説明

電気銅めっき用添加剤及び電気銅めっき浴

【課題】 低電流密度部から高電流密度部まで均一なめっき被膜を形成させて良好な光沢性を付与し、また不使用時においても消耗しない電気銅めっき用添加剤及びその添加剤を含有した電気銅めっき浴を提供する。
【解決手段】 電気銅めっき浴に、下記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物からなる電気銅めっき用添加剤を添加させる。
【化1】


(但し、式中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは1〜30、nは1〜40の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気銅めっき用添加剤及び電気銅めっき浴に関し、特に硫酸銅めっき浴の光沢剤として好適な電気銅めっき用添加剤及びその添加剤を含有した電気銅めっき浴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気銅めっき浴に光沢剤を添加して光沢のある銅めっき被膜を与えることが行われている。その光沢剤としては、例えば有機チオ化合物、酸素含有高分子有機化合物等が知られている(例えば、特許文献1又は2参照。)。有機チオ化合物としては、NaOSCS−SCSONaなどのジスルファイド系化合物が汎用され、また酸素含有高分子有機化合物としては、オキシアルキレンポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが使用されている。
【0003】
また、上記化合物以外の光沢剤として、下記一般式
H−(EO)a−(PO)m−(EO)b−H
で示される、ポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドを付加したポリマーが使用されている。なお、上記式中において、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表し、n=a+bとする。
【0004】
しかしながら、これら従来使用されてきた光沢剤は、銅めっき被膜の低電流密度部における光沢性やつきまわり性が十分ではなく、粗雑な被膜を形成させていた。その原因として、例えば上記一般式で示されるポリマーでは、その分子構造において、疎水基の(PO)mが両側の(EO)nに挟まれているため、疎水基としての効果が弱められているためと考えられる。その結果、このポリマーからなる化合物を電気銅めっき浴の光沢剤として用いた場合には、低電流密度部や高電流密度部において電流分布が乱れ、均一な電着を阻害し、微細なピットやくもりを発生させるなど、不良めっきが生じることとなっていた。
【0005】
また、電気銅めっき用の光沢剤としては、管理し易く、不使用時においても消耗しないことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−194608号公報
【特許文献2】特開2008−297221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述のような従来の実情に鑑みてなされたものであり、低電流密度部から高電流密度部まで均一なめっき被膜を形成させて良好な光沢性を付与し、また不使用時においても消耗しない電気銅めっき用添加剤及びその添加剤を含有した電気銅めっき浴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、疎水基の効果を高めたブロックポリマー化合物を添加剤として用いることによって、低電流密度部から高電流密度部まで均一なめっき被膜を形成させて良好な光沢性を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る電気銅めっき用添加剤は、下記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物からなる。
【0010】
【化1】

(但し、式中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは1〜30、nは1〜40の整数である。)
【0011】
また、本発明に係る電気銅めっき浴は、上記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物からなる添加剤を含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低電流密度部から高電流密度部まで均一なめっき被膜を形成させて良好な光沢性を付与することができ、また不使用時においても消耗せず安定的に良好なめっき被膜を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態に係る電気銅めっき用添加剤及びその添加剤を含有した電気銅めっき浴について詳細に説明する。
【0014】
本実施の形態に係る電気銅めっき用添加剤は、下記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物からなるものである。
【0015】
【化2】

【0016】
ここで、一般式(1)中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは1〜30、nは1〜40の整数である。
【0017】
直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基であるRとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基などを挙げることができる。
【0018】
また、一般式(1)中のm及びnは、上述したRの種類に応じて適宜設定することができる。具体的には、Rの炭素数が増加するにつれ疎水性が高まることから、そのRの種類に応じてm及びnのモル比を調整することによって、めっき浴への適度な溶解性を備えるようにすることができる。また、m及びnは、好ましくは上記一般式(1)で示されるブロックポリマーの分子量が500〜2000となるように設定することができる。
【0019】
上記一般式(1)に示されるように、この添加剤は、オキシプロピレン基側の末端がアルキル基又はアルケニル基でキャップされた構造となっている。このように、オキシプロピレン基の末端をアルキル基又はアルケニル基でキャップすることによって、オキシプロピレン基の疎水基としての効果を高めることができる。
【0020】
そしてさらに、上記一般式(1)に示す添加剤は、オキシプロピレン基(PO)とオキシエチレン基(EO)の順番が一定であり、常にR−O−(PO)m−(EO)n−Hの構造からなるブロックポリマーである。これにより、上述のように末端がアルキル基又はアルケニル基でキャップされたオキシプロピレン基((PO)m)により、上記一般式(1)において、「R−O−(PO)m」の部分がまとめて疎水基として作用し、高い疎水性を有するようになる。
【0021】
このことから予測される作用としては、一般に化合物の疎水基は、水中から界面に押し出されるため、水溶液に被めっき物が浸漬されると、被めっき物のめっき面が界面となり、高い疎水性を有する添加剤はめっき面に濃縮され、添加剤の効果が高まる。その結果、低電流密度部から高電流密度部までの全体にわたって添加剤の効果が発揮されるため、均一なめっき被膜を形成させて良好な光沢性を付与できるものと考えられる。
【0022】
さらに、このようなブロックポリマーであることにより、他方の末端のオキシエチレン基により適度な溶解性を備えるようにすることができ、電気銅めっき浴中に良好にポリマー化合物が溶解し、まためっき浴中において安定的に維持させることができ、電解処理の不使用時において経時的に消耗していくことを抑制できる。
【0023】
上記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物は、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下において、先ず、炭素数1〜15のアルキルアルコール又はアルケニルアルコールにプロピレンオキサイドを付加反応させる。プロピレンオキサイドの付加反応の終了後、次に、エチレンオキサイドを加えてエチレンオキサイドの付加反応を行うことによって得ることができる。
【0024】
このように、ブロックポリマー化合物は、炭素数1〜15のアルキルアルコール又はアルケニルアルコールにプロピレンオキサイドを付加反応させた後に、エチレンオキサイドを加えて付加反応させて合成することによって、アルキル基又はアルケニル基でキャップされた(PO)mに(EO)nが付加された一定の構造からなるブロック体とすることができる。
【0025】
ブロックポリマー化合物の製造方法における反応温度としては、特に限定されないが、90〜160℃とすることが好ましい。反応温度を90℃以上とすることにより、適度な反応速度を得ることができ効率的にプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの付加反応を生じさせることができる。また、反応温度を160℃以下とすることにより、副反応物などの生成を抑制し、生成させるブロックポリマー化合物の収率を高めることができる。なお、アルキルアルコールにプロピレンオキサイドを付加反応させた後にエチレンオキサイドを付加させるに際し、上述の90〜160℃でプロピレンオキサイドを付加反応させた後、一度冷却させてから、同様の温度条件でエチレンオキサイドの付加反応を行うことが好ましい。
【0026】
また、反応時間としては、特に限定されず反応温度によっても異なるが、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドのそれぞれの付加反応において、15時間以内であることが好ましい。15時間以内とすることにより、副反応物などの生成を抑制し、生成させるブロックポリマー化合物の収率を高めることができる。
【0027】
また、付加反応に際しては、加圧下で行うことが好ましく、付加反応開始時の圧力としては2〜5kg/cmとすることが好ましい。
【0028】
上記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物を電気銅めっきの添加剤として使用する場合、そのときの添加濃度としては0.05〜1.0g/Lとすることが好ましい。添加濃度を0.05g/L以上とすることによって、十分な光沢性を有するめっき被膜を形成させることができる。また、添加濃度を1.0g/L以下とすることによって、有効に使用可能な電流密度範囲が狭まることを防止して、低電流密度部から高電流密度部まで均一に良好なめっき被膜を形成させることができる。
【0029】
次に、上述した一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物からなる添加剤が添加される電気銅めっき浴、及びその電気銅めっき浴を用いためっき処理について説明する。電気銅めっき浴としては、特に限定されないが、特に硫酸銅めっき浴とすることが好ましい。このように、硫酸銅めっき浴に上述したブロックポリマー化合物を添加させることによって、幅広い電流密度範囲において、均一に、優れた光沢性を有する銅めっき被膜を形成させることができ、装飾用めっき処理に用いるめっき浴として好適に用いることができる。
【0030】
具体的に、硫酸銅めっき浴の組成としては、例えば硫酸銅(CuSO・5HO)50〜250g/L、濃硫酸50〜250g/Lを基本組成とするめっき浴とすることができる。なお、硫酸銅めっき浴には、通常微量(10〜200mg/L程度)の塩化物イオンを含有させる。具体的には、例えばNaCl等の水溶性塩化物を添加することにより含有させることができる。
【0031】
なお、上述した電気銅めっき浴には、さらに既知の添加剤を添加させることによって光沢性や平滑性をより向上させるようにしてもよい。具体的には、例えば有機チオ化合物や有機酸アミド類、酸素含有高分子有機化合物などを添加することができる。
【0032】
上述した電気銅めっき浴を用いためっき処理条件として、pHは1以下とする。また、めっき温度としては20〜50℃の範囲とし、陰極電流密度としては0.1〜8A/dmとすることが好ましい。また、陽極としては、銅板、不溶性陽極を用いることができる。さらに、より均一な光沢性を有するめっき被膜を形成させるため、空気攪拌、カソードロッキング等の攪拌を十分に行うことが好ましい。
【0033】
また、上述しためっき処理が施される被めっき処理物としては、特に制限されないが、例えばプラスチックなどの被めっき処理物に対して装飾めっきを施すことを目的として、上述した添加剤を添加した電気銅めっき浴を好適に用いることができる。なお、その他、スルホールを有するプリント配線基板や電気・電子部品などを対象としてめっき処理を施してもよい。このように、上述した添加剤を添加した電気銅めっき浴は、装飾的な用途から機能的な目的まで、幅広く適用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明が限定されるものではない。
【0035】
下記に説明する各実施例では、表1に示すブロックポリマー(R−O−(PO)m−(EO)n−H)を合成し、そのブロックポリマー化合物を添加剤として添加した銅めっき浴を用いてめっき処理を行い、析出形成されためっき被膜を評価した。なお、銅めっき浴には、空気を吹き込んで十分攪拌し、特に陰極の近傍が攪拌されるように空気を被めっき物に当たるようにした。
【0036】
【表1】

【0037】
<実施例1>
(ブロックポリマーの合成)
気密反応容器に、n−プロパノール600g(10モル)と水酸化カリウム5.6g(0.1モル)を採り、窒素ガス雰囲気下でプロピレンオキサイド870g(15モル)を90〜130℃、2〜5kg/cmの加圧下で付加反応させた。プロピレンオキサイドの付加反応終了後、反応容器を冷却し、次にエチレンオキサイド660g(15モル)を加えて、同様の条件で付加反応させた。
【0038】
次に、反応容器に、合成吸着材(キョーワード600、協和化学工業株式会社製)を50g添加し、70℃で30分攪拌処理後にろ過して、ポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(15)プロピルエーテル2070gを得た。
【0039】
(めっき処理及びめっき被膜評価)
下記組成
硫酸銅(CuSO・5HO) 200g/L
濃硫酸 50g/L
NaCl 115mg/L
からなる硫酸銅めっき液に、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び上述のようにして合成したポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(15)プロピルエーテル0.2g/Lを加えためっき浴を用い、総電流2A、時間10分でハルセル試験器を用いてめっき処理を行った。なお、pH<1、温度25℃、陰極電流密度0.15〜4A/dmのめっき処理条件とした。
【0040】
その結果、低電流密度部から高電流密度部まで良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。
【0041】
また、上述したハルセル試験器に銅板を入れたまま一晩放置した後、同様にしてめっき処理を行った場合でも、最初のめっき処理と同様に良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。このことから、添加剤は、不使用時においてもめっき浴中で消耗することなく安定的に維持されることがわかった。
【0042】
<実施例2>
(ブロックポリマーの合成)
気密反応容器に、アリルアルコール(2−プロペン−1−オール)580g(10モル)と水酸化カリウム5.6g(0.1モル)を採り、窒素ガス雰囲気下でプロピレンオキサイド870g(15モル)を90〜130℃、2〜5kg/cmの加圧下で付加反応させた。プロピレンオキサイドの付加反応終了後、反応容器を冷却し、次にエチレンオキサイド660g(15モル)を加えて、同様の条件で付加反応させた。
【0043】
次に、反応容器に、合成吸着材(キョーワード600、協和化学工業株式会社製)を50g添加し、70℃で30分攪拌処理後にろ過して、ポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(15)アリルエーテル2050gを得た。
【0044】
(めっき処理及びめっき被膜評価)
実施例2では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び上述のようにして合成したポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(15)アリルエーテル0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行った。
【0045】
その結果、低電流密度部から高電流密度部まで良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。また、上述したハルセル試験器に銅板を入れたまま一晩放置した後、同様にしてめっき処理を行った場合でも、最初のめっき処理と同様に良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。
【0046】
<実施例3>
(ブロックポリマーの合成)
気密反応容器に、n−ブタノール740g(10モル)と水酸化カリウム5.6g(0.1モル)を採り、窒素ガス雰囲気下でプロピレンオキサイド580g(10モル)を90〜130℃、2〜5kg/cmの加圧下で付加反応させた。プロピレンオキサイドの付加反応終了後、反応容器を冷却し、次にエチレンオキサイド660g(15モル)を加えて、同様の条件で付加反応させた。
【0047】
次に、反応容器に、合成吸着材(キョーワード600、協和化学工業株式会社製)を50g添加し、70℃で30分攪拌処理後にろ過して、ポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(10)ブチルエーテル1920gを得た。
【0048】
(めっき処理及びめっき被膜評価)
実施例3では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び上述のようにして合成した、ポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(10)ブチルエーテル0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行った。
【0049】
その結果、低電流密度部から高電流密度部まで良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。また、上述したハルセル試験器に銅板を入れたまま一晩放置した後、同様にしてめっき処理を行った場合でも、最初のめっき処理と同様に良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。
【0050】
<実施例4>
(ブロックポリマーの合成)
気密反応容器に、n−ヘキサノール1020g(10モル)と水酸化カリウム5.6g(0.1モル)を採り、窒素ガス雰囲気下でプロピレンオキサイド290g(5モル)を90〜130℃、2〜5kg/cmの加圧下で付加反応させた。プロピレンオキサイドの付加反応終了後、反応容器を冷却し、次にエチレンオキサイド880g(20モル)を加えて、同様の条件で付加反応させた。
【0051】
次に、反応容器に、合成吸着材(キョーワード600、協和化学工業株式会社製)を50g添加し、70℃で30分攪拌処理後にろ過して、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(5)ヘキシルエーテル2130gを得た。
【0052】
(めっき処理及びめっき被膜評価)
実施例4では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び上述のようにして合成した、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(5)ヘキシルエーテル0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行った。
【0053】
その結果、低電流密度部から高電流密度部まで良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。また、上述したハルセル試験器に銅板を入れたまま一晩放置した後、同様にしてめっき処理を行った場合でも、最初のめっき処理と同様に良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。
【0054】
<実施例5>
(ブロックポリマーの合成)
気密反応容器に、2−エチルヘキサノール1300g(10モル)と水酸化カリウム5.6g(0.1モル)を採り、窒素ガス雰囲気下でプロピレンオキサイド174g(3モル)を90〜130℃、2〜5kg/cmの加圧下で付加反応させた。プロピレンオキサイドの付加反応終了後、反応容器を冷却し、次にエチレンオキサイド1100g(25モル)を加えて、同様の条件で付加反応させた。
【0055】
次に、反応容器に、合成吸着材(キョーワード600、協和化学工業株式会社製)を50g添加し、70℃で30分攪拌処理後にろ過して、ポリオキシエチレン(25)ポリオキシプロピレン(3)2−エチルヘキシルエーテル2500gを得た。
【0056】
(めっき処理及びめっき被膜評価)
実施例5では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び上述のようにして合成した、ポリオキシエチレン(25)ポリオキシプロピレン(3)2−エチルヘキシルエーテル0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行った。
【0057】
その結果、低電流密度部から高電流密度部まで良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。また、上述したハルセル試験器に銅板を入れたまま一晩放置した後、同様にしてめっき処理を行った場合でも、最初のめっき処理と同様に良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。
【0058】
<実施例6>
(ブロックポリマーの合成)
気密反応容器に、1−ドデカノール1860g(10モル)と水酸化カリウム5.6g(0.1モル)を採り、窒素ガス雰囲気下でプロピレンオキサイド116g(2モル)を90〜130℃、2〜5kg/cmの加圧下で付加反応させた。プロピレンオキサイドの付加反応終了後、反応容器を冷却し、次にエチレンオキサイド1320g(30モル)を加えて、同様の条件で付加反応させた。
【0059】
次に、反応容器に、合成吸着材(キョーワード600、協和化学工業株式会社製)を50g添加し、70℃で30分攪拌処理後にろ過して、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(2)ドデシルエーテル3200gを得た。
【0060】
(めっき処理及びめっき被膜評価)
実施例6では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び上述のようにして合成した、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(2)ドデシルエーテル0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行った。
【0061】
その結果、低電流密度部から高電流密度部まで良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。また、上述したハルセル試験器に銅板を入れたまま一晩放置した後、同様にしてめっき処理を行った場合でも、最初のめっき処理と同様に良好な光沢を有する析出物を均一に形成させることができた。
【0062】
<比較例1>
(めっき処理及びめっき被膜評価)
比較例1では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及びポリエチレングリコール0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行い、析出形成されためっき被膜の評価を行った。なお、この比較例1並びに下記比較例2及び3においても、銅めっき浴には空気を吹き込んで十分に攪拌を行った。
【0063】
その結果、析出物は良好な光沢を有するものであったが、微細なピットや白くもりが生じてしまい、低電流密度部から高電流密度部まで均一な析出物は形成されず、不良な外観のめっき被膜であった。
【0064】
<比較例2>
(めっき処理及びめっき被膜評価)
比較例2では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及びポリプロピレングリコール0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行い、析出形成されためっき被膜の評価を行った。
【0065】
その結果、析出物は良好な光沢を有するものであったが、微細なピットや白くもりが生じてしまい、低電流密度部から高電流密度部まで均一な析出物は形成されず、不良な外観のめっき被膜であった。
【0066】
<比較例3>
(めっき処理及びめっき被膜評価)
比較例3では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び、ポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドを付加して得られたブロックポリマー(H−(EO)a−(PO)m−(EO)b−H、m=17、n=a+b=9)0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行い、析出形成されためっき被膜の評価を行った。
【0067】
その結果、析出物は良好な光沢を有するものであったが、微細なピットや白くもりが生じてしまい、低電流密度部から高電流密度部まで均一な析出物は形成されず、不良な外観のめっき被膜であった。
【0068】
<比較例4>
(めっき処理及びめっき被膜評価)
比較例4では、添加剤として、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド2ナトリウム塩10mg/L、ジエチルサフラニンのジアゾ化処理物50mg/L、及び、n−ブタノールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを同時に付加して得られたランダムポリマー0.2g/Lを加えた硫酸銅めっき浴を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハルセル試験器を用いてめっき処理を行い、析出形成されためっき被膜の評価を行った。
【0069】
その結果、析出物は良好な光沢を有するものであったが、ステップ状に変化して析出する段地めっきとなり、低電流密度部ではめっきは析出されず、不良な外観のめっき被膜であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるブロックポリマー化合物からなる電気銅めっき用添加剤。
【化1】

(但し、式中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは1〜30、nは1〜40の整数である。)
【請求項2】
上記ブロックポリマー化合物は、不活性ガス雰囲気下、炭素数1〜15のアルキルアルコール又はアルケニルアルコールにプロピレンオキサイドを付加反応させた後、エチレンオキサイドを加えて付加反応させて得られることを特徴とする請求項1記載の電気銅めっき用添加剤。
【請求項3】
上記請求項1記載の電気銅めっき用添加剤を含有した電気銅めっき浴。