説明

電気部品の製造方法

【課題】高生産性及び低コストを実現することが可能な電気部品の製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂12を用いるため、高信頼性及び高放熱化への対応が可能となる。また、熱硬化前の熱硬化性材料にピコ秒パルスレーザ22により穿設孔13を穿設するため、フォトリソグラフィーのようにマスクを使用する工程を省くことが可能となり、高生産性及び低コストを実現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品の製造方法に関し、特に熱硬化性樹脂を用いた電気部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハレベルCSP(Chip Size Package)、ファンアウトCSP、TSV(Through Silicon Via)シリコンインターポーザ、積層チップ等のパッケージ又はそれら相互の複合モジュールに適応されるIC、ディスクリート、電子部品(IPD(Intelligent Power Device)含む)においては、再配線技術が適用されている。再配線技術では、素子の端子ピッチを拡大しつつ再配置することにより、ハンドリング性向上、信頼性向上及びテスト容易性向上を実現可能とするため、電気電子分野において広く浸透してきている。現在、再配線のための絶縁層は、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)等の感光性材料をマスクに使用したリソグラフィー技術によりパターニングすることによって形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、支持体上に、絶縁性樹脂組成物層及び露光により分解する化合物を含有する感光性組成物層を有するプリント配線板用に好適な積層体が開示されている。この積層体をパターン露光し、感光性組成物層によるメッキレジストを形成した後、重合性化合物などの反応性の高分子前駆体を接触させ、露光することで、レジストの存在しない領域にグラフトポリマーを生成させた後、そこに導電性層を設けることで、プリント配線板を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−144820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような技術では、感光性材料をマスクに使用したリソグラフィー技術によりパターニングする方法であるため、高価なマスクを使用しなくてはならない事、プロセス数が多いことにより高コスト且つ低生産性である事、及び今後の再配線絶縁層の多層化、高信頼性化、高放熱化への対応は困難である事が課題として挙げられている。特に、そもそも上記のような技術は、ICのPIパッシベーション膜形成技術の延長線上であるため、単層又は2層を前提とした技術であり、今後クラウドコンピューティングやスマートフォン市場拡大により半導体製品及びその複合製品の高機能化及び高性能化に伴う再配線絶縁層の多層化、高信頼性化、高放熱化への対応には限界がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、高生産性及び低コストを実現することが可能な電気部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱硬化前の熱硬化性材料に光により孔を穿設する工程を含む電気部品の製造方法である。
【0008】
この構成によれば、熱硬化性材料を用いるため、高信頼性及び高放熱化への対応が可能となる。また、熱硬化前の熱硬化性材料に光により孔を穿設するため、リソグラフィーのようにマスクを使用する工程を省くことが可能となり、高生産性及び低コストを実現することが可能となる。
【0009】
この場合、光はピコ秒パルスレーザ光であることが好適である。
【0010】
この構成によれば、光はピコ秒パルスレーザ光であるため、精度良く熱硬化性材料に孔を穿設することができる。
【0011】
また、光は発光ダイオードを光源とすることができる。
【0012】
この構成によれば、光源を安価とすることができる。
【0013】
また、複数の光により熱硬化性材料に同時に複数個の孔を穿設することが好適である。
【0014】
この構成によれば、複数の光により同時に複数個の孔を穿設するため、電気部品の生産性をさらに向上させることができる。
【0015】
この場合、複数箇所の光の反射率を変更可能なミラーアレイに光を照射し、ミラーアレイから反射された複数の光により同時に複数個の孔を穿設することが好適である。
【0016】
この構成によれば、複数箇所の光の反射率を変更可能なミラーアレイに光を照射し、ミラーアレイから反射された複数の光により同時に複数個の孔を穿設する。このため、電気部品を効率良く製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気部品の製造方法によれば、高生産性及び低コストを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態に係るパターニング方法の手順を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るパターニング装置及びパターニング方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る電気部品の製造方法の一例について説明する。図1(a)に示すように、本発明の第1実施形態に係るマスクレスパターニング方法では、既にCuパッド11が設置されているSiウェーハ10に対してパターニングをすることにより再配線を行う。図1(b)に示すように、Siウェーハ10表面に溶剤、潜在性硬化剤、シリカフィラー等を含むエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂12を塗布し、乾燥させる。熱硬化性樹脂12としては、エポキシ樹脂の靭性を高めるために、エポキシ樹脂を主成分として、ポリイミドを添加材として添加された樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂12としては、例えば、ナガセケムテックス株式会社製の製品名「UFR108」を用いることができる。熱硬化性樹脂12の塗布方法としては、スピンコート、スプレイ、印刷、インクジェット等の方法を用いることができる。
【0020】
図1(c)に示すように、熱硬化前の未硬化の熱硬化性樹脂12に対して、レーザ光源21よりピコ秒パルスレーザ22を選択的に照射することにより、周辺に熱履歴を与えることなく、照射部位を瞬時に揮発させ、穿設孔13を穿設する。レーザ光源21のエネルギー及びパルス波長を調整することにより、短波長又は長波長のレーザ光を用いることも可能である。しかし、ピコ秒パルスレーザ22を適用することにより、穿設孔13の精度を向上させることができる。
【0021】
穿設孔13を設けた後は、図1(d)に示すようにCuパターン14やハンダ15を設置することにより、所望のデバイスを構築する。
【0022】
本実施形態によれば、熱硬化性樹脂12を用いるため、高信頼性及び高放熱化への対応が可能となる。また、熱硬化前の熱硬化性材料にピコ秒パルスレーザ22により穿設孔13を穿設するため、フォトリソグラフィーのようにマスクを使用する工程を省くことが可能となり、高生産性及び低コストを実現することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態によれば、レーザ光はピコ秒パルスレーザ22であるため、精度良く熱硬化性樹脂12に穿設孔13を穿設することができる。
【0024】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、単一のピコ秒パルスレーザ22により描画することによりパターニングを行ったが、本実施形態では複数のレーザ光により一括してパターニングを行う。
【0025】
図2に示すように、本実施形態のパターニング装置30は、レーザ光源として白色LED31、ガルバノミラー33及びミラーアレイ34を備えている。白色LED31は、可視波長のレーザ32を発する。ガルバノミラー33はマイクロ秒単位で白色LED31からのレーザ32の反射角度を切り替えて、レーザ32がミラーアレイ34に照射されるか否かをマイクロ秒単位で切り替えることが可能である。ミラーアレイ34は、例えば、全体で30〜40mm角程度の全反射面積中で1〜10μm角の半導体素子が配列され、例えば、1920×1080個の画素を有する。これらの画素を形成する半導体素子は、それぞれが独立してマイクロ秒単位で反射及び非反射を切り替えることが可能とされている。そのため、パターニングされるSiウェーハ10の熱硬化性樹脂12はその全面に対して一括して所望のパターニングがなされるようにピコ秒パルスレーザを照射されることになる。
【0026】
本実施形態では、複数のレーザにより同時に複数個の穿設孔13を穿設するため、電気部品の生産性をさらに向上させることができる。特に、本実施形態では、複数箇所のレーザ光の反射率を変更可能なミラーアレイ34にレーザ32を照射し、ミラーアレイ34から反射された複数のレーザ光により同時に複数個の穿設孔13を一括して穿設する。このため、電気部品を効率良く製造することができる。さらに、光源は安価な白色LED31であるため、低コスト化を図ることができる。
【0027】
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…Siウェーハ、11…Cuパッド、12…熱硬化性樹脂、13…穿設孔、14…Cuパターン、15…ハンダ、21…レーザ光源、22…ピコ秒パルスレーザ、30…パターニング装置、31…白色LED、32…レーザ、33…ガルバノミラー、34…ミラーアレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化前の熱硬化性材料に光により孔を穿設する工程を含む電気部品の製造方法。
【請求項2】
前記光はピコ秒パルスレーザ光である、請求項1に記載の電気部品の製造方法。
【請求項3】
前記光は発光ダイオードを光源とする、請求項1又は2に記載の電気部品の製造方法。
【請求項4】
複数の前記光により前記熱硬化性材料に同時に複数個の孔を穿設する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項5】
複数箇所の前記光の反射率を変更可能なミラーアレイに前記光を照射し、前記ミラーアレイから反射された複数の前記光により同時に複数個の孔を穿設する、請求項4に記載の電気部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74175(P2013−74175A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212898(P2011−212898)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】