説明

電気部品のシール部材

【課題】製造コストの上昇を低減しつつ、特殊形状の溝部に対応して密閉性を確保すること。
【解決手段】EGRバルブ用ポジションセンサなどの電気部品が有するケーシング30に形成される溝部38に嵌め込まれるシール部材10において、伸縮性を有する環状体と、この環状体の外縁部に当該環状体に沿って形成された切り込み部11と、を具備することを特徴とする。溝部38の形状に応じて環状体の断面が収縮することにより、当該環状体が溝部38に密着し、特殊形状の溝部38に対応して密閉性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品のシール部材に関し、特に、自動車などに搭載されるEGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ用ポジションセンサ等の密閉性が要求される電気部品のシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車やバイクなどに搭載されるセンサ装置においては、走行に伴う水滴や排気ガス等の侵入を防止するために密閉性が要求されている。このような要求に対応すべく、センサ装置においては、例えば、センサ装置のケーシングに形成された溝部にOリングなどのシール部材を嵌め込むことにより密閉性を確保している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなセンサ装置において、ケーシングに形成される溝部が非円形である場合には、汎用されているOリングでは十分な密閉性を確保することができないため、通常、当該溝部に対応する特殊形状を有するシール部材(変形Oリング)を製造して密閉性を確保している。
【特許文献1】特開平7−55004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような特殊形状を有するシール部材は、嵌め込まれる対象となるセンサ装置のためだけに製造する必要があるため、製造コストが上昇するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、製造コストの上昇を低減しつつ、特殊形状の溝部に対応して密閉性を確保することができる電気部品のシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気部品のシール部材は、電気部品が有するケーシングに形成される溝部に嵌め込まれるシール部材であって、伸縮性を有する環状体と、前記環状体の外縁部に当該環状体に沿って形成された切り込みと、を具備することを特徴とする。
【0007】
上記電気部品のシール部材によれば、伸縮性を有する環状体の外縁部に、当該環状体に沿って切り込みを形成したことから、ケーシングに形成される溝部の形状に応じて環状体が収縮可能となるので、環状体を溝部に密着させることができ、特殊形状の溝部に対応して密閉性を確保することが可能となる。また、環状体の外縁部に当該環状体に沿って切り込みを形成するだけで済むので、特殊形状を有するシール部材を製造する必要がなく、製造コストの上昇を低減することが可能となる。
【0008】
上記電気部品のシール部材においては、前記切り込みを、前記環状体の外縁部の複数個所に形成することが好ましい。この場合には、ケーシングに形成される溝部の形状に応じた環状体の収縮幅を大きくできるので、環状体をより溝部に密着させることが可能となる。
【0009】
特に、上記電気部品のシール部材においては、前記環状体の外縁部における対向する位置に、一対の前記切り込みを形成することが好ましい。この場合には、当該環状体の向きを気にすることなく嵌め込み作業を行うことができるので、当該シール部材をケーシングに嵌め込む際の作業効率を向上することが可能となる。
【0010】
また、上記電気部品のシール部材においては、前記切り込みの形状を、V字形状とすることが好ましい。この場合には、ケーシングの溝部に嵌め込まれる際、ケーシングに形成される溝部の形状に応じてV字形状の開口部を閉じることができるので、効率的に環状体を収縮させることが可能となる。
【0011】
さらに、上記電気部品のシール部材を、前記ケーシングに形成される非円形状の溝部に嵌め込むようにしても良い。このように、非円形状の溝部に嵌め込まれる場合においても、当該非円形状の溝部の形状に応じて環状体が収縮するので、環状体を溝部に密着させることができ、特殊形状の溝部に対応して密閉性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造コストの上昇を低減しつつ、特殊形状の溝部に対応して密閉性を確保することができる電気部品のシール部材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る電気部品のシール部材の正面図である。図2は、図1に示す一点鎖線A−Aにおける断面図である。
【0015】
本実施の形態に係る電気部品のシール部材10は、伸縮性を有する環状体で構成される。シール部材10は、例えば、ゴム素材で形成され、図1に示すように、円環形状を有している。例えば、シール部材10は、自動車などに搭載されるEGRバルブ用ポジションセンサなどの電気部品の密閉性を確保するために使用される。具体的には、EGRバルブ用ポジションセンサなどの電気部品のケーシングに形成される溝部に嵌め込まれることで、当該電気部品の密閉性を確保している。
【0016】
なお、本実施の形態においては、シール部材10がゴム素材で形成される場合について示すが、シール部材10の素材については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、ある程度の伸縮性、耐熱性などの特性を有することを条件として、プラスチック素材等で形成するようにしても良い。
【0017】
また、本実施の形態においては、シール部材10が円環形状を有する場合について示すが、シール部材10の形状については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、矩形状など各種電気部品に汎用可能な形状を有するようにしても良い。
【0018】
本実施の形態に係るシール部材10は、図2に示すように、断面が略円形状を有しており、その外周面の一定位置に切り込み部11が形成されている。特に、本実施の形態においては、図2に示すように、シール部材10の外周面のうち、上下に対向する位置に一対の切り込み部11が形成されている。特に、切り込み部11は、その断面がV字形状を有している。
【0019】
切り込み部11は、シール部材10が電気部品のケーシングに形成された溝部に嵌め込まれた場合にシール部材10(の断面)を収縮させることにより、シール部材10をケーシングの溝部に密着させ、当該ケーシングにおける密閉性を高めるものである。すなわち、ケーシングに形成された溝部に嵌め込まれると、切り込み部11が溝部の形状に応じて適宜変形することから、シール部材10が溝部の形状に密着した状態となり、ケーシングにおける密閉性が高められることとなる。
【0020】
なお、本実施の形態においては、一対の切り込み部11が、シール部材10の外周面に形成される場合について示しているが、切り込み部11の数量については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、シール部材10の外周面に1つの切り込み部11を形成しても良く、3つ以上の切り込み部11を形成しても良い。切り込み部11を、シール部材10の外周面に複数形成した場合には、ケーシングに形成される溝部の形状に応じたシール部材10の収縮幅を大きくできるので、当該シール部材をより溝部に密着させることが可能となる。
【0021】
また、本実施の形態においては、切り込み部11の形状がV字形状を有する場合について示しているが、切り込み部11の形状については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、後述するように、シール部材10の断面が適宜収縮することを条件として、U字形状などの形状を有するようにしても良い。
【0022】
図3は、従来のシール部材(Oリング)の断面図である。従来のシール部材20は、図3に示すように、その断面が円形状を有している。このため、シール部材20が電気部品のケーシングに形成された溝部に嵌め込まれた場合、本実施の形態に係るシール部材10のように、シール部材20(の断面)が溝部の形状に応じて適宜変形する量が少ない。したがって、溝部の形状に密着した状態となることはなく、本実施の形態に係るシール部材10と比べてケーシングにおける密閉性が低い。
【0023】
図4は、本実施の形態に係るシール部材10を、EGRバルブ用ポジションセンサのケーシングに形成された溝部に嵌め込んだ状態について示す正面図である。なお、図4においては、本実施の形態に係るシール部材10が嵌め込まれる電気部品の例として、EGRバルブ用ポジションセンサを用いて説明しているが、シール部材10が嵌め込まれる電気部品については、これに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。なお、EGRバルブ用ポジションセンサは、自動車等に搭載され、EGRバルブの位置検出を行うものであり、その構成については周知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図4に示すEGRバルブ用ポジションセンサにおいては、合成樹脂などの絶縁材から構成されるケーシング30と、このケーシング30の前面を覆う、同じく合成樹脂などの絶縁材から構成される蓋体(不図示)と、これらのケーシング30及び蓋体の中央に設けられた軸孔に軸線方向にスライド移動可能に挿通された操作軸31とを備えている。
【0025】
操作軸31の側方側には、蓋体の位置決めを行うと共に蓋体の振動を防止するための一対の弾性部材32を保持する保持部33が形成されている。また、操作軸31の下方側には、抵抗体が固定された絶縁基板34が操作軸31の軸線方向に沿って配設されている。絶縁基板34の上端には、抵抗体と接続された接続クリップ35が取り付けられている。接続クリップ35は、ケーシング30に埋設されたL字状のコネクタ用の端子36の一端と電気的に接続されている。一方、端子36の他端は、筒状部37の開口部に表出されている。
【0026】
ケーシング30の内部には、操作軸31に取り付けられ、当該操作軸31の移動に伴って移動する可動部材(不図示)が配設されており、この可動部材の下部には金属板からなる摺動子が取り付けられている。この摺動子を取り付けた可動部材は、摺動子を上記抵抗体に接触させた状態でスライド移動可能にケーシング30に取り付けられている。抵抗体における摺動子の位置に応じたEGRバルブ用ポジションセンサの検出信号が、端子36を介してEGRバルブの位置制御を行うEGRバルブ装置へ出力されることとなる。
【0027】
図4に示すケーシング30においては、保持部33及び端子36の周囲に溝部38が形成されている。また、溝部38の外周側の一部には、溝部38に対するシール部材10の嵌め込み作業、或いは、溝部38からのシール部材10の取り外し作業を補助する凹部39a、39bが形成されている。
【0028】
ここで、ケーシング30に形成される溝部38は、図4に示すように、非円形状を有するものとする。具体的には、図4に示す下方領域に配置された3つの直線形状部分38a、38b及び38cが円弧形状部分38dに連結されて非円形状の溝部38が形成されている。
【0029】
上述のように、従来、このような非円形の溝部38にシール部材を嵌め込んでEGRセンサの密閉性を確保するためには、当該溝部38のためだけに専用のシール部材を製造しなければならなかった。しかしながら、本実施の形態に係るシール部材10においては、このような非円形の溝部38に嵌め込んだ場合においても、切り込み部11が溝部38の形状に応じて適宜変形することから、シール部材10が溝部38の形状に密着した状態となり、EGRバルブ用ポジションセンサにおける密閉性を高めることが可能となる。
【0030】
このように本実施の形態に係る電気部品のシール部材10によれば、シール部材10を構成する環状体に沿って切り込み部11を形成したことから、ケーシング30に形成される溝部38の形状に応じて収縮可能となるので、シール部材10を溝部38に密着させることができ、特殊形状の溝部に対応して密閉性を確保することが可能となる。また、シール部材10を構成する環状体に沿って切り込み部11を形成するだけで済むので、特殊形状を有するシール部材を製造する必要がなく、製造コストの上昇を低減することが可能となる。
【0031】
特に、本実施の形態に係る電気部品のシール部材10においては、シール部材10を構成する環状体の外周面における対向する位置に、一対の切り込み部11を形成している。これにより、シール部材10の向きを気にすることなくケーシング30への嵌め込み作業を行うことができるので、当該シール部材10をケーシング30に嵌め込む際の作業効率を向上することが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態に係る電気部品のシール部材10においては、切り込み部11の形状を、V字形状としている。これにより、ケーシング30に嵌め込まれる際、ケーシング30に形成される溝部38の形状に応じてV字形状の開口部を閉じることができるので、効率的にシール部材10を構成する環状体を収縮させることが可能となる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態に係る電気部品のシール部材の正面図である。
【図2】図1に示す一点鎖線A−Aにおける断面図である。
【図3】従来のシール部材(Oリング)の断面図である。
【図4】上記実施の形態に係る電気部品のシール部材を、EGRセンサのケーシングに形成された溝部に嵌め込んだ状態について示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 シール部材
11 切り込み部
30 ケーシング
31 操作軸
38 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が有するケーシングに形成される溝部に嵌め込まれるシール部材であって、伸縮性を有する環状体と、前記環状体の外縁部に当該環状体に沿って形成された切り込みと、を具備することを特徴とする電気部品のシール部材。
【請求項2】
前記切り込みを、前記環状体の外縁部の複数個所に形成したことを特徴とする請求項1記載の電気部品のシール部材。
【請求項3】
前記環状体の外縁部における対向する位置に、一対の前記切り込みを形成したことを特徴とする請求項2記載の電気部品のシール部材。
【請求項4】
前記切り込みの形状を、V字形状としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気部品のシール部材。
【請求項5】
前記ケーシングに形成される非円形状の溝部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気部品のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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