説明

電気鋼を被覆する方法

コアシート用ワニス組成物を使用する電気鋼用被覆方法であって、
a)電気鋼の表面に、コアシート用ワニス組成物のコーティング層を少なくとも1層塗布する工程であって、コアシート用ワニス組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水5〜95重量%と
を含み、
ここで成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、工程と、
b)塗布したコーティング層を硬化する工程と
を含む被覆方法。
本方法は、コーティングの優れた接着性および優れた耐食性、ならびに様々な技術的要件を組み合わせた高い特性プロファイル基準をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリエステルアミドイミドおよびポリエステルアミドをベースとするコアシート用ワニス組成物を使用し、優れたコーティング接着性をもたらす電気鋼用被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個々の電気鋼板を被覆するための様々な電気鋼板用ワニスが知られている。被覆された電気鋼板同士を、溶接、型締め、かしめ、アルミニウム金型鋳造、またはリベット締めなどの異なる技術的手段によって組み立て、変圧器、発電機、およびモーターなどの電気機器において使用するための固体のコアを成形することができる。コーティングは、コア中の金属シート間に電気絶縁をもたらし、大きい表面絶縁抵抗性、機械的ストレスおよび腐食に対する抵抗性、ならびに熱安定性という要件を満たすことができるべきである。
【0003】
特開平07−336969号公報、特開2000−345360号公報、および欧州特許出願公開第923088号明細書は、シリカまたはアルミナコロイド粒子などの粒子を含有する、電気鋼板を被覆するためのエナメルに関する。組成物によって、良好な耐引っ掻き性、耐ブロッキング性、耐薬品性、および耐食性、ならびに高い表面絶縁能などの特性を有するコーティングがもたらされる。こうしたコーティングには、接合機能がないので、固体のコアを成形するための接合(溶接、型締め、かしめ、アルミニウム金型鋳造、またはリベット締め)手段がさらに必要である。
【0004】
例えば、固体のコアを成形するための溶接または打抜き用途に適した電気鋼板の被覆に使用されるコーティング系がいくつか知られている。このことを考えると、コアシート用ワニスの選択は、単一のコーティングがすべての要件を満たさない場合もあるので、しばしば妥協をともなう。こうしたコーティングの周知の等級クラス、例えばクラスC3、クラスC5、クラスC6(AISI−ASTM A 976−03の下で規格として登録されている)は、こうした特性に関連して、この分野におけるコーティングの様々な要件を示す。コーティングは、有機混合物(C3絶縁タイプ)のみ、または複合体樹脂とクロメート、ホスフェート、およびオキシドとの有機/無機混合物(C5とC6の絶縁タイプ)であってもよい。
【0005】
有機樹脂、例えばフェノール樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂をベースとするC3コーティングが使用される。C3コーティングは、打抜き性を向上させ、通常の操業温度に対して耐性を示すが、応力除去焼なましには耐えられない。一般に、C5コーティングは、一方では非常に良好な打抜き性および良好な溶接応答性を有する半有機コーティングであり、他方では優れた溶接性および耐熱性ならびに良好な打抜き性を有する有機樹脂と無機充填剤とを含む基本的に無機コーティングであり得る。しかし、C5コーティングは、一般にクロメート化合物、ホスフェート化合物、もしくはチタネート化合物をベースとし、したがって特に残留発がん性レベルに関して環境に優しくなく、または吸湿性、ならびに不十分な耐焼鈍性および耐食性になる傾向を示すことがあり、または不十分な溶接特性を示すことがある。C6コーティングは、約50重量%と高い含有率の充填剤を含む有機コーティングである。
【0006】
周知の系は、溶接、型締め、かしめ、打抜き、リベット締め、耐圧性および耐熱性など様々な技術的要件を組み合わせて、高い特性プロファイル基準を実現することができない。
【0007】
防食用コーティングを製造するのにα−カルボキシ−β−シクロペンタン酸エチルとの反応生成物をベースとする反応性系が知られている。独国特許出願公開第10260299号明細書および独国特許出願公開第10260269号明細書を参照のこと。国際公開第2007/019434号パンフレットには、エナメル塗りの速さを大幅に上げるための特定の樹脂をベースとする電線コーティング組成物が開示されている。こうしたコーティングは、電気鋼にとって必要な特性を満たさない。というのは、特にメラミン樹脂コーティング系および/またはポリオール/イソシアネートコーティング系が、コーティングの脆性、および健康に危険な望ましくない低分子生成物放出を明らかにするおそれがあるからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コアシート用ワニス組成物を使用する電気鋼用被覆方法であって、
a)電気鋼の表面に、コアシート用ワニス組成物のコーティング層を少なくとも1層塗布する工程であって、コアシート用ワニス組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水5〜95重量%と
を含み、
ここで成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、工程と、
b)塗布したコーティング層を硬化する工程と
を含む被覆方法を提供する。
【0009】
本発明による方法は、電気鋼の表面への優れたコーティング接着性、ならびに驚くべきことにコーティングの高耐食性および良好な電気絶縁を提供する。本発明による方法によって提供されたコーティングは、本発明による組成物で被覆された電気鋼板およびこれらの被覆電気鋼板から成形されたコアの溶接、型締め、かしめ、打抜き、リベット締め、高耐圧性および耐熱性など、様々な技術的要件を組み合わせた高い特性プロファイル基準を示す。本コーティングは、従来技術のものより良好な接着性および機械的諸特性を提供する。優れた接着性および耐食性を有すると共に、1マイクロメートル未満の範囲である非常に薄いコーティング層を提供することが可能である。本発明による方法のコーティング組成物は、1成分系として使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴および利点は、当業者が以下の詳細な説明を読むことによってさらに容易に理解されよう。明確にするため別々の実施形態の文脈に上述および後述された本発明のいくつかの特徴が、組み合わされて単一の実施形態に記載されることもあり得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈に記載された本発明の様々な特徴が、別々にまたは任意の副次的な組合せで記載されることもあり得る。さらに、単数形の言葉は、文脈にそうでないことが具体的に記載されていない限り、複数形も包含することができる(例えば、「a」および「an」は、1つ、または1つもしくは複数を意味することができる)。
【0011】
記載された範囲の上下にあるわずかなばらつきを使用して、その範囲内の値と実質的に同じ結果を実現することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のあらゆる値を包含する連続した範囲として意図されている。
【0012】
本発明の方法によるコーティング組成物の塗布は、電気鋼の片側または両側の表面に例えば吹付け塗り、ロール塗り、または浸し塗りを行うことによって行われる。
【0013】
電気鋼、例えば鋼板の表面は、本発明の方法の工程a)に従って塗布する前に、被覆済みまたは未被覆、前処理済みまたは未前処理でもよい。鋼板は、例えば汚れ、油脂、および他の付着物を除去するために洗浄することによって前処理してもよい。好ましい予洗した未被覆電気鋼板を使用し、本発明による組成物を用いて、好ましくは1層コーティングで被覆する。
【0014】
続いて、鋼板上のコーティングは、一定の硬化条件下、好ましくは180〜270℃、好ましくは230〜260℃の範囲のPMT(ピークメタル温度)をもたらす温度で熱硬化することによって架橋(硬化)が起こる。硬化温度は、例えば200〜600℃、好ましくは300〜450℃の範囲で10秒〜1分間、好ましくは10〜40秒間とすることができる。硬化温度は、例えば100〜300℃の範囲で例えば60〜120分間としてもよい。必要な熱は、例えばオーブン中で、誘導加熱、赤外(IR)線、近赤外(NIR)線、および/または熱空気によって供給することができる。
【0015】
硬化した後、被覆された鋼板から、パーツを打ち抜くことができ、次いで溶接、型締め(clamping)、かしめ(interlocking)、アルミニウム金型鋳造(aluminium die casting)、またはリベット締め(riveting)など、様々な技術的手段によって、好ましくは溶接によって、必要なら熱および圧力の供給によって、積み重ね、組み立て、シートのコアを成形することができる。
【0016】
したがって、本発明は、電気鋼板コアの成形プロセスも対象とする。
【0017】
本発明による組成物を水系または溶媒系のコーティング組成物として塗布することが可能である。
【0018】
成分A)の例は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエステルアミド/イミド、シリコン樹脂、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリチタンエステルなどの樹脂である。成分A)の樹脂の生成は、専門文献から知られている。例えば、Behr, “Hochtemperaturbestaendige Kunststoffe” Hanser Verlage, Munich 1969; Cassidy, “Thermally Stable Polymers” New York: Marcel Dekker, 1980; Frazer, “High Temperature Resistant Polymers” New York: Interscience, 1968; Mair, Kunststoffe 77(1987)204を参照のこと。
【0019】
成分A)として、18〜33の範囲の酸価(mgKOH/固体樹脂1g)および100〜170の範囲のヒドロキシル価(mgKOH/固体樹脂1g)を有するポリウレタン樹脂、例えば脂肪族ポリウレタン樹脂を使用することができる。ポリウレタン樹脂の平均モル質量Mnは、例えば13000〜25000とすることができる。
【0020】
成分A)として、ポリエステル、特にヘテロ環式含窒素環を含むポリエステル、例えばイミド、ヒダントイン、ベンゾイミダゾール、アミド、および/またはアミドイミド構造が縮合して分子となったポリエステルを使用してもよい。ポリエステルは、具体的には多塩基性の脂肪族、芳香族、および/または脂環式のカルボン酸ならびにその無水物、多価アルコール、ならびにイミドを含むポリエステルの場合はポリエステルアミノ基を含む化合物、および場合によっては所定量の単官能性化合物、例えば1価アルコールの縮合生成物である。飽和ポリエステルイミドは、好ましくはジオールに加えて、ポリオール、および追加のジカルボン酸成分としてジアミノジフェニルメタンとトリメリト酸無水物の反応生成物を含有することもできるテレフタル酸ポリエステルをベースとする。さらに、不飽和ポリエステル樹脂および/またはポリエステルイミド、ならびにポリアクリレートを使用することもできる。
【0021】
成分A)として、別の樹脂、例えばエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型もしくはビスフェノールF型をベースとするエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリメタクリル酸イミド、ポリイミド、ポリビスマレイン酸イミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾオキサジンジオン、ポリヒダントイン、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、およびそれらの誘導体、ポリビニルアセタール、ならびに/またはマスクイソシアネートも使用することができる。
【0022】
成分A)の樹脂に、自己架橋性樹脂、例えばエポキシノボラック樹脂、ならびに周知のエポキシハイブリッド樹脂、例えばウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、およびエポキシエステルなどを、コーティング組成物の全重量に対して0〜10重量%の範囲の量でさらに使用する。
【0023】
ビスフェノールA型またはビスフェノールF型をベースとするエポキシ樹脂を成分A)として使用することが好ましい。
【0024】
成分B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含むことができる。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基は、好ましくは末端部位に組み込まれている。上記のα−カルボキシ基は、好ましくはアルキル−またはアリール−エステル化されている。一方、このタイプのα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、反応するカルボン酸、またはカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物基など、その反応性誘導体から、アミン基との反応によって生成することができる。アミンとカルボン酸からの合成中にジシクロヘキシルカルボジイミドなどのアミド化補助剤を使用することも好都合である。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸は、例えば塩基性条件下におけるハロギ酸エステルとの反応、およびその後の選択的ケン化によって得ることができる。1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えば1,n−カルボン酸ジエステルから、アルコール開裂を伴う塩基との反応によって合成して得ることができる。一方、前記α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、塩基性条件下における前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンとイソシアネートとの反応によって生成することもできる。前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えばグルタル酸ジアルキルエステル、グルタル酸ジアリールエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアリールエステル、ピメリン酸ジアルキルエステル、ピメリン酸ジアリールエステル、オクタン二酸ジアルキルエステル、オクタン二酸ジアリールエステル、ならびにアルキル−、アリール−、アルコキシ−、アリールオキシ−、アルキルカルボキシ−、アリールカルボキシ−、ハロゲン−、およびその他のその置換誘導体、特に好ましくはアジピン酸ジメチルおよびエチルエステルから得ることができる。
【0025】
上記のイソシアネートは、例えばプロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、3,3,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,5−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;アニリン、ホルムアルデヒド、およびCOCl2の反応に由来し、>2個の官能基を有する多核イソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリイソシアナトノナン、またはこれらのイソシアネートから作製されたオリゴマーおよびポリマー(例えば、ウレトジオン、イソシアヌレートなど)とすることができる。
【0026】
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、および他のジオール、トリオール、テトラオール、ポリオール、あるいはアミノアルコール、ジアミン、トリアミン、およびポリアミンとの反応によって得ることができる前記イソシアネートから得られた過剰のウレタンまたはウレアを使用することもできる。
【0027】
アミド化に使用される上記のアミンは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族第一級ジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環式ジアミン、あるいはトリアミンとすることができ、第二級アミンを使用することも可能である。アミンは、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン;>2個の可能基を有する多核芳香族アミン、トルイレンジアミン、または対応する誘導体などの芳香族アミンとすることもできる。分子中に別の官能基を有するアミン、例えばモノエタノールアミンおよび/またはモノプロパノールアミンなどのアミノアルコール、あるいはグリシン、アミノプロパン酸、アミノカプロン酸、またはアミノ安息香酸などのアミノ酸、およびそのエステルを使用することも可能である。
【0028】
α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を、成分(A)に直接組み込むこともできる。これは、例えば成分(A)の樹脂とジ−またはポリイソシアネートおよび少なくとも1つのカルボキシ−β−オキソシクロアルカンの反応によって実現することができる。
【0029】
成分B)が組成物に含有されている場合、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む成分B)の使用が好ましい。
【0030】
成分C)として、組成物は、水および/または芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、クレゾール、フェノール、キシレノール、スチレン、ビニルトルエン、メチルアクリレート、脂肪族アルコールなど、1種または複数の有機溶媒を含有することができる。
【0031】
さらに、本発明によるコアシート用ワニス組成物は、電気鋼の被覆で知られている架橋剤、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート、エポキシドを含んでもよい。
【0032】
当業者によって知られている通常の添加剤および補助剤、例えば増量剤、可塑化成分、促進剤、例えば金属塩、置換アミン;チタン酸テトラブチル、チタン酸イソプロピル、チタン酸クレゾール、それらの多量体の形、ジラウリン酸ジブチルスズなど、触媒、開始剤、例えば光開始剤、熱応答性熱応答性開始剤、安定化剤、例えばヒドロキノン、キノン、アルキルフェノール、アルキルフェノールエーテル、消泡剤、およびフローコントロール剤も、本方法のコーティング組成物中で、コーティング組成物の全重量に対して0〜10重量%、好ましくは0.1〜10重量%の含有率で使用することができる。
【0033】
コーティング組成物は、平均粒径が1〜300nmの範囲、好ましくは2〜80nmの範囲であるナノスケール粒子も含有することができる。これらは、例えばSi02、Al23、TiO2、ホウ窒化物、炭化ケイ素などの化合物をベースとする無機ナノスケール粒子である。粒子は、例えばケイ素、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ならびにランタニドおよびアクチニドからなる系列、具体的にはケイ素、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル、および/またはタンタルからなる系列からの元素を含む元素−酸素のネットワークをベースとする化合物とすることができる。使用可能な粒子は、例えばシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、好ましくはコロイドケイ酸のようなこうした粒子のコロイド溶液または分散液であり、例えばNyacol(登録商標)Corp.、Grace Davison(水中のLudox(登録商標)コロイドケイ酸)、Nissan Chemicalから市販されている。例えば、欧州特許出願公開第1166283号明細書に記載されているように、粒子の元素−酸素網の表面を、反応性有機基で改質することができる。適当な反応性粒子の例は、Degussa AGからのAerosil製品、好ましくはAerosil(登録商標)R 100−8000である。粒子の元素−酸素網の表面は、非反応性基で部分改質または完全改質することもできる。このタイプの化合物を、本発明による組成物中に、例えば0〜70重量%、好ましくは0.1〜70重量%の含有率で含有させてもよい。
【0034】
コーティング組成物は、例えばSiO2、Al23、TiO2、Cr23をベースとする顔料および/または充填剤、例えば二酸化チタンやカーボンブラックなど、カラー付与性無機および/または有機顔料、ならびに金属フレーク顔料および/または真珠光沢顔料など、エフェクト顔料を、コーティング組成物の全重量に対して0〜60重量%、好ましくは0.1〜60重量%の含有率で含有してもよい。
【0035】
被覆用組成物は、さらにモノマーおよび/またはポリマーの元素−有機化合物を含有することができる。ポリマーの有機−元素化合物の例としては、例えば独国特許出願公開第198 41 977号(A)明細書に記載されているタイプの無機−有機ハイブリッドポリマーが挙げられる。モノマーの有機−元素化合物の例としては、ノニル、セチル、ステアリル、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、テトライソプロピル、クレジル、テトラブチルチタネートおよびジルコネートなどのオルト−チタン酸エステルおよび/またはオルト−ジルコン酸エステル、チタニウムテトララクタート、ハフニウムおよびケイ素化合物、例えばハフニウムテトラブトキシドおよびケイ酸テトラエチル、ならびに/または様々なシリコーン樹脂が挙げられる。このタイプの追加のポリマーおよび/またはモノマーの有機−元素化合物を、本発明による組成物中に例えば0〜70重量%の含有量で含むことができる。
【0036】
したがって、本発明による方法に使用可能なコーティング組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水5〜90重量%と、
(D)一般的に使用される添加剤または補助剤0〜10重量%、好ましくは0.1〜10重量%と、
(E)ナノスケール粒子0〜70重量%、好ましくは0.1〜70重量%と、
(F)一般的に使用される充填剤および/または顔料0〜60重量%、好ましくは0.1〜60重量%と
を含み、
成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく組成物とすることができる。
【0037】
好ましくは、成分B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む。
【0038】
本発明による組成物は、単に個々の成分を一緒に混合するだけで生成することができる。例えば、成分A)の樹脂と水を混合することによって樹脂分散液を生成することが可能である。次いで、別の成分を、例えば撹拌しながら添加して、安定な分散液を生成するが、熱および分散化剤を投入してもよい。樹脂と有機溶媒の混合物を生成することも可能である。次いで、別の成分を、例えば撹拌することによって添加する。
【0039】
成分C)である水または有機溶媒を、完成した組成物の固形分が例えば30〜60%になるような量で添加する。
【0040】
本発明による方法による組成物の塗布は、例えば電気鋼板の片側または両側の表面において、乾燥層厚が1層当たり例えば0.1〜30μm、好ましくは0.2〜20μmである1層または複数の層として進行する。
【0041】
特に、本発明による組成物は、単層塗布として適している。
【0042】
下記の実施例において、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、例として挙げられているにすぎない。その結果、本発明は、以下に記載される具体例によって限定されず、以下に含まれる特許請求の範囲によって画定される。
【実施例】
【0043】
実施例1
本発明によるC−3、C−5、およびC−6電気絶縁ワニスの調製
水と有機溶媒の混合物中68〜75重量%の固形分を有するフェノール変性アルキド樹脂(求核性OH基を有する)から、表1に記載する組成物を有する電気絶縁ワニスを調製した。ポリアミド樹脂は、1分子当たり少なくとも2つのα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む。これは、水と有機溶媒の混合物中48〜52%の固形分を有する溶液として添加した。無機充填剤として、固形分100重量%のカオリンを使用した。その後、添加剤(消泡剤、触媒、湿潤剤、腐食防止剤)の添加、ならびに顔料と有機溶媒であるブチルプロピレングリコールおよび/または水の添加を行った。ジメチルエタノールアミンを使用して、pH値を調整した。混合物を均質に撹拌し粉砕した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に記載された成分を含有するコーティング組成物を方向性鋼に被覆して、乾燥膜厚1μm(+/−0.5)の絶縁層を形成した。鋼板粗さRa0.5μm以下を使用した。ロールコーターを使用して、ワニスを鋼板に塗布した。塗布した皮膜を180℃〜270℃のPMT(ピークメタル温度)で硬化し、大気中で冷却した。
【0046】
実施例2
従来技術のC−3、C−5、およびC−6電気絶縁ワニスの調製
水と有機溶媒の混合物中68〜75重量%の固形分を有するフェノール変性アルキド樹脂(求核性OH基を有する)から、表2に記載する組成物を有する従来技術の電気絶縁ワニスを調製した。無機充填剤として、固形分100重量%のカオリンを使用した。固形分90〜99重量%の部分メチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を架橋性バインダーとして使用した。その後、添加剤(消泡剤、触媒、湿潤剤、腐食防止剤)の添加、ならびに顔料と有機溶媒であるブチルプロピレングリコールおよび/または水の添加を行う。ジメチルエタノールアミンを使用して、pH値を調整した。混合物を均質に撹拌し粉砕した。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示したコーティング組成物を、実施例1に記載したのと同じ方法および同じ条件下で電気鋼板に塗布し硬化する。鋼板コアを調製する方法も実施例1の場合と同じである。
【0049】
実施例3
試験
本発明による新規C3、C5、およびC6コーティングの技術的特性を、参照としての従来技術と比較して表3に記載する。
【0050】
被覆された鋼板を共通または内部標準に従って試験した。表3の3行目には、溶媒安定性が記載されており、加重1kgにてダブルラビングによるワイピング溶媒試験で、30回のダブルラビングが終了するまで試験される。アセトン溶媒試験によっても、乾燥皮膜の硬化特性が示唆される。9行目には、耐アブレシブ磨耗性が記載されており、DuPontによって設計されたアブレシブ摩耗試験機で、加重5kgにて30回以内のダブルラビングを行って、被覆された鋼板の塵量を決定することによって測定された。11行目には、鉄鋼試験シートSEP 1210に従って、無気泡および無煤の溶接線に基づいて、溶接性が記載されている。
【0051】
これらの結果から、本発明によるコーティングは、0.5〜10μmの膜厚の範囲内で優れた硬化性能、接着性、および表面絶縁抵抗性を提供することがわかる。さらに、本発明によるコーティングの耐食性は、従来技術のコーティングに比べて改善されている。C−3およびC−5コーティングについて、本発明に従って被覆された電気鋼のTIG溶接性は、従来技術の皮膜に比べて改善されている。本発明によるコーティングは、対応する絶縁クラスにおいて、耐引掻性およびアブレシブ摩耗性で高性能を示すが、これは、本皮膜には、スリッティングまたは打抜き後のラビング跡および引掻傷が、従来技術の皮膜に比べて少ないことを示唆する。
【0052】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシート用ワニス組成物を使用する電気鋼用被覆方法であって、
a)電気鋼の表面に、コアシート用ワニス組成物のコーティング層を少なくとも1層塗布する工程であって、コアシート用ワニス組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水5〜95重量%と、
を含み、
ここで成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、工程と、
b)塗布したコーティング層を硬化する工程と
を含む被覆方法。
【請求項2】
コアシート用ワニス組成物のコーティング層を少なくとも1層塗布する工程において、コアシート用ワニス組成物が、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水5〜90重量%と、
(D)一般的に使用される添加剤または補助剤0〜10重量%、好ましくは0.1〜10重量%と、
(E)ナノスケール粒子0〜70重量%、好ましくは0.1〜70重量%と、
(F)一般的に使用される充填剤および/または顔料0〜60重量%、好ましくは0.1〜60重量%と
を含み、
成分(A)の樹脂および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、請求項1に記載の被覆方法。
【請求項3】
ビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型をベースとするエポキシ樹脂が、前記コアシート用ワニス組成物中の成分A)として使用される、請求項1または2に記載の被覆方法。
【請求項4】
α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基が、前記コアシート用ワニス組成物中で成分A)またはB)の末端の位置に組み込まれている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆方法。
【請求項5】
成分B)が、前記コアシート用ワニス組成物中でα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆方法。
【請求項6】
前記ナノスケール粒子が、前記コアシート用ワニス組成物中の成分A)および/またはB)と反応性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の被覆方法。
【請求項7】
モノマーおよび/またはポリマーの元素−有機化合物が、前記コアシート用ワニス組成物中に含まれている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の被覆方法。
【請求項8】
180〜270℃の範囲のPMT(ピークメタル温度)をもたらす温度で硬化が行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被覆方法。
【請求項9】
溶接、型締め、かしめ、アルミニウム金型鋳造、およびリベット締めからなる群から選択される技術的手段によって電気鋼板を積み重ねおよび組み立てて、シートのコアを成形することによって電気鋼板コアを調製する方法であって、前記鋼板は、請求項1〜8のいずれか一項の被覆方法で被覆されている方法。
【請求項10】
積み重ねおよび組み立てが溶接によって行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の被覆方法で被覆された電気鋼板。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の被覆方法で被覆された電気鋼板から調製された電気鋼板コア。

【公表番号】特表2011−507687(P2011−507687A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539727(P2010−539727)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/087111
【国際公開番号】WO2009/079540
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】