説明

電気車制御装置

【課題】高い信頼性で、且つ、高い効率で動作する電気車制御装置を提供する。
【解決手段】電気車制御装置100は、送電路から直流電力を集電する集電装置110と、前記集電装置により集電された直流電力を交流電力に変換する可変電圧可変周波数インバータ120と、前記可変電圧可変周波数インバータにより変換された交流電力により動作する永久磁石同期電動機130と、前記集電装置と前記可変電圧可変周波数インバータとの間に設けられた充電抵抗111と、前記充電抵抗と並列に接続された遮断器112とを備え、前記永久磁石同期電動機の軸の回転周波数を検出し、予め記憶している基準周波数と前記検出される回転周波数とを比較し、前記基準周波数より前記回転周波数が大きいと判断した場合、前記遮断器を閉じるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第三軌条または架線から電力を受けて永久磁石動機電動機を駆動する電気車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車を駆動する電動機の制御装置として、第三軌条または架線などの送電路から直流電力を集電し、誘導電動機を駆動する電気車制御装置がある。電気車制御装置は、第三軌条または架線などから集電した直流電力を交流電力に変換するインバータを備えている。電気車制御装置は、変換した交流電力により誘導電動機を駆動する。
【0003】
上記した電気車制御装置は、電気車を加速させる必要がなくなった場合に、惰行走行を行う。電気車制御装置は、惰行走行を行う場合、第三軌条または架線などから供給される直流電力の供給路を遮断するとともに、インバータを停止させる。この場合、第三軌条または架線の電圧が上昇する。例えば、同じ給電区間内に特定の区間中に力行する電気車と惰行する電気車とが存在する場合、力行する電気車に過度な電圧が印加される。この為、例えば過度な電圧を検知した電気車が保護停止に至るなどの問題が生じていた。
【0004】
そこで、第三軌条または架線などから電力を受け取る供給路に設けられた遮断器と並列に接続された充電抵抗を備える電気車制御装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
上記の電気車制御装置は、惰行走行の為に遮断器が開放されている場合、充電抵抗を介して電力を受け取る。即ち、主回路中にLRC回路が構成される。これにより、上記の電気車制御装置は、第三軌条または架線などの電圧が上昇することを防ぐことができる。
【特許文献1】特開2007−336647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気車の制御装置に用いられる電動機として、永久磁石動機電動機(以下PMSMと称する)がある。PMSMを駆動する場合、電気車制御装置は、可変電圧可変周波数インバータ(以下VVVFインバータと称す)装置により、直流電力を交流電力に変換する。
【0007】
PMSMは、界磁に永久磁石(強磁性体)を使用した同期電動機である。この為、PMSMは、軸の回転中に起電力を誘起している。誘起される起電力は、軸の回転速度に比例する強度で発生する。VVVFインバータの入力側に並列に接続されるフィルタコンデンサの電圧を起電力が超える場合、電気車制御装置は、第三軌条または架線から電力を集電するのではなく、第三軌条または架線に電力を返す状態になる。即ち、回生ブレーキが作用する。
【0008】
例えば、惰行中に回生ブレーキが作用する場合、電気車にブレーキがかかる為、運転の効率が低下するという問題がある。このように、回生ブレーキが作用するのを抑えるために、惰行中にVVVFインバータを動作させ、トルク指令ゼロによる制御(ゼロトルク制御)を行う。
【0009】
ゼロトルク制御を行う場合、VVVFインバータの半導体素子が用いられたスイッチ及びPMSMの一次巻線などにおいて、発熱などの為に損失が発生する。この為、第三軌条または架線から、損失した電力に応じた電流がVVVFインバータに流れる。即ち、第三軌条または架線からVVVFインバータに流れる電流は、充電抵抗を通過する。このように、充電抵抗に電流が流れ込むことにより、充電抵抗が発熱し、充電抵抗が焼損する可能性があるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の一形態における目的は、高い信頼性で、且つ、高い効率で動作する電気車制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る電気車制御装置は、送電路から直流電力を集電する集電装置と、前記集電装置により集電された直流電力を交流電力に変換する可変電圧可変周波数インバータと、前記可変電圧可変周波数インバータにより変換された交流電力により動作する永久磁石同期電動機と、前記集電装置と前記可変電圧可変周波数インバータとの間に設けられた充電抵抗と、前記充電抵抗と並列に接続された遮断器と、前記永久磁石同期電動機の軸の回転周波数を検出する回転周波数検出手段と、予め基準周波数を記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶されている基準周波数と前記回転周波数検出手段により検出される回転周波数とを比較する比較手段と、前記比較手段により前記基準周波数より前記回転周波数が大きいと判断した場合、前記遮断器を閉じるように制御する制御手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0012】
この発明の一形態によれば、高い信頼性で、且つ、高い効率で動作する電気車制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る電気車制御装置について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気車制御装置100の構成例について説明する為のブロック図である。
【0015】
図1に示すように、電気車制御装置100は、集電装置110、VVVFインバータ120、PMSM130、及び制御ブロック140などを備えている。
【0016】
集電装置110は、第3軌条または架線から電力を集電する。集電装置110は、集電した直流電力をVVVFインバータ120に供給する。VVVFインバータ120は、集電装置110から供給される直流電力を交流電力に変換する。VVVFインバータ120は、変換した交流電力をPMSM130に供給する。PMSM130は、VVVFインバータ120によって変換された交流電力に応じて動作し、軸を回転させる。
【0017】
VVVFインバータ120の入力側の端子には、フィルタコンデンサ114が並列に接続されている。また、VVVFインバータ120の入力側の端子の1つは、アースに接続されている。また、VVVFインバータ120の入力側の他方の端子は、遮断器112及びフィルタリアクトル113を介して集電装置110に接続されている。また、遮断器112と並列に充電抵抗111が接続されている。フィルタコンデンサ114には、電圧センサ171が設けられている。電圧センサ171は、フィルタコンデンサ114の電圧を検出し、制御ブロック140に伝達する。
【0018】
遮断器112は、制御ブロック140の制御に基づいて電流路を開閉する。即ち、遮断器112がON(閉状態)である場合、充電抵抗111が短絡される。また、遮断器112がOFF(開状態)である場合、集電装置110により集電された電力は、充電抵抗111を流れる。
【0019】
VVVFインバータ120は、制御ブロック140により生成されるパルスに基づいてPWM制御(パルス幅変調制御)を行う。VVVFインバータ120は、例えば、ブリッジインバータなどにより構成される。VVVFインバータ120は、PWM制御により、正負2レベルのパルス電圧を出力し、所望の振幅及び周波数をもつ交流電圧を得ることができる。
【0020】
PMSM130は、受給した交流電力に応じて動作し、機械的な動力を得る。即ち、PMSM130に交流電力が供給された場合、回転子のコイルに電流が流れ、磁場が発生する。この、コイルにより発生した磁場と、固定子の磁場との相互作用により、軸を回転させる機械的エネルギーを発生する。
【0021】
PMSM130の軸の近傍にはレゾルバ131が設置されている。レゾルバ131は、回転周波数検出手段として機能する。レゾルバ131は、PMSM130の軸の回転数を観測し、回転周波数を検知する。レゾルバ131は、制御ブロック140に接続されている。即ち、レゾルバ131は、PMSM130の軸の回転周波数を制御ブロック140に伝達する。
【0022】
また、VVVFインバータ120の出力側とPMSM130との間に、電流センサ121及び122が設けられている。電流センサ121は、U相の電動機電流を検出する。電流センサ121は、W相の電動機電流を検出する。電流センサ121及び122は、検出した電動機電流を制御ブロック140に伝達する。
【0023】
制御ブロック140は、周波数判定部141、ゲートスタートストップ制御部142、トルクパターン生成部143、ベクトル制御部144、及びインバータ制御部145を備えている。
【0024】
周波数判定部141は、基準周波数を記憶する記憶部141aを備えている。記憶部141aは、記憶手段として機能する。周波数判定部141は、レゾルバ131により検出された回転周波数と記憶部141aに記憶されている基準周波数とを比較する。この場合、周波数判定部141は、比較手段として機能する。
【0025】
周波数判定部141は、惰行時であり、且つ、回転周波数が基準周波数より大きいと判定した場合、遮断器112を閉じるように制御する。この場合、周波数判定部141は、制御手段として機能する。遮断器112が閉じる場合、充電抵抗111は短絡する。
【0026】
また、同時に、周波数判定部141は、回転周波数が基準周波数より大きいと判定した場合、ゲートスタートストップ制御部142にゼロトルク制御指令を出力する。
【0027】
ゲートスタートストップ制御部142は、周波数判定部141からゼロトルク制御指令を受信した場合、ゼロトルク制御指令に基づいてゲートスタートストップ信号をインバータ制御部145に出力する。
【0028】
トルクパターン生成部143は、ノッチなどによる操作に応じてトルク指令パターンを生成する。トルクパターン生成部143は、生成したトルク指令パターンとして運転指令、応荷重指令、またはブレーキ力指令などを生成し、ベクトル制御部144に出力する。
【0029】
ベクトル制御部144は、電圧センサ171からフィルタコンデンサ114の電圧の検出値を受信する。また、ベクトル制御部144は、電流センサ121及び122から電動機電流の検出値を受信する。さらに、ベクトル制御部144は、レゾルバ131により検出した回転周波数を受信する。ベクトル制御部144は、レゾルバ131による検出結果に基づいて、PMSM130の回転子の位置を判断する。
【0030】
ベクトル制御部144は、受信したフィルタコンデンサ114の電圧の検出値、電動機電流の検出値、及び回転周波数に基づいて、VVVFインバータ120の三相電圧指令VuRef、VvRef、及びVwRefを求めてインバータ制御部145に出力する。
【0031】
インバータ制御部145は、ゲートスタートストップ制御部142から入力されるゲートスタートストップ信号に基づいて、パルス幅変調を行う。インバータ制御部145は、パルス幅変調を行う場合、ベクトル制御部144から入力される三相電圧指令VuRef、VvRef、及びVwRefの変調を行う。インバータ制御部145は、三相電圧指令VuRef、VvRef、及びVwRefからそれぞれ変調した三相ゲート信号VuINV、VvINV、及びVwINVをVVVFインバータ120の各ゲートに出力する。
【0032】
VVVFインバータ120は、入力された三相ゲート信号VuINV、VvINV、及びVwINVに基づいて、VVVFインバータ120内の各ゲートを制御する。これにより、VVVFインバータ120は、直流電力を交流電力に変換する。
【0033】
上記したように、ゼロトルク制御時に遮断器112を閉じる場合、例えば、ダンピング制御を用いることにより、フィルタコンデンサ114の電圧が上昇することを防ぐ。
【0034】
なお、記憶部141aに記憶される基準周波数は、任意の値に設定することができる。例えば、充電抵抗の耐久度に応じて基準周波数を設定することにより、充電抵抗を可能な限り利用しつつ、且つ、焼損などを回避することができる。
【0035】
上記したように、本実施形態に係る電気車制御装置は、充電抵抗と並列して接続された遮断器を備えている。電気車制御装置は、PMSMの回転周波数を検出し、予め設定される基準周波数と回転周波数とを比較し、回転周波数が上回る場合、遮断器を閉じるように制御する。このように、充電抵抗にかかる電圧が大きい場合、電気車制御装置は、充電抵抗を短絡させる。これにより、ゼロトルク制御を行う場合に第三軌条または架線から流れ込む電流により充電抵抗が焼損することを防ぐことができる。
【0036】
この結果、高い信頼性で、且つ、高い効率で動作する電気車制御装置を提供することができる。
【0037】
上記した実施形態では、回転子の位置をレゾルバ及びベクトル制御部により検出する構成となっているが、これに限定されない。例えば、PMSMの端子間の電圧の波形を検出することにより回転子の位置を検出する構成であってもよい。
【0038】
次に第2の実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る電気車制御装置200の構成例について説明する為のブロック図である。なお、第1の実施形態と同様の構成には、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図2に示すように、電気車制御装置200は、集電装置110、VVVFインバータ120、PMSM130、及び制御ブロック140などを備えている。
【0040】
制御ブロック140は、周波数判定部141、ゲートスタートストップ制御部142、トルクパターン生成部143、センサレスベクトル制御部244、インバータ制御部145、及び周波数演算部225を備えている。
【0041】
また、図2に示すように、VVVFインバータ120の出力側とPMSM130との間に、線間電圧検出器224が設けられている。線間電圧検出器224は、VVVFインバータ120の出力側の3線のうちの2線間で線間電圧を検出する。線間電圧検出器224は、電圧検出手段として機能する。
【0042】
図3は、線間電圧検出器224による検出波形について説明するための説明図である。図3に示すように、VVVFインバータ120が停止している状態でPMSM130の軸が回転する場合、永久磁石により正弦波状の電動機電圧が発生する。線間電圧検出器224は、検出した線間電圧を制御ブロック140に伝達する。
【0043】
周波数演算部225は、回転周波数演算手段として機能する。周波数演算部225は、線間電圧検出器224により検出された線間電圧の波形に基づいて周波数を演算する。即ち、周波数演算部225は、図3に示す正弦波形において電圧の値が0Vになるタイミングの時間の間隔(ゼロクロス時間間隔)から回転周波数を演算する。周波数演算部225は、演算により求めた回転周波数を周波数判定部141に出力する。
【0044】
センサレスベクトル制御部244は、例えば、誘起電圧利用法、及び高周波電圧重畳法などのセンサレス制御により、PMSM130の回転子の位置を検出する。
【0045】
上記したように、本実施形態によると、レゾルバを用いることなく、PMSMの制御を行うことができる。また、レゾルバにより回転周波数を検出しない為、PMSMの線間電圧に基づいて、PMSMの回転子の向きを判断するセンサレス制御を行う。
【0046】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明する為のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明する為のブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す線間電圧検出器による検出波形について説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0048】
100…電気車制御装置、110…集電装置、111…充電抵抗、112…遮断器、113…フィルタリアクトル、114…フィルタコンデンサ、120…VVVFインバータ、121…電流センサ、130…PMSM、131…レゾルバ、140…制御ブロック、141…周波数判定部、141a…記憶部、142…ゲートスタートストップ制御部、143…トルクパターン生成部、144…ベクトル制御部、145…インバータ制御部、171…電圧センサ、200…電気車制御装置、224…線間電圧検出器、225…周波数演算部、244…センサレスベクトル制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電路から直流電力を集電する集電装置と、
前記集電装置により集電された直流電力を交流電力に変換する可変電圧可変周波数インバータと、
前記可変電圧可変周波数インバータにより変換された交流電力により動作する永久磁石同期電動機と、
前記集電装置と前記可変電圧可変周波数インバータとの間に設けられた充電抵抗と、
前記充電抵抗と並列に接続された遮断器と、
前記永久磁石同期電動機の軸の回転周波数を検出する回転周波数検出手段と、
予め基準周波数を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶されている基準周波数と前記回転周波数検出手段により検出される回転周波数とを比較する比較手段と、
前記比較手段により前記基準周波数より前記回転周波数が大きいと判断した場合、前記遮断器を閉じるように制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記比較手段により前記基準周波数より前記回転周波数が小さいと判断した場合、前記遮断器を開くように制御することを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記回転周波数検出手段は、前記永久磁石同期電動機の軸の回転周波数を検出するレゾルバを具備することを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記回転周波数検出手段は、
前記永久磁石同期電動機の2つの入力端子間の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出した電圧の波形のゼロクロス時間間隔に基づいて回転周波数を演算する回転周波数演算手段と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−115046(P2010−115046A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286546(P2008−286546)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】