、同図(b)は平面図である。
【図5】クレードルのハウジングへの組み付け工程を示す断面図である。同図は図3に示すV−V線を切断面としている。
【図6】フックの変形例を示す傾斜図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電気装置の斜視図である。図1では携帯型電子機器90を支持するためのクレードル1が電気装置として示されている。図2はクレードル1の分解斜視図であり、クレードル1の後側を示している。
【0011】
電子機器90は例えばゲーム機や動画像再生装置、通信機器として機能する装置である。クレードル1は電子機器90を支持するための装置である。クレードル1は、電子機器90の充電や、電子機器90と他の電子機器との間でのデータの送受信に利用される。図1及び図2に示すように、クレードル1は、その外観を構成する部材として、ハウジング(第1外観部材)10と、ハウジング10に取り付けられるフロントパネル(第2外観部材)30とを有している。
【0012】
ハウジング10は回路基板を収容している。この例のハウジング10は、図2に示すように、回路基板を収容するボックス部12を有している。ボックス部12は充電用やデータ送受信用のケーブルが接続されるコネクタ41,42をも収容している。ボックス部12の背面にはこれらコネクタ41,42を露出させるための開口が形成されている。ハウジング10はボックス部12の底を構成する板状のベース部11を有している。ベース部11はボックス部12よりも大きな横方向(X1−X2方向)の幅を有している。また、ハウジング10は、ボックス部12の前側を構成する前壁部13を有している。クレードル1の使用時、電子機器90は前壁部13に沿って配置される。前壁部13は、電子機器90を斜めに立った姿勢で支持できるように、後方に傾斜している。前壁部13の横方向の幅はベース部11と等しい。
【0013】
ハウジング10は前壁部13から前方に伸びる支持アーム20を有している。クレードル1は、その使用時、支持アーム20上で電子機器90を支持する。この例のハウジング10は左右方向に離れて位置する2つの支持アーム20を有している。これにより、電子機器90の支持安定性を向上できる。支持アーム20の上面20aは、上方に膨らんだ弧状に形成されている。弧状の上面20aによれば、電子機器90の下面における支持アーム20が当る位置が、電子機器90の姿勢に依らず、安定する。なお、この例では、上面20aは、電子機器90を後側に傾斜させた状態で支持できるように、斜め上方且つ前方に伸びている。
【0014】
クレードル1は、2つの支持アーム20の間に、電子機器90の下面に設けられたコネクタに接続されるコネクタ43を有している。この例では、ハウジング10は前壁部13から前方に突出する略箱状のコネクタ保持部14を有している。コネクタ43はコネクタ保持部14から上方に突出している。コネクタ43はコネクタ保持部14の上面に対して略垂直に配置されている。これにより、コネクタ43を電子機器90に接続した状態で、コネクタ保持部14によって電子機器90を安定的に支持できる。
【0015】
支持アーム20はコネクタ保持部14から離れて位置しており、それらの間には空隙が形成されている。この空隙を利用することで、クレードル1上に電子機器90を配置した状態で電子機器90を使用することができる。例えばコネクタ43が嵌るコネクタ以外にもヘッドフォンジャックなどのコネクタが電子機器90の下面に形成されている場合、電子機器90をクレードル1上に配置している状態で、空隙を使って電子機器90のコネクタにケーブルプラグを差し込むことができる。なお、支持アーム20の上面20aには、図1に示すように、凹部20bが形成されている。電子機器90のコネクタに接続したケーブルはこの凹部20bを通して空隙の外部に引き出すことができる。
【0016】
この例のハウジング10では、ボックス部12やベース部11、前壁部13、支持アーム20、及びコネクタ保持部14は樹脂によって一体的に成形されている。しかしながら、これらは必ずしも一体的に成形されなくてもよい。例えば、支持アーム20はボックス部12や前壁部13とは別個に成形されてもよい。
【0017】
上述したように、クレードル1はハウジング10に取り付けられるフロントパネル30を有している。この例のフロントパネル30は支持アーム20に取り付けられる。フロントパネル30は2つの支持アーム20の前端を連結しており、これにより支持アーム20の強度を増すことができる。また、この例のフロントパネル30は、後において説明するように、コネクタ保持部14にも取り付けられている。これにより、コネクタ保持部14の強度を増すことができる。
【0018】
ハウジング10とフロントパネル30の取付構造について説明する。図3はハウジング10の斜視図である。図4はフロントパネル30を示す図である。図4(a)は側面図であり、図4(b)は平面図である。図5はフロントパネル30の取り付け工程における各部の動きを説明するための断面図である。図5は図3に示すV−V線をその切断面としている。図5(a)では後述するフック31が取付穴Hに嵌る前の状態が示されている。図5(b)ではフック31の先端のみが取付穴Hに嵌っている状態が示されている。図5(c)では後述するリブ32の一部が取付穴Hに嵌っている状態が示されている。さらに、図5(d)ではフック31が取付穴Hに完全に嵌っている状態が示されている。
【0019】
図2に示すように、フロントパネル30にはフック31が形成されている。フック31はフロントパネル30からハウジング10に向かって、より詳細には支持アーム20に向かって突出している。図3に示すように、支持アーム20にはフロントパネル30に向かって開いた取付穴Hが形成されている。フック31は取付穴Hに嵌められる。すなわち、取付穴Hはフック31を収容する収容室として機能する。各支持アーム20は、左右方向において互いに対向する第1側壁部(第1の部分)21と第2側壁部(第2の部分)22とを有している。第1側壁部21と第2側壁部22の間に取付穴Hが形成され、側壁部21,22は取付穴Hの縁を構成している。すなわち、側壁部21,22はフック31を収容する収容室の側壁として機能している。
【0020】
また、支持アーム20は、取付穴Hの縁に、取付穴Hの内側に向かって突出する被係合凸部22aを有している。フック31は被係合凸部22aに引っ掛かる(図5(d)参照)。すなわち、フック31の端部には係合凸部31aが形成されており(図4参照)、この係合凸部31aが被係合凸部22aに引っ掛かる。これによりフック31が取付穴Hから抜け止めされる。
【0021】
図3に示すように、被係合凸部22aは第2側壁部22側に位置している。すなわち、被係合凸部22aは第1側壁部21から第2側壁部22側に離れて位置している。この例の支持アーム20は2つの被係合凸部22aを有している。一方の被係合凸部22aは第2側壁部22の前縁と取付穴Hの上縁との角に形成され、他方の被係合凸部22aは第2側壁部22の前縁と取付穴Hの下縁との角に形成されている。被係合凸部22aを角に形成することにより、被係合凸部22aの強度を増すことができる。このように、被係合凸部22aは取付穴Hの縁に形成されるため、被係合凸部22aによって取付穴(収容室)Hの入り口が狭められる。この例では、上述したように、2つの被係合凸部22aは取付穴Hの第2側壁部22側の角に形成される。そのため、取付穴Hの入り口は、第2側壁部22寄りの部分においてはその縦幅が狭められる。また、取付穴Hの入り口は、その最上部及び最下部においては、その横幅が狭められる。
【0022】
図5(d)に示すようにフック31が被係合凸部22aに引っ掛かっている時に、第1側壁部21は当該フック31が第2側壁部22から離れる方向に移動するのを規制している。この例では、第1側壁部21と第2側壁部22との距離、すなわち上側の被係合凸部22aと下側の被係合凸部22aの間での取付穴Hの横幅W7(図3、X1−X2方向の幅)は、フック31の取付穴Hに嵌る部分が有する最大横幅W2(図4(b)参照)に対応している。詳細には、取付穴Hの横幅W7はフック31の最大横幅W2に相当している。この構造により、フック31が図5(d)に示す係合位置にあるとき、第1側壁部21はフック31の側面(左側面)に当る(係合位置は、フック31の係合凸部31aが被係合凸部22aに係合する時のフック31の位置である)。これにより、フック31の第2側壁部22から離れる方向への動き、すなわち係合凸部31aと被係合凸部22aの引っ掛かりを解消するフック31の動きが規制される。この例のフック31は後述するようにリブ32を有しており、このリブ32で最大横幅W2を有している。第1側壁部21は、フック31が係合位置にあるときリブ32に当る。
【0023】
フック31が取付穴Hに進入する過程では被係合凸部22aと係合凸部31aとの干渉を避ける必要がある。この例の被係合凸部22aは、上述したように、第2側壁部22側に形成されている。そのため、進入過程でのフック31の位置(図5(b)及び(c))は第2側壁部22から離れる方向に係合位置(図5(d))からオフセットしている。
【0024】
図5(c)に示すように、第1側壁部21は、そのようなオフセットした位置にあるフック31を取付穴Hに嵌めることができるように、第2側壁部22から離れる方向、この例では左方向X1に膨らむように弾性変形可能である(図3では弾性変形した第1側壁部21の前縁が2点鎖線で示されている)。すなわち、第1側壁部21側での部分での取付穴Hの縦幅W3(図2)と、第1側壁部21の厚さとが、第1側壁部21が弾性変形可能となるように設定されている(ここで縦幅W3は、フック31を取付穴Hへ嵌める方向D1(図5、以下において嵌合方向)と、第1側壁部21が第2側壁部22から離れる方向X1(図5、以下において弾性変形方向)の双方に垂直な方向D3(図2、以下において縦方向)での幅である)。第1側壁部21のこのような構造によれば、フロントパネル30とハウジング10との組み付け作業時にフック31の弾性変形や第2側壁部22の弾性変形が必要とされないので、それらの剛性(強度)を高める設計が可能となる。その結果、フロントパネル30とハウジング10との組み付け強度を増すことができる。なお、この例では、第1側壁部21は弾性変形方向X1に向いた壁状、すなわち弾性変形方向X1に沿った垂線を有する壁状である。そのため、第1側壁部21の弾性変形が生じ易くなっている。
【0025】
また、この構造によれば、フック31の弾性変形を要しないため、嵌合方向D1でのフック31の長さと、嵌合方向D1での取付穴Hの深さとを短くできる。また、第1側壁部21と第2側壁部22との距離、すなわち取付穴Hの横幅W7を小さくできる。その結果、取付構造の小型化、支持アーム20の薄型化、及び支持アーム20の長さの低減が可能となる。さらに、第1側壁部21の厚さを弾性変形が可能な程度に設定することから、第1側壁部21の厚さが小さくなる。その結果、支持アーム20を細くできる。なお、この例では、第1側壁部21の厚さは第2側壁部22よりも薄くなっている。
【0026】
フック31には、第1側壁部21が第2側壁部22から離れる方向に膨らむように当該第1側壁部21を押す部分が、形成されている。この例では、図4(b)に示すように、フック31はフロントパネル30から突出する壁状の本体31bを有している。また、フック31は、第1側壁部21に対向するフック本体31bの側面(この例では左側面)に、リブ32を有している。第1側壁部21はフック本体31bの左側に位置しており、フック31は、取付穴Hへの進入過程で、リブ32を通して、取付穴Hの入り口を構成する第1側壁部21の前縁を押す(図5(c)参照)。
【0027】
リブ32はフック本体31bの縦幅W6よりも小さい縦幅W4を有している(ここで縦幅W4,W6は、嵌合方向D1と、第1側壁部21の弾性変形方向X1の双方に垂直な縦方向D3での幅である)。このようなリブ32によれば、フック31の押圧力が第1側壁部21の一部に集中的に作用するので、第1側壁部21の弾性変形が容易に生じ得る。この例のリブ32は、縦方向D3での第1側壁部21の中央部に当るように形成されている。これにより、第1側壁部21の弾性変形がさらに容易に生じ得る。この例では、リブ32は縦方向D3でのフック本体31bの中央部に形成されている。
【0028】
なお、この例のリブ32は、図4(a)に示すように、縦方向D3において互いに間隔を開けて配置される複数(この例では3つ)の小リブ32bによって構成されている。これによりリブ32全体の体積を低減できる。その結果、フロントパネル30の成形時に、フロントパネル30の材料の収縮に起因してフロントパネル30の前面に凹みが生じることを抑えることができる。この説明では、複数の小リブ32bの全体の縦幅を上述の縦幅W4としている。
【0029】
図4(b)に示すように、フック31はリブ32で最大横幅W2を有している。上述したように、第1側壁部21と第2側壁部22との距離、すなわち2つの被係合凸部22aの間での取付穴Hの横幅W7は幅W2に対応している。そのため、フック31が係合位置に配置されているとき、第1側壁部21はリブ32に当る(図5(d)参照)。
【0030】
図4に示すように、リブ32はフック31の基部に形成されている。これにより、フック31の強度を増すことができ、ハウジング10とフロントパネル30の取り付け強度をさらに増すことができる。この例のリブ32は、フック本体31bの側面とフロントパネル30の背面との角に形成されている。
【0031】
リブ32はフック本体31bの基部側にのみ形成され、フック本体31bの端部側には形成されていない。すなわち、嵌合方向D1でのリブ32の長さW5(図4(b))は嵌合方向D1でのフック本体31bの長さよりも短い。そのため、リブ32がフック本体31bと同じ長さを有する構造に比べて、フック31の取付穴Hへの進入過程で生じる第1側壁部21の弾性変形量を低減できる。その結果、フック31を取付穴Hに嵌め易くなり、また、第1側壁部21に必要とされる強度を低減できる。
【0032】
図4(b)に示すように、リブ32は、第1側壁部21に当る部分に、斜面32aを有している。斜面32aは嵌合方向D1に対して傾斜している。そのため、フック31の取付穴Hへの進入過程で、斜面32aは第1側壁部21の前縁に対して斜めに当る。その結果、フック31を取付穴Hに嵌め易くなる。
【0033】
上述したように、フック31は、その端部に係合凸部31aを有している。図4(a)に示すように、この例の係合凸部31aは縦方向D3に突出している。この構造によれば、係合凸部31aがフック31から第2側壁部22に向かって突出する構造、すなわち係合凸部31aがX2で示す方向に突出する構造に比べて、係合凸部31aを含むフック本体31bの横幅を低減することが可能となる。その結果、取付穴Hの横幅W7を低減できる。
【0034】
なお、この例では、係合凸部31aは縦方向D3に対して突出し、リブ32は縦方向D3に対して垂直な弾性変形方向X1にフック本体31bの側面から突出している。すなわち、係合凸部31aとリブ32は、嵌合方向Dに対して垂直な2方向にフック本体31bからそれぞれ突出している。これにより、係合凸部31aによる第1側壁部21の押圧を生じさせることなく、リブ32による第1側壁部21の押圧が可能となっている。
【0035】
図4(a)に示すように、この例のフック31は2つの係合凸部31aを有している。これら2つの係合凸部31aは互いに反対方向に突出している。すなわち、一方の係合凸部31aは上方に突出し、他方の係合凸部31aは下方に突出している。この構造によれば、ハウジング10とフロントパネル30との取り付け強度をさらに増すことができる。例えばフロントパネル30の下縁を引き上げるモーメントや、フロントパネル30の上縁を引き下げるモーメントがフロントパネル30に作用した場合であっても、いずれか一方の係合凸部31aによってそのモーメントに抗することができる。なお、支持アーム20に形成された2つの被係合凸部22aは、上述したように、第2側壁部22の前縁と取付穴Hの上縁との角、及び、第2側壁部22の前縁と取付穴Hの下縁との角に形成されている(図3参照)。そして、2つの被係合凸部22aの距離、すなわち上側の被係合凸部22aの下縁と下側の被係合凸部22aの上縁との距離は、係合凸部31aが形成された部分でのフック31の縦幅、すなわち上側の係合凸部31aの上端と下側の係合凸部31aの下端との距離よりも小さい。そのため、2つの係合凸部31aは2つの被係合凸部22aにそれぞれ引っ掛かる。
【0036】
また、縦方向D3でのフック本体31bの縦幅W6は、フック本体31bの厚さ、すなわち横方向でのフック本体31bの幅に比べて十分に大きい。そのため、上述のモーメントが作用した場合であっても、フック31自体の変形も抑えられる。
【0037】
上述したように、取付穴Hへの進入過程でのフック31の位置(図5(b))は、フック31の係合位置(図5(d))よりも、第2側壁部22から離れた位置となる。図5(c)に示すように、フック31がリブ32を通して第1側壁部21を弾性変形方向X1に押し広げながら取付穴Hに進入した結果、係合凸部31aが被係合凸部22aの位置を過ぎたとき、フック31は第1側壁部21の弾性力により第2側壁部22に向けてシフトする。すなわち、フック31は弾性変形方向X1とは反対方向に動く。そして、フック31は図5(d)に示す係合位置に達する。上述したように、フック31の最大横幅W2は取付穴Hの横幅W7に対応している。そのため、フック31が係合位置に達した時、第1側壁部21は元の形状に復帰する。
【0038】
上述したように、ハウジング10は2つの支持アーム20を有している。また、フロントパネル30は2つの支持アーム20に対応するフック31を有している。2つの支持アーム20の第1側壁部21は、各フック31に対して同じ方向に位置している。この例では、2つの支持アーム20の左側の壁部が第1側壁部21として機能している。また、リブ32も、2つのフック31に対して同じ側に位置している。この例では、リブ32はいずれもフック本体31bの左側面に形成されている。そのため、2つのフック31を2つの支持アーム20に形成された取付穴Hにそれぞれ嵌める際、フロントパネル30の全体が右方向に移動する。これにより、2つのフック31のいずれにも弾性変形が必要とされない。
【0039】
図5(d)に示すように、フック31が係合位置にあるときに、フロントパネル30は第1側壁部21の前縁と第2側壁部22の前縁とに当る。詳細には、フロントパネル30の背面から係合凸部31aまでの距離L1(図4(b))と嵌合方向D1での被係合凸部22aの幅とが互いに対応している。すなわち、距離L1は嵌合方向D1での被係合凸部22aの幅に相当している。これにより、フック31を取付穴Hに一旦嵌めると、第1側壁部21の前縁がフロントパネル30によって覆われるため、第1側壁部21の再度の弾性変形が確実に防止され得る。
【0040】
図2に示すように、フロントパネル30は、2つのフック31の間に、さらに中間フック33をさらに有している。中間フック33も2つの係合凸部33aを有している。係合凸部33aは、係合凸部31aと同様に、嵌合方向D1と弾性変形方向X1の双方に垂直な方向、すなわち上方及び下方にそれぞれ突出している。一方、ハウジング10のコネクタ保持部14の前面には、中間フック33を嵌めるための取付穴H2が形成されている。取付穴H2の縁にも、係合凸部31aが引っ掛かる被係合凸部14aが形成されている。
【0041】
中間フック33の厚さ(左右方向の幅)は取付穴H2の横幅よりも小さい。具体的には、中間フック33の厚さは、被係合凸部14aと、それに対向する壁部14bとの間隔に対応している。また、中間フック33には上述するリブ32に相当するリブは形成されていない。そのため、中間フック33は取付穴H2の縁を広げることなく、被係合凸部14aと壁部14bの縁との間を通って取付穴H2に進入する。そして、上述したフロントパネル30が第1側壁部21の弾性変形方向X1とは反対方向にシフトすることにより、中間フック33は被係合凸部14aに引っ掛かる。
【0042】
以上説明したようにクレードル1では、被係合凸部22aは第2側壁部22側に形成され、第1側壁部21は、フック31が被係合凸部22aに引っ掛かっている状態で第2側壁部22から離れる方向X1へのフック31の動きを規制する位置に形成され、且つ、方向X1に膨らむように弾性変形可能である。そのため、組み付け作業時にフック31や被係合凸部22aが形成された第2側壁部22の弾性変形を要しないので、それらの強度(剛性)を高める設計が可能となる。その結果、ハウジング10とフロントパネル30の組み付け強度の向上が可能となる。
【0043】
また、フック31の側面にリブ32が形成され、フック31は取付穴Hへの進入時にリブ32を通して第1側壁部21を押す。また、嵌合方向D1と、第1側壁部21の弾性変形方向X1とに垂直な縦方向D3での幅について、リブ32はフック本体31bよりも小さい。この構造によれば、フック31の押圧力が第1側壁部21の一部に集中的に作用するので、第1側壁部21の弾性変形が容易に生じ得る。
【0044】
また、ハウジング10には2つの取付穴Hが形成され、フロントパネル30は2つのフック31を有している。また、2つの取付穴Hの第1側壁部21は、2つのフック31に対して同じ方向に位置している。この構造によれば、2つのフック31のいずれにも弾性変形が必要とされない。
【0045】
リブ32は、縦方向D3における第1側壁部21の中央部を押すことができる位置に形成されている。この配置によれば、第1側壁部21の弾性変形がさらに容易に生じ得る。
【0046】
また、フック31はリブ32を有しているので、フック31の強度を増すことができる。
【0047】
フック31はその基部にリブ32を有している。そのため、フック31を取付穴Hに嵌める際に生じる第1側壁部21の弾性変形の大きさを低減できる。その結果、フック31を取付穴Hに嵌め易くなる。
【0048】
フック31はその端部に係合凸部31aを有している。係合凸部31aは、嵌合方向D1と第1側壁部21の弾性変形方向X1の双方に垂直な縦方向D3に突出している。この構造によれば、係合凸部31aを含むフック本体31bの横幅を低減することが可能となる。その結果、取付穴Hの横幅W7を低減できる。
【0049】
フック31は2つの係合凸部31aを有している。そして、2つの係合凸部31aは互いに反対方向に突出している。この構造によれば、フロントパネル30にモーメントが発生した場合でも、フロントパネル30のハウジング10からの分離を抑えることができる。
【0050】
また、ハウジング10は互いに離れて位置する2つの支持アーム20を有し、フロントパネル30は2つの支持アーム20に取り付けられている。この構造によれば、ハウジング10の軽量化を図りながら、支持アーム20の強度を増すことができる。
【0051】
また、2つの支持アーム20の間にコネクタ43が位置している。この構造によれば、携帯型電子機器90の支持安定性を向上できる。
【0052】
なお、本発明は以上説明したクレードル1に限られず、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、本発明はクレードルに限られず、他の電気装置、例えばゲーム機やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置、AV機器、カメラに適用されてもよい。また、本発明は電池パックやアダプターなど、情報処理装置の周辺機器に適用されてもよい。
【0054】
また、フロントパネル30は支持アーム20ではなくハウジング10の本体に取り付けられてもよい。
【0055】
また、リブ32はフック31に形成されていた。しかしながら、リブ32は第1側壁部21の内面に形成されてもよい。
【0056】
また、リブ32には必ずしも設けられなくてもよい。この場合、フック本体31bの側面で第1側壁部21を押し広げてもよい。フック31は例えば図6に示すように形成されてよい。図6に示すフック131は、フック本体131bと係合凸部31aとを有している。フック本体131bの横幅、すなわち左右方向での最大横幅W8は、リブ32を含むフック31の最大横幅と同程度に設定されている。すなわち、フック131bの横幅W8は2つの被係合凸部22aの間での取付穴Hの横幅W7に対応している。また、図6の例では、フック本体31bは弾性変形方向X1に向かって、その縦幅が徐々に小さくなるように形成されている。これにより、第1側壁部21の縦方向の中央部に大きな力が作用する。また、フック本体131bは、その前面に、嵌合方向D1に対して傾斜した斜面131cを有している。これにより、フック本体131bは第1側壁部21の縁に斜めに当るので、フック131を取付穴Hに嵌め入れ易くなる。
【0057】
また、係合凸部31aは上下方向ではなく、フック本体31bから第2側壁部22に向かって突出してもよい。この場合、フック31はリブ32を有していなくてもよい。また、この場合、被係合凸部22aと第1側壁部21との距離、すなわち被係合凸部22aが形成された部分以外での取付穴Hの入り口の横幅は、フック31の最大横幅、すなわち係合凸部31aを含むフック31の横幅より小さくてよい。この構造によれば、フック本体31bによって第1側壁部21を押し広げることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 クレードル(電気装置)、10 ハウジング(第1の部材)、14 コネクタ保持部、14b 壁部、20 支持アーム、21 第1側壁部(第1の部分)、22 第2側壁部(第2の部分)、22a 被係合凸部、30 フロントパネル(第2の部材)、31 フック、31a 係合凸部、32 リブ、32a 斜面、33 フック、33a 係合凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付穴が形成された第1の部材と、
前記取付穴に嵌めるためのフックを有する第2の部材と、を有し、
前記第1の部材は、
前記取付穴の縁を構成する、互いに対向する第1の部分と第2の部分と、
前記第2の部分側に形成される、前記フックが引っ掛かるための被係合部と、を有し、
前記第1の部分は、前記フックが前記被係合部に引っ掛かっている状態で前記第2の部分から離れる方向である第1の方向への前記フックの動きを規制し、且つ、前記フックの前記取付穴への進入を許容するように、前記第1の方向に膨らむよう弾性変形可能である、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気装置において、
前記第1の部材の前記第1の部分の内面と前記フックの側面のうち一方にはリブが形成され、
前記フックは、前記取付穴への進入時に、前記リブを通して前記第1の部分を押し、
前記第1の方向と、前記フックが前記取付穴に嵌る方向である前記第2の方向の双方に垂直な第3の方向での幅について、前記リブは前記フックよりも小さい、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気装置において、
前記第1の部材は、それぞれ前記取付穴として機能する2つの取付穴を有し、
前記第2の部材は、それぞれ前記フックとして機能する2つのフックを有し、
前記第1の部材の前記2つの取付穴の第1の部分は、前記2つのフックに対して同じ方向に位置している、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電気装置において、
前記リブは、前記第3の方向における前記第1の部分の中央部を押すことができる位置に形成されている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項5】
請求項2または4に記載の電気装置において、
前記リブは前記フックに形成されている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項6】
請求項5または4に記載の電気装置において、
前記リブは前記フックの基部に形成されている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電気装置において、
前記フックは、その端部に凸部を有し、
前記凸部は、前記第1の方向と、前記フックが前記取付穴に嵌る方向である第2の方向の双方に垂直な第3の方向に突出している、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気装置において、
前記フックはそれぞれ前記凸部として機能する2つの凸部を有し、
前記2つの凸部は、互いに反対方向に突出している、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電気装置において、
前記電気装置は前記第1の部材に携帯型電子機器を支持する支持部が設けられたクレードルである、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気装置において、
前記第1の部材はそれぞれ前記支持部として機能する、互いに離れて位置する2つの支持部を有し、
前記第2の部材は前記2つの支持部に取り付けられている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気装置において、
前記2つの支持部の間にコネクタが配置されている、
ことを特徴とする電気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62377(P2013−62377A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199861(P2011−199861)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】