説明

電気調理器

【目的】 玄米と共に鍋内に収容した水の変化を検出し、この水温の検出結果に応じて発芽炊飯の実行の可否を自動選択するものである。
【構成】 玄米と水を入れる鍋と、鍋内の水温を検出する水温検出手段と、水温が所定の低温度であるか否かを検出する水温判定手段と、一回目の水温検出後に一定時間のカウントを開始するタイマー6を備え、タイムアップ後に二回目の水温検出を行い、この検出温度が所定の低温度以下の時は発芽炊飯を実行し、所定の低温以上の時は発芽炊飯の実行を停止するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、玄米を低温度で長時間加熱して発芽させる電気調理器に関する。
【0002】
【従来の技術】低温度で長時間加熱して発芽させた玄米は、所謂発芽玄米と呼ばれ栄養豊かで健康にいいとされている。
【0003】この様に着目して発芽玄米を得る様にした炊飯器が特開平10−117713号公報に開示されている。
【0004】この先行技術では、鍋内に玄米と所定量の水を入れて約18〜24時間の間32〜38度の低温で加熱し僅かの長さの発芽を行い、この発芽玄米を一般の白米と混合して通常の炊飯を行うようにしたものである。
【0005】ところで、発芽玄米を得るのに一番注意しなくてはならないのは、前述の様に低温度、長時間という通常食品が腐敗する条件下での動作を行うことにある。
【0006】このため、先行技術では玄米を入れる容器を銅の様な抗菌材料を用い、この銅の抗菌イオンによって腐敗を防止するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この様に玄米を発芽して食する場合には32〜38度の低温度で長時間加熱するわけであるが、32〜38度の温度は夏季の外気温に相当し、例えば35度程度の外気温であれば加熱する必要がない。仮に玄米と水を鍋内に入れたままで加熱しない状態を長時間継続した場合には自然に発芽を開始するが、外気温が39度以上になれば加熱をしなくとも長時間放置することにより腐敗が進行することになる。
【0008】もう一点注意しなければならない点は、通常の電気炊飯器を用いて発芽炊飯と、通常の白米炊飯とを行うものにあっては白米炊飯を終了した直後や70度程度で保温していた保温動作の終了直後等、或は発芽炊飯時に湯と玄米を鍋内に入れた場合には所望の発芽炊飯ができない点にある。
【0009】具体的な説明をすると、白米炊飯の終了直後では鍋温度が高く38度以上の場合もあり得るが、使用者には玄米の発芽を行う意志があり、且つ前述のように外気温が低くても比較的温度が高い状態にある鍋では玄米の発芽ができず不都合であった。
【0010】本発明は、玄米を収容した鍋の安定した温度を確認した後、発芽炊飯の実行の可否を決定し、確かな条件が備った時に発芽炊飯を行うものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、鍋内に玄米と水を収容して低温度で長時間加熱し発芽炊飯を行うものにおいて、発芽炊飯開始前或は後に水温を検出する水温検出手段と、水温が所定の低温度であるか否かを検出する水温判定手段と、前記水温判定手段が所定の低温度以上であることを出力した時に一定時間のカウントを開始するタイマー手段とを備え、前記タイマー手段のタイムアップ後に再度水温検出手段により水温を検出し所定の低温以下の時は発芽炊飯を実行し、所定の低温度以上の時は発芽炊飯の実行を停止するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の電気調理器のフローチャート、図2は同じく調理器本体の断面図、図3は同じくブロック図、図4は同じく発芽炊飯の鍋(水)温度特性図である。
【0013】(1)は一実施例として誘導加熱式の電気炊飯器を用いた調理器本体、(2)はフレーム、(3)は前記フレーム内に固定した収納ケース、(4)(4)は前記収納ケース(3)の外底部に密着して設けたコイルで、後述する制御手段(5)により予め設定された時間の間印加電流を制御する。
【0014】この制御手段(5)は、発芽時間を24時間にセットするタイマー(6)と、32度(基準温度=低温度)の温度に制御する水温判定手段となる温度比較回路(7)と、予め定められたプログラムに基づいて炊飯を行う炊飯実行回路(8)と、水温検出回路(9)から成る。
【0015】(10)は前記収納ケース(3)の底部中央に出没自在に設けた感熱体で、温度比較回路(7)と水温検出回路(9)により水温検出手段(H)を構成する。(11)はステンレスとアルミニウムの重合体よりなる平面形状が円形で縦断面形状がU形の鍋で、底部は若干山形状に盛り上っている。
【0016】(12)は前記フレーム(2)と収納ケース(3)の間の空間に配設固定され前記制御手段(5)を取り付けた基板、(13)はフレーム(2)の前側上部に設けた操作表示部で、炊飯釦、発芽釦等の炊飯実行釦(図示せず)と工程表示器(14)を備えている。
【0017】(15)は前記鍋内に収納自在に設けられ抗菌材料により形成した平面視形状が王形の接触板ユニットで、3枚の銅板(16)(16)(16)により構成している。
【0018】(17)は前記調理器本体(1)に開閉自在に枢着した蓋体である。
【0019】次に図1のフローチャートを主体にし図3及び図4と併せて発芽炊飯の動作を説明する。
【0020】始めに、鍋(11)を取り出し接触板ユニット(15)を収納配置した後、該ユニットの銅板間及び銅板と鍋の内側壁間に所定量の玄米と水を収容する(S1)、(S2)。
【0021】発芽釦を操作して発芽炊飯コースを選択し発芽炊飯を開始するわけであるが、同時に感熱体(10)と水温検出回路(9)により鍋温度(t)を検出する(S3)、(S4)。
【0022】ここで、先程鍋内に入れた水の温度が春、秋、冬季のように32度より低い場合は図4の(A)のように、始めから炊飯実行回路(8)によって発芽炊飯を実行し(S5)、(S6)、その後、他のタイマーによって約24時間の間、鍋内を32度に維持して発芽を行い、24時間が経過した時に炊飯実行回路(8)の動作を断ち発芽炊飯を終了する。
【0023】一方、夏季のように始めから水道水の水温が高く、外気温も高い場合には図4の(B)のように発芽炊飯を開始する前から鍋内の水温が32度以上になっていることがある。(図4の「経過」の記載領域)この場合には、発芽炊飯の開始直後に感熱体(10)が水温を検出したことによる温度比較回路(7)の出力によってタイマー(6)が10分間(T)のカウントを開始する(S5)、(S7)。
【0024】タイマー(6)が水温の変化を読み取ることができる10分間のカウントが終了した時のタイマー(6)の出力によって、再び感熱体(10)と水温検出回路(9)により水温を検出する(S7)、(S8)、(S9)。
【0025】この時季では10分間経過しても一般的には水温の低下がなく、再度、検出した水温は32度以下であるため、炊飯実行回路(8)の動作を停止しアラーム(18)で報知すると共に(S10)、発芽炊飯の実行を停止する。
【0026】ここで、白米炊飯終了直後の鍋自体の温度が高い状態にある時に発芽炊飯を開始した場合について述べる。
【0027】このケースは図4の(C)に示す様に、白米炊飯の終了直後では鍋の水洗い直後に鍋の温度が低下している過程がある。(図4の「経過」の記載領域)鍋の温度が低下している過程に玄米と水を入れ発芽釦を操作すると、鍋の温度が十分に低下していないためにステップ(S5)の時点で検出した水温は32度以上となっており本来なら発芽炊飯はこの点で中止するものと判断すべきであるが、水温が32度以上の場合にはタイマー(6)が10分間のカウントを開始する(S7)。
【0028】10分間のカウントを終了すると(S8)、再度、水温を検出してやはり32度以上の時は発芽炊飯の実行を停止し、32度以下の時は発芽炊飯を実行する。
【0029】
【発明の効果】以上の様に本発明は、一度目の水温検出から、一定時間経過後の二度目の水温の検出時に所定の低温度以下の時は発芽炊飯を実行し、所定の低温度以下の時は発芽炊飯の実行を停止するものであるから、仮に炊飯終了直後の鍋自体の温度が高い時に発芽炊飯を開始した場合であっても時間の経過と共に水温が低下することが判断できれば発芽炊飯を実行し所望の発芽玄米が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気調理器のフローチャートである。
【図2】同じく調理器本体の断面図である。
【図3】同じくブロック図である。
【図4】同じく発芽炊飯の鍋(水)温度特性図である。
【符号の説明】
1 調理器本体
7 水温判定手段(温度比較回路)
9 水温検出回路
11 鍋
H 水温検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鍋内に玄米と水を収容して低温度で長時間加熱し発芽炊飯を行うものにおいて、発芽炊飯開始前或は後に水温を検出する水温検出手段と、水温が所定の低温度であるか否かを検出する水温判定手段と、前記水温判定手段が所定の低温度以上であることを出力した時に一定時間のカウントを開始するタイマー手段とを備え、前記タイマー手段のタイムアップ後に再度水温検出手段により水温を検出し所定の低温以下の時は発芽炊飯を実行し、所定の低温度以上の時は発芽炊飯の実行を停止することを特徴とする電気調理器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−136423(P2002−136423A)
【公開日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−333028(P2000−333028)
【出願日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】