説明

電気車用気体検知システム

【課題】電気車内の気体を自動的に検知・換気すると同時に、気体の発生場所の映像を撮影し、乗務員及び乗客、さらには外部への当該気体に関する情報の提供を実現する。
【解決手段】気体センサメイン装置200では、異常判定部210の異常発生判定手段211が、気体センサ100により検知された気体に異常が生じているかを判定する。有害レベル分析手段212は、その有害レベルを分析し、レベル判定を実施する。気体情報生成部220は、気体の有害レベルに関する情報と共に、「発生日時」、「列車番号」、「車体番号」、「気体センサ番号」、「カメラ装置番号」等を含む気体情報を生成する。この気体情報生成部220は、各装置及びシステムに気体情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車内において生じた有害ガス等の気体を検知及び換気し、さらに、当該気体に関する情報を乗務員や乗客等に通知する電気車用気体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電気車は、カメラにより車内を監視する監視システム、車内の気体を検知し排気するシステムや運行情報やニュース等の情報を表示する情報提供システムなどを有していた。
【0003】
具体的には、図10に示す通り、新幹線等の長距離特急列車において乗客のドアに挟まれていないか等をカメラにより監視する監視システム910と、気体センサを有する感知器により車内の空気の汚れを検知し、換気装置により換気する換気システム920と、在来線の運行情報を配信し、文字によるニュースやPRの表示など数々の情報を車内表示装置に提供する情報提供システム930と、を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成を有する電気車では、監視システムや気体を検知し換気する換気システム等が連動せずに別々に稼動している。そのため、万一、人為的に有害ガス等が生じた場合であっても、当該有害ガス等を検知する気体の換気システムと、その気体の出所を撮影しているかもしれない監視システムとが連動していないので、その有害ガスの出所や加害者を特定することができない状況にあった。
【0005】
また、この気体の換気システムと車内に提供する情報を管理する情報提供システムも連動していないため、有害ガスが生じた場合、当該ガスに関する情報や排気中であるという情報を乗務員や乗客に迅速に通知することができず、さらには当該ガスに対する人為的な対策にも遅れが生じていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解消するために提案されたものであって、その目的は、電気車内において喫煙等による煙や異臭スプレー等による有害ガスが生じた場合に、この気体を自動的に検知し換気すると共に、当該気体の検知に対応させてガスの発生場所の映像を撮影し、また、乗務員及び乗客、さらには外部に対し当該気体に関する情報を通知可能な電気車用気体検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、車両毎に1以上設けられた気体センサにより電気車内に生じた気体を検知する電気車用気体検知ステムであって、前記気体センサにより検知された気体に異常が生じているかを所定の基準を用いて判定する気体センサメイン装置を備え、前記気体センサメイン装置は、前記気体に異常が生じていると判定した場合に、当該気体に関する情報を電気車内に設けられた下記装置及びシステムに送信することを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明に係る気体センサメイン装置は、前記気体に関する情報を乗務員が持参する携帯端末に通知する無線通信装置と、カメラ装置により撮影された映像データを記憶部に保存させる映像処理部を有する映像システムと、車両毎に設けられた車内表示装置に所定のメッセージを表示させる情報提供サーバを有する情報提供システムと、電気車外部と通信を行う外部用無線通信装置と、に送信する。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、電気車内において喫煙等による煙や異臭スプレー等による有害ガスが生じた場合であっても、これらの気体を検知し異常度合いを判定すると共に、自動的にガスの発生場所の映像を撮影し、また、乗務員及び乗客、さらには外部に気体に関する情報を提供することが可能な電気車用気体検知システムを提供することができる。
【0010】
これにより、気体センサメイン装置を介して、気体センサとカメラ装置を有する映像システムは連動し、有害ガス等が生じた場合であっても、この気体を検知すると共に、その気体の出所付近を撮影することができるため、有害ガスの出所や加害者を特定することが可能となる。また、この気体センサメイン装置を介して、気体センサと乗客、乗務員に提供する情報を管理する情報提供システム及び無線装置は連動し、有害ガスが生じた場合であっても、この気体を検知すると同時に、乗務員や乗客にその旨の情報を迅速に通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る電気車用気体検知システムの全体構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係る気体センサの構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施形態に係る気体センサメイン装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施形態に係る無線装置の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施形態に係る換気装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施形態に係る映像システムの構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施形態に係る情報提供システムの構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施形態に係るデジタル列車無線装置の構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施形態に係る電気車用気体検知システムによる気体の有害レベルの判定作用を示すフローチャート
【図10】従来の実施形態に係る電気車用気体検知システムの全体構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本実施形態]
[1.構成]
[1.1.全体構成]
次に、本発明の実施形態(以下、本実施形態と称する)に係る全体構成を図1を参照して以下に説明する。
【0013】
図1に示す通り、本実施形態では、電気車内に配設された車内LANにより、電気車内の乗客席部、デッキ及び車両連結部に設置され、当該電気車内の気体を検知する気体センサ100と、上記気体センサ100により検知した気体が人体に影響するものかを判定する気体センサメイン装置200と、携帯端末に気体に関する情報等を送信する無線装置300(「無線通信装置」に対応する)と気体センサメイン装置200により判定された気体の有害レベルに応じて自動的に換気する換気装置400と、電気車内の乗客席部、デッキ及び車両連結部にカメラを設置し撮影したカメラ映像を管理する映像システム500と、乗客への情報の提供として各車両に設置されている車内案内表示器(LED文字盤)に気体に関する情報等を通知する情報提供システム600と、外部と通信するデジタル列車無線装置700(「外部用無線通信装置」に対応する)と、が接続され、一体の情報システムとして構成される。
【0014】
[1.2.具体的な構成]
[1.2.1.気体センサ]
次に、上記電気車内に設けられ、車内LANに接続された気体センサ100の構成について、図2を参照して以下に説明する。
この気体センサ100は、乗客席部、デッキ部及び車両連結部に設置され、タバコの煙や有害ガス等の有無を収集して電気信号に変換し、気体情報として気体センサメイン装置200に通知するものである。
【0015】
具体的には、この気体センサ100は、図2に示す通り、タバコの煙や異臭スプレーによる有害ガスなどの気体を収集し検知するセンサ101と、センサ101より検知した各種煙やガスなどの気体を電気信号に変換する感知判定部102と、電気信号に変換された気体データに関して、前記車内LANを介して気体センサメイン装置200と通信する通信部103と、を備えている。
【0016】
このような構成を有する気体センサ100の設置箇所及び1両当たりの設置数の目処は下記の通りである。すなわち、この気体センサ100は、乗客席部では3列〜5列毎に、天井と座席下などの2箇所に設置する(2式必要とする)。気体センサ100を「天井」と「座席下」などの上下2箇所に設置するのは、気体の種類に応じて空気より「重い」又は「軽い」があるからである。
【0017】
例えば、新幹線N700系の場合、乗客席部の4列毎に設置すれば、2式(上下)×16列(全客席列)/4列=8式が必要となる。
【0018】
また、デッキ部では、天井と床面付近の2箇所に設置し(2式必要とする)、車両連結部においても、天井と床面付近の2箇所に設置する(2式必要とする)。なお、後述する気体センサメイン装置200の設置は車掌室に1式とする。
【0019】
[1.2.2.気体センサメイン装置]
次に、気体センサメイン装置200の構成について、図3を参照して以下に説明する。
この気体センサメイン装置200は、気体センサ100により検知した煙やガス等の気体が人体へ影響するかの判定を行い、加えて、車内換気、カメラ映像の集中的保存の指示、及び乗務員・乗客への情報提供用データを作成する。
【0020】
具体的には、図3に示す通り、気体センサメイン装置200は、気体センサ100により検知した気体が人体に影響するものであるかを判定する異常判定部210と、異常判定部210による気体の異常判定結果に基づいて気体センサメイン装置200に送信する気体情報を生成する気体情報生成部220と、を備えている。
【0021】
この異常判定部210は、気体センサ100により検知された気体に異常が生じているかを判定する異常発生判定手段211と、異常発生判定手段211により異常が生じていると判定された場合に、その有害レベルを分析し、レベル判定を行う有害レベル分析手段212と、を有する。
【0022】
この異常発生判定手段211は、気体センサ100により検知された気体に異常が生じているかを判定するものであり、例えば、下記有害レベルの判定基準を採用する場合、この気体が通常レベルを示すレベルDであるか、それ以外のレベルA〜Cであるかを判定する。なお、採用する気体データに対する有害レベルの判定基準の一例は下記の通りであるが、これに限定するものではない。
【0023】
レベルA:人体への影響大(例えば、生命にかかわる気体等)
レベルB:人体への影響中(例えば、身体への異常:吐き気、目の痛み等)
レベルC:人体への影響小(例えば、タバコの煙等)
レベルD:人体への影響無し
【0024】
また、この場合、有害レベル分析手段212は、異常発生判定手段211により気体がレベルD以外であると判定されると、当該気体がレベルA〜Cのいずれかに当たるかを判定する。すなわち、検知した気体の有害度合いを分析し、レベル分けを行う。
【0025】
気体情報生成部220は、上記のような異常判定部210により判定された気体の有害レベルに関する情報と共に、「発生日時」、「列車番号」、「車体番号」、「気体センサ番号」、「カメラ装置番号」等を含む気体情報を生成する。なお、この気体情報の内訳は後述する無線装置300を介した当該気体情報の表示の項目にて説明する。
【0026】
また、気体情報生成部220は、この生成された気体情報を、無線装置300、換気装置400、映像システム500、情報提供システム600、デジタル列車無線装置700、に送信する機能を有している。
【0027】
[1.2.3.無線装置]
次に、無線装置300の構成について、図4を参照して以下に説明する。この無線装置300は、気体センサメイン装置200で作成された気体情報を電気車内の乗務員が持参する携帯端末303に通知する装置である。
【0028】
具体的には、図4に示す通り、無線装置300は、気体センサメイン装置200と前記LANを介して通信を行う通信処理部301と、通信処理部301により気体センサメイン装置200から送られてきた気体情報を下記携帯端末303に無線送信する送信部302と、を備えている。なお、このような構成を有する無線装置300は、車両毎に設置されている。
【0029】
また、乗務員は、この無線装置300の送信部302より送信される気体情報を受信し、液晶部に表示する携帯端末303を持参する。そのため、乗務員は持参した携帯端末303により、気体センサメイン装置200より送信される気体情報を確認できる。なお、この携帯端末303は、一般的な携帯電話、PHSと同等の方式で運用される。
【0030】
ここで、気体センサメイン装置200から送信され、携帯端末303に表示される気体情報は、上述した通り、「発生日時」、「列車番号」、「車体番号」、「気体センサ番号」、「レベル」、「カメラ装置番号」等の情報で構成されている。気体情報の内訳は下記の通りである。
【0031】
[1]発生日時:YYYYMMDDhhmm
YYYY:西暦年(4桁) 例 2009
MM :月(2桁) 例 01
DD :日(2桁) 例 01
hh :時(2桁) 例 00〜23
mm :分(2桁) 例 00〜59
[2]列車番号:列車の名称 例 のぞみ1号
[3]車体番号:号車番号 例 1:1号車
[4]気体センサ番号:各車両毎に設置される気体センサの番号
[5]レベル:気体の有害レベル
1:レベルA(人体への影響大)
2:レベルB(人体への影響中)
3:レベルC(人体への影響小)
4:レベルD(人体への影響無し)
[6]カメラ装置番号:車両毎に設置されるカメラの番号
【0032】
[1.2.4.換気装置]
次に、換気装置400の構成について、図5を参照して以下に説明する。
図5に示す通り、換気装置400は、気体センサメイン装置200と前記LANを介して通信を行う通信部401と、気体センサメイン装置200から送信された気体データのレベルに応じた強度で換気を行う換気処理部402と、を備えている。
【0033】
ここで、気体センサメイン装置200で上記有害レベルの判定基準を採用する場合、この換気処理部402による換気処理の強度は、気体データの異常レベルに対応した下記のものとなる。
【0034】
レベルA:強度大
レベルB:強度中
レベルC:強度小
レベルD:強度微小(通常運転)
【0035】
すなわち、換気装置400では、気体センサメイン装置200により、気体データの有害レベルがレベルA〜Cと判定された場合に、気体センサ100で検知した気体を各レベルに応じた強度で車内換気する。なお、気体センサメイン装置200から送信される気体情報により特定される車体番号の車両に設けられた換気装置400において、上記のような換気処理が行われる。
【0036】
[1.2.5.映像システム]
次に、映像システム500の構成について、図6を参照して以下に説明する。
図6に示す通り、映像システム500は、各車両の乗客席部(3列〜5列毎に1式)及びデッキ部の天井部に設置されるカメラ装置510と、各カメラ装置510が接続される映像システム用LAN520と、当該映像システム用LAN520に接続され、気体センサメイン装置200からの気体情報に応じて有害レベル検出付近のカメラ装置510により撮影された映像データを保存する映像処理装置530と、この映像データの保存先となる映像データ保存装置540と、から構成される。
【0037】
このカメラ装置510は、常時映像を撮影するカメラ511と、カメラ511から送られるアナログ信号の映像をデジタル信号に変換する映像データ変換処理部512と、を有している。なお、カメラ装置510は、上述の通り、乗客席部(3列〜5列毎に1式)及びデッキ部の天井部に設置されるが、特に、カメラ511は、気体センサ100の設置に対応させて、当該気体センサ100付近の天井に設置され、ドア付近だけでなく、気体センサ100付近の映像も撮影する。
【0038】
映像処理装置530は、気体センサメイン装置200により送信された気体情報に異常が生じている場合、すなわち、有害レベルがレベルA〜Cである場合に、当該気体情報からカメラ装置番号を特定し、このカメラ装置番号を有するカメラ装置510によりデジタル変換された映像データを映像データ保存装置540に保存させる。つまり、映像処理装置530は、異常が生じた気体を検知した気体センサ100付近に設置される複数のカメラ511により撮影した映像を、当該気体の発生源の特定に活用するために、映像システム用LAN520を通じて取り出し、この映像データを映像データ保存装置540に保存させる。
【0039】
映像データ保存装置540は、映像処理装置530により保存要求のあった映像データを自身のHDDに保存するが、当該映像データ保存装置540に保存されたデータは必要に応じてDVD等の外部媒体にコピーが可能であり、他装置においても映像データを参照できる形態をとる。
【0040】
[1.2.6.情報提供システム]
次に、本実施形態に係る情報提供システム600の構成について、図7を参照して以下に説明する。
図7に示す通り、情報提供システム600は、情報提供システム用LAN610に、メッセージを表示する複数の車内表示装置620と、気体センサメイン装置200から異常が生じた気体情報を受信した場合に、この車内表示装置620に固定メッセージを表示させる情報提供サーバ630と、が接続され構成されている。
【0041】
この車内表示装置620は、情報提供システム用LAN610を介して情報提供サーバ630と通信を行う通信処理部621と、情報提供サーバ630からのメッセージ表示指示に従い、メッセージを表示する車内案内表示器622(LED文字盤)と、を備えている。なお、車内表示装置620の設置箇所は、新幹線等の特急列車においては各車両の乗客席部のドア上部に設置され、通常、車内案内表示器622にニュース・天気予報、次の停車駅名や列車の運行状況等を表示している。
【0042】
また、情報提供サーバ630は、気体の有害レベルや換気中を伝える固定メッセージとして、例えば、「異臭が発生しています」、「ただいま換気中です」等のメッセージを格納する。
【0043】
[1.2.7.デジタル列車無線装置]
次に、本実施形態に係るデジタル列車無線装置700の構成について、図8を参照して以下に説明する。
図8に示す通り、デジタル列車無線装置700は、車内LANを介して気体センサメイン装置200に接続されている。このデジタル列車無線装置700は、当該装置が搭載されている現在運行されている電気車から、例えば次の駅の駅職員に対して、車内の状況が把握できるように、気体センサメイン装置200により分析された気体情報を通知するものである。
【0044】
また、このデジタル列車無線装置700は、気体情報の他に、外部との間で、現在の、列車・地上(駅)間で指令通告、徐行区間情報、車両機器状態監視等のデータ通信を行い、また、大雪や雷雨等の際に、全線区一斉の情報連絡や指令伝達を行う。
【0045】
[2.作用]
次に、上記のような構成を有する本実施形態の作用について、図9を参照して以下に説明する。なお、図9は、気体センサメイン装置200における、気体情報の有害レベル判定、及び電気車内の各装置及びシステムへの気体情報の送信手順を示すフロチャートである。
【0046】
(気体センサ)
車両の乗客部、デッキ部及び車両連結部に設けられた気体センサ100は、常時作動することで、タバコの煙や異臭スプレーによる有害ガスなどの車両内に生じた気体をセンサ101で収集及び検知し、感知判定部102が、センサ101より検知した各種煙やガスなどの気体を電気信号に変換する。そして、通信部103を介して、電気信号に変換された気体データを気体センサメイン装置200に送信する。
【0047】
(気体センサメイン装置)
気体センサメイン装置200では、図9に示す通り、まず、異常判定部210の異常発生判定手段211が、気体センサ100により検知された気体に異常が生じているかを判定する(S901)。すなわち、異常発生判定手段211は、気体センサ100から送信された気体データの有害度合いが、人体に影響なしに相当する通常レベルを示すレベルDであるか、それ以外のレベルA〜Cであるかを判定する。
【0048】
そして、異常発生判定手段211により異常が生じていると判定された場合には(S901のYES)、有害レベル分析手段212が、その有害レベルを分析し(S902)、レベル判定を実施する(S903〜S905)。すなわち、有害レベル分析手段212は、対象となる気体がレベルA〜Cのいずれかに当たるを判定する。
【0049】
一方、異常発生判定手段211により異常が生じていないと判定された場合(S901のNO)、すなわち、気体センサ100において検知した気体の有害レベルがレベルA〜Cでないと判定した場合、人体に影響のないレベルDと判定する(S906)。
【0050】
有害レベル分析手段212において、対象となる気体の有害レベルが特定されると、気体情報生成部220が、上記のような異常判定部210により判定された気体の有害レベルに関する情報と共に、「発生日時」、「列車番号」、「車体番号」、「気体センサ番号」、「カメラ装置番号」等を含む気体情報を生成する(S907)。そして、この気体情報生成部220は、生成した気体情報を、無線装置300、換気装置400、映像システム500、情報提供システム600、デジタル列車無線装置700に送信する(S908〜S912)。
【0051】
ここで、気体センサメイン装置200は、生成した気体情報を無線装置300に通知する場合、当該気体情報の「車体番号」の車両に搭載された無線装置300に送信し、換気装置400に通知する場合、当該気体情報の「車体番号」の車両に搭載された換気装置400に送信する。また、気体情報を映像システム500に通知する場合、当該気体情報の「カメラ装置番号」に応じたカメラ装置510に送信し、情報提供システム600に通知する場合、当該気体情報の「車体番号」の車両に搭載された車内表示装置620に送信する。
【0052】
(無線装置)
気体センサメイン装置200から気体情報が無線装置300に送信されると、この無線装置300では、通信処理部301が、この気体センサメイン装置200から送られてきた気体情報を受信し、当該気体情報を送信部302を介して電気車内の乗務員が持参する携帯端末303に送信する。これにより、乗務員は、持参した携帯端末303のディスプレイ部で気体情報を確認することができる。
【0053】
(換気装置)
また、気体センサメイン装置200から気体情報が換気装置400に送信されると、この換気装置400では、通信部401が、気体センサメイン装置200から送られた気体情報を受信し、換気処理部402が、この気体情報の有害レベルに応じた強度で換気を制御する。すなわち、換気装置400は、気体センサメイン装置200により、気体データの有害レベルがレベルA〜Cと判定された場合に、気体センサ100で検知した気体を各レベルに応じた強度で車内換気する。
【0054】
具体的には、換気装置400は、気体情報の有害レベルがレベルA(人体への影響大)の場合、レベルA(強度大)の強度で換気を行う。また、気体情報の有害レベルがレベルB(人体への影響中)の場合にレベルB(強度中)の強度で、有害レベルがレベルC(人体への影響小)の場合にレベルC(強度小)の強度で、有害レベルがレベルD(人体への影響無し)の場合にレベルD(強度微小:通常運転)の強度で換気を行う。
【0055】
(映像システム)
また、気体センサメイン装置200から気体情報が映像システム500に送信されると、この映像システム500では、映像処理装置530が、この気体情報に異常が生じてる場合、すなわち、有害レベルがレベルA〜Cである場合に、当該気体情報からカメラ装置番号を特定し、このカメラ装置番号を有するカメラ装置510によりデジタル変換された映像データを映像データ保存装置540に保存させる。
【0056】
つまり、映像処理装置530は、異常が生じた気体を検知した気体センサ100付近に設置される複数のカメラ511により撮影した映像を、当該気体の発生源の特定に活用するために、映像システム用LAN520を通じて取り出し、この映像データを映像データ保存装置540に保存させる。
【0057】
(情報提供システム)
また、気体センサメイン装置200から気体情報が情報提供システム600に送信されると、この情報提供システム600では、情報提供サーバ630が、この気体情報に対応した固定メッセージを車内表示装置620に表示する。すなわち、情報提供システム用LAN610を介して、情報提供サーバ630からのメッセージ表示指示を車内表示装置620の通信処理部621が受信し、車内案内表示器622(LED文字盤)にメッセージを表示する。
【0058】
例えば、気体に異常が生じている場合には「異臭が発生しています」等のメッセージを表示し、換気装置400により換気中の場合には「ただいま換気中です」等のメッセージを表示する。なお、有害レベルが上記レベルDである通常時は、車内表示装置620の車内案内表示器622に、ニュース・天気予報、次の停車駅名や列車の運行状況等を表示している。
【0059】
(デジタル列車無線装置)
また、気体センサメイン装置200から気体情報がデジタル列車無線装置700に送信されると、このデジタル列車無線装置700では、この気体情報を、本電気車の外部、例えば、次の駅の駅職員に対して通知する。なお、このデジタル列車無線装置700は、気体センサメイン装置200から送信された気体情報の他に、外部との間で、現在の、列車・地上(駅)間で指令通告、徐行区間情報、車両機器状態監視等のデータ通信を行い、また、大雪や雷雨等の際に、全線区一斉の情報連絡や指令伝達を行う。
【0060】
以上のような本実施形態によれば、電気車内において喫煙等による煙や異臭スプレー等による有害ガスが生じた場合であっても、これらの気体を検知し異常度合いを判定すると共に、自動的にガスの発生場所の映像を撮影し、また、乗務員及び乗客、さらには外部に気体情報を通知することが可能な電気車用気体検知システムを提供することができる。
【0061】
これにより、気体センサメイン装置を介して、気体センサとカメラ装置を有する映像システムは連動し、有害ガス等が生じた場合であっても、この気体を検知すると共に、その気体の出所付近を撮影することができるため、有害ガスの出所や加害者を特定することが可能となる。また、この気体センサメイン装置を介して、気体センサと、乗客、乗務員に提供する情報を管理する情報提供システム及び無線装置は連動し、有害ガスが生じた場合であっても、この気体を検知すると同時に、乗務員や乗客にその旨の情報を迅速に通知することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100…気体センサ
101…センサ
102…感知判定部
103…通信部
200…気体センサメイン装置
210…異常判定部
211…異常発生判定手段
212…有害レベル分析手段
220…気体情報生成部
300…無線装置
301…通信処理部
302…送信部
303…携帯端末
400…換気装置
401…通信部
402…換気処理部
500…映像システム
510…カメラ装置
511…カメラ
512…映像データ変換処理部
520…映像システム用LAN
530…映像処理装置
540…映像データ保存装置
600…情報提供システム
610…情報提供システム用LAN
620…車内表示装置
621…通信処理部
622…車内案内表示器
630…情報提供サーバ
700…デジタル列車無線装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両毎に1以上設けられた気体センサにより電気車内に生じた気体を検知する電気車用気体検知ステムであって、
前記気体センサにより検知された気体に異常が生じているかを所定の基準を用いて判定する気体センサメイン装置を備え、
前記気体センサメイン装置は、前記気体に異常が生じていると判定した場合に、当該気体に関する情報を電気車内各種装置及びシステムに送信することを特徴とする電気車用気体検知システム。
【請求項2】
前記気体センサメイン装置により前記気体に関する情報が送信されると、この気体に関する情報を乗務員が持参する携帯端末に通知する無線通信装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気車用気体検知システム。
【請求項3】
前記気体センサメイン装置は、
前記気体に異常が生じているか判定する異常発生判定手段と、
前記異常発生判定手段により異常が生じていると判定された場合に、当該気体の有害レベルを判定する有害レベル判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気車用気体検知システム。
【請求項4】
前記気体に関する情報は、異常が生じているか否か及び有害レベルの情報を含み、
前記気体センサメイン装置により前記気体に関する情報が送信されると、この気体の有害レベルに応じて換気強度を制御する換気装置を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電気車用気体検知システム。
【請求項5】
電気車内を撮影する各車両に1以上設置されたカメラ装置と、
前記カメラ装置により撮影された映像データを記憶する記憶部と、
前記カメラ装置により撮影された映像データを前記記憶部に保存させる映像処理部と、
を有する映像システムを備え、
前記気体に関する情報は、電気車内に設置される前記カメラ装置のカメラ装置番号を含み、
前記映像処理部は、前記気体センサメイン装置により前記気体に関する情報が送信されると、この気体に関する情報からカメラ装置番号を特定し、当該番号のカメラ装置により撮影された映像データを前記記憶部に保存させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気車用気体検知システム。
【請求項6】
車両毎に1以上設置される車内表示装置と、
前記気体センサメイン装置により前記気体に関する情報が送信されると、前記車内表示装置に所定のメッセージを表示させる情報提供サーバと、
を有する情報提供システムを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気車用気体検知システム。
【請求項7】
前記情報提供サーバは、前記有害レベル判定手段により気体の有害レベルが判定された場合、前記気体センサメイン装置により前記気体に関する情報が送信されると、この気体の有害レベルに応じた所定のメッセージを前記車内表示装置に表示させることを特徴とする請求項6に記載の電気車用気体検知システム。
【請求項8】
前記電気車外部と通信を行う外部用無線通信装置を備え、
前記外部用無線通信装置は、前記気体センサメイン装置により前記気体に関する情報が送信されると、当該気体に関する情報を外部に送信することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気車用気体検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−107875(P2011−107875A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260825(P2009−260825)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】