説明

電気錠および電気錠を備えた建具

【課題】安価で、かつ、防水性能を高めた電気錠および電気錠を備えた建具の提供を目的とする。
【解決手段】施錠体1を収容する錠ケース2に固定される外部接続コネクタ3にプラグイン接続される外部配線コネクタ4を介して錠ケース2内の内部配線5を外部配線6に接続する電気錠であって、
前記外部配線6は、錠ケース2に形成された折り返し突部7に係止されて下に凸の形状に折り返されるとともに、錠ケース2に着脱自在に連結されて外部配線コネクタ4と外部接続コネクタ3との連結部を覆うコネクタカバー8に形成される配線ガイド9に保持されて折り返し形状が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気錠および電気錠を備えた建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部配線を内部配線に接続するコネクタを備えた電気錠としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、電気錠は錠ケース内に布線される内部配線が接続されるコネクタを錠ケースの外壁部に固定して形成され、外部配線の接続は、該外部配線に連結されるコネクタを錠ケース側のコネクタにプラグイン接続して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-138072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例において、電気錠は家屋の外扉内部等、非防水環境下で使用される場合には、コネクタの接続部に対する防水処理を高めるために、防水コネクタを使用する必要が生じ、製造コストの上昇をもたらすという欠点がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、安価で、かつ、防水性能を高めた電気錠の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、上記電気錠に使用可能なコネクタカバー、および上記電気錠が装備された建具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
施錠体1を収容する錠ケース2に固定される外部接続コネクタ3にプラグイン接続される外部配線コネクタ4を介して錠ケース2内の内部配線5を外部配線6に接続する電気錠であって、
前記外部配線6は、錠ケース2に形成された折り返し突部7に係止されて下に凸の形状に折り返されるとともに、錠ケース2に着脱自在に連結されて外部配線コネクタ4と外部接続コネクタ3との連結部を覆うコネクタカバー8に形成される配線ガイド9に保持されて折り返し形状が維持される電気錠を提供することにより達成される。
【0007】
本発明において電気錠は、錠ケース2内に収容され、内部配線5を通じて給電されるアクチュエータ12により駆動される施錠体1を有し、内部配線5と外部配線6との接続は、錠ケース2に固定された外部配線コネクタ4に外部配線6の外部接続コネクタ3をプラグイン接続して行われる。
【0008】
コネクタカバー8は、外部接続コネクタ3と外部配線コネクタ4との接続位置を覆って各コネクタ、およびコネクタ間の接続位置への水の浸入を防止し、さらに、外部配線6は、錠ケース2に形成される折り返し突部7とコネクタカバー8によって下に凸な布線形状に導かれるために、外部配線6を伝う水滴のコネクタ連結部への到達が防がれる。このため、外部接続コネクタ3等に高価な防水コネクタを使用することなく防水性能を高めることができる。
【0009】
また、外部配線6は、錠ケース2に形成される折り返し突部7によって、コネクタカバー8装着前に下に凸な布線形状にされた後、コネクタカバー8の装着によってはみ出し等が規制されて整形されるために、作業性も向上する。 コネクタカバー8は、装着状態において、少なくとも外部配線コネクタ4と外部接続コネクタ3との連結部位を隔壁11により囲って覆えば足りるが、側壁、正面壁を外部配線6の折り返し部近傍にまで延設させると、より防水性能を向上させることが可能になる。
【0010】
さらに、
前記コネクタカバー8は、錠ケース2の背面部を切り欠いて形成されたカバー装着部10に装着され、装着状態において錠ケース2の切欠形状を補完する電気錠を構成した場合には、錠ケース2が矩形領域内に収まるために、奥行き方向への不要な突出部分が発生しないために、扉への取付作業性を向上させ、あるいは、扉内での占有スペースを小さくすることが可能になる。
【0011】
この場合、
前記外部接続コネクタ3は、前記コネクタカバー8の錠ケース2装着面への投影面内において左右方向に偏倚して配置されるとともに、
反対領域が外部配線6の折り返し位置から配線ガイド9に至る外部配線6の通線領域として使用される電気錠を構成した場合には、錠ケース2の厚さ方向を通線スペースとして有効利用できるために、奥行き方向に通線スペースを新たに設定する必要がなく、装置の小型化が可能になる。
【0012】
さらに、上記電気錠には、
電気錠の錠ケース2に着脱自在に連結され、錠ケース2に固定される外部接続コネクタ3と、この外部接続コネクタ3にプラグイン接続される外部配線コネクタ4との連結部位を覆うコネクタカバー8であって、
前記連結部位を外部配線6の引出面を除いて覆う隔壁11を有し、
少なくとも一の隔壁11の外壁面には、引出面から引き出された外部配線6を保持する配線ガイド9が設けられるコネクタカバー8を使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コネクタカバーによりコネクタ間の連結部を覆うために、各コネクタを防水仕様とする場合に比べて安価に防水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電気錠を示す斜視図である。
【図2】コネクタカバーの錠本体への装着操作を示す図である。
【図3】コネクタカバーを示す図で、(a)はコネクタカバーの錠本体への装着操作を示す図2を3A方向から見た図、(b)は図3(a)の3B方向矢視図である。
【図4】錠本体を示す図で、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図5】コネクタカバー8を装着した状態を示す図で、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図6】本発明が適用された玄関扉を示す図で、(a)は屋外側壁面を示す図、(b)は屋内側壁面を示す図、(c)は(a)の6C方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図6に玄関扉として構成された本発明の建具Aを示す。玄関扉Aは、扉体22内に固定される電気錠(B)と、電気錠(B)を挟むようにして扉体22の屋外、屋内側壁面に固定されるアウトサイドハンドル23、インサイドハンドル24とを有する。
【0016】
アウトサイドハンドル23を取り付けるために、扉体22の屋外側壁面には屋外側上下取付ベース25A、25Bが固定され、アウトサイドハンドル23は、下端に突設されるヒンジ突片23aを下取付ベース25Bに挿入して装着される。
【0017】
装着状態において、アウトサイドハンドル23はヒンジ突片23aの先端部周りに回転操作可能であり、アウトサイドハンドル23を回転操作すると、アウトサイドハンドル23の回転先端部と上取付ベース25Aに連結されたラッチ操作レバー26が枢軸26a周りに回転する。
【0018】
上記電気錠(B)は、アウトサイドハンドル23の回転先端部と回転基端部とに対応して2個使用され、後述するように、各電気錠(B)には施錠体(デッドボルト1)が収容されるとともに、上方に位置する電気錠(B’)にはドア枠(図示せず)のストライク27に係止して扉体22の閉扉状態を維持するラッチボルト28が収容される。ラッチボルト28は、アウトサイドハンドル23の回転操作に伴うラッチ操作レバー26の回転によってストライク27との係止が解除され、あるいはラッチボルト28が所謂反転ラッチとして構成される場合には、係止解除可能な状態に移行する。
【0019】
一方、インサイドハンドル24は屋内側取付ベース29に保持されて回転軸(C)周りに回転操作可能であり、回転操作に伴って上端部に固定されるラッチ操作レバー26’が回転して上記ラッチボルト28に対する係止解除、あるいは係止解除可能状態への遷移操作が行われる。また、屋内側取付ベース29にはサムターン29aが装着されており、該サムターン29aを手動操作することにより電気錠(B、B’)のデッドボルト1を操作することができる。
【0020】
さらに、上記電気錠(B、B’)は商用電源(P)からの給電を受けて動作し、商用電源(P)からの電力は、後述する外部配線6としてのドア内配線(6A)を経由して、先ず下方の電気錠(B)に導入された後、錠間配線(6B)を経由して上方の電気錠(B’)に供給される。
【0021】
図1以下に下方の電気錠(B)を例にとって電気錠の構造を詳細に示す。電気錠は、錠本体13と、錠本体13の背面部に装着されるコネクタカバー8とを有し、化粧プレート14を介して図外の扉に固定される。
【0022】
図2に示すように、錠本体13は錠ケース2内に図外のドア枠に進退して扉を施解錠するデッドボルト(施錠体1)と、デッドボルト1を駆動するアクチュエータとしてのモータと、モータ12の回転を制御する制御ボード15とを収容して形成される。
【0023】
モータ12の動力は歯車列16により減速された後、ラック17に伝達されて往復動作に変換され、さらに、ラック17に噛合する歯車18aを備えた歯車カム18の回転動作に変換される。歯車カム18はアーム部18bを備えており、歯車カム18の回転によりアーム部18bが回転すると、デッドボルト1の作動突起1aに干渉し、デッドボルト1が並進駆動される。
【0024】
制御ボード15への給電、あるいは制御ボード15と電気錠外部の電子部品との制御信号の送受を行うために、錠ケース2には内部配線5を介して制御ボード15に接続される外部接続コネクタ3が固定される。外部接続コネクタ3は、錠ケース2の背面、上端部を切り欠いて形成されるカバー装着部10に面して配置され、電気錠の外部に布線される外部配線6と制御ボード15との接続は、外部配線6に固定された外部配線コネクタ4を外部接続コネクタ3にプラグインして行われる(図4参照)。
【0025】
図3(a)に示すように、この実施の形態において、外部接続コネクタ3は、縦方向に3個並べられて配置されており、各々、カバー装着部10の中心に対して左右方向(本実施の形態においては右側)に偏倚して配置される。
【0026】
外部接続コネクタ3と外部配線コネクタ4との接続部位の防水性能を高めるために、カバー装着部10にはコネクタカバー8が着脱自在に装着される。コネクタカバー8を支持するために、カバー装着部10の開口端近傍には、取付プレート19が配置されるとともに、上記取付プレート19から背面方向にやや離隔した位置に第一係止段部20aが形成され、さらに背面方向に離隔した位置に、上記第一係止段部20aに対して係止方向が直交する第二係止段部20bが設けられる。
【0027】
また、錠ケース2には折り返し突部7が形成される。折り返し突部7は、カバー装着部10の底部から適宜の高さ位置で、最下段の外部接続コネクタ3よりさらに下方に設けられ、外部配線6を係止した際の外部配線6の脱落が生じにくいように、底面中央部が凹形状に形成される。
【0028】
一方、コネクタカバー8は、上記カバー装着部10の切欠形状にほぼ一致し、カバー装着部10に装着された状態でカバー装着部10を補完して電気錠が直方体形状となるように形成される。図3(b)に示すように、コネクタカバー8の平面視矩形領域の一部には、カバー装着部10に対向する面と、底部を開放させ、側面、および天井面を隔壁11により囲った配線カバー部21が残余の領域から画成される。
【0029】
また、平面視においてコネクタカバー8を配線カバー部21を残余の領域から区画する隔壁11には、残余の領域に向けて配線ガイド9が突設され、隔壁11に沿って布線される外部配線6が保持される。
【0030】
配線ガイド9は、高さ方向中間部と上端部の2カ所に設けられ、上端側の配線ガイド部は、外部配線6をまとめることができるように、フック形状に形成される。
【0031】
上述したように、外部接続コネクタ3は、カバー装着部10の中心に対して右側に偏倚して配置されていることに対応して、配線ガイド9が配置される通線領域は、図3に示すように、外部接続コネクタ3が配置されない左側の隅角部に配置され、外部配線コネクタ4からの引き出し領域がより広くとれるように配慮される。 以上のコネクタカバー8を錠ケース2に装着するために、コネクタカバー8には、上下係止片8a、8bと、上記第一、第二係止段部20a、20bに対応する第一、第二係止フック8c、8dが設けられる。上下係止片8a、8bはコネクタカバー8の配線ガイド9の前縁部に形成され、上係止片8aは天井壁から下方に向けて庇状に垂下され、下係止片8bは前縁下端から中心に向けて突片状に突設される。
【0032】
以上の構成の下、外部配線6との接続は、まず、図4に示すように、外部接続コネクタ3に外部配線コネクタ4をプラグイン接続し、次いで、外部配線6を下方に導いた後、折り返し突部7に係止させる。この後、外部配線6を上方に引っ張ると、外部配線6には下に凸の折り返し部が形成される。
【0033】
この状態で、コネクタカバー8の下係止片8bを取付プレート19と錠ケース2との間隙に挿入し、下方にスライドさせると、第一、第二係止フック8c、8dが第一、第二係止段部20a、20bに弾性的に係止し、さらに、上係止片8aが取付プレート19の上縁を挟むように係止し、錠ケース2に装着される。
【0034】
この後、図5に示すように、外部配線6を配線ガイド9により挟み付け、外部配線6の上行ルートを拘束する。
【0035】
この状態で、外部接続コネクタ3と外部配線コネクタ4との接続部位はコネクタカバー8により覆われて水の付着、侵入が確実に防止できる上に、外部配線6を伝って外部からきた水滴は折り返し部から上方に移動することはできないために、接続部に至ることがない。
【0036】
なお、以上において電気錠は、錠ケース2内にデッドボルト1を収容したものを示したが、これに加え、扉に係止して扉の閉扉状態を維持するためのラッチボルトを収容したものや、あるいは、施錠体として反転ラッチとして作動するラッチボルトを収容したものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 施錠体
2 錠ケース
3 外部接続コネクタ
4 外部配線コネクタ
5 内部配線
6 外部配線
7 折り返し突部
8 コネクタカバー
9 配線ガイド
10 カバー装着部
11 隔壁
A 建具
B 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠体を収容する錠ケースに固定される外部接続コネクタにプラグイン接続される外部配線コネクタを介して錠ケース内の内部配線を外部配線に接続する電気錠であって、
前記外部配線は、錠ケースに形成された折り返し突部に係止されて下に凸の形状に折り返されるとともに、錠ケースに着脱自在に連結されて外部配線コネクタと外部接続コネクタとの連結部を覆うコネクタカバーに形成される配線ガイドに保持されて折り返し形状が維持される電気錠。
【請求項2】
前記コネクタカバーは、折り返し突部近傍に至るまで延設される請求項1記載の電気錠。
【請求項3】
前記コネクタカバーは、錠ケースの背面部を切り欠いて形成されたカバー装着部に装着され、装着状態において錠ケースの切欠形状を補完する請求項1または2記載の電気錠。
【請求項4】
前記外部接続コネクタは、前記コネクタカバーの錠ケース装着面への投影面内において左右方向に偏倚して配置されるとともに、
反対領域が外部配線の折り返し位置から配線ガイドに至る外部配線の通線領域として使用される請求項1から3のいずれかに記載の電気錠。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電気錠を備えた建具。
【請求項6】
電気錠の錠ケースに着脱自在に連結され、錠ケースに固定される外部接続コネクタと、この外部接続コネクタにプラグイン接続される外部配線コネクタとの連結部位を覆うコネクタカバーであって、
前記連結部位を外部配線の引出面を除いて覆う隔壁を有し、
少なくとも一の隔壁の外壁面には、引出面から引き出された外部配線を保持する配線ガイドが設けられるコネクタカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60782(P2013−60782A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201530(P2011−201530)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】